プレゼント 書評こぼれ話

  作家でも好き嫌い、
  あるいは食わず嫌いもあったりしますが
  何故か好みの作家が出てくるものです。
  私はといえば
  村上春樹さんとか
  川上弘美さんは結構追いかけて読んでいます。
  それに
  今日紹介する花房観音さんも
  その一人。
  きっと花房観音さんの作品は
  全部読んでいるんじゃないかな。
  今日は今年の2月に刊行されたばかりの
  『わたつみ』を
  紹介します。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  これは官能小説ではないけれど                   

 花房観音が『花祀り』で第1回団鬼六大賞を受賞したのは2010年であるから、彼女の作家歴も長くなった。
 もともとが官能小説としてのデビューで今でも花房観音といえば官能小説の書き手と見られるし、過去の作品を読むと確かに官能小説が多いことは間違いない。
 しかし、確実に彼女は官能小説というジャンルではおさまらなくなっている。
 もちろん作品の中に描かれる官能描写は相変わらず上手いが。

 この作品のタイトル「わたつみ」を漢字で書くと綿津実、日本神話に出てくる海の神様と、物語の中で説明されている。実際、「わたつみ」を漢字変換すると「海神」となる。
 この作品の舞台がこの名前をもった海産物加工工場である。
 地方都市のその工場に、東京での生活に挫折して33歳の京子が働きだす。
 小さな町のことだ。訳ありの京子の過去を興味本位に探る女もあらわれたりする。

 小さな町であっても誰もが同じではない。
 同床異夢という言葉があるが、京子のまわりで働くそれぞれが別々の思いで、男に魅かれ、男に裏切られ、男に棄てられていく。
 そんな女たちを見て、東京で夢に、男に、裏切られてきた京子が最後に気づくのは、「生きるために、食べるために、働くことーそれ以上に確かで大切なものはない」ということだった。

 官能小説家が官能小説を書かなくなったら、普通の人に戻るのではない。
 あたりまえの小説家になるだけだ。
 花房観音は着実にその道を歩いている。
  
(2017/06/07 投稿)

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