01/31/2018 ウホッホ探検隊(干刈 あがた):書評「光はいまも届いています」

今日紹介する
干刈あがたさんの『ウホッホ探検隊』を
本屋さんで見つけた時
思わず、
わぁ、なつかしいと吸い寄せられました。
干刈あがたさんという作家のことを
知らない人もたくさんいるでしょうが
書評にも書きましたが
もしかしたら
今回芥川賞を受賞した
若竹千佐子さんの『おらおらでひとりいぐも』よりも
うんと昔に
強く、しなやかに
女性の生きる姿を描いた
女性作家だったのではないかと
思います。
じゃあ、読もう。

そのペンネームが「光よあがた(辺境)にも届け」という希いからつけられたという干刈あがたが亡くなったのは1992年9月。すでに20年以上の歳月が過ぎた。
49歳という若さでこの世を去った彼女がもし生きていたら、どのような作品を書いたのであろうか、あるいは何度も候補になりながらもその手に届かなかった芥川賞の第158回受賞作である若竹千佐子さんの『おらおらでひとりいぐも』を読んだら、30年以上前から私は「ひとりいぐも」だったわよと笑うのではないか。
芥川賞の候補作にもなったこの作品が発表されたのが1984年。
すでに離婚という別離の形態が広まっていた時期ではあるが、それを前向きに描いたこの作品に勇気づけられたシングルマザーはたくさんいたかもしれない。
物語の主人公である友江は15年間ともに暮らした夫との生活を打ち切ることにする。
二人の間には小学校を卒業する太郎とその弟次郎がいるが、友江は彼ら二人と歩き出すことを決める。
下の息子に「お母さんは、自分自身として立ち直りたい」と話す友江こそ「おらおらでひとりいぐも」も先駆者ではないか。
新しい家族の姿に「離婚ていう、日本ではまだ未知の領域を探検するために、それぞれの役をしている」と長男に言わしめているが、現代であれば「イタい」と呼ばれそうな役作りであるかもしれない。
それでも、この家族はそう生き方を選択したのだ。探検隊として。
この時代に今また干刈あがたの作品を河出文庫に加えてくれた出版社と素敵な解説を書いてくれた道浦母都子に感謝したい。
(2018/01/31 投稿)

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01/30/2018 「100分 de 名著」の特別授業です - 池上彰さんがあのミリオンセラーを読み解きます

相変わらず出版界を取り巻く環境は厳しい。
そんな中、
『漫画 君たちはどう生きるか』が
130万超のミリオンセラーとなっている。
この漫画の原作は
吉野源三郎さんで
最初に出版されたのが1937年ですから
80年以上前、
戦前のことです。
吉野源三郎さんは岩波書店との関係が深く、
岩波新書を創刊したり
岩波少年文庫の創設にも関わっています。
石井桃子さんとも
その当時から知り合いです。

今回のミリオンセラーにつながったと思いますが、
出版社であるマガジンハウスは
社内で若い編集者と話していて
この作品のメッセージ性が決して古びていないことに気が付いたと
いいます。
漫画にすることで
若い人たちにより届くようにした。
そのことで、
漫画だけでなく
吉野源三郎さんの原作も読まれるようになった。
岩波文庫版も累計135万部を超えたそうです。

NHKの「100分 de 名著」は人気番組ですが
放送はされないのですが
テキストとして販売されるものがあります。
その中の一冊がこれ。
「別冊 100分 de 名著」の「読書の学校」。
これは、その中の
「池上彰特別授業 君たちはどう生きるか」。
話題の一冊を
池上彰さんが高校生と読み解いていく
構成になっています。

このテキストを読むと
だいたいどのようなことが書かれているのかが
わかります。
特にいじめとか格差とか
当然80年前とはちがうのでしょうが
現代とつうじることが書いてありそうです。
今を読み解くヒントがある、
それが古典の素晴らしさだと思います。

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01/29/2018 雪を見ながら、おしるこ食べて - わたしの菜園日記(1月29日)

関東でも大雪になって
それから1週間経ちますが、
まだあちらこちらに雪だまりができたまま。
限りなく降る雪何をもたらすや 西東 三鬼
そのあとも寒さが居座って
さいたま市でも最低気温が
マイナス10℃近くまで下がりました。
さすがにそれだけ冷たいと
草花も凍るのを
初めて体験しました。

菜園を始めた最初の年にも
大雪になったことがあって
あわてて見にいくと
トンネル栽培の防寒ネットが雪で押しつぶされているのには
驚きましたが
それも雪がとけると
自然に元に戻るのを知ってからは
あわてないようにしています。
でも、さすがに今回の大雪は
すごい。

昨日の日曜日(1月28日)、
菜園でおしるこ大会があったので
雪からはじめてでかけたのですが
雪はほとんど残っていました。

こちらはトンネル栽培の防寒ネットが押しつぶされています。

これでは
とけるのも時間がかかりそう。

ごらんのとおり。

お手上げです。

暖かいおしるこでも
頂きましょう。
おもちを焼いて

白玉も浮かべて
頂きました。


寒いなかでも
畑に行ってみようかって思うじゃないですか。
寒いけれど
こういう雪におおわれた畑を見ておくのも
貴重な体験です。

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昨日
益田ミリさんの『オトーさんという男』を
紹介しましたが、
今日の絵本は
『かわいいおとうさん』。
山崎ナオコーラさん文、
ささめやゆきさん絵の
とっても素敵な絵本です。
でも、きっとかわいいおとうさんと思っている
子どもたちも
大人になれば
益田ミリさんのように
「オトーさんという男」なんていう呼び方に
変わってしまう。
世の若いパパたち、
そういうことですよ。
だから、今のうちに
楽しいひとときを過ごして下さい。
じゃあ、読もう。

この絵本の文を書いたのは、あの山崎ナオコーラさん。
名前だけでわかってしまうだろうが、『人のセックスを笑うな』や『美しい距離』といった作品を書き、ひと頃最も芥川賞に近かったのではないでしょうか、そのナオコーラさんが初めて手掛けた絵本です。
これがとってもいい。
絵を担当したささめやゆきさんの絵もいいけれど、おそらくナオコーラさんの文章の一つひとつが、おとうさんと子どもの愛を描いて秀逸だ。
お父さんが登場する絵本はそれこそ山のようにあるだろうが、この作品はその山の頂上あたりに置いても見劣りしない。
「絵本を作ることは、長年の夢だった。」と、ナオコーラさんはいう。
本が好きだった彼女は大人になって、絵本ではなく小説を書いた。大きな賞の候補者になったり、落ちたり、そんなことを繰り返して彼女は書くということに悩んでいたような気がする。
そこに、実際子どもを授かり、その子どもが絵本に触れる姿を見て、もう一度本のことが見えるようになったのではないか。
「何かを教えるためには、本は存在しない」と。
「読書は自由を求める行為」ということを、自身が子どもを育てるなかで、再発見した。
そこに誕生したのが、この絵本だ。
だから、この絵本はとっても「自由」だ。
お父さんの顔から子どもの手でメガネがはずされる。
メガネでしか見えないものがメガネをとることで、もっと違う光景を見せてくれる。
例えば、とっても大切な人の顔。
こんな素敵な絵本を作った山崎ナオコーラさんの新作が楽しみだ。
(2018/01/28 投稿)

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01/27/2018 オトーさんという男(益田 ミリ):書評「何をどう書いてもオトーさん愛全開!」

今日は
益田ミリさんの
『オトーさんという男』を
紹介しますが、
読みながらつい笑ってしまいました。
文章もいいですが
なんといっても
益田ミリさんの漫画が
とってもいい。
よく見ると
益田ミリさんの絵は
その名前の通り
ミリ単位の線とか影とかで
表情を変えるのですから
すごいものです。
じゃあ、読もう。

コミック・エッセイのトップランナー(ワァ、カタカナばかり!)の益田ミリが自身のオトーさんの姿をコミカルに描いた本作品を読んでいると、これは益田ミリさんのオトーさんのことではなく、読者であるワタシのことではないかと勘違いしてしまいそうになる。
大阪出身の益田さんだから、オトーさんも大阪人ということになるから、大阪出身のワタシに似ていておかしくもないが、もしかしてワタシの娘たちも益田さんのような視点で観察しているのではないかと、思わず顔をあげてしまった。
では、どのあたりが似ているか具体的に示そう。
まず、「定年後、父は家の近所で畑を借りた」とある。ワタシもそうだ。
わざわざ「父の野菜作り」という項目があって、そこに野菜作りに勤しむオトーさんの愛すべき姿が描かれている。
その項目の最後の文章、「借りた畑で野菜を育てている父は、とても生き生きしている」。
娘たちよ、ワタシも「生き生きしている」か。
次の似ている点は「よそいきの顔」にある。
その書き出しがすごい。「恥ずかしかった」なのだから。
つまり、オトーさんと出かけるのが恥ずかしかったと益田さんは綴る。
何故か。「道を歩いているときも平気でオナラをするし、お店でご飯を食べているときも、「これ、あんまりウマないな~」などと、発言してしまう」とある。
ワタシそのままだ。
そういえば、外出時に娘たちの顔がひきつるのが何度もあった。アレはコレか。
まあ、そうはいっても、この作品、益田ミリさんのオトーさん愛全開の一冊だから、ワタシも大丈夫かもと思っているが。
はて。
さて。
(2018/01/27 投稿)

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01/26/2018 くちびる遊び(花房 観音):書評「これで近代文学を読みたくなれば」

新しい年になって
まだ一ヶ月にもならない。
12月の速度と
1月の速度はまるで違うように
感じるのは何故だろう。
そんな時間の中で
今年2冊めの花房観音さんの作品です。
新潮文庫オリジナルの
『くちびる遊び』。
表紙の装画がいい。
池永康晟(やすなり)さんの作品。
この表紙で
読みたい力アップではないだろうか。
じゃあ、読もう。

この短編集は同じ新潮文庫で刊行された『花びらめくり』に続く「文豪官能シリーズ」の第二弾の、文庫オリジナル版である。
「文豪官能シリーズ」とは、「近代文学の文豪と言われる人たちの名作を、舞台を現代に移して官能小説にアレンジしたもの」と、「あとがき」で花房観音自身が書いている。
極め付きは、「日本の近代文学ってこんなにエロいんだぞ!」ということで、確かに読みようによって「エロい」かもしれないが、そう読んでしてしまう、アレンジしてしまう、花房自身の方が、ずっと「エロい」と思うが。
収録されている5つの短編のタイトルで、どんな近代文学をアレンジしたかはわかると思う。
「愛しの舞姫」はもちろん森鴎外の『舞姫』、「女禁高野」は(少し難しいが)泉鏡花の『高野聖』、「タレコミ訴え」は言うまでもなく太宰治の『駆け込み訴え』、「悦楽椅子」は江戸川乱歩の『人間椅子』(これなどは乱歩の元のタイトルの方が官能性が高いように感じる)、最後の「みだら髪」は与謝野晶子の『みだれ髪』。これなどはたった一文字違いで大違いであるが、当時の人からすれば与謝野晶子の歌集は官能性が高い、まさに「みだら」なものだったのだろう。
なんといっても面白いのは「悦楽椅子」だろうか。
もちろんどういう点に官能性を感じるかは人それぞれだから、男性同士の愛に興味があれば「タレコミ訴え」は面白いだろうし、うんと「エロい」作品でいえば「女禁高野」だろう。
ただ「悦楽椅子」は、なんといっても乱歩の設定がいいに尽きる。
元の作品が読みたくなれば、花房観音のもくろみは達成できたのではないか。
(2018/01/26 投稿)

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01/25/2018 雑誌を歩く - 「たくさんのふしぎ」12月号 : わあ、玄冬絵本かも

少し珍しい、
でも知ってる人はよく知っている雑誌を
紹介します。
それが児童書の名門
福音館書店から発行されている
「たくさんのふしぎ」(667円+税)。
この雑誌を手にするのは
子どもたちとその保護者だと思いますが
その12月号(もちろん、2017年の)では
なんと
「昭和十年の女の子 -大阪のまちでー」という
作品が紹介されています。

若竹千佐子さんの『おらおらでひとりいぐも』は
青春小説に対して
玄冬小説と呼ばれていますが
この作品は
さしずめ玄冬絵本。
でも、
子どもたちには興味があるかな。
何しろ、昭和10年のおしゃれな女の子の
町歩きを描いているのですよ、
しかも大阪。
わー、なんだかごっついせまい。

ひいおばあちゃん(!)のスミ子さんから
昔の話を聞き出すというもの。
おそらく当時としてはスミ子さん一家は
結構ハイカラ。
開通間もない地下鉄に乗って
百貨店で買い物したり
商店街を歩いたり
映画館に行ったり(シャリー・テンプルなんていわれてもわからへn)
お菓子を食べたり
レビューを観たり
少女雑誌を買うてもろたり
動物園(もちろん天王寺)で遊んだり
まあ、ひいおばあちゃん世代は泣いて喜ぶ
貴重な写真もいっぱいあるけど
本当に今の子どもたちにわかるのだろうか。

絵を描いたのは1982年生まれの鴨居杏さん。
若い人ならではの
昭和十年は
発見に満ちています。

驚きの一冊でした。

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第158回芥川賞の発表から一週間。
多くの書店で
この本、
若竹千佐子さんの『おらおらでひとりいぐも』が
品切れになっている。
本屋さんでうろうろしている間に
何人もの人が
この本を求めていたのを目撃しました。
しかも、その誰もがシニアの女性たちでした。
私はこの作品を文芸誌「文藝」冬号で
読みましたが、
活字が小さい分、余計に煩雑に感じたので
読むなら単行本をオススメします。
若竹千佐子さんは
「文藝賞」の「受賞の言葉」で
こんな風に語っています。
プレ婆さんの私としては、目指すのは青春小説とは対極の玄冬小説。
老いの積極性を描きたい。滅びの美しさを描きたい。
そうやって一人生きる私の老いを乗り越えたい。
才能ある新しい作家の誕生です。
じゃあ、読もう。

第158回芥川賞受賞作。(2018年)
読了してまず感じるのが、言葉の圧倒的な力。
タイトルの示す通り、東北弁と標準語が交じり合った文章は、そういえば宮沢賢治の詩「永訣の朝」の気分によく似て、それは確かに賢治の『虔十公園林』の引用があったり、賢治への愛情を感じるように仕込まれている。
それにして、作者が63歳の主婦ということで、彼女の身体の中にこれだけの言葉がその歳月とともに重ねられ、ここにおいてそれが極まり、迸ったという感覚は、読んでいて恐ろしくもある。
それは自身の中の言葉と会話する主人公の75歳の桃子さんとて同じことで、まさか女性には、どこかの国の童話ではないが、「王様の耳はロバの耳」と言葉を封じ込めていた革袋が破裂する瞬間があるのやもしれん。
それを思うと、男性は女性には敵うはずもない。
75歳の桃子さんには、75年分の日常があって、それは今豊穣な言葉で綴られる。母との確執、故郷からの脱出、高度成長期の東京、そして夫との出会い、子供の誕生、夫の死、子供の離反、老い、圧倒的な老い。
それでもいま、桃子さんは「おらおらでひとりでいぐも」と生命を言葉に変える、そんな生き方を選択、そう選び取る力を生きていく。
先走るが、この作品の最後の場面で「文藝賞」の選考委員である町田康氏は桃子さんの死を感じたようだが、まさか「あしたのジョー」ではあるまいし、やはり桃子さんの生命の強さを感じるべきではないか。
それにしても、最後の場面が三月三日の雛祭。主人公の名前が桃子さん。
なんという企みであろう。
この作者、並みの主婦ではあるまい。
(2018/01/24 投稿)

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関東は予報どおり
大雪になりました。

これだけ降ると
交通機関が大変。
でも、それは今に始まったことでもなく
昔もオリエンタル急行が
大雪で止まって
その車中で殺人事件まで起こってしまったことが。
あ、これは小説でした。
そう、それこそ
アガサ・クリスティーの代表作
『オリエンタル急行の殺人』。
大雪の日には
ぴったりかも。
じゃあ、読もう。

誰でも知っているミステリー小説の女王、アガサ・クリスティーの代表作。
何度も映画化され、最近もジョニー・デップが出演した作品が封切られ話題になった。
ところが、まったく恥ずかしながら、私は初読なのである。
文学にはたくさんのジャンルがあるが、どうもミステリー小説が苦手で、これはもう読まず嫌いなところがあって、この作品など読み始めたら、巷間言われるように一気に読み終えたくなるほど面白い。
もしかしたら、私にとってミステリー小説は面白すぎるのかもしれない。
あまりに面白いと、先を読んでしまうのがもったいなくなる感じ。あれだ。
それと、この作品など典型的なのだが、登場人物が多くて、読んでいる途中で誰がどうやら、何が誰やらこんがらがってしまうということも、苦手の要因。
この作品でもオリエント急行に乗り合わせた乗客12名がいて、しかもその証言の嘘をたまたま乗り合わせた私立探偵ポアロが解き明かしていくのだが、読んでいる方もどうしてもその嘘を見破りたくなるので、ページを行ったりきたりするはめになる。
特に彼ら乗客の座席の位置関係が気になるので、私の場合、それを示した見取り図のページに付箋を貼りつけ、すぐに開けるようにして読んだ。
だからといって、ポアロのように、犯人の嘘が見破れた訳ではなかったが。
もちろん、こういう有名な作品だから、誰が犯人というのはすでに多くの人に知るところだが、この作品が単にその謎解きだけでない、ポアロの人情味あふれた推理に、感心した。
(2018/01/23 投稿)

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01/22/2018 今日は雪かも? - わたしの菜園日記(1月21日)

どうでしょうか。
それに今シーズン最大の寒波も来ていて
今週は寒さが厳しいようです。
寒波きぬ信濃へつづく山河澄み 飯田 蛇笏
そんな寒い日は
鍋でもするかとなるのですが
今野菜がとっても高い。

これは1月19日の日本経済新聞の朝刊の記事。
記事によると
2017年秋以降の台風被害や長雨で野菜の生育が悪化したと
出ていましたが、
確かにスーパーの野菜売り場でも
レタスやキャベツがひと球400円、
ハクサイも700円では
鍋もできません。

自前の畑で採れた野菜があればいいのですが
さすがにもうすっか採っていて
収穫するものがありません。
冬場の季節は
しかたない。
そこで
こういう時こそ室内で野菜を栽培して
少しは栄養補給をしないと。
我が家では
牛乳パックを使って
ベビーリーフを育てたり

豆苗を育てたりしています。
室内だと
緑の色も目にやさしい。


イチゴの苗も
すっかり冬支度です。

間にすっくり立っているのは
ニンニクの芽。
これは
エンドウの苗。

まだまだ
春隣というわけにはいきません。

畑でおしるこ大会。
冬場はなかなか畑で顔を合わすこともないので
久しぶりに楽しいひとときに
なりそうです。

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01/21/2018 ねぇ、しってる?(かさい しんぺい/いせ ひでこ):書評「やさしい色の絵本はあったかい」

今日は
かさいしんぺいさん文、
いせひでこさん絵の
『ねぇ、しってる?』を
紹介します。
今日の書評はほとんどいせひでこさんのことしか
書いていませんが
もちろんその内容は
文を書いたかさいしんぺいさんの
力です。
それにいせひでこさんが絵をつけたことで
その世界は何倍にも
ふくれたのではないでしょうか。
まさにそれこそが
絵本の素晴らしさだと
思います。
じゃあ、読もう。

いせひでこさんの絵が好きだ。
好きだから、いせさんの絵は自然と目にはいってくる。
この絵本もそういう風に、いせさんの絵が誘ってくれた。
春の風のように、夏の香りのように、秋の音のように、冬の静けさのように。
そうだ。いせさんの絵は、季節のやさしさにあふれている。
季節の色に彩られている。
さあ、ページを開こう。
保育園児のけいたくんが大切にしている、ゾウのぬいぐるみ。
空色をしているので、そらくん。
けいたくんはいつもそらくんとたくさんお話をする。保育園のことだとか、もうすぐおにいちゃんになることだとか。
ところが、けいたくんにおとうとが生まれて、ちょっぴりおかしくなってしまうけいたくん。
自分がおかあさんたちの「だいじっこ」じゃなくなったって思ってしまったんだ。
そんな時、そらくんがけいたくんに話しかけてきた。
それは初めてそらくんがやってきた日のことから。
そらくんは初めおかあさんの友達だったんだ。
けいたくんが生まれて、そらくんはけいたくんの友達になって。
けいたくんはそらくんに自分がみんなからとっても大事にしてもらった「だいじっこ」ということを教えられる。
だから、けいたくんはおとうとも大事にしようって。
そうして少しばかり大きくなったけいたくんにはそらくんの声が聞こえなくなってしまう。
そう泣くけいたくんをお母さんはやさしく抱きかかえてくれる。
おかあさんのやさしい腕の線が、いせさんの絵の素晴らしさだろう。
きっと誰にもあった、母の腕だ。
(2018/01/21 投稿)

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01/20/2018 雑誌を歩く - 分冊百科「黒澤明 DVDコレクション」 : 復刻パンフレットが面白い

大寒。
一年で最も寒い時期にあたります。
大寒と敵のごとく対(むか)ひたり 富安 風生
こんな寒い日は
家で映画を観るのもいい。
そこで
今日の「雑誌を歩く」は
今TVでもCMが流れている
「黒澤明DVDコレクション」の第1巻
「用心棒」(朝日新聞出版・990円)を
紹介します。

創刊号だけのサービス価格になっていて
次号からは1790円。
いつものことですが
それでつい買っちゃうのですね。
黒澤明の作品は
以前NHKのBSで放送された時に
録画して
「用心棒」もしっかり観たんですが。

この創刊号には
公開時の復刻パンフレットが付いていて
これを見ているだけでも面白い。
特にそのパンフレットについている
懸賞の賞品が昭和を感じさせます。
例えば、
マットレスとか電気ミシン、扇風機なんかがあって
これらは各2本しか当たらない
豪華景品なんですね。
昭和の中頃までは
洋服は自前で縫っていたから
ミシンを欲しいという女性は
たくさんいたのでしょうね。

DVDと作品解説などが掲載された冊子がついて
これから全30作品すべて刊行されます。
黒澤明の面白さを堪能したい方、
必見です。

私の本棚には
分冊百科の創刊号だけが並んでいきます。
やれやれ。

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01/19/2018 鬼の家(花房 観音):書評「鬼は外!」

今日は久しぶりの
花房観音さんです。
『鬼の家』。
タイトルはおどろおどろしいし、
内容もそうなのですが
初期の頃の官能性は
ほとんどありません。
デビュー作からの愛読者としては
少し残念ですが
まだまだ官能小説も書いておられるようなので
これからも
期待しています。
これだけ多くの作品を書きつつ
花房観音さんは
まだ京都でバスガイドしてるのかな。
じゃあ、読もう。

京都の地図を眺めていると、確かにどこに行くにしてもわかりやすい。
東西南北、きちんと碁盤の目にように直線が伸びている。
現在の京都駅を目途として二条城あたりを西側に南北に通るのが千本通りである。
花房観音のこの作品には「今は町の中心はもっと東なので、寂れているのですが」とあるが、実際にはどうだろう。観光地図を開けば、北に歩くと北野天満宮があったりするのだが。
この連作集は千本通りから少し西に入った通り沿いの、大きな桜の樹があるそばの、なんとも珍しい西洋館風でもあり、日本風でもあるお屋敷が舞台になっている。
つまり、そこが「鬼の家」なのだ。
その家が建てられた明治の頃の話が第一話の「桜鬼」。そこから順に現代へと時をたどっていく六つの物語。
そのどこにも鬼がいる。
第一話、明治という時代の流れにのって会社を繁栄させていく松ケ谷吉二郎。しかし、その一方で妻の桜子は広い屋敷に一人取り残されている。
やがて、彼女の心に「寂しい」という鬼が住みつく。
その鬼は夫とは違う男を求めて蠢く。このあたりはさすがに花房観音得意とするところだ。
吉二郎が殺され、男と一緒だった女も殺されていく。
桜子は男、李作の子を宿す。
その子からつながっていく、黒き血の系譜がこの物語だ。
しかし、「鬼」とは何か。
桜子の心が寂しがって「鬼」を招き寄せたとすれば、現代もそこかしこに「鬼の家」があるし、実際鬼の仕業かと思われる悲惨な事件は後を絶たない。
やはり、鬼はいるのか。
(2018/01/19 投稿)

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01/18/2018 人間吉村昭(柏原 成光):書評「彼は磯野波平に似ていないか」

先日芥川賞が発表されたが
芥川賞を受賞できなかった作家の中で
吉村昭ほど
切ない未受賞作家はいないかもしれない。
受賞しましたという報を受けて
会見場に向かった吉村昭は
そこで手違いだったことを知らされる。
落選である。
こんなひどいことはない。
それでも吉村昭は腐ることなく
書き続け、
文学史に名を残す作家になった。
今日はそんな吉村昭の実像に迫る
柏原成光さんの『人間 吉村昭』を
紹介します。
じゃあ、読もう。

勝手な想像だが、吉村昭の愛読者は男性の方が多いのではないかと思う。
その作品の気骨さだけでなく、吉村の眼光鋭い風貌ながら、浮かべる微笑は軟らかく、そういうところはなかなか男性には真似できない。
真似ができないから、憧れる。
それは妻への接し方も同じだ。吉村の妻といえば、同業の津村節子だが、彼女に対する愛情は細やかで深い。それでいて、亭主然としている。
さらにいえば、「しきたり好き」なのも、男性の好みではないか。
吉村は敗戦の日と関東大震災の日には必ずすいとんを作ったという。あるいは季節ごとの行事の習わしは頑固に守ったそうだ。
保守的であるが、それを維持するのも難しい時代にあって、やはり男性は吉村のような男に憧れるのではないか。
そういえば、漫画「サザエさん」に登場する波平にどことなく似ている。
吉村昭の生前、仕事を通じて交流のあった、元筑摩書房の編集者だった著者が、その交流から描くのではなく、吉村が残したたくさんのエッセイから、その生涯と人間像をまとめたのが本書である。
吉村はエッセイには本当のことしか書かないといっていたそうだし、そこに描かれたのは小さい頃のことだけでなく、芥川賞をとれなかったことや代表作となる『戦艦武蔵』を書くに至る経緯など、実にうまく、まとめられている。
この一冊の本を上梓するまで、著者は吉村の作品だけでなく妻の津村節子のものまで細かくたどったに違いない。
まさに、ここには一人の「人間」が描かれている。
(2018/01/18 投稿)

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昨日「人生フルーツ」という
映画の話を書きましたが
その映画を見終わった
本になっていないだろうかと
図書館の所蔵検索をしたら
なんと
何冊も出てくるではありませんか。
夫の名が津端修一さん。
妻の名が津端英子(ひでこ)さん。
しかも
たくさんの人が予約をされていて
二人の本が
とっても有名で
しかも人気が高いのを
知りました。
うかつでした。
さっそく手に入れたのが
今日紹介する
『あしたも、こはるびより。』。
とっても
いい本です。
じゃあ、読もう。

スローライフという暮らし方がある。
効率やスピードを重視するのではなく、のんびり、ゆっくりした暮らしの中で人生を楽しむという生き方だ。
ただのんびりやゆっくりはだらだらとは違う。あるいは、何をしたらいいかわからないというのでもない。
もっとはっきりとそういう暮らし方がベストだという、生き方の選択のような気がする。
だから、効率を重視する人がいても、声高に批判することもないだろう。
あくせくする人がいても、とがめはしない。
それぞれが、そういう生き方を選んだというだけだ。
一組の夫婦がいた。
かつて夫は自身の仕事で愛知県のニュータウンの開発に携わった。
それは高度成長期の猛烈な勢いで進んでいった。
夫はその近くに小さな平屋の家を建てた。
夫婦はそこに木を植え、畑を耕した。そうして出来たのは、200坪のキッチンガーデンと30坪の雑木林。
そこで野菜70種、果実50種を栽培するという。
もちろん、はる。なつ。あき。ふゆ。一年かけて。
夫婦の名は、つばた英子さん。つばたしゅういちさん。
この本が刊行された2011年ではしゅういちさん86歳、英子さん83歳であった。
二人の間には「お互い、何ごとをも強要しない」という暗黙の了解がある。
それはたぶん、二人の間だけでなく、他者との関わりでもそうだろう。
二人は家で採れた野菜や果実を子や孫に送り届ける。知人にもそうだ。しかし、それは強要ではない。
おすそわけ。
そういう二人の生き方、暮らし方に教えられることは多い。
いえいえ、二人はそのことさえ強要しているわけではない。
(2018/01/17 投稿)

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第158回芥川賞直木賞が発表されました。

お、すごい、
直木賞の方が先ですね。
でも、記事の中は
やっぱり芥川賞が先。
まあ、五十音順と思えば。
芥川賞は石井遊佳さんの「百年泥」(新潮11月号)と
若竹千佐子さんの「おらおらでひとりいぐも」(文藝冬号)が受賞。
直木賞は門井慶喜さんの「銀河鉄道の父」(講談社)が受賞した。
門井慶喜さんの受賞作『銀河鉄道の父』は
すでにこのブログで紹介してますね。
こういうのって
先見の明というのかな。
さっそく
再録書評で載せておきます。
まずは、おめでとうございます。

第158回直木賞受賞作。
門井慶喜さんの作品は第155回直木賞候補となった『家康、江戸を建てる』しか読んでいないからエラそうなことは言えないが、作品の捉え方が独特でいい。
この作品にしてもそうで、宮沢賢治というあまりにも有名な作家の生き様をその父の視点から描こうというのは、今までありそうでなかった視点といえる。
それでいてそれが変化球かといえば決してそうではない。
むしろ直球ストライクど真ん中というのが、読んでいて気持ちいい。
この物語の主人公は賢治の父政次郎である。
賢治の実家である質屋を父喜助から引き継いで、岩手花巻の富豪であり名士であった。
賢治もそうであったが、政次郎も子供の頃からよく出来て「花巻一の秀才」と言われたという。そうなると当然上級の学校となるが、喜助の「質屋には、学問は必要ねぇ」の一言でそれを断念することになる。
しかし、自分の息子がそうなった時、政次郎は進学を許す。賢治の妹のトシもそうである。
それは時代の流れといえばそうかもしれないが、もし喜助のような性格であれば賢治は果たして上級の学校に行けたか。
もっというなら、賢治が童話や詩を書くに至ったかはわからない。
それを政次郎の甘さといえなくもない。
読んでいてここまで息子や娘に優しい父をうらやましいと思うが、賢治を後世いわれる宮沢賢治に仕上げたのはこの父なのではないか。
いや、もしかしたら政次郎こそ宮沢賢治になりたかったその人なのかもしれない。
けっして重くならない門井さんの文体もこの作品にはよく合っている。
(2017/12/02 投稿)

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01/16/2018 こつこつ、ゆっくり。 - 映画「人生フルーツ」のこと。

第158回芥川賞直木賞が発表されます。
さて、どんな作品が新しい光を浴びるのでしょうか。
その前に
先日発表された「2017年 第91回キネマ旬報ベストテン」について
少し書いておきます。

「映画夜空はいつでも最高密度の青色だ」、
外国映画のベスト1は
「わたしは、ダニエル・ブレイク」。
ベストテンの作品で私が観たのは
日本映画にはなくて
外国映画では
6位に入った「沈黙―サイレンスー」と
10位の「ラ・ラ・ランド」だけでした。

文化映画部門で1位になった
「人生フルーツ」を
今年になって
日本映画専門チャンネルで観ました。
これがとてもよかった。
去年の第90回でも
文化映画部門の1位の「ふたりの桃源郷」が
とってもよく、
この「人生フルーツ」も
どちらかというとよく似た味わいの作品。
90歳の夫と
87歳の妻の
静かな暮らしぶりを追いかけた
ドキュメンタリー映画。
風が吹けば、枯葉が落ちる。
枯葉が落ちれば、土が肥える。
土が肥えれば、果実が実る。
こつこつ、ゆっくり。
人生、フルーツ。

何度も繰り返される言葉です。
樹木希林さんが静かに
ゆっくり語ってくれます。

戦後の日本の急成長の中で
取りこぼしてきたものが
声高でなく
そっと静かに語られています。

なかなか鑑賞する機会は少ないですが
もし
あなたの街で上映があるようでしたら
観て下さい。
とっても、いい映画です。


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01/15/2018 土よ、育て - わたしの菜園日記(1月13日)

立春までの期間を寒の内といって
一年中で最も寒い季節です。
から鮭も空也の痩も寒の内 松尾 芭蕉
この季節は風景もまさに冬本番。
畑のそばの桜の樹も
すっかり葉を落しています。

そばを流れる川に
冬の鳥が遊んでいますが
それもまた
冬ならではの景色です。

水鳥の二羽寝て一羽遊びをり 清水 基吉
この句の「水鳥」が冬の季語です。

土の話。
栽培を3年もしているので
どうも土も痩せてきたのではないかと
気になって
だったらいっそのこと
土の再生をやってみるかと
1月13日の土曜に
畑に行ってきました。

それらが腐って
栄養価の高い土に変わりつつあります。
その土を畑の土と入れ替えようという試み。
まずは自分の畑からできるだけ古い土をさらいます。

そのあと、堆肥になった土を
入れ戻します。

見た目にはあまりわかりませんが
よく見ると
ミミズがいるのがわかります。

ミミズがいるのは
栄養価が高い証拠。
これで
春までしばらくねかせておきます。
春にはとってもおいしい土に
なっていたらいいですが
さてどうでしょう。
これも楽しみ。

ホウレンソウとチンゲンサイの畝に
桜の落葉をかき集めて
かぶせてきました。

自然の営みで
マルチ代わりの保温効果を出そうという
試み。

菜園生活で
楽しいことなんです。

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01/14/2018 きみはうみ(西 加奈子):書評「才能ある人は絵も描けてしまう」

昨日からセンター試験が
始まりました。
今日が2日め。
この試験で人生の勝ち負けが決まることはないですが
それでも受験生にとっては
負けられない戦い。
でも、人にはそれぞれ
自分が生きていく
最善の場所があって
それはおそらく人によって
違うもの。
そんな気持ちで前に向かって欲しいと
思います。
そんな受験生に
こんな絵本を紹介しましょう。
西加奈子さんの『きみはうみ』。
じゃあ、読もう。

『サラバ!』で第152回直木賞を受賞したその年、受賞作家西加奈子さんは一冊の絵本を上梓しています。
それがこの絵本。
最近の絵本業界では西さんのように小説の世界で名をなした人が文を書くということがよくあります。その場合は大抵絵は絵本作家の方が描くことが多いのですが、西さんのこの絵本は文だけでなく絵も彼女が描いています。
そういうことでは純粋に西加奈子さんの絵本といっていい。
真っ暗な暗闇に誕生した命。
ページ一杯黒の世界で、何ごとが始まるのか不安です。
次第に色鮮やかな世界にそれは変わり、そこが海の世界だとわかってきます。
そんなところにずっといたいと思うけれど、「きみのいたばしょもすてきだよ」と暗い世界に戻ってみて、鮮やかに発光する生き物たちにはっと気づかされる。
自分が生まれた場所も素敵だということに。
そんな絵本の「あとがき」に西さんはこう綴る。
「光がささなくたって、海は美しいのだ」と。
つまり、私たちは綺麗な海とか色が素敵な魚だけをつい美しいと思ってしまうが、そういう通り一遍の見方ではなく、ものごとを見た方がいいと教えてくれている。
「友達がいなくても、夢がなくても、経験値が少なくても、恋をしていなくても、その人が生きている限り、それはかけがえのない「その人」の人生だ」。
この「あとがき」だけでも読む価値がある。
いや、やはりこの絵本だけで多くのことがあぶくのように浮かんでくる。
(2018/01/14 投稿)

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01/13/2018 ご家庭にあった本(岡崎 武志):書評「本箱の隅っこの昭和」

昨日
昭和48年刊行の
『24時間利用法』という本を紹介しましたが
これなんかりっぱに古本と
いっていい。
しかも昭和の匂いがぷんぷん。
その続きのような一冊を
今日は紹介します。
岡崎武志さんの
『ご家庭にあった本』。
副題が
「古本で見る昭和の生活」というぐらいですから
懐かしい。
といっても昭和のうんと初めの本もあったりします。
結構、昭和の本って面白いかも。
じゃあ、読もう。

古本は安いというイメージがあるが、確かに本を売ろうとすると安く買い叩かれるが、けっしてそんなことはない。
場合によっては当時の定価よりうんと高い値段がついていたりする。
その一方で、投げ売りのような一冊100円みたいな価格がついていたりする。
読む側との需要と供給が歴然としている世界だろう。
そんな古本の世界から昭和の生活を振り返ろうとした一冊が、この本。
書いたのは、古本といえばこの人、岡崎武志さん。
この本の初出が「月刊教員養成セミナー」の連載だということにまずは驚く。(他にも日本経済新聞の連載も入っている)
「教員養成セミナー」なる雑誌があることもびっくりだし、教員になろうとする人に古本がしかも昭和を振り返るのは、どういう編集意図であったのだろう。
しかも岡崎さんは教育とかの本を取り上げているわけではなく、「大人の男」とか当時の「東京」とか「旅と娯楽」とか「暮らしの片すみ」とかのジャンルがほとんどで、唯一「科学とリクツ」という項目が教員をめざす人には近いだろうか。
昭和を知ることで人間の深みがでるのかどうかわからないが、そんな世界を楽しんでいる保護者は多いということかしら。
一つどうしても書いておきたいのが昭和50年の『ジャズ日本列島50年版』を紹介したエッセイのこと。
これはあの『二十歳の原点』を書いた高野悦子の描いた多くの文章の中でも秀逸だろう。
その最後の一節、「死は選ばなかったものの、無数の高野悦子が、六〇年代末から七〇年代にかけて、全国の学生街のジャズ喫茶にたむろしていたのではないか」に、じんと来た。
(2018/01/13 投稿)

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01/12/2018 24時間利用法(千尾 将):書評「24時間戦わなくてもいいんだよ」

今日は
千尾将さんの『24時間利用法』という本を
紹介しますが
この本はなんと昭和48年(1973年)の児童書なんです。
だから、
書影のあるデータがなかったので
写真にしました。
どうしてこんな昔の本を今さらと
思われるでしょうが
実はこの本昨年だったと思いますが
結構前、
日本経済新聞の夕刊で紹介されていたんです。
そこで
図書館の出番です。
ちゃんと所有されていました。
読んでみてびっくり。
とてもきちんと時間について
書かれていました。
もちろん、半世紀近い昔の本ですから
相当に古いのですが
今でもりっぱに時間管理の一冊として
読めますよ。
じゃあ、読もう。


栄養ドリンクのCM「24時間戦えますか」は1980年代後半から90年代前半にかけて巷間に広まったことで記憶に残っている。
今なら非常識といわれること間違いないが、当時それが当たり前のように叫ばれた。
それとよく似たタイトルのこの本は児童向けに書かれた「ポプラ・ブックス」というシリーズの一冊で、奧付を見ると昭和48年(1973年)1月発行とある。
私が読んだのは1984年の9刷のもので、結構売れたようである。
まさにあのCMでお父さんたちを奮い立たせ、子どもたちにも24時間をめいっぱいガンバレと鼓舞する。
すごい時代だったものだ。
著者の千尾将(ちおまさる)氏はこの本の略歴によれば「日本でいちはやく「動作・時間研究」を手がけ、経営評論家として活躍」とある。
ウィキペディアで調べると、本名大坪檀で、1929年生まれでまだご健在のようである。ブリヂストンで重責をこなされたあと学校関係に多く関係している。
ビジネス本や自己啓発本など多くの著作を上梓されている。
この本の中ではまだ電卓が「卓上小型電子計算機」と表記されているぐらいだから、さすがの著者もコンピューターやスマホが子どもたちにまで普及するとは想像もしていなかっただろう。
けれど、ここの書かれている時間に対する考え方は今でも十分使えるし、正しい時間の使い方を知っていれば「24時間戦えますか」なんていうこともなかったかもしれない。
何故なら、千尾氏は「時間を有効に使用することによって生じた余裕時間を、より豊かな人間生活のためについやそう」と記している。
どこで私たちは間違ったのだろう。
(2018/01/12 投稿)

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01/11/2018 3000円投資生活(横山 光昭):書評「自分の性格は投資に向いているのか」

子どもたちが大きくなって
最近とんと
お年玉とは縁がなくなった。
だからといって、
お父さんこれお年玉と
ことさらなことをいう子どももいない。
早くお年玉が欲しい。
年をとると
子どもに回帰するというが
お年玉だけ早く回帰しないかしら。
そんな私にぴったりの本を
お正月から読んで
そわそわした。
横山光昭さんの『3000円投資生活』。
さて、今年のみくじの金運は
どうだっただろう。
じゃあ、読もう。

この本が出た2016年7月末の日経平均株価は1万6569円。
それがどうでしょう、2018年年明けの大発会につけた株価は2万3506円。実に40%以上あがっていることになる。
もしこの本を読んで、よし投資をやってみようと決めた人は、今頃この本に手を合わせているやもしれない。
なんといっても「3000円」というのがいい。
1万円なら高すぎて投資と言われてもためらうし、1000円ならあまりに儲けがでないだろう。
「3000円」なら出来そうではないか、そう思わせるところがいい。
しかも私の手元にあるこの本の帯には「4千人が大成功!」とある。
この本はとてもよく読まれているから何十万という読者がいて、そのうち成功したのが「4千人」では確率がよくないのではないかと思ってしまうが、これもまた絶妙な「4千人」のような気がする。
何万人だとまるで成功確実のような感じを与えるし、何百人ではそれほどでもないかとひるんでしまう。
それが「4千人」だと、もしかしたら成功するかもと考えてしまえるような気がする。
おそらくだが、もし本が出たばかりの頃に実践した人は「大成功!」を収めたのではないだろうか。
ただこの本には投資の素人でもためになることが書かれていて、大もうけを狙うのではなく、まずは「1000円増やす喜び」が大事とある。
投資にしろ貯蓄にしろ大事なのは自分の性格をよく知ること。
そうでないと大きな損失を被ることになる。
そのあたり十分気をつけないといけない。
(2018/01/11 投稿)

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01/10/2018 目玉焼の丸かじり(東海林 さだお):書評「文庫解説の書評 - この手があったか」

お正月に「錦玉子」を頂いて
生まれて初めて食べました。
「錦玉子」というのは
紀文のHPによると
黄身と白身の2色が美しい錦玉子は、
その2色が金と銀にたとえられ、正月料理として喜ばれます。
2色を錦と語呂合わせしているとも言われます。
となっています。
おめでたい食べ物なんですね。
でも、とっても甘くって
私なら目玉焼きの方がいいかな。
というわけで
今日は東海林さだおさんの『目玉焼きの丸かじり』。
文春文庫の新刊です。
じゃあ、読もう。

東海林さだおさんの「丸かじり」シリーズ第37弾が文庫本になった。
文庫本の楽しみはなんといっても和田誠さんによる表紙装幀。今回も目玉焼きがうんといい。
そして、文庫本にしかつかない解説。これが文庫本の毎回の楽しみ。
だから、週刊誌で読むのもいいし単行本で笑うのもいいけど、文庫本には解説が付いてますよと、声を大にして言いたい。
文春文庫の担当の方は、もっと声を大にして言わないといけない。
今回の解説を書いたのは、姜尚美(かんさんび)さん。
うむ。?。
姜尚中ならわかるけど。
何をおっしゃる、姜尚美さんは知っている人は知っている食の通。
ご本人も解説の中で書いているが、姜さんが書いた『あんこの本』が文春の文庫担当の目にとまったのかもしれない。
さらには、調べると『京都の中華』という本まで出している。
お、お、食通というより食文化の先生。
いやいや、何より食べることが大好きなライター(解説文の肩書には「ライター」とあります)なようです。
『あんこの本』を書いただけあって、東海林さんの膨大な「丸かじり」シリーズから「あんこ」ネタを探してみる探究心も旺盛。
つまり、壮大なアン(コ)ソロジーをつくってしまうのです。
ところで、アンソロジーって日本語で書くと「詞華集」となるが、いってみれば一つのテーマで選んだ選集のこと。
そこで姜さんは「丸かじりの〇〇だけ食い」を提案している。
自分だけの「丸かじり」ができちゃうなんて。
やってみたいものだ。
(2018/01/10 投稿)

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NHK大河ドラマ「西郷(せご)どん」が
ついに始まりました。
もうご覧になりましたか。
原作が林真理子さん
脚本が中園ミホさん、
西郷隆盛を演じるのが鈴木亮平さん、
なんといっても
鹿児島の青空が印象的な
第一話でした。
これからが楽しみです。
そこで
今日は司馬遼太郎さんが描く西郷どん、
『翔ぶが如く 二』を紹介します。
まあ、ドラマとあわせて
ゆっくり十巻まで
お付き合い下さい。
じゃあ、読もう。

司馬遼太郎の小説は常に往ったり来たりを繰り返すことが多い。
有名な「余談」というのは、そういう時の司馬の常套手段であるが、そのせいでしばしば作品は長編化していく。
もちろん読者にとってはそれさえ小気味がよく、司馬の作品を読むと重層的な読み方を自ずからすることになる。
明治維新後間もないこの国を二分させた征韓論とそれにつづく西南戦争を描くこの大長編は文庫本にして全十巻ある。
その第二巻めのこの作品では、明治6年(1873年)夏(この年の9月に遣欧から戻ってくる岩倉具視がまだ戻っていないとある)から、西郷隆盛の朝鮮派遣を討議する廟議の行われる10月14日の朝までの、わずか2カ月足らずの出来事を延々400ページ弱の中で描いている。
その中で征韓論派と反征韓論派のさまざまな動きが描かれている(特に伊藤博文の活躍は司馬の筆も踊るような筆致で描かれている)のは当然としても、山形有朋や西郷従道といったこの時代を代表する人物の性格や挿話までが入り込み、あるいはさらに当事者としての三条実美のこっけいさもあったりして、それは明治という時代だけでなく、人間がある限り起こるであろう人間喜劇がこれでもかというばかりに描かれている。
特に大久保利通である。
西郷とともに薩摩藩から出た明治維新の立役者であるが、この時期の大久保は自らの死を覚悟の上、西郷と対峙しようとする。
西郷と大久保の対比も、この巻で司馬は書いているが、さて司馬にとってどちらの方が好みであったか、まだこの巻では判断できない。
(2018/01/09 投稿)

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01/08/2018 ショベルとスコップ - わたしの菜園日記(1月7日)

お休みの人も
多いと思います。
祝ふかに成人の日の鶴舞へり 清水 基吉
以前は1月15日が成人の日で
その日に「青年の主張」コンクールなんかがあって
よく見ていました。
「私の家は代々続く農家で…」みたいな
朴訥とした青年がスピーチする
そんな気分が成人の日と
よく似合っていたものです。

冬場の農家の人は
大変だと思います。
何しろ寒い。
私の畑でも
霜柱ができるほどで
今は収穫の野菜はありません。

むしろ、寒起こしといって
土を休ませる期間になっています。
下の写真が
寒起こしした畑です。


NHKテキスト「やさいの時間」1月号(NHK出版・669円)でも
土の「困った」解決します!
や
それ誤解かも!? 野菜作りあるある!NG集
といった特集が組まれていて
この時期でしか
学べないことがたくさん載っています。
それとは関係ないのですが
「菜園こぼれ言葉」というミニコラムで
「ショベルとスコップ」が
取り上げられていて
これは関東と関西では呼び方が反対らしく
そういえば
子どもの頃
ショベルは柄の長い方で
スコップは移植ゴテをそう呼んでいましたが
これは関西風。
皆さんは
どちらでしょうか。

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01/07/2018 だじゃれ世界一周(長谷川 義史):書評「この絵本で、わろてんか」

正月くらいは
笑って過ごしたいもの。
そういっている間に
もう一週間経ちますね。
せめて最初の絵本は楽しく
紹介しましょう。
笑いといえばこの人、
長谷川義史さん。
しかも『だじゃれ世界一周』。
だじゃれというのは
ツボにはまればいいですが
結構はずれもするもの。
今回はそのはずれだじゃれが多いかも。
でも、
長谷川義史さんは絵を見ているだけで
笑えてくるから
良しとしましょう。
じゃあ、読もう。

長谷川義史さんはさすが関西人。あのお笑い天国よしもとのDNAが脈々と流れているようで、その作品でもお笑いを描いたものが多い。
そもそも長谷川さんの絵の力強さは笑いも醸し出していて、その絵だけで笑えてしまうくらいだ。
長谷川さんの代表作はたくさんあるが、第3回MOE絵本屋さん大賞で3位となった作品が『だじゃれ日本一周』で、この絵本はその続編にあたる。
日本を飛び出して世界だから、長谷川さんの笑いも地球規模になった。
この中で紹介されている国は49カ国。それしかだじゃれが浮かばなかったと長谷川さんは書いているが、確かにそれも首を傾げたくなるだじゃれも含まれる。
日本とちがって、やはり世界は手ごわい?
では、どんなだじゃれかといえば、まずは日本。
忍者が海に飛び込んでいる絵に「ジャポーン」。(これはまだよくできています)
それに対になったページで「からだうくらいな」。(ウクライナのこと。民族衣装を着た男が踊っています)。
まあだじゃれの方はそんな感じで、ちゃいな(これは中国。チャイナのだじゃれ。長谷川さんは中国のだじゃれは絵にしていません)
長谷川さんは49カ国で挫折しましたが、せっかくなので世界地図を見ながら、自分で考えてみるのもあるカナダ。
(2018/01/07 投稿)

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01/06/2018 日本史の内幕(磯田 道史):書評「古文書が読めたらどんなに楽しいだろう」

さあいよいよ明日から
NHK大河ドラマ「西郷(せご)どん」が
始まります。
昔とちがって
大河ドラマといっても
なかなか視聴率がとれなくなっていますが
見ている側からすれば
視聴率よりも
面白ければよくて
1年という長い放送期間を考えれば
視聴率が低いのも
仕方がないような気がします。
けれど、今回はなんといっても
人気者西郷隆盛が主人公ですから
期待も膨らみます。
その前に
歴史を楽しめるよう
磯田道史先生の『日本史の内幕』を読んでおきましょう。
じゃあ、読もう。

今や大人気の歴史学者磯田道史先生は、古文書が大好き。
日本史の内幕を知りたいなら、古文書を読むしかないとまでいう。
ただ古文書を読むのは至難の業だ。まずもって、みみずがのたくったような字が読めない。まして文語体の「候」なんて書かれていてもわからない。
だとしたら、磯田先生の本を読むしかないでしょ。
「細部にこだわると、(中略)歴史観に関わる大きな問いかけの答えにも近づける」と、磯田先生はおっしゃっている。
その磯田先生は今年のNHKの大河ドラマ「西郷(せご)どん」の時代考証を担当している。
ちなみにこの本は「読売新聞」に2012年から2017年にかけて連載していた「古今をちこち」が基本の収録になっているので、これらの年度の大河ドラマの主人公についての古文書裏ばなしも多く収録されている。
例えば、井伊直虎や「花燃ゆ」の吉田松陰、あるいは「真田丸」の真田幸村とか。
面白かったのは「秀吉は秀頼の実父か」という話で、磯田先生の説は「違う」というもの。では、実父は誰かという詮索は、残念ながら、ここでは書かれていない。
西郷隆盛のことだが、彼の書いた書状のことはこの本でも紹介されている。
ただ磯田先生は維新の頃の京都の民衆が訴えた書きつけを紹介した話(「維新の京都、民衆の肉声」)で、こんな風に書いている。
「維新史から「民衆」の視点が抜け落ちてはいけない」と。
歴史には多くの偉人や巨人が登場するが、磯田先生のいうように、本当に歴史を動かしたのは名もない民衆だったにちがいない。
だからこそ、歴史は面白いのだから。
(2018/01/06 投稿)

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01/05/2018 空あかり(清武 英利):書評「空に広がっていく日の光のように」

仕事初めは
昨日だったでしょうか、
今日からでしょうか。
新しい決意で
会社に向かった人も多いと思います。
そんな人に
倒産会社のその後を描いた
本を紹介するのですが
それはどんなことがあっても
くじけないで
頑張ってもらいたい
エールです。
清武英利さんの『空あかり』は
破綻した山一証券で働いていた人たち100人の
そのあとの姿を描いたもの。
タイトルのとおり、
彼らの姿こそ
空に広がる日の光そのもの。
生きる勇気をもらって下さい。
じゃあ、読もう。

会社の魅力は売上規模や従業員の数といったように多岐にわたるが、創業からの歴史もそのひとつといっていい。
まして創業100年ともなると、そうはない。
それに当時日本の四大証券の一翼を担っていたのが「山一証券」であった。
その「山一証券」が創業100年を迎えた1997年、自主廃業という破綻を迎えたのだから歴史の皮肉とも思える。
1997年11月24日の廃業を迎える前後のありさまを、その清算業務に従事した12人の「しんがり」の姿を描いて感動をさそったノンフィクション『しんがり』が刊行されたのは2013年秋。
その著者清武英利氏は、それでも、この倒産劇には「書き洩らしたこと」がたくさんあると思っていた。
およそ200人の「清算社員」の苦しみ、会社全体で4割いたという女性社員、あるいは山一社員の転職のありさま、それを支えた家族。
この本はそんな彼ら102人の姿を描いている。
しかし、私たちは忘れてはいけない。
破綻当時山一グループには1万人の従業員がいたのだ。
100人の姿では見えてこない、9900人のその後があったはず。
むしろ描かれることのない、声すらあげない人たちが大勢いることを忘れてはいけない。
確かに会社が破綻することでそれまでとは違う人生をしっかりと歩み出せた人はいる。この本の中でもそういった人たちの姿は感動だ。
しかし、同じようにそれまでと違う、暗い人生をやむなく歩まされた人たちもいたはず。
山一証券の破綻は20年前の悲劇ではない。
あるいは「金融業界」だけのそれでもない。
彼らの姿は今でも多くの示唆に富んでいる。
(2018/01/05 投稿)

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去年の年の暮れに
本箱の片づけをしようかと
並んだ本を見ていて
今日紹介する
リチャード・カールソンの
『小さいことにくよくよするな!』を
見つけた。
1998年、つまり20年前に出た本で
私が持っている本の奥付をみると
その年に買っている。
つまり、この本を20年ぶりに
読むことになる。
しかも、この本を
きれいにブックカバーまでしていて
20年前の私は
結構感銘を受けた一冊であったのだろう。
でも、
20年経って
やっぱり「小さいことにくよくよ」している自分がいて
この本は結局役に立たなかったのかも。
じゃあ、読もう。

2017年のベストセラーを見ると、佐藤愛子さんの『九十歳。何がめでたい』が堂々の1位で、『ざんねんないきもの事典』が2位、恩田陸さんの直木賞受賞作『蜜蜂と遠雷』と続く。
10位までの本の中に、ビジネス本あるいは自己啓発本が一冊も入っていないのは、潮流であろうか。
「しょせん、すべては小さいこと」という副題のついたこの本が日本で出版されたのが1998年6月で、この年のベストセラーで第5位と、よく読まれている。(ちなみにこの年の1位は池田大作氏の『新・人間革命』だった)
第6位には『他人をほめる人、けなす人』(フランチェスコ・アルベローニ)と続くから、この時代はまだビジネス本あるいは自己啓発本を読んで、自身を高めようという人が大勢いたと思われる。
では、そんな人が最近は少なくなったかといえば決してそうではないだろう。
自身を高める技術を本から仕入れなくなっただけではないか。
人間というのはやはりいつも自分を少しでもよくしたいと思うもの。ましてやこの本のタイトルのように、「小さいことにくよくよする」自分を変えたいという人は多いはず。
この本のヒットはそういうところにある。
この本には100の項目が紹介されている。
「どれも、前よりリラックスして穏やかで愛情深い人になるための戦略」で、例えば、「頭で悩みごとの雪だるまをつくらない」とか「人の話は最後まで聞こう」といった風に、案外項目のタイトルだけでも効き目があるかもしれない。
大事なことは、それらを忘れないこと。
まあ、忘れたとしても「小さいことにくよくよ」することもないが。
(2018/01/04 投稿)

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01/03/2018 七十句/八十八句(丸谷 才一):書評「寝正月指折る癖の抜けきれぬ」

目出度さもちう位成おらが春 小林 一茶
この有名な俳句は
小林一茶、57歳の時のもの。
さて自分の春の目出度さは
どれ位なのかわかりませんが
今年最初の本の紹介なので
中くらいではもったいないので
特上の一冊を。
丸谷才一さんの
『七十句/八十八句』。
あの丸谷才一さんの句集ですから
目出度いような感じがします。
ちなみに
書評タイトルの
「寝正月指折る癖の抜けきれぬ」は
私の駄句。
じゃあ、読もう。

「枕もとに本積めばこれ宝船」。
さすが希代の書評家でもあった丸谷才一さんならではの俳句ではないか。
1995年に七十歳になった折に、その年の数だけ集めて「七十句」と名付けた句集の「新年」の部にはいっている句である。
ちなみに、丸谷さんは「俳句」と呼ばず、父親がそうであったように「発句」と呼ぶ。
そのことは「父から受けた、ただ一つの文学的影響」という。
ただ丸谷さんが発句に夢中になるのは中年になってから。
それでも「玩亭」という俳号をもちながら、「巧拙はもちろん気になるが所詮は小説家の余技」と謙遜するが、どうしてどうして冒頭の句の巧さ。
もうひとつの「八十八句」は亡くなる年の八月に「七十句」以後の発句を編んだもの。
その中から「新年」の句をひとつ紹介する。
「新古今八百年まつる寝正月」。
これなども丸谷さんらしい句であるが、全体の出来からいえば「七十句」の方がいいような気がする。
やはり七十歳はまだまだお若いということかしら。
これら二つの句集を収めたこの文庫には、歌人の岡野弘彦さんと俳人の長谷川櫂さんと巻いた歌仙も収められていて、その解説として岡野さん長谷川さんお二人の対談もある。
歌仙を巻くとあるが、これはなかなか高等な文芸で五七五と七七という歌で相互に繋いでいくもの。
お二人の対談を読まないと中々その面白さがわからない。
そんな会で丸谷さんがあの朗らかな笑顔で詠んでいたのかと思うだけでめでたくもなる。
(2018/01/03 投稿)

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