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プレゼント 書評こぼれ話

  以前読んだ本を再読して、
  新しく書評を書いたら「再読書評」、
  以前書いた書評をそのまま載せたら「再録書評」と
  自分で決めているのですが
  今日紹介する
  和田誠さんの『表紙はうたう 完全版』の場合
  どうなるのだろう。
  というのも、もとになる本は2008年に出て
  その時に書評を書いているのだが
  今回はその後の作品も載っている「完全版」なので
  新たに書いてもよかったのですが
  前回書いた文章が結構気合も入っていたので
  そのまま使うことにしました。
  そのおまけとして
  前段に今回の本のことを少々。
  つまり、書評も「完全版」ということで。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  都会のメルヘン「完全版」                   

 この本のことには説明がいる。
 何故タイトルに「完全版」とついているかである。
 実はこの本はもともと2008年に同じタイトルで刊行されていた。もちろんその当時は和田誠さんもお元気で、本の刊行後「週刊文春」の表紙を描き続けた。
 和田さんが亡くなったのは2019年10月だが、「週刊文春」での新しい作品は2017年だったようで、今回の「完全版」では2008年以降の作品も収録されることになった。
 ちなみに「週刊文春」では今でも和田さんの絵を表紙として使っている。
 「完全版」に収められている和田さんによる解説文も2008年当時のままだいうので、今回2009年3月29日に書いた書評を下に載せた。
 
    *       *       *      *      *

 豪奢な一冊である。
 縦30センチ、横22センチ、幅2センチ。手に持つとずっしりと重い。キッチンスケールで計ると、重さは1330グラム。すごい器に盛られた極上の一品だ。
 本書は、和田誠による週刊誌「週刊文春」の表紙画を集めた画集である。
 収録されている点数は、1558点。何しろ和田が同誌に表紙画を描き始めた1977年5月12日号から2008年9月25日号までの、31年間すべての作品が収められているのだから、これはもういうことはない。ただひたすら読むしかない。
 もちろん、これだけの内容であるから、値段もそれなりにお高い。9,950円也。つい値段の話など書くのは書評子の品格が賤しいからと、お許し願いたい。
 この値段であっても、たまには珠玉の贅沢な時間を過ごすのもいい。
 三ツ星の高級レストランで食事をしたことを思えば、あちらは所詮雲古となって雲散霧消の世界だが、こちらはいつでも、何度でも王様になれる一品である。
 少年漫画週刊誌「少年マガジン」「少年サンデー」が今年創刊50周年を迎えるのは大々的なキャンペーンで知っていたが、「週刊文春」もこの春創刊50周年を迎える。これらの週刊誌が誕生したのはいずれも昭和34年(1959年)で、当時「週刊誌ブーム」と呼ばれていた。同じ年には「週刊現代」「朝日ジャーナル」も創刊されている。
 「週刊朝日」や「サンデー毎日」といった新聞社系の週刊誌の創刊はこれよりかなり以前昭和初期まで遡るが、出版社系として「週刊新潮」が昭和31年に創刊されている。
 昭和34年に「週刊誌ブーム」が起こった理由として考えられるのは、「皇太子成婚式」がその年の4月に行われたことと関係しているのだろう。女性週刊誌もすでにほぼ出揃っていた。
 そして、時代が「岩戸景気」といわれる成長期で、庶民が雑多な情報を欲していたといえる。

 和田誠が「週刊文春」の表紙画を描き始めた昭和52年(1977年)頃は、当時の「週刊文春」の編集長であった田中健五によれば「週刊誌全体の部数が落ち気味だったし、女優さんの写真を使った表紙が多くて、どれも似てました」(「本の話」11月号所載)という状況だった。
 もちろんそれ以前にも「週刊新潮」の谷内六郎の表紙画があるように、どの誌も女優さんばかりではなかったが、この時の「週刊文春」の変更は斬新であり、似顔絵だけではない和田誠の本来の巧さが目をひいた。

 和田は本書の「話は31年前にさかのぼる」という文章の中で、描き始めた頃のテーマを「都会のメルヘン」だったと書いている。それに、それぞれの絵のタイトルとして曲の題名を配して、毎号「表紙はうたう」というおしゃれな短文がつく。
 こうして、一冊の画集となって見てみると、そのセンスのよさに圧倒される。
 都会という魑魅魍魎の世界にもメルヘンが存在するのである。

 もう気分はセレブである。
  
(2021/01/21 投稿)

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