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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日紹介した
  窪美澄さんの『水やりはいつも深夜だけど』もそうだが、
  今日紹介する
  桜木紫乃さんの『ブルース』も、いい。
  年のはじめに
  こんな面白い物語を立て続けに読んで
  いいものだろうか。
  それくらい面白い。
  特にこの『ブルース』。
  好きだな。
  桜木紫乃さんは本当に巧い。
  巧すぎるくらい、巧い。
  表紙の
  森山大道さんの写真もいい。
  作品の雰囲気がよく出ている。
  実は
  内表紙というのだろうか、
  なかにあるもう一枚の写真もいい。
  ベッドで煙草を吸う全裸の女。
  男の姿は見えない。
  しかし、ことが終わったあとだろうか、
  女の痩せた背中ににじむものが
  なんともいえない。
  初春から
  いい作品に出合った。

  じゃあ、読もう。

ブルースブルース
(2014/12/05)
桜木 紫乃

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sai.wingpen  惚れるな、この男に                   

 この本の宣伝文に「釧路ノワールの傑作、誕生」とある。
 ノワール。フランス語で「黒」の意味。
 小説では暗黒小説などと呼ばれ、闇社会を題材にして、人間の理不尽とかを表現してきた。
 1950年代半ばにはアメリカ映画を中心に描かれたこともあって、そちらはフィルム・ノワールと呼ぶらしい。
 つまり、この作品は北海道釧路を舞台にした暗黒小説ということであろうが、桜木紫乃が得意とする連作集で最初の書かれた「恋人形」の発表が2011年10月で、最後の作品「いきどまりのMoon」が2014年7月であるから、実に3年近くかかって書かれた作品集ということになる。
 その間、桜木は『ホテルローヤル』で2013年に第149回直木賞を受賞している。

 主人公は影山博人。人が寄り付かない「崖の下」で、6本の指をもって生まれてきた男。
 男はやがて闇の王となり、霧深い街の夜を支配していく。
 その男に消息を追うようにして関係していく、女たち。
 8つの作品はどれもその女たちの視点で描かれていく。
 冒頭の「恋人形」で影山という男の、少年時代が描かれている。少年影山に魅かれる少女牧子。牧子が魅かれたのは6本の指であったかもしれない。
 人にはないもの。それに魅せられて牧子は影山と身体を重ねる。
 しかし、影山は自身の育った街に火をつけ、姿を消してしまう。そのあとも影山の姿を追い求める牧子の前に現れた影山には、しかし、6本めの指はなかった。名残りの瘤があるばかりで。
 読者は最初のこの作品で影山博人が新聞の死亡告知に名前が載るほどの人間になったことを知る。
 牧子が知っている6本指の少年から、5本指の街の名士にどのようになっていったのか。
 残りの7つの作品が、そんな影山直人の姿を描いていく。

 女たちは影山の性に夢中になる。牧子がそうであったように、影山の指が忘れられない。
 女にふしだらではない。
 影山はどこかで女を冷たく視ている。
 こういう影山の造型がこの小説の魅力といえる。
 影山を生み出したのは桜木紫乃であったとしても、影山の闇をつくりだしたのは女たちであり、彼の影に魅かれるのは、読者そのものだ。

 影山に惚れてしまう女性読者が、きっと、いる。
  
(2015/01/10 投稿)

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