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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日宮本輝さんの
  『いのちの姿』というエッセイ集を
  紹介しましたが、
  懐かしさのあまり、
  今日は1983年に刊行された
  『命の器』という
  エッセイ集を紹介します。
  もちろん、これは再読。
  再再読ぐらいかも。
  1983年というのは
  私が28歳の頃。
  昨日のこぼれ話に書いたように
  このあと宮本輝さんは
  どんどん長編小説を
  書いていきます。
  いやあ、懐かしい。
  なんか旧友に再会したような
  うれしい気分にさせてくれます。
  また
  宮本輝さんの作品を
  読み返したくなります。

  じゃあ、読もう。

命の器 (講談社文庫)命の器 (講談社文庫)
(1986/10)
宮本 輝

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sai.wingpen  あの頃のあなた                   

 1983年に刊行された宮本輝のエッセイ集。
 1977年に『泥の河』でデビューし、翌年には第78回芥川賞を『蛍川』で受賞。それからわずかの期間しか経っていないが、この時期このエッセイ集に先行して『二十歳の火影』というエッセイ集も上梓していることを考えれば、若手注目作家として原稿依頼が殺到していたと思われる。
 それから30年近い歳月を経て、宮本は芥川賞の選考委員にもなり、今や日本文学界の重鎮の趣すらある。
 2014年の暮れに刊行されたエッセイ集のタイトルが『いのちの姿』であることを思えば、同じ読みながら初期は「命」と漢字表記され、今は「いのち」とふりがな表記されている。
 おそらくそのことに意味はないのであろうが、読者としては「命」と漢字表記した頃の歯をくいしばっているような印象から「いのち」と柔らかく表記した年齢の重なりを思わないでもない。

 表題作である「命の器」という短いエッセイにしても、まだ一人よがりのところが若書きともいえる。
 しいていえば、必死になって何かに歯をむいているようなぎらぎら感がある。
 初期の宮本作品はそのような思いを抒情的な装飾でくるんでいるところがあって、エッセイでは余計にその部分が出ているともいえる。
 それから30年も経って、「いのち」という表記にした宮本こそ、「どんな人と出会うかは、その人の命の器次第」という「命の器」の最後に書かれた一節を体現したようにも思えるのだ。

 芥川賞の選考委員になった宮本であるが、このエッセイ集には自身の芥川賞受賞時のことを記したものも数篇収められている。
 その中の一つ、「芥川賞と私」では、芥川賞に執念を燃やした自身をこう書いている。
 「芥川賞発表の季節がくると、その受賞作の活字を嫉妬と焦燥に乱れた目で追った。芥川賞だけがすべてあった」。
 若い頃のそんな自身の姿がよぎれば、選考委員としてやさしい言葉もかけたくなるだろうが、どちらかといえば厳しい選評に、それもまた宮本輝らしさがでているともいえる。
 もしかしたら、今でも「嫉妬と焦燥に乱れた目で」読んでいるのではないだろうか
  
(2015/01/27 投稿)

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