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プレゼント 書評こぼれ話

  突然の訃報に驚きました。
  俳優の高倉健さんが
  11月10日亡くなりました。
  83歳だったそうです。
  高倉健さんといえば
  耐える男の印象があります。
  それはやくざ映画の健さんから
  最後の主演作となった「あなたへ」まで
  変わらなかったと
  思います。
  みんなが健さんになりたかったけれど
  誰もがなれるはずもない、
  そんな男性が
  高倉健さんだったのではないでしょうか。
  今日の横尾忠則さんの
  『憂魂、高倉健』という一冊を
  紹介します。
  2009年12月に書いたものの
  再録書評です。
  掲載した時の
  書評のタイトルは
  「待ってました、健さん」でしたが
  今回「背中(せな)で泣いてる」に変えました。
  もちろん、これは
  高倉健さんが歌った「唐獅子牡丹」の一節。

  ご冥福をお祈りいたします。

  じゃあ、読もう。

憂魂、高倉健憂魂、高倉健
(2009/06/01)
横尾 忠則

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sai.wingpen  追悼・高倉健さん - 背中(せな)で泣いてる              

 グラフィック・デザイナー横尾忠則の編集による役者高倉健の、豪華写真集である。
 一冊まるごと高倉健なのであるが、同時にこの本全体が横尾の作品であるともいえる。
 そもそもこの写真集は復刻版である。その経緯は、「付録」リーフレットに収められた、今回の出版元である国書刊行会の「プロダクション・ノート」に詳しいが、本書のオリジナル版は1971年に刊行されたものなのだが、色々な事情があってそのオリジナル版が書店に並ぶことはなく、その一部は古書店に流通しただけだという。それに、それよりも以前に、この本のもとになった『高倉健賛江』にいたっては見本数冊を作っただけで出版さえ実現しなかった。
 それから38年めにして、ようやくこうして復刻したのである。

 ただ時代があまりにも変わってしまって、当時の高倉健を支持する大衆の熱もすっかり冷めてしまったといえる。高倉健という役者は、ヤクザ映画のそれではなく、『幸福の黄色いハンカチ』や『鉄道員(ぽっぽや)』を演じた俳優として記憶されている。
 「あの時代の空気を胸いっぱいに吸い込んでぼくはこの本を編集、製作をした」という横尾忠則は今回の出版に関して、「当時の映画をオンタイムで観ていない現在の若者にぜひこの本を手に取らせたい」と綴っている。
 しかし、これはもはや、役者高倉健の写真集というよりも、1970年という時代の写真集だといっていい。
 東映やくざ映画のなかの高倉健はたしかにカッコよかったが、そのカッコよさそれさえもがあの時代の残光に思える。
 うらぶれた映画館の固い座席にうづくまりながら、オールナイトで高倉健の忍従と刹那にしびれて、「待ってました、健さん」と大向こうから声を発した多くのファンたちもまた、あの時代の風景となっている。
 実際この写真集でもっとも強く見入ってのは、高倉健の姿ではなく、当時の映画館のロビーのベンチに転がり眠る男たちであり、臭いまで思い出しそうな映画館のトイレの写真だった。
 それらを見ていると、70年代は、映画館の暗闇が時代に疲れた者たちを慰撫した、最後の時代だったかもしれないと思える。

 現在の若者たちにとって、父親や母親が青春を生きた時代はどのように映るだろうか。高倉健という役者に熱狂した時代をどのように見るだろうか。
 健さんの背中一面の唐獅子牡丹に飛び散った血に涙した時代を想像することさえできないのではないだろうか。
  
(2009/12/02 投稿)

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