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プレゼント 書評こぼれ話

  先日
  東京・神保町にある古書店街に
  行ってきました。
  神保町の古書店街は
  世界でも有数の
  古本屋さんの街なのです。
  矢口書店は中でも
  映画関係の本がたくさん並んでいることで
  有名な古書店。

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  あります、あります
  私が購読していた頃の
  1970年代の「キネマ旬報」なども
  ずらりと。
  いやあ、懐かしいな。
  今日紹介する
  橋本忍さんの『複眼の映像』は
  黒澤明監督との脚本作りを描いたものですが
  橋本忍といえば
  シナリオの神様的な存在なんですよね。
  矢口書店には
  映画やTVに使われた脚本なんかもあって
  マニアにはたまらない
  古書店なんです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  人生もまた複眼                   

 橋本忍といえば、戦後の日本映画界を代表する脚本家だ。
 普通映画やドラマを観て、脚本家の名前を意識することは少ないが、例えば向田邦子とか倉本聰とか数人のビッグネームはそれだけで視聴者をひきつけることができる。
 橋本忍は映画界のビッグネームだった。
 私が橋本忍を知ったのは、1974年に封切られた『砂の器』(野村芳太郎監督)だったと思うが、橋本の作品歴からいえば、この作品はほとんど後期の作品となる。
 この後、黒澤明監督作品で橋本の名前を見つけた時は、あの橋本がそういう脚本家だったことの驚きがあったくらいだ。

 橋本の名を一躍有名にしたのは、日本映画ではじめてヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞した
 黒澤明の『羅生門』(1950年)からである。
 そういうことを思うと、私が橋本を知ったのはうんと遅いくらいで、恥ずかしくなる。
 この本はそんな橋本がシナリオの世界にどのように目覚め、戦時中の傷痍軍人療養所で隣のベッドにいた男から借りた雑誌でシナリオを知るこのエピソードも極めてドラマチックだ、その後黒澤明との出会いと共同脚本で作品を仕上げていく過程を描いたものだ。
 副題に「私と黒澤明」とあるように、黒澤作品のほぼ全容が描かれている。

 橋本は黒澤明についてこんなことを書いている。
 「黒澤明は芸術家になったために失敗した」と。
 随分辛辣ではあるが、自身は職人と認じていた橋本にとって、黒澤はひとつの憧れでもあったのかもしれない。
特に、晩年黒澤は日本映画界の天皇のように祀りあげられていくが、そういう黒澤を見ていて、橋本自身は悲しかったにちがいない。

 この本では黒澤との交流だけでなく、シナリオの基本のような事柄も多く記載されている。
 例えば、この本のタイトルにもなっている「複眼の映像」とは、黒澤久美の共同脚本方式を評した文章の中で、こう綴られている。
 「同一シーンを複数の人間がそれぞれの眼(複眼)で書き、それらを編集し、混声合唱の質感の脚本を作り上げる」ことで、それが黒澤作品の特長であると。
 そのように観れば、黒澤作品の深さが理解できる。

 橋本忍という脚本家を意識して、映画を再発見するのもいい。
  
(2015/06/05 投稿)

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