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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は天皇誕生日
  お仕事がお休みという人も多いのでは。
  せっかくの休日なら
  ゆっくり読書といきますか。
  昔はこたつがあって
  その中にもぐりこんで
  本を読んだものです。

    どつぷりとつかりてこその炬燵かな    中嶋 秀子

  いつの間にか夢の世界へ。
  そんな炬燵の中のいるような
  物語はいかがですか。
  誰もが通り過ぎた世界。
  川上未映子さんの『あこがれ』。
  こういう本を
  炬燵の中で読むと
  また格別でしょうね。
  夢で
  あの子に会えますように。

  じゃあ、読もう。  

  

sai.wingpen  恋にはまだ少し                   

  川上未映子のこの長編小説は二部構成になっている。
 第一章が「ミス・アイスサンドイッチ」、第二章が「苺ジャムから苺をひけば」。
 発表されたのが文芸誌「新潮」で、発表年は2013年と2015年である。
 発表年の時間が経過そのものが、二つの作品の時の経過と重なる。
 第一章で登場する男の子は小学4年、その時その男の子の唯一の理解者でもある同級生の女の子が主人公となる第二章では、彼らは小学6年へと成長している。
 男の子の名前は「麦」、女の名前は「ヘガティー」。もちろんあだ名であるが、川上の名前の付け方のなんと巧いことか。「ヘガティー」なんて、その理由を知れば笑ってしまう。
 そういう言葉の紡ぎ方が川上の巧さだ。

 4年の麦君はこう思っている。
 「六年は大きくてなんか怖い」、「五年はえらそう」、「一年は幼稚園児みたい」だし、「二年は何を考えているかわからない」し、三年にはうるさいのが一人いる。
 だから、自分の四年はずいぶんまとも、だと。
 いやいや、4年の麦君はちっともまともではない。麦君が「ミス・アイスサンドイッチ」と名づけた店員のことを周りの人は随分ひどいことをいうが、麦君だけは気になってしかたがない。だから、毎日サンドイッチを買いに行っている。
 そんな麦君をヘガティーは励まし続ける。
 この年頃では、女の子の方が随分大人なのかもしれない。

 それから2年。6年になった二人はずっと仲良しだ。クラスの仲間たちは男女の恋愛ごっこを真似したりしているが、二人にはそんな感情はない。
 自分の出生にまつわることで元気のないヘガティーを励ますのは、麦君。わずか2年で麦君はヘガティーの騎士のように成長している。
こ の頃にはまだ女の子の成長の方が進んでいると思うが、麦君はそうではない。なんとも立派にヘガティーをエスコートしている。

 こんな風にして、男は女のことを、女は男のことを理解していくのだろうか。
 ヘガティーにとって、麦君は「あこがれ」の存在。それが恋に変わるには、またひとつ、別の物語が必要なのだ、きっと。
  
(2015/12/23 投稿)

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