03/20/2014 随筆集 母の微笑(三浦 哲郎):再録書評「どんな微笑よりも」

明日で
母が亡くなってから4年になります。
母が亡くなった2010年の3月1日に
書いたのが
今日紹介する三浦哲郎さんの
『母の微笑』でした。
再録書評になります。
この時の「こぼれ話」で
私はこんなことを
書いています。
今、入院している私の母は三月の終わりに
誕生日を迎えます。
母は寅年ですので、今年ちょうど84歳に
なります。
病院の窓から
そろそろ春の光が降り注ぐでしょう。
温かい風がはいってきますか、お母さん。
もうすぐ桜の花が咲きますよ、お母さん。
母は新しい誕生日を
迎えることはできませんでしたが
母が亡くなるその日
病室で誕生祝いを
しました。
母は
それを待っていたのでしょうか。
じゃあ、読もう。
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芥川賞作家三浦哲郎の前半生は、本書所載の「私の履歴書」にあるように、悲しみと苦渋に満ちていた。青森県八戸市にある裕福な呉服商の六人きょうだいの末っ子に生まれたが、その成長の途上で、三人の姉のうち二人までもが自死、そして兄ふたりが行方知らずのまま帰らぬ人となる。
その苦しみは出世作ともなった芥川賞受賞作でもある『忍ぶ川』に描かれているが、その後の作品においても三浦はそんな姉たちや兄たちをしばしば描いてきた。
幼かった彼自身にどのような罪があろうか。しかし、三浦は何度も自身の血について悩み、自身の幸福についても許されぬものとして煩悶する。
そんな三浦以上に我が身を呪い、最後に身ごもった末っ子の誕生に恐れ慄いたのは、三浦の母だった。自分の身体から生まれてくる娘や息子たちが次々と消えていくことに彼女はどれほど血の涙を流したことだろう。
親より先に逝く子供たちは不幸だ。それがどのようなものであれ、親は親として全うしてやれなかったことを悔やみ、嘆き、悲しむ。
三浦の悲しみはそんな母をみることで深まり、彼の歓びは自身の結婚、自身の子供の誕生で母がようやく悲劇の淵を抜け出せたことだったと思う。
本書の表題作となった随筆『母の微笑』は、そんな母の晩年の姿を哀しい半生を重ねながら綴ったものである。
最晩年病院で暮らすことになる母の「いかにも、無学ながらひたすら母親の道を貫き通した生涯に充足し切っているような、穏やかで控え目ながら自信に満ちた微笑」に、どれほど慰安されたことだろう。あれほどの不幸を経験した母の生涯を「充足」と書き、「自信に満ちた」と表現した、彼女の息子三浦哲郎の、やはりそれは彼自身の幸福だったろうし、それこそ母をもっとも愛せて瞬間だったにちがいない。
子供はいくつになっても、そんな母の微笑に励まされている。
(2010/03/01 投稿)

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