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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日
  開高健岩波文庫に入ったことを
  書きましたが、
  今日紹介する
  現代の文学史を綴った
  斎藤美奈子さんの『日本の同時代小説』では
  開高健はノンフィクション作品を書いた作家として
  多くの字数で書かれています。
  そのようなふうに
  斎藤美奈子さんの説明は的確で
  わかりやすく
  とても納得のいく
  文学史になっています。
  なんといっても
  私の青春から今に至る
  読書体験と大いに重なるところがあって
  自分史になっているようにも
  感じました。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  文学は「炭鉱のカナリア」か                   

 「炭鉱のカナリア」という言葉があります。
 昔炭鉱夫が坑道にはいる際、カナリアを持っていったそうで、それで坑内に有毒ガスが発生していないかを調べたといいます。
 そこから、危険が迫ってくる前兆のことを指す言葉になりました。
 文学にも「炭鉱のカナリア」といった側面があります。
 これからの社会を予見するような作品を提示することも、文学の一つの側面でした。
 もちろん時代のあとを追うこともしばしばあります。
 さらに社会という時間が早くなっている現代では、文学は「炭鉱のカナリア」たるものになっているでしょうか。

 この新書はとても刺激的な文学史になっています。
 あまりに多様化し過ぎた文学の世界を、1960年代から2010年代という、まさに「同時代」の小説を丹念に追っていきます。
 ここには吉行淳之介は登場しません。ちょうどその辺りからあとの文学史になります。
 最初が庄司薫の『赤頭巾ちゃん気をつけて』辺りから始まると書くと、案外この文学史の目線がわかるような気がします。

 「自分の生きている時代の性格を知りたい」。きっとそれは私たち読者の思いでもあり、著者の斎藤美奈子氏のそれでもあります。
 文学という「カナリア」は時にかぼそい声で鳴いたかもしれないし、鳴くことさえなかったかもしれない。
 これはそれをたどる「同時代」史でもあります。

 この新書では作家より作品が中心に書かれていますから、結構芥川賞受賞作が多く登場します。
 その時々の芥川賞の受賞の意味を読み解くにも、いい一冊になっています。
  
(2019/01/23 投稿)

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