05/25/2017 開高健 - 生きた、書いた、ぶつかった!(小玉 武):書評「ずばり、開高健」

やっぱりどうも
私は開高健という作家が好きなようで
今日紹介する小玉武さんの
『開高健 - 生きた、書いた、ぶつかった!』も
本屋さんで見つけて
そのままググッとひきつけられました。
新潮社版の
開高健全集はしっかりとまだ
所蔵していますが
なあに全巻再読することがあるかといえば
それはないに決まっているのですが
どうも手離す気になれません。
それでも
いくつかかの作品は
やっぱり読み返したいものです。
じゃあ、読もう。

著者の小玉武氏がサントリーの宣伝部に入った時の上司は、あの山口瞳だったそうである。そのつながりで『係長・山口瞳の<処世術>』という作品を書いた。
当時のサントリー宣伝部には「あの」と呼んでいい大物たちが出入りしていて、今回の作品の主人公である開高健ももちろんその一人だし、この本のカバー絵の柳原良平もそうだ。
開高健がサントリーの前身壽屋に入社したのが昭和29年で、『裸の王様』で芥川賞を受賞したのが昭和33年、その年には退社して嘱託となっている。
だから、開高とサントリーの実質的(契約的といった方がいいか)関係は短いが、佐治敬三との関係を含め、因縁深いことは間違いない。
だから開高が平成元年58歳という短い生涯を閉じるまで、そのあとのことも小玉氏は伴走者のようにしてあった。
この作品は開高の評伝として読み応え十分の小玉氏の労作だが、単に評伝としてではなく、開高の代表作でもある『夏の闇』をどう読み解いていくかといった作品論も合わせもったものになっている。
中でも興味深いのは開高の「悪妻」という評判の高い牧羊子のことで、小玉氏は牧のことを「地球の時間は、自分を中心に回っている」と考えていたのではないかと書きつつも、けっして非難も批判もしていない。
むしろ、開高の人生の節目に牧が果たした役割が大きいことを書きたかったのではないかと思える。
開高の代表作のひとつである『オーパ!』が今から振り返ればすでに「晩年」の作品だとした記述に胸を打たれた。
開高健はもっと、評価されても、いい。
(2017/05/25 投稿)

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