01/27/2021 失楽園・上(渡辺 淳一):書評「時代と寝た小説」

男女小説で名を馳せた
渡辺淳一さんが亡くなったのは
2014年ですから
もう8年近くなります。
結構何作も読いましたが
それも20年以上前のことです。
今回久しぶりに『失楽園』を読もうと思ったのは
読んだのは40代のはじめですが
あれはどんな小説だったか
ちょっと再訪してみたくなりました。
上下2冊を読み終わって
思った以上に
良かった。
そして、なんだか隣で
40代の自分も夢中になって読んでいるように思いました。
明日は下巻の紹介です。
じゃあ、読もう。

「著作物が広く世にもてはやされて盛んに売れること」を意味する「洛陽の紙価を高める」という言葉を知ったのは、この作品がきっかけだったように思う。
1995年9月1日から翌1996年10月9日まで「日本経済新聞」の朝刊に連載されたこの新聞小説にどれだけのビジネスマンが夢中になったことか、そして連載終了後半年足らずで単行本化され、当然のようにベストセラーになった。さらには映画化、ドラマ化と、まさに世の中は「失楽園」ブームで沸き立った。
作者である渡辺淳一はこれより先より「男女小説」ともいわれる男女の性愛を描いた作品を次々と著していたが、この作品はその頂点とも評されるほどであった。
官能小説以上に男女の性愛の描写に彩られたこの小説に、あの頃の男たちは夢中になったのだろう。
まるで朝から欲情しているかのように、主人公である久木と人妻凛子の逢瀬の様をむさぼり読んでいた。
新聞連載が始まった1995年(平成7年)といえば、1月に阪神淡路大震災があり、3月には地下鉄サリン事件が起こった年である。まさに世紀末的な世相であった。
さらには1ドル79円余りという戦後最高値をつけたのもこの年。
金融機関の不良債権が問題化して、1997年には大手銀行や証券会社が倒産に追い込まれていく。
つまり、多くのビジネスマンが不安の中にいた、そんな時代であった。
そういう点では、この小説は「時代と寝た」作品だったといえるだろう。
(2021/01/27 投稿)

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