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プレゼント 書評こぼれ話

  昨年11月に
  川崎市市民ミュージアムで開催された
  「連載50周年記念特別展 ゴルゴ13 用件を聞こうか…」展のことは
  このブログでも書きましたが、
  今度はその作者である
  さいとうたかをさんを特集した
  本が出ました。
  本のタイトルはずばり
  『さいとうたかを本』。
  この本は
  さいとうたかをさんだけでなく
  劇画黎明期に興味のある人には
  欠かせない一冊だと
  思います。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  強い個性が時代を切り開く                   

 あの「ゴルゴ13」が2018年連載50年を迎えた。
 ひとくちに50年といっても、半世紀になるわけだから、とてつもない時間の堆積である。
 連載を始めた時、作者のさいとうたかを氏は32歳。
 すでに劇画の一翼を担う漫画家だったが、まだまだ若い逸材だった。
 もし、さいとうたかを氏がいなければ、日本の漫画の世界も全く違ったものであったかもしれない。

 この本は一冊まるごと「さいとうたかを」で出来ている。
 目次を見るだけで、さいとうたかをファンなら唸るに違いない。
 まず劇画家池上遼一氏による総論「さいとうたかをとは何か」に始まり、作品各論が続く。
 作品としては初期の「台風五郎」にはじまり、「無用ノ介」「影狩り」「ゴルゴ13」「鬼平犯科帳」などさいとう氏の代表作が並ぶ。
 その執筆陣も高橋克彦氏、みなもと太郎氏、夏目房之介氏、佐藤優氏など多彩な顔触れである。

 さらにはスペシャルインタビューとして、漫画家あだち充のインタビューがある。
 「タッチ」を描いたあだち充氏とさいとう劇画は一見遠そうだが、あだち氏は学生時代からさいとう劇画のファンだったという。

 そして、この本の中心ともいえるのが、さいとう氏の聞き書き「俺は劇画家だ!」。
 副題に「もう一つの“トキワ荘物語”」とあるが、さいとう氏にとって手塚治虫さんを頂点とする子ども漫画があったからこそ、劇画という別の道を切り開いたともいえる。
 この中で手塚治虫に会いにいくも、手塚の母堂に門前払いをされた挿話も披露している。

 その他にもまぼろしの「台風五郎」の復刻や全作品リストなど、さいとうたかをファンなら絶対手が出る一冊だろう。
  
(2019/02/28 投稿)

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  今日は
  先日の『みがけば光る』に続いて
  石井桃子さんの
  『新しいおとな』というエッセイ集を
  紹介します。
  というのも
  『みがけば光る』に収録されていた文章が素敵だったので
  もう少し石井桃子さんの文章を読みたくなったからです。
  この作品の中で
  石井桃子さんは子どもたちに好かれる本の特長を
  「「かつら文庫」三か月」という文章でこうまとめています。

   ① 筋がはっきりしていて、かんたんで、子どもにのみこみやすいもの。
   ② リズムカルで、ひょいと声にだして言ってみたくなるようなもの。
   ③ 途中ではっと息をのみこむようなところのあるもの。
   ④ 次から次へと事件がおこって、ハラハラするもの。
   ⑤ 読みながら自然に笑ってしまうもの。
   ⑥ すばらしいな、なるほどなと、感心させるもの。


  とても示唆にとんでいます。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  子どもたちに教えられること                   

 児童文学者の石井桃子さんは自身子供をもつことはありませんでした。
 また、若い時にそういう道を目指そうと決心したわけでもありません。
 このエッセイ集の巻末に収められた、100歳を目前にした2007年に書かれた「三ツ子の魂」という短いエッセイで、「時々の偶然の縁に導かれ、今日まで子どもの本と歩みつづけ」ることになったと綴っています。
 そして、「子どもの本」は根源的な「人間の本」であり、それは遡ればほんの三歳や四歳の頃の祖父のあぐらの中で聞いた昔話にさかのぼると、書いています。

 このエッセイ集は、石井桃子さんが自身の家を開放して始めた「かつら文庫」での経験から得た子どもの本を読む姿、児童図書館の必要性、読書の意義といったことを、さまざまな媒体に発表した文章を集めて出来上がっています。
 驚くのは石井さんが「かつら文庫」に集まってくる子どもを通して、実に正確にそしてじっくりと子どものことを見ていることです。
 時にはそんな子どもの心境を勘違いされることもあったということさえ記した文章もありますが、それは親以上に親の目で子どもたちを見ているように感じました。

 そんな石井さんが生涯大切にしてきたのはカナダの児童図書館員のリリアン・スミスのこの言葉でした。
 「私たちおとなが、子どもの心をうかがい知る道は、私たち自身の記憶と想像力と観察にある」。
 石井桃子さんはまさにそれを実践した稀有の人だったと思います。
  
(2019/02/27 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  本屋さんでこの文庫本を見つけた時
  「ね、私が言っていた通りでしょ」と
  一人ごちた。
  どういうことかというと
  岩波文庫
  谷川俊太郎に始まって
  茨木のり子大岡信といった
  現代詩人の文庫化が進んでいて
  きっと次は吉野弘だと
  自分でそう決めていました。
  だから、いつ出るのか
  ずっと気になっていたのですが
  ついに
  この2月の新刊として
  『吉野弘詩集』が刊行されました。
  もううれしくて
  うれしくて。
  今日の書評のタイトルは
  吉野弘の「生命は」という詩の
  おわりの一節です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  あなたも あるとき 私のための風だったかもしれない                   

 詩人の茨木のり子さんに「祝婚歌」と題したエッセイがある。
 エッセイというより、吉野弘の短い詩論であるかもしれないが、エッセイ風に綴られている。
 タイトルにあるように、これは吉野の代表作である「祝婚歌」にまつわるさまざまなこと、それは吉野の結婚生活における逸話や同人「櫂」における吉野の姿(まじめに長考する姿はこの文庫の解説を書いている谷川俊太郎さんも同じようなことを記している)であるが、そこから吉野の詩に向かう姿まで浮かんでくる、実に巧みな詩論でもある。
 その最後に、茨木のり子さんはこう書いた。
 「現代詩がひとびとに記憶され、愛され、現実に使われているということは、めったにあるものではない。ましてその詩が一級品であるというのは、きわめて稀な例である」と。

 吉野弘が「祝婚歌」という詩をもっておそらく現代の詩人とて今でも広く人々に愛されていることは誰もが認めるところだろう。
 この文庫で編者となった小池昌代さんは「日常を材とし、そこに詩を発見した作品は、意味を手放さず、わかりやすい」し、それでいて読者を深みへと連れていくと評している。
 しかし、「祝婚歌」があまりに有名になったために、それ以外の吉野の詩を鑑賞することが妨げられていないだろうか。
 この文庫に収められた詩がすべてとはいわないが、少なくともここには「祝婚歌」とは違う吉野弘もまたいる。

 人はひとつの顔だけを持っている訳ではない。
 一見人のよさそうな吉野にしてもそうだろう。
 いくつもの表情があるからこそ、詩が生まれ、詩の深みが増すのではないか。
 吉野弘はそういう詩人だ。
  
(2019/02/26 投稿)

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 今はまさに
 梅の見どころでしょうか。
 昨日の日曜日は天気もよかったので
 各地の梅林では梅まつりで賑わったことでしょうね。

    梅林の真中ほどと思ひつつ      波多野 爽波

 家の近くには
 梅林というほどではありませんが
 何本も大きな梅の木があって
 毎年そちらの梅を
 楽しみに鑑賞させてもらっています。

  20190224_112312_convert_20190224130818.jpg

 今年もきれいに咲きそろって
 馥郁たる香りに
 満ちていました。

  20190224_112640_convert_20190224131014.jpg

 最近は暖かな日も多く、
 先週追肥をした葉ネギが一週間で
 大きくなりました。

  20190224_104449_convert_20190224130554.jpg

 昨日収穫をして
 昼にさっそく頂きました。

 そういえば
 ナバナの話はとんとしてませんが
 収穫まで
 もう少しでしょうか。

  20190224_104326_convert_20190224130508.jpg

 なかなかうまく育ちませんでしたが
 今はごらんのような成長ぶり。
 わけてもらった
 苗がよかったのですね、きっと。

 これは
 畑で見つけた
 コマツナの花。

  20190224_110212_convert_20190224130721.jpg

 コマツナはアブラナ科ですから
 この花も菜の花です。

    菜の花の昼はたのしき事多し     長谷川 かな女

 この句のように
 春の光の中で見る菜の花は
 たのしい気分にさせてくれます。

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  寒い寒いとふるえているうちに
  いつの間にか
  気温は3月並みになったり
  4月の頃になったり
  コートもいらないくらいに
  温かくなってきました。
  この頃になると
  暖かいという漢字ではなく
  温かいという字を
  あてたくなります。
  たまたま手にした絵本が
  こんな季節にぴったりだったので
  うれしくなりました。
  荒井良二さんの
  『じゅんびはいいかい』。
  今を逃さずに
  読みましょう。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  もうすぐ春ですよ                   

 「ジャケ買い」という言葉があります。
 「CDや本など内容は知らないけどカバーの印象が気に入って買うこと」をいいますが、まさにこの絵本は「ジャケ買い」ならぬ「ジャケ読み」をした一冊です。
 もっというなら、タイトルがよくて「タイ読み」した絵本ともいえます。

 すると、どうでしょう。
 この絵本は春がやってくる季節にぴったりの作品でした。
 つまり、「じゅんびはいいかい」の「じゅんび」は、春を迎える準備なんです。
 この言葉に続いて、「いいよう! いいですよう! と いって はるがきました」。
 この絵本を手にとった自分を褒めてあげたくなります。

 荒井良二さんは春がよく似合う絵本作家です。
 明るい色、大胆な配色、リズムカルな動き、まるで幼稚園児が描いたような絵ですが、生きる力がみなぎった絵は並大抵の力では描けないでしょう。
 だから、荒井さんのファンはたくさんいるのだと思います。

 荒井良二さんによく似合うもの。
 朝。空。太陽、できれば朝日。風。草。女の子。男の子。ひとみ。春。目覚め。いのち。
 そんなものをつめこんだ作品です。
 きっと誰もがこの絵本に教えられることでしょう。
 そこまで春が来ていることを。
 どんなにそのことを待っていたことかということを。
 そして、それがいのちのいとなみだということを。
  
(2019/02/24 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  趣味というと
  やはり「読書」と答えるだろうし
  人より少しはたくさん本を読んできたつもりだが
  アガサ・クリスティーにしろ
  山本周五郎にしろ
  今まで読んでこなかったのが
  不思議でしかたがない。
  それでも
  こうして出会えただけでも
  よしとしないと。
  今日は
  山本周五郎の代表作
  『樅ノ木は残った』の上巻
  もちろん初読です。
  やっぱり
  今まで読まなかったことが
  悔やまれる、
  そんな一冊です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  なんという面白さだろう                   

 山本周五郎の代表作のひとつで、NHKの大河ドラマにもなった名作である。
 1954年7月から翌年の1955年4月まで日本経済新聞に連載、その後時間をおいて1956年3月から9月まで同紙に後半を書き続け、さらに書下ろしで加えたのち完成。
 平成30年に改版として出た新潮文庫版では上中下の3巻仕立てになっている。

 この作品は江戸時代前期に起こった仙台伊達家のお家騒動である「伊達騒動」を扱った歴史小説である。
 従来は藩の乗っ取りを企んだ男として原田甲斐は評価されていたようだが、この作品で山本周五郎はその原田甲斐を主人公にして、むしろ藩のために一身を捧げた男として描いたとして有名になった。
 作品が出来て半世紀以上も経つと、作品の評価も固まり、ましてや「伊達騒動」なるものも知らない人が増え、私もその一人であるが、この作品を読んだ人からすれば原田甲斐という男はヒーローに見えてくるにちがいない。
 歴史上の正邪は措くとして、まずはじっくり長編小説を楽しみたいところである。

 この上巻では、お家騒動の始まりとなる伊達家三代めにあたる綱宗(いうまでもないが、初代は伊達政宗である)が放蕩により幕府から逼塞を命じられ、それをそそのかしたとして藩士四名は惨殺されるところから始まる。
 原田甲斐は家老職につける家柄ながら、まだここではそこまでの地位になっていない。
 ただ政変の嵐に巻き込まれる気配に満ちていく。

 妻との関係、その兄でもある友人と関係、あるいは謎の浪人とエンターテインメントの要素も高く、まず何よりもこれはめっぽう面白い。
  
(2019/02/23 投稿)

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  本屋さんに行くと
  詩や俳句・短歌の本のコーナーは
  必ずのぞきます。
  それで思うのだが
  最近やたらめったと夏井いつきさんの
  俳句の本が多い。
  さらには夏井いつきさんの本ではなくても
  夏井いつきさんの写真付きで
  推薦みたいな帯がついていたりする。
  ひと頃の勝間和代さんみたい。
  今日紹介するのも
  そんな一冊で
  『夏井いつきの俳句ことはじめ』と
  タイトルにお名前が入っているので
  純粋夏井いつきさんの本だとわかります。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  迷っているなら、まずこの本から                   

 近年この人ほど名前の知られた俳人はいなかったのではないだろうか。
 遂には2018年大晦日の紅白歌合戦の審査員として登場するほどだ。
 だから、「夏井いつきの」という冠が付いた本が多数出現するのも頷ける。
 これほどの人気者を出版社は見逃さない。

 夏井いつきさんサイドにも大きな構想がある。
 「俳句って楽しい!」と、少しずつ階段を上っていけるように、4段階の本を出版しようというもの。
 普通そういう時は同じ出版社で刊行されるものだが、夏井さんはそれを別々の出版社で刊行して、出版界全体で俳句の機運を盛り上げようとしている。
 この本は「ことはじめ」とあるように、最初の「俳句前夜本」に位置付けされる一冊。
 「俳句入門本」は「世界一わかりやすい俳句の授業」(PHP研究所)が該当するそうだ。

 この「俳句前夜本」には付けられた副題が「俳句をはじめる前に聞きたい40のこと」で、
 どんなことが「聞きたい」のか目次から抜粋すると、「そもそも俳句って何?」「季語って何?」「俳句をして得することってあるの?」「俳句って古臭いイメージだけど?」と、今さら聞けないような初歩的な質問が並ぶ。
 さらには「俳人ってみんな着物を着ているの?」なんていうのもあったりする。
 夏井いつきさんはテレビでは着物を着ているが、あれはテレビ用で普段は洋服派だとか。

 この本では吟行とか句会のやり方も丁寧に書かれている。
 俳句に興味があるのだけど、迷っている人にはうってつけの「俳句前夜本」だ。
  
(2019/02/22 投稿)

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  第160回芥川賞受賞2作の
  全文掲載を行っている
  総合誌「文藝春秋」3月特別号には
  芥川賞関連として
  選考委員の宮本輝さんへの
  インタビュー記事も掲載されています。
  その中で
  インタビュアーの読売新聞編集委員の
  鵜飼哲夫さんが
  芥川賞について
  こう話されています。

    芥川賞とは
    雑誌に発表された、新進作家による
    純文学の中・短編作品のなかから、
    最も優秀な作品に贈られる賞


  つまりは「新進作家」だということです。
  今日は
  今回の受賞作の一つ
  町屋良平さんの
  『1R1分34秒』を
  紹介します。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  新しい作家の覚悟                   

 第160回芥川賞受賞作。
 いい作品に出合ったという満足感、それは選考委員の高樹のぶ子氏が言うように「古典的な青春小説」だからかもしれない。
 文学がいつもどこかしらに「青春」という言葉が孕んでいる満ち足りない感情、どこにもぶつけようのない不満や飢餓感を代弁しているとすれば、まさしくこの作品はそうだろう。
 いつの時代であっても、この作品は一定の評価をされ、一定の愛読者を獲得するにちがいない。

 どんな物語かといえば「プロボクサーとしてはたぶん今後多くは望めないであろう青年の、ひたすらトレーニングに打ち込む日々を描いている」という宮本輝選考委員の言葉が端的だろうが、その青年にトレーナーとしてかかわる先輩ボクサーが造形もまたいい。
 選考委員の山田詠美氏は主人公とこのトレーナーの二人について「読み進めれば進めるほど登場人物二人の味方になれる」と書いているが、この「選評」はまさに本を読むことの魅力を語っている。
 登場人物たちに自身を添わせる、これほどこの作品が読み手を夢中にさせていることの証であろう。

 この作品ではプロデビューしてその初戦に勝ったもののその後負けが続き、苦悩する若者が描かれているのだが、試合での打ち合う拳の痛みやお腹への攻撃とそれがもたらす苦痛、次の試合に向けての減量や精神的な高揚、それが実に多弁に語られている。
 しかし、おそらく彼の饒舌はたった一発の拳で消し飛んでしまうにちがいない。
 それでも、文学者である限り、それを語っていくしかない。
 新しい作家町屋良平氏の、覚悟をみた気分である。
  
(2019/02/21 投稿)

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  今日は
  今年初めてのアガサ・クリスティー本を
  紹介するのですが
  気がつけば
  もう2月も下旬。
  早いものです。
  今日紹介するのは
  『五匹の子豚』という
  ポアロものの一作です。
  書評にも書きましたが
  とっても評価の高い作品です。
  今回は結構真剣に
  犯人を見つけてやるぞという感じで読んだのですが
  結果は大ハズレ。
  みごとに
  アガサ・クリスティーにしてやられました。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  あなたは、真の犯人にたどりつけるだろうか。                   

 アガサ・クリスティーのミステリーの案内本として霜月蒼さんの『アガサ・クリスティー完全攻略』は欠かせない一冊で、その中で、これは「未読の者は書店に走れ!」という惹句まで付いた高評価の作品です。
 「あまりに見事。完成度はおそろしく高い。疑いなくクリスティーのベスト」とまで書かれています。
 私の感想としては、「ええい、じれったい、早く犯人教えてよ!」となります。
 つまり、途中を飛ばしてでも、結論を読みたくなる。そんな作品でした。

 これはアガサが1943年に発表したエルキュール・ポアロもののミステリーです。
 ある時ポアロのもとに不思議な捜査依頼が届きます。
 それは16年前の夫殺しで極刑となった妻が本当は無実でなかったかを調べてもらいたいという依頼でした。
 依頼人は加害者と被害者の一人娘。獄中で亡くなった母が最後に娘に宛てた手紙には「自分は無実」と書かれていたという。
 しかし、当時の状況からいって、妻の犯行は揺るがないもの。さて、ポアロはどう動くか。

 当時この事件に関わったのは加害者と被害者を除けば五人。
 タイトルの『五匹の子豚』はマザー・グースの遊戯の数え歌だという。つまり、この五人が五人ともに怪しい。
 しかし、真実は一つでしかない。しかも、16年前にその真実は裁かれているはず。
 そこポアロは当時の弁護士や刑事を訪ね歩き、この五人の関係者にもあっていく。
 そして、五人に当時の話を文章にまとめてもらう。
 真実は一つ、しかしそこに五つの話は生まれる。

 途中で犯人がわかったと思いましたが、それはあまりにも単純すぎて、外れてしまいました。
 あなたは、真の犯人にたどりつけるだろうか。
  
(2019/02/20 投稿)

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  今日紹介する
  フレドリック・バックマン
  『幸せなひとりぼっち』
  たまたま映画をCS放送で観て
  感動して
  原作本を見つけて読んだ一冊です。

  

  こんないい映画を
  観られたことが
  幸せですね。
  で、原作を読んでみたのですが
  やはり映画の方が
  少し点は高いかな。
  でも、原作もなかなかよかったですよ。
  本を読んで
  映画を観て
  絶対ソンはないですよ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  本も映画もおススメです                   

 昔角川が「読んでから見るか、見てから読むか」と大々的な広告で映画と文庫本の拡大をはかったことがある。
 今では当たり前になったメディアミックスの先駆けだろう。
 スウェーデンの作家によるこの長編小説も映画の公開に合わせて2016年の秋日本で刊行された。
 映画の公開も2016年12月だから、この本を読んで映画館に走った人もいるだろう。何しろこの小説はスウェーデン国内で100万部に近いベストセラーだし、その翻訳は多くの国で出版されている。
 しかし、それよりも映画を観てからこの本を手にする人の方が多かったのではないだろうか。地元スウェーデンでは国民の5人に1人が観たといわれるほど人気の高い映画で、受賞はならなかったがアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたほどだ。

 この小説の原題は「En man som heter Ove(オーヴェという名前の男)」だが、邦訳は映画のタイトルに合わせたそうだ。
 原題のようにこれはオーヴェという59歳の頑固な男が主人公だ。
 妻をガンで亡くし、さらには「少しのんびりするのも悪くない」と体のいいリストラにあって、絶望している。だから、早く妻のところに行こうと決める。
 そんなところに向かいの家に引っ越してきた家族にひっかきまわされてしまうオーヴェ。やがて、彼は生きることを自然と選ぶようになっていく。

 小説ではすべての章に「オーヴェという」と付いたタイトルになっている。
 彼と妻、彼と父親、彼と隣人たちなど、うまく構成されている。
 映画もよかったが、小説もいい。
 この本を読んだなら、ぜひ映画も観てもらいたい。
 とってもいいのだから。
  
(2019/02/19 投稿)

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 明日は二十四節気のひとつ、雨水
 「俳句歳時記 第五版 春」によれば

    振る雪が雨に変わり、積もった雪や氷が解けて水になるとの意から
    雨水という。
    農耕の準備も始まるころ


 とあります。

    金色に竹の枯れたる雨水かな      津川 絵里子

 結構寒さの厳しかった今年の冬も
 ようやく和らいできた
 一昨日の土曜日(2月16日)、
 私も畑の作業を開始し始めました。

 まず先週の講習会で勉強した土づくりで
 今年は畝に培養土を混ぜこむところから
 始めます。
 寒起こしで休ませていて畝に
 培養土をまいて
 鍬で耕して次の栽培まで待ちます。

  20190216_104248_convert_20190216142822.jpg

 黒っぽく見えているのが
 培養土です。

 次にイチゴの畝。
 冬の間は寒さに耐えさせていたイチゴ
 黒マルチを張って
 今度はしっかりと温めて
 成長を促します。

  20190216_103715_convert_20190216142716.jpg

 イチゴの苗の間に伸びているのは
 ニンニクです。

 そして
 こちらはスナップエンド
 それまで覆っていたネットをはずして
 支柱を立て
 春の成長に備えます。

  20190216_110551_convert_20190216142924.jpg

 大きくなってくると
 それに合わせて
 ひもも高くしていきます。
 これと同じことを
 ウスイエンドウにも施しました。

 これは
 スナップエンドウの横で育てている
 葉ネギたち。

  20190216_110558_convert_20190216143014.jpg

 もう少し大きくなってくれるように
 追肥をしました。

 同じように
 春収穫のダイコンの品種にも
 追肥をしました。

  20190216_120119_convert_20190216143130.jpg

 作業を始めると
 あっと言う間に時間が過ぎて
 終わってみれば
 なんと3時間畑にいたことになります。
 もっとも
 いろんな人と
 おしゃべりしている時間も
 多かったのですが。

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  今日は
  エズラ・ジャック・キーツさんの
  『ピーターのいす』という
  絵本を紹介します。
  これも末盛千枝子さんの
  『小さな幸せをひとつひとつ数える』という本で
  紹介されていた一冊です。
  本当にあの本からは
  たくさんいい絵本を教えてもらっています。
  私には二人の娘がいますが
  そして今はとっても大きいですが
  そのうち長女の方は
  小さい頃
  ちょうど次女が生まれたあたりから
  指吸いをしきりにするようになったことを
  よく覚えています。
  あれは彼女なりの甘えだったんだろうと
  今でもとっても懐かしく
  思い出すことがあります。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  小さな子ども達の喜びと悲しみを知る人                   

 この絵本の作者、エズラ・ジャック・キーツのことを末盛千枝子さんは「小さな子ども達の喜びと悲しみを知る人だった」と、『小さな幸せをひとつひとつ数える』という本の中に記しています。
 そんなキーツは1916年にニューヨークの下町で生まれ、独学で絵の勉強をしたそうです。
 1983年に67歳で亡くなりましたが、今でもアメリカの絵本界では大きな存在だと末盛さんはいいます。

 キーツの絵本には「ピーター」という名前のついた作品がたくさんあります。
 中でも、この『ピーターのいす』は代表作のひとつで、1967年の作品ですが、今も人気の一冊です。
 ピーターというのは黒人の男の子の名前です。
 この作品ではピーターにかわいい妹が誕生しています。おかげで、お母さんは妹の世話にかかりっきり。しかも、ピーターが小さい頃に使っていたベビーベッドも食堂イスも今ではピンクに塗られて妹のものに。
 ピーターは断然面白くありません。
 そこで、愛犬のウィリーとまだピンクに塗られていない小さなイスを持って、家出することにしました。
 でも、家出といっても家の外に立っただけ。
 しかも、お母さんに「帰っておいで」といわれて、すんなり帰ってしまうところがかわいい。
 もっとも、ちょっといたずらをしかけたりしますが。
 そうして、ピーターは自分がもうおとなのイスに座れることにも気づくのです。

 子どもの成長を見ていると、この絵本のピーターのように弟や妹が生まれた時に少し変化がみられることがあります。
 キーツはそのあたりのことをとてもよく観察していると思います。
 小さな子どもの視点に立っているから、キーツの絵本は今でも読まれているのでしょう。
  
(2019/02/17 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  久しぶりに「本が好き!」さんから献本頂いた
  本の紹介です。
  この本が献本頂けると聞いた時
  飛び上がって喜びました。
  そして送られてきた本を見て
  もっとうれしくなりました。
  その本は、
  遠藤若狭男さん監修の
  『俳句でつかう季語の植物図鑑』。
  これこそ
  永久保存版の一冊です。
  せっかくなので
  春の花、紅梅から
  監修者の遠藤若狭男さんの句を
  紹介します。

    紅梅の数を尽くせし暗さかな     遠藤 若狭男

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  俳句を愛する人にとっては、まさにこんな本が欲しかった、そんな一冊だ                   

 俳句を詠むのに「歳時記」は欠かせない。
 季語にはいくつかの分類があって、「時候」「天文」「地理」「生活」「行事」「動物」「植物」と分かれている。
 町に出て、偶々目にとまった可憐な花を見つけて、つい一句詠みたくなることは俳句初心者にはよくあることだ。
 最近買ったばかりの「歳時記」をめくってみるが、さて、この可憐な花の名前がわからない。横文字の言葉ばかりが氾濫し、花の名前がでてこない。
 そのうちに、頭の中にひらめいた名句がどこかに行ってしまう。
 そんな残念な思いをした人は多いのではないだろうか。

 そんな人のためのうってつけの本がこれだ。
 花と植物がおよそ400種類、美しいカラー写真で紹介されている。
 そこでは「見出し季語」は当然あるし、それと関連した季語(これは傍題という)、さらにはその植物や花が何科であるか、そしてそれがいつ最盛期であるか、そして「解説」と「例句」、さらには「名前の由来」まである、丁寧な編集となっている。
 持ち運びできないことはないが、文庫本の大きさではないので、名前のわからない花を見つけた時は、すぐさま、名句が行き過ぎていく前に家に飛んで帰って、本書を開くことになる。
 名句はまだまだ逃げない。

 俳句を愛する人にとっては、まさにこんな本が欲しかった、そんな一冊だろう。
 最後に本書の監修者である俳人の遠藤若狭男は、残念ながら本書刊行前の2018年12月に逝去されている。ご冥福をお祈りするとともに、本書を出してもらったことに感謝したい。
  
(2019/02/16 投稿)

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  朝日新聞朝刊に
  鷲田清一さんが毎朝「折々のことば」という
  小さなコラムを連載しています。
  今年にはいって
  何回か
  石井桃子さんの随筆集『みがけば光る』から
  「ことば」が引用されていました。
  それなら
  一度読んでみようと
  手にしたのが
  今日紹介する本です。
  一つひとつの文章は短いのですが
  こうして一冊にまとまると
  まるで石井桃子さんの人生を
  なぞっているような印象を受ける
  一冊です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  味わいのある文章は宝石のごとく                   

 児童文学者石井桃子さんは埼玉の浦和で生まれました。
 1907年のことです。
 浦和は今では住みたい街にも選ばれるくらいの賑わいを見せていますが、当時は「道のほとりにたんぽぽや、れんげ草が咲きみだれ」た田舎町で、「細長い浦和の町」を幼い桃子さんは「気の向くまま」歩いていた「のんびり屋」だったそうです。
 そんな子どもの頃の話やそれから成長して女学生の頃、あるいは働き始めた頃のことから、お友だちの話、言葉について、あるいは暮らしの変化のあれやこれや。
 石井さんがさまざまなところに書いてきた随筆がうまくまとまった一冊になったのが、この本です。

 私がもっとも面白いと思ったのは「太宰さん」という随筆。
 太宰治がもしかしたら石井さんが好きだったかもというエピソードを一方の当事者である石井さんが当時を振り返って綴っています。
 太宰の死後、井伏鱒二さんが石井さんに「太宰君、あなたがすきでしたね」という。それに返すように「私なら、太宰さん殺しませんよ」と石井さんは答えたそうです。
 石井さん自身が綴っているから、本当にそんなやりとりがあったのでしょう。
 もし、太宰が石井さんと、と考えるだけでどきどきします。

 表題作の「みがけば光る」は言葉に関して石井さんが感じていることを綴っています。
 言葉ということでいえば、石井さんの随筆全体に流れている文体のやさしさは現代ではあまり味わえないものです。
 それだけでもこの随筆集を読む価値はあるのではないかと思います。
  
(2019/02/15 投稿)

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  2月8日、
  作家の堺屋太一さんが亡くなりました。
  享年83歳でした。
  堺屋太一さんは
  通産省の官僚として
  1970年の大阪万博を成功に導きました。
  その後作家に転身しますが
  作家になってからも経済企画庁長官など
  政治にも深く関わっていきます。
  このように様々な功績がありますが
  なんといっても
  「団塊の世代」とネーミングしたことの
  影響が一番大きいかもしれません。
  名前をつけることで訳のわからないものが物語になっていく。
  そのことを実践された人でした。
  まさに「団塊の世代」は
  そんな言葉になったと思います。
  今日は追悼の意味で
  堺屋太一さんの『団塊の世代』を
  再録書評で掲載します。

  ご冥福をお祈りします。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  再録書評:団塊の世代の弟が読む『団塊の世代』                   

  1947年から51年の「戦後ベビーブーム」に生まれた世代を今では普通に「団塊の世代」と呼ぶが、その発端となったのが1976年に刊行された堺屋太一のこの本である。
 当時堺屋は通商産業省(現経済産業省)に勤務する役人で、デビュー作である『油断!』がヒットした気鋭の作家でもあった。
 この2作は予測シミュレーション小説とも呼ばれるが、特に本作の場合、堺屋が描いた世界は現実の世界そのものとなった。

 この世代とは高度成長を支えた一方で「先のことを考えないで、福祉だとかレジャーだとかで民族のバイタリティ―をことごとくその日の消費に使ってしまった責任世代」(第四話「民族の秋」より)と指摘する声もある。
 この作品ではまだミドル世代であった人たちは、今70歳近いシニアに変貌して、この作品の中にはめ込まれたこういう言葉をどう聞いているのだろうか。
 そういう塊を切る棄てることのできないまま、まだこれから先20年近い年月を、私たちの国は背負い続けなければならない。

 この作品は四つの物語からできている。
 それぞれの登場人物は団塊の世代であるが、舞台は電機、自動車、銀行、官庁に分かれている。
 この四つの業種は戦後日本をけん引してきたリーダーだ。だからこそ、団塊の世代が大量にいた業種ともいえる。
 多いゆえの競争を強いられたこともあっただろう。そういうものに勝ち残った人は一握りだろう。反面、どのような形にしろまだ幸せな世代なのかもしれない。
 少なくとも、まだまだ団塊のこぶは消えないのだから、その影響は大きいはずだ。
  
(2016/07/28 投稿)

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 司馬遼太郎さんが亡くなる直前まで書き続けていたのが
 産経新聞に連載していた「風塵抄」と
 総合誌「文藝春秋」に連載していた「この国のかたち」。
 「文藝春秋」の巻頭を飾る随筆は
 その後もこの国を照らす灯りですが、
 現在は立花隆さんが担当しています。
 「文藝春秋」3月特別号(文藝春秋・1000円)では
 「東大紛争五十周年」と題して
 当時東大の哲学科の学生でありながら
 新人ジャーナリストとして
 その時の紛争を記事にしたことを記していて
 興味深く読みました。

  

 もちろん「文藝春秋」3月号を手にする理由は
 この号で先頃発表された
 第160回芥川賞の受賞作が全文掲載されているからです。
 受賞作を復習しておくと
 上田岳弘さんの「ニムロッド」と
 町屋良平さんの「1R1分34秒」の2作。
 ということで
 この号には芥川賞関連として
 選考委員でもある宮本輝さんが
 「平成芥川賞30年「選考委員会秘話」」を
 綿矢りささんと金原ひとみさんの対談
 「母親になった私たち」が
 掲載されています。
 受賞作以上に楽しめる記事です。

 「文藝春秋」は総合誌ですから
 今もっともホットなニュースをさまざまな分野から
 記事として載っています。
 韓国と泥沼化状態になっている
 「レーダー照準事件全真相」や
 勤労統計不正の
 「厚労省「ブラック官庁」の研究」などは
 やはりつい読みたくなります。

 そんな中、
 私が最初に読んだ記事が
 「美智子さまは小さな本がお好き」という
 安野光雅さん池内紀さん檀ふみさん三人の鼎談。
 ここには
 皇后美智子さまが色々なところで話された
 「23冊のリスト」もついています。
 その中で
 安野光雅さんが語ったこんな言葉が
 印象に残ります。

   本を読むと人は美しくなれる。

 皇后美智子さまを見ていると
 そう感じる人は多いのではないでしょうか。

 その他にも
 面白そうな記事がたくさん。
 たくさん過ぎて
 どうしたらいいか困ってしまう。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は菜の花忌
  作家司馬遼太郎さんの忌日です。

    丸善に読書席あり菜の花忌     岩永 はるみ

  司馬遼太郎さんが亡くなったのが
  平成8年で
  時代はまさにバブルがはじけ、
  阪神大震災にオウム事件と
  混沌としていた頃です。
  けっして「平成」という新しい時代の
  明るさだけではありませんでした。
  そんな時
  司馬遼太郎という航路を照らす
  灯台のような人物を喪いながらも
  ここまで「平成」であり続けたことを
  司馬遼太郎さんは
  何と思われていることでしょう。
  今日は
  司馬遼太郎さんの『風塵抄 二』を
  紹介します。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  司馬さんの最後のメッセージ                   

 司馬遼太郎さんが亡くなったのは平成8年(1996年)2月12日のことでした。
 司馬さんはその晩年2つの大きな随筆の仕事をされていて、一つが総合誌「文藝春秋」に連載していた「この国のかたち」で、もう一つは産経新聞に毎月一回連載をしていたこの「風塵抄」です。
 昭和から平成へと続く歳月に描き続けたもので、この「二」には1991年から亡くなる1996年2月までの作品が収められています。

 この連載の最後のタイトルが「日本に明日をつくるために」という、司馬さんを終生不快な気分にさせた土地本位の問題を論じているのも印象的です。
 そういう点では、思想家司馬さんの「遺書」のようにも思えます。
 この作品を書き上げるまでの司馬さんの姿は、文庫本に付記された当時の産経新聞の担当記者であった福島靖夫さんの文章に詳しい。
 それを読むと、誰もがそのまま司馬さんが亡くなってしまうとは思わなかった様子がうかがえる。

 この「二」の大きな特徴といえば、阪神大震災とオウム事件のあった1995年の連載分があることだろう。
 特に阪神大震災についての作品には「市民の尊厳」(1995年1月30日付)というタイトルが付いて、今読んでも司馬さんの優しさに胸が震えるような感動をおぼえる。
 だからつい考えてしまう。
 もし、東日本大震災のとき、司馬さんが存命であれば、どんなメッセージを私たちに残してくれただろうかと。

 他にも1992年3月2日付の随筆では「アメリカが自国の産業を保護し、そのかがやかしい自由貿易の旗を反旗にすれば、“神”はたちどころに去るにちがいない。むろん、世界に混乱がおこる」と、まるで現在のトランプ政権を予言したかのような文章に、脱帽した。
  
(2019/02/12 投稿)

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 今日は
 「平成」最後の建国記念の日

   大和なる雪の山々紀元節      富安 風生

 せっかくの3連休のところ
 寒波襲来で
 でかけることもままならなかった人も
 いるかと思います。
 こちらも
 昨日の朝起きると
 夜に降った雪で
 家々の屋根は真っ白。

  20190210_065846_convert_20190210142411.jpg

 もっとも予報ではうんと積もりそうでしたから
 よかったです。
 でも、気温はあがらなくて
 寒かったですね。
 そんななかでも
 かわいい紅梅を見つけました。

  20190210_135645_convert_20190210142553.jpg

 近づくと
 とてもいい香りがしました。

   紅梅や枝々は空奪ひあひ     鷹羽 狩行

 こういう風景を見ると
 春の近さを感じます。

 そんな昨日の日曜日
 菜園で
 今年最初の講習会が行われました。
 寒いにもかかわらず
 50人以上の人が参加しました。
 今年最初ということで
 まず1年間利用する
 テキストが配られます。

  20190210_141045_convert_20190210142734.jpg

 このテキストには
 今年育てる野菜の栽培方法とかが
 写真入りで載っていて
 これから苗を植えたり種を蒔いたりする時期に
 講習を受けます。
 私は
 小学校でいえばもう5年生になりますが
 今年から始める1年生もいたり
 まだ2年めという
 初々しい利用者もいます。
 なので
 定期的にこういう講習があるのは
 うれしいです。
 この日は新しい年に向けた土づくりと
 今育てている野菜の管理方法の講習でした。

 畑は夜に降った雪も
 すっかり溶けていましたが
 ほとんど変わりようもありません。
 ウスイエンドウ
 ごらんのように
 大きくなっているのか
 どうかもわかりません。

  20190210_133949_convert_20190210142500.jpg

 春になったら
 うんと大きくなるのでしょう。

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日は東京でも雪が降って
  少し積もりました。
  当初はもっと降り続くような予報でしたが
  そうでもなかったので
  よかったですね。
  たまたまその時に
  酒井駒子さんの
  『ゆきがやんだら』という絵本が手元にあったので
  今日は再読書評として
  紹介します。
  最初に読んだのは2010年ですから
  結構前になります。
  でも、絵本って
  その時々の旬のような作品があったりして
  それだけでも
  素敵だと思いませんか。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  酒井駒子の世界は心地よい                   

 子どもたちは雪が大好きだ。
 ふわふわ、空から降ってくる雪は子どもたちには別の世界への誘いにも思えるのだろう。
 この絵本はそんな子どもの心情が巧みに描かれている。

 別の世界への誘いはそればかりではない。
 この絵本に登場するのはうさぎの母と子。それでいてこのうさぎたちが暮らしているのは、どこにでもある団地のお家。
 まるで、この世界が人間ではなくうさぎたちの世界へと変わってしまったかのよう。
 それでも、それが不思議に思えないほど、酒井駒子さんの絵は素敵だ。

 雪が降って、私たち読者が迷い込んだのは、うさぎたちが暮らす別の世界。

 朝起きると、外は一面の雪景色。
 それで幼稚園も休園になったようだ。
 うさぎの子どもは喜んで外に飛び出そうとするが、ママが「かぜひくから」と出してくれない。
 仕方がないので、子うさぎはベランダで雪あそび。
 雪はそれからもどんどん降って、もっと深く積もりだしている。
 車も通らない、だれも通らない。ただ雪の降る音だけがする。

 「ぼくと ママしか いないみたい、せかいで。」

 このあたりは酒井駒子の世界に閉じ込められてしまったように感じる。
 なので、この「せかい」には「ぼくと ママ」それに読者のわたし。

 夜になって雪がやんで、子うさぎとママは外に出ていく。
 誰の姿も見えない夜の世界で二人は仲良く遊ぶ。
 そして、手が冷たくなった子うさぎをママがしっかり抱き寄せて、温めてあげる。

 そんな夜の世界から二人はお家に帰っていくのだが、それはまるで酒井駒子の世界へと戻っていくかのように、思えた。
 わたしを残して。
  
(2019/02/10 投稿)

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  今日は「漫画の神様手塚治虫さんの命日。
  亡くなったのは
  平成元年のことです。
  60歳という若さでした。
  あまりに忙しすぎたせいもあったのかもしれませんが
  印象としては
  やはり「昭和」を駆け抜けた漫画家というものです。
  今でも
  手塚治虫さんが生み出した
  鉄腕アトムがCMに登場したりしています。
  それだけ
  すごいキャラクターだったのでしょう。
  「平成」が終わる今年、
  手塚治虫さんはまた遠くなってしまいますが
  新しい時代にも
  きっとたくさんのアトムの子が
  飛び回っているように思います。
  今日はそんな手塚治虫さんの
  『原画の秘密』を
  紹介します。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  「平成」に手塚治虫はいなかったけれど                   

 元号が「平成」と改められてほどない、1989年2月9日、「漫画の神様」と称された手塚治虫が亡くなった。
 「昭和」が手塚を彼岸に連れていってしまったと、その訃報に驚いたものだ。
 「平成」の漫画に手塚治虫はいなかったけれど、手塚に続く気鋭の漫画家たちが続々と現れ、その世界を豊かにしてくれた。
 「平成」が「昭和」があればこその日々だとすれば、漫画界も手塚治虫がいればこその現在の隆盛だろう。

 その手塚は晩年(そうはいっても享年60歳の、早すぎる晩年だが)「丸が描けなくなった」と嘆いたという。
 それまでの手塚はコンパスを使わずともきれいに丸が描けたそうだ。
 何しろその生涯で15万枚に及ぶ作品を描き続けた手なのだから、疲れもあっただろうに。しかし、手塚はそれを良しとしなかった。
 それが手塚治虫という漫画家のこだわりだ。

 新潮社の「とんぼの本」は写真図版を多用して、それぞれのテーマを深く読み解く人気シリーズだ。
 手塚治虫が書き直したりボツにしたりしたファンにとっては垂涎ものの原画の写真がずらりと収められている。
 あの名作「ジャッグル大帝」のオープニングシーンが発表の媒体によっていくつも書き直されているのを見ると驚いてしまう。
 昔はまるでドラマの再放送のように漫画も違う雑誌に掲載されていたりする。
 もっともそれも「ジャングル大帝」という名作だからこそかもしれない。

 その他にも手塚の名作漫画の原画をいっぱい詰め込んで、まるでこの本が手塚ワールドそのものに思えてくるのだ。
  
(2019/02/09 投稿)

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  先月1月29日に
  作家の橋本治さんが亡くなりました。
  橋本治さんの名前を一躍有名にしたのが
  東大時代の駒場祭のキャッチコピー。

    とめてくれるなおっかさん 背中の銀杏が泣いている 男東大どこへ行く

  その後、1977年に『桃尻娘』を発表。
  私が22歳の時です。
  まさに多感な時に
  橋本治さんは颯爽と現れたわけです。
  橋本治さんは1948年生まれで
  享年70歳。
  若いというより
  自分のお兄さん世代の死に呆然としています。
  同じ世代が
  今日紹介する沢木耕太郎さん。
  1947年生まれですから
  沢木耕太郎さんも70歳を過ぎたのですね。
  沢木耕太郎さんも颯爽と登場してきたのは
  私の20歳過ぎ。
  今日は沢木耕太郎さんの
  『作家との遭遇』という作家論を
  紹介します。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  沢木耕太郎は沢木耕太郎のままそこにいる                   

 共に藤田嗣治の「小さな職人」というシリーズから一枚の絵を装画に使った2冊のエッセイ集が2018年に刊行され、これはそのうちの作家論を集めた一冊になる。
 もう一冊の『銀河を渡る』という25年分のエッセイを集めた方もそうだが、発表された年月の表記はあるが、どんな媒体に出たものなのか、いわゆる「初出」の表記がなかったのは残念だ。

 この本には23編の作家論が収められている。
 特に今回の目玉企画でもある沢木耕太郎が横浜国立大学経済学部卒業時に書いた「卒論」であるカミュ(経済学部の卒論にカミュである!)をはじめ、井上ひさし、山本周五郎、向田邦子、山口瞳、吉村昭、高峰秀子、瀬戸内寂聴、カポーティといった有名作家の名前がずらりと並ぶ。
 おそらくその発表の舞台は文庫本の「解説」などだろうが、読者は果たして沢木の文章を読むためにその文庫本を手にしたのだろうか。
 例えば、向田邦子の作家論。おそらく読者は向田邦子という作家がどのような書き手でどのような作品なのかを知ろうと、沢木の書いた文章を読んだはずだ。
 ところが、こうして沢木の名前で編まれた作家論となれば、読者は沢木の文章ということを意識し、それを読むはずだ。この時、向田邦子は沢木を読むための触媒でしかない。

 さらにいえば、沢木の文章の魅力はあくまでも沢木個人に寄り添った点にある。
 先の向田邦子論でいえば、その末尾に沢木は向田が飛行機事故で亡くなったニュースを知ったことを書く。
 そこには向田を論じた論者というだけでなく、沢木耕太郎という特定の人間がいる。
 沢木耕太郎の作品の魅力は、まさにそこにあるように思う。
  
(2019/02/08 投稿)

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  先日
  図書館に初めて弁償を求められた。
  というのも
  借りていた本を水で濡らしてしまったからだ。
  背負っていたリュックの中に
  この本を入れていたのだが
  一緒に入れていた水筒から中身がこぼれて
  リュックの中にあふれだしたのである。
  結果本も水をふくんで膨れ上がった。
  といっても読めない訳ではないので
  返却すると
  弁償を求められた。
  弁償方法は同じ本の現物提供が基本。
  もし、昔の本で手に入らない場合は個別の対応になるのだという。
  今回はまだ新しい本だったので
  購入して
  現物を弁償できたので
  よかった。
  その本が
  今日紹介する花房観音さんの
  『恋塚』だったのだ。
  皆さん、図書館から借りた本は
  丁寧に扱いましょうね

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  官能小説にも「解説」がつく                   

 文庫本についている「解説」を楽しみにしている人は意外に多い。
 まず「解説」を読んで、購入するかどうかを決める人もいる。
 それが文庫オリジナルの官能短編集であっても、「解説」が付いて、しかもそれを執筆しているのが女性の書評家だとしたら、官能小説であっても女性読者が手にする機会は増すだろう。
 「演技ではない「秘め事」を覗き見たいのだ」、なんて書かれると、なんだか女性の本音が聞けたような気になる。

 この短編集は第1回団鬼六賞大賞を受賞してから、官能小説の世界をひたすら書き続ける女性作家花房観音の6つの作品を収めている。
 講談社文庫オリジナルで、6つのうち4作が「書下ろし」になっている。
 この文庫の「解説」を書いているのが、女性書評家の藤田香織。
 花房観音の作品の魅力は確かに官能場面(つまりはsex描写)の巧さだけでなく、まるで京都観光ガイドのように京都の知られざる名所旧跡を舞台にしている点も挙げられる。
 ちなみにこの短編集でいえば、表題作になっている「恋塚」には袈裟御前の墓がある恋塚寺、「懸想文」という作品では須賀神社といったように、花房観音の裏京都ガイドがばっちり楽しめるようになっている。

 女性が官能小説をどのように読んでいるかは「解説」を読んでもらうのがいい。
 特にその最後のこんな一文、「知りたい、見たい、感じたい。女にも、自分にも欲望があるということを肯定し続ける花房作品」なんて、ぐっとくる。
  
(2019/02/07 投稿)

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  昨日
  『俳句歳時記 第五版 春』に
  司馬遼太郎さんの忌日「菜の花忌」が採用されていることを
  書きました。
  司馬遼太郎さんと同じように
  今でも人気が高い
  藤沢周平さんの忌日、1月26日は
  「寒梅忌」と呼ぶそうです。
  残念ながら、
  今回の第五版の「歳時記」には採用されていませんでしたが
  おそらく次の版には
  載るのではないでしょうか。
  今日は
  そんな藤沢周平さんの短編小説
  『鱗雲』を
  紹介します。
  この短編は
  湯川豊さんの
  『一度は読んでおきたい現代の名短篇』にも
  取り上げられている名篇です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  母を描いて秀逸な短編                   

 昭和50年(1975年)「週刊小説」9月号初出の、文庫本で30ページ余りの、藤沢周平の短編小説。(文庫『時雨のあと』所収)
 藤沢周平が「暗殺の年輪」で第69回直木賞を受賞した(1973年)のは、彼が46歳の時で決して早い受賞ではなかった。
 その翌年、八十歳になった母が亡くなっている。
 この短編はその翌年に発表されたものであるが、もしかしたらこの母の死が色濃く作品に投影されているような気がしてならない。

 というのも、この小説の主人公小関新三郎は父と妹を続けて亡くし、母理久との二人暮らしをしている武士である。
 理久は「まだ四十二だが、少し老けこんだようになっている」のも、家族の死が続いたせいだろう。
 だから、新三郎は余計にこの母を案じ、偶々藩に戻る峠で病人の娘を助け、家に連れ帰ったのも、そんな母の気晴らしとも思う気持ちもあったかもしれない。
 物語はこの娘雪江が親の仇討ちを計画している話と、新三郎の婚約者ながら遊び人の中老の呆けた青年の家に通う利穂の話が新三郎を核にして静かにうねっていく。

 短篇小説にするにしてはいささかもったいないような気がする。
 特に婚約者利穂が中老の息子に弄ばれて自害をするその裏事情などはそれだけで一篇の物語になりそうに思う。
 けれど、この作品が短編として締まっているのは、新三郎の母理久の存在であろう。
 そこには前年亡くなった母の姿を想う藤沢周平の心が投影されているように思えて仕方がないのである。
  
(2019/02/06 投稿)

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  昨日が立春だったので
  手元の「歳時記」を「春」の部に変えました。
  そして、
  今年から『俳句歳時記 第五版 春』、
  つまり新しい版になります。
  文庫カバーの装画は
  SOU-SOUさんの「花椿」。
  この装幀を見ているだけでも
  春を感じます。

    赤い椿白い椿と落ちにけり      河東 碧梧桐

  これからしばらく
  この「歳時記」のお世話になります。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  新しい言葉と出会う                   

 10年ぶりに改訂となった「俳句歳時記」。
 最初に角川文庫にはいったのが1955年というから、もう60余年。季語の見直しのつど改訂されて2018年に刊行されたのが第5版となる。
 文庫本の「序」にこうある。
 「近代以降の生活様式の変化によって季語の数は急増した。なかには生活の変化により実感とは遠いものになっている季語もある。歳時記を編纂する際にはそれらをどう扱うかが大きな問題となる」。
 編纂を担当された編集部の苦労がしのばれる。

 さて、そんな第五版の「春」の部。
 今回新たに入った「忌日」の季語がある。
 それが「菜の花忌」。司馬遼太郎さんが亡くなった2月12日をこう記す。
 司馬さんが亡くなったのが1996年でそれほど年数も経っていないから、この歳時記にとられている例句もまだ2つと少ない。
 そのうちの一つが山田みづえさんの「ゆるやかな海の明るさ菜の花忌」。
 司馬さんの作品の大きさを感じさせる句になっている。

 このように一つひとつの季語をたぐっていけば、新しく入った季語やなくなった季語を見つけることもあるだろう。
 そういう楽しみもあるかもしれない。
 あるいはあの言葉ははいっているのかとか探してみるのも面白い。
 新しい言葉だからいいとはかぎらない。
 そこから俳句という文芸が生まれる、そんな言葉を見つけられた、いい。
  
(2019/02/05 投稿)

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 今日は立春
  
    春立つや子規より手紙漱石へ       榎本 好宏

 よく暦のうえでは春ですが、と言いますが
 ここ二三日は
 春を感じさせる温かさです。

  20190202_102728_convert_20190203141135.jpg

 写真は近くで咲いていた梅ですが
 きっと早咲きなのでしょう、
 結構見事な咲きっぷりでした。
 もっともまだまだ寒い日が来るのでしょうね。
 昨日(2月3日)畑に行くと
 畝の中に置いていた虫集めの黄色いバケツに
 氷が張っていました。

  20190203_102358_convert_20190203141228.jpg

 朝はさすがに冷え込んでいたのでしょうね。

 この時期の畑は
 ほとんど作業がありませんが
 そろそろ鳥の被害が出てきました。

  20190203_103746_convert_20190203141440.jpg

 これは他のお家が育てている茎ブロコリーです。
 鳥に葉を食べられているのがわかります。
 不思議なもので
 鳥は私たちが食べる実のところは
 食べません。
 鳥たちも生きるためには
 精一杯なのでしょう。
 なので、私たちが鳥害防止のネットをかけるとか
 工夫をしないといけません。

 下の写真は
 キャベツ収穫後の
 わき芽の成長の様子。

  20190203_103447_convert_20190203141343.jpg

 食べられるところまで育つかどうか
 昨年もうまくいかなかったので
 今年も再挑戦していますが
 うまくいくかどうか
 心細い感じです。

 今週末から
 いよいよ新しい季節に向けて
 土づくりとかの講習が
 始まります。
 ようやく
 畑も新しいキャップインです。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は節分
  豆まきをする家庭も少なくなったのか、
  夜に「福は内、鬼は外」の声を聞くことも
  なくなりました。

    使はざる部屋も灯して豆を撒く      馬場 移公子

  恵方巻が
  最近ではフードロスの問題で話題になっていますが
  やはりあれは
  業界がもう少し考えないといけないでしょうね。
  貧困で満足に食べることができない人たちも
  世界にはまだまだたくさんいるのですから。
  今日は
  戸田和代さんの『きつねのでんわボックス』という
  作品を紹介します。
  子どもたちに
  読んであげたくなる
  名作です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  子を想う母、母をおもう子                   

 きつねにどんなイメージがありますか。
 人を化かすというのはよく言われていますが、同じ化かす動物のタヌキの方はどちらかといえばおっとりしているような印象がありますが、きつねにはずる賢いみたいな悪い印象があるように感じます。
 あのシュっとした細い顔つきがそんなイメージを生むのかもしれません。
 その一方で、親子の情愛の深さを感じるのもきつねにはあります。
 ぎつねのそばに子ぎつねがいる、そんな北きつねの写真などよく見かけるからでしょうか。

 第8回ひろすけ童話賞(1997年)を受賞した戸田和代さんのこの作品では、そんなきつねのいいイメージがうまく表現されています。
 ちなみに「ひろすけ童話賞」というのは、童話作家浜田廣介の偉業を讃えて設けられたもので2018年には第29回の賞が発表されています。

 戸田さんのこの作品では可愛がっていたこぎつねを亡くしたかあさんぎつねが人間の子どもが遠くの病院に入院している母親に電話ボックスから電話をしているのを目にします。
 「ぼうやがうれしいと、かあさんはいつもうれしいの」、そんな会話をこぎつねとしたことを思い出しながら、人間の子どもに自分のいなくなったこぎつねの姿を重ねるかあさんぎつね。
そういえば、かあさんぎつねは化けることができずにこぎつねをがっかりさせたこともありました。
 でも、とうとうかあさんぎつねがあるものに化けることができるのです。
 それは、なんと・・・。
 こうして、人間の子どもを抱きしめながら、かあさんぎつねの胸に去来するのはこぎつねのこと。

 しみじみと胸にしみこんでくる作品です。
  
(2019/02/03 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  『図書館さんぽ』という
  図書館のガイドブックのような本を
  紹介しますが
  この本の副題が
  「本のある空間で世界を広げる」です。
  図書館は随分素敵な空間になりましたが
  まだまだ利用者が少ないように感じます。
  本大好き、図書館大好きな人は
  よく利用しますが
  そうでもない人には
  なかなか敷居が高いのでしょうね。
  そんな人が
  入りやすい工夫が
  図書館側にも必要だと思います。
  本の世界でも
  貧困から生まれる格差問題はあります。
  でも、図書館に行けば
  それも解決するのですが。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  近くの図書館もいいけれど                   

 「館」とつくところが好きだ。
 美術館、博物館、文学館、映画館、そして何より図書館。
 特に最近の図書館は使い勝手がいいだけでなく、建物自体がモダンであったりおしゃれだったりする。
 あるいはカフェが併設されていたり、WiFiが完備されていたり、一日いても飽きることはない。
 そんな図書館を「さんぽ」してみよう、しかもその周辺の本のある空間、本屋であったりブックカフェ、あるいは人気スポットまで紹介してくれるのだから、贅沢だ。

 どんな図書館とその周辺が紹介されているかというと、千代田区立日比谷図書文化館、国立国会図書館国際子ども図書館、武蔵野市立ひと・まち・情報創造館武蔵野プレイス、東京都立中央図書館、とやはり東京にある図書館が多い。
 しかし、この本では鎌倉市中央図書館や岩手県にある紫波町図書館までカバーしてくれているのがいい。
 さらには北は北海道から南は沖縄まで今注目を集めている全国の図書館105館も紹介している。ここには短いコメントと「建物が素敵」とか「カフェがある」とかわかりやすい目印まで付いている。

 図書館というのは調べ物をしたり本を探したり本を読んだりするところだが、それ以外にもこんな楽しみ方があるのだと教えてくれている。
 おいしいドリンクを飲むために図書館に足を向けてもいいじゃないか。
 そこには楽しい本が待ってくれている。

 近くの図書館もいいけれど、さんぽをしながらちょっと遠くの図書館に足をのばすのもいい。
  
(2019/02/02 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日から2月
  立春までもう少し。
  この季節にぴったりの季語が
  春隣(冬の季語です)かもしれません。

    叱られて目をつぶる猫春隣    久保田 万太郎

  なので
  大急ぎで今年のお正月2日と3日に放映された
  ドラマの話をします。
  2夜連続でNHKで放映されたのが
  門井慶喜さん原作の『家康、江戸を建てる』。
  それに合わせて
  出版されたのがこの新書。
  『徳川家康の江戸プロジェクト』。
  書いたのはもちろん
  門井慶喜さん。
  小説、ドラマ、新書。
  私は全部制覇しました。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  東京は住みやすいか、それをたどれば                   

 豪雪や台風のニュースを目にするたびに、東京というのは気候の負担をあまり受けない都市だと実感します。
 もちろん、かつて東京を襲った関東大震災のように地震による被害はありますが、これは二本全国どこにいっても変わりません。
 あとは火災。この季節のように乾燥期だと強風で一気に燃え広がるということはあります。1657年の明暦の大火は江戸城の天守閣も燃えてしまうほどの火災として有名です。
 それでも、他の都市の災害や季節負担と比べると、東京は住みやすい都市ではないでしょうか。

 その礎を作ってくれたのはやはり徳川家康ということになるのでしょう。
 『銀河鉄道の父』で直木賞を受賞した門井慶喜さんには『家康、江戸を建てる』という抜群に面白い小説があります。
 その縁でしょうが、その刊行以降、門井さんが江戸の町づくりについて講演する機会が何度かあって、この本はそれらの講演を元に構成されています。
 小説『家康、江戸を建てる』のサブテキストとして読むのもいいかもしれませn。

 家康が作った江戸と現在の東京がつながるのでしょうか。
 「幕末から終戦に至る時期は、復興の連続、建て直しの連続が江戸・東京の歴史だった」と門井さんはこの本の中に書いています。
 何より不思議なのは、維新の時東京に遷都したことです。
 あの時、大阪ではだめだったのでしょうか。名古屋は京にも近いに場所的にもよかったはず。それを東京に都を移した。
 その英断が現代の東京の繁栄につながっているような気がします。
  
(2019/02/01 投稿)

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