05/03/2017 殺人犯はそこにいる(清水 潔):書評「この作品こそ「文庫X」の正体だ!」

今日は憲法記念日。
今年は施行から70年にあたります。
先日ニュースをみていると
憲法改正に賛成の人が
反対の人より多いということを報じていました。
日本国憲法は
平和憲法といわれる
第9条の戦争放棄がうたわれていて
そのことに対する思いは
今でも強いですが
それでも改正派の方が多いということを
受けとめる必要が
あるかもしれません。
今日は
清水潔さんの『殺人犯はそこにいる』という
ノンフィクションを紹介しますが
この中に描かれている冤罪だって
基本的人権を著しく阻害するものです。
それがこの憲法下で
行われていたのですから
ぞっとします。
じゃあ、読もう。

昨年(2016年)本屋さんで話題となった一冊の文庫がある。
著者名どころか書名まで伏せられて「文庫X」。
カバーにはびっしりとこの文庫を薦める書店員の熱いメッセージが書かれている。
初めてこの文庫を書店で手にした人は驚いたにちがいない。
一体この文庫には何が隠されているのだ?
その正体こそ、この本、報道記者清水潔氏が書いたノンフィクション作品だった。(すでに「文庫X」の正体は公になっているのでここまで書いても大丈夫)
この作品が「文庫X」として隠されていたと書いたが、実はここで描かれた犯罪もまた警察や司法の手によって隠されてきたといえる。
「隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件」と副題にある通り、この作品では1979年から1996年の間に栃木県足利市と群馬県太田市という隣接する場所で起こった幼い女の子の誘拐殺人犯を追跡している。
中でも、1990年に起こった足利事件では冤罪事件として社会に激震が走ることになる。
著者の清水氏は5つの事件の類似性から、ただ一つ犯人が検挙された足利事件に不審を持って、冤罪立証にも力を発揮していく。
清水氏は刑事でも探偵でもない。報道記者である。
だからこそ、「小さい声にこそ耳を傾け、大きな声には疑問を持つ。何のために何を報じるべきなのか」を常に考え続けているという。
この作品は冤罪を糾弾することを目的としていない。
あくまでも真犯人を追い詰めること。もちろん真犯人の名前などは明かされない。暗号のような「ルパン」という名で書かれた犯人が逮捕される時が来るのか。
悲惨な事件を描きながら、不謹慎とは思いつつ書くならば、読書として面白かったというしかない。
(2017/05/03 投稿)

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