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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介するのは
  松本清張の短編集『黒い画集』から
  「坂道の家」。
  この短編はこれまでにも
  たびたびドラマ化されていて
  私も子供の頃に見たのを
  何故か鮮明に覚えている。
  ネットで調べると
  どうやら1965年制作されたドラマのようだ。
  私が10歳である。
  主演を三國連太郎が演じている。
  きっと子供ごころに
  どきどきするような
  大人の世界が映像化されていたのだろう。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  くわばら、くわばら                   

 文庫本にしてほとんど200ページ近くあるから、短編というより中編小説という方があっている。
 「黒い画集」シリーズの一作として、昭和34年(1959年)1月から4月にかけて「週刊朝日」に連載されたものである。
 真面目で吝嗇さえあった中年の小間物屋の経営者寺島吉太郎がたまたま店を訪れた若い女杉田りえ子に夢中になって身を滅ぼしていく姿が描かれる。
 ミステリー小説であるから、犯罪の場面も描かれているが、それは作品の最後の数十ページでしかない。
 つまり、その犯罪に至るまでの男の堕落を、松本清張はこれでもかと書き連ねる。

 キャバレーのホステスをしていたりえ子に夢中になり、店通いだけでなく、彼女にいわれるままに弟だという男の支援まですることになる。
 やがて、りえ子の話のほとんどが嘘であり、弟というのも実はりえ子の男だということも、吉太郎は知ってしまう。
 普通なら、これで男女の仲も終わりだろうが、吉太郎はりえ子と別れることができない。
 どころか、さらに彼女のために坂の上の新しい家まで用意してしまう。
 そんな生活が続くわけはない。吉太郎の生活は逼迫して、貯金も底をつく。
 さらには、りえ子の嘘もエスカレートしていく。
 ついには彼女を殺そうかとまで考えるようになるだが、死んでしまうのは吉太郎の方だった。

 まさにここからが清張ミステリの読みどころ。
 随所に実は伏線も張られていて、面白い。
 それにしても、男ってかわいそうなものだ。
 きっと当時の読者は「くわばら、くわばら」なんていいつつ、読んでいたのだろう。
  
(2020/05/08 投稿)

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