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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日、
  苦楽堂という神戸の新しい出版社が出した
  『次の本へ』という本を
  紹介しましたが、
  読みたい本が見つからないという人は
  村上春樹さんの本を
  手はじめに読むのも
  いいと思います。
  何しろ
  毎年ノーベル賞候補に名前があがるくらい
  有名な作家ですし
  難解な作品でもありません。
  まあ、難点をいえば
  長編小説が多いことかな。
  最初は
  短編小説かエッセイから
  読むといい。
  気にいってくれば
  長編小説。
  それに絵本の翻訳だってしているから
  そのあたりから読むのも
  いい。
  今日紹介するのは
  村上春樹さんの短編『図書館奇譚』。
  これは
  ドイツで翻訳されたものを
  逆輸入した作品。
  このあたりも
  いいかも。

  じゃあ、読もう。

図書館奇譚図書館奇譚
(2014/11/27)
村上 春樹

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sai.wingpen  幸福な作家が願ったもの                   

 村上春樹さんは幸福な作家だ。
 一つの作品が雑誌に発表される。それが単行本となって出版される。長編小説はいきなりどかんと発表されることもある。何年かすれば文庫本の一冊に収録される。はたまた全作品(村上春樹の場合これまでⅠ期Ⅱ期の作品集がある)の中にも収められる。
 普通の作家であれば、このあたりであろう。
 村上春樹さんが幸福なのは、海外で翻訳された作品が逆輸入されてまた出版されることだ。
 この作品がそうだ。
 これはドイツの出版社デュモン社がカット・メンシックという画家に挿絵を描かせて2013年にドイツで刊行された作品だ。
 ちなみにいえば、この作品は「子供向け」にリライトされて、『ふしぎな図書館』というタイトルで出版されてもいる。

 村上春樹さんとドイツの関係でいえば、昨年(2014年)の秋ドイツの「ウェルト文学賞」を村上さんは受賞している。
 その際の受賞スピーチで村上さんはこんなことを話した。
 「かつてジョン・レノンが歌ったように、私たちには想像する力がある。暗く暴力的な現実に直面する世界で、それは無力ではかない希望に思える。だが、その力は、私たちが気を落とさず、歌い、語り続けることの中に見いだせる」。
 実はこれこそこの『図書館奇譚』という不思議な作品のテーマではないかと思える。

 この作品が最初に発表されたのは、1982年。
 1979年に『風の歌を聴け』でデビューしてまだ間もない時である。
 理不尽に図書館の暗い地下室に閉じ込められた主人公が脱出するという物語に込められたものは、「暗く暴力的な現実」から逃れるための「想像する力」だろう。
 初期の村上作品にしばしば登場する「羊男」はこの作品でも主人公と一緒に脱出する重要なキャラクターだが、彼こそ「想像する力」の権化のように思えて仕方がない。

 その「羊男」であるが、この本の挿絵を担当したカット・メンシックもその奇怪な姿を描いているが、日本の読者としてはやはり佐々木マキさんが描いた、どことなく憎めない「羊男」の方がなじみがある。
 もちろん、だからといって日本人の方が穏やかということでもないが。
  
(2015/01/06 投稿)

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