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 市区町村が発行している
 広報誌を
 見ることはありますか。
 私も現役で働いていた頃は
 ほとんど開いたこともなかったのですが
 定年してからは
 ちゃんと見ています。
 今回ほど
 開いてよかった、見てよかったと
 思ったことはありません。
 5月29日、
 埼玉の大宮で開催された
 『嫌われる勇気』の著者岸見一郎さんの講演会は
 広報誌で見つけました。

20160529_073900_convert_20160529181251.jpg 入場無料の500人。
 今や爆発的な人気のアドラー心理学
 火付け役ともいえる岸見一郎さんの講演ですから
 500人はあっと言う間に埋まるだろうと
 9時入場受付のところを
 7時半に行ったのですが
 並んでいたのは5人ほど。
 あれれ? 
 やはり広報誌は読まれていないのかなあ。
 それでも9時には300人を超えていましたが。

 今回の講演会は
 産業カウンセリング全国研究大会の一環で開催されたもので
 その一部を市民講座として開放という
 粋な計らいです。
 市民講座の人たち、つまり私たちは
 大きなホールの2階で
 メインの1階には産業カウンセラーの人たちが座っています。
 講演は9時半から。
 演目は「アドラー心理学に学ぶ生きる勇気」。
 さあ、岸見一郎さんの登壇です。

 岸見一郎さんは
 NHKEテレ「100分 de 名著」の放映の時に
 出演していましたから容姿もしゃべり方も
 よく覚えていましたが
 2階の席からは遠くて
 あまり表情はよくわかりませんでした。
 まず韓国で講演した際の失敗談でなごませてくれます。
 『嫌われる勇気』は
 日本で今や135万部を超える大ベストセラーですが
 韓国でも100万部を超えているそうです。
 思わず印税はどうなっているのと
 聞きたくなりましたが。
 講演は前半60分でアドラー心理学を軽めに、
 後半60分を質疑応答、と
 贅沢な2時間半。
 岸見一郎さんは
 自分に価値があると思える時が生きる勇気がわくと、
 そしてその価値は他者に貢献できた時に生まれる
 話されました。
 講演の最後に
 生きることは苦しみであるが、
 対人関係の摩擦があるからこそ幸せにもなると
 締めくくられていました。

 質疑応答では
 アドラー心理学の叱らない褒めないという点で
 いくつか質問が出ていました。
 一聴衆としては
 岸見一郎さんの話もやや歯切れが悪い感じを受けないでも
 なかったですが
 「理想だけが現実を変える力がある」と
 別の質問に答えられた裏には
 アドラー心理学ももし欠点があっても
 信じることという決意があるように
 感じました。

 それにしても
 今岸見一郎さんの講演を
 2時間半も聴けるなんて
 なんとも贅沢な内容だったことは
 確かです。

 話題の講演会のあと
 これも最近話題の
 大宮ナポリタンを食べて
 帰りました。

  20160529_123440_convert_20160529181328.jpg

 お腹も
 頭も
 満腹の日曜でした。

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 この季節、少し早めに咲き出したのは
 紫陽花

    あぢさゐや軽くすませる昼の蕎麦     石川 桂郎

 この俳句を作った石川桂郎
 先日紹介した『剃刀日記』の作者です。
 紫陽花といえば薄青色とかピンクのイメージがありますが
 下の写真はちょっと珍しい紫陽花、
 カシワバアジサイ

  CIMG1337_convert_20160529170929.jpg

 菜園に行く路すがら、見つけました。

 今、菜園の興味は
 なんといっても小玉スイカ
 日曜日(5月29日)の朝、
 人工授粉しました。

  CIMG1339_convert_20160529171028.jpg

 なにしろ、人工授粉
 天気のいい、午前9時までにしなさいと
 ものの本には記されています。
 写真でわかるように
 その日の日付を記入した札をぶらさげます。
 なんともデリケート。
 果たして受胎するでしょうか。

 小玉スイカの横には
 トウモロコシを育てています。
 順調に育ってきました。

  CIMG1342_convert_20160529172218.jpg

 順調といえば
 インゲンもいい感じ。
 白い小さな花をつけはじめました。

  CIMG1343_convert_20160529172254.jpg

 夏野菜は
 スイカとかキュウリトマトの花は黄色、
 一方インゲンとかピーマンは白い小ぶりの花。
 下の写真は
 ピーマンの花。

  CIMG1346_convert_20160529172456.jpg

 昨年の収穫日記をひもとくと
 6月の初めには
 キュウリの収穫が始まっていますが
 今年は少し収穫が遅い感じがします。
 去年と育てている品種がちがうせいかもしれませんし、
 去年たくさん収穫できたから
 油断があったかもしれません。

 下の写真は
 森ではありません。

  CIMG1348_convert_20160529172534.jpg

 ぐんぐん(土の中で)育っているだろう
 ニンジンの葉。
 早く赤く育ったニンジンに早く会いたいものです。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介する絵本は
  芥川賞作家小川洋子さんが
  文を書いた
  『ボタンちゃん』。
  絵は岡田千晶さん。
  岡田千晶さんは大阪で生まれたそうです。
  でも、その絵は
  大阪って感じがしません。
  とっても端正です。
  この絵本、
  小川洋子さんの文もいいし
  岡田千晶さんの絵もいい。
  こういう絵本をプレゼントされたら
  うれしくて仕方がないでしょうね。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  忘れ物してないか                   

 この絵本の作者小川洋子さんは、もちろんあの『博士の愛した数式』や『妊娠カレンダー』を書いた芥川賞作家の、小川洋子さんその人です。
 さすがに言葉を紡ぐことを職業にする人だけあって、なんとも言葉が美しい。
 それに物語の構成がやはりうまい。

 主人公はタイトルとおり、「ボタン」。洋服についているあれです。
 女性ならではの視点です。ボタンを集める趣味の人がいるぐらいですから、女性にとっては大事な小物です。男性にはなかなか思いつかない。
 では、ボタンちゃんのなかよしってわかります?
 これも男性には思いつかないかもしれません。
 答えは、ボタンホール。
 ボタンちゃんが丸いお顔なら、ボタンホールちゃんはほっそり顔。それに恥ずかしがり屋。こういう視点も女性ならでは。
 しかも、ボタンがかわいいのはボタンホールのおかげというのもいい。

 ところが、ある日、そのボタンちゃんのとめていた糸が切れてしまうのです。
 ボタンちゃんはコロコロ転がっていきます。
 普通であれば仲のいいボタンホールちゃんと離ればなれになってしまうのですから、ボタンちゃんはめそめそ泣いてしまいそうですが、小川洋子さんはボタンちゃんにちょっとちがった世界を冒険させるのです。
 それは部屋のいろんな隙間に忘れられた思い出の品。
 ガラガラであったりよだれかけであったり、子熊のぬいぐるみであったり。
 ボタンちゃんの主人アンナちゃんがうんと小さい時に手にしたり身につけていたりしたものです。
 昔はあんなに仲がよかったのに、今ではすっかり忘れられてしまった小物。

 この物語の最後には主人公のボタンちゃんも、そういう小物になってしまいます。
 だって、アンナちゃんが大きくなれば、いくらお気に入りのボタンがついていても、着れませんものね。
 この絵本はそういうふうにいつかさようならをする小物たちへの愛を描いた物語といえます。
 読み終わったあと、そういえば何か大切なものを忘れていないか気になりました。
 思い出せたらいいな。
  
(2016/05/29 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  お待たせしました。
  『嫌われる勇気』の紹介です。
  著者は岸見一郎さんと古賀史健さん。
  先にこの本の後編にあたる
  『幸せになる勇気』を紹介したので
  順番が逆になってしまいました。
  私が手にした本には
  115万部突破!という
  帯がかかっていました。
  そして、
  こんな言葉も。
  「アドラー心理学の新しい古典」。
  いやあ、すごいですね。
  今でも書店の平積みで
  並んでいます。
  結論からいえば、
  確かにこの本はいい本です。
  自身を変えたいと思っているなら
  ぜひ読むべき一冊だと
  思います。
  人生後半にはいった私でさえ
  ライフスタイルは
  変えられると思いましたもの。

  じゃあ、読もう。

  
sai.wingpen  私は変われるか                   

 現在のアドラー心理学のブームの火付け役となった一冊である。
 2013年12月に刊行され、今年(2016年)ミリオンセラーになって、今なお売れ続けている。心理学の本としては異例ではないか。
 もっともこの本を心理学としてではなく、自己啓発本として読んでいる人が多いのではないかしら。
 例えば目次をみると、「あなたは「このまま」でいいのか」とか「すべての悩みは「対人関係の悩み」であるとか「人はいま、この瞬間から幸せになることができる」とある。まさに今仕事で悩んでいる人にはぴったりくるのではないか。
 そして、この本はそういう読者の要求に必ず応えてくれるにちがいない。
 そういう読者が多いことがミリオンセラーにつながったのだろう。

 アレフレッド・アドラーの心理学でいえばいくつかの独特な用語が出てくる。
 この本ではまず「ライフスタイル」という言葉がまず紹介されている。アドラーがいう「ライフスタイル」とは性格や気質のことをこの言葉で説明するのだが、本書でも書かれているように性格とか気質と言われれば変えようがないものと思いがちだが、「ライフスタイル」となれば変えることが可能のように思えてくるから不思議だ。
 アドラー心理学は変えることができる心理学といっていい。
 本書ではこう記されている。「自分が変わるための心理学」だと。

 実は自己啓発の目的は自分をいかに変えるかにあるのだと思う。
 現状の自分に満足せず、あるいは本書で哲人に教えを乞う青年のように自分を嫌悪する、そういう人がどのようにすれば自分を変えることができるか、その手法が書店でひとつのコーナーを作り出すほどになっている。
 それらとアドラー心理学がどう違うのか。
 アドラー心理学は根本の考え方を説明しているのだと思う。ゆえにどのような人にも通用するし、どういう手法にもその根本さえ間違えなければ合致する。

 この本を読めば、その人なりに感銘を受ける言葉が見つかるにちがいない。
 ちなみに私ならこれを選ぶ。
 「世界とは、他の誰かが変えてくれるものではなく、ただ「わたし」によってしか変わりえない」。
  
(2016/05/28 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日司馬遼太郎さんが
  『梟の城』で直木賞を受賞した時
  産経新聞の記者であったと
  書きましたが
  どんな記者だったのか。
  当時の司馬遼太郎さんの姿を描いた
  本があります。
  それが『新聞記者司馬遼太郎』。
  2002年7月に書いた
  書評です。
  蔵出し書評です。
  2002年といえば
  14年前です。
  私もまだ40代だった。
  仕事に油がのっていた時期ですね。
  そこから
  随分遠いところに来たものです。
  司馬遼太郎さんも
  そんなことを思うことが
  あったのかしら。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  駄菓子屋でおまけしてもらうみたいに                   

 作家の履歴、評伝の類はできるだけ読まないようにしている。
 作家は書かれた作品でしか評価すべきではないし、作品を読まずに履歴評伝らを読むのは避けるべきだろう。
 司馬遼太郎という作家についても同じだ。もし司馬さんの評伝を読む時間があれば、ひとつでも多くの作品を読んだ方がいいに決まっている。

 その禁を今回破ったのは、この本が新聞記者時代の司馬さんに焦点を当てたものだったからだ。
 よく知られているように司馬さんは作家になる前は産経新聞の記者であった。
 その時代は司馬さんの青春後期ともいえる。そして、この青春後期にのちの司馬さんの思考の基礎となる、ある部分が造成されたと思う。

 司馬さんがどのようにしてその思想を形成していったのかを知ることは無駄ではないだろう。
 それに、この本には司馬さんの産経新聞入社以前の話や福田みどりさんへのプロポーズの挿話があったりして、駄菓子屋でおまけしてもらうみたいに、ちょっと得した気分になる。
  
(2002/07/14 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  司馬遼太郎さんの直木賞受賞作
  『梟の城』を紹介するのですが
  え、今更と言われてしまえば
  本当にその通りで
  今回が私にとっての初読になります。
  ずっと本箱にあって
  NHK大河ドラマの「真田丸」の
  秀吉が面白いので
  確か司馬遼太郎さんの『梟の城』は
  秀吉暗殺計画の話だったことを
  思い出して
  ページをめくることになりました。
  秀吉役を演じている小日向文世さんのおかげかもしれませんね。
  そして、
  正直面白かったですね。
  この作品に出てくる秀吉も
  小日向文世さんに演じてもらいたいものです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  仕事に倦きぬ人                   

 第42回直木賞受賞作。(1960年)。
 言わずとしれた司馬遼太郎の直木賞受賞作である。司馬はこの時36歳。
 受賞の報を聞いて、浴室で頭を洗いながらとめどもなく涙を流したと、「受賞のことば」に記している。その上で「負荷の重さ」を生涯楽しく負いつづけたいと決意の程を記した。
 この時の選評を読むとほとんどの選考委員が絶賛している。
 中でも吉川英治は「このスケールの大きな作家は今後かならず衆望にこたえて新しい領野をみせてくるに違いない。」とその後の 司馬の作家活動を見事に予言し、海音寺潮五郎は「この人のものには、人を酔わせるものがしばしばある」と司馬文学の特長を言い当てている。
 面白いのは小島政二郎の選評で「大きなウソをつく才能」に目を見張ったとある。
 何しろこの長編小説は豊臣秀吉の命を狙う若い伊賀忍者の物語で、その後司馬が史実にそった歴史小説を描いていくが、これは時代小説の範疇にはいるべき作品だ。
 この作品を読めば、司馬遼太郎が大衆小説を心得た作家だということがわかる。

 それはおそらく司馬が歴史小説を書くようになっても変わらない技量であった。
 『燃えよ剣』にしろ『竜馬がゆく』にしろ『坂の上の雲』にしろ、司馬作品の第一の魅力は読んで面白いことだ。
 まさに海音寺のいう「人を酔わせるもの」を司馬は天性のものとして持っていたのであろう。
 この作品が面白いのは、伊賀忍者の掟の中に生きる主人公の重蔵がまるで組織に縛られるサラリーマンのように見えてしまうことだ。
 この小説の発表誌が仏教系の新聞であったことを思うと、司馬は読者としてサラリーマンを想定していなかったであろう。
 「男である以上、(中略)仕事には倦きぬ」という主人公のセリフは司馬自身が持っていた思いであったかもしれない。

 司馬の年譜を読むと、この作品の執筆時期はまだ産経新聞の記者であった。記者として働きながらこれだけの重厚な作品を書き続けることは容易ではなかっただろう。
 この時の司馬こそ「仕事には倦きぬ」人であっただろうし、それは生涯続いていくことになる。
  
(2016/05/26 投稿)

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 今週の月曜の「わたしの菜園日記」で
 小玉スイカのことを
 書きました。
 親ヅルを摘心して
 子ヅルを育てていくと。
 NHKEテレの
 「やさいの時間」6月号(NHK出版・669円)に
 まさにぴったり
 「夏野菜の大スター! 小玉スイカ」の記事が
 載っているではないですか。

  

 実はこの号では
 サツマイモの特集なんですが
 私の目は
 小玉スイカにいきっぱなし。
 しかも、6月5日の日曜には
 放送もあるのです。
 ただ残念なのは
 放送では「地這い栽培」を取り上げるようで
 わたしの菜園では
 「立体栽培」なので少し違います。

 もっとも親ヅルの摘心
 子ヅルの整枝の方法は載っています。
 それにこれは肝心なことなのですが
 確実に実をつけさせるためには
 人工授粉を行うとあります。
 しかも、晴天の日の午前9時ごろまでに行うと
 あります。
 なんともデリケート。
 さらに収穫のタイミングがありますから
 授粉させた日付を
 記しておきなさいと。
 うーん、ここまできたら
 なんだか少子化対策のようなもの。
 しかもスイカの世界は厳しくて
 1本の子ヅルに複数の実がついたとしても
 形のいいものを1個残して
 あとは小さい時に切り取ってしまいなさいとある。
 厳しいなあ、スイカの世界。
 大器晩成型などないんですね。
 ダメな子ほどかわいいなんて
 言っていられない。
 この夏
 心を鬼にして
 優秀な子ども(スイカですが)だけを
 育てます。

 わたしの菜園では
 子ヅルを3本残します。
 つまり収穫は3本。
 そのうち、2本のツルは決めたのですが
 あと1本は思案中。
 でも、そろそろ決めないと
 成長に支障がでるかも。
 うーん、放送日まで
 待っていられない。
 しかも、スイカは過湿を嫌うのだとか。
 梅雨入りしたら
 どうしよう。

 私の心配は
 どんどん増すばかり。
 この夏は小玉スイカとともに
 眠られない夜を過ごしそう。

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プレゼント 書評こぼれ話

  毎週月曜のブログ記事は
  「わたしの菜園日記」と
  昨年の春から始めた菜園の活動を
  記事にしているが、
  友人たちからは面白いと好評だ。
  本のブログながら
  菜園の記事が面白いとは忸怩たる思いだが
  まあ書いている私も
  楽しんでいるから
  いいんですが。
  今日はそんな私にうってつけの本、
  伊藤礼さんの『ダダダダ菜園記』を
  紹介します。
  奇妙なタイトルですが
  そのことは書評で触れていますから
  そちらを。
  伊藤礼さんの作付野菜は
  私の菜園をほぼ同じなのですが
  クワイを育てているのです、伊藤礼さんは。
  それだけで
  うらやましくなりました。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  耕耘機が欲しい                   

 タイトルについて少し説明する。
 後段の「菜園記」はわかりやすい。そうか、この本は菜園のことが記されているのだと容易に推測がつく。
 問題は前段の「ダダダダ」である。なんだ、これはと誰もが思うにちがいない。菜園とこの「ダダダダ」はどういう関係があるのか。
 実はこれは耕耘機の発する音なのだ。
 つまり著者の菜園には菜園家なら誰もが夢見る耕耘機があるのだ。
 では、著者の菜園はどれぐらいの広さなのか、「猫の額」とあるが約13メートル×3メートル、39平方メートル、13坪の広さなのだ。うらやましい。
 昨年の春から私も菜園を始めたが、わずか3.3坪しかない。それに比べて、著者の菜園は4倍の広さがある。広い。これが「猫の額」ならば、私の菜園は「ノミの額」だ。
 これだけの広さであれば「ダダダダ」もありうる。うー、うらやましい。
 しかも、この菜園、著者の家の庭でもある。食堂から菜園の様子がうかがえるなんて、いうことはない。
 つまり、この本は素人の菜園家からみればなんとも贅沢な菜園記なのだ。

 著者は小説家伊藤整の息子で、すでに80歳を超えている。だから、13坪の菜園を耕し、畝をつくるとなれば極めて重労働だ。そこで、「ダダダダ」耕耘機の登場である。
 いわば、肉体的衰えが菜園家あこがれの耕耘機購入の理由である。だから、うらやむのはやめることにした。畑を耕すのは大変なのだ。
 80歳を超えて、それでもこうしてこれだけの畑を維持(できない時もあるが)する著者に拍手をおくるべきなのだ。

 それに同じ菜園家として、例えば落花生(この本では南京豆となっている)のように地中で生育する野菜について、「地上に引っ張り出すまで生育状況が不明というところが面白い」と感じる思いは同じだ。
 きっと菜園家の賛同を得ることだろう。
 ならば、誰にもこの本のような「菜園記」が書けるかというとそうはいかない。
 先の文章に続いて、それは「おみくじを引くようなもの」とある文章の面白さは著者だけのものだ。
 この本はその点でもうらやましいのだ。
  
(2016/05/24 投稿)

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 昨日の日曜日も暑かったですね。
 どうも気温が高めになっていて
 花の見頃も例年より早いようです。
 シランの花もやや見頃を過ぎています。

  20160520_112701_convert_20160522150807.jpg

 この花、関西人ならきっとこんな会話をすると思います。
 「この花、知ってる?」
 「知らん(シラン)」

    雨を見て眉重くゐる紫蘭かな   岡本 眸

 菜園の野菜たちも
 花をつけ始めました。
 まずは、キュウリ

  CIMG1318_convert_20160522150846.jpg
  
 これは、ミニトマト

  CIMG1321_convert_20160522151359.jpg

 どちらも黄色い花です。
 この日(5月22日)は大きくなってきた
 小玉スイカの手入れ。
 これは今年初めて栽培している野菜。
 まず親ヅルの先端をチョキンと切り取ってしまいます。
 えー、そこに花が咲いているのに。
 結構無情です。
 親はなくても子は育つっていいますよね。
 小玉スイカはその子ヅルを
 育てるようです。
 ネットをはってそこに子ヅルを誘引します。
 一つの苗で3個の小玉スイカの収穫を目指します。
 写真は
 この日の作業を終えた
 小玉スイカの畝です。

  CIMG1329_convert_20160522151132.jpg
  
 隣にトウモロコシが見えます。

 そのトウモロコシも間引きしました。
 一つの種穴に3つの種を蒔いて
 最後は1本にします。
 これからぐんぐん育ってくれるといいな。

 先々週蒔いた
 オクラエダマメも芽を出しました。
 コチラがオクラ

  CIMG1328_convert_20160522151045.jpg

 そして、こっちがエダマメ

  CIMG1326_convert_20160522151005.jpg

 夏野菜はワキ芽とり(芽がきといいます)とか
 支柱立てとかいろいろと作業があります。
 きちんと世話をすれば
 いい野菜が収穫できます。
 マメに彼らの顔を見に行きます。
 自分でもこんなにマメだったかと
 驚くくらい
 野菜づくりを満喫しています。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  二宮由紀子さん文、あべ弘士さん絵の
  『どうぶつえんはおおさわぎ』を
  紹介します。
  ところで、日本に動物園はどれくらいあるかというと
  91施設。
  すごいですね。
  一方の水族館は95施設。
  水族館の方が多いのは意外な感じがします。
  そのなかで
  行ってよかったところはどこかというと
  2013年というちょっと古いデータですが
  動物園の第1位が
  和歌山県のアドベンチャーワールド
  水族館は
  沖縄の沖縄美ら海水族館
  沖縄美ら海水族館は先日行きましたが、
  確かにもう一度行ってみたいですね。
  もっとじっくり見たい。
  動物園、水族館は
  子どもだけでなく
  今や大人も楽しむ施設なんです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  すいぞくかんも出てきます                   

 動物絵本といえば、あべ弘士さん。
 さすがに旭山動物園の飼育係をされていた経験から、動物たちのさりげない表情までもが生き生きと描かれている。
 動物園を舞台にしたこの絵本では、あべ弘士さんが絵に徹し、文は二宮由紀子さんが書いている。
 二宮さんもあべさんというパートナーに心強かったのではないでしょうか。

 物語は奇想天外だ。
 夏の朝、動物園の園長室にゾウの飼育係が大慌てで飛び込んでくる。
 ゾウの「テンテン」が何者かに盗まれたという。
 最初、この「テンテン」が何のことなのかわからなかった。よく読むと「ゾ」の字の右肩にある「テンテン」のことで、これがなくなったから、「ゾウ」は「ソウ」になってしまったというのだ。
 びっくりした園長と飼育係は動物園を見まわることにするが、次第に二人の会話からも「テンテン」が消えていく。
 つまり、いつの間にか「どうぶつえん」は「とうふつえん」になってしまうのだ。
 この園長、「とうふつえん」なら豆腐を売るしかないと俄然張り切りだすのだから面白い。
 一方、飼育係はゾウ以外の動物を確認して歩く。
 キリンは大丈夫。トラもライオンも問題ない。ただゴリラは「コリラ」になっていた。
 そのうち、「テンテン」だけでなく「マル」まで消え始めることに。
 つまり「パンダ」は「ハンタ」になってしまっているのだ。
 まるで井上ひさしさんの好きそうな話にどんどん展開していく。

 でも、一体誰が犯人なのだ?
 動物園(今では「とうふつえん」だが)の隣の水族館の看板を見ると、「ずいぞくがん」になっているではないか。
 動物園でなくなった「テンテン」や「マル」が水族館に行ってしまっているのだ。

 ここからは水族館の様子が描かれます。
 あべさんは魚やペンギンを描いても、うまい。
 そして、飼育係は動物園から出ていった「テンテン」や「マル」を水族館で集めだして一件落着。

 言葉遊びや動物たちのしぐさや園長たちの人間たちの馬鹿げた表情など、楽しみ満載の絵本である。
  
(2016/05/22 投稿)

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 沖縄紀行も三日目、最後の行程である。
 訪ねたのは
 那覇から南下する糸満市にある
 「ひめゆりの塔」。
 
 CIMG1309_convert_20160520074009.jpg
 
 沖縄戦の悲劇の代名詞のように
 語られる地である。
 昭和20年(1945年)3月、
 沖縄師範学校女子部と沖縄県立第一高等女学校の女子生徒及び職員総計240名が
 看護要員として従軍した。
 戦火の拡大に伴い、
 少女たちは軍隊と共に南下していく。
 そして、6月、少女たちは突然解散を命じられる。
 解散といっても
 まわりにはすでにアメリカ軍の砲火が充満していた。
 行くあてもない少女たちは
 地下壕の中で若い命を散らしていく。
 生徒123名、職員13名が犠牲となった。

 「ひめゆりの塔」が有名になったのは
 映画の影響が大きい。
 1953年に今井正監督で映画化されている。
 主演は香川京子さん。

  

 そのあとも今井正監督で1982年にリメイクされている。
 そして、1995年には神山征二郎監督で再度映画化。
 この時の主演が沢口靖子さん。
 そういえば
 吉永小百合さん主演で
 1962年にも映画化がされていた。
 この時の監督は桝田利雄
 「あゝひめゆりの塔」である。
 沖縄にはひめゆり部隊と同様の
 若い学徒の悲劇がその他にもたくさんある。
 その中でもこの「ひめゆりの塔」が
 多くの人の記憶に残っているのは
 これらの映画の影響ではないだろうか。

    梅雨に入るひめゆりの塔濡れ献花     夏の雨

  CIMG1311_convert_20160520074105.jpg

  写真は
  「ひめゆりの塔」そばに咲いていた
  ベンガルヤハズカズラという花。

 ひめゆりの女生徒の悲劇のあとほどなく
 終戦を迎える。
 終戦の決断がもう少し早ければ
 少女たちの悲劇がおこらなかったかもしれない。
 しかし、終戦後も
 沖縄はアメリカの基地を抱え、
 そのことで悲惨な事故や事件があとをたたない。
 先日も軍属のアメリカ人によって女性が殺害される
 痛ましい事件が起きた。
 沖縄は本土にはない
 南の国特有の海と空をもち
 多くの観光客を受け入れている。
 沖縄には歓喜と悲劇が
 いつも同居している。
 それはずっと変わらずにある。
 観光客である私たちも同じだ。
 どんなに楽しい旅の記憶があっても
 その中に「ひめゆりの塔」の代表される戦争の悲劇や
 広大なアメリカ軍の基地の実態が
 棘のように突き刺さる。
 「ひめゆりの塔」のそばで
 土産店の派手な看板が軒をつらねる光景こそ
 沖縄を象徴しているように
 思えた。

 沖縄旅行
 単純に「楽しかった」といえない
 つらさを残す。
 司馬遼太郎さんの「街道をゆく」では
 沖縄紀行のあと石垣島や与那国島といった先島に
 司馬さんは足を向けたが
 私の沖縄紀行は
 「ひめゆりの塔」を最後におわる。

  CIMG1313_convert_20160520074140.jpg

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 沖縄で行きたいところが
 いくつかあった。
 そのひとつが昨日書いた首里城
 そして、もうひとつが
 沖縄美ら(ちゅら)海水族館
 NHKの朝の連続テレビ小説「ちゅらさん」は
 沖縄出身の少女の物語だったが
 「ちゅら」というのは沖縄の方言で「美しい」という意味。
 言葉の響きそのままの
 素敵な言葉だ。

 その美ら(ちゅら)海水族館は日本一の水族館だ。
 圧巻はなんといっても
 1階から2階へと広がる巨大な水槽。

  CIMG1260_convert_20160519205238.jpg

 その中を一番人気のジンベエザメやサメやエイが
 悠々と泳いでいる。

  CIMG1264_convert_20160519205323.jpg

 この日、
 沖縄は例年より遅い梅雨にはいって
 時折雨が降るあいにくの天気だったが
 水族館の中は
 大勢の観光客でにぎわっていた。
 水は人を誘い込む
 なんともいえない力を持っている。
 そこに沖縄の魅力があることは間違いない。
 それは海の色にもいえる。
 この時期に海水浴を楽しむ人も多く見かけたが
 泳げない私でも
 つい身を投げ出したい気分にさせられる。
 下の写真は
 景勝地として名高い万座毛(まんざもう)

  CIMG1209_convert_20160519205145.jpg

 行きたいところのもうひとつは
 那覇の中心地国際通りにある
 牧志公設市場の中にある
 「市場の古本屋 ウララ」。
 ここは『本屋になりたい』の著者宇田智子さんのお店。
 国際通りに着いたのが
 夜の7時を回っていて
 あせりながらウララを探したのだが見つからず、
 近くのお店のお兄ちゃんに
 「古本屋さんありましたよね」とたずねると、
 「ほら、あそこ」と教えてもらって
 ようやく見つけました。
 女性が一人
 店じまいをしていました。
 宇田智子さん?
 さすがにそううまくはいかず
 居たのは別の女性でした。
 写真いいですかと
 撮った写真がこれ。

  CIMG1302_convert_20160519205411.jpg

 小さいお店でしかも半分店じまいしていたのですが
 それでも撮影を許可してくれた
 女性に感謝。
 宇田智子さんは所用でいませんでしたが
 お店をなんとか見つけられてよかった。

 沖縄の行きたいところに
 いっぱい行けて
 まだまだにぎわう国際通りを歩きながら
 満足していました。
 明日は
 最後のいきたいところ、
 「ひめゆりの塔」です。

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 昭和47年(1972年)5月15日
 それまでアメリカの統治下にあった沖縄が
 日本に返還された。
 終戦から実に27年後のことだ。
 それから44年後の5月15日、
 私は初めて沖縄に行った。
 日本復帰の日に
 沖縄を訪れたのはまったくの偶然。
 ただ沖縄には
 一度は行きたかった。
 観光地としての沖縄。
 終戦間近に戦場となった沖縄。
 基地問題に揺れる沖縄。
 沖縄は
 私の中でさまざまな表情をもつところ。
 今日から三日間
 そんな沖縄紀行を書こうと思う。

 司馬遼太郎さんは『街道をゆく』6巻めの
 「沖縄・先島への道」の中の一節にこう書いている。

    沖縄について物を考えるとき、
    つねにこのことに至ると、
    自分が生きていることが罪であるような物憂さが襲ってきて、
    頭のなかが白っぽくなってしまい、つねにそうだが、
    今もどうにもならない。

 司馬遼太郎さんが「このこと」と記したのは
 沖縄での最終戦で「住民のほとんどが家をうしない、約十五万の県民が死んだ」という
 事実のこと。
 司馬さんがこの時の旅に出たのは1974年。
 本土復帰の2年後のことです。
 この旅で司馬さんも首里城を訪れている。
 しかし、私たちが今目にする復元された首里城
 司馬さんは目にしていない。

    私は戦前の首里の旧王府の美しさを知ることなく、
    沖縄に何度かきた。

 と、記している。
 私は首里城を見たかった。
 けれど、今の首里城がたどった歴史を
 ほとんど知らなかった。
 首里城は沖縄戦で日本軍の複郭陣地であったために
 ほとんど破壊されてしまう。
 戦後この地は琉球大学として機能するが
 1992年以降今の姿に復元されたという。
 このことを現地で案内していた女性から聞いた。
 今は多くの観光客を集める人気スポットである。
 司馬さんが復元された首里城を見たかどうかは
 知らない。

 私が訪れた5月15日も
 多くの観光客が首里城を訪れていた。

  CIMG1135_convert_20160518214943.jpg

  CIMG1148_convert_20160518215028.jpg

 この時期、例年であれば
 梅雨にはいっている沖縄だが
 今年は遅れていた。
 この日も沖縄は晴れて暑い夏空が広がっていた。
 もっとも次の日には梅雨入りすることになるのだが。
 2000年、「琉球王国のグスク及び関連遺産群」が世界遺産に登録されるが
 首里城は正しくは「首里城跡」として登録されている。
 復元された建物ははいっていない。

  CIMG1154_convert_20160518215122.jpg

 ちなみに「グスク」というのは城のことである。

 今回の旅で
 もう一カ所世界遺産に登録された
 今帰仁城跡(なきじんじょうあと)も見学したが
 風景的にはこちらの方が好きだ。

  CIMG1284_convert_20160518215323.jpg

 もちろん好みの問題だが。

 首里城を歩いて思うことは
 沖縄はやはり日本とは趣きが大いに違うということだ。
 この国を一個の国として
 大事にされなければならなかったのではないか。
 そんな気分のまま
 沖縄県北部の恩納村に向かった。
 アメリカの基地横を通って。

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プレゼント 書評こぼれ話

  何十年かぶりに
  太宰治の短編を読んでみようかと
  思ったのは
  昨日紹介した
  石川桂郎の『剃刀日記』を読んだせい。
  なかなか太宰治に戻れなかった
  私だが
  これでなんだか安心して
  太宰治のところに戻れるかもしれない
  気持ちになった。
  今回読んだのは
  晩年の短編を集めた『ヴィヨンの妻』。
  確か初めて太宰治の作品を読んだのも
  新潮文庫の『きりぎりす』だったと思う。
  あれはいくつの時だったのだろう。
  大学生になって
  初めて東京に出てきた最初の年、
  三鷹の禅林寺の桜桃忌に行ったことがある。
  その夜であったか、
  一人桜桃を齧りながら
  お酒を飲んだことも。
  まさに、きどりやがって、である。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  やっぱりいいかも、太宰                   

 太宰治の晩年の名作短編を収めた新潮文庫の奧付を見ると、昭和25年12月発行とある。
 太宰が山崎富栄と玉川上水で心中したのが昭和23年6月13日であるから、わずか2年あまりで文庫化されたということになる。
 以来、版を重ねて、私が手にしたものは平成21年10月で114刷とあるからすごいものだ。
 この文庫には表題作である「ヴィヨンの妻」のほか「親友交歓」「トカトントン」「父」「母」「おさん」「家庭の幸福」、そして太宰の忌日の名前の由来となった「桜桃」の8篇が収められている。
 こうして作品名を書いているだけで、甘酢っぱい気分になってしまう。
 何しろこれらの作品を読むのは何十年ぶりのことなのだから。

 ご多分にもれず青春期に太宰にはまった。新潮文庫に収められた作品の数々を読んだ。全集も買った。太宰の生涯を追った記録なども読んだ。
 しかし、気がつけば、太宰から遠く離れた時間を過ごしている。
 何かのきっかけがあった訳ではない。自然と太宰から離れていった。いつかまた戻ることがあるだろうと、全集を手離せないでいるが、その機会は訪れていない。
 38歳で亡くなった太宰の年齢をとっくに過ぎて、それでもこうして読み返してみると、桜桃を齧った時のような甘酸っぱい気分になるのだから、太宰という文学者の影響は大きい。

 晩年のこれらの短編をすっかり忘れていたわけではない。
 「父」のラスト、「義。義とは?」、「ヴィヨンの妻」の「椿屋のさっちゃん」、「桜桃」の「お乳とお乳のあいだに、・・・涙の谷」、そして同じ「桜桃」の「子供より親が大事、と思いたい」と次々と言葉が浮かんでくる。
 その一方で、こういう作品だったのかと今さらながらに感じ入ったものもある。
 それが「母」。
 「父」という作品が太宰の自身の家庭を描いた私小説めいた造りになっているからつい「母」もそうかと思ってしまうが、この短編はそうではない。宿屋での一夜、隣の部屋の男女の語らいに出てくる男の母の年齢。それにはっとする主人公。
 太宰ではないが、つい、「きどりやがって」と言いたくもなる名篇だ。
  
(2016/05/18 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  私のこのブログでは
  時々俳句を紹介していることは
  お気づきだと思います。
  今日紹介する『剃刀日記』の著者
  石川桂郎は俳人で
  このブログでも
  いくつかの句を紹介しています。
  調べると
  こんな句がありました。

    黒々とひとは雨具を桜桃忌    石川桂郎

  なるほど、石川桂郎の作品が
  太宰治に近いのは
  石川桂郎自身が太宰治のファンだったんでしょうね。
  多分この作品集自体が
  あまり知られていないでしょうが
  予想以上によかった。
  読んでみるものです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  一読をすすめたい一冊                   

 本との出合いはさまざまだ。
 書店の店頭であったり図書館の棚であったり新聞の書評であったり友人に薦められたリ。
 この本は川口則弘氏の『ワタクシ、直木賞のオタクです』という本の中に書かれていた。直木賞を受賞できなかった名作のくくりだった。
 まったく知らなかった。
 そもそも石川桂郎なんていう作家のことを知っている人も少ないのではないか。

 石川桂郎は石田波郷に師事した俳人である。
 「三寒の四温を待てる机かな」とか「裏がへる亀思ふべし鳴けるなり」といった句がある。
 歳時記を読んでいると時々その名前を目にする。
 石川は1909年8月生まれ。
 東京三田の理髪店の息子で、自身その店を継ぐことになる。
 この『剃刀日記』はその理髪店での時代とのちに廃業した思いなどをエッセイ風に綴った短編集である。
 直木賞の候補になったのは1955年の第32回の時。『妻の温泉』という作品だった。
 候補にあがったもののほとんどの選考委員が賛成しなかったそうだ。ちなみにこの時の受賞は戸川幸夫と梅崎春生である。
 残念ながら、候補となったこの作品はこの本には収録されていない。
 ところが、石川のこの作品集は実に数奇というか何かの拍子に陽の目を見るようで、これまでにも度々文庫本になったりしている。
 石川は1975年11月に亡くなっている。

 この作品集の「序」を横光利一が記している。
 横光は石川の作品を「汚れを知らぬ簡素な心の放つ匂い」と称賛している。
 この作品集では「蝶」とか「炭」「指輪」といったところが有名らしい。私は「花輪」という作品がよかった。
 いやどの作品がどうこうというより、読み進むうちにはまりこんでしまったという方が正しい。
 どちらかといえば清貧の生活を描きつつ、それでもどっこい生きている市井の息づかいが感じられる。
 この本の解説を書いた七北数人氏は太宰治に通じるものを指摘しているが、なるほどと納得した。太宰というより昭和前半の時代のような気もする。

 ここには現代風な派手さもないが、強い生命力を感じる。
 一読をすすめたい。
  
(2016/05/17 投稿)

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 パソコンの漢字変換が
 ありがたいと感じるのは
 薔薇と書きたい時。
 これを手書きで書くのは至難の業です。
 その薔薇、今が盛りです。

  20160513_164928_convert_20160513175320.jpg

     薔薇の園引き返さねば出口なし     津田 清子

 今年は気温が高めですから
 薔薇園に行こうかと計画している人は
 早めの方はいいかもしれませんね。

 わたしの菜園も
 すっかり夏の風景に変わりました。

  CIMG1132_convert_20160513175605.jpg

 誤解があってはいけないので
 大急ぎで書いておきますが
 上の写真は
 私が借りている菜園全体で
 私が借りているのは
 ほんのひとつ。
 3.3坪の区画です。
 猫の額のような区画で
 4つの畝をつくっています。

 1番めの畝には
 トウモロコシ小玉スイカ
 2番めの畝には
 キュウリインゲン、それにニンジン
 3番めの畝には
 夏野菜3兄弟、
 ミニトマトナスピーマン

  CIMG1131_convert_20160513175532.jpg

 写真は
 3番畝の夏野菜3兄弟。
 彼らもすくすく成長しています。

 そして4番めの畝。
 5月13日にこの4番畝の植え付けをしてきました。
 菜園の計画では
 ここにエダマエ6つとオクラ4つを植えるのですが
 わたしの菜園では
 先日収穫したように
 ウスイエンドウを育てていて
 エダマエを育てるとなると
 連作障害となってしまいます。
 連作障害というのは
 続けて同じ科の野菜を育てると
 野菜の生育が悪くなるというもの。
 困った。

 そこで、
 タマネギのあとにエダマエを4つ。
 そのうち、2つは
 ダダチャマメにしました。

  CIMG1126_convert_20160513175419.jpg

 ウスイエンドウのあとにオクラを2つ。
 昨年うまく育たなかったので
 今回は2つで丁寧に育てるつもり。
 そして、残った一角で
 中玉トマトにチャレンジすることにしました。

  CIMG1129_convert_20160513175455.jpg

 この苗は
 自分で購入。
 トマトは昨年大玉を栽培して
 それほど採れなかったので
 今年は中玉にして
 リベンジ。

 さあ、これで
 私の菜園も
 夏野菜の植え付けが完了。
 どんなふうに育ってくれるでしょうか。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  はやしますみさんの『たんぼレストラン』という
  絵本を紹介します。
  書評の冒頭で
  田と畑の違いとか面積比、減少の原因とか
  書きましたが、
  こういうことは農業検定3級のテキストにも
  載っていますし、
  試験にも出ますよ。
  今思い出したのですが
  農業検定は菜園家だけの検定ではないので
  稲の栽培方法なんかも
  試験範囲なんですね。
  そりゃ農業検定だから
  稲を外す訳にはいかないですものね。
  私が子供の頃は
  たんぼ、たんぼと言っていましたから
  稲作農家でもあったわけです。
  その口ぐせが抜けきれないから、
  書評の冒頭のような
  恥ずかしい思いもするわけです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  稲作文化の日本ならでは                   

 菜園で「うちの田んぼは・・・」なんて言って、冷たい視線をあびたことがある。
 田(田んぼ)は基本的には稲を栽培するところ、畑は野菜などを栽培するところとなっているので、菜園は畑と言うしかない。
 ちなみに日本の場合、田と畑の面積比は、平成20年の調査では、田54.4%、畑45.6%となっている。
 やはり日本は稲作文化なのだ。
 全国ベースでは田畑の合計は462万8,000haだという。けれど、宅地等への転用、耕作放棄等のかい廃などで減少傾向にあることはいうまでもない。

 この絵本はタイトルにある通り、田(たんぼ)の話だ。
 5月の今の季節なら田(たんぼ)には水がはられていることだろう。早い処では田植えが始まっているかもしれない。
 田(たんぼ)には様々な生き物がいる。
 農薬の影響でその姿をあまり見なくなったものたちもいるが、この絵本ではまだまだいっぱいいる。
 表紙の見返しにその生きものたちが描かれている。
 トノサマガエル、クサガメ、アメリカザリガニ、ゲンゴロウ、ミジンコ、イトトンボ・・・。
 最近ではなかなかお目にかかれない。

 もうすぐ春の田(たんぼ)。
 土の中ではカエルたちがまだ冬眠している。
 彼らは突然の大きな音で目を覚ます。「ざくり」。この音は何だ?
 農家さんが田(たんぼ)の耕作を始めた音。耕運機の爪がカエルたちのそばまで突き刺さっていく。
 土の中から虫たちがはい出て、鳥たちがそれをついばむ。
 「たんぼレストラン」の開店だ。

 そして、田(たんぼ)に水がはられる。
 水の中にもたくさん生き物がいて、ここでもカエルやつばめがやってきて、「いただきまーす」と大きな口を開けている。
 田植えが終われば、ザリガニもやってきて、またパクリ。
 空からは鳥がお客さまとしてやってくる。
 裏表紙の見返しには田(たんぼ)にやってくる動物や鳥たちが描かれている。
 モズ、モグラ、カルガモ、アカネズミ、ニホンザル・・・。

 稲が実ると、スズメたちがやってくる。
 田(たんぼ)は年中おお忙しいのレストランだったのです。
  
(2016/05/15 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  心理学者アルフレッド・アドラーのことを
  初めて知ったのは
  NHKEテレの「100分 de 名著」だったということは
  前にも書いたことがあります。
  その時の講師は
  今日紹介する『アドラー心理学入門』の著者
  岸見一郎さん。
  アドラーのことを番組で知って
  アドラーのことをもっと知るためには
  どの本がいいかと探して
  薄くて、入門書で
  しかも岸見一郎さんが著者ということで
  この本に決めました。
  書評にも書きましたが
  アドラー心理学では
  教育の問題は重要で
  自分ではこの部分は気分がのってきませんでした。
  最後でようやく
  アドラーはいいじゃないという感じに
  なりましたが。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  最初に出た時に売れたのだろうか                   

 心理学者アルフレッド・アドラーの人気がとまらない。
 火をつけたのは、岸見一郎と古賀史健による『嫌われる勇気』。
 2013年12月に出版され、2016年についに100万部を突破した驚きの一冊だ。
 岸見一郎は哲学の先生でもあるとともにアドラー心理学の研究者でもあり、『嫌われる勇気』に先行する形で、本書を1999年9月に刊行している。
 この本が出版されたあと、アドラーがブームといえるところまで沸騰したかはよくわからないが、この本の奥付を見ると、2016年3月に28版となっている。
 きっとこの本も『嫌われる勇気』以降、掘り起こされたのではないかと思う。

 実際この本を読んでも入門書とはいえ難解である。
 この本でアドラーの人気が高まったとは思えない。
 『嫌われる勇気』が読まれたのは、その副題が決め手になったのではないか。すなわち、「自己啓発の源流「アドラー」の教え」である。
 この「自己啓発」という言葉が時代にマッチしたのではないか。
 しかし、アドラーは教育者としての側面も大きく、この本でも第2章で「アドラー心理学の育児と教育」が解説されている。
 「自己啓発」に関係する章は最後の5章「人生の意味を求めて」になるだろう。
 つまり、この本でいえば、5章までたどり着き前に、アドラーに挫折してしまう恐れがある。
 アドラー心理学が教育の側面を持っていることを考えれば、入門書としてはこちらの方が正しいのであろう。
 ちなみに『嫌われる勇気』の続編『幸せになる勇気』は教育の面が前面に出ている。

 もちろん、アドラー心理学の「自己啓発」の部分だけ読むことに問題はない。
 第5章にこうある。
 「他の人からどう思われているかを気にすると非常に不自由な生き方を強いられることになります」、すなわち「他人を気にしない」こと。
 ここだけ読むと、まさに今のアドラー人気がよくわかる。
 それではアドラーの全体がわからないと非難されるかもしれないが、そう言われても気にしないこと。アドラーはそう教えている。
 だから、この本はまず第5章から読んでもいいし、それで本を閉じても構わないのだ。
  
(2016/05/14 投稿)

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  昨日葉室麟さんの
  新しい作品『辛夷の花』を
  紹介しましたが
  葉室麟さんが直木賞を受賞した
  『蜩ノ記』の映画作品を
  先日ようやく観ることができました。

  

  映画は2014年の公開作品。
  監督は黒澤明監督の最後の弟子ともいわれる
  小泉堯史監督。
  主人公の戸田秋谷を役所広司さん、
  その戸田にひかれていく青年武士を岡田准一さんが
  演じています。
  ロケ先は岩手県遠野らしいのですが
  本当にきれいな風景にうっとりしました。
  音楽は加古隆さん。
  これもいい。
  葉室麟さんの作品世界が
  見事に映像化されていました。
  でも、観たいと思った映画は
  映画館で観ないといけませんね。
  そこで、今日は
  2012年に書いた、再録書評です。
  また読み直したいものです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  武士(もののふ)の心                   

 第146回直木賞受賞作(2012年)。
 あれはバブル経済がはじけた頃だったでしょうか、企業再生の弁護士から「自動車産業が日本経済の牽引者になるとは思わなかった」ということを聞いたことがあります。それによく似た感想ですが、時代小説がここまで日本文学を席巻するとは私は思いませんでした。
 ちょんまげ、刀、侍、そのような道具立てはいずれ廃れていくとみていました。
 何しろ着物を着るという風俗さえ今ではほとんど見かけなくなっています。そういう若い世代にとって時代小説とは時代錯誤も甚だしい文学になると思っていたのです。ところが意外にも、時代小説は今大層な人気を誇るジャンルとなっています。
 直木賞でも定期的に時代小説の新人が受賞します。やはり日本人の血が時代小説を求めるのでしょうか、それとも現代の日本があまりにもぎすぎすしているのでしょうか。
 少なくとも時代小説に人間の魅力を、そしてそれはもしかすると日本人の美点ともいえるかもしれませんが、そういうものを21世紀に生きる私たちは求めている証しのような気さえします。

 葉室麟の直木賞受賞作となったこの作品は、羽根藩という架空の藩を舞台に藩の家譜(藩の歴史書)の作成を任じられた戸田秋谷という人物の生きざまを描いた時代小説です。
 秋谷という人物はかつて評判のいい郡奉行でその後江戸表の中老格用人にものぼりつめた、藩では優秀な逸材でした。ところが、江戸表でのある事件をきっかけにして今は蟄居の身、しかも家譜完成後には切腹を逃れられません。秋谷が起こした事件には何やら陰謀の影がちらつきます。
 そんな秋谷の動向をさぐるべく、庄三郎という若い武士が彼の家に配されます。しかし、その庄三郎は秋谷の振る舞いにいつしか感化されていきます。

 選考委員の一人阿刀田高はこの作品を「姿のよい作品」と評しました。
 時代小説には「腕ききの船頭の操る舟に乗るときみたいに、読者はゆったりと身を委ねて小説を読む楽しみに没頭できる」ものがいいと阿刀田はいいます。現代の時代小説のブームは、読者を心地よくさせるそういう腕ききの船頭のような書き手が現代文学で少なくなったということでもあります。
 この作品における葉室麟の書き手としての姿は、物語の主人公秋谷のように凛としています。
 それこそが「武士(もののふ)の心」というものかと思います。
 重厚な気品のある書き手が時代小説のジャンルにまた誕生したことを喜びたいと思います。
  
(2012/07/07 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  葉室麟さんの新しい作品
  『辛夷の花』を紹介します。
  辛夷、こぶしは春に咲く白い花です。
  相変わらず
  葉室麟さんの筆は冴えわたっています。
  書評にも書きましたが
  涙がこぼれてきそうで
  困りました。
  本を読んでいて
  思わず笑ってしまうというのも
  きっと傍から見ていて変なものですが
  泣いているのも
  なんとも恥ずかしいものです。
  書評で紹介できませんでしたが
  こんな素敵なセリフがありました。

    生きていくうえでの苦難は、
    ともに生きていくひとを知るためのもの

  この物語でいえば
  志桜里と半五郎の苦難も
  互いの人を知るためのもの。
  いい作品です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  愛する人のため                   

 庭に植えられた辛夷の木。その蕾を見つめる女人志桜里(しおり)。彼女に「辛夷の花がお好きですか」と声をかける隣に住む半五郎。
 美しい春間近の光景から物語は始まる。
 婚家から不妊ということで離縁された志桜里と何故か抜き身ができないよう紐で結んだ刀をさす半五郎。物語の中心人物の訳がありそうな事情が、この最初の場面で語られていく。
 舞台は九州豊前の小竹藩。ここでは由緒ある三つの家老一族が藩の運営を牛耳っている。
 その体制に藩主頼近が否を唱え、志桜里の父を自身の側近くに抜擢していく。そして、半五郎もまた藩主の覚えめざましく、となれば半五郎が志桜里の家の隣に越してきたのも何やら意味を持ってくる。

 半五郎の刀の紐には過去のつらい事情が絡んでいる。以後、彼は刀を抜くことはない。
 一方、志桜里は離縁されたとはいえ決してうつむく女人ではない。三人の妹と成人が近い弟のため、自身のつらさを封印している。
 そんな二人は次第に惹かれあっていくのだが、互いに自身の心情には頑固で、寄り添うというまでには至らない。
 このあたりの男女の心情は、葉室麟の得意とするところ。読者としては歯ぎしりしたい思いだが、その思いがあるからこそ、後半のクライマックスが生きてくる。

 不覚にも涙が出そうになった。
 大団円ではない。まだ終わりが見えてこない、これから大きな山を迎える場面だった。
 三家老の悪行極まり、志桜里の父の命が狙われる、しかも、志桜里たち家族もまた容赦なく惨殺される可能性もある。
 その時、半五郎はついに刀に結んだ紐を切る。
 正義のためでもあるだろう、しかし、それ以上に志桜里を助けたいという思いが強い。
 志桜里の家で戦いの準備を指示する半五郎。
 その姿を追っているうちに、涙がふっとわいてきた。
 人は愛するもののために自身の命すら返りみることなく、動くことができるのだ。
 決して言葉にはされないが、行動がそのものの心情を明らかにしていく。
 物語はここから一気呵成に進んでいくのだが、ここでは書くのを控えたい。
 最後も納得の美しい終わり方ということだけ記しておく。
  
(2016/05/12 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  この春から始まったドラマで
  TBSの火曜10時からの
  「重版出来!」を
  楽しく見ています。
  「出来」と書いて
  「しゅったい」と読みます。
  出版業界の言葉のようです。
  これは松田奈緒子さんの漫画が原作のドラマ。
  残念ながら
  原作の漫画は読んでいないのですが
  そのうちに読みたいものだと
  思っています。
  このドラマでもそうですが
  漫画から教えられることって
  たくさんあります。
  そんなことを
  まとめたのが
  今日紹介する『マンガがあるじゃないか』。
  そう人生にはいろいろ悩みがあるでしょうが
  マンガがあります。
  小説もあります。
  映画もあります。
  だから、へこたれるんじゃないよ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  それぞれのマンガ                   

 歳月のたとえとして、橋の下を水が流れるというのを、開高健のエッセイで知ったのは青春期の只中であった。
 その開高や大江健三郎、安部公房、倉橋由美子といった作家たちの作品から教わったことは多いけれど、それと同じくらいのことを漫画や映画から学んできたように思う。
 「わたしをつくったこの一冊」と副題のついたこの本で、著名人29人が語る一冊はすべて漫画である。
 脚本家木皿泉、芸人光浦靖子、漫画家ヤマザキマリ、作家中野京子、フランス文学者中条省平といった人たちが漫画から教えられたことごとをまとめた一冊。
 漫画といって、馬鹿にする人も少ない現代ではさもありなんという本だが、私が子どもの頃はまだ漫画なんか読んでいると馬鹿になるといわれた時代。
 ようやくにして、漫画もまっとうに評価されるようになった。

 漫画(この本ではマンガという表記)といえば、「漫画の神様」と呼ばれた手塚治虫は今でも多くのファンがいる。
 この本でも手塚作品を「わたしをつくった一冊」にあげる人が何人かいる。
 中野京子は「火の鳥」を、落語家の春風亭一之輔は「アドルフに告ぐ」をあげている。
 複数の人にあげられているのは手塚ぐらいだから、やはり手塚漫画の影響は大きいといえるし、それとは逆に人それぞれ固有のお気に入りがあるものだと、漫画の世界の広がりに圧倒される。

 おとなになって漫画と縁遠くなったこともあって、最近の人気漫画事情に疎いが、その人なりの生きた時代があるのだから、それは仕方のないことだ。
 もし、私だったら永島慎二の漫画を選ぶだろうにと思ふのは勝手で、きっと振り返れば、誰にも「わたしをつくった」漫画の一冊はあげられるのではないだろうか。
 特に現代と違って漫画が勉強の仇のように思われた時代に思春期青春期を迎えていた者たちにとって、密かに漫画は自分の糧になるだけの要素は持っていただろう。

 この本は「14歳の世渡り術」シリーズの一冊として編まれたもので、子どもたちにはこれだけは言いたい。
 漫画から教わることは、たくさんあるんだと。
  
(2016/05/11 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介するのは
  窪美澄さんの『アカガミ』。
  書評の冒頭で
  こどもの日に発表された
  子供人口の話を書きましたが
  どんどん少なくなっていく
  次世代の人たちに
  私たちシニア世代は
  何を残してあがられるのか
  心配になってきます。
  高齢者の負担だけなく
  次世代の子どもたちに
  生きることの意味さえ
  残せるか不安になってくる数字です。
  そういう点でいえば
  この作品のテーマは
  あまりにも重いものがあります。
  きっと国とか政府に任せるだけでなく
  みんなで
  考えないといけない問題だと
  思います。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  この小説を誰も笑えない                   

 少子化がとまらない。
 先日発表された平成27年4月1日現在の子供の人口推計は35連続の低下となった。ちなみに子供というのは15歳までを指す。
 このまま減少が続けば、そんなに遠い時期でない将来、子供の数は1千万人を切るだろう。
 窪美澄のこの長編小説は2030年の近未来の日本が舞台だ。今から14年後の未来。
 その時代、10代から20代の自殺者数は10万人を突破し、40代以上の人間の割合が飛躍的に増え、「生きている実感を持っている」のは中年から上の世代だけということになっている。
 小説家の描いた絵空事といえないのが、子供人口の減少に垣間見える。

 窪はそんな時代にひとつの仮設をたてる。
 それは、結婚することも子供を産むこともなく、「恋愛」にも拒否反応を示す若者が急増するということだ。
 そんな中、国は少子化対策として「アカガミ」というシステムを生み出す。
 選ばれた若い男女が「アカガミ」により招集され、一組のペアが施設の中で共同生活をし、やがて交わり、子供を為すというシステム。
 選ばれた者たちは生活の保障を受け、それは身内の生活にまで及ぶ。

 ミツキとサツキは「アカガミ」によって招集され、共同生活を始める。
 恋愛経験も、ましては性交渉もない二人はやがて互いの心情に共鳴していく。ハグ、口づけ、そして性交渉。閉ざされた空間の中で、二人は次第に人間が本来持っていた子孫存続の過程を歩き始める。
 二人の感情は現代の読者は想像するしかない。けれど、それほどに難しいものではないだろう。すでに草食系男子といった風潮はその先端なのかもしれない。

 やがて、ミツキは妊娠する。
 生を得たペアは施設を出て、別のところへと移される。清潔な環境は生まれてくる子供のために与えられたものだ。
 しかし、そこで生まれた子供は国の管理下に置かれるようでもある。
 ミツキもサツキも自分たちがどうなっていくのか知るよしもない。
 そして、ミツキに出産の日が近づいてくる。

 ラストはここでは書かないが、こういう時代が来ないと誰もいえないだけ、恐ろしくもある作品に仕上がっている。
  
(2016/05/10 投稿)

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 大型連休が終わって
 今日から仕事という人も
 いるかと思います。
 5月4日みどりの日だったのですが、
 もうひとつ記念日があったのを
 知らない人も多いと思います。
 それは、ウスイエンドウの日
 和歌山県農業協同組合連合会が制定したそうです。
 そんな記念日があるなんて
 知らなかったので
 びっくりしました。
 わたしの菜園のウスイエンドウ
 5月8日(日)に
 いよいよ最後の収穫。
 採れました、採れました。
 大収穫です。

  CIMG1125_convert_20160508201454.jpg

 上の写真は
 莢から取り出した豆たちです。

 この日はタマネギも最後の収穫をして
 冬から春にかけての野菜も
 これでおしまい。
 タマネギなんかは
 一時はどうなるかと思いましたが
 結構いい感じで
 終えることができました。

 この日は
 成長著しいニンジンの間引きもしました。

  CIMG1124_convert_20160508201404.jpg

 ニンジンのこの緑の葉も
 食べられるなんて知りませんでした。
 普段スーパーなんかでは
 葉っぱ付きのニンジン
 あまり見かけませんものね。
 この葉っぱ、
 かき揚げにして頂きました。
 おいしかった。
 これは
 まだ間引きのニンジン
 これからどんどん成長してくれることを
 楽しみにしています。

 インゲンも成長して
 間引きしました。
 種を4個植えたので
 2本ぐらいは間引きしないといけないのですが
 切るに切れない親心、
 結局3本残して
 いよいよネットをかけました。

  CIMG1122_convert_20160508201320.jpg

 向かいのキュウリ
 順調に育っています。
 その横が
 間引き後のニンジンたちです。

 ここ何日間か
 東京でも(埼玉ですが)
 夏日が続いています。
 いよいよ夏野菜の本番。
 元気なツルが伸びてくれたら
 うれしいのですが。

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  今日は母の日

    母の日やそのありし日の裁ち鋏    菅 裸馬

  私の母は亡くなっていますから
  この俳句が心に染みます。
  母の日に贈り物できることは
  仕合せなことです。
  今日の絵本は
  母の日とまったく関係なく
  ナンセンス絵本、
  tupera tuperaさんの『パンダ銭湯』。
  子どもたちにも大人気の絵本です。
  パンダそのものが
  いつも子どもたちには
  人気ものですもの。
  お母さんに
  この絵本を読んであげる。
  そんな母の日があっても
  いいかもしれませんよ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  絵本の世界の木皿泉??                   

 ナンセンスという言葉を調べると、「意味がないこと、馬鹿げていること」と出てくる。
 この絵本はさしずめ「馬鹿げていること」に該当するのだろうが、非難の言葉ではなく、絶賛の言葉として使いたい。
 こんなことなど絶対ありえないのに、あるかもしれないと思えるほど、面白いのだ。
 こんなことの第一が、「パンダ以外の入店は、固くお断りしています」なんていう銭湯があるということ。絶対ないはずなのに、いやいや、もしかしたら世界のどこかにあるかもしれないと思わせる力が、この絵本にはある。
 そこでは「えいようまんてん 竹林牛乳」の「サササイダー」が売っていたり、銭湯にかかっているタイル画が富士山ではなく、パンダの故郷の中国奥地の水墨画だったりして、そんなことは絶対ないはずなのに、いやいや、もしかしてと思ってしまう可笑しさである。

 さらにパンダの白黒模様。あれが洋服のようにして脱衣できるなんて誰が考えるだろう。
 そんな馬鹿げたことは、いやいや、あるかもしれない。
 黒い服があると百歩譲っても、目のまわりの黒い模様はどうするんだとなるにちがいない。
 いやあ、あれはサングラスで、ともなれば、もう開いた口がふさがらない。
 サングラスの下にはちょっと鋭い目があるしたら、ないない、そんなこと絶対ない、なんていえるか。

 父と息子のパンダがこうしてお風呂にはいっていく。
 待てよ、耳の黒はそのままか、とつっこみたくなりますよ、絶対。
 でも、大丈夫。二人(二頭?)が頭を洗ったら、耳の黒も流されます。
 なになに、耳の黒は何だったの。その説明はちゃんと最後に出てきますから、大丈夫。

 こんなに楽しいナンセンス絵本にお目にかかるのは珍しい。
 作者はtupera tuperaとありますが、そもそもこの名前にして意味があるのかないのかわからない。
 実際は亀山達矢と中川敦子のユニット名らしい。
 だとしたら、絵本界の木皿泉かとつっこみたくなる。
 不思議な世界観が似ていなくもない。
   
(2016/05/08 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日
  外山滋比古さんの『知的生活習慣』の中の
  図書館の利用の記述を紹介しましたが
  図書館はもっと利用できるサービスを
  持っています。
  そのためには
  図書館のことをもっと知ることが
  大切です。
  今日はそんな人のために
  吉井潤さんの
  『知って得する図書館の楽しみかた』を
  紹介します。
  これまでにも図書館についての本は
  たくさん紹介してきましたが
  この本は今の図書館事情に
  一番詳しいかもしれません。
  図書館が苦手な人には
  オススメの一冊です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  図書館大好き!                   

 最近の公立図書館の進化ぶりは目の見張るものがある。
 私が利用している図書館でもついに電子書籍の貸し出しが始まった(とはいえ、そのコンテンツはまだ充実していないが)し、自動貸し出し機、LAN回線など当たり前のように設置されている。
 図書館が暗いイメージと思われたのはもう随分前の話だ。
 しかし、その一方で図書館は無料貸本屋の批判も強い程、図書館の利用は限定されている。その理由のひとつが図書館の楽しみ方があまり知られていないせいだともいえる。
 この本はそんな図書館利用者にもっと幅広い使用方法を教えてくれる、あるようでなかった一冊に出来上がっている。

 著者の吉井潤氏は『29歳で図書館長になって』という著作があるぐらいの若き図書館員である。
 この本でも第6章「図書館での出会い」でどのようなきっかけで図書館員となり、その後どういう風にその知識を深めていったかが記されている。
 この章から読み始めるのもいい。
 第1章の「図書館って、どうなってるの?」で図書館の基本的な知識を知ることができる。つまり、本を探す基本の知識である。
 図書館が苦手な人は本をどのように探していいかわからない人が多い。(もしかした、どんな本を探していいかわからないというもっと根本的な問題もあるのだが)。
 図書館の本には背表紙に日本十進分類法で分類された数字や記号がはいっている。これが本を探す手がかりとなる。この記号をたどれば、探している本にたどり着けるし、もしそれが出来なくとも司書の方にいえば教えてくれる。
 そういえば、最近の図書館員は皆親切だ。図書館員の対応で不満に感じたことはほとんどない。むしろ、利用者の方がマナーを解さない人が多いのではないかしらん。

 図書館が貸し出しだけではないのは、第2章「みんなで楽しむ図書館」や第4章「リゾートできる図書館」に詳しい。
 特に最近のサービス事情は4章に並んでいる。冒頭の電子書籍サービスもここに記されている。
 もちろんすべての図書館でそれらのサービスがある訳ではないが、図書館の進化を考えればそれらのサービスももっと普及するだろう。
 図書館愛好者としては楽しみにして待っている。
  
(2016/05/07 投稿)

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  大型連休も終わって
  あくびをかみ殺して
  仕事に復帰という人も多いでしょうね。
  その点、仕事を終えて私のようなものは
  これでもいつもの日常が戻ってくると
  ほっとしている感じでもあります。
  4月から新しい年度にはいって
  ひと月で大型連休。
  これでリズムがおかしくなる人もいるでしょうから
  もう一度生活のリズムを
  組み立て直すことも必要です。
  今日は外山滋比古さんの
  『知的生活習慣』という本を紹介しますが
  私はとっても刺激的でした。
  この中で
  外山滋比古さんは図書館の利用について
  こんな風に書いています。

     図書館は、私にとって、本を借りて読むところではなく、
     主として、執筆の書斎代用として役立っている。

  これなども参考になると
  思います。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  こういう生活にあこがれていました                   

 『思考の整理術』で有名な外山滋比古さんは1923年生まれだから90歳を超えている。それでもまだ旺盛な執筆活動をされているのだから、頭がさがる。
 この本は人生を豊かにする「知的生活習慣」のあれこれを綴ってエッセイである。
 読んでいて教えられることが多い。
 外山さんは、「生活はもともと個性的なもので、ひとの真似はできない。こういうのがいいとすすめることは考えていない。ささやかな例として参考になれば」と謙虚である。
 けれど、実に参考になる。

 そもそも「知的生活習慣」とは体の生活習慣と対峙する、心の生活習慣のことだという。
 「よい知的生活習慣を身につければ精神的活力の源になって、人生を豊かにすることができる」というのだから、いいではないか。
 「生活を大事にする」という項に定年退職後の姿が「それまでの仕事がなくなると、なにもすることがない。(中略)それまで、仕事が生活であるから、仕事がなくなれば生活がなくなったも同然」と書かれている。
 なるほど。確かにそうで、仕事をしてきた男性はそれ以外の生活をしてこなかったせいで、定年後行く場をもたず、色々な場面で生活をきちんと維持してきた女性は年をとっても生き生きとしているのであろう。
 それを踏まえ、「知識と生活の手を結ばせることができれば、これまでの生き方と違った人生が可能になる」と、外山さんはいう。

 その方法として、「日記をつける」「計画を立てる」「図書館の利用」「辞書を読む」「仲間をつくる」といった項目で、特に第一章の中でまとめられている。
 外山さんは「予定表をつくる」ことを勧めている。日々だけでなく、月間もそうだ。
 「なんにもない日が続くのはおもしろくない。いかにも無為のような気がする」とは外山さんの弁だが、具体的に掲載されている日々の予定には昼寝であったりちょっとしたTVであったりもある。それすら今日やるべきことのひとつとしてあげておけば、目標に向かう感じがあっていい。

 高齢化社会になって、今まで以上の「知的生活習慣」が求められるに違いない。
  
(2016/05/06 投稿)

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  今日はこどもの日
  立夏でもあります。

     竹筒に山の花挿す立夏かな    神尾 久美子

  今日から歳時記も夏の部に入れ替え。
  そして、ゴールデンウィークも
  今日が最終日。
  せっかくだからこの季節の花躑躅でも
  見に行くかと計画されている人も多いかも。
  東京の躑躅といえば
  根津神社が有名ですが
  今年は暖冬の影響もあって
  咲きほこりの時期は終わっているようです。
  残念。

  20160502_111444_convert_20160503174612.jpg

  季節が少しずつ早くなっていますね。
  せっかくだから
  美術館めぐりなどもいいかもしれません。
  出掛ける予定がない人に
  ぜひこの本を。
  原田マハさんの『暗幕のゲルニカ』。
  ピカソの名作「ゲルニカ」を
  題材にした小説です。

  じゃあ、読もう。

  


sai.wingpen  鮮やかなタペストリー                   

 「本作は史実に基づいたフィクション」と、最後に記されている。
 どこまでが史実でどこからがフィクションなのか美術史に疎いので判然としないが、それがこの作品の傷になるかといえばそんなことはない。
 圧倒的な面白さはそういうことさえ忘れさせる。
 まったく原田マハという作家は『楽園のカンヴァス』以降、美術にまつわる作品を描かせたら絶品である。

 タイトルにあるとおり、この長編小説はあのピカソが描いた名作「ゲルニカ」をめぐる物語だ。
 「ゲルニカ」については作品の中にこう記されている。
 「一九三七年、ナチス・ドイツがゲルニカに対して行った人類初の無差別空爆。その暴挙に憤怒の炎を燃え上がらせて、ピカソが描ききった巨大な一枚の絵」と。
 モノトーンで描かれたこの絵、悲鳴をあげる馬、倒れる兵士、幼児を抱えて泣く女、を実物ではなくとも目にした人は多いだろう。
 ピカソはどのようにして「ゲルニカ」を描き、戦争に突入していく欧州の戦火の中をどう生き延びていったのかを縦糸に、2001年9月11日に起こった米国での同時多発テロで愛する夫を失ったニューヨーク近代美術館のキュレーター瑤子が自身企画したピカソの展覧会に「ゲルニカ」を出展させようとする姿を横糸にして、物語のタペストリーは編まれていく。
 二つの糸をつなげる人物として描かれるパルドという裕福な青年とルースというこれも裕福な女性は作者の想像であるが、この二人が縦糸のピカソを、横糸の瑤子に密接に絡んでいく。
 同時に縦糸と横糸をつなげる重要な役どころである。

 史実としてピカソの「ゲルニカ」にまつわる物語を現代にどう蘇らせるか。
 戦争にノウを叩きつけた「ゲルニカ」の持っている意味合いを表現するにはどうすればよいか、瑤子の物語はフィクションであるが、それがあることにより「ゲルニカ」が暗幕から姿を現したといえる。
 エンタテインメントに分類されるであろう作品だが、読者を十分に満足させることはいうまでもない。
 拍手をおくりたい。
  
(2016/05/05 投稿)

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  今日はみどりの日
  まさにその名にふさわしく
  樹々のみどりが美しい。
  新樹というのは夏の季語

    大風に湧き立つてをる新樹かな    高浜 虚子

  20160429_113008_convert_20160501132647.jpg

  こういう風景をみると
  心が癒されます。
  そんな風景の中で
  詩を読むのも
  いいですね。
  今日紹介するのは
  茨木のり子の詩と
  長谷川宏のエッセイがコラボした
  『思索の淵にて』。
  緑のはざまで
  一冊の詩集を開くなんて
  なんとも贅沢な時間です。
  休日には
  それもまた、よし。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  響きあうもの                   

 現代詩の長女と呼ばれた茨木のり子の28篇の詩とその詩に誘われたヘーゲル研究の第一人者で在野の哲学者長谷川宏のエッセイのコラボ集。
 今年(2016年)はちょうど茨木の没後10年にあたるが、この本の最初の刊行は茨木の没年である2006年4月である。
 それがこうして河出文庫の一冊となったのは、茨木のファンとしてうれしい限りだ。

 この本の冒頭の「はじめに」は、茨木の文章である。
 おそらく生前の茨木の最後あたりの文章だろう。
 その中で茨木はポール・エリュアールのこんな詩の一節を載せている。
 「年をとる それは青春を/歳月のなかで組織することだ」。
 「組織する」という硬質な言葉が茨木の好みのようにも思うが、それ以上にその時の茨木の心持ちに共鳴した詩であったのだろう。

 その文章には茨木のこんな文章もある。
 「思索という言葉からは、なにやら深遠なものを想像しがちだが、たとえば女のひとが、食卓に頬杖をついて、ぼんやり考えごとをしているなかにも、思索は含まれると思うほうである」。
 まさに茨木自身がそうであったのではないか。

 茨木の28篇の詩の中には「わたしが一番きれいだったとき」や「根府川の海」といった有名なものもあるが、「廃屋」などはあまり知られていない詩かもしれない。
 それらの詩に対して長谷川のエッセイはつながっているようで、けれどとても自由だ。
 詩がいかに豊かに思索を醸し出すのかといった見本のようなエッセイが珠玉である。
 こういうエッセイを生み出した詩はなんと幸福なことだろう。
 特に茨木の「わたしの叔父さん」についた長谷川のエッセイ「ぼくの叔父さん」のなんという連鎖な思いだろう。
 きっと私たちも詩から、あるいはエッセイから浮かびあがってくるたくさんの思いを持っているに違いない。

 茨木と長谷川は結局茨木の生前に会うことはなかった。
 しかし、それでいてふたりの息づかいが交叉しあうというのも不思議だが、それが言葉の力かもしれない。
  
(2016/05/04 投稿)

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 宮本武蔵といえば
 いわずと知れた剣豪。
 小説やドラマ・映画に描かれたヒーローの
 イメージが強い。
 最後はもちろん佐々木小次郎との
 巌流島での決闘である。
 「武蔵、遅いぞ」と逸る小次郎。
 鞘を捨てた小次郎に
 「小次郎、破れたり」と一閃、武蔵の一撃が、
 なんて場面が目に浮かぶ。

 今月のNHKEテレの「100分 de 名著」は
 その宮本武蔵の『五輪書』を学ぶ。

  

 そもそも宮本武蔵というのは
 本能寺の変があった1582年に播磨の国に生まれている。
 1600年に起こった関ケ原の戦い、
 そうか豊臣秀吉の時代って結構短かったんだと
 改めて思いますね、
 その関ケ原の戦いを経て武者修行の旅を
 重ねていくのですね。
 先の巌流島の決闘は29歳の時ですから
 まだまだ武蔵は若い。
 武蔵は1645年に亡くなっていますから
 63歳まで生きた人です。
 テキストに収められている「略年表」を見ると
 晩年、今回地震の被害に見舞われた熊本の
 細川家の客分にもなっています。

 宮本武蔵が『五輪書』という
 兵法の書を書いたということは知っていますが
 どんな内容なのかはさっぱり
 知りません。
 「100分 de 名著」のいい点は
 そういう本を取り上げてくれる点にあります。
 今回の講師は
 放送大学教授の魚住孝至先生。
 昨日の第1回めは
 「兵法の道はすべてに通じる」でしたが、
 以降、毎週月曜、
 「自己を磨く鍛錬の道
 「状況を見きわめ、活路を開け! 」
 「己が道に徹して、自在に生きよ!」と
 続きます。

 果たして、
 武蔵は本当に強かったのか。
 楽しみな一カ月です。

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 いよいよ春もおわり。
 大型連休最終日の5月5日は
 立夏です。
 昭和の日、風の強い日でしたが
 埼玉の戸田ボート場で
 大学生たちのレガッタを観る機会がありました。

  20160429_114117_convert_20160501132828.jpg

 「ボートレース・競漕」は春の季語です。

    競漕や午後の風波立ちわたり      水原 秋櫻子

 菜園も今日は盛りだくさんですよ。
 4月29日(金)と30日(土)にかけて
 収穫と夏野菜の苗植えに行ってきました。
 まずは、待望の収穫。
 タマネギです。

  CIMG1121_convert_20160501133215.jpg

 この日で7個の収穫。
 さっそくスライスして
 サラダで頂きました。
 そして、ウスイエンドウ

  CIMG1107_convert_20160501133047.jpg

 一つの莢に6、7個の豆がはいっています。
 このウスイエンドウは見ためは
 絹サヤに似ていますが
 実を食べます。
 子どもの頃、
 この豆の莢をよく剥かされたものです。
 さっそく晩ごはんは豆ごはん。

  CIMG1110_convert_20160501133133.jpg

 この豆ごはんを食べたくて、食べたくて。
 ちょっと感動ですね。
 この「豆ごはん」は夏の季語でもあります。

   歳月やふっくらとこの豆ごはん   坪内 稔典

   母のこと思い出される豆ごはん   夏の雨

 そして、夏野菜たちの苗植えも
 本格化してきました。
 この日植えたのが
 ミニトマトナスピーマン
 夏野菜の三兄弟。

  CIMG1115_convert_20160501133435.jpg   CIMG1114_convert_20160501133405.jpg  CIMG1113_convert_20160501133331.jpg 
 
 そして、キュウリも植えました。

  CIMG1116_convert_20160501133613.jpg

 キュウリの横に植えたのは
 ネギ。
 こうすると害虫とかの防御になります。
 こういうのを
 コンパニオンプランツと呼びます。
 ここまでは昨年も育てましたが
 いよいよこの夏のメイン野菜の登場です。
 小玉スイカです。
 こちらも苗を植えつけました。

  CIMG1112_convert_20160501133249.jpg

 うまく育ってくれたらいいのですが。

 夏野菜は
 水を好むキュウリとか
 水を嫌うミニトマトとか
 色々なタイプがあります。
 お世話も大変ですが
 楽しみな菜園季節の到来です。

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