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プレゼント 書評こぼれ話

  7月も今日でおしまい。
  関東は結局長い梅雨が明けないまま
  7月もおわることになりました。
  明日から夏休みという子供たちも多いでしょうが
  今年の夏休みは
  コロナ禍で随分様変わりしているのではないかしら。
  夏休み恒例の
  読書感想文なんかあるのだろうか。
  今日は
  出口治明さんの
  『教養は児童書で学べ』という本を
  紹介します。
  大人の皆さんも
  今年の夏休みはじっくり家で読書なんかも
  いいのでは。
  この本からこんな言葉を
  書き留めておきます。

    不出来な現代小説を読むより、
    すぐれた児童書のほうがはるかにおもしろい。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  夏休みには何を読もうか                   

 いい経営者で読書家の人は、例えば資生堂の福原義春氏のように、多い。
 この本の著者出口治明氏もそんな一人だろう。
 ライフネット生命の創業者で、2017年には同社の役員を退任し、2018年には立命館アジア太平洋大学の学長に就任している。
 会社には多くの業種があるし、大学という組織まで広げると、そのトップと呼ばれる人もさまざまだろうが、出口氏の「本にはいい本とそうでない本しかない」という言葉を借りれば、経営者にもいい経営者とそうでない経営者しかなく、読書家であることがもちろん絶対条件ではない。
 ただ出口氏がいうように「本をつうじて何かを知ることは、無条件に楽しい」と思える経営者に魅力を感じるのは間違いない。

 読書家である出口氏はいい児童書は「無駄をすべて削ぎ落したうえで、ていねいにつくってある」からという。
 そのうえで、優れた児童書は「子どもが子どもとして楽しめると同様に大人も大人として楽しめ」ると書いていて、この本ではそんな十冊の児童書が紹介されている。
 十冊なのですべてあげておくと、『はらぺこあおむし』『西遊記』『アラビアン・ナイト』『アンデルセン童話』『さかさ町』『エルマーのぼうけん』『せいめいのれきし』『ギルガメシュ王ものがたり』『モモ』『ナルニア国物語』となる。
 たった十冊が紹介されているわけではない。
 一冊の児童書から関連した本、この中には児童書だけでなく学術書もあったりする、が六冊ばかり紹介されているから、この新書一冊でたっぷり読書が楽しめるようになっている。
  
(2020/07/31 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  もう40年以上も前になりますが
  大学進学とともに
  東京に出てきました。
  大学までの道筋にたくさんの古書店が並んでいて
  そんな店の薄暗い片隅に
  禍々しい感じの表紙をした雑誌が
  たくさん積まれていたと
  遠い記憶の中にあります。
  あれはもしかしたら
  「カストリ雑誌」だったかも。
  その当時でさえ、
  戦後20年以上経っていましたから
  違うかもしれません。
  でも、たった20年だったともいえます。
  今日は
  渡辺豪さんの
  『戦後のあだ花 カストリ雑誌』を
  紹介します。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  あだ花にも希望があったかも                   

 この本のタイトルにある「あだ花」、漢字で書くと「徒花」。
 その意味を「広辞苑」で調べると、いくつか出てくる。その中でこの場合は「はかなく散りゆく花」ということになるだろうか。
 この本で紹介されている「カストリ雑誌」の数は117冊。
 いずれも戦後間もなく発売され、数年後にはその姿を消すことになった雑誌たちである。
 国会図書館にもあまり所蔵されていないというそんな雑誌たちが、表紙図版が主だとはいえ、これだけの雑誌が揃えられると圧巻である。
 欲情をそそるようなイラストや、色使いでできた表紙の数々を見ているだけで、戦争が終わったあとの高揚して行き場のない男たちの心情がうかがえる。

 この本には「カストリ雑誌」の定義なりが詳しく書かれているが、長くなるのでこれも「広辞苑」から引用しておく。
 「終戦直後の三、四年の間、数多く出版された主として性を扱った粗悪な体裁の大衆雑誌の総称。「カストリ」は三合(号)で(酔い)つぶれるの意からの名」と、結構詳しく書かれている。
 ただ、「三号でつぶれる」というのは、おかしいと、この本にはある。
 とにかく爆発的に売れたので経済的な理由ではなく、警察の目をくらますために出版社があえて廃刊にしたのだろうと、している。

 著者は最後に「カストリ雑誌」が短命に終わった理由を、「日本人が短い時間で戦争体験から立ち直ろうとする心を持てた、という顕れではないか」と書いている。
 その意味では「あだ花」は、希望へとつながる花であったといえる。
  
(2020/07/30 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  新聞の読書欄には
  新刊の書評だけでなく
  文庫本の案内も載ることがあって
  先日そんな欄で
  窪美澄さんの『すみなれたからだで』が
  河出文庫から出たのを知りました。
  この本が出たのが
  2016年10月ですから
  文庫化されるまで割と時間が経っています。
  その当時のブログを見ると
  「現代の名短篇です、これは」と
  大絶賛しています。
  ところが、すっかり忘れていたこともあって
  今回読み返してみました。
  うん、やっぱりこれは「名短篇」です。
  しかも、
  今回も表題作の「すみなれたからだで」がいい。
  新しい書評を書こうかと思ったのですが
  2016年のままでいいかもと感じて
  今日は再録書評にしました。

  じゃあ、読もう。      

  

sai.wingpen  現代の名短篇です、これは                   

 窪美澄が『ミクマリ』で第8回女による女のためのR-18文学大賞を受賞したのは2009年。
 今(2016年)からわずか7年前のことだ。
 そのあと、窪は女性官能小説家に特化することはなく、官能小説も書ける女性作家となって話題作を次々と発表し、実力ある中堅作家になりつつある。
 この短編集には2011年から最近までの8つの作品が収められているが。その透明感は彼女の名前を読者に植え付けた『ふがいない僕は空を見た』から変わっていない。
 いつまでも新鮮だ。

 2015年に発表された「銀紙色のアンタレス」はまるで新人作家が書いたように初々しく出来上がっている。
 初々しさゆえのぎこちなささえ、この作家は消せずにいるが、こういう生の青春小説はまるで新海誠監督のアニメの世界のようでもある。
 こういう才能は稀有といっていい。

 そして、なんといっても表題作でもある「すみなれたからだで」だ。
 40歳をいくつか越えて、中学2年の一人娘の瑞々しい肉体に嫉妬すら覚えるようになった主人公の主婦。
 夫と出会って17年、結婚して15年、何不自由ない生活ながら「けれど、満たされていない」と感じている。
 その理由はセックスの回数が減ったこと。
 娘はボーイフレンドとのデートにウキウキしているのに、自分はどうだと落ち込む彼女。
 そんな彼女に浮気でもなく、夫とのささやかなセックスの機会が訪れる。
 どこにでもある心の浮き沈み。
 幸せとは何かを肩肘張って描くのではなく、そこにあるがまま表現した技に感心する。
 現代の名短篇に数えていいのではないかしら。
  
(2016/11/24 投稿)

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  私が住んでいるあたりの
  小中学校は
  今月末が一学期の終業式で
  来月から夏休みに入るようです。
  ただ夏休みも短くで
  来月中旬には
  新学期になるとか。
  夏休みを利用して
  海外文学の大作に挑戦してみようと
  思っていた子供たちには
  とっても残念。
  せめて
  今日紹介する
  久世番子さんの
  『よちよち文藝部 海外文学篇』を読んで
  気分だけでも味わったらいかがでしょう。
  でも、
  くれぐれも
  これで感想文なんか書いたらダメですよ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  海外文学が苦手なあなたに                   

 雑誌「別冊文藝春秋」に掲載された、大人向けの漫画エッセイで綴る、読書ガイド本で、2012年10月に出た「日本文学篇」の続編になる。
 今回は「世界文学篇」で、誰もが知っている名作がずらり14篇。
 但し、書名は知っていても読んだことがない、あるいは途中で挫折したという読者も多いと思う。なので、この本を読んで、再挑戦したくなるかもしれない。

 この漫画エッセイで取り上げられている作品を一部紹介すれば、『モンテ・クリスト伯』『変身』『ハムレット』『罪と罰』『ドン・キホーテ』『神曲』『怒りの葡萄』『風と共に去りぬ』『百年の孤独』など。
 こうして並べるだけで、挫折の日々が思い出される。
 しかし、このエッセイの案内人である「よちよち文藝部」の部長である番子さんにしても、海外文学は「小説の中の外国人(カタカナ)名前が覚えられない」という苦手意識があるお方なので、全く同じ理由で海外文学に馴染んでこなかった読者でも、そろりそろりと読み進んでいくうちに、きっとこれはという作品に出会えるような気がする。

 しかも、番外編でドストエフスキーの翻訳で有名な亀山郁夫先生の「特別講座」がついている。
 その中で亀山先生は「海外文学弱者」へのアドバイスとして、こんなことをおっしゃっている。
 「たった一回の読書で深く味わう、その為には…先にあらすじを読めばいい」
 答えは実に簡単でした。
 もっとも、あらすじだけで終わらないことが大事だけど。
  
(2020/07/28 投稿)

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 雨の日が多いせいか
 今年ほど梅雨明けが待たれる年もない。
 それでも
 田んぼの稲は生長し、
 色を深めています。

  20200719_094418_convert_20200725105501.jpg

 俳句の季語には
 「青田」という季節の言葉もあります。

    青田には青田の風の渡りくる        星野 椿

 こんな季節だから
 天気予報は欠かさず見ています。
 雨の隙間をねらって
 畑に行って
 収穫や枯れた葉の刈り取りなど
 しています。

 トウガン(冬瓜)は今活動期なのか
 大いに茂っています。
 いくつか実がついてきたので
 8月の半ば頃に
 収穫できたらいいのですが。
 下の写真に
 膨らみ始めた実があるのですが
 見つけられますか?

  20200724_101448_convert_20200725110143.jpg

 これはモロヘイヤ

  20200724_101422_convert_20200725110011.jpg

 少しずつ葉を収穫しています。
 これは
 今年初めて栽培している
 エゴマ

  20200724_103137_convert_20200725110409.jpg

 できれば珍しい野菜を栽培したいと
 種から始めました。

 この日(7月24日)収穫した野菜が
 こちら。

  20200724_120329_convert_20200725110859.jpg

 夏野菜のオンパレードです。

 畑の栽培だけでなく
 ベランダでも栽培していて
 今年もゴーヤーを育てています。
 ようやく大きくなった
 ゴーヤー

  20200724_094955_convert_20200725105712.jpg

 ゴーヤー苦瓜とも呼ばれていて
 秋の季語にはいっています。

    苦瓜を食つていぢ悪してみるか     岩城 久治

 「いぢ悪」という言葉が
 なんとなくゴーヤーに合っていて
 おかしみを誘う句です。

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  犬派と猫派があるように
  うどん派とそば派も
  世の中には存在します。
  出身が大阪なもので
  どちらかというと
  若い頃はうどん一辺倒でした。
  ところが
  そばのおいしさを知ってから
  そば派に転向したといわれても仕方ないくらい
  注文を訊かれて
  「そばで」と頼むことが
  多くなりました。
  もちろん、うどんも好きですが。
  今日は
  加藤休ミさんの
  『うどんできた!』で
  うどんを味わいます。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  うどんだいすき!                   

 絵が描ける人が羨ましい。
 上手い下手はあるだろうし、もちろん巧く描けたらもっといいが、いずれにしても白いキャンパスに向かって絵を描ける人は、いい。
 加藤休ミさんの絵を初めて見た時、「え!? これ、絵?」と呆然としてしまったことを思い出す。
 それは焼き魚を描いたものだったが、写真かと間違うほどで、しかもそれがクレヨン画だと知って、さらに驚いた。
 絵筆でさえ描けないのに、どうしてクレヨンでここまで描けるのか。
 それ以来、私の中で加藤休ミ尊敬度は薄まらない。

 今回は「うどん」。
 表紙の「きつねうどん」のうまそうなことといったらない。
 どんぶりに触れている出汁の色合い、あげのしわ、ネギと出汁のからまり具合、そして何よりもうどん。出汁の中に沈んでいる様子、うどんとうどんのからみあい、もういうことはない。
 あとは食べるだけ。
 待って、まって!
 この絵本は、「ふしぎなたね」シリーズの一冊で、こんなにおいしいうどんの作り方を描いたもの。
 まずはうどん粉をこねるところから順に見ていきましょう。

 一つ心配なのは、こんなにおいしそうに描かれているから、小さい子供たちは絵本を食べてしまわないかということ。
 何しろこの絵本は3才から5才の子供向けの幼児絵本。
 絵本を食べなくても、「うどん食べたーい」とせがまれることを覚悟の上、お読みください。

 うどんを作れる人も羨ましい。
  
(2020/07/26 投稿)

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  今回のコロナ禍で
  つらい日々をおくっている人も多いと
  思います。
  中でも飲食業にたずさわっている人は
  厳しい。
  せっかく外出自粛が解除されても
  また感染者が増えてくると
  外食を控えることが多くなります。
  今日紹介する
  高田郁さんの
  『夏天の虹 みをつくし料理帖 7』の中に
  こんな言葉が出てきます。

   今も苦しみはあるけれど、乗り越えていこう。
   口にした何かを美味しい、と思うことが出来れば、
   ひとはきっと生きていける。

  がんばれ、料理人!

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  又次という男が好きな読者も多いのでは                   

 高田郁さんの人気シリーズ「みをつくし料理帖」の7作め。
 この巻でも四つの料理とともに四つの短編が収められている。
 巻末付録「澪の料理帖」に掲載されている料理名は、「滋味重湯」、「牡蠣の宝船」、「又次の柚べし」(又次というのはこの物語の主人公澪の幼馴染である野江が「あさひ大夫」としている吉原「翁屋」の料理番で、澪の苦難の際には力強い味方となる登場人物の名)、そして「鯛の福探し(鯛の粗炊き」(鯛の骨には「九つ道具」と呼ばれるある形に似たものがあるそうで、それらを探すことで食への興味を高めてもらうという料理)である。

 この長い物語には主人公の澪だけでなく、さまざまな人物が登場する。
 想い人である小松原からの結婚の申し出を断ってまで料理の道を極めようと心定めした澪であったが、やはりつらい日々がつづく。
 この巻ではそんな澪の苦悩が描かれていて、ついには嗅覚味覚まで失くしてしまう彼女を助けるのが、吉原「翁屋」の料理番又次である。
 又次はこれまでの巻でも、澪と今は吉原の大夫となった幼馴染の野江とをつなぐ重要な役どころの人物である。
 彼は吉原で親に棄てられた孤児で、廓で地獄のような苦労をしてきたという。
 それが澪たちと出会うことで、人の情に触れ、穏やかな時間を過ごすことができた。
 しかし、そんな又次を悲劇が襲う。
 吉原炎上である。
 野江を助けようと火の中に飛び込む又次。
 澪の運勢である「雲外蒼天」にしても、あまりにもつらい話がこの巻の最終話、表題作でもある「夏天の虹」に描かれている。
  
(2020/07/25 投稿)

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  今日は昨日の続き。
  司馬遼太郎さんの
  『国盗り物語(四) 織田信長 後編』。
  最終巻です。
  この巻は文庫本で700ページあって
  読み応え十分。
  四巻読み終わって
  やっぱり面白かったというのが
  第一の感想。
  こんな面白い小説も
  NHK大河ドラマ「麒麟がくる」
  コロナ禍の影響で
  中断しなかったと
  読まなかったかもしれないと思うと
  人生何が起こるかわからない。
  信長も本能寺でそう思ったのでしょうか。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  光秀は「麒麟」か                   

 新潮文庫版で4冊となっている長編歴史小説もいよいよ最後の巻、「織田信長 後編」である。
 そしていよいよこの巻のクライマックスで「本能寺の変」が描かれている。
 そこからすれば、「織田信長編」というより「明智光秀編」といった方がいいかもしれない。自らの主家であった信長に何故光秀は謀反を起こしたのか。
 おそらくそれは光秀しかわからない、あるいは光秀自身にも解けない謎であったかもしれない。

 この長編小説にはたびたび信長に対する光秀の妬みのようなものが書かれている。
 妬み、というのは、自分の方が生まれもいいし能力もある、という愚かな考えから出ている。
 あるいは、濃姫と結婚したかもしれない自分を想像したこともあったやもしれない。
 どんな組織でも、光秀のような考えをもつ人物は現れる。ただ光秀の場合、そんな考えを持つほどに能力も高かったのも事実だ。
 ただ残念なことに、光秀は信長のことが嫌いであった。
 好き嫌いの問題はどうしようもない。

 精神が病んでいくように見える光秀だが、信長の仕打ちも目に余る。
 現代ではパワハラであるには違いないが、戦国時代、ましてや下克上といわれている時代に信長のような強烈な個性がなければ天下などとれるはずもない。

 道三、信長、光秀、三人の武将の長い物語はここで完結したが、一体誰が本当の「国盗り」だったのだろう。
 秀吉なのか家康なのか。
 あるいは光秀の謀反に組みしなかった、光秀の友細川藤孝だったのだろうか。
  
(2020/07/24 投稿)

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  今日は海の日
  本来は7月の第三月曜なのだが、
  今年オリンピックの開催が予定されていたので
  明日のスポーツの日とくっついて
  変則の祝日になっています。

      海の日の終るしばしの夕茜       深見 けん二

  コロナ禍がなければ
  明日からオリンピックが始まっていたはずで
  一年前に
  誰がこんなことになるなんて
  考えたでしょう。
  今日は
  司馬遼太郎さんの
  『国盗り物語(三) 織田信長 前編』を
  紹介します。
  書評には書かなかったのですが
  この巻では
  織田信長の有名な桶狭間の戦いも描かれています。
  今川義元だって
  まさか負けるとは思わなかったでしょう。
  人生、何があるかわかりません。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  信長は「麒麟」か                   

 新潮文庫版で4冊となっている長編歴史小説の3巻め、この巻より「織田信長」編となり、これは「前編」である。
 これまでの復習がてら書いておくと、この長編小説は美濃を制し「蝮」と怖れられて斎藤道三と彼の娘帰蝶(濃姫と呼ばれることも)が嫁いで婿となった織田信長、そして道三の妻小見の方の甥であった明智光秀、この三人の武将の生き様を描いている。

 この巻の冒頭は、「おかしな若者だった」という一文で始まる。
 これ、すなわち信長のことである。
 信長のことは多くの人が知っている。若き頃、うつけ者と謗られて話は有名だ。
 そんな若者に自分の娘を嫁がせた道三だが、その噂しか知らない。
 道三と信長が相まみえることになった聖徳寺の会見。この一瞬で道三は信長の未来を予測したともいえる言葉を発する。
 そんな道三だが、不義の子であった息子に討たれてなくなる。
 亡くなる直前に京に残した本妻への伝達を頼んだ男、ここに明智光秀が登場する。
 光秀から道三の死を伝え聞いた本妻は光秀の顔を見て「男とは難儀なもの」とつぶやく。
 光秀もまた「天下とやらがほしいのであろう」と。

 若い頃道三はこの本妻に「天下をとって戻ってくる」と夢を語っていた。
 その夢は光秀にはまだまだ遠く、その後流浪の生活が続く。
 光秀が願ったのは将軍足利義昭を擁護し、再び正統な足利幕府を起こすこと。
 しかし、光秀の苦労もことごとく潰え、ついには信長を頼ることになる。

 読む者を飽きさせないのは歴史の面白さでもあるが、司馬遼太郎の筆の冴えでもあるのは確かだ。
 いよいよ光秀が何故信長を討つことになったか、その謎が解かれる。
  
(2020/07/23 投稿)

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  今日は
  二十四節気のひとつ、大暑
  漢字をみてわかるとおり
  暑さが厳しい頃。

    兎も片耳垂るる大暑かな     芥川 龍之介

  ところが
  今年はまだ梅雨があけません。
  まったくどうなってしまったのかな。
  気候といい
  コロナといい
  私たちの手ではどうしようもできないことばかり。
  せめて
  雨の日には映画でも観たいですが
  なんだか今はお家で鑑賞が多い。
  今日は黒澤明監督のポスター図録である
  『旅する黒澤明 槙田寿文ポスター・コレクションより』を
  紹介します。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  黒澤映画はかっこいい                   

 太宰治と松本清張が同じ年、1909年(明治42年)の生まれと知った時は少し意外な気がした。
 彼らから数カ月遅れたが、たぶん同じ学年であっただろう1910年3月に、もう一人の著名人が誕生している。
 映画監督黒澤明である。
 黒澤明が監督した映画「羅生門」がヴェネチア映画祭で金獅子賞を授賞したのが1951年、太宰治はすでにこの世になく、松本清張はやっと処女作とある「西郷札」を書いたばかりであった。
 日本もまだ戦後6年めで、黒澤明の快挙に驚いたはずである。
 そのあとの黒澤明の活躍は多くの人が知っているだろう。

 黒澤明は生涯30本の映画を撮った。
 その多くは海外でも上映され、黒澤を尊敬する海外の映画人も多い。
 この本は2018年に国立映画アーカイブで開催された展覧会の図録(刊行は展覧会終了後だが)である。
 世界30か国で上映された黒澤作品の映画ポスター84点が収められている。

 それらを見ていると、普段私たちが見なれている映画ポスターとはかなりイメージが違う。上映する国によっては極東の島国である日本のこともよくわからなかったかもしれない。それにそれらの国の映画事情もあるだろう。
 どちらかといえばイラストレーションによるデザインポスターが多いような気がする。そして、それが実にかっこいい。
 黒澤明の映画がかっこいいのを、海外の映画人たちはよく理解していたのだろう、
 これらのポスターが黒澤明研究家でもある槙田寿文氏の個人コレクションというのもすごい。
  
(2020/07/22 投稿)

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  今日は
  紗倉まなさんの
  『春、死なん』という中編集を
  紹介します。
  書評にも書きましたが
  紗倉まなさんは現役のAV女優です。
  あるインタビューで
  「執筆活動は「『紗倉まな』の仕事をしている延長線にあって、
  作家とは決して名乗れない」と
  答えていますが
  作家として最近とても評価されている
  有望な新人でもあります。
  この本のタイトルは
  西行

    願はくは花のしたにて春死なん そのきさらぎの望月の頃

  から採られているとか。
  さあて、紗倉まなさん
  将来芥川賞作家になるでしょうか。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  性はいつまでもつきまとう                   

 異色の、新人女性作家と呼ばれることの多い紗倉まなさんの中編二編を収めた作品集。
 何故異色なのか。実は紗倉まなさんは現役の人気AV女優でもあるのだ。
 もっとも漫才師でも芥川賞作家だし、主婦であっても会社員であっても小説を書くのだから、ことさらAV女優といって騒ぐことではないかもしれない。
 作者のそういうことを知らないでこの作品を読んで、彼女がAV女優だと言い当てる人などいないだろう。
 とてもまっとうな小説だといえる。

 表題作である「春、死なん」は、「老人の性」を扱った作品といわれる。
 妻を亡くして、一人で暮らす70歳の男富雄が主人公。
 一人で暮らすといっても、息子が作った二世帯住宅に住んでいるから、まったく不自由するわけではない。
 ただ心の隙間が埋まらない。
 富雄は時にAVビデオを借りたりして、隙間を埋めようとしている。
 偶然大学の頃に一度寝たことのある文江と再会し交際を深めていく。
 そして、富雄と文江は肌を重ねることになる。
 そんなあらすじながら、決して性ばかりを描いた作品ではない。
 富雄という男性の横に住む息子一家の姿を通して、現役の夫婦もまた互いに理解しあえない姿も描かれていく。

 もうひとつの作品、「ははばなれ」は、自分を生む時帝王切開をした母との関係を描いた作品。
 性はその後出産を経て生を得る。その生もまた性を営む。
 そんな連鎖を描いたともいえる作品である。
  
(2020/07/21 投稿)

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 なかなか梅雨があけません。
 季語「梅雨」の傍題に「長梅雨」というのもありますから
 今年に限ったわけではありませんが
 ずっと雨が降っているような気がします。

    ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき       桂 信子

 日照時間も記録的に少なく
 野菜の値段も高騰しているようです。
 畑の野菜も
 病気とか出始めています。

  20200719_091532_convert_20200719125359.jpg

 写真はキュウリの葉ですが
 うっすらと白い粉のようなでています。
 うどん粉病という
 湿気が多いと出やすい病気です。
 この葉はとってしまいます。
 今年楽しみにしていた
 オカノリですが
 梅雨に入る前に芽が出たところだったのですが
 その後の雨で
 すっかりダメになりました。
 梅雨明けしたら
 また植え直すつもりですが
 うまくいくかどうか。

 この時期は夏野菜がたくさん採れるので
 野菜を買うことは
 めったにありません。
 うまく収穫できない野菜がある一方で
 たくさん実をつけている野菜もあります。
 これは
 昨日の日曜(7月19日)長ナスの様子。

  20200719_091553_convert_20200719125841.jpg

 収穫予備軍がずらり。

 こちらは
 大玉トマト

  20200716_145306_convert_20200719124652.jpg

 赤いトマトとまだ青いトマトが
 きれいに並んでいます。
 ちなみにこの赤いトマトも
 日曜に収穫しました。

 菜園の一角に
 青ジソを育てている畝があって
 利用者は自由に採ることができます。

  20200716_145442_convert_20200719125259.jpg

 シソは夏の季語。

    ひとうねの青紫蘇雨をたのしめり       木下 夕

 雨をたのしむには
 ちょっと降り過ぎですが。

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  少し前に
  中公文庫から出た
  和田誠さんの『ことばの波止場』という
  講演録を読みました。
  その中で
  講演を引き受けるきっかけとなった
  落合恵子さんとのことが出ていて、
  それが
  今日紹介する
  落合恵子さん文、
  和田誠さん絵の
  『そらをとんだたまごやき』だったのです。
  和田誠さんが
  落合恵子さんと絵本を作ったのを
  知らなかったので
  さっそく図書館で借りました。
  かなり前に出た絵本なので
  こういう時は図書館は
  とっても頼りになる存在です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  「たまごやきの気持ち」がわかる大人                   

 1993年に出版されたこの絵本のおしまいのページに、「お話をつくった人」落合恵子さんと「絵を描いた人」和田誠さんからの短いメッセージが載っています。
 落合恵子さんのそれは絵本がたまごやきのお話なので「卵」のエピソード。
 一方、和田誠さんは落合さんとはずいぶん前からの知り合いで、落合さんがディスクジョッキーだった時も見学に行ったとか。(ちなみに落合恵子さんはレモンちゃんと呼ばれた人気DJだったのですよ)
 また、絵本専門店クレヨンハウスができた時は、お子さんの手をひいて出かけたそうです。(ちなみに落合恵子さんはクレヨンハウスの主宰者です)
 対談はあったそうですが、落合さんと絵本を作ったのは初めてだと書いています。
 そして、このお話の魅力を「発想のとび具合」としています。

 お話に登場するのは、お父さんと娘のめぐちゃん。
 二人はたまご20個使って、大きなたまごやきを作ります。
 するとこのたまごやきはどんどん大きくなって黄色いアドバルーンみたいになってしまいます。
 そして、お父さんとめぐちゃんを乗せて、冷蔵庫の中に広がる空に飛び出したのです。

 和田さんがいうように「発想」が普通ではありません。
 でも、和田さんも子供の頃には押入から外国に行けると空想していたらしく、「たまごやきの気持ち」がわかると書いています。
 和田さんという人は、きっと終生「空を飛びたいたまごやきの気持ち」がわかる大人だったのでしょう。
  
(2020/07/19 投稿)

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  今日は
  山本周五郎の短編選集
  『繁あね 美しい女たちの物語』を
  紹介します。
  山本周五郎といえば
  唯一直木賞を辞退した作家でも
  あります。
  1943年の第17回のことです。
  この時山本周五郎は40歳。
  辞退の言葉の中で
  「この賞の目的はなにも知りませんけれども、
  もっと新しい人、新しい作品にあてられるのがよいのではないか」と
  書いています。
  この時の対象になった作品が
  『日本婦道記』。
  その後の山本周五郎の活躍をみれば
  この時点ではまだまだ「新しい人」だったように
  思えるのですが。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  美しい花束                   

 「アンソロジー」という言葉は日本語で「詞華集」と訳されることもあるが、語源は「花束」であったという。
 この文庫の場合、「山本周五郎コレクション」となっているが、山本周五郎の数多い短編から7編を選りすぐった「アンソロジー」といえる。
 副題に「美しい女たちの物語」とあるが、まさに美しい花束のような一冊に仕上がっている。

 ここに収録されている7編は、「おさん」「三十二刻」「柘榴」「つばくろ」「あだこ」、それと『青べか物語』の中から「蜜柑の木」「繁あね」である。
 編集部による「編集後記」で、「美しい女たちの物語」という副題は「勁(つよ)い女たち」と言い換えた方がいいかもと記されているが、この作品集に限らず、山本周五郎の描く女性たちは勁さが魅力になっている。
 きっと山本周五郎にとっての女性像とは自身が持たない、ゆえに敬慕するしかないほどの神秘性を持ったものだったにちがいない。

 それは女体の神秘性といってもいいかもしれない。
 表題作である「繁あね」は、繁あねという貧しく親も家も持たない13歳の少女を描いている。作者は偶然にその少女の内股を見てしまう。その時のことを「信じがたいほど美しいものを見た」と綴る。
 あるいは、夫婦の営みの最中に大きな嬌声を発する女性を描いた「おさん」。そんな特異な女を忘れられずに葛藤する男を描いている。女性という異性の神秘の沼に引きずられていく姿は哀しい。

 それぞれ色も形も違う花であっても、山本周五郎の匂いのする花束のようなアンソロジーである。
  
(2020/07/18  投稿)

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  一昨日の15日の夕刻
  第163回芥川賞直木賞の受賞作が
  発表されました。
  芥川賞高山羽根子さんの『首里の馬』と
  遠野遥さんの『破局』の2作が受賞。
  直木賞馳星周さんの『少年と犬』。
  まずは、おめでとうございます。
  馳星周さんにとっては
  初候補から23年めにしての受賞ですから
  すごいもの。
  ノミネートも7度というから
  まさに直木賞候補の常連でした。
  でも、直木賞の規定では
  「無名若しくは新進作家の大衆文芸」から選ばれるとなっていて
  馳星周さんの場合
  決して無名でもないし新進作家でもない。
  今までの受賞者でも
  しばしばこういうことが起こるのだが
  どうも選考基準がよくわかりません。
  そこで
  今日は直木賞といえばこの人
  川口則弘さんの『直木賞物語』を
  再録書評
  紹介します。
  本当に、
  直木賞って、何?

  じゃあ、読もう。

 

sai.wingpen  直木賞って、何?                   

  著者の川口則弘さんは「直木賞研究家」を自認し、「直木賞のすべて」という素晴らしいホームページを運営している。
 そんな川口さんに出版の話がきたのは、「芥川賞」のことだった。先に上梓した『芥川賞物語』である。
 その「あとがき」で川口さんは「芥川賞よりも直木賞が好き」と書き、それでも「自分の本が出せる誘惑に勝てず」と苦しい胸の内を吐露している。
 しかし、待てば海路の日和あり。ここに念願の『直木賞物語』が完成したのである。

 2014年に第150回を迎えた「直木賞」であるが。これまでの受賞者は実に179名に達する(ちなみに、本書は第149回までの受賞記録なので177人の受賞者が紹介されている)。
 回数よりも受賞者数が多いのは、二人受賞が多いせいだ。(もちろん、受賞者ナシの回もある)
 そこに、「直木賞」らしさがあるといってもいい。
 1934年(昭和9年)に菊池寛によって制定された「直木賞」・「芥川賞」だが、「芥川賞」の対象が「純文芸」だったのに対して「直木賞」は「大衆文芸」がその対象とされた。
 「大衆文芸」といってもその範囲は広い。推理小説。時代小説、ミステリー、経済小説等々さまざまある。そのせいで、直木賞の間口は広くなり、受賞対象者も多くなったといえる。

 本書は単にその時々の選考結果を記録したものだけではない。
 ここにあるのは「直木賞」そのものがもっている、不可思議さといえる。
 500頁近い大作ながら、では「直木賞」という文学賞はどんな賞なのか判明しない。「大衆」向きなのか、「文芸」向きなのか、さえわからない。
 川口さんは、それこそ「直木賞」の魅力だと考えている。
 「頼りなくて、だらしがない。とにかく頑迷で、世間知らず」と、「直木賞」のことを川口さんは評している。
つまり、とても人間くさい文学賞といえる。
 もしかすると、今まで受賞してきた「直木賞」の作品よりももっともその制定の趣旨に近いのが、賞自体かもしれない。

 これから先、「直木賞」がどのような作品を選び、どんな作家に賞を与えるのかわからないが、「芥川賞」よりは面白いといえる。
 たとえ、直木三十五がどんな業績の人だと忘れられても。
  
(2014/02/21 投稿)

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  昨日紹介した
  『作家が選ぶ名著名作 ベスト3』は
  和田誠さんの似顔絵がたくさん
  載っていて
  見ているだけでも楽しめる一冊でした。
  今日は和田誠さんの文も楽しめる
  『わたくし大画報』を
  紹介します。
  ただこの本は1982年で出たもので
  書店で見つけるのは困難なので図書館の所蔵で
  見つけました。
  古い本を読みたいと思った時は
  図書館はとっても便利です。
  新刊だけが図書館の魅力ではなく
  こういう古い本が読めることこそ
  図書館の存在意義が
  あるのではないでしょうか。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  和田誠さんと平野レミさんの甘い生活                   

 男は家でどれくらい自分の仕事の話をするのだろうか。
 昨年(2019年)10月に亡くなったイラストレーターの和田誠さんの場合は家でほとんど仕事の話をしなかったそうだ。
 というか、シャイな和田さんはほとんど喋らないない人で、一日に原稿用紙5行ほどしか喋らなかったという伝説(?)まである。
 和田さんの奥さんである平野レミさんはテレビとかで見る限りでは和田さんと真逆でずっと喋っているような女性。
 まさに凸凹夫婦である。

 この本は1982年に刊行された、和田さんがプライベートを綴った珍しいエッセイ集だ。
 雑誌連載時は1975年頃だろうか、連載の途中で長男の唱さんと次男の率さんが誕生していて、和田さんとレミさんの子育て奮戦の様子も描かれている。
 そんなプライベートなエッセイながら、奥さんのレミさんがこの本を読んだのは最近のようで、ある雑誌のインタビューで「私のことをこんなにたくさん書いていたなんて知らなくて、(中略)もうビックリ。和田さん、私に何も言わないで、こんな本を書いていたのよね」と語っている。
 きっとレミさんにとって、若い子育て時代のころが思い出されて、感慨一入だったろう。
 あるいは、唱さんの奥さんとなった女優の上野樹里さんにとって、赤ちゃんの頃の旦那さん、変身ヒーローにはまった幼少の頃の旦那さんの様子がわかって、うれしかったにちがいない。

 和田さん自身このエッセイのプライベートなところは「日記のようなもの」と書いていて、和田さんファミリーの貴重な記録にもなっている。
  
(2020/07/16 投稿)

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  昨日紹介した
  村上春樹さんのエッセイの中に
  「腰を据えて読書にいそしむというのはなかなか良いもの」という
  文章があったのは
  昨日のこぼれ話にも書きましたが
  では、どんな本を読めばいいのかと
  困っている人はいませんか。
  そこで今日紹介するのは
  かつて毎日新聞書評欄で紹介されていた
  著名人による「ベスト3冊」を集めた
  『作家が選ぶ名著名作 わたしのベスト3』。
  これを読めば
  「腰を据えて」読みたくなる本の
  3冊ぐらいは見つかると
  思います。
  この本で絵を担当しているのは
  おなじみ和田誠さん。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  和田誠さんの似顔絵がいっぱい                   

 毎日新聞には故丸谷才一氏が尽力した人気の書評欄があります。
 その一角に「今週の本棚・この3冊」という囲み記事があって、この本はおよそ20年にわたるこのコーナーから選りすぐったものをまとめたものです。
 100人以上の作家や著名人が一つのテーマ、それは一人の作家からの3冊でもいいし、テーマで選んだ3冊でもいいのですが、で「わたしのベスト3」を綴っています。
 書評というよりブックガイドとしての色合いが強いですが、さすがにここで紹介されている人たちは限られた文字数の中で読ませる技術に長けていて、読んでみたいと思う本がきっと出てくると思います。

 そして、このコーナーの人気が高かったのにはもうひとつ仕掛けがあって、それが和田誠さんの似顔絵です。
 人気タレント「タモリ」をテーマに3冊を書いた樋口毅宏さんはこの欄の執筆を引き受けるに際して「憧れの和田誠さんに自分の顔を描いてもらえると知り、人生最大のチャンスとばかり」に引き受けたとあります。
 それは樋口さんでなく、多くの執筆者もそうだったのではないでしょうか。
 和田さんの似顔絵を見ているだけで、楽しくなります。
 そんな和田さんの3冊を丸谷才一さんと三谷幸喜さんが選んでいます。
 二人が選んだのはそれぞれ別なものですから、和田さんの本が6冊も選ばれたことになります。

 丸谷さんも和田さんも今はもういなくなって寂しいですが、きっと天国で楽しく本の話でもしているのでしょうか。
  
(2020/07/15 投稿)

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  今日は
  村上春樹さんの
  『村上T 僕の愛したTシャツたち』というエッセイ本を
  紹介します。
  この本はTシャツを紹介する
  カタログ本みたいになっていますが
  やっぱり村上春樹さんの語り口を楽しむ
  そんな一冊だと思います。
  長編小説もいいけど
  村上春樹さんのエッセイは好きだな。
  そんな中からこんな一節。

    世の中が何かとざわざわ落ち着かないときに、
    腰を据えて読書にいそしむというのはなかなか良いものです。
    どうかしっかりいそしんでください。

  まさかこの文章はこのコロナ禍を想定して
  書かれたものではないと思いますが
  なんだかピッタリしますね。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  ハルキさんにはTシャツがよく似合う                   

 この本を見つけた時にはさすがに世界の村上春樹さんだと感心した。
 だって、誰のタンスにもきっと1枚ははいっているだろうTシャツを題材にして雑誌の連載をし、こうして本になってしまうのだから。
 村上春樹さんがどんなTシャツを着ているかなんて、誰も興味がないのではなく、結構気になることなんだと思う。
 こうして、本を手にして、読んでしまうのだから。

 この本の「まえがき」に記されているが、雑誌の編集者に村上さんが「Tシャツのコレクションみたいなことやってる」とポロリと話したのが、そもそもの発端。
 それを写真で紹介しても「誰かの何かのお役に立つとも思えない」と村上さん自身書いているが、この編集者には別の嗅覚があったのでしょう、その編集者に祝杯あれ!

 一枚のTシャツから、のちに映画にもなった短編『トニー滝谷』を書いたと聞けば、やはりTシャツとはいえ村上さんにとっては大いなるものとなるわけで、それなら村上さんはどんなTシャツを愛用しているか見たくなるのは仕方がない。
 しかもここに写っているTシャツは新品未使用というわけではなく、村上さんの汗を吸ってそのあと洗濯もされたよれよれ感のあるものもあったりして、村上ファンにとっては垂涎モノだと思うが、まさかそんなTシャツにくるまれていたいと思ったりするのだろうか。
 まさか、ね。

 Tシャツといえば何だか若者のファッションアイテムのように気がするが、「年齢はあまり関係ないんじゃないかな」とさらりと答える村上さんは、やっぱりかっこいい。
  
(2020/07/14 投稿)

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 夏の季語に「出水」というのがあります。
 梅雨時の集中豪雨で河川が氾濫することで
 まさに今回の熊本や各地での大雨被害がそうです。

    目のついてゆけぬ迅さの出水川       藤崎 久を

 被災された皆さんには
 かける言葉も見つかりません。
 一刻も早い復旧を願うばかりです。

 夏野菜は成長が早いので
 雨が続くと
 どうしても収穫のタイミングを逃してしまいます。
 雨がやんでいるちょっとした時を見計らって
 収穫しています。

  20200710_165445_convert_20200712152846.jpg

 写真の上にあるのは
 黄ニラです。

 先週の収穫の中では
 なんといっても
 大玉トマトです。

  20200707_150712_convert_20200712151644.jpg

 この日収穫した四個です。
 大玉トマトは直径8cm前後の大きさだそうです。
 ミニトマトと比較してみると
 その大きさがわかります。

  20200707_150806_convert_20200712151827.jpg

 この品種は
 麗夏というもので
 図鑑にも載っていました。
 「しっかりした果肉にはトマトらしい風味があります」と
 書かれていました。

  20200707_185101_convert_20200712152237.jpg

 王様トマトと呼ばれることも
 あるそうです。
 大玉トマトがこんなにうまく
 収穫できたのは
 初めてかも。

 次に、トウガン(冬瓜)
 今年初めての収穫です。

  20200710_165117_convert_20200712152506.jpg

 切ると、
 真っ白な果肉で
 瑞々しいのが
 よくわかります。

  20200710_181049_convert_20200712153025.jpg
  
 ただ、雨の影響か
 次の実がひとつもついていません。
 なので、
 貴重な一個です。

 最後は、エダマメ
 栽培していた全部を
 収穫しました。

  20200712_124743_convert_20200712153127.jpg

 もちろん、
 塩茹でして頂きました。

   枝豆の莢をとび出す喜色かな      落合 水尾

 ただし、エダマメは秋の季語なので
 間違わないように。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  谷川俊太郎さんが文を書いて
  あべ弘士さんが絵を描いた
  『えほん なぞなぞうた』を
  紹介します。
  2020年5月に出たばかりですが
  和田誠さんが生きておられたら
  もしかしたらこの絵本の絵は
  和田誠さんが描いていたかもと
  つい思ってしまいます。
  谷川俊太郎さんの絵本に
  和田誠さんはたくさん絵を描いていますし
  こういう謎解きのような絵は
  和田誠さん結構好きでしたから。
  もちろん、
  あべ弘士さんの絵も素敵です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  解けないなぞをサラリと解いて                   

 子供の頃に読んでいた雑誌にはよくなぞなぞが載っていました。
 例えば、こんな問題。
 「上は洪水、下は大火事、なーんだ?」。
 答えは「お風呂」ですが、昔は薪でお風呂を沸かしていましたから、当時の子供たちにはイメージしやすかったかもしれません。
 なぞなぞは大昔からあって、有名なのはスフィンクスが旅人に問いかけたものといいますから、まさに人類の歴史と重なります。
 ちなみにスフィンクスのなぞなぞは「朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足。なーんだ?」。
 答えは「人間」。
 朝は赤ん坊のハイハイの姿で、夕方の三本足は杖をついている姿です。
 こんなふうに、うまいなぞなぞはウィットに富んでいます。

 この絵本は詩人の谷川俊太郎さんがこしらえてなぞなぞ集。
 奇数のページに問題があって、偶数のページには答えが載っています。
 例えば、こんな問題。
 「せかいじゅう どこにいっても よっつある/かせいにいっても あるのかな?」
 なぞなぞとしては、前段だけで成立していますが、後半をつけることで谷川さんの柔らかな文章になっているのがいい。
 なぞなぞ的には「なーんだ?」といれたいところですが。
 答えを書いてしまうのはよくないですが、よくできたなぞなぞなので、これだけは(文末に)書いておきます。

 ひとつひとつのなぞなぞとその答えに、あべ弘士さんの絵がついています。
 もちろん、問いについたあべさんの絵を見ても、残念ながら答えはわかりません。
 (文中のなぞなぞの答え:東西南北)
  
(2020/07/12 投稿)

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  前川恒雄といっても
  知らない人が多いかもしれません。
  図書館学を勉強した人なら
  知っているでしょうが。
  私は何故かこの人の名前だけは目にしていたことがあって
  なので
  その訃報には少し心が痛みました。
  4月10日のことです。
  前川恒雄さんは89歳でした。
  今日紹介する
  『移動図書館ひまわり号』は
  前川恒雄さんが図書館開設に向けて
  奮闘する話ですが
  それよりも現在の図書館の姿を牽引する姿に
  感動します。

    図書館は、人々が本と出合い本を利用することによって、
    自分の可能性を発見し育てていく所

  この本の一節です。
  図書館で働く人たち、
  図書館を利用する私たちが
  忘れてはならない言葉だと思います。

  ご冥福をお祈りします。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  追悼・前川恒雄さん - あなたに感謝                   

 新型コロナウイルスが急速に広がり始めていた2020年4月10日、一人の図書館学者が亡くなった。
 その後の4月23日の朝日新聞「天声人語」に「戦後日本の図書館のありようを大転換してくれた先人」と記されたその人こそ、前川恒雄、この本の著者であり、この本に描かれているように東京日野市立図書館の初代館長である。

 私たちが現在使っている公共図書館は本の所蔵数にしろ館の広さにしろ館内の明るさにしろ、なんとも快適な施設である。
 しかし、前川さんが日野市の図書館に関わるようになった昭和40年当時は図書館は暗くかび臭い印象がつきまとった施設であった。
 何しろ当時の図書館員は胸を張って自分の仕事が言えないほどであったという。
 前川さんが迎えられた日野市にしても、図書館があったわけではない。
 前川さんはじめスタッフが一から図書館作りを始め、その最初が「ひまわり号」と名付けられた移動図書館だった。

 移動図書館こそ「本当の図書館とは何かを、市民に肌で分かってもらうための唯一の方法」だった、とこの本に記した前川さんにとって、「本当の図書館」とは市民の求めに応じてしっかりと本を貸し出すところということだろう。
 今ではどこの図書館も当たり前のようにやっている「予約(リクエスト)サービス」も日本では前川さんたちの日野の図書館が最初だったそうだ。

 移動図書館から中央図書館の開館まで、この本に描かれているのは単に日野市の図書館の歩みではなく、この国の図書館の歩みでもある。
  
(2020/07/11 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  私が初めて
  東京に出てきたのは1975年頃だったが
  その当時すでに東京は
  十分大きな街で
  もうそれ以上人の住むところなど
  増えそうにないように
  思ったものです。
  ところが、そのあとも
  東京はどんどん大きく
  高くなっていって
  その当時からすれば
  未来都市にでもなったようでもあります。
  門井慶喜さんの
  『東京、はじまる』は
  まさに最初のスタート地点を描いた
  面白い作品です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  空に向かって                   

 門井慶喜さんには『家康、江戸を建てる』という傑作連作集があるが、徳川家康が開いた江戸から200年超を経て、明治となり、江戸はその名も東京へと名前を改める。
 だから、この長編歴史小説は気分は『家康、江戸を建てる』に近いが、東京駅を設計したことで有名な建築家辰野金吾の生涯を描いて、これもまた読み応え十分だ。

 辰野金吾は明治維新前の1854年肥前唐津藩の下級武士の家に生まれている。
 明治期の著名人の多くがそうであったように、辰野も維新がなければその後の人生はまったく違ったものであっただろう。
 とにかく維新があって、江戸が終わった。
 辰野は東京と変わった街に出、現在の東大工学部の前身である学校に第一期生として入学する。
 そこで英国人の建築家コンドルで出会うことになる。
 辰野はその生涯で200件以上の建造物を造ったが、この作品では彼の名を最初に高めた日本銀行本店と東京駅に関わる事柄がメインに描かれていく。

 東京という巨大な街は一朝一夕で出来上がった訳ではない。
 政治も社会も文化も明治維新をはさんで生まれ変わったといえる。
 そして、それらを容れる建物も街づくりも。
 江戸が東京に生まれ変わるにあたって、辰野のような人物がいた、あるいは生まれたことこそがこの国の素晴らしさだったといえる。
 門井さんはそんな人物を実に颯爽と描いている。
 主人公である辰野は時折建造中の骨組みを昇り、空へと向かう。
 明治から大正にかけて、まさに人々がそんな気分であったのだろう。
 原題の「空を拓く」というのもわるくない。
  
(2020/07/10 投稿)

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 コロナ禍で外出自粛要請が出ていた頃は
 図書館も休館だし
 本屋さんにも行かない日々が
 続いていました。
 自粛解除が出て
 本屋さんにしばらくぶりに出掛けた時には
 砂漠でオアシスを見つけたみたいな
 気分になりました。

 その時に見つけたのが
 この雑誌、
 「ぼくたちのスパイ映画大作戦」(近代映画社・1601円)。

  

 ちょうど
 昨日も書いたように
 映画専門チャンネル「ムービープラス」
 「007」シリーズの一挙放送が始まったところだったので
 (ちなみにこの雑誌の裏表紙がその広告です)
 買おうかどうしようか迷って
 その時はがまんしたのですが、
 そういうがまんの時は
 やっぱり買いたい時で
 数日して買う気まんまんで同じ本屋さんに行ったら
 もう店頭から消えていました。

 実はこの雑誌、
 SCREEN5月号増刊になっていて
 本屋さんで見つけた時には
 すでに発売からだいぶ経っていたのです。
 雑誌は書籍と違って
 ある期間が過ぎると
 返品することになっているようです。
 もちろん売れてしまったということも
 考えられるのですが、
 そうなると
 俄然欲しくなるのが不思議です。
 釣りでいう、
 逃した魚は大きいと同じ。
 それから
 何軒か本屋さんをめぐって
 ようやく手にすることができました。

 さて、ここからが
 007、ジェームズ・ボンドの話です。
 表紙にあるように
 今年の秋に公開予定の
 シリーズ25作目の
 「ノー・タイム・トゥ・ダイ」の速報記事が
 載っています。
 噂では
 この作品でダニエル・クレーグがボンド役を退くという話ですが
 どうなることか。

 この雑誌には
 これまでの全24作のストーリーや裏話も
 満載。
 もちろん、豪華絢爛ボンド・ガールのピンナップもあったりして
 満足満足。
 「ジェームズ・ボンド大百科」という記事もあって
 それが2ページというのも
 面白すぎ。

 秋の新作が公開される頃には
 コロナ禍も
 落ち着いていたらいいのですが。

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プレゼント 書評こぼれ話

  先月から
  映画専門チャンネル「ムービープラス」
  6ヶ月にかけて
  映画「007」シリーズ全24作
  放映する企画が始まりました。
  6月は9作品。
  私の大好きな
  2006年公開のダニエル・クレイグ主演の
  「カジノ・ロワイヤル」も
  またまた観ました。

  

  やっぱり エヴァ・グリーンのボンドガールは
  最高です。
  せっかくなので
  2012年9月に書いた 
  その作品の原作
  イアン・フレミング
  『007/カジノ・ロワイヤル』を
  今日は再録書評で紹介します。
  あと5ヶ月
  「007」で楽しみます。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  まずは仕事、そのあとに美女                   

 007のボンド映画シリーズではダニエル・クレイグが6代目ジェームズ・ボンド役を演じた『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)が好きだ。
 話の展開のスピーディさ、ド派手なアクション、それになによりもエヴァ・グリーンが演じたボンド・ガールがいい。
 おそらく彼女は歴代のボンド・ガールの中でも屈指の美しさだ。
 しかも、この作品はイアン・フレミングの原作として初めてボンドが登場した原作の映画化であるので(時代背景は大きく変えられているが)、まさに正統007映画といっていい。

 フレミングがこの作品を発表したのは1953年で、そのあとすぐに映像化されているがボンド初登場作としてはあまりめぐまれない経緯をたどっている(そのあたりのことは本書の解説の中で詳しく書かれている)。
 そういう意味ではダニエル・クレイグのボンド映画までこの原作を堪能できる映像が作られなかったということだ。
 ボンド像は、初代ボンド役のショーン・コリーの印象が強い。タフでしかも女性にもてる諜報部員。歴代のボンド俳優たちもそれを踏襲してきたといえる。
 しかし、原作のボンドはそれほどスマートとはいえない。
 仕事のコンビを組むことになったヴェスパーという女性を最初は嫌う。しかも、彼女の上司はボンドのことを「仕事一本槍の男」と評している。男ぶりは「ちょっといい男」だが、「やさしい気持ちなんてあまりないだろう」とみている。
 つまり、原作に初めて登場した時のボンドは日本人も驚く、「仕事の鬼」だったのだ。

 この作品ではソ連(こういう呼び方も今では懐かしいが)の大物工作員がカジノでの大勝負で使いこんだ資金を回収しようとしている。
 それを阻止すべく派遣されたのがイギリスの諜報部員ジェームズ・ボンド。ボンドを支援するために送られたのがヴェスパーという美女。ボンドは最後の土壇場で辛くも勝負に勝つが・・・。
 カジノでの勝負のあとがこの作品の読みどころといっていい。
 果たしてヴェスパーは味方か敵か。「仕事の鬼」のボンドが大仕事を終えたあと、この美女にどう迫っていくのか。
 やはり、ボンドには美女は欠かせない。
  
(2012/09/18 投稿)

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 今日は
 二十四節気のひとつ、小暑
 梅雨が明ける頃で
 暑さがだんだん本格的になってきます。

    塩壺の白きを磨く小暑かな      山西 雅子

 先週の土曜日(7月4日)の
 朝日新聞朝刊にこんな広告を見つけました。

  20200704_074358_convert_20200705132324.jpg

 大きく

    本は、そばにいるよ。

 と、あります。
 そして、

    疫病にも、戦争にも、未曾有の不況にも。
    失恋にも、どんな失敗にも、悲しい別れにも。
    なんだかんだ、人類はへこたれない。
    そんなエールが、知恵が、ヒントが、
    本にはあると思うのです。この夏も、本屋さんへ。

 新潮文庫の100冊の広告でした。

 先日久しぶりに本屋さんに行くと
 恒例の夏の文庫フェアが始まっていました。

  20200703_154735_convert_20200705132238.jpg

 新潮文庫で驚いたのは
 今年の100冊から
 三島由紀夫の名前が消えていること。
 去年は2冊もあったのに
 一体これはどうしたことでしょう。
 まさか現代の高校生は
 三島由紀夫も読まなくなったのかな。
 新潮文庫でいえば
 カミュの作品もちょっと文句を言いたくなります。
 選ばれているのは
 『異邦人』。
 もちろんこれもカミュの代表作だとわかりますが
 やっぱり今年は『ペスト』を
 100冊に選ぶべきでしょう。
 今年の夏新潮文庫の100冊にチャンレンジしようと
 思っている人は
 ぜひ『ペスト』を加えて
 101冊に挑戦してみて下さい。

 集英社文庫
 今年も「ナツイチ」。

     ぼくらを強くする、言葉たち。

 とキャッチがついています。
 角川文庫
 「カドフェス」の小冊子に
 ナゾが仕掛けられているので
 読みたい本を探しながら
 ナゾ解きに挑戦しては
 いかがでしょう。

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 梅雨の終り近くになると
 毎年決まったように
 大きな水害に見舞われます。
 先週末も熊本で大きな災害がありました。
 いつも思うことですが
 水につかった田んぼや畑を見ると
 農家さんの悲しみや悔しさはいかばかりかと
 思います。
 そんな中、梅雨の合間に見つけた
 木下闇(こしたやみ) の風景。 

  20200703_113736_convert_20200705131530.jpg
 
 木下闇は夏の季語で
 木々が鬱蒼と茂るようになって
 樹下が昼でも暗いそんな様をいいます。

     名刹といふもおほかた木下闇        檜 紀代

 関東でも先週の半ばに
 強い風が吹いて
 先週作った雨よけシートをはずさなくては
 いけないぐらいになりました。
 次の日には
 また雨よけシートをつけるといったように
 雨の時期は
 トマトの栽培は大変です。
 でも、
 大玉トマトはなんとか赤くなってきました。

  20200705_095901_convert_20200705131615.jpg

 あと1週間ほどで収穫できるかも。
 それまで頑張って!

 こちらは赤ジソ

  20200705_095923_convert_20200705132012.jpg

 だいぶ茂ってきました。
 その奥にあるのが
 甘長トウガラシ長ナス

 夏野菜は
 成長が早いので
 気をつけないと
 たちまち大きくなってしまいます。
 これは
 先週水曜に収穫した夏野菜ですが
 このあとも何度か収穫しています。

  20200701_153255_convert_20200705131224.jpg

 珍しい野菜も
 紹介しておきます。
 ベランダで育てているミニキュウリ

  20200701_185218_convert_20200705131322.jpg

 これは10cmぐらいが収穫時期だとか。
 小さくてもキュウリです。

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プレゼント 書評こぼれ話

  動物園にしばらく行っていない。
  子供たちが大人になって
  動物園を行くという機会がなくなったが
  小さい子供と行かなければならないということもない。
  大人の愉しみとして
  動物園があってもいいと思う。
  今日は
  あべ弘士さんの『エゾオオカミ物語』を
  紹介しますが
  よく知られているように
  あべ弘士さんはもともと
  旭川市の旭山動物園に25年間勤務されていた
  絵本作家です。
  動物の絵本なら
  あべ弘士さんといえるのではないでしょうか。
  だから、大人だって
  あべ弘士さんの絵本を
  愉しむのも
  あっていいと思います。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  生きるものたちを感じる絵本                   

 絵本は、絵と文の配分が絵の方が多いものをいうのだろう。
 文が多くなれば童話もしくは物語となって、絵は挿絵と呼ばれるようになる。
 だから、絵で多くを語ることになる。
 あべ弘士さんの、今は絶滅したエゾオオカミの物語を描いた絵本も、壮大な大河のような物語が文字で多くを語るのではなく、絵がそれを伝えている。

 ある寒い夜、小さなモモンガたちがふくろうから物語を聞く場面から始まる。
 まるで、年老い知恵者から昔話を聞くような始まりは、物語の導入部として期待が高まる。
 ふくろうが語り始めたのは、昔北海道に生息していたエゾオオカミのこと。
 あべさんはここで一匹のエゾオオカミの全身を描いている。
 ここからすでに物語は始まっている。
 かつて、シカと共存していたというエゾオオカミ。シカを殺して食べることでエゾオオカミは生き、シカもまた数のバランスを保っていたという。
 ある年、大雪が降って、シカがいなくなった。
 エゾオオカミは仕方なく村の馬を襲う。
 いのちのバランスが崩れた瞬間だ。
 人はそんなエゾオオカミを殺して、絶滅させてしまう。
 わずか100年ほど前のこと。

 あべさんの絵は写実ではないが、描かれる動物たちの鼓動が聞こえる気がする。
 強い鼓動であったり、深い息づかいであったりを感じることができるのが不思議だ。
 長大な抒情詩ともいえるこの作品で、文字数は限られているが、絵は多くのことを語っている。
 そう、まるで100年の時間のような悠久を。
  
(2020/07/05 投稿)

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 コロナ禍の影響はさまざまなところに出て
 博物館や美術館、図書館まで
 休館が相次ぎました。
 外出自粛が解除されて
 ようやく恐る恐るですが
 これらの文化的施設も再開が始まりました。

 東京・上野の国立西洋美術館
 3月から開催予定だった
 「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」
 ようやく6月18日から開催されました。

  20200703_103600_convert_20200703164045.jpg

 ただし、
 3密を避けるために「日時指定制」の入場です。
 何しろこの展覧会は
 展示61点がすべて初来日という
 貴重なものですから
 見に行かなくてはと
 昨日(7月3日)
 観に行ってきました。

 なんといってもこの展覧会のメインは
 ゴッホの「ひまわり」でしょう。
 展覧会の看板やチラシにもどーんと出ていますが
 それもわかります。
 何しろゴッホが描いた「ひまわり」は
 7点しかなく
 今回のこの作品は中でもゴッホ自身が
 気に入っていたというもの。
 いかに印刷技術があがったとはいえ、
 その質感や色使い、あるいは発光する色そのものは
 やっぱり実物に優るものはありません。

 今回の展覧会にある
 「ロンドン・ナショナル・ギャラリー」
 ロンドン中心部にある世界屈指の美の殿堂で
 まさに「英国が誇る至宝」の数々といえます。
 これはフェルメール
 「ヴァージナルの前に座る若い女性」という作品。

  20200703_111940_convert_20200703164415.jpg

 もちろんこの作品も
 日本初来日。

 今回はコロナ禍での開催で
 入場規制もされていますが
 逆に絵画を鑑賞するには
 快適な入場者数になっていました。
 肩越しに作品をのぞき見ることもなかったです。

 この展覧会
 東京での開催は10月18日まで
 そのあと大阪での開催となりますが
 コロナ感染が再び広がって
 また観られなくなったりしないことを
 祈りたいと思います。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  桜木紫乃さんの『家族じまい』という
  連作短編集を紹介します。
  桜木紫乃さんはこの作品のインタビューで

    小説の大きな仕事は、真正面から励ますことではなく、
    赦すことだと思うんです。

  と語っています。
  赦されることで
  見えてくるものがあるのかもしれません。
  また、家族について、

    どんな時代、どんな状況のときも、家族の問題は残ります。

  と話されています。
  この世界に生まれたということは
  家族という単位を
  誰もが持ったはず。
  家族を考える契機になれば。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  家族って何だろう                   

 太宰治の短い作品で、難破した男が灯台の窓際から助けを求めようとしたところ「今しも燈台守の夫婦とその幼き女児とが、つつましくも仕合せな夕食の最中」で、今助けの声をあげたらこの一家の団欒が壊れてしまう。男はそのため助けの声をあげないまま遭難する。
 太宰はこの燈台守の家族を「仕合せ」と表現しているが、家族はそんなたやすいものではないことを、太宰自身が一番知っていたはず。
 桜木紫乃さんの連作短編集を読みながら、太宰が描いた一家にも実は人にいえない愛憎のようなものがあったかもしれない、いや「家族」とはそんな愛憎を潜めながら「つつましくも仕合せな夕食」を囲んでいるのではないかと、問われているように感じた。

 「ふたりを単位にして始まった家族は、子供を産んで巣立ちを迎え、またふたりに戻る。そして。最後はひとりになって記憶も散り、家族としての役割を終える。人の世は伸びて縮む蛇腹のようだ」と、最初の章に書かれている。
 物語はともに八十歳を越えた老夫婦と二人の娘、そして娘たちの家族の姿を描きながら、家族がどのようになくなっていくかを、過剰ではなく静かに描いていく。
 認知症になって記憶が薄れていく妻をかつて自分の好き放題に生きた夫が面倒をみている。そんな父とうまく折り合いのつかない長女、そんな長女を冷たいと攻める次女。
 どんなにいがみあっても、最後は誰かが面倒を見るしかない。

 「家族って、いったいなんの単位なんだろう、よくわからなくなってきた」。
 長女のそんなつぶやきが心の奥底で震える。
  
(2020/07/03 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  本橋信宏さんの『ベストセラー伝説』という
  本を紹介します。
  この本に
  青春出版社から出た
  森一郎さんの『試験にでる英単語』のことも
  書かれています 。
  いやあ、懐かしいな。
  私も大学受験の時
  この「でる単」のお世話になりました。
  「でる単」というのは
  『試験にでる英単語』の愛称だとか。
  でも、そんな風に言った記憶はないけど。
  何しろこの「でる単」では
  1800語英単語を覚えたらいいというのですから
  受験生にとって
  大助かりの一冊でした。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  昭和30年生まれの私にドンピシャ                   

 「ベストセラー」を広辞苑で調べると、「ある期間に最高の売上げをみせた書籍」とあるから、雑誌は100万部売れても「ベストセラー」といわないのではないか。
 そんなことを思いながら、でも、この本でいえば、秋田書店の「冒険王」や「少年チャンピン」の話や少年画報社の「少年画報」と桑田次郎の「まぼろし探偵」といった今や伝説のようになった雑誌のことが読みたいではないか。
 あるいは、学校で販売されていた(ような記憶がある)学研の「科学」や「学習」のことを知りたいではないか。
 つまり、この本は「ベストセラー」という言葉にこだわることなく、著者の本橋信宏さんが「はじめに」の冒頭に記している、「夕陽の向こうに消えていった懐かしい出版物とそれを作った編集者たちの物語」なのだ。

 本橋信宏さんは1956年(昭和31年)生まれで、その同年代の読者(私もその一人であるが)にとっては、先にあげた月刊漫画誌などは懐かしいと思う。
 あるいは、「科学」「学習」といえば、小学館の学年誌とは違った印象を持っている人も多いのではないか。
 本橋さん世代にとってはひたすら懐かしい雑誌たちであるが、少し年が離れると、全く受けとめ方が違うはずだ。
 どんな世代でも自分にとっては懐かしい雑誌やはずせないベストセラーはある。
 だから、あえてこの本で紹介されている雑誌や書籍のことをいうならば、昭和30年前後の本橋さん世代に欠かせない「ベストセラー伝説」だろう。
  
(2020/07/02 投稿)

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