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プレゼント 書評こぼれ話

  東日本大震災から
  4年が経った
  先日の3月11日には
  テレビでもたくさんの特番が組まれていました。
  忘れないことの
  重要性をあらためて強く
  感じました。
  これほどの大きな災害を経て
  どれほどの小説が描かれてきたか
  実は数多くのノンフィクション作品と比べると
  あまりにもその数か少ないような
  気がします。
  普遍的なものを求める小説ゆえに
  作品となるには
  まだまだ時間が必要なのかもしれませんし
  あれほどの災害を描く方法が
  見つからないのかもしれません。
  そんな中、
  今日紹介する
  いとうせいこうさんの『想像ラジオ』は
  東日本大震災を扱った小説としては
  記憶に残していい作品だと
  思います。
  今回河出文庫の一冊にもなって
  読みやすくなりました。
  ぜひ
  一度読んでみて下さい。

  じゃあ、読もう。

想像ラジオ (河出文庫)想像ラジオ (河出文庫)
(2015/02/06)
いとう せいこう

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sai.wingpen  想像せよ                   

 藤野可織が『爪と目』で受賞した第149回芥川賞で最終候補作の一つとなったいとうせいこうの作品だ。
 この時の選評を読むと、多くの選考委員がこの作品に共感と戸惑いを見せながらも、「案外に票を集めなかった」(宮本輝委員)という。
 島田雅彦委員が「現時点におけるポスト3.11の文学の成果と評価」しているように、この作品は2011年3月11日に発生した東日本大震災を題材としている。
 この作品が受賞に至らなかったのは、いとうせいこうという新人作家とは言い難い経歴もあるだろうが、それならば何故この作品を候補作としたのか理解に苦しむ。
 高樹のぶ子委員がいうように「賞を差し上げて、少しでも多くの読者に、死者のDJを愉しんで欲しかった」。

 高樹委員の評にあるように、この作品の主人公は「死者のDJ」である。しかも、3.11の東日本大震災の津波で犠牲になった男だと次第にわかってくる。
 しかもラジオから流れている男の声は死者の耳にしか届かない。生者は想像して聞くしかない。
 死者の声など聞こえるはずはない。
 それでも生者はその声を必死になって聞こうとする。
 「死者のDJ」を仲立ちにして、生きる者は死の意味を、死と向き合うことを考える。
 この作品では、「死者のDJ」による語りが三つの章で描かれ、その間に生きている者たちの現実の時間は挟まれている。
 特に第2章は、死者の声など存在しないという者とそれを想像することに価値があるという者が、被災地の福島から東京に戻る狭い車の中で、口論となる。
 それを作者らしい男が聞いている。
 小説は勿論一人の書き手によって生み出される。死者の声は存在しないとというのも想像でそれが聞こえると書くのも、実は一人の書き手だ。
 そこに、作者いとうせいこうの躊躇いがあるし、この作品にかけた思いもある。
 この狭い車内に私たち読者も同乗している。そして、おそらくこう問われているに違いない。
 「お前には死者の声は聞こえるのか」と。

 東日本大震災を扱った本は、数多く出版されている。
 多くの胸を打つノンフィクション作品の中で、小説はどれほどのことも描き切れていないという思いがある。
 その中で、いとうせいこうのこの作品が占めるものがもっと評価されていいように思える。
  
(2015/03/23 投稿)

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