06/02/2020 <あの絵>のまえで(原田 マハ):書評「ジンとくるアートと小説」

新型コロナウイルス感染が広がった時
「不要不急」という言葉が
しきりにいわれました。
意味は
「重要ではなく、急ぎでもないこと」ということで
博物館、美術館の休館が
早い段階で実施されました。
緊急事態宣言が解除されて
ようやく再開されたようですが
休館のために
見られなかった企画展なんかも
多かったと思います。
でも、本当にこれらの施設は
「不要」でしょうか。
人が人として心の豊かさを求める時
これらの施設はとても大切な場所だと
思います。
そのことは
今日紹介する
原田マハさんの短編集
『<あの絵>のまえで』を読めばよくわかると思います。
じゃあ、読もう。

日本は47都道府県に必ず美術館がある美術館大国だそうだ。
だから、ごく普通の生活の中で美術品に触れあう機会は多い。
原田マハさんのこの短編集は「アート小説」というよりは、そのアートと出会うごく普通の人々の物語が編まれている。
6つの短編にそれぞれアートが登場する。
しかも、それらのアートが登場人物たちに寄り添い、時に励まし、時に慰める。
それはこれらの登場人物だけでなく、私たちもまたそういうアートを持っているかもしれないと思わせられる。
6つの短編に描かれるアートの画家たちの名前をあげておこう。(かっこ内は短編のタイトル)
ゴッホ(「ハッピー・バースデー」)、ピエソ(「窓辺の小鳥たち」)、セザンヌ(「檸檬」)、クリムト(「豊饒」)、東山魁夷(「聖夜」)、モネ(「さざなみ」)。
そして、どの作品にもそれらアートが収められている美術館が重要な舞台となっている。
例えば、「ハッピー・バースデー」の場合はひろしま美術館だし、「窓辺の小鳥たち」の場合は大原美術館といったように。
6つの作品はどれを読んでも感動するが、中でも心に深く迫ってきたのが、「聖夜」だ。
この作品は、息子を亡くした夫婦の物語だ。
心臓に疾患を持って生まれた息子誠也。誕生日がクリスマスイブだったので、「聖夜」からその名前をつけた夫婦。
息子はすくすくと育ち、登山に夢中になる大学生になる。そして、初めての冬山登山に挑戦し、命をなくしてしまう。山から戻ったら、彼女を紹介するという約束を残して。
その息子が好きだったのが東山魁夷の「白馬の森」という絵画。
ラスト、夫婦が訪れたのはその絵が収められている長野県信濃美術館・東山魁夷館。
そこで、夫婦が出会うのは…。
ジンとくる作品です。
(2020/06/02 投稿)

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