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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は川本三郎さんの
  『映画の戦後』という本を
  紹介するのですが
  この本の中にも書かれている映画を
  先日DVDで観ました。
  野村芳太郎監督の『張込み』(1958年)です。
  脚本は橋本忍さん。
  この映画は松本清張さんの短編が原作なんですが
  わずか30ページほどの作品を
  2時間にも及ぶ映画に仕上げた技量の
  素晴らしさを
  川本三郎さんも書いています。
  それに
  この作品のヒロイン役の
  高峰秀子さんの美しさも。
  『映画の戦後』の中には
  その高峰秀子さんの魅力を
  まとめた小論も
  掲載されています。
  川本三郎さんの映画評の良さは
  そのあたたかさにあります。
  映画を愛する気持ちが
  文章にもよく表れています。

  じゃあ、読もう。

       

sai.wingpen  やくざ映画はあだ花だったのか                   

 高倉健が亡くなったのが2014年11月。川本三郎氏は「「やくざ」が輝いていた時代」を、その追悼として書いた。それが本書の冒頭で紹介されている。
 その中で、川本氏はアメリカで書かれた「日本のクリント・イーストウッド、死す」というニュース記事を引用し、「二人ともヴェトナム戦争の時代の影を背負っている」と記している。
 東映のやくざ映画が大衆に受け容れられていく背景を川本氏はじっと視ている。学生運動に熱中していた若者だけでなく、社会の底辺に生きる人々もまた、高倉健を、やくざ映画を絶賛した。
 川本氏はいう。「やくざ映画とは実はほとんどプロレタリア文学と同じ世界を描いている」。
 そして、その時代すでにTVが家庭に入り込んでいたはずであるが、やくざ映画に拍手喝采を送った観客はそういう家庭にはなじまなかった人々ではなかったのではないだろうか。ぜひ、川本氏にはその視点からも考察を願いたい。

 この「「やくざ」が輝いていた時代」という高倉への追悼文を執筆中に、もう一人のヒーロー菅原文太の訃報が、川本氏の元にとび込んでくる。(菅原文太が亡くなったのは、高倉の死から数週間後だった)
 急遽、川本氏はこの文章に菅原文太への追悼を書き足している。
 日数的にそれは仕方なかっただろうが、やはり高倉健と菅原文太は別々の原稿にしてもらいたかった。

 本書では、この一文を含め日本映画編とでもいえる「戦後映画の光芒」と洋画編といえる「アメリカの光と影」の二部構成になっている。
 「戦後映画の光芒」では高倉や菅原以外にも高峰秀子や杉村春子、森田芳光といった映画人の追悼文が紹介されている。
 あるいは、原節子や小津安二郎がどのようにして戦後を表現していったか、山田洋次の「男がつらいよ」で描かれた地方都市といったように、その一文一文は映画評であるとともに、まさに戦後の日本が歩んできた記録にもなっている。

 また、「アメリカの光と影」では、高倉健と同じ時代を演じた「クリント・イーストウッド論」は力作であるが、なんといってもハリウッドの赤狩りを記した数篇の評論は興味をひく。
 映画は大衆に愛されたゆえに、時代というものから逃れられない宿命を帯びている。
 この本の中の川本氏の評論は、そのことを言い当てている。
  
(2015/06/20 投稿)

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