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プレゼント 書評こぼれ話

  いよいよ今日の夜
  第152回芥川賞直木賞が決定します。
  それにあわせて
  紹介するのが
  筒井康隆さんの『大いなる助走』。
  文学賞の選考委員を順番に
  殺していくなんていう
  奇想天外な物語。
  今回の候補者の作家の皆さんは
  読んだことがあるのかな。
  けっこう古い作品だから
  知らないかも。
  でも、こういう作品を読むと
  選考委員の人たちも
  大変です。
  いのちがけ。
  そうでもないか。
  さて、今回はどんな作品が受賞するのか。
  どんな新しい人が登場するのか。
  出版社も本屋さんも
  もちろん読者も
  楽しみにしていますから
  「受賞作なし」だけは
  ありませんように。

  じゃあ、読もう。

大いなる助走 <新装版> (文春文庫)大いなる助走 <新装版> (文春文庫)
(2005/10/07)
筒井 康隆

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sai.wingpen  この恨み晴らさでおくべきか                   

 2015年1月に発表される芥川賞・直木賞は今回で152回を数える。
 昭和10年(1935年)の第1回芥川賞候補にあがった太宰治が狂おしいばかりにこの賞を欲しがった話を有名だ。ちなみにこの時の受賞作は石川達三の『蒼氓』だった。
 あるいは受賞の報せを受け記者発表の会場に向かう途中でそれが誤りだったと知らされた吉村昭など、受賞落選には悲喜劇がつきまとう。
 吉村昭の場合、ともに受賞をめざした妻津村節子が第53回芥川賞を受賞している。
 心中、いかばかりであっただろう。

 この作品の作者筒井康隆は三度直木賞の候補になっている。
 最初に候補になったのが、第58回で対象作品は『ベトナム観光公社』。この時選考委員の一人村上元三は「わたしは買わない。日本のSFの中には、フィクションがあって、サイエンスのない作品が多い、と思う」と、バッサリ斬られている。
 二回目の候補は続く第59回で、作品は『アフリカの爆弾』。この時の村上元三委員の選評は「前回に書いた選評と同じことを繰返すことになるので、ふれずにおきたい」。
 さらに三回目。第67回に『家族八景』で候補になる。三度村上元三委員。「いつものこの作家の軽快な筆致や才気が見られず、八つの話とも後味が悪い」。
 この回が1972年で、その後遂に筒井康隆は直木賞を受賞するに至っていない。

 それから5年後、筒井は「別冊文藝春秋」のこの作品の連載を始めることになる。
 この作品は、「直廾(なおく)賞」落選の憂き目にあった主人公が選考委員を順番に殺していくという、なんとも危ういもので、果たして自身の落選の経緯の恨みがあってのことか、たぶん少しはあっただろうが、かなりショッキングでセンセーショナルな内容になっている。
 ただ、この作品が書かれた時代と今とではブンガク事情もかなり変わっていると思う。
 地方の同人誌に集う、例えばかつて小説家の端くれに名を連ねた人や時間を持てあます奥様やブンガクかぶれの女子高生といった、人たちは今でも存在するのだろうか。
 最近の芥川賞や直木賞の受賞者を見ていると、そういう苦節何十年というようなものとほど遠い気がする。

 それでもこの作品が面白いのは筒井康隆という、直木賞を受賞しなかったけれど、素晴らしい書き手によるものだというのが、皮肉である。
  
(2015/01/15 投稿)

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