06/16/2020 陶酔と覚醒(沢木耕太郎セッションズ〈訊いて、聴く〉):書評「「みる」ということ」

今日は
沢木耕太郎さんの対談集
「セッションズ〈訊いて、聴く〉」の3巻め
『陶酔と覚醒』を
紹介します。
この巻に収められている
登山家山野井泰史・妙子さんのことは
この対談のあと
沢木耕太郎さんは『凍』という作品を
書くことになります。
実はこの『凍』を読了できませんでした。
それまで
沢木耕太郎さんの本が書店に並ぶたびに
購入していたのですが
この『凍』のあと
私は沢木耕太郎さんから
少し距離をとることになりました。
今でも
読まれなかった『凍』は
私の本棚に並んでいますが。
じゃあ、読もう。

沢木耕太郎がデビューしてから50年になる。
その間ノンフィクション作家として有名無名多くの人と会い、インタビューをしてきた。また、「対談」と銘打ったものも多くこなしてきた。
全四冊となるこのシリーズは、沢木がかつて「対談」を行ったものを集めて編纂されている。
「センションズ3」は、「陶酔と覚醒」というタイトルで、これは先の2つとかなり印象が異なる。
ここでは行為をする「する者」の「陶酔」とそれを「みる者」の「覚醒」ということで、それは巻末の沢木による書き下ろしエッセイでも、2つの行為のことが語られている。
ノンフィクションを描くということは「みる者」であるということだが、沢木の作品には自ら「する者」として参加し、それをさらに自身が見ているという構造になっていることがある。
一人称で書かれたノンフィクションというのはそういうことだろう。
この巻に収録されている対談相手は、山口瞳、市川崑、同業作家の後藤正治、海洋冒険家の白石康次郎、建築家安藤忠雄、森本哲郎、岡田武史、登山家山野井泰史、その妻妙子、そして角田光代である。
対談ということでは後藤正治とのものや安藤忠雄のそれが面白かった。
山口瞳との対談でもそうだが、沢木は教えられる側に立った時、対談が生き生きとしてくるのは、沢木の人としての魅力が醸し出すからだろう。
そのあたりが、70歳を過ぎてもなお、いつまでも青年のイメージを損なわない理由ともいえる。
(2020/06/16 投稿)

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