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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  24節気のひとつ、啓蟄
  温かくなって、冬眠していた虫たちが
  穴から出てくる頃です。

    啓蟄の蚯蚓の紅のすきとほる    山口 青邨

  「蚯蚓」という漢字は「みみず」と読みます。
  「青邨」は「せいそん」と読みます。
  季節はこれから一歩ずつ
  春めいてきます。
  そんな時には
  恋愛小説もいいもの。
  今日紹介する
  唯野未歩子さんの
  『ほんとうに誰もセックスしなかった夜』も
  恋愛小説です。
  「ピュアで官能的で美しい恋愛小説の決定版」というのが
  担当編集部さんの
  推薦の言葉です。
  ただちょっと観念的すぎるというか
  言葉の氾濫に
  「恋愛小説の決定版」というのは
  いいすぎなような気がします。
  それでも
  春になれば
  ひとつ恋でもするかと考えている人は
  どうぞお試しあれ。

  じゃあ、読もう。

ほんとうに誰もセックスしなかった夜 (小学館文庫)ほんとうに誰もセックスしなかった夜 (小学館文庫)
(2015/01/05)
唯野 未歩子

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sai.wingpen  この世界で「誰もセックスしなかった夜」なんてやってきはしない                   

 本を読むきっかけはさまざまだが、書名に魅かれるということもその一つだ。
 この作品はそうだった。
 例えば世界中で誰一人としてセックスがされない夜なんてあるのだろうか。
 俗人の私などは時に都会の夜の街灯りを見ながら、この灯りのどこかで誰かがセックスをしているのだろうなと茫然とすることがある、
 そして、きっと何十億という精子が流れていっているのだなと、妙に感心したりしている。
 世界はきっとそういう夜で成り立っているはずだ。
 「誰もセックスしなかった夜」なんて、ありえない。
 そんな夜があるとしたら、きっと世界の歴史は変わってしまうのではないか。

 そんなことを思いながら、この作品を読んだ。
 作者の唯野未歩子のことも知らなかった。唯野は女優として活躍し、その後脚本や監督業にも携わっている。その後自身の監督作品を小説化して作家としてのデビューも成した才媛だ。
 この作品では高校で美術の非常勤講師をしている主人公が27歳の時に出会い、別れた年上の男性(彼女より25歳上である)と再会し、セックスをする一夜を軸に描かれている。
 宗教にはまる母、反抗的な女子高生、彼女に思いを寄せる同僚教師。
 主人公の周りにはいわくありげな人物が多数いるにも関わらず、それらとは決して交わろうとしない主人公。
 どんなに言葉が溢れても、それらの言葉はあまりに空虚でしかない。

 主人公が年上の男性と愛を紡いでいた時に描いた絵画を前にして、女子高生は「誰もセックスしなかった夜みたい」と忽然と言い放つ。
 主人公にとってその絵こそ「わたしたちの絵であり、わたしの誇り」であったはずだが、女子高生の言葉に今は「胸のすく思い」しか残らない。
 その時、愛だと信じたものは、実はセックスすらない不毛の時間だったと、主人公は悟らされる。
 彼女だけではない。
 いつも終わった愛は、この小説の小道具を借りるとすれば、額縁から逃げ出したすずめのデッサン画のようなものにちがいない。

 おそらく、この世界で「誰もセックスしなかった夜」なんてやってきはしない。
 茫々とした印象だけが残る、作品だ。
  
(2015/03/06 投稿)

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