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 和田誠さんが亡くなった10月7日以降
 多くの関係者が哀悼のコメントを出していました。
 朝日新聞だけをみても
 私が気づいただけでも
 三谷幸喜さん、大竹しのぶさん、清水ミチコさんの名前が
 あがります。
 中でも胸を打ったのは
 11月10日の日曜日に「日曜に想う」というコラム欄に載った
 曽我豪という編集委員の記事でした。
 タイトルは「和田誠さんが教えてくれた」。
 その中の一文。

    とりあけ地方で70年代に青春を送った映画少年にとって、
    和田誠さんが「キネマ旬報」で連載していた
    「お楽しみはこれからだ」はまさに教科書だった。

 いつもなら政治コラムを書かれているようですが
 有名無名にかかわらず
 あの頃和田誠さんの「お楽しみはこれからだ」に教えてもらったという人は
 きっとこの世界には
 たくさんいるのだろうな。
 そして、和田誠さんにあれだけお世話になった「キネマ旬報」だから
 和田誠さんの追悼特集があってもいいのにと思っていたところ
 やっぱりありました。
 「キネマ旬報」12月上旬特別号(1100円)は
 「追悼特集 ありがとう、和田誠さん」でした。
 表紙はずばり
 和田誠さん。

  

 特集のリード文から抜粋します。

    映画ファン代表として、映画監督として、
    映画の極上の楽しみとはなにかを教えてくれた和田さん。
    博識で飾らない和田さんが紡ぎ出したそれの、
    なんと芳醇だったことか。

 和田誠さんが「キネマ旬報」の表紙絵を描いたのは
 1973年のこと。
 和田誠さん37歳。
 その頃の表紙がずらりと掲載されていて
 懐かしかった。
 あの「お楽しみはこれからだ」の連載も73年から始まります。
 「お楽しみはこれからだ」以外にも
 和田誠さんには映画関係の著作がたくさんあって
 この号にはそのリストも載っています。

 もちろん追悼特集ですから
 いろんな人が哀悼文を寄せています。
 吉永小百合さん、真田広之さん、大竹しのぶさん、小泉今日子さん
 三谷幸喜さん、宮崎祐治さん等々。
 そして、2011年9月上旬号に載った
 和田誠さんのロングインタビューも再録されています。

 先のリード文のおしまいはこう綴られている。

    和田誠さん、本当にありがとうございました。

 この号の「キネマ旬報」は私にとって永久保存だ。
 11月10日の朝日新聞の記事を
 そこに挿んでおこうと思います。

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  今日は紹介するのは
  和田誠さんの『ブラウン管の映画館』。
  「ブラウン管」というのが
  時代を感じさせます。
  1991年に出た本。
  さらに驚いたのは
  最後に載っている著者略歴の欄。
  「1936年生まれ。多摩美術大学卒業。」から始まり
  「中学の頃から映画ファンであった。
  1960年代から映画に関する絵入りエッセイを書き始める。」と
  至って丁寧。
  その最後に、
  なんと住所が載っている。
  1991年頃にはまだ住所なんか載せていたんだと
  ちょっと驚きました。
  それはともかく
  素敵な言葉をこの本で見つけたので
  書き留めておきます。

    人間、必ず齢をとるし、やがて死ぬと決まっている。
    しかし人は仕事を残す。

  まさに和田誠さんのよう。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  お楽しみはこの本もだ                   

 今年(2019年)10月に83歳で亡くなったイラストレーター和田誠さんが1991年にダイヤモンド社から刊行したのが、この本。
 あの名著『お楽しみはこれからだ』は1975年に出て、この時点では4冊揃っていたようだ。
 表紙や裏表紙の装幀はなんだか『お楽しみはこれからだ』に似ているが、あちらが一本の映画から名セリフを抜き出して紹介しているのに対して、こちらの方は当時のテレビで放映される予定の作品を和田さんが紹介していくというものになっている。

 もともとは1987年9月から1990年10月まで,当時出ていたテレビ番組紹介雑誌「テレビ・ステーション」に80回連載されていたものだ。
 今や「ブラウン管」のテレビなど見なくなったから、このタイトルだけでも理解できない人もいるだろうし、最近地上波テレビではあまり映画の放映をしなくなってもいる。
 もっぱらBSCSで映画が堪能できる。(私なんかはこれだけずっと映画を放映されていても絶対全部観られないなと思っているのだが)
 なので、「心配なのは、TVで放映される映画のカットの問題」なんて書かれても、今の人には理解できないだろうが、映画ファンには当時結構深刻な問題でもあった。
 それと吹き替え。今では字幕放送は当たり前、あるいは逆に吹き替えの方がちゃんと伝えているということもあったりする。
 そんなことを思うと、たくさんの水はやっぱり橋の下を流れていったのだ。

 80回分にはそれぞれ1枚、和田さんの素敵なイラストがついていて、それだけ見てても楽しい一冊だ。
  
(2019/11/29 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  ちょっと前紹介しました
  『町山智浩・春日太一の日本映画講義 戦争・パニック映画編』に続いて
  『町山智浩・春日太一の日本映画講義 時代劇編』を
  紹介します。
  実はこの本で紹介されている
  五社英雄監督の「人斬り」(1969年)を最近CS放送で
  観たばかりでしたので
  この本ではまずその章から読みました。
  この映画には
  あの三島由紀夫が結構重要な役どころで出ていて、
  切腹のシーンなんかもあったりします。
  動く、あるいは演じる三島由紀夫を見られる
  貴重な時代劇でもあります。
  主人公の岡田以蔵を勝新太郎が演じているのですが
  どうも岡田以蔵っぽくなかったな。

  じゃあ、読もう。



sai.wingpen  あなたは『七人の侍』を観たか                   

 最近本格的な時代劇映画を見かけなくなった。
 目につくのは「決算!忠臣蔵」(中村義洋監督)とか「超高速!参勤交代」(本木克英監督)といったような現代風の視点を取り入れた時代劇が多く、かつて黒澤明監督や内田吐夢監督が描いたような作品は少なくなった。
 その理由はいくつかあるだろうが、かつての三船敏郎や勝新太郎、萬屋錦之助といったちょんまげが似合う俳優が減ったこともあるだろうし、舞台設定などにお金がかかるせいもあるだろう。
 今やTVの世界ではNHKぐらいでしか時代劇を見ることはほとんどない。

 そんなことは十分承知しながら、やはり熱く時代劇を語る男たちがいる。
 映画評論家の町山智浩さんと時代劇研究家(!)の春日太一さん二人による、この本は丁々発止の時代劇映画賛歌なのだ。
 ここで取り上げられているのは、なんといってもまずは黒澤明の『七人の侍』。つづいて、内田吐夢監督の『宮本武蔵』五部作、三隅研次監督の『剣』三部作、映画版『子連れ狼』シリーズ(映画で主役を演じたのは若山富三郎)、原田芳雄が出演した異色の時代劇『竜馬暗殺』ほか。そして最後は五社英雄の『御用金』『人斬り』。

 お二人が語れば、単に作品論ではなく監督論でもあり俳優論でもあり、あるいは照明やカメラマンといったスタッフ論でもあり、裏話あり歴史の真実ありと、映画を二重三重にも面白くさせてくれること間違いない。
 きっと三船敏郎や勝新太郎を知らない世代の読者であっても、時代劇の面白さは伝わるにちがいない。
 まずはレンタルショップに走ろう。
  
(2019/11/28 投稿)

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  どうも気になる本というのがあって
  今日紹介する
  福田ますみさんの
  『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』も
  そんな一冊でした。
  何しろ
  この文庫本は2010年に出ていますから
  結構前に出たものです。
  それがある大型書店に行くと
  今でも平台に置かれていて
  いつもその書店に行くと
  目について仕方がありませんでした。
  そんな気になる本。
  こんな事件があったことは
  記憶にありませんが
  この事件が起こった時以上に
  学校関係ではいろんな事件が起こっているように
  思います。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  それはあなたの隣でも起こるかもしれない                   

 「でっちあげ」という言葉を辞書で調べると「事実でないことを本当らしく作りあげること。捏造(ねつぞう)すること」と出て来る。
 「捏造」がこの言葉の由来とも関係していて、「捏」という漢字が「でつ」と読むところからそれが動詞化されて「でっちあげる」となり、それが「でっちあげ」へと名詞化される。
 最近でもあおり運転に同乗していた女性だと「でっちあげ」られ、SNSで拡散され大きな問題になった事件もあったように、インターネットの普及で「でっちあげ」の被害は増加している。
 第6回新潮ドキュメント賞を受賞したこの作品は、2003年全国で初めて「教師によるいじめ」が認定された福岡での体罰事件を追ったものだ。
 単行本は2007年1月に出て、「平成19年1月、控訴審がスタートした。」で終わっているようだが、それから2年後の2009年に出た文庫本では「でっちあげ事件、その後」が収録されている。
 この事件は今でもインターネットで事件の概要を見ることができるが、読むのであれば「その後」を収めた文庫本がいいだろう。

 この事件では教師から「いじめ」を受けたという児童とその両親からの訴えにより、教師はマスコミから「殺人教師」とまで叩かれることになる。
 しかし、裁判の過程で訴えた児童側にさまざまな「でっちあげ」があることが判明していく。
 著者の福田ますみ氏は現地取材の中で「殺人教師」と呼ばれた教師がそんなひどい人物でないことを知り、事件を追っていく。

 一度拡散された「でっちあげ」をなかったことにすることがいかに難しいか、この作品が示している。
  
(2019/11/27 投稿)

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 さいたま市には4つの文化コンテンツがあります。
 鉄道、盆栽、人形(岩槻が有名)そして、もう一つ。
 それが、漫画
 さいたま市と漫画。どういう関係があるかというと
 日本で初めての「漫画家」北沢楽天が晩年住んだのが
 旧大宮市、現在のさいたま市だからです。
 日本で初めての「漫画家」というのは
 厳密には「漫画家」を職業とした初めての人ということらしい。

 その北沢楽天の生涯を振り返りつつ、
 表現について考えるという
 素敵な講演会が
 11月23日(土曜日)
 さいたま市立中央図書館で開催されました。
 講演者は漫画家のあらい太朗さん。
 あらい太朗さんは大宮で生まれて
 現在はさいたま観光大使もされています。
 それに「北沢楽天顕彰会理事」もされている。
 しかも、講演にも出てきましたが
 北沢楽天を描いた映画「漫画誕生」制作の
 仕掛け人でもあります。

 そんなあらい太朗さんですから、
 北沢楽天が漫画に出会ったものの
 なかなか自由に書かせてもらえなかった時代に
 あの福沢諭吉の知己を得て
 時事漫画に腕を奮って人気を博していくさまなど
 とてもわかりやすく解説をしてくれます。

 そもそも北沢楽天が書いた漫画は
 今でも新聞などで見かけることがありますが
 時事漫画です。
 風刺漫画ともいわれました。
 「漫画の神様」手塚治虫のストーリー漫画とは
 ちょっと違います。
 北沢楽天より少し遅れて
 岡本一平が登場します。
 あの「爆発だー!!」の岡本太郎さんのお父さん。
 奥さんは作家の岡本かの子
 岡本一平という名前は
 今でも耳にすることがありますが
 何故か北沢楽天の名前はあまり知られていない。
 映画「漫画誕生」の宣伝チラシにも

    時代に忘れられました。

 と、自虐コピーが書かれています。
 だいたい埼玉県民は自虐ネタが好きですが。

 そのあたりのことを
 あらい太朗さんは
 北沢楽天が漫画家としてとてもお金持ちになりすぎたためではないかと
 みているようです。
 庶民の眼で描いていながら
 庶民から見るといつしか雲の上の人になってしまった。

 映画「漫画誕生」のことも少し。

  20191124_095717_convert_20191124113925.jpg

 主役の北沢楽天役をあのイッセー尾形さんが演じているそうです。
 イッセー尾形さんといえば
 現在放映中のNHK朝ドラでも主人公を助ける絵師役で活躍。
 なんとも贅沢な配役です。
 11月30日から渋谷ユーロスペースでロードショーです。
 全国の映画館で配給されることもあるかも。

 約90分の講演でしたが
 とても中身の濃い話でした。
 今回の講演会は
 さいたま市図書館友の会が主催だったことも
 書き添えておきます。

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 冬の季語に
 「時雨(しぐれ) 」という美しい言葉がありますが
 これは冬の通り雨のことで
 この週末ずっと降り続いたような雨ではありません。

    人の世の窓打ちにけり冬の雨        西嶋 あさ子

 公園の木々も
 この雨でだいぶ葉を落しました。

  20191123_104559_convert_20191124113657.jpg

 さすがにこの雨続きでは
 畑にも遠ざかってしまいます。
 先週黄ニラに挑戦してダンボール箱を設置しましたが
 この雨で箱がぐしゃぐしゃになっていないか心配で
 様子伺いに行ってきました。

  20191124_103047_convert_20191124114150.jpg

 なんとか
 ダンボール箱はもってくれていました。

 雨が続いて
 ごらんのように畝と畝の間は
 すっかり水がたまってしまっていました。

  20191124_103030_convert_20191124114102.jpg

 野菜を育てるのに
 畝をつくるのは
 このように水はけをよくするためです。
 畝があるので
 水につかってしまうことは避けられます。

 ネット越しですが
 ホウレンソウも芽を出してくれました。

  20191124_102901_convert_20191124114011.jpg

 今日は畑の報告もあまりないので
 久しぶりに
 NHKEテレのテキスト「やさいの時間」12・1月号(NHK出版・913円)のことを。

  

 この号は出たばかりで
 特集は「野菜別 とことん Q&A」です。
 この特集では
 野菜作りのお悩みに
 藤田智さん、深町貴子さんなどテレビの講師陣が
 お答えするもの。
 トマトナスなどの春夏編と
 キャベツダイコンなどの秋冬編があります。
 例えば、キャベツでは「うまく結球しません」だとか
 ダイコンでは「土を耕したのに又根になりました」など
 栽培していると
 気になる疑問がいっぱい載っています。

 秋冬の栽培時期は
 畑を休めることも必要になってきます。
 そんな時
 こういう専門の雑誌や本で
 野菜の勉強をするのも必要です。

 そして、今週末はいよいよ
 畑で焼き芋大会
 晴れたらいいのですが。

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  野菜で一番好きなのは? と聞かれると
  少し困りますが
  まあ大根は上位に間違いなくはいります。
  大根料理で一番好きなのが
  素朴な大根おろし。
  醤油をかけただけのもの。
  これがあれば
  おかずがなくても
  御飯をお茶碗二杯いけるかな。
  初めて自分で大根を育てて
  手にもった時の感動は
  結構心に染みました。
  今日な一冊まるごと大根の絵本を
  紹介します。
  久住昌之さんの『大根はエライ』。
  大根好きには
  たまらない一冊です。

  じゃあ、読もう。  

  

sai.wingpen  わたし、大根の味方です                   

 大根は一年中店頭に並んでいますが、一番おいしいのは晩秋から初冬にかけての時期。
 なので、俳句の世界では大根は冬の季語。
 「歳時記」にも詳しく載っていて、「中央アジア原産とみられるアブラナ科の二年草」から始まり「主に地下の多汁・多肉質の長大な根を食べるが、葉も食べられる」とつづく。
 まだ解説文は続くから、「歳時記」の担当者は相当の大根好きをみた。
 そして、ここにもいた、大根好きが。
 作者は谷口ジローさんと『孤独のグルメ』を共著した漫画家久住昌之さん。
 その大根愛たるは相当なもので、この絵本一冊、まるまる大根づくしなのである。

 大根を人間にたとえると「まじめでおとなしい感じ」とあります。
 色白だし。まっすぐで姿勢もいいし。
 でも、大根の料理といえば、その数は数えきれないほど。
 まずは大根おろし。しかもこれは色んな料理と合います。
 サンマにも添い寝しますし、たまご焼きにも。
 うーん、節操がない。(なんだか東海林さだおさん風になってきた)
 生ではサラダ、煮てもいい。
 大根は相手の味を引き立てるだけで、自分はでしゃばらない。
 大根に見習わないといけないことばかり。

 料理の話ばかりではない。
 「大根役者」の語源とか主だった品種といったまじめな(料理もまじめでしたが)話もちゃんと描かれている。
 こんなおいしい大根の絵本を本屋さんだけで売るのはもったいない。
 ぜひ八百屋さんでも売って欲しいもの。
 そうしたら、今夜はおでんという家が増えそうだ。
  
(2019/11/24 投稿)

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  今日は勤労感謝の日

    旅に出て忘れ勤労感謝の日    鷹羽 狩行

  もうすぐこのブログも
  書き始めてから11年になります。
  これだけの期間を
  本を読んで
  その書評めいた文章を書いてきましたが
  時には
  本を読むのもしんどくなることだって
  やはりあります。
  本好きの皆さんは
  そんなことありませんか。
  今日はそんな人のために
  若松英輔さんの
  『本を読めなくなった人のための読書論』を
  紹介します。

    本は、作者に書かれただけではいのちを帯びることはありません。
    まだ、種子のような状態です。
    それは、読まれることによって育ち、
    開花していくのです。

  いい文章です。
  さあ、この本の花を咲かせましょう。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  本を読むのも勇気がいる                   

 最近たまに本が読めなくなっていることに気づくことがあります。
 あるいは、本を読んでも楽しくない、夢中になれない自分に気づくことがあったりして、そんな時に出会ったのが、この本。
 「本を読めなくなった人」って自分のことです。
 でも、そんな人に向けた「読書論」って、まるで逆説のような気もしますが。
 書いたのは気鋭の文芸評論家、若松英輔氏。
 あらかじめ書いておくと、この本を読んだからといって本が読めるようになるわけではない。
 ましてや読書嫌いの人が本好きになったりもしない。
 でも、少し勇気が出ます。

 本が読めなくなっているというのは「新しい読書の次元が開けるという人生の合図」と、若松氏はいいます。
 「新しい読書の次元」とは他人に左右されない、自分だけの読み方かもしれません。
 「人が何を、どう、どれくらい読んでいるか」は気になります。例えば書店によくあるベストセラーの順位なんかはその顕著なものです。
 それは気にしないでいい、とあります。
 「他者と比べる習慣から自由になることができれば」いいのだと、若松氏は書いています。

 そもそも読書そのものが自分だけの行為です。
 その行為が他人と交わることもありますが、この本にあるように「読書とは、自分以外の人の書いた言葉を扉にして、未知なる自分に出会う」行為です。
 本を読めなくなった人が果たしてわざわざ「読書論」を読むかどうかわかりませんが、きっとこの本を読めば、もう少し本とつきあってみるかと感じるのではないでしょうか。
  
(2019/11/23 投稿)

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  今日は
  二十四節気のひとつ、小雪

     小雪といふ野のかげり田のひかり    市村 究一郎

  この節気、
  「歳時記」にはほとんど内容が書かれていなくて
  ただ「二十四節気の一つで、11月22日ごろにあたる」とだけ。
  実にそっけない。
  まあ字を読めばわかるでしょ、ぐらいな。
  そう雪がちらつくそんな候。
  今日は「俳句絵本」を
  紹介します。
  俳句を詠んだのはねじめ正一さん。
  絵を描いたのは五味太郎さん。
  クレヨンハウスが出版しています。
  タイトルは『みどりとなずな』。
  これは俳句の気分で読むのが
  いいのかな。
  それとも絵本を開くようにかな。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  俳句だって絵本になる                   

 「俳句絵本」です。
 書かれているのは俳句ですが、句集ではなく「俳句絵本」です。
 俳句が絵本になることよりも、俳句さえ絵本にしてしまう絵本の懐の深さに驚いてしまいます。
 俳句を詠んだのは詩人で『高円寺純情商店街』で第101回直木賞を受賞した作家でもある、ねじめ正一さん。
 絵を描いたのは絵本作家の五味太郎さん。
 五味さんといえば独特のタッチで数多くの絵本を描いてきた有名な絵本作家ですが、この絵本はそんな五味さんのタッチではなく、ねじめさんの俳句をじゃますることなく、それでいて俳句と寄り添いながら、絵だけ見てても俳句の世界に入れる、そんな世界観になっています。

 この絵本で詠まれている俳句は全部で30句。
 ねじめさんのお母さんの看護のさまが詠まれています。
 例えば、こんな句。「病院の母と二人の雛祭り」。
 ベッドで酸素マスクをつけている母を見るのは息子として辛いでしょうが、こうして俳句になればどこか突き抜けた感じがします。
看護の甲斐空しくお母さんは2017年9月に亡くなります。
 その時詠んだ句。「九月の酸素マスクの母が逝く」。
 こんな句が続きます。「みどりの名酸素マスクの紐に書く」。
 タイトルの「みどり」はお母さんの名前だったのです。

 では、「なずな」。
 お母さんが逝ったあと、ねじめさんに孫娘が生まれます。
 その子の名前が「なずな」。
 詠んだ句が「母逝ってなずな生まれる宇宙あり」。
 そんないのちの句に五味さんは色と形だけで応えている、そんな「俳句絵本」です。
  
(2019/11/22 投稿)

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  私は今
  ひとつの「読書会」に参加しています。
  これは埼玉の本好きが集まってできた「読書会」で
  主要なメンバーは
  JPIC読書アドバイザーを受講した人たちですが
  それに関係のない本好きも
  参加しています。
  ここでは
  自分たちがそれぞれ本を持ち寄って
  それを紹介するという方法でやっています。
  毎月第一土曜日の午後2時から5時までの3時間
  参加者は10人前後ですから
  だいたい自分の持ち時間は
  30分弱でしょうか。
  一冊の本からさまざまな話題に広がっていくのが
  楽しいです。
  今日は
  山本多津也さんの『読書会入門』という本を
  紹介します。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  「読書会」は面白い                   

 本が読まれなくなったと言われて久しいですが、世の中には有名無名、多人数少数精鋭、さまざまな「読書会」があります。
 その中でも日本最大規模である読書会コミュニティ「猫町倶楽部」を主宰しているのが、この本の著者山本多津也さんです。
 その規模といえば、年200回ほど開催され、参加人数はのべ約9000人というのですからすごいもの。

 山本さんは現在もそうですが住宅リフォームの会社を経営されています。
 山本さんが「読書会」を立ち上げたのが2006年、ちょうどビジネス本が若い人たちに大いに読まれていた頃で、学びを実行しそれを継続する仕掛けとして「読書会」を始めたといいます。
 最初の課題本がカーネギーの『人を動かす』というのですから、ビジネススキルを高めるためというのがよくわかります。
 山本さんの「読書会」は課題本を参加者が必ず読んでいることが参加条件ですが、「読書会」のやり方として参加者がそれぞれの本を紹介する形式のものもあります。
 山本さんはこの本では自身の会のやり方を推奨していますが、これから「読書会」への参加を考えている人は自身に合った会を選ぶといいと思います。

 山本さんは「読書会」で私たちがまだ自身で見つけられない自分を見つけるきっかけを引き出してくれると書いていますが、確かにそれはあって、他者の意見を聞くことで自分が知らなかった自分の好みなどがわかったりすることもあるのも事実です。

 山本さんの「読書会」が人気なのは本から派生してさまざまなことを実行しているからだと思います。
 そういう行動力企画力が本の魅力を最大限にしているような気がします。
  
(2019/11/21 投稿)

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  昨日
  東京・上野にある東京都美術館で開催されている
  「コートールド美術館展 魅惑の印象派」展のことを
  書きましたが、
  その日今日紹介するこの本を
  予習のように読んでいました。
  それが原田マハさんの
  『原田マハの印象派物語』です。
  巻末にある対談に
  こんな言葉が出てきます。

    人生でただ一度しかない展覧会

  展覧会は一期一会だとありました。
  つまり
  展覧会というのは絵の配置にしろ
  会場の設営にしろ
  その展覧会でしかないものだというのです。
  そういわれれば
  確かにそう。
  そのたった一度の展覧会だからこそ
  名画たちもまたそれ以上に
  輝くのでしょう。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  いい展覧会を見終わったあとのような                   

 「とんぼの本」は、1983年に創刊された新潮社のビジュアルブックのシリーズの総称です。
 とんぼの特性のように、軽やかで幅広い視野をもった本でありたい、という思いから名づけられたといいます。
 ビジュアルブックですから写真図版が多用され、しかも写真集のように奇麗です。
 重厚感はありませんが、さまざまなジャンルの入門的な役割を果たしています。

 そんなシリーズの一冊として刊行されたこの本は、タイトルでもわかるように、今やアート小説の第一人者でしかも多くのファンをもつ原田マハさんが印象派絵画の魅力を美しい作品図版とともに綴ったものです。
 しかも単なる解説ではなく、原田マハさんによる印象派7人の画家たちのショートストーリーが添えられています。
 ビジュアルブックだけれど、短編集としても楽しめるようになっています。

 印象派7人の画家。
 モネ、マネ、ドガ、ルノワール、カイユボット、セザンヌ、そしてゴッホ。
 ある画家はまだ芽が出るまでの姿を、ある画家は死の直前に絵筆を持つ姿を、ある画家はその妻の視線から、ある画家は自分は正気であるという姿を。
 中でも、あまり知られていないカイユボットはその絵とともに魅力を感じました。
 現在では画家というよりも貧しかった印象派の画家たちを支援し続けたパトロン的な存在ながらも、その絵の構図は思わずハッとさせられる。

 巻末には原田マハさんと三菱一号館美術館館長である高橋明也氏との対談もおさめられています。
 いい展覧会を見終わったあとのような、極上の一冊です。
  
(2019/11/20 投稿)

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 印象派絵画が好きな人は多い。
 印象派といえばどうしてもフランスというイメージが強いですが
 海を渡ったイギリスで
 印象派絵画を熱心に蒐集した実業家がいました。
 それがサミュエルソン・コートールド(1876年~1947年)。
 彼が蒐集した作品でできたのが
 コートールド美術館
 その美術館からまさに印象派の傑作が
 今東京・上野の東京都美術館に集結しました。
 11月の小春日和の金曜日、
 「コートールド美術館展 魅惑の印象派」
 行ってきました。

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 今回の出品作の目玉は
 なんといってもマネ最晩年の傑作といわれる
 「フォリー=ベルジェールのバー」。
 マネは51歳で亡くなりますが、
 この作品は亡くなる1年前に描かれたもの。
 この絵のまわりにつめかけた人人人。
 鏡に映った世界を
 あれはこう、これはあれと
 皆さん楽しんでいました。

 ルノワールは第一回印象派展に出品した
 「桟敷席」、
 セザンヌのコレクションもたくさんあって
 あの名作「カード遊びをする人々」も。
 ゴッホドガモディリアーニゴーガン
 もちろんモネも。
 つまりはこの展覧会に行けば
 印象派絵画をおおつかみで
 鑑賞できるということです。
 その中から
 この画家の作品に魅かれた、次はその画家の展覧会に行こうと
 つなげていけば
 いいのかと思います。

 会場の壁の装飾に
 コートールド美術館の展示の様子が
 写真で描かれていて
 そのなんともいえない贅沢な空間に
 圧倒されました。
 そんな雰囲気が
 こんな形で再現されていました。

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 一般1600円の入場料に見合う
 いい展覧会でした。

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 この間まで
 暑さが残っていたと思っていたら
 さすがに11月も半ばを過ぎると
 秋から冬へと季節が進んでいくのを感じます。
 街の街路樹も
 葉を散らしています。

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 落ち葉は冬の季語。

    待人の足音遠き落葉かな      与謝 蕪村

 今日も収穫の話から。
 先週も紹介したカラフルニンジンですが
 今週は3つめの品種パープルスティックも収穫できて
 3品種揃いました。

  20191114_150214_convert_20191116165515.jpg

 真ん中がパープルスティック
 とっても甘くって
 蒸して食べましたが
 まるでさつまいもを食べているような
 甘さと食感でした。

 次は
 聖護院カブ

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 できるだけ大きくと収穫をあとにしていたのですが
 切ってみると
 中にスがはいっていました。
 もちろん、そこはのぞいて
 あとは頂きましたが。
 ダイコンにしろ
 カブにしろ
 大きくすればいいというわけではないので
 収穫の時期は
 難しいですね。

 11月16日(土曜日)
 この日黄ニラの栽培に挑戦しました。
 まずはたくさん茂ったニラを収穫します。

  20191116_104212_convert_20191116165645.jpg

  20191116_105244_convert_20191116170538.jpg

 そのあとに
 その株に写真のように
 箱をかぶせて遮光します。

  20191116_110133_convert_20191116170703.jpg

 光をさえぎることで
 黄色いニラができる? はず。
 この方法は
 NHKEテレの「やさいの時間」でやっていたのですが
 これから寒くなる
 この時期で大丈夫なのか
 それはちょっと心配です。

 こちらはソラマメ
 4つ種を蒔いたのですが
 3つしか芽がでなくて
 この日もうひとつ
 ポットで育てていた苗をもらって
 追加で植えました。

  20191116_111127_convert_20191116170846.jpg

 収穫までまだまだ時間もあるので
 追いつくことを期待しています。

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プレゼント 書評こぼれ話

  いろんな人の自伝とか評伝を読んでいると
  その人に影響を与えた先生が
  必ずいるものだ。
  私には残念ながらそんな先生がいない。
  きっといい先生がいたはずなのに
  それを見つけられなかったのだろう。
  絵本作家長谷川義史さんには
  そんな素晴らしい恩師がいた。
  小学校の五、六年生の担任だった先生。
  そんな先生を描いたのは
  今日紹介する『おおにしせんせい』。
  こんな先生を見つけるのも
  きっとその人の才能なんだと
  思います。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  心が動くとおなかが減るものだ                   

 最近先生の不祥事が多い。中でも先生の間での「いじめ」事件などただあ然とするばかりだ。
 もちろん、そんな先生ばかりではないことは承知している。仕事でみた場合先生という職業が大変だということもわかる。
 しかし、そういった大変さ以上に子どもたちの成長とともにある喜びは何事にも代えがたいのではないだろうか。

 絵本作家の長谷川義史さんは「子どもの頃から絵ばかり描いていた」という。
 そんな長谷川少年を勇気づけたのは「5、6年生のときの担任の先生との出会い」だと、あるインタビューで答えている。
 「図画工作を通して、「考えて物事に取り組む」ってことを教えてくれた方」で、「写実的にきれいに描きなさいっていうようなやり方じゃなくて、見て感じたものを紙に表現しなさい」と教えられたという。
 そんな先生を描いたのが、この絵本だ。

 長谷川少年の恩師がこの絵本の「おおにしせんせい」のようにいかつい顔だったのかわからないが、長谷川少年が小学生だった昭和40年代にはこんな村田英雄(て書いても知らない人が多いだろうが)風の男の先生がいたもんだ。
 ある時自由に絵を描けといわれて、さぼるつもりで学校の廊下を描いた長谷川少年。
 廊下の感触、廊下の音、廊下の匂い。
 長谷川少年は普段見ていた廊下とまるで違う世界を発見する。
 それは、自分が感じる学校の廊下。
 左右両面に描かれた廊下の絵のすごいこと。

 こんな先生に出会えて、長谷川少年はそれから何年かして長谷川義史になる。
  
(2019/11/17 投稿)

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  今日紹介するのは
  絵本と呼ぶべきなのか
  一般書と呼ぶべきなのか
  どちらがいいのかわかりませんが
  私の中では一般書かな。
  何しろ、ここに書かれているのは
  「うつ病」をテーマにしたものなのですから。
  デビ・グリオリさんの
  『よるなんて……』という作品。
  作品の中では
  「うつ病」という言葉は出てきませんが
  作者はそこから
  夜の現れるドラゴンを描き出しています。
 怖さを絵にするのって
  難しい。
  人それぞれ「うつ病」に対する捉え方が違うでしょうが、
  ドラゴンに匹敵すると
  作者は考えているのだと思います。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  わたしにもそんな<よる>があった                   

 絵本というのは「テキスト(ことば・文章)とイラストレーション(図像・絵)で、さまざまな「情報」を伝達する表現媒体」だという。(『ベーシック 絵本入門』から)
 つまり、受け手である読者を幼年期の子どもたちに特定しているわけではない。もちろん、実際はその多くの読者は子どもたちであるのは間違いないが。
 巻末にある作者略歴によれば、「動物を主人公にした温かい絵本」もたくさん描かれているから作者を絵本作家といっていいだろう。
 それに、この本の判型は絵本版といってもいい。
 ただ、この作品は「若い人に向けたうつ病」をテーマにした作品でアマゾンでもランキング上位だという。
 これこそ、「さまざまな「情報」を伝達する表現媒体」という絵本の定義に合致している「絵本」といっていい。

 描かれているのは、白と黒の世界。
 「きりみたい」などよんとしたよるの世界。
 主人公の女の子はそんな夜に襲われて、「むねがどきどきして、おなかもいたくて、」自分ではなくなっていく。
 絵本ではそんな夜がドラゴン<竜>として描かれている。
 女の子はそんなドラゴンから必死で逃げようと試みる。
 「よるなんてこわくない……」
 女の子はそんなよるが「いつかはおわるはず」だとどこかでわかっている。けれど、負けそうになる。
 けれど、彼女は負けない。

 巻末の「作者あとがき」にデビ・グリオリは「私の絵から5人にひとりはいるという、うつ病経験者がどのように苦しんでいるのか」を感じ取ってもらえたらと書いている。
 そんな苦しい夜は「いつかおわる」のだからというメッセージとともに。
  
(2019/11/16 投稿)

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  昨日
  西尾典祐さんの
  『城山三郎伝 昭和を生きた気骨の作家』という評伝を
  紹介しましたが
  同じように「城山三郎伝」とうたった本を
  以前、といってももう10年も前ですが
  紹介しています。
  今日はその本、
  加藤仁さんの『筆に限りなし 城山三郎伝』を
  再録書評で紹介します。
  城山三郎さんが亡くなったのが
  2007年.
  それから2年ほどして加藤仁さんの本が書かれて
  西尾典祐さんの本は2011年ですから
  もう少し新しいということになります。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  気骨のある人                   

 かつて城山三郎は自身の仕事について「歴史というより人間への興味」と語ったことがある。また、「その人の人生を旅する」という言い方もしている。
 城山が描いた多くの「伝記文学」の対象となった人物たちは、描くことで城山自身が追体験できた別の人生である。
 では、城山はどのような人生を自身のそれとは違うものと考えていたのであろうか。
 1996年の対談「人間の魅力とは何か」(「失われた志」所載)でこう語っている。「たくましさというものが、自分に欠けてるというか、ない。だから、たくましい人、強い人、反骨を貫ける人というような人に、一番魅力を感ずるんだろうねえ」

 実際に城山三郎は「たくましさ」を欠いた作家であったのだろうか。
 本書はノンフィクション作家加藤仁による、人間杉浦英一(城山の本名)、作家城山三郎の、伝記ノンフィクションである。著者は「あとがき」の中でこう記している。「生前に会う機会もなかった私のような第三者が、実在した人物の精神世界をノンフィクションという手法で描くのは、至難の業であった」と。
 しかし、幸いにも城山は実に膨大な「メモ」をその生涯において残していた。著者はその「城山メモ」を丹念に拾い集めることで、その骨格を得、それを関係者のインタビューで肉付けしていく。その結果として、「外面的に大胆な行動が見うけられなくとも、その精神世界の振幅ある動きをとらえられた」としている。

 そのようにして出来上がった「城山三郎伝」から浮かびあがってくる城山は、生涯戦時中に負った心の傷を払拭できなかったように思える。
 このことは本書の第二章「「商い」の父、「皇国」の息子」に詳しいが、海軍特別幹部練習生として入隊したものの城山にとっては「大義の集団であるはずの軍隊による「手ひどい裏切り」」(46頁)は、その後の人生観、人間観に大きく影響した。
 だからこそ、城山は「高潔」であることを自身の評価基準とし、自身もまたそのように生きようとしたようにみえる。
 著者はこう書いている。「城山には”気骨””志””高潔”といったイメージがつきまとうようになり、「城山三郎」そのものが作品として確立された感さえある」(243頁)

 作家城山三郎に「たくましさ」が欠けていたかどうかはわからない。
 しかし、少なくとも、城山は「たくましさ」を欠いた人間にはなるまいと、自身を作り上げていったように思う。
 そういう意味では、城山三郎は「気骨」のある作家だったといえるだろう。
  
(2009/04/30 投稿)

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  今日は
  西尾典祐さんの
  『城山三郎伝 昭和を生きた気骨の作家』を
  紹介します。
  この評伝の中に
  城山三郎が60歳の時に作った
  人生訓のようなものが載っている。

    ① 年齢に逆らわず、無理をしない。
    ② いやなことをせず、楽しいことをする。
    ③ 眠いときに寝、醒めたら起きる。好きな物だけ食べる。但し午後八時まで。
    ④ 義理、面子、思惑をすてる。つまり、省事で通す。
    ⑤ 友人をつくり、敵をふやさない。

  大作家の人生訓というより
  普通のサラリーマンの定年後の信条のようで
  このあたりが
  城山三郎の魅力のように
  思えてなりません。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  もっと城山三郎を                   

 作家の評伝を読みたいというのは、作品を描いた人物がどのような人生を生きたのかという興味からだといえる。
 ただあまりそれがかち過ぎると、太宰治がいい例かもしれないが、作家の人生と作品が重なり過ぎることもある。
 太宰の場合は極端すぎるかもしれないが、作品と同じくらいに太宰の人生もまた多くの人の知るところとなっている。
 その点、この本で描かれる経済小説の開拓者ともいえる城山三郎の場合、作品と彼の人生とは重なることは少ないが、軍国少年であった彼を失望させた軍隊という組織への抵抗は戦争が終わったあとも城山の中に残り続けた。
 城山の評伝を重厚なものに書き上げた西尾氏は作品の終りに城山の作品を「昭和に生きた人々を、一個人ではなく、なんらかの組織の関係者として描いた」とまとめている。

 城山三郎は昭和2年に名古屋に生まれた。亡くなったのは平成19年3月、享年79歳。
 本文だけで300ページを超える評伝で、城山が「輸出」という作品で文学界新人賞を受賞するまでの少年時代学生時代を描いているのが100ページ強で、残りの3分の2は作家としての城山の歩みといっていい。
 城山の人生を読むと、破天荒なところはほとんど見られない。どちらかといえば実に全うな社会人だったように思える。
 だからこそ、彼が描いた経済人や政治家は、城山の読者の視点に合っていたのかもしれない。何故なら、城山こそ、城山作品をもっとも愛した読者のような気がする。

 城山三郎はまだまだ読まれていい作家だと思う。
  
(2019/11/14 投稿)

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  NHKの朝ドラは半年間の連続ドラマで
  終わった次の週の月曜から
  たちまち新しいドラマが始まる。
  なので、
  当初はそれまで見てきたドラマロスになるのであるが
  一週間もすれば
  すっかり新しい朝ドラに夢中になっている。
  第101作目となる「スカーレット」もそうで
  最初は違和感があったが
  今では夢中になっている。
  主演の戸田恵梨香さんもいい。
  展開も早く
  あれよあれよという間に
  大阪編も終わってしまった。
  今日はその朝ドラの主人公の参考になっている
  陶芸家神山清子さんを描いた
  那須田淳さんの『緋色のマドンナ』を
  紹介します。
  これを読んで
  朝ドラを見たら
  ちょっと違和感ある…かも。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  朝ドラ「スカーレット」をより楽しむために                   

 現在放映されているNHK朝の連続テレビ小説「スカーレット」は信楽焼の女性陶芸家の草分けで実在の陶芸家である神山清子さんの半生を参考にしているそうだ。
 モデルというよりほとんど参考というようなことだろう。
 実在の神山清子さんは1936年長崎で生まれて、現在もご健在である。
 神山さんが作陶を始めた頃は女性の参加はなかなか認めてもらえなかったようで、その因習に立ち向かう姿が朝ドラを視聴している女性たちの共感を呼ぶことになるかもしれない。
 また、神山さんの長男が骨髄性白血病で倒れたことをきっかけに骨髄バンクの必要性を訴える活動を行うことになる。
 そのあたりがドラマに描かれるのかわからないが、そういう女性が主人公のドラマだと知っておいて悪くない。

 この作品は副題に「陶芸家・神山清子物語」とうたっているから、事実に近そうである。
 しかし、作者の「あとがき」によれば「神山さんの聞き書きをベースにしながらフィクションとして描き出した」とある。
 よって、神山清子さんと息子さんの賢一さん以外の登場人物は仮名になっていて、そのあたりがノンフィクションと異なるし、かなりの脚色が入っていると思った方がよさそうだ。
 ただ電気さえとめられ、蛍のひかりで部屋の照明にしたなど、おそらくそのあたりは実際に神山さんが体験したことかと思う。

 タイトルにある「緋色」であるが、「ひいろ」と読む。
 「やや黄色みのある鮮やかな赤」で、英語読みをすれば「スカーレット」となる。
 
(2019/11/13 投稿)

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  小さい頃に
  本を跨いではいけませんって
  叱られたことありません?
  ついでに書くと
  「跨ぐ」は「またぐ」です。
  それくらい、
  本は何だか高尚なものでした。
  そんな本を
  積み木遊びのようにしたら
  どれだけ叱られるか、
  それをやってみたのが
  今日紹介する
  堀井憲一郎さんの
  『文庫本は何冊積んだら倒れるか』です。
  長いタイトルなので
  短くしないと覚えられません。
  なんとしようか、
  ナンツン、なんてどうかな。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  文庫本で遊んじゃえ                   

 タイトルである「文庫本は何冊積んだら倒れるか」に何か意味があるかといえば、何にもありません。
 「ゆるーく調査」とありますが、文庫本を何冊積んで倒れるかが判明したからといって、何の「調査」なのかわかりません。
 でも、なんか楽しい。
 馬鹿なことをしているのを横から見てるのって、楽しくないですか。私は楽しい。
 こんなノリで書かれた、本(主に文庫本)の「調査本」です、これは。

 ちなみにどんな馬鹿な、ゆるーい調査をしているかというと、「いろんな文庫本をハダカにしてみた」「文庫カバーの長さは一尺三寸である」「文庫の解説はいつ読むのか」「文庫を左手だけで読んでみる」「名作の段落を数えてみる」「ドフトエフスキーの値段を調べてみる」といったように、一年で一冊も本を読まない人が半数近くいるこの現代の日本で、これだけ馬鹿馬鹿しい本の「調査」なんかしたら、もっと本を読まない人が増えるのではないかと、心配になってくる。
 だけど、これがまた楽しいんだな。
 「作家の名前はどの文字から始まるのが多いか」って、意味がない、けれどこうして書かれると、つい読みたくなる。
 「名作文庫の上下巻の部数を比べてみる」ことに、何の目的や意図があるのか、何にもないけど、咽喉に刺さった魚の小骨みたいに、ほら、あなただって気になってたでしょ。
 だから、つい、本当につい、読んでしまう。
 それで結局、本ってやっぱり面白いやと気づいてしまうことになるんだな、これが。
  
(2019/11/12 投稿)

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 昨日(11月10日)の東京は
 天皇陛下の即位に伴うパレード「祝賀御列の儀」が行われましたが
 これ以上ないという青空でした。

  20191110_131114_convert_20191110164857.jpg

 まさに日本晴れ。
 まさに令和晴れ。
 立冬を過ぎたので
 秋晴れとはいえないのですが
 まさに小春日和
 これは冬の季語。

     小春日や色鉛筆に金と銀      岩田 由美

 昨日の天皇皇后両陛下のような句です。

 そんなおめでたい日でしたから
 まずは収穫の話から。
 ニンジンを収穫しました。

  20191110_133534_convert_20191110165049.jpg

 昨日採ったのは
 黒田五寸と呼ばれるオレンジ色のものと
 金美EXといわれる黄色のニンジン
 右端のが黄色いニンジン
 左端のニンジン
 三又になってしまいました。
 恥ずかしい。
 でも、全体的にはよく育ちました。

 こちらはキャベツ。

  20191110_115119_convert_20191110163926.jpg

 今シーズン3個のキャベツを育てています。
 結球し始めましたが
 まだ時間がかかりそう。

 これは先週蒔いた
 ホウレンソウとカブ。

  20191110_121432_convert_20191110164155.jpg

 かわいい芽が出たばかりですから
 こちらもまだまだ。

 そして、ソラマメ

  20191110_123611_convert_20191110164544.jpg

 これはもっとまだまだで
 来春になるまで
 収穫できません。

 昨日はさらに
 スナップエンドウの種も
 播きました。

  20191110_114458_convert_20191110163709.jpg

 もちろん、こちらも
 収穫は来春。

 昨日は天気もよかったので
 まわりの畑では
 ダイコンを収穫している人が
 多かった。
 「大根引く」あるいは「大根抜く」、
 これ自体が冬の季語になっています。

    土が力ゆるめ大根抜けにけり     黛 執

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  菜園では
  じゃがいもは育てたことがありますが
  まださつまいもはありません。
  結構広がるから
  なかなか今の畝のサイズでは無理かな。
  ただイベント用に
  さつまいもを育てていて
  以前その収穫を手伝わせてもらいました。
  今年もさつまいものイベントが
  11月30日にあります。
  今日は
  さつまいもが主人公の絵本
  『さつまのおいも』を
  紹介します。
  文は中川ひろたかさん
  絵は村上康成さん。
  こういう絵本を読むと
  さつまいもが食べたくなります。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  さつまいもはおいしいです                   

 秋の味覚の代表格のひとつ、さつまいも。
 漢字で書くと「甘藷」。ヒルガオ科の多年草。
 「中南米原産で、日本には16世紀末に宮古島に入ったのが最初という」と書いているのは「歳時記」。俳句の季語を集めた「歳時記」だが、めっぽう詳しい。
 さらに。「琉球から薩摩へ伝わり、関東には享保年間に青木昆陽が普及させた」と続くから、ほぼこれでさつまいものことがわかる。
 せっかくなので俳句を紹介すると、「ほの赤く掘起しけり薩摩芋」。作者は村上鬼城。

 この「ほの赤く」にご注目。
 赤ではない、さつまいも色が「ほの赤く」。
 これを見事に絵にしているのが、村上康成さん。
 村上さんが描く絵本には土の匂いや風の香りや草花や鳥たちの命の温かさが感じられるが、さつまいもを描いたこの作品(文は中川ひろたかさん)でも村上さんの世界観をたっぷり味わえます。
 村上さんの描くさつまいもは「ほの赤く」て、形もそうそうこれが「さつまいも」というごつごつ感がある。

 さつまいもといえば「おなら」がつきものだが、村上さんはそんな「おなら」まで絵にしてしまう。
 ページいっぱい、しかも左右両面に描かれる「おなら」。ただ「くさーい」という字があるだけ。
 でも、見ているとそんなに臭さを感じない。
 さつまいまの「おなら」なら、こんな色でこんな形なのかと思えてくるから不思議。
 試しに、このページを開いてみて。
 ただし、くれぐれもこの絵本は「さつまのおなら」ではありませんので。
  
(2019/11/10 投稿)

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  今日は
  葉室麟さんの『いのちなりけり』を
  紹介します。
  2008年8月に単行本として刊行され
  2011年2月に文庫本になりました。

    ひとがこの世に生きた証として遺すものは、
    心しかないと思う

  これはこの作品の中で
  主人公がいうセリフですが
  葉室麟さんも確かにそう思われていたのだと
  思います。
  まだしばらく
  読むことができる
  葉室麟さんの未読の作品があります。
  ゆっくり楽しみたいと思います。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  第140回直木賞候補作ですが                   

 葉室麟さんが2008年に発表したこの作品は第140回直木賞の候補にあがった。
 しかし、選考委員の評価は厳しく、受賞には至らなかった。
 選考委員の選評を読むと、「読み進むうちに(中略)登場人物もむやみに増えて印象が散漫になってしまった」(阿刀田高)「中盤からいささか書き急ぎの感」(宮部みゆき)「少々小説が散漫過ぎた」(林真理子)と、これでは受賞は遠い。
 もっとも厳しいのが井上ひさし氏であろう、「主筋がたえず横滑りを起こし、時の前後さえ判別しがたくなる。とても読みにくい。」とある。
 これらの選評は決して外れている訳ではない。
 確かに登場人物が多いし、中盤以降の進行はむやみに早い。

 この作品の主人公雨宮蔵人とその妻咲弥の物語はこれだけでは終わらない。
 『花や散るらん』(2009年)『影ぞ恋しき』(2018年)の三部作で完結することになる。
 つまり、この作品は大長編の序章に過ぎないのだ。
 だから、登場人物が多いのも「主筋がたえず横滑り」をするのも、葉室さんの中では考えた上でのことかと思われる。
 ただこれが大長編の序章であったとしても、作品として完結させるのであれば、もっとじっくりと腰を据えるべきであったと思う。
 宮部氏がいうようにあまりに「書き急ぎ」を感じる作品になっている。

 葉室さんが『蜩ノ記』で直木賞を受賞するまで、まだ3年あまりある。
  
(2019/11/09 投稿)

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  今日は立冬
  北の方からは初雪の便りも
  届くようになりました。

     立冬や昨日につづく朝かな     稲畑 汀子

  今日はこの句の作者稲畑汀子さんの
  『俳句を愛するならば』を
  紹介します。
  書評に書いた「俳句の作り方 十のないないづくし」を
  せっかくなので書き留めておきます。

    ① 上手に作ろうとしない。
    ② 難しい表現をしない。
    ③ 言いたいことを全部言わない。
    ④ 季題を重ねない。
    ⑤ 言葉に酔わない。
    ⑥ 人真似をしない。
    ⑦ 切字を重ねない。
    ⑧ 作りっ放しはいけない。
    ⑨ 頭の中で作りあげない。
    ⑩ 一面からのみ物を見ない。

  なるほど。
  納得の十条でした。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  俳句は新しい発見                   

 雑誌「ホトトギス」といえば、今では俳誌として有名だが、明治の時代愛媛松山で創刊されたそれを東京で引き継ぎ、編集に携わったのが高浜虚子だ。
 夏目漱石の名を一躍有名にした『吾輩は猫である』が載ったのも「ホトトギス」であったように初期の頃は文芸誌のような構成であった。というのも、虚子が一旦俳句の世界から遠ざかったことが要因でもある。
 そんな虚子が俳壇に戻ったのが大正になってからで、以降「ホトトギス」は俳壇で大きな位置を占めることになる。

 稲畑汀子さんは高浜虚子の孫にあたる。
 父親が虚子の子年尾で、虚子のあとを継いで「ホトトギス」主宰となり、汀子さんはその父のあとを継いで主宰、そして現在は汀子さんの息子である稲畑廣太郎さんが次の主宰となっている。
 稲畑汀子さんは名誉主宰である。
 こうして名前だけを連ねても虚子の世界がいかに大きかったかわかるし、「ホトトギス」の影響の深さも想像できる。
 汀子さんはかつて「NHK俳壇」の選者でもあり、そのテキストにも連載記事を綴っていた。
 それがこの本の「選句という大事」と「句会の力」で、これに「ホトトギス」に綴った「俳句随想」が合わさって編まれている。
 そういうことでいえば、これこそ「ホトトギス」の本髄といえるかもしれない。

 汀子さんは「俳句は理屈ではない」という。
 「興味を持って物を見る心をいつも若々しくしていなければ俳句はできないだろう」と続ける。
 この本にはそんな汀子さんが作った「俳句の作り方 十のないないづくし」が載っている。
 きっと作句の参考になるに違いない。
  
(2019/11/08 投稿)

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 「ソトコト」っていう雑誌をご存じですか。
 表紙に「ソーシャル&エコマガジン」とあって、
 自然社会との関わりから生まれる豊かなライフスタイルを提案する雑誌です。
 1999年に創刊されていますから
 創刊20周年になります。
 その当時「ロハス」って言葉をよく耳にしました。
 「健康で持続可能な、またこれを重視する生活様式」ということで
 雑誌「ソトコト」もそういうコンセプトで
 始まったのではないかな。
 だから、そういう点では結構支持のある雑誌だと思います。
 ちなみに、
 雑誌名の「ソトコト」ですが
 アフリカのバントゥー系民族の言葉で、
 「木の下」「木陰」を意味するそうです。

 その「ソトコト」12月号(RR・1019円)は
 「楽しい農業、稼げる農業」の大特集で
 農業をもっと知りたい! という人には
 ぴったりの企画になっています。

  

 表紙に写っている若い人たちの集団は
 「食べチョク」という農家と消費者を直接つなぐサービスをしている
 「ビビッドガーデン」という会社の人たち。
 ここの社長さんはなんと2016年に25歳で創業した女性。
 彼女の実家が農家だったことから
 農業に興味を持ったのだとか。
 最近の農業ビジネスは
 彼女たちのような若い人たちがたくさん活躍しています。
 「ソトコト」12月号には
 農業に生きる若い人たちが
 たくさん登場します。

 そして、そんな中に
 「農業を楽しもう!」というページがあって
 私が利用している菜園も紹介されています。

    週末に手ぶらで通える貸し農園『シェア畑』。

 そして、なんとそこに元気なハクサイと一緒に私が出ています。
 たまたま菜園に行った際に
 「ソトコト」の取材があるのでどうですかと言われて
 ちょこっと若い女性記者さんと話をしました。
 写真に写っているハクサイは
 取材の時にはとっても元気だったのですが
 このあと害虫にやられて
 ボロボロになったなんて
 記者さんも知らないでしょうね。
 参考までに
 私が出てくるのは91ページです。

 農業を仕事にしなくても
 楽しめるということが
 わかってもらえたらいいのですが。

 普段なかなか読むことのない雑誌ですが
 なかなか中身の濃い一冊でした。

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日野村正昭さんの
  『デビュー作の風景』という本を
  紹介しましたが
  そこにも書きましたが
  その頃の「キネマ旬報」の
  「読者の映画評」で活躍していたのは
  野村正昭さんと
  寺脇研さん。
  そこで
  今日は
  寺脇研さんの『ロマンポルノの時代』を
  再録書評で紹介します。
  2012年の書評ですが
  思いっきり
  当時のことを書いていますね。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  青春時代のまん中は道に迷っているばかり                   

 私にとって、本書の著者寺脇研さんは思い入れのある映画評論家です。
 私が高校生の頃、かれこれ40年も前のことです、いっぱしの映画青年きどりで映画専門誌「キネマ旬報」を愛読し、その「読者の映画評」コーナーにせっせと投稿していた頃、そのコーナーの常連が寺脇研さんでした。
 当時寺脇さんもまだ高校生だったのではないかなぁ。しばしば掲載されていましたから、私のような投稿者とは随分質のしっかりした内容だったような気がします。(本書にはその当時の投稿記事も掲載されています)
 社会人になり私はあまり映画を観なくなって寺脇さんのことも忘れていたのですが、偶然にも文部省の役人になったあとの寺脇さんの講演を聴く機会がありました。
 小さな会でしたので、そのあと懇話みたいな会があって、寺脇さん本人と話す機会があって投稿時代の話をしましたが、もちろん寺脇さんは数回しか採用されなかった私のことなど知りませんでした。
 私にはあの頃のことがただただ懐かしく、あの頃はまさに「映画の時代」であり、「ロマンポルノの時代」だったのです。そう、1971年からの数年間は私にとって「青春時代」そのものでした。

 日活ロマンポルノがスタートしたのは、1971年11月。
 経営に行き詰った日活が苦肉の策としてはじめた企画でした。
 たくさんのスターを輩出し、数多くの名作を生み出した日活が低予算でしかもエロ映画まがいの作品をつくるということで、所属のスターだけでなく多くの人材が外部に流出してしまいます。皮肉にもそのことがロマンポルノに勢いをつけました。白川和子、片桐夕子、山科ゆり、宮下順子といった女優だけでなく、神代辰巳や田中登といった名監督が誕生しました。
 映画作りの若いエネルギーは映画にも力を与えましたし、若い映画ファンや映画評論家は喝采をもって迎えました。当時の「キネマ旬報」がそれに大いに貢献したことは、本書でつぶさに検証されています。

 また、この本では従来あまり評価されていないロマンポルノの後期の作品にも光をあてています。現在の日本映画を支える監督たちがロマンポルノを契機として誕生している事実は、日本映画史にとってロマンポルノは特筆すべき作品群であったことを証明しています。
 また寺脇さんはポルノ作品では裏方でもある男優や脚本家にも目をそそいでいます。
 「ロマンポルノの時代」を生きたものにとっては青春の思い出のような、一冊です。
  
(2012/08/30 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日の書評にも
  ちょこっと書きましたが、
  私も70年代前半の映画雑誌「キネマ旬報」の
  「読者の映画評」への投稿者でした。
  なので、
  今日紹介する『デビュー作の風景』の著者
  野村正昭さんの名前は
  とても印象に残っています。
  私にとって
  青春の一ページのような投稿記事ですが
  野村正昭さんは
  それを職業にしたのですから
  すごいことだと思います。
  この本の絵は
  やはり「キネマ旬報」の投稿者だった
  宮崎祐治さん。
  映画監督の素敵な似顔絵がいっぱい見られます。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  青春のしっぽをひきづって                   

 今年(2019年)創刊100周年を迎えた映画専門誌「キネマ旬報」は、映画監督大森一樹に言わせれば「あの頃のキネ旬は僕らの映画の学校だったなあ」ということになるらしい。
 1952年生まれの大森監督が言う「あの頃」とは1970年代の頃だろう。
 73年の「キネマ旬報」の「読者の映画評」に投稿していた大森青年は20歳、そしてこの本の執筆者である野村正昭氏は18歳。
 野村正昭氏は「あの頃」の「読者の映画評」の常連採用者の一人だった。当時「キネ旬」を愛読していた私にとって、野村正昭という名前は憧れで、もう一人の常連採用者が寺脇研氏で、お二人が今でも映画評論家として活躍されていることに羨望の思いがある。

 野村氏の紹介プロフィールに「年間鑑賞映画本数1000本を超え、日本で一番映画を観ている映画評論家」とある。
 映画は邦画洋画合わせて年間1200本近く封切られているそうだが、さすがの野村氏も完全制覇とまではいかないにしても、映画が好きで好きでたまらないのに違いない。
 そんな野村氏だからこそ描かれたといえる、「日本映画監督77人の青春」。
 そもそもが「キネマ旬報」での連載だったそうで、残念ながら100人には足りなかったが、この本では紹介されなかった監督も多いことだし、続編を期待したいところ。

 勝手をいえば、やはり今や日本映画を牽引しているともいえる是枝裕和監督が入っていないのはもったいない。
 さらに今人気絶頂の白石和彌監督も知りたい。
 もちろん、野村氏も書いているように藤田敏八監督や若松孝二監督にも登場願いたかった。

 「映画監督の青春」は映画に夢中になっていた私たちの青春につながっている。
  
(2019/11/05 投稿)

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 雨ばかり多かった印象のあった
 10月も終わり、
 さすがに11月ともなれば
 秋の深まりを感じない訳ではありません。
 挨拶にしても、つい
 「早いものですね」とか
 「今年もあと少しですね」と
 言ってしまっています。
 これは近くで見つけた芒(すすき)。

  20191101_092858_convert_20191101172727.jpg

   うつすらと月光を脱ぐ芒かな     鈴木 章和

 こういう風景に
 秋を感じます。

 その点、
 畑のニンジンの葉は
 ごらんの通りまだ青々としています。

  20191101_093713_convert_20191101173413.jpg

 それでも
 そろそろ収穫の時期ですから
 今度何本か抜いてみようと思います。

 イチゴの苗の間から
 かわいい角のように芽を出しているのは
 ニンニクです。

  20191101_093410_convert_20191101172905.jpg

 今年は4つ植えています。

 芽を出したというと
 ソラマメもごらんのように
 芽を出しました。

  20191101_093512_convert_20191101173155.jpg
  
 ただ4つ植えて
 3つは出ましたが
 1つは出てきません。
 もう少し様子見かな。

 今週は収穫はありませんでした。
 秋野菜は
 夏野菜のようにぼんぼん
 採れるものではないので
 仕方がありません。

 畑で見つけた白菊です。

  20191101_094503_convert_20191101173522.jpg

    白菊の目に立てて見る塵もなし     松尾 芭蕉

 11月こそ
 穏やかな月であってもらいたいものです。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は文化の日

    叙勲の名一眺めして文化の日      深見 けん二

  この日は「自由と平和を愛し、文化をすすめる」という趣旨で
  定められたそうです。
  それしても
  先日の沖縄首里城の火災は痛ましかった。
  沖縄の人にとっては
  首里城こそ「自由と平和を愛する」シンボルだったと
  思います。
  一刻も早く
  再建されることをお祈りします。
  今日は
  今話題の「1人称童話」シリーズから
  『シンデレラが語るシンデレラ』を
  紹介します。
  企画の勝利といえる一冊です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  これで私も「シンデレラ」?                   

 「シンデレラ」といえば誰でも知っている童話で、世界各地でさまざまなバージョンがあるようです。
 現代ではディズニーのアニメや実写版での作品の方が有名かもしれませn。
 昔の日本では「灰かぶり姫」なんて呼ばれたそうですが、深夜12時に魔法がとけてお城にガラスの靴の残して去っていった美貌の姫。
 そう「シンデレラ」といえば、やっぱり美しい女性というイメージがあります。
 でも、もし「シンデレラ」の目から見たお話だとどうなるか、それがこの絵本。
 なので、この絵本には美しい「シンデレラ」を見ることはできません。
 せいぜい手とかスカートのすそばかり。
 ちょうど彼女の額にカメラがついていて、そこから世界を視ている、そんな感じ。
 鏡に映ったところとかあってもいいのに、と思わないでもありませんが。

 この絵本は「1人称童話シリーズ」の一冊で、「もしあの童話の主人公が自らの口で語ったら」というコンセプトで制作されています。
 制作スタッフのコメントが絵本の最後に載っています。
 そこには、主人公の感情は読み手である読者の数だけイマジネーションが存在するはずだから、「子どもたちなりのオリジナルの「心」を想像してもらう」、そしてその「心」から自由に物語を創ってもらいたいという意図があるようです。

 もし、あなたが「シンデレラ」だったら。
 もちろん、継母のいじわるなお母さんになっても、イケメン王子になっても構いません。
 あなたなら何になりますか。
  
(2019/11/03 投稿)

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 先日今年の文化勲章受章者と
 文化功労者が発表されました。
 文化功労者の中には
 漫画家の萩尾望都さんも選ばれていました。
 「ポーの一族」は若い時に読みました。
 今日は漫画の話ではなく
 俳句の話。
 今回選ばれた文化功労者の中に
 「NHK俳句」の選者の一人である
 宇多喜代子さんの名前がありました。
 一視聴者ですが
 やっぱりうれしいですね。

 宇多喜代子さんの業績として
 「精神性も社会性も悲喜も織り込む独自の俳句の方法を見いだし、
 著作では歴史の隙間に埋もれた無名の俳人も取り上げた。」
 と、あります。
 「NHK俳句」では
 宇多喜代子さんは毎月最初の週を担当されています。
 テーマは「昭和のくらしと俳句」で
 司会の小林聡美さんとの軽妙な話が楽しい放送です。

 宇多喜代子さんは昭和10年、山口県生まれ。
 84歳という年齢を感じさせません。
 明日の放送での兼題は「大根」。
 大根は沢山の俳句に詠まれる
 愛すべき季語です。

  

 明日の放送より一足早く
 「NHK俳句」11月号(NHK出版・660円)から
 宇多喜代子さんの一句を
 紹介します。

    大根を断つ一閃に始まる日    宇多 喜代子

 朝食の支度でしょうか、
 お味噌汁に入れる大根を切っている様を
 「一閃」と詠んだところが
 さすが。
 その前の「断つ」も印象に残る言葉です。

 今月の
 片山由美子さん選の「巻頭名句」から。

   図書館に知恵の静けさ冬灯     秋尾 敏

 立冬を過ぎれば
 季節は冬。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日から11月
  来週には立冬ですから
  まさに晩秋。

    帰るのはそこ晩秋の大きな木     坪内 稔典

  和田誠さんの訃報から
  まもなく一ヶ月ですが
  幸いなことに
  和田誠さんにはたくさんの著作があるので
  会いたくなれば
  いつでも会える。
  そのことで悲しみが少しは癒えます。
  今日は
  和田誠さんの青春期ともいえるエッセイ
  『銀座界隈ドキドキの日々』を
  紹介します。
  こんなに面白い本を
  読んでこなかったなんて。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  友だち100人できるかな                   

 10月7日に83歳で亡くなった和田誠さんはイラストレーターという職業を持っているが、その活動はそれだけでなく、映画監督、翻訳、絵本作家、そしてこの作品のようなエッセイストと多岐にわたる。
しかもその分野において評価が高いのだから、すごいというしかない。
例えば、この作品で第9回講談社エッセイ賞を受賞しているように。
そんな和田さんだが、生まれてすぐに才能が開花したわけではない。
このエッセイは和田さんがどんなふうにたくさんの才能を持った和田誠になっていったかを描いた(と自身は思っていないだろうが)作品になっている。

和田さんは1936年生まれ。1959年に多摩美術大学を卒業して、西銀座にあったデザイン会社ライト・パブリシティに就職をする。
タイトルに「銀座界隈」とあるのは、この会社で働いていた9年間を描いたものだからだ。
ここで働きながら、和田さんの名前を一躍有名にする「ハイライト」という煙草のパッケージを生み出すことになったりする。

そして、そんな業績以上に和田さんを和田誠に成長させたのは交友関係の広さだろう。
このエッセイにどれだけの有名無名に関わらず人の名前が登場するかわからないが、例えば寺山修司であったり横尾忠則であったり谷川俊太郎であったり篠山紀信であったり田島征三であったり、枚挙にいとまがない。
ただ残念なのは、まだここには妻となる平野レミさんは登場しない。

交友関係だけでなく、NHK「みんなのうた」の第1回めの歌のアニメーションを担当したり、森山良子さんの名曲「この広い野原いっぱい」の作詞にまつわるエピソードなど、昭和30年代から40年代にかけての歴史の証言としても、この本は面白い。
  
(2019/11/01 投稿)

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