01/23/2019 日本の同時代小説(斎藤 美奈子):書評「文学は「炭鉱のカナリア」か」
書評こぼれ話
昨日
開高健が岩波文庫に入ったことを
書きましたが、
今日紹介する
現代の文学史を綴った
斎藤美奈子さんの『日本の同時代小説』では
開高健はノンフィクション作品を書いた作家として
多くの字数で書かれています。
そのようなふうに
斎藤美奈子さんの説明は的確で
わかりやすく
とても納得のいく
文学史になっています。
なんといっても
私の青春から今に至る
読書体験と大いに重なるところがあって
自分史になっているようにも
感じました。
じゃあ、読もう。
文学は「炭鉱のカナリア」か
「炭鉱のカナリア」という言葉があります。
昔炭鉱夫が坑道にはいる際、カナリアを持っていったそうで、それで坑内に有毒ガスが発生していないかを調べたといいます。
そこから、危険が迫ってくる前兆のことを指す言葉になりました。
文学にも「炭鉱のカナリア」といった側面があります。
これからの社会を予見するような作品を提示することも、文学の一つの側面でした。
もちろん時代のあとを追うこともしばしばあります。
さらに社会という時間が早くなっている現代では、文学は「炭鉱のカナリア」たるものになっているでしょうか。
この新書はとても刺激的な文学史になっています。
あまりに多様化し過ぎた文学の世界を、1960年代から2010年代という、まさに「同時代」の小説を丹念に追っていきます。
ここには吉行淳之介は登場しません。ちょうどその辺りからあとの文学史になります。
最初が庄司薫の『赤頭巾ちゃん気をつけて』辺りから始まると書くと、案外この文学史の目線がわかるような気がします。
「自分の生きている時代の性格を知りたい」。きっとそれは私たち読者の思いでもあり、著者の斎藤美奈子氏のそれでもあります。
文学という「カナリア」は時にかぼそい声で鳴いたかもしれないし、鳴くことさえなかったかもしれない。
これはそれをたどる「同時代」史でもあります。
この新書では作家より作品が中心に書かれていますから、結構芥川賞受賞作が多く登場します。
その時々の芥川賞の受賞の意味を読み解くにも、いい一冊になっています。
(2019/01/23 投稿)
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レビュープラス
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斎藤美奈子さんの『日本の同時代小説』では
開高健はノンフィクション作品を書いた作家として
多くの字数で書かれています。
そのようなふうに
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とても納得のいく
文学史になっています。
なんといっても
私の青春から今に至る
読書体験と大いに重なるところがあって
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文学は「炭鉱のカナリア」か
「炭鉱のカナリア」という言葉があります。
昔炭鉱夫が坑道にはいる際、カナリアを持っていったそうで、それで坑内に有毒ガスが発生していないかを調べたといいます。
そこから、危険が迫ってくる前兆のことを指す言葉になりました。
文学にも「炭鉱のカナリア」といった側面があります。
これからの社会を予見するような作品を提示することも、文学の一つの側面でした。
もちろん時代のあとを追うこともしばしばあります。
さらに社会という時間が早くなっている現代では、文学は「炭鉱のカナリア」たるものになっているでしょうか。
この新書はとても刺激的な文学史になっています。
あまりに多様化し過ぎた文学の世界を、1960年代から2010年代という、まさに「同時代」の小説を丹念に追っていきます。
ここには吉行淳之介は登場しません。ちょうどその辺りからあとの文学史になります。
最初が庄司薫の『赤頭巾ちゃん気をつけて』辺りから始まると書くと、案外この文学史の目線がわかるような気がします。
「自分の生きている時代の性格を知りたい」。きっとそれは私たち読者の思いでもあり、著者の斎藤美奈子氏のそれでもあります。
文学という「カナリア」は時にかぼそい声で鳴いたかもしれないし、鳴くことさえなかったかもしれない。
これはそれをたどる「同時代」史でもあります。
この新書では作家より作品が中心に書かれていますから、結構芥川賞受賞作が多く登場します。
その時々の芥川賞の受賞の意味を読み解くにも、いい一冊になっています。
(2019/01/23 投稿)
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