FC2ブログ
プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介する短編小説は
  太宰治の「満願」。
  太宰治の作品だから
  もちろん全集とか太宰治の文庫には収められているのは
  当然であるが
  杉本彩さんが責任編集をした
  『エロティックス』という
  官能小説の短編のアンソロジーの中の
  一篇に出てきたので
  びっくりした。
  確かに夫婦生活を禁じられた若い奥さんの話ではあるが
  それを団鬼六さんとかと一緒に
  並べてしまう杉本彩さんに
  脱帽だ。
  太宰治も苦笑いかも。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  白いパラソルが効果的                   

 昭和13年(1938年)9月、「文筆」という雑誌に発表された短編。
 文庫本にしてわずか3ページほどの作品だから、短編というより掌編小説ということになるだろうか。

 太宰治の人生は大きくいうと3つに分けることができる。
 まずは放蕩時代。次に結婚して穏やかな時代。そして、戦争が終わって時代の寵児となるものの晩年となってしまう時代。
 では昭和13年はどのあたりになるだろうか。
 この年太宰は井伏鱒二の紹介で後に妻となる美知子さんと見合いをしている(結婚は翌年の1月)。
 この時期を境にして安定の時代に入っていくことになる。
 この時期に書かれた作品は「走れメロス」「女生徒」「富嶽百景」など、太宰を読むのに欠かせないものが多い。

 そういう安定の予感を感じさせるのが、この「満願」であろう。
 太宰が伊豆の三島で小説を書いている頃体験したという体裁になっている。
 その町で知り合った町医者のところに通う「清潔な感じ」の若い奥さんがいた。彼女の夫は肺を悪くして、町医者は彼女に夫婦の営みを禁じた。
 そしてとうとうその禁止が解かれることになった。
 ただそれだけの話ながら、太宰はそんなささやかなことでも書き留めておきたくなるほど仕合せな時間を過ごしていたのかもしれない。

 おゆるしが出た奥さんが「白いパラソルをくるくるっとまわ」すシーンがあるが、野村芳太郎が監督した「張込み」(松本清張原作)にもよく似たシーンが出てくる。
 脚本は橋本忍だが、もしかしたら橋本は太宰のこの作品のことが記憶にあったのだろうか。
  
(2018/09/29 投稿)

  芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

レビュープラス