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プレゼント 書評こぼれ話

  今日で9月もおしまいですが
  今年の9月は雨ばかりだったような気がします。
  雨が降らなかったのは
  わずか3日ほどだったとか。
  もっとも秋というのは
  雨の多い季節でもあって
  「秋霖」なんていう言葉もあります。

     秋霖に濡れて文字なき手紙かな     折笠 美秋

  こんな時だから
  元気を出さないと。
  そんな気分にぴったりの絵本を
  今日は紹介します。
  田島征三さんの『とべバッタ』。
  「歳時記」に
  この絵本そっくりの句を見つけました。

     しづかなる力満ちゆき螇蚸とぶ      加藤 楸邨

  螇蚸はバッタと読みます。

  じゃあ、読もう。

 

sai.wingpen  バッタには羽があるんだ                   

 この作品は力強い躍動感のある絵で定評のある田島征三さんの絵本であることはまちがいないが、絵をはずして(もちろんそんなことはできないが)童話として読んでも面白いし、深い意味をもったストーリーだと思います。
 ちょうど宮沢賢治の「よだかの星」を読んだような。
 そんな物語に田島さんの絵が付くのですから、もうこれ以上の絵本はない気がします。

 小さな茂みの中に一匹のバッタがいます。
 彼のまわりには蛙とか蛇とか蜘蛛とか「おそろしいもの」たちがたくさんいて、彼はいつもびくびくしていました。
 でも、ある時彼はそういう生活が嫌になります。
 そして、ある日、彼は決意したのです。
 こんなところから飛び出すことを。
 そんなバッタを「おそろしいもの」が見逃すはずかありません。
 蛇が蛙が蜘蛛が彼に襲ってきます。
 けれど、間一髪のところで逃げのびます。空の高みへ。
 でも、とうとう彼も力尽き、地上へと落ちていきます。
 落ちながら、彼は自分に羽があることに気づきます。今まで一度も使ったことはないけれど。
 そして、ついに彼は、バッタは飛んだのです。

 こんなストーリーですが、もしかしたらこの絵本を本当に手にしたらいいのは、人生の道に迷っている大人の人のような気がします。
 自分に付いている羽にも気がつかず、飛ぶことをためらっている人。
 絵本はけっして子供だけのものではありません。
 きっとこの絵本で生きることへの勇気づけを感じる人はたくさんいると思います。
 みんなが自分の羽を見つけられたら、どんなにいいでしょう。
  
(2018/09/30 投稿)

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  今日紹介する短編小説は
  太宰治の「満願」。
  太宰治の作品だから
  もちろん全集とか太宰治の文庫には収められているのは
  当然であるが
  杉本彩さんが責任編集をした
  『エロティックス』という
  官能小説の短編のアンソロジーの中の
  一篇に出てきたので
  びっくりした。
  確かに夫婦生活を禁じられた若い奥さんの話ではあるが
  それを団鬼六さんとかと一緒に
  並べてしまう杉本彩さんに
  脱帽だ。
  太宰治も苦笑いかも。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  白いパラソルが効果的                   

 昭和13年(1938年)9月、「文筆」という雑誌に発表された短編。
 文庫本にしてわずか3ページほどの作品だから、短編というより掌編小説ということになるだろうか。

 太宰治の人生は大きくいうと3つに分けることができる。
 まずは放蕩時代。次に結婚して穏やかな時代。そして、戦争が終わって時代の寵児となるものの晩年となってしまう時代。
 では昭和13年はどのあたりになるだろうか。
 この年太宰は井伏鱒二の紹介で後に妻となる美知子さんと見合いをしている(結婚は翌年の1月)。
 この時期を境にして安定の時代に入っていくことになる。
 この時期に書かれた作品は「走れメロス」「女生徒」「富嶽百景」など、太宰を読むのに欠かせないものが多い。

 そういう安定の予感を感じさせるのが、この「満願」であろう。
 太宰が伊豆の三島で小説を書いている頃体験したという体裁になっている。
 その町で知り合った町医者のところに通う「清潔な感じ」の若い奥さんがいた。彼女の夫は肺を悪くして、町医者は彼女に夫婦の営みを禁じた。
 そしてとうとうその禁止が解かれることになった。
 ただそれだけの話ながら、太宰はそんなささやかなことでも書き留めておきたくなるほど仕合せな時間を過ごしていたのかもしれない。

 おゆるしが出た奥さんが「白いパラソルをくるくるっとまわ」すシーンがあるが、野村芳太郎が監督した「張込み」(松本清張原作)にもよく似たシーンが出てくる。
 脚本は橋本忍だが、もしかしたら橋本は太宰のこの作品のことが記憶にあったのだろうか。
  
(2018/09/29 投稿)

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  日本の世帯のありようが
  だいぶ変わってきているといいます。
  少し前であれば
  夫婦二人に子供が二人というのが
  平均的な世帯構成でしたが
  最近は高齢化の影響でしょうか
  一人世帯が増えているそうです。
  今日紹介する
  桜木紫乃さんの『ふたりぐらし』は
  もう少し肩を寄せ合っている
  暖かみを感じる数です。
  もちろん、数が複数になれば
  ぶつかることもまたあるのですが、
  それも含めての
  二人ぐらしなのでしょう。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  踏むのも踏まれるのも嫌                   

 この本の帯に「夫婦はいつから、夫婦になるのだろう」とある。
 その答えといえるだろうか、桜木紫乃さんはこの本が出来たあとのインタビューで、「夫婦は、ゆっくりと時間をかけて夫婦になって行けばいいんだな」と思ったという。
 それは多分この短編連作を執筆するなかで得た答えかもしれない。
 実際この作品は2015年から書き始めて2017年まで時々の時間を置きながら小説誌に発表されてきた。ちょうどこの物語の主人公二人の時間を紡ぐようにして。

 この作品は10篇の短編から出来ている。
 桜木さんは一つひとつ独立した短編として読んでもらえたらと、先のインタビューで話していて、確かにそれは短編としての魅力を持った作品もあるが、やはり10篇を読み通すことで、主人公たちの心の変遷が切なく、感動を誘うように感じる。

 なんといってもはずせないのが冒頭の「こおろぎ」という作品。
 ここで主人公の元映写技師の信好と看護師の紗弓の二人が出会い、生活をともにするきっかけとなる挿話が描かれる。
 ある日スーパーの入り口でこおろぎを逃がしている娘、それが紗弓ですが、に会った信好が何をしているかと問うと、娘は「踏まれるほうも踏むほうも嫌だろうから逃がしている」と答えた。その答えに「あなたいいひとだな」と信好は声を出す。
 それがふたりぐらしを始めるきっかけだ。

 この作品にはこの二人以外にも、かつて二人ぐらしをした人や新しく二人ぐらしを始める人などが遠景のように描かれる。
 「水色を塗り重ねるような小説」を書きたかったという桜木さんだが、とてもいい色の作品に仕上がっている。
  
(2018/09/28 投稿)

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  本屋さんの経営が難しいのは
  低く抑えられた荒利率の問題がある。
  だから、本屋さんのレジあたりで
  文房具などを販売するのは
  店全体の荒利率を改善しようとするためだ。
  さらに街の小さな本屋さんに
  ヒット作が大量に入荷するかといえば
  それもない。
  売れる本も並べられないとしたら
  本屋さんの魅力は半減する。
  しかもネット書店の台頭、
  漫画や雑誌の販売不振と
  街の本屋さんにとって
  嫌な話ばかりだ。
  そんな中、がんばっている
  「小さな本屋」さんを紹介するのが
  今日紹介する
  和氣正幸さんの『日本の小さな本屋さん』。
  見ているだけで
  幸せな気分になります。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  一度はたずねてみたい本屋さんばかり                   

 出版不況と言われて久しい。
 そのせいか、街から小さな本屋さんが消えている。
 今年5月の時点で、全国の本屋さんの数は1万2千余り。前年から500店舗も減っているそうだ。それは10年前と比べると3割も減少しているという。
 街から本屋さんが消える意味は単に本や雑誌の販売拠点がなくなるというだけでなく、街の文化のありようが変わるということだと思う。
 だから、この出版不況の中、なんとか経営を維持しようとする、小さな本屋さんがいるだけでうれしくなる。

 この本は小さな本屋さんの魅力を伝える活動をしているライター和氣正幸さんが全国にある素敵な本屋さん23店舗を美しい写真とともに紹介してくれる幸福な一冊だ。
 この中で広島にある「READAN DEAT」という本屋さんの店主清政光博さんの「地元に文化的な場所が減っていくことへの憤りが店の原点」という言葉が印象に残る。
 こういう本屋さんがある街はまだまだ大丈夫ともいえる。

 ただこの本で紹介されている「小さな本屋さん」は昔ながらの本屋さんとは少し趣きがちがう。
 新刊と同じように古本を扱っていたり、コーヒーやビールが飲めたりもする。なんとパン屋さんと併設している本屋さんもあったり、真夜中だけ開店するお店もあったりする。
 どういうあたりが店舗維持の採算ラインかわからないが、おそらく店主の皆さんの気概はそういうところにはないような気がする。
もっと大きな自分の立ち位置があるのだろう。
 だから、ここに紹介されている本屋さんはどれも素敵な表情をしている。
  
(2018/09/27 投稿)

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  本は図書館で借りることが多いですが
  今日紹介する本は
  ちゃんと自分で買いましたよ。
  だって、この本は手離すわけにはいきませんから。
  それは霜月蒼さんの
  『アガサ・クリスティー完全攻略』。
  この1冊でアガサ・クリスティーの作品100冊分の解説と評価が
  詰まっているのですから
  これからアガサ・クリスティーを読破しようと
  思っている人には
  欠かせないはずです。
  ちなみに昨日紹介した『検察側の証人』は
  ★5つの「未読は許さん。走って買ってこい」評価でした。
  この評価には私も納得。
  この本を開きながら
  次のアガサ・クリスティーは何にしようか
  迷っています。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  この本は絶対手元に置いて下さい                   

 アガサ・クリスティーは「ミステリの女王」と称される英国の作家だ。
 生まれたのが1890年、亡くなったのが1976年というから、86歳まで生きたことになる。
 日本の作家でいうと三島由紀夫が亡くなったのが1970年、川端康成が1972年に亡くなっていることを考えると、アガサが亡くなった時には日本でも大きく報じられたはずだが、自分にその記憶がないのが残念だ。
 つまり、その当時ミステリにほとんど興味をもっていなかったということだ。

 もちろん、アガサ・クリスティーの名前は知っていたし、有名な作品『オリエント急行の殺人』とかは映画にもなっていたからいくつかの作品名は知っていた。
 作者の名前と作品名は知っていても読んだことがないのだから、どうもいただけない。
 弁明するわけではないが、そんな人も結構いるのではないか。
 この本の著者霜月蒼さんは「ミステリ評論家」を名乗りながらも、この本を書くまではアガサの作品はわずか7作しか読んだことがなかったというから、本好きといってもその読書経歴はさまざまだ。
  そんな霜月さんがアガサの作品はどんなミステリで、何が面白いかを解明しようと取り組んでくれたおかげで、日本におけるアガサ・クリスティーはうんと身近な存在になったのではないだろうか。

 なにしろ、この本1冊にアガサの作品が100冊網羅されている。
 しかも星印による「オススメ度」付き(★5つが満点)。
 さらにどのような「おはなし」なのか簡単な文章がついているが、「ネタバレ」がないようにも配慮されていて、この本さえあればあなたもアガサ・クリスティーのとりこ間違いなし。
  
(2018/09/26 投稿)

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  秋の彼岸も過ぎて
  秋も深まっていくでしょうが
  読書の秋もこれからが本番。
  せっかくなので
  面白い本を読みたいもの。

    長き夜の遠野に遠野物語      倉田 紘文

  そんなことを思っている人にぴったりなのが
  ミステリの女王アガサ・クリスティーの作品。
  案外秋の夜長とミステリは相性いいかもしれません。
  そこで今日紹介するのは
  『検察側の証人』という戯曲。
  一気に読んでしまいたくなるほど面白い。
  こんな作品ばかりだと
  秋の夜長もいいものです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  読み始めたらとまらない傑作戯曲                   

 ミステリの女王アガサ・クリスティーは小説だけでなく戯曲も何篇か執筆している。
 それも読ませるだけの戯曲ではなく、ちゃんと舞台にかけしかも上演としてロングランの記録をつくるほどの作品に仕上げているのだからたいしたものだ。
 この『検察側の証人』にしても基本的には動きの少ない法廷劇なのだが、マレーネ・ディートリッヒが主演した映画『情婦』の原作で知られるように、しかもこの映画は名匠ビリー・ワイルダーが監督して映画作品としてもよく出来ていた、多くの人々から喝采を浴びることになる。
 もちろん、活字だけで組まれた(但し、舞台配置図は載っている)戯曲でも、この作品の面白さは存分に味わえる。

 ある時レアードという青年が金持ちの婦人を殺害した容疑で逮捕される。
 彼は殺害された時間には家にいたと証言するが、そのアリバイを立証できるのは妻のローマインだけである。
 身内という立場であるが、本来であれば彼女は弁護側の証人であるべきはずが、この作品のタイトルが示すように、彼女は検察側の証人として召喚され、法廷に立つことになる。
 そして、裁判当日彼女が行った証言は殺害の時夫レアードが家にいなかったという不在の証明だったのである。
 ここまで読んできた人はこの書評は「ネタバレ」ではないかと憤慨するかもしれないが、実はこの作品の面白さはこの先にある。
 しかも二重に仕掛けられたドンデン返しの技にほれぼれしてしまう。

 さすがミステリの女王と呼ばれるはずだ。
  
(2018/09/25 投稿)

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 2週続けての3連休ですが
 どうも天候がすっきりしません。
 今がちょうど曼珠沙華が見頃で
 さすがに彼岸花と呼ばれる由縁です。

  20180923_104956_convert_20180923135917.jpg

  つきぬけて天上の紺曼珠沙華    山口 誓子

 この句のように
 すっきり晴れた空の下で楽しみたいですね。

 雨がつづいて
 やっと昨日の秋分の日に
 畑に行くことができました。
 先週蒔いたダイコン
 わずか1週間で芽を出してくれました。

  20180923_114429_convert_20180923140120.jpg

 畝の中にあるペットボトルは重石の役目。
 ナバナも芽を出していたので
 ひと安心です。

 安心できないのがミニハクサイ

  20180923_120807_convert_20180923140216.jpg

 4個の苗の3つまでは
 どうやら安全圏のところまで成長しましたが
 残る1個は
 大きくなるかどうも怪しい。
 そこでもう一つ苗を植えました。
 まあ一気に4つのミニハクサイを食べるわけではありませんが
 やはり人より遅れてくると
 気がかりになります。

 この畝には
 虫よけ対策として
 銀のテープをはりました。

  20180923_121536_convert_20180923140319.jpg

 右がキャベツ(まだまだ小さくてこれも心配)
 左がブロッコリーです。

 この日
 エクストラエリアの畝に
 カリフラワーの苗を植えました。

  20180923_110930_convert_20180923140014.jpg

 カリフラワーは初めて栽培する野菜です。
 どんなふうに
 あの白い花蕾を育てるのか
 少し勉強しないといけません。
 やはり初めての野菜は
 大きなっていく
 その過程も楽しみです。

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  今日は秋分の日
  秋彼岸でもあります。
  彼岸だけだと春の季語で
  そのためわざわざ秋彼岸としないといけません。
  「後の彼岸」という美しい言い方もします。

     人は灯をかこみて後の彼岸かな    三田 きえ子

  今日は
  安西水丸さんの『りんごりんごりんご りんごりんごりんご』という
  絵本を紹介するのですが
  りんごはいつの季節の季語だか
  わかりますか。
  最近は年中店頭にあるので
  わかりにくいですが
  秋の季語です。

     空は太初の青さ妻より林檎うく     中村 草田男

  つまり
  これからりんごのおいしい季節なのです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  前へ前へと進む力こそ物語の王道                   

 この絵本は「主婦の友(そう、あの「主婦の友社」が出版しています)はじめてブックシリーズ」の一冊で、「この絵本は0才から楽しめます」とあります。
 私はもちろん0才ではありません。
 この絵本の作者があの安西水丸さんということで手にとったのですが、もちろん60才を越えても楽しめます。
 ちなみに元々は2005年に刊行されていて、今回サイズを変えて2018年に新しく出ました。
 安西水丸さんの絵が大好きな人にはとってもうれしいですが、安西水丸さんを当然知らない0才の赤ちゃんもこの絵本はうれしいんじゃないでしょうか。

 だって、このりんごの表情がなんといっても、かわいい。
 何度も出てくる「りんご りんご りんご りんご りんご りんご」のリズムも軽快。ただし、0才の赤ちゃんにはやはり読んであげて下さいね。
 そのうちにむにゃむにゃが「りんご りんご・・・」になる日がきっと来ます。

 ある日りんごの木から転がったりんごがころころ転がって、最後は果物たちの(バナナとか栗とかスイカとかいろいろそろっていますが、なんといってもその色彩がとても素敵で、このあたりが大人ではなく0才の赤ちゃんでも楽しく読める要素だろうと思います)ピクニックに参加するという、とても単純な話です。
 単純でないと0才の赤ちゃんには無理ですが、よく読むと、前へ前へと進む力こそ物語の王道といえます。
 こういう絵本から世界を知ることになるのだと思いませんか。
  
(2018/09/23 投稿)

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  前の『明るい公務員講座』の時にも
  書いたかもしれませんが
  著者の岡本全勝(まさかつ)さんは
  元復興庁事務次官で
  内閣官房参与を務める
  れっきとした公務員です。
  前作に感動し、
  それに続くこの『明るい公務員講座 仕事の達人編』は
  どんな出来だろうか
  楽しみにしていたのですが
  やっぱりとてもよかった。
  若い人だけでなく
  部下をつかっている上司の人にも
  読んでもらいたい一冊に仕上がっています。
  この本の中で
  岡本全勝さんはこんな文章を書いています。

    本を読んだことの差は、必ず出てきます。

  こんな人が先輩、上司だったら
  どんなにいいでしょう。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  ビジネス本の特級品                   

 同じ著者による前作『明るい公務員講座』を読んだ時、自分の現役の、それも入社したての20代の頃にこの本に出合っていればどんなによかっただろうと残念で仕方なかった。
 「公務員講座」とあるように若手公務員向けに書かれた著作だが、一般の企業、いやいや自営業であろうと専業主婦であろうと働く人にとってどれほど役立つかわからない名著だと思っている。
 その本を読んで、次の段階に進む、つまりは中堅職員(職員という呼び方が公務員ですが)課長昇格を目指す職員向けに書かれたのがこの本、『仕事の達人編』である。

 この本の冒頭の「はじめに」を読んで、著者はやはり仕事が出来ることを再確認した。
 何故なら、前作のポイントがまず最初に書かれているのだ。
 前の授業内容のポイントをまず説明することは出来る講師の必須条件ではないか。
 しかも、最後の「あとがき」でこの本で何を伝えたかったかをポイントで説明している。
 冒頭と終わりの締めくくり方、会議で実践したらきっとできる人と見られるに違いない。
 こういうところにも著者の配慮がなされている。

 「あとがき」にそって書くと、この本では「仕事の能率を上げる方法」「仕事の質を高める方法」そして「仕事を支える生活」の重要性が説かれている。
 一応公務員向けの体裁にはなっているが、前作同様これからの日本経済を支えるすべての人に読んでもらいたい、そして出来れば何度も読んでもらいたい、ビジネス本の特級品なのだ、この本もまた。
  
(2018/09/22 投稿)

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  昨日紹介した
  内館牧子さんの『すぐ死ぬんだから』の主人公
  78歳のハナさんは多分
  今日紹介する
  樋口裕一さんの『65歳 何もしない勇気』の世界からは
  まったく違う人かもしれない。
  ハナさんは服装にも化粧にも気をくばる。
  何もしないのは
  だらしないと見る、そんなタイプの女性。
  何もしない派か
  その反対か
  そのことを決めるのも
  人それぞれ。
  答えなんてあるわけではない。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  みんなちがって みんないい                   

 高齢者というのは一般的には65歳からの人をいうようだ。
 後期高齢者が75歳からで、65歳から74歳までを前期高齢者と区分される。
 公的年金の支給も65歳だから、そのあたりがやはり高齢者といえる。
 ということは、この本のタイトルにある「65歳」というのは「高齢者」の人といってもいいのだろう。
 もっとも最近は皆さんお元気だから、65歳といってもまだまだ仕事をしている人も多いし、公的年金の支給を繰り下げしようという動きもある。
 だから、65歳といって一律にこうすべきということはない。
 要は自身がどのような人生の終盤を迎えるかだろう。

 著者は1951年生まれというから65歳を過ぎている。
 自身の日常に立ち返って考えたのが「心の断捨離」だという。そして、それをまとめたのが本書で、目次の章のタイトルを読むと著者がいいたいことがわかる。
 つまり、「我慢はしなくていい」「無理はしなくていい」「気をつかわなくていい」「好きな人とだけつき合えばいい」「楽しいことだけすればいい」となる。
 もっとも最後の「楽しいこと」には著者の好きな音楽や映画、あるいは本のことが出てくるが、きっとこの本を読んでいる人なら、そんなことも「言われたくない」にちがいない。

 人生100年の時代になって、65歳からまだ30年以上あるとしたら、やっぱりまだ我慢も必要だし、無理もする。嫌いな人ともつき合わないといけないのではないか。
 もちろん、それもこれも自身がどう考えるか。
 金子みすゞではないが、「みんなちがって みんないい」。
  
(2018/09/21 投稿)

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  女優の樹木希林さんが亡くなりました。
  75歳。
  「全身ガン」と公表した後も
  映画に出演されるなど
  樹木希林さんならではのジョークかとも思っていましたが
  やはり本当だったのですね。
  最近では「万引き家族」でいい演技をされていたのに。
  樹木希林さんの魅力は
  その声と抑揚もその一つだと思います。
  ドキュメンタリー映画「人生フルーツ」の
  ナレーションの素敵だったこと。
  樹木希林さんの声が
  人生を語っていたと思います。

  ご冥福をお祈りします。

  今日は
  樹木希林さんより3つも上の78歳の女性が主人公の
  内館牧子さんの
  『すぐ死ぬんだから』を紹介します。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  「虫の一群」になりたくない                   

 前作『終わった人』で定年を迎えた男性の右往左往ぶりをコミカルにそして切なく描いた内館牧子さんがこの作品で描くのは、78歳になる女性。言わずと知れた後期高齢者。
 『終わった人』でもそうだがそのタイトルにまずギョッとした人は多いと思う。この作品もそう。いくらなんでも『すぐ死ぬんだから』と思った人は、それでもきっとこの本を手にとるに違いない。恐る恐る。
 そして、表紙に描かれたシニアの人たちのその服装(「リュックに帽子」の一団を見て、この物語の主人公は「虫の一群」のようと形容している)を見て、「いるいる、こういう人たち」と思った人も何人もいたはず。
 それだけですっかり内館さんの企みにはまっている。

 主人公のハナは78歳、その夫岩造は79歳、結婚して50年以上になる。
 麻布で営んで酒屋を息子に譲り、今は悠々自適だ。
 ハナはいつも自分に磨きをかけ、岩造はもちろん周りの人からも「若い、きれい」と絶賛されている。
 一方でそんなハナを「若作り」と陰口をたたく人もいる。
 ハナはそんな陰口は気にしない女性だったが、最も愛し理解していたと信じていた夫岩造が突然亡くなり、しかも岩造には隠し子までいたことが判明し、ハナは一気に落ち込んでしまう。
 「セルフネグレクト」、つまり自分放棄になりかけたハナを立ち直らせるきっかけになるのは、岩造の妾であり隠し子だった、
 「すぐに死ぬ」だろうハナの立ち直りを見ていると、どのようなことであれ、向かわせるものがあるということの大切さを感じる。
 そんなところに本当のアンチエイジングがあるやもしれない。
  
(2018/09/20 投稿)

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  今日は子規忌
  俳人正岡子規が亡くなった日です。
  糸瓜忌とも獺祭忌とも
  言われます。

    叱られし思ひ出もある子規忌かな     高浜 虚子

  この俳句の下五の「かな」は切れ字です。
  イメージとしては「しっとり」。
  まさにこの高浜虚子の句がそうですね。
  「かな」が「しっとり」というのは
  今日紹介する
  夏井いつきさんの
  『世界一わかりやすい俳句の授業』に
  書かれています。
  正岡子規が亡くなって100年以上経って
  こうして今でも
  俳句の世界が隆々としていることに
  正岡子規はしたりと思っているのか、
  びっくりしているのか。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  「才能アリ」といわれるまで                   

 最近の俳句ブームはこの本の著者である夏井いつきさんに負うところが多い。
 この本でもそうだが、「夏井いつき」と銘打った、そして彼女の写真のついた俳句本がたくさん出ている。
 それもTVの人気番組「プレバト!!」の影響が大きいと思うが、夏井さんはそれだけに限らず多くの俳句番組や俳句イベントに顔を出す。
 これは本の中でも夏井さんが話しているが「俳句のタネまき」活動の一環なのだろう。
 夏井さんの活動は見事に芽を出し、花が咲いたということだ。

 本の中で夏井さんが話していると書いたが、この本は俳句をやってみたいと思っている初級者向けの入門本として書かれたもので、出版社の編集者が夏井さんに俳句を教わる対話形式で出来ている。
 内容は入門本だけあって俳句を少しでもかじった人には簡単すぎて物足らないかもしれないが、とてもわかりやすく、しかもこの対話形式が読みやすく、スイスイ頭に入ってくる。
 その意味では「世界一わかりやすい」というのは誇大表示ではない。

 最初の授業で夏井さんは「俳号」を持つことを薦めている。
 初心者がヘタな句を詠んでも「俳号」があれば直接傷つくこともないという、これも夏井さんらしい発想といえる。
 ここからどんな授業が始まるか期待が高まる。
 「一物仕立て」であったり「取り合わせ」であったり、「切れ字」といった俳句のオーソドックスな勉強はきちんと入っているのもうれしい。
 夏井さんに「才能アリ」と褒めてもらえるまでがんばりましょう。
  
(2018/09/19 投稿)

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  沢木耕太郎さんによる
  山本周五郎短編選集「山本周五郎名品館」シリーズも
  今日紹介する
  第4巻『山本周五郎名品館Ⅳ 将監さまの細みち』で
  終了となる。
  今回の書評のタイトルにしたが
  どうして沢木耕太郎さんが
  選んだというだけで
  その作品が読みたくなるのだろうか。
  なんといっても
  沢木耕太郎さんの視線が
  自身のそれと近いものがあって
  それは
  沢木耕太郎さんを
  信頼しているということだと
  思う。
  それにしても
  山本周五郎はいいね。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  沢木耕太郎さんが選ぶだけで読みたくなるのは何故だろう                   

 ノンフィクション作家沢木耕太郎さんによる文春文庫オリジナルの山本周五郎短編選集全4巻の最終巻。
 山本周五郎はその生涯において300篇になろうかという短編小説を書いたという。
 沢木耕太郎さん選による選集では一巻につき9つの短編が収められているから全4巻で36篇となる。つまりはそれでもわずか1割の短編を読んだことにすぎない。
 せっかくなのでさらに多くの短編を読む機会を持たれることを薦める。
 そして、いつか沢木さんの選でなく自身の選による選集が編まれるといいだろう。
 
 この4巻めには、掲載順に「野分」「並木河岸」「墨丸」「夕靄の中」「将監さまの細みち」「深川安楽亭」「ひとごろし」「つゆのひぬま」「桑の木物語」の9篇の短編が収められている。
 有名な作品でいえば映画にもなった「ひとごろし」であろうか。臆病者と評判の武士がその汚名をはらさんと上意討ちの命を受け武芸者討伐の旅に出るという物語は松田優作主演で映画化されている。コント55号が演じた映画もあるそうだから、その方が作品の雰囲気に合っているやもしれない。
 私は「日本婦道記」の中の一篇にもなっている「墨丸」が好みだが、一方で岡場所の女たちを描いた「つゆのひぬま」も気に入った。
 「つゆのひぬま」とは「露の干ぬ間」と漢字で表記した方がわかりやすいが、岡場所のような場所で愛し合っても所詮はほんのわずかなことと年かさの女はいうが、その言葉を確かめるように若い女が客の男と情を通じる。
 「つゆのひぬま」という言葉の持っているやわらかな気分が好きだ。
  
(2018/09/18 投稿)

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 秋といえば秋刀魚
 今年は豊漁だとかで楽しみにしていたのですが
 北海道の地震の影響で
 そんなに安くはなっていないみたい

     秋刀魚焼くどこか淋しき夜なりけり      岡安 仁義

  20180913_185420_convert_20180916143630.jpg

 秋刀魚の塩焼きに欠かせないのが
 大根おろし。
 大根自体は冬の季語ですが
 秋となると
 「大根蒔く」という季語になります。

    大根をきのふ蒔きたる在所かな     大峯 あきら

 この俳句のとおり
 昨日の日曜(9月16日)ダイコンのタネを蒔いてきました。

 畑で推薦している栽培は
 ひと畝に半分を使ってダイコンを4本育てるというものですが
 私の畑では
 ひと畝全部ダイコンを育てることにしました。

  20180916_093835_convert_20180916143911.jpg

 それでも10本がせいぜい。
 うち、青首ダイコンを5本、
 聖護院ダイコンを2本、
 残りは亀戸ダイコンにしました。
 思った以上に残暑が早くゆるみましたので
 先週播いた方がよかったと
 少しは思いながらも
 先週作った畝に種蒔き用に穴をあけて
 種蒔きをしました。

 ダイコン以外にも
 冬野菜や春野菜の種を蒔く時期でもあって
 歳時記には「秋播」という季語がのっています。

    うしろから山風来るや菜種蒔      岡本 癖三酔

 この秋の句の季語は「菜種蒔」です。
 この夏がんばってくれた長ナスを伐採し、
 そのあとに
 ナバナの種も蒔きました。

 ミニハクサイキャベツは生育には
 ちょっと苦労していて
 植え直ししたミニハクサイ
 なんとか大きくなってきましたが

  20180916_100623_convert_20180916144011.jpg

 四苗のうちひとつがやはりダメで
 植え直ししました。
 キャベツも植え直し。

 この時期
 苗を植えたり
 種を蒔いたりするタイミングがあって
 葉ネギ
 夏の時期に蒔いた時は
 なかなか芽を出さなかったのですが
 先週蒔いた葉ネギ
 雨が多かったせいか
 芽が出てきました。

  20180916_082521_convert_20180916143712.jpg

 発芽には
 やっぱり水が必要なんでしょうね。

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  明日は敬老の日

    雀来て敬老の日の雨あがり     吉田 鴻司

  そこで今日は
  E・H・ミナリックの『おじいちゃんとおばあちゃん』という
  童話を紹介します。
  絵はモーリス・センダック
  訳はまつおかきょうこ(松岡享子)さん。
  この本は「はじめてよむどうわ」の
  『こぐまのくまくん』シリーズの一冊。
  なので
  4才から小学校初級向きとなっています。
  子供たちが初めて読むには
  いい本です。
  こんな本を
  お孫さんと一緒に読めたら
  どんなにいいだろう。
  そんなふうに思う、年齢になりました。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  おばあちゃんのお話がきけることの幸せ                   

 父方の祖父は早くに亡くなり、祖母も私が生まれて間もなく亡くなった。
 母方の祖父は結構長生きしたが、その膝に抱かれた記憶があまりない。
 世の中におじいちゃん子おばあちゃん子がいることは知っているが、自身そんな記憶がないからうらやましくもある。
 なので、この童話(これは「はじめてよむどうわ」シリーズの一冊なのだ)に登場するこぐまのくまくんのことをいいないいなと思いながら読んだ。
 だって、くまくんはおじいちゃんとおばあちゃんにとっても愛されていうのだから。

 ある日こぐまのくまくんは森の中の小さな家に住んでいるおじいちゃんとおばあちゃんをたずねます。
 くまくんはここに来るのが大好きなのです。
 何故なら、この家にはきれいなものが飾ってあったり、おばあちゃんのごちそうがいただけるのですから。
 しかも、おじいちゃんは遊んでくれるし、おばあちゃんは楽しいお話を聞かせてくれます。

 この本の中には四つの童話がはいっていて、最初がおじいちゃんとおばあちゃんの紹介になっていて、つぎに若い頃のおばあちゃんが経験したこまどりとの交流、次はおじいちゃんが話してくれる「こびとのコブリン」のお話、そして最後はすっかりくたびれて眠ってしまったくまくんをおとうさんとおかあさんが迎えにくるお話。
 ひとつひとつ読んでもいいし、まとめて読んでもおかしくない。
 とってもうまくできています。

 この本は童話ですが、絵もちゃんとあって、しかもそれが『かいじゅうたちのいるところ』のモーリス・センダックですから、それもうれしい一冊です。
  
(2018/09/16 投稿)

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  私たちの世代からいうと
  今日9月15日は敬老の日ということになります。
  10月10日なら体育の日というように。
  ところが休みを長くとるように
  そういう祝日が動くということになってしまって
  なんだか敬老の日といわれても
  いつなのか
  よくわからなくなりました。
  ちなみに今年の敬老の日
  明後日17日です。
  今日は
  沢木耕太郎さん編の
  『山本周五郎名品館Ⅲ 寒橋』を
  紹介します。
  今の季節の読書に
  ぴったしの一冊です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  この巻全作読ませます泣かせます                   

 ノンフィクション作家沢木耕太郎さんによる文春文庫オリジナルの山本周五郎短編選集全4巻の3巻め。
  表題となった「寒橋」(「さむさばし」と読む)は山本周五郎の創作の橋の名ではなく、現在の築地のそばの一角にあった明石橋の俗称のことだと、巻末の沢木さんの「解説エッセイ」に書かれている。
 何故沢木さんがそこにこだわるかというと、沢木さんの本籍が小説の中にも登場する小田原町で、沢木さんの父親はそこに住んでいたという。
 そういう因縁の地が舞台の短編「寒橋」は、沢木さんのそういう思いとは別に深い父と娘の情愛にあふれた作品である。

  この3巻めには、掲載順に「落ち梅記」「寒橋」「人情裏長屋」「なんの花か薫る」「かあちゃん」「あすなろう」「落葉の隣り」「茶摘は八十八夜から始まる」「釣忍」の9篇の短編が収められている。
  「寒橋」もいい短編だが、この巻でいえばなんといっても「かあちゃん」であろうか。(「人情裏長屋」も好きだし、名作『さぶ』の世界を短編にしたような「落葉の隣り」もいいし、「落ち梅記」だって外せない。つまりはこの巻はほぼ全作いい)
 「かあちゃん」は沢木さんに言わせると「よくある人情話のように見えて、これほど完璧に、これほど美しく仕上げられた例を知らない」と絶賛である。
 貧しい長屋暮らしの中でこれほど美しい家族があろうか。これは山本の創作かもしれないが、こういう「かあちゃん」とこういう家族がきっといると信じたくなる。

 最後の「釣忍」は「シダ植物のシノブグサの根や茎を束ねて、緑葉の涼しさを楽しむ」もので、夏の季語にもなっている。それがうまく作品に生かされている。
  
(2018/09/15 投稿)

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  今日は図書館本の紹介です。
  なんといっても
  いいタイトルです。
  『図書館に行ってくるよ』。
  実際、私もこの言葉をよく使います。
  毎週使ってるかな。
  私は今近くの図書館をほぼ2カ所使っています。
  どちらも自転車で20分あれば
  着けます。
  もともと図書館の近くに住みたいというのが
  私の希望でしたから
  ほぼ満足しています。
  だから、
  図書館に行ってくるよ、です。
  ちなみにこの本も
  図書館で借りました。
  著者は近江哲史さん。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  図書館も好きだし、図書館本も好き                   

 図書館が好きだ。
 今では週に一度は必ず足を運ぶ。
 いつ頃から好きになったか、あまり記憶は定かでないが、学校図書館に足繁く通った覚えもないし、若い頃の公立図書館はカビ臭く暗い印象しかなかった。
 そんな公立図書館が明るく全国の多くの場所に開設されていくようになって自分の図書館熱が一気に高まった気がする。
 好きだから、図書館のことを知りたくなる。
 貸出のことや予約本のこと、レファレンスのこと、図書館サービスのことなど。
 だから、大手印刷会社を定年した著者が自身の体験や知識を生かして2003年にこの本を刊行したことを知らなかったのはいささかうかつだったが、実際図書館をテーマにした本もまたたくさん刊行されているので、かなりしっかり観測する必要があるのも事実だ。

 この本の場合、副題にあるように「シニア世代」にとっても図書館活用がうまくまとまっている。
 「ひまつぶしに出掛ける」「ものを調べに出掛ける」「読書に出掛ける」「生涯教育の場を求めて」「イベントに参加する」、これらが著者の見たシニア世代の図書館活用ということになる。
 実際今図書館に行くと、開館と同時に多くのシニア世代の姿を見かける。
 「ひまつぶし」が悪いわけではないが、新聞や雑誌を見ながらぼんやりしている姿に拒否反応をおこす人もいる。
 だから、著者は自分に合ったテーマを何か見つけるといいとしている。
 私はその先に発表の場を図書館側が作るといいと思っているが、そこまで図書館に期待はできない。
 では、どうすればいいか。
 案外このテーマで図書館を見ると、図書館に行くのがもっと楽しくなるかもしれないが、どうだろう。
  
(2018/09/14 投稿)

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  今でも本屋さんに行くと
  葉室麟さんの新刊が
  出ていないか
  必ずチェックします。
  今のところ、
  今日紹介する『蝶のゆくへ』が
  一番新しいですね。
  この本は明治期の新しい女性が主人公。
  葉室麟さんがこのような作品を
  書いていたのは
  ちょっと意外な感じがしました。
  葉室麟さんには
  書きたいことが多過ぎたのかもしれません。
  この作品の主人公は
  新宿中村屋の創業者のひとり、
  きっと読み終わったあとは
  新宿中村屋のカリーが食べたくなりますよ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  本を読んでカレーを食べるのもいい                   

 新宿中村屋といえば、「カリー」という人は多いはず。
 今そのホームページを開くと、新宿中村屋と「カリー」の歴史を見ることができる。
 そこにまず登場するのが明治34年(1901年)に本郷の東京大学正門前にパン屋を始めた創業者相馬愛蔵とその妻・黒光の名前だ。
 昨年12月に急逝した葉室麟さんが2016年8月から一年間雑誌「小説すばる」に書いていた本作の主人公がこの相馬黒光(結婚する前の名が星りょう)なのだ。

 りょうは1876年生まれで、この物語は彼女が18歳の春、明治女学校に入学するところから始まる。
 りょうの一生が描かれているので長編小説ということになるが、7つの章はどちらかといえば短編の味わいもあり、連作集といってもいいかもしれない。
 何しろそれぞれの章で、北村透谷や島崎藤村、あるいは樋口一葉といった明治の文化人が主人公のようになって描かれるのだから。
 そして、最後の章ではりょうの娘俊子がインド人の革命家ボースと結婚し、新宿中村屋の名を高める「インドカリー」を生み出すことになる。

 こう書けば波乱万丈に飛んだ相馬黒光の人生を描いたようであるが、それが葉室さんの最後の作品であるなら、とても違和感がある。
 葉室さんは女性を描くのも巧かったが、やはり男性を描いてのことで、女性を主人公にして描いてもそれは葉室さんの世界観とはちがうような気がする。
 本当にこれはが葉室さんの最後に描きたかったものだったのだろうか。

 もしかしたら、葉室さんはこの作品の主人公星りょうに仮託して、もっと違うメッセージがあったようにも感じるのだが。
  
(2018/09/13 投稿)

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  今日は
  柚月(ゆづき)裕子さんの『慈雨』という
  長編ミステリーを紹介します。
  この作品は
  岩手のさわや書店田口幹人さんや松本大介さんが
  絶賛していて
  それに惹かれて読んでみました。
  柚月裕子さんも
  岩手県の出身です。
  こういう作品を読むと
  若い頃にもっと読んでいたら
  もしかしたら
  自分の人生も変わっていたかもなんて
  思ったりします。
  いい作品でした。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  これはあなたにとって恵みの雨となる作品になるか                   

 時々、美しい日本語に胸をつかれることがある。
 「慈雨」、じう。これもそんな美しい日本語の一つだ。
 調べると、「万物を潤し育てる雨。また、日照り続きの時に降る雨」とある。いわゆる、恵みの雨だ。
 この長編ミステリー小説の主人公、神場智則にとって、何が「慈雨」であったのだろう。

 神場は三月に60歳で42年働いた警察官を定年退職した男だ。
 42年の間で経験したさまざまなことを顧み、妻香代子と四国巡礼の旅に出た。神場には妻にも話していない過去があった。
 それは16年前の少女殺人事件だ。
 事件は犯人逮捕で決着したはずであったが、そのあと神場は犯人の男にアリバイがあったという証言に遭遇する。だとしたら、これは冤罪。上司とともに捜査のやり直しを上層部に願い出るが、却下され、神場は引き下がるしかなかった。
 神場はそのあと、しばしば少女が出て来る悪夢に悩まされる。そのこともあっての巡礼行だ。
 そんな時、また少女誘拐殺人事件が起こる。
 犯人は、もしかすると、あの時の新犯人かもしれない。
 巡礼の旅を続けながら、後輩の刑事にアドバイスをする神場。
 もしその男が16年前の真犯人だとすれば、神場もまた責任を追及されるかもしれない。
 けれど、神場はそんな弱いおのれと決別する。
 犯人はつかまるか。
 神場の巡礼の旅と、犯人逮捕のその時が重なるように動いていく。

 主人公の神場にとっての過酷な運命はこの物語の終焉後始まるのであるが、そこまで作者は描くことはない。
 神場の悔いを洗い流してくれた「慈雨」は、逃げなかった自身だったのかもしれない。
  
(2018/09/12 投稿)

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  東日本大震災のあと
  ひとつの楽曲が多くの被災者に
  勇気をくれました。
  それが
  やなせたかしさん作詞の「アンパンマンのマーチ」。

    なんのために 生まれて
    なにをして 生きるのか
    こたえられないなんて
    そんなのは いやだ!

    いまを生きる ことで
    熱い こころ 燃える
    だから 君は いくんだ
    ほほえんで

  この夏日本列島のあちこちで起こった災害の
  被災された人たちが
  またこの曲で勇気をもてたら
  いいですね。
  今日はこの曲を作詞した
  やなせたかしさんの伝記本を
  紹介します。
  中野晴行さんの『やなせたかし - 伝記を読もう』です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  今を生きることで熱いこころ燃える                   

 昔から児童図書には「伝記」というジャンルは人気がある。
 自身が子供の頃を振り返ると、何冊か読んだという人も多いだろう。
 キュリー夫人やシュバイツァー博士といった医者や科学者、日本人でいえば野口英世あたりが「伝記」の王道だったような気がするが、最近はとても幅広いジャンルの、それでいてその人生には明確な歩みがある、人の「伝記」が目立つ。

 「やなせたかし」さんは漫画家という職業の人。もちろん、誰もが知っている「アンパンマン」の作者だ。でも、実際にはやなせさんは詩人でもあったし編集者でもあったし歌まで歌っている。
 むしろ漫画家というより、絵本作家あるいは童話作家という方はわかりやすいかもしれない。
 この本にも書かれているが、94年間のやなせさんの人生はけっして平坦ではない。
 何しろ「アンパンマン」がヒットするのは50歳を越えてからなのだから。
 それまで漫画といえば手塚治虫さんが全盛で、やなせさんの漫画は手塚さんの少年漫画からはうんと遠い世界だったのですから。
 それでもやなせさんは自身の世界観を変えなかった。
 「アンパンマン」という子供たちの人気者は、手塚漫画さえ成し得なかった子供の夢の結晶なのでしょう。

 子供たちが「アンパンマン」からやなせたかしという人を知り、その人に興味を持ってその「伝記」を読む。
 そして、その「伝記」からやなせさんが願った本当の正義を学ぶ。
 こうして、また一粒の種がまかれていくのだと思います。
  
(2018/09/11 投稿)

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 1週間に大きな出来事が2つもあると
 時間の感覚がおかしくなります。
 9月4日の火曜日に
 関西地方を襲った台風21号。
 50年に一度という強い勢力に
 屋根が飛んだりして、驚いたのもつかの間、
 今度は北海道で初めてとなる震度7の大地震。
 これが6日の木曜の未明。
 台風のことがうんと前のことに思えたりします。
 そんな時間の中で
 季節はやはり着実に動いていて
 近くの田んぼで
 稲刈りを見かけました。

   20180908_165057_convert_20180909094738.jpg

    世の中は稲刈る頃か草の庵        松尾 芭蕉

 畑の作業もそうで
 この秋、
 ミニハクサイの苗を初めて植え付けたのが
 たった2週間前。
 それが猛暑でダメになって
 再度植えたのが先週。
 今週それでもダメな苗があって
 また植え付けましたが
 すでに弱々しいのでどうなるか。
 写真は先週植え付けたミニハクサイです。

  20180908_163841_convert_20180909094446.jpg

 うまく定着した畑は
 もう安心という感じまで成長していますが。

 初めて栽培するブロッコリーの苗もダメになって
 ホームセンターで苗を買ってきて
 植え付けました。

  20180908_163809_convert_20180909094353.jpg

 さて、どうなることやら。

 9月8日(土曜日)、
 次のダイコン栽培のための
 畝づくりをしました。
 今年は猛暑だったので
 種蒔きを少し遅らせるつもりで計画したのですが
 関東は結構暑さが和らいできたので
 少し遅くなったかもしれません。
 ダイコンの種播きは来週します。

  20180908_103852_convert_20180909093815.jpg

 写真の上の方に
 不織布をかかっている畝は
 葉ネギミニニンジンの種を蒔きました。

 夏野菜の収穫もほとんどおしまいですが
 この日採れたのが
 万願寺風トウガラシ

  20180908_154203_convert_20180909094259.jpg

 結構収穫できました。

 空はすっかり秋。

  20180908_104307_convert_20180909093933.jpg

 被災地にも
 やさしい秋の風が吹いたらいいですね。

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プレゼント 書評こぼれ話

  新学期が始まって
  1週間以上経ちますが
  まさかまだ夏休みの読書感想文が書けていないという
  子供はいないでしょうね。
  今日は
  この夏の読書感想文コンクールの課題図書に選ばれた絵本を
  紹介します。
  『なずず このっぺ?』という
  傑作な作品です。
  書いたのはカーソン・エリスさん。
  こういう発想ができるなんて
  すごいというしかありません。
  何しろ全部
  「昆虫語」なんですから。
  今頃、クラスで
  「昆虫語」が流行しているなんていうことは
  ないかな。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  なずず フンクレガ?                   

 この夏の青少年読書感想文全国コンクールの「課題図書」の一冊で、小学校低学年の部で選ばれています。
 それにしても、全部「昆虫語」で書かれているのですから、読んだ子供たちはどんな感想を持ったのでしょう。

  「昆虫語」というのはもちろんオリジナル言語で、タイトルの「なずず このっぺ?」とは多分「これはなんでしょう?」という意味らしい。
 ちなみにこの本の原題は「Du Iz Tak?」で、そもそもこれからして何語かわからない。
 これを訳したのが、アメリカ生まれのアーサー・ビナードさん。日本が大好きなアメリカ人だ。
 もしかすると子供たちには「昆虫語」はスルリと体に入ってくる言語かもしれず、自身が大人、しかも割と年をとった、であることで、子供時代にはわかっていた「昆虫語」の知識をなくしてしまったのではないかと心配になる。

 だったら、絵本に登場する虫たちの表情や、そもそも正体不明の植物の生長する姿を見ながら、推測するしかない。
 感性で読めないところが残念だ。

 しかし、子供たち。
 おじさんに教えてくれないかい。
 「フンクレガ」ってなんのこと?
 つまりは「なずず フンクレガ?」(これが「昆虫語」の文法に合っているかはわからないが)
 でも、もし子供たちが「昆虫語」で読書感想文を書いたら、先生はどうするのかな。
  
(2018/09/09 投稿)

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  今日は
  二十四節気のひとつ、白露
  秋が近づいてきた感じがします。

     姿見に一樹映りて白露かな     古賀 まり子

  この句の「姿見」というのがいいですね。
  女性にとって「姿見」に映るおのが姿は
  まさに自身のいきざまのようかもしれません。
  今日は津村節子さんのエッセイ集
  『明日への一歩』を
  紹介します。
  津村節子さんのここしばらくのエッセイには
  亡くなった夫・吉村昭さんとの思い出が
  しばしば描かれていて
  読むたびに感銘を受けます。
  津村節子さんも「姿見」が似合う作家です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  津村節子さんはエッセイの妙手でもあります                   

 随筆とエッセイの違いは結構難しい。同じという人もいるぐらいだし。
 一説によれば、随筆は「本当にあった出来事の見聞や感想を自由に描いたもの」で、エッセイは「出来事の描写ではなく、書き手のパーソナルな心の様子を描いたもの」だという。
 これだと全く違うジャンルのような感じがする。

 津村節子さんのこの本の場合はどうだろう。
 出版社の広告文をみると、先に出版された『夫婦の散歩道』には「エッセイ」と入っているが、この本には「感動の41篇」とあるが、「随筆」とか「エッセイ」とかという表記はない。ただ津村さんの手による「あとがき」には「エッセイ」を匂わせる表現はある。
 しかし、やはりこの本に収められている文章の多くは「随筆」のような気がする。
 津村さんがきちんと保管されている夫である吉村昭さんからの手紙から当時のことを思い出す文章の、静かでしっとりとした感じは「随筆」と漢字表記する方が似合っている。

 津村さんは自分や吉村昭は「夫婦ともども文筆で身を立てるまでに十五年間もかかった」と、この本に収められているいくつかの文章に書いている。
 昔は文学賞の数も少なく、現代のように受賞すれば作家への道が開けることもなく、同人雑誌に必死になって書いていたという。そして、文芸誌の編集者の目にとまって、やがて一人立ちしていく。
 津村さんには今更ながらに夫婦そろってそうやってよく作家として生きてきたという思いがあるのであろう。

 吉村昭が亡くなって十年以上経つが、津村さんの文章を読むと、吉村を想う気持ちに変わりはない。
 美しい夫婦で、今もある。
  
(2018/09/08 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  先日の台風で
  水に沈んでいく関西空港や風に飛ばされる車など
  凄まじい映像があったばかりというのに
  今度は北海道で震度7の巨大地震。
  剝き出しになった山々、
  倒れた家々、水が噴き出した道路など
  ここもまた心が折れそうな映像が流れる。
  自然災害とはいえ
  この国は今とてもつらい時間と
  ともにある。
  そんな時こそ
  元気にしてくれる本があればいいと
  思わずにはいられない。
  池井戸潤さんの「下町ロケット」シリーズの2作目
  『下町ロケット ガウディ計画』を
  今日は紹介します。
  被災された皆さん、
  少しずつでいいから
  前へ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  ニッポンに元気をくれる一冊                   

 シリーズものの外国映画でしばしば観られるが、エンドロールの後に次回作を予感させるエピソードがはいっていたりすることがよくある。
 観ているこちら側からすれば、見終わった途端に次回作への期待が高まることになる。
 その手法が、池井戸潤さんの直木賞受賞作『下町ロケット』にもあった。
 あの作品の中で主人公である佃製作所社長佃航平の思いが理解できず、それに反発するように間違った製品を納品してしまう従業員真野が、そのことをきっかけにして佃製作所を辞めざるを得なくなったが、佃航平はあえて真野に研究者の道を用意してあげる。
 作品の最後、真野から医療現場の研究に進んでいることがさりげなく織り込まれ、その手紙をヒントに航平の新しい道が予感されることになる。

 そして、シリーズ2作目となった作品では冒頭から何やら怪しい依頼が佃製作所に舞い込む。それが真野も関係する人工心臓に使われるバブルシステムだ。
 そして、この作品でも1作めの真野と同じように航平の思いが理解できず反発する若者が描かれる。
 それが中里だ。彼は佃製作所を辞め、ライバル会社であるサヤマ製作所に引き抜かれる。
 この作品ではサヤマ製作所の椎名社長が航平と対峙する悪役を演じることになる。
 椎名を配することで、航平の思い、例えばビジネスに儲けだけでなく、意味を求めるといったこと、が明確になるように出来ている。
 「自分のやりたいことさえやっていれば、人生ってのは、そんなに悪いもんじゃない」。
 物語終盤の佃航平の思いは、まさに名言だ。
  
(2018/09/07 投稿)

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  今回の「短編小説を読む」は
  推理小説の短編、
  しかもあの有名なシャーロック・ホームズの物語から
  『赤毛組合』。
  当然この作品が掲載されている本はたくさんありますが
  今回は書評サイト「本が好き!」さんから献本頂いた
  江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集1』に収録されているもの。
  この『世界推理短編傑作集1』に収録されている
  短編はなかなかのつわもので
  例えば、
  エドガー・アラン・ポーの「盗まれた手紙」、
  しかもこの作品は丸谷才一さんの訳、
  とか、チェーホフの「安全マッチ」など
  8篇の短編が収録されています。
  短編であっても
  読者を惑わす推理の切れ味を楽しむには
  絶好の一冊です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  シャーロック・ホームズを半世紀ぶりに読む                   

 推理小説などほとんど読んだことがないと人でも、シャーロック・ホームズの名前は知っているだろう。何しろ彼は世界で最も有名な英国人だろうから。
 推理小説を読んで来なかったと思っていた私も、そういえば確かに彼の物語の何篇かは読んできたはずで、それは人生のごく初期の、少年時代の貴重な読書体験であったはずだ。
 しかし、残念ながら彼の、そして彼の友人であるワトスン君の活躍のほとんどが遠い記憶の果てにある。

 シャーロック・ホームズの物語が多くの推理小説のように長編小説だと、これもまた遠い記憶による勘違いなのだが、この「赤毛組合」は文庫本でわずか40ページ余りの短編小説なのだ。
 その短い物語で、壮大な銀行強盗の計画が進行していくのをシャーロック・ホームズが阻止するというのだから、著者であるコナン・ドイルの筆がいかに容量よく簡潔に、しかも読者の欲望を巧みに刺激することに長けていたかが、よくわかる。
 短編小説の面白さは、作家の筆力を思う存分味わえるところにある。

 それにしても、タイトルにある「赤毛組合」というのはユーモアがある。
 人の目を奪うような赤毛を持っている人だけが享受できるアルバイト、その募集に集まった赤毛の人たち、その姿を想像するだけで面白い。
 その裏に大きな犯罪が隠されているのだから、やはりそれを見破ったシャーロック・ホームズは永遠の探偵なのだろう。
 小気味いい、推理短編作品だ。
  
(2018/09/06 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日、「石井桃子展」について
  書きましたが、
  石井桃子さんは若い頃
  山本有三に声をかけられ
  「日本少国民文庫」の編集に参加したことがあります。
  吉野源三郎とも
  そのことで知り合いました。
  今回の展覧会では当時の
  「日本少国民文庫」の「世界名作選」の展示もありますが
  この本を幼い頃読んで感銘を受けた方がおられます。
  それが美智子皇后です。
  今日紹介する
  美智子妃の講演録『橋をかける』にも
  この本のお話が出てきます。
  石井桃子さんが編集に携わった一冊の本が
  美智子妃の美しい心を作り、育て
  それが平成に生きる私たちにも
  つながっているのです。
  この本は文庫化された
  2009年の春読んでいます。
  その時にもブログに載せていますので
  今回が再読ということになります。
  書評を読み比べてみるのもいいですよ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  平成最後の読書の秋に向けて                   

 今は何につけ「平成最後の」となります。
 「平成最後の夏休み」「平成最後の花火大会」といったように。
 来年5月の天皇のご退位に伴い、元号が改元されるのが決まっているからそれは間違いはないのですが、一方で寂しさも感じる言葉のような思いがします
 終りが決まっていると人は振り返りやすいものです。
 30年という平成の時代にあって、悲しい出来事もたくさんあったし、喜ばしいこともまたありました。
 ただ、美智子妃がおられたからこそ平成という厳しい時代であっても、私たちがどれほど癒されたことかと思います。

 この本はそのような美しい人美智子妃が国際児童図書評議会の、1998年に開催された世界大会時に話された基調講演を収録したものです。
 副題にあるように「子供時代の読書の思い出」を語りつつ、読書の意義や大切さがひしひしと感じられる講演となっています。
 特に講演終盤の箇所は本を愛する人々にとっても忘れてはならないところだと思います。

 美智子妃は子供時代の読書を振り返ってこうお話なされました。
 「それはある時には私に根っこを与え、ある時には翼をくれました。」
 さらに「読書は私に、悲しみや喜びにつき、思い巡らす機会を与えてくれました」と続けられました。
 そして、最後に「読書は、人生の全てが、決して単純でないことを教えてくれました」と、まさに平成という時代と重なるような言葉とつながりながらも、「私たちは、複雑さに耐えて生きていかなければならないということ」を読書から教わったとされました。

 「平成最後の」読書の秋になる今、ふたたびこの本を読むことも意義あるものではないだろうか。
  
(2018/09/05 投稿)

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 学校も新学期が始まって
 夏の終りを感じるようになってきました。
 今年の夏は暑かった。
 そして、今年の夏は
 いい展覧会がたくさんあって
 毎週のように観に行ったりしていました。
 そして、
 8月最後の日、
 この日も暑かったですが
 横浜の港の見える丘公園にある
 神奈川近代文学館で開催されている
 「石井桃子展」に行ってきました。

  20180831_125029_convert_20180902094314.jpg

 これで、
 今年の夏の展覧会もおしまいです。

 石井桃子さんのことを書きます。
 石井桃子さんは『クマのプーさん』や『ピーターラビット』の翻訳、
 『ノンちゃん雲に乗る』や『幼ものがたり』の創作だけでなく
 児童図書館の普及などにつとめた
 児童文学者です。
 生まれたのが1907年、亡くなったのが2008年ですから
 享年101歳。
 実にりっぱな生涯です。
 今年没後10年ということで
 この展覧会が開催されました。
 副題が「本を読むよろこび」というのも
 石井桃子さんらしいタイトルです。

 入り口には
 有名な石井桃子さんの言葉が展示されています。

  20180831_125811_convert_20180902094510.jpg


    おとなになってから
    老人になってから
    あなたを支えてくれるのは
    子ども時代の「あなた」です。

 石井桃子さんにとっても
 それは同じで
 だから石井桃子さんにとっては
 生まれた育った埼玉の浦和の地はとても大切なところで
 作品『幼ものがたり』は
 この言葉の結晶だと思います。

 今回の展覧会では
 出生から編集者として自立し、
 戦後農業にかかわり、
 その後アメリカへの留学を経て
 かつら文庫という家庭文庫を立ち上げ
 その晩年にいたるまでの時間を
 順に追っていきます。

 『君たちはどう生きるか』が近年大ブレークした
 吉野源三郎さんとの交流をしめす
 手紙類の展示や
 作品の初版の展示など
 興味あるものばかりでした。
 全部見終わって
 館内の喫茶店で休んでいると
 ちょうど学芸員さんの講義があるということで
 20分ばかり
 話を聴くこともできました。
 こういう機会があると
 展覧会の知識が深まります。

 本が子どもに与える豊かなもの、
 石井桃子さんの生涯は
 それを見つけ
 育てた一生だったといえるのかもしれません。

 今回の展覧会は9月24日まで。
 入場料が500円というのも
 うれしい。
 少し涼しくなって
 横浜の港の風に吹かれながら
 足を運んでみるのも
 いいのでは。

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 病気の快癒に向かうのに
 よく「ひにち薬」という言い方をする。
 あんなに暑かった今年の夏も
 やはり「ひにち薬」なのか
 少しは秋の予感がはいりだしてきたような気がします。

  20180831_092210_convert_20180902092757.jpg

    初秋や草をくぐれる水のおと      鷺谷 七菜子

 先週の土日は
 とっても暑くて
 せっかく植えたミニハクサイたちの苗は
 すっかりしおれてしまいました。

  20180901_101242_convert_20180902093259.jpg

 4つ植えたミニハクサイ
 ごらんのように3つがダメで
 9月1日の土曜日に植え替えました。

  20180901_102842_convert_20180902093940.jpg

 キャベツブロッコリー
 なんとか芯ががんばっているので
 もう少し様子を見ることにしました。
 写真はがんばっているブロッコリーです。

  20180901_101251_convert_20180902093527.jpg

 ただ、今週は台風が来るとかで
 それはそれで心配になります。
 いやあ、野菜を育てるのは
 難しい。

 8月の頭に収穫したミニカボチャ
 食してみました。
 収穫してから3~4週間置いておくのが
 甘さを増す秘訣で
 これを追熟といいます。

  20180826_184157_convert_20180902092639.jpg

 いい色のカボチャになっていますが
 まだ甘さが足りませんでした。
 この夏採れたミニカボチャは2個でしたから
 あと1個はもうしばらく
 置いておきましょう。

 畑の様子では
 これが葉ネギ

  20180901_100509_convert_20180902092857.jpg

 まだまだ頼りないです。
 そして、いい感じなのがショウガ

  20180901_100515_convert_20180902093056.jpg

 これは楽しみ。

 それから
 これは私の畑ではないのですが
 珍しいクウシンサイの花を見つけたので
 写真に撮ってみました。

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 白いアサガオみたいな花ですね。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今週また台風がやってくるそうだ。
  どうも今年は台風が多い。
  台風の進路にあたっているところの人は
  気がかりだろう。
  「台風」は秋の季語
  昔でいえば、
  「野分」とかいった。
  今の時分、二百十日あたりによく襲ってきたそうだ。

     放課後の暗さ台風来つつあり      森田 峠

  子どもの頃は
  台風で学校が休校になったりして
  喜んだものだ。
  今日は
  そんな台風を描いた絵本、
  みやこしあきこさんの
  『たいふうがくる』を
  紹介します。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  最後に、青い。                   

 温暖化の影響なのか、最近の高温にしろ豪雨にしろ異常気象が頻発しているが、それでも私たちの国は四季に分かれて、その季節に沿った生活のありようが美しい。
 それを活かした文芸といえば、やはり俳句ということになるのだろうか。
 季語と呼ばれる季節の言葉をはめ込むことで、俳句の世界観は私たちに四季の素晴らしさを教えてくれているように思う。
 そして、案外気がついていないかもしれないが、絵本という表現手段も四季の変化が作品の中に息づいている文学ということになるような気がする。
 第25回ニッサン童話と絵本のグランプリ絵本大賞受賞作であるこの作品は「たいふう」をいう「天文」を描きながら、少年の細やかな感情を見事に描いている。

 今日は金曜日。明日の土曜は家族で海に行く約束になっている男の子がいる。
 しかし、どうも台風が来ているようだ。
 学校は午後早くに下校、家に帰るとお父さんもお母さんも早めの準備で雨戸を閉めたり。
 そして、夜。男の子の街に台風がやってきた。
 強い風の音がする。ベッドにもぐりこんだ男の子は台風を吹き飛ばす大きなプロペラをつけた船に乗っている。
 そして、朝にくる。
 台風はどうなっていただろう。

 白と黒で描かれた作品ながら、たった一カ所青い色が使われている。
 それが最後のページ。
 男の子が朝カーテンを開くと、青い空。
 ほうら、どんな朝になっているか、わかりましたか。
  
(2018/09/02 投稿)

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  今日から9月

    江ノ島のやや遠のける九月かな     中原 道夫

  天気予報では
  来週あたりから暑さもやわらぐということですが
  さあ、どうでしょうか。
  今日は『銀河鉄道の父』で
  第158回直木賞を受賞した
  門井慶喜さんの新しい作品
  『新選組の料理人』を
  紹介します。
  新選組は色々な作家さんが書いていますが
  書けども書けども
  尽きない魅力がある
  組織ですね。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  新選組の話はやっぱり面白い                   

 直木賞作家門井慶喜さんの、新選組を題材にした短編連作集のこの作品は時代小説だろうか、歴史小説だろうか。
 歴史小説というのは史実に即した物語で、時代小説というのは作家によって創作された架空の物語ということになるが、この作品の主人公で今でも人気の高い新選組の賄いをまかされた「料理人」菅沼鉢四郎は、門井さんの創作である。
 ただだからといって、この作品が時代小説かといえば、そうではなく、史実ではないとしても菅沼という男に仮託した門井さんの思いからすると歴史小説ともいえる。

 この作品の中では新選組副隊長の土方歳三について剣は弱かったと書かれているが、門井さんはそのことを文献をたずねてそうではないかと考えたようで、その一点からしても土方が剣豪であったとみる人からすればこの作品が時代小説かもしれないが、門井さんにとっては史実に即したことになるのだろう。

 そもそも菅沼という「新選組の料理人」を描くことで、門井さんは新選組という組織がどういうものであったかを描きたかったのだろう。
 この作品の刊行後のインタビューで門井さんは「新選組は知れば知るほど普通の組織」だったことに気づいたという。
 普通の組織とは、嘲りとか恨みとか嫉妬とか尊敬とか、それから150年以上経って、私たちが経験する雑多の感情が渦巻く人の集団ということだろう。
 新選組が色々な形で今でも人気が高いのは、そういう時代を超越した同じ心情が味わえるからかもしれない。
  
(2018/09/01 投稿)

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