06/09/2020 赤西蠣太(志賀 直哉):書評「『サザエさん』誕生はここから!?」

先日
工藤美代子さんの『サザエさんと長谷川町子』という本を
紹介しましたが
その中で『サザエさん』誕生のヒントになったのではと
書かれていたのが
志賀直哉の短編『赤西蠣太』。
ちょっと気になったので
図書館で志賀直哉の短編集を借りました。
さいたま市の図書館は
6月1日から書架から本を借り出すことも
できるようになりました。
閲覧席はまだ利用ができませんが
少しずつ以前の状態に戻していけばいいかと
思います。
閲覧席の利用は来週15日からです。
ちなみに今日紹介した
『赤西蠣太』は、
岩波文庫の『小僧の神様 他十篇』に
はいっています。
じゃあ、読もう。

文庫本にしてわずか30ページ足らずのこの短編は、志賀直哉が大正6年(1917年)に発表したもの。
志賀直哉といえば教科書に必ず出て来る作家というイメージが強く、実際半世紀以上も前に習った時にも確か志賀の作品、同じ短編集に掲載されている『清兵衛と瓢箪』であったと思うが、が載っていた。
つまり、志賀直哉という作家は教育向きのきちんとした文章を書く、お行儀のいい作家という印象がずっとあって、それが「伊達騒動の講談を読んでゐて想ひついた」というぐらいだから、エンターテイメントに満ちた、こんな作品もあることに驚いた。
この短編は長谷川町子さんの『サザエさん』誕生のヒントになったという説もある。
というのも、ここに登場する人物の名前が魚の名前だからだ。
主人公が蠣(かき)太、その友人が銀鮫鱒次郎、按摩が安甲(あんこう)で、中でも主人公がほのかに心を寄せる美しい腰元の名が「小江(さざえ)」。
こう魚の名前が続くと、やはりこの短編が、と思いたくなるのも仕方がない。
それよりもこの作品は物語として、とても面白い。
有名な「伊達騒動」の一挿話として読めるし、ちらりと出て来る原田甲斐が不気味であったりする。
主人公の蠣太は藩の間者で、屋敷を抜け出す手段としてあたかも美しい腰元に懸想して振られて逃げ出すという方法を実行するが、案に相違して、腰元の小江がほのかに蠣太に心を寄せていたから、切ない話となっていく。
志賀直哉、なかなかいいぞ。
(2020/06/09 投稿)

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