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プレゼント 書評こぼれ話

  小さい頃に
  「小の月」は
  ニシムクサムライ(2・4・6・9・11月)と
  教えてくれたのは
  誰だったのでしょう。
  小の中でも
  もっとも短い2月は今日でおしまい。

    光りつつ鳥影よぎる二月尽     小沢 明美

  今日紹介する
  マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットさんの
  『岸辺のふたり』は
  原題が「Father and Daughter」、
  つまり父と娘の物語。
  鎌田實さんの『人生図書館』の中で
  紹介されていた絵本で
  大当たりの一冊でした。
  こんなに素敵な絵本に
  出会えるきっかけをくれた
  鎌田實さんに感謝です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  人生が尊いものだとわかる一冊の絵本                   

 この絵本を読み終えて、まるで映画のようと思う人は多いはず。
 それもそのはず、この絵本はアニメーションショートフィルムを監督自ら絵本にしたものです。
 監督、つまりこの絵本の作者マイケル・ディドウ・ドゥ・ヴィットさんはオランダ生まれのアニメーション作家で、作品に描かれる平坦な大地はオランダの風景だそうです。
 この絵本の翻訳をしているうちだややこさんは本木雅弘さんの奥さんで樹木希林さんの娘さんでもあるエッセイストの内田也哉子さんです。
 うちださんはこの絵本に付けられた付録の冊子で、この作品の絵のことを「つつましく繊細な温度を保つ絵」と表現しています。
 なんとうまい言い方でしょう。

 絵本は、干潟を自転車で走っていく父と娘の姿から始まります。
 岸辺に着くと、父は「それじゃあな」と、一人ボートで漕ぎ出していきます。
 それが、父と娘との別れでした。
 それから、長い時間が過ぎていきます。
 少女は美しい女性になり、伴侶ができます。
 やがて、子どもも生まれ、母となります。
 あの時の少女も今は年をとりました。
 いつしか、父と別れた岸辺に彼女は戻ってきます。

 その岸辺で彼女が見つけるもの。きっと読み手はそこでこの岸辺の深い意味を知ることになります。
 人の一生がこんなに静謐な時間の流れだということを気付かさせてくれる、尊い絵本です。
  
(2021/02/28 投稿)

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  現在放送中の
  NHK朝ドラ「おちょやん」
  楽しく見ているかというと
  そうでもない。
  なかなか難しい人をモデルにしたかもしれない。
  モデルというのは
  「昭和日本を笑顔にしたナニワのおかあちゃん大女優
  (長いですが、これが副題)
  浪花千栄子さん。
  ひどい父親には救いがないし、
  後半には女性癖の悪い亭主との愛憎もあったり
  朝ドラの材料としては
  難しい。
  今日は朝ドラでは描かれないだろう
  浪花千栄子さんの評伝を。
  青山誠さんの
  ズバリ、『浪花千栄子』です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  「おちょやん」の評伝読み物                   

 NHK「連続テレビ小説」(いわゆる「朝ドラ」)の第103作となる「おちょやん」で杉咲花さん演じるヒロインのモデルとなっているのが、昭和の名脇役浪花千栄子さん。
 といっても、昭和63年(1973年)66歳で亡くなった浪花さんだから、リアルで彼女の映画やドラマを見た人も少なくなったことだろう。
 本書は「ナニワのおかあちゃん」とまで呼ばれた浪花千恵子さんの評伝読み物である。

 浪花さんの前半生は悲惨である。
 今なら児童虐待、不当労働で摘発されるかもしれない。
  彼女が生まれたのは明治40年(1907年)であるから、そういうことは多く見られただろうが、小学校にも行かせてもらえず9歳で大阪道頓堀のお茶子として働くというのはあまりにも酷だ。
しかも、給料も出なかったという。(朝ドラではヒロインが働く芝居茶屋の主人たちは皆優しいが、実際浪花さんが働いたところがひどい職場だったことが、この本には書かれている。朝ドラとの違いを見つけるのも、この本の読みどころ)

 浪花さんには『水のように』と題された自伝があるが、そこでは夫であった渋谷天外(といっても、この役者で演出家の名前を知っている人も少なくなっただろうが)との愛憎の様はあまり描かれていない。
 やはり自身では書き難い事柄だったのだろう。
 離婚につながる夫の裏切りなどは、この本で知ることができる。
 そんな苦難を乗り越えて、浪花さんは昭和の名脇役と呼ばれていく。
 きっとその根底には、少女時代の厳しい生活を生き抜いた力があったのだろう。
  
(2021/02/27 投稿)

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  今週は
  たまたま歴史本が続きます。
  今日は
  今や人気の歴史学者といえる
  磯田道史さんの
  『感染症の日本史』。
  2020年9月に出た新書ですが
  もちろん新型コロナウイルスを感染拡大によって
  書かれたものです。
  ただ、決して即席に書かれたものではなくて
  とても参考になる記述があって
  2020年にこの本が出版された意味を
  将来きちんと評価すべきだと
  思います。
  とってもいい本です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  この本はもっと読まれるといいのに                   

 歴史学者に感染症のこと、ましてや新型コロナウイルスのことがわかるものかと思う人もいるだろうが、侮ってはいけない。
 この本は2020年9月に出版されている(実際には「文藝春秋」で連載されていたから執筆はもっと前だろうが)が、その中に「今回の新型コロナウイルスも、「また十月から十二月あたりに新たな波が始まって、来年(2021年)春先まで続くかもしれない」と警戒する必要があります」と書かれていて、年明けに東京をはじめとした大都市各地に緊急事態宣言が出たのことをまるで預言したかのようです。
 では、磯田氏は何故それが予見できたのでしょう。
 それは、1918年に全世界で起こったスペイン風邪の流行の波がそうだったからです。
 もちろん、今回の新型コロナウイルスとスペイン風邪は同じものではないので、同じような感染の波が起こるとは限りませんが、少なくとも参考になることを、この本は証明しています。
 だからこそ、「歴史は単なる過去の記録ではありません。日常生活でも生かすことのできる教訓の宝庫」という磯田氏の言葉が重い意味を持っています。

 また磯田氏は「ミクロ・ヒストリーとマクロ・ヒストリーの相互の連環において捉えていく必要」を説いています。
ミクロ・ヒストリーというのは個人の日記などです。
 この本でもその手法はとられていて、先程のスペイン風邪に罹患した京都女学生の日記や永井荷風や原敬などの日記なども分析されています。

 今回の新型コロナウイルスが収まっても、またいつか新しい感染症が起こらないとは限りません。
 そのためにも、今回のことはきちんと残しておかないといけないことを、この本は示しています。
  
(2021/02/26 投稿)

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  少し前に
  五社英雄監督の「人斬り」という映画を観ました。
  1969年の映画ですから
  かなり古い日本映画です。

  

  主人公は岡田以蔵。
  その役を勝新太郎が演じています。
  似合っているかどうかは別にして
  仲代達矢さんが演じた武市半平太に
  使われていく苦悩が
  よく出た作品でした。
  この映画では
  三島由紀夫が薩摩藩の田中新兵衛を演じています。
  今日の
  一坂太郎さんの
  『暗殺の幕末維新史』を読んで
  この映画のことを
  思い出しました。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  彼らは「愚か者」だったのか                   

 「暗殺」というのも殺人であるが、「多く、政治的に対立している要人を殺すこと」と「広辞苑」にあるように、いささか区別して使われている。
 歴史をひも解けば、古くは「大化の改新」もそうだし、戦国時代にも多くの「暗殺」が行われてきた。
  中でも突出しているのは、幕末から明治維新の頃で、「わずか十数年の間に、その数は百件を超す」という。
本書は副題にあるように「桜田門外の変から大久保利通暗殺まで」の主だった暗殺事件の、起こった背景(つまりは「殺人」ではなく「暗殺」として括られる政治・思想を明らかにする)や殺された側と殺した側の人物像にも迫ろうとする試みである。

 幕末の「暗殺」者として有名なのは、「人斬り以蔵」と呼ばれた土佐藩の岡田以蔵だが、彼の場合斬ることを巧みに利用されていた節がある。
 この頃の「暗殺」にはそういう安易な誤解で行われたものも多い。
 数多く書かれている「暗殺」事件の中で、印象に残ったのは横井小楠を暗殺した男の息子が語ったという次の言葉だ。
 「私の父は善人だった。(中略)その半面におゐて私は父が時勢を洞察することの出来ぬ昧者であつた」。
 「昧者(まいしゃ)」というのは、愚か者という意味である。

 そこまでいうのは酷としても、少し熱を冷ませば凶刃を手にすることはなかったかもしれない。
 しかし、その熱があればこそ、時代の歯車は間違いなく、ガラリと回ったともいえる。
  
(2021/02/25 投稿)

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  今日紹介する
  『「関ケ原」の決算書』を書いた
  山本博文さんは
  書評にも書きましたが
  2020年3月29日に63歳で亡くなっています。
  もうすぐ1年です。
  この本でもそうですが
  山本博文さんが書く歴史書は
  とてもわかりやすい。
  そういった人が
  若くして亡くなるなんて
  やっぱり惜しいですね。
  ところで、
  関ケ原。
  日本史の中でも面白いところ。
  ここだけクローズアップさせて
  大河ドラマになりそうなんだけど。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  関ケ原ならなんといっても大谷吉継がいい                   

 「決算」という言葉を「広辞苑」で調べると、「勘定を締切ること。収入・支出の最終的な計算」と出てくる。
 つまり、この本は天下分け目の戦いといわれる「関ケ原合戦」(1600年)で徳川家康率いる東軍と石田三成率いる西軍の、各藩が一体どのくらいのお金がかかり、その勝敗のあとの成敗で(つまり、勘定が締め切られ)どれだけの損益がでたのかがわかりやすく書かれている。
 何しろ著者の山本博文氏は東京大学史料編纂所教授ながら、かつて日本エッセイスト・クラブ賞を受賞したほどの文筆家だから、文章がとてもいい。
 さらにいえば、この作品は山本氏の遺作でもあって、本書巻末に「がん闘病中でしたが、本書の校正をすべて終え、直後の2020年3月29日に永眠されました」と、編集部のコメントがはいっていて、山本氏がこの作品出版に際しての思いが感じられる内容になっている。

 特にこの中では、西軍についた大藩薩摩の島津藩についての記述が核になっている。
 というのも、島津藩は大藩でありながらわずかな兵しか出陣させず、命からがら関ケ原をあとにする。そうはいっても、東軍の勇壮井伊直政に傷を負わせたぐらいだから、「決算」はマイナスになっても仕方がなかった。
 しかし、実際には島津藩はほとんど処罰を受けていない。
 そんなあたりを、関ケ原合戦が始まる前あたりから解き起こしていく。そして、この合戦に見られる裏切りなどの挿話も絡めて、実に面白い歴史書になっている。

 1957年生まれだった山本氏の早逝は実に残念だ。
  
(2021/02/30 投稿)

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  今日は
  第164回芥川賞受賞作
  宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』を
  紹介します。
  いい作品を読めて
  かなり満足しています。
  今回は候補作5作とも水準が高かったようで
  各選考委員の「選評」も
  読み応えがありました。
  いずれまた
  機会があったら紹介しますが、
  中でも川上弘美さんの「選評」は
  印象深く読みました。
  ぜひ「文藝春秋」三月号
  お読みください。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  今回の受賞作は、「推し」                   

 第164回芥川賞受賞作。(2021年)
 今回はまだ21歳(芥川賞歴代3番目に若い受賞だそうで)の現役の大学生の受賞ということで、何かと話題になっていて、先日も本屋さんの店頭でこの本を手にした女子高校生を見かけて、久しぶりに芥川賞もいいものだと感じた。
 今回の選評では「性も違い世代もかけ離れ、せいぜい日本人という共通点がある程度」という松浦寿輝委員が「異星人」のような主人公に「一応知的に理解はしても、何一つ共感することがない」と、年をとった読者の代弁のような書き出しが目についた。
 但し、松浦委員のこの後がいい。
 「にもかかわらず、リズム感の良い文章を読み進めて(中略)共感とも感情移入ともまったく無縁な心の震えに、自分でも途惑わざるをえなかった。」
 まったく同感である。
 「推し」という言葉さえ知らない世代ながら、一気に読ませる文章の力に、ここでも久しぶりに芥川賞はいいものだと感じた。

 なんといっても、松浦委員がいう「異星人」のような主人公あかりの造形がいい。
 事件を起こしたアイドルの一途に「推し」、事件後も見捨てることもないあかり。出来の悪い彼女は姉にも母からも辛くあたられ、「推し」を支えることが自身の「背骨」のように感じている。
 「異星人」のような主人公でありながら、あかりはやはり青春小説の主人公である、怒りや絶望やその果てにある希望などを持った若者像であることが、この小説に安心感を与えているように思う。

 若い読者にとって、この作品は抱きしめたくなるような、そんな出来上がりといっていいのではないだろうか。
  
(2021/02/23 投稿)

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 先日近所を散歩していて
 一輪の桜を見つけました。

  20210219_100234_convert_20210220195419.jpg

 と、
 「それ、河津桜なんですよ」と
 教えてくれたご婦人がいました。
 聞くと、ご近所ではこの桜はよく知られていて
 いつもの年はもう満開なんですが、と
 話されていました。
 今、満開なのは

  20210220_113216_convert_20210220195721.jpg
  20210220_113245_convert_20210220195755.jpg

 近づくと梅の香りが匂います。
 昔は花といえば桜ではなく、梅。
 なので、いい俳句もたくさんあります。

    近づけば向きあちこちや梅の花      三橋 敏雄

 今日は畑で見つけた
 珍しい野菜から。
 これは何だと思います?

  20210220_112623_convert_20210220195640.jpg

 とう立ちしたハクサイです。
 でも、これって何か似ていませんか?
 そう、アブラナ。
 それもそのはず、
 ハクサイはアブラナ科なので
 このとう立ちしたところは
 食べられます。
 普通ハクサイはとう立ちする前には
 収穫してしまうので
 ハクサイのとう立ちは珍しい。
 畑のアドバイザーさんに言って
 この部分だけわけてもらって
 おひたしで頂きました。

 こちらは新芽が出始めてきた
 アサツキ
 20210220_110836_convert_20210220195556.jpg

 ネギに似ていますが
 ヒガンバナ科なので
 どちらかといえば
 ニラの仲間。

 こちらは紫エンドウの今の様子。
  20210220_110825_convert_20210220195507.jpg

 暖かくなってきましたが
 収穫までは
 まだ少し時間がかかりそう。

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  埼玉と東京との境には
  荒川が流れていて
  映画「翔んで埼玉」では
  その川を挟んで通行手形がいる様を
  おかしく描いていました。
  まさかそんなことはありませんが
  もう数ヶ月も
  東京に出たことがありません。
  コロナ禍で
  不要不急の外出は控えるようにとのことなので
  東京に出ていません。
  仕方がないので
  今日は
  阿部行夫さんの
  『東京さんぽ絵本』でも読んで
  東京に行った気分になろうと
  思います。
  あなたもいかが。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  東京へはもう何度も行きましたね                   

 街にはそれぞれの街なりの表情があって、きっと誰にも自分のお気に入りの街があるにちがいない。
 中でも、東京。
 日本の首都であることはいうまでもないが、街としてもとっても素敵だところだと思う。
 なんといっても、たくさん楽しめるところがある。
 観光地としても有数だろう、一日で回れるはずもない。
 ましてや、「さんぽ」なんて。
 でも、何故か東京には「さんぽ」という言葉が似合っている。
 それは多分、ちょっと歩けば(電車に乗れば)別のいいところに行けるからではないだろうか。

 この絵本の作者である阿部行夫さんはアニメーションの美術監督として多くの作品に携わってきた。だから、街の表情がとても生き生きとしている。
 単に写実というのではない。街の特長をうまく組み合わせて、読者の目の前に街を再現させてくれる。
 阿部さんが描いた東京は、まずは雪の東京駅。しかも上空からの俯瞰。
 続いて、冬の夜の銀座。アメ横、上野公園、皇居、と続く。
 もっと歩こう。
 明治神宮、新宿御苑、お台場では花火を見よう。
 カッパ橋に御茶ノ水、神保町とくれば専門店の街。おっと、秋葉原は「おたく文化の聖地」。
 といった具合に、まだまだ続く。
 この絵本に紹介されていない、東京の見どころスポットはまだまだある。

 東京。好きだな。
  
(2021/02/21 投稿)

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 新型コロナウイルスの影響は
 経済の世界でも大きな影響を及ぼしています。
 運輸や飲食業、観光業が大きな痛手を被っている一方
 巣ごもり需要で好業績となっている企業もあります。
 そんな中、
 2月17日の朝日新聞夕刊に
 興味深い記事が出ていました。

   まちの本屋さん 巣ごもり支える

 と大きくあります。
 記事の冒頭はこうです。

    コロナ禍はまちの本屋を見直す機会となったー。
    昨年5~11月に書店店頭の売り上げが前年比を上回り、
    とりわけ住宅街や商店街の書店が好調

 記事はさらに
 緊急事態宣言下にあった4~5月は10~30%売り上げが伸びたと
 伝えています。
 ただ一方で
 ビジネス街や駅周辺は売り上げはよくなかったようです。
 これはテレワークなどで
 生活圏であるまちの本屋さんを利用する人が
 増えたということです。
 これをきっかけにして
 まちの本屋さんもいいなと
 固定客化すればいいのですが。

  

 ちなみにどんな本が売れていたかということも
 記事には出ています。  
 
    一斉休校によって需要が増えた学習参考書のほか、
    投資や自己啓発などのビジネス書、
    片付けの本などが売れている。

 ただ当然不安もあって
 コロナ禍が収束したあと
 巣ごもり需要がいつまで続くのかということ。
 今のうちに
 しっかりまちの本屋さんならではの
 ファンを作っておくことが大事だと思います。

 コロナ禍は人類の大きなピンチですが
 それをチャンスに変えるのも
 アイデア次第かもしれません。
 まちの本屋さん、がんばれ!

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  今年2冊めの
  アガサ・クリスティー本は
  ミス・マープルもので
  『カリブ海の秘密』。
  この時期の
  ミス・マープルものは
  どれも評価が高く
  いつもの霜月蒼さんの
  『アガサ・クリスティー完全攻略』では
  この作品も★★★★★の満点。
  ミス・マープルものは
  彼女が高齢ということもあって
  脇役がいつもいい味を
  出しています。
  ちなみに
  今回の事件では
  私は犯人を見つけられなかったです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  ウワサを信じちゃいけないよ                   

 アガサ・クリスティーが1964年に発表した「ミス・マープル」ものの一作。
 この時、アガサは74歳ながら、執筆力は旺盛で年齢による衰えなど微塵も感じない。
 主人公であるミス・マープルは78歳あたりの設定だから、自分もミス・マープルに負けないわぐらいの気概があったかもしれない。
とはいえ、ミス・マープルがお年なのは否めないことで、この作品では前の冬に患った肺炎の転地療養のためにカリブ海の風光明媚な島に長期滞在している設定になっている。
 彼女が泊まっているホテルで一人の退役少佐が亡くなる。最初は病気によるものと思われていたが、ミス・マープルは合点がいかない。
 調べていくと、やはり殺人。
 ミス・マープルの行く先に死体あり!
 もっとも、事件がなければ、彼女の活躍も読者の楽しみもないのだが。

 今回彼女の推理を助けるのが、彼女以上に高齢の金持ちの老人ラフィール氏。
 この人はミス・マープル以上に歩くのもままならないという男性ながら、好奇心旺盛で、あとはお金の力で彼の行動を援けてくれる青年を使うしかない。

 この作品で面白いのは、噂を利用して事件をカモフラージュしてしまうこと。
 きちんと事実を見たり聞いたりしたわけでもないのに、いつも間にか噂でその人物がゆがめられているのは、まるで現代のSNSでのデマ拡散とそっくりだ。
 人間の様などは、案外アガサの時代とそんなに変わっていないのかもしれない。
  
(2021/02/19 投稿)

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  今日紹介する
  三島由紀夫の『命売ります』が
  売れているという。
  ちくま文庫版である。
  文庫帯が売れるきっかけを作ったのだろう。

    もっと早く教えてほしかった…
    隠れた怪作小説 発見!

  と手書き文字が煽ってくる。
  さらに、

    読んだ人のほとんどが「みごと!」と唸る
    三島由紀夫の極上エンタメ小説。

  実物はぜひ本屋さんで見てもらいたいが
  この帯だけで
  買った人も多かったのではないだろうか。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  本は売り方次第かも                   

 この作品を著者名を隠して読んで、どれだけの人が三島由紀夫の作品だと正解できるだろうか。
 これがあの『金閣寺』や『豊饒の海』を書いた同じ作者のものなのか。
 何しろ発表誌が「週刊プレイボーイ」で、連載されたのが1968年。亡くなる2年前である。
 ただ元々三島には純文学だけでなくエンターテインメントの作品もあって、『潮騒』もその要素は大いにあるように感じる。
 巧い作家は純文学とかエンターテインメントとかの区分けがなくて、あるのはやはりいい作品かどうかだろう。

 では、この作品はどうか。
 自殺に失敗した男が「命売ります」という広告を出すことで、様々な依頼主と関わっていく作品だが、やや連載誌の読者を意識し過ぎているように感じる。
 そして、こういったら三島は嫌がるかもしれないが、なんとなく太宰治の遺作となった『グッドバイ』の雰囲気によく似ている。プロットもまったく違うが、これは純粋の読み手の感想だ。

 ちくま文庫版の帯には「これを読まずして三島を語るべからず!!」とあるが、やっぱり三島由紀夫といえば、この作品より前に押さえておきたい作品が山のようにあるのではないか。
 その上でのもう一冊ならわかるのだが。
  
(2021/02/18 投稿)

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  昨日斎藤美奈子さんの
  『中古典のすすめ』という本を
  紹介しましたが、
  今日紹介する鎌田實さんの
  『鎌田實の人生図書館』では
  いわゆる古典がバンバン紹介されています。
  例えば、堀辰雄、川端康成、ヘミングウェイ、トーマス・マン
  こう書いていると
  まさに王道ですよね。
  なので、昨日の『中古典のすすめ』と
  併読すると
  ばっちり図書館になります。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  本と映画、それと絵本からたくさん教えてもらった                   

 この本の著者鎌田實(みのる)さんは、1948年に生まれて屈折した幼年時を過ごしています。
 何しろこの本の「はじめに」の冒頭に書かれているのが、「貧乏の中で育ちました。」なのですから。
 鎌田さんといえば『がんばらない』というエッセイがベストセラーになるなど文筆家としても立派に活動していますが、本職は医師で現在は諏訪中央病院の名誉院長だそうです。
 この本はそんな鎌田さんが、副題にあるように「あなたを変える本と映画と絵本たち」を紹介するものですが、実際には「私(鎌田さん)を変えた本と映画と絵本たち」ということでしょう。

 「人生図書館」については、鎌田さんはこの本の中でこう書いています。
 「本から本へ、作家から作家へ(中略)自分勝手の世界を広げていくことが読書の醍醐味。こうやって「本の宇宙」をさまよっていくこと。」。
 これが、鎌田さんの「人生図書館」。
 ここにはたくさんの本や映画、絵本が紹介されていますが、鎌田さんはこんなことも書いています。
 「大切なのは自分です。自分が「これで満足」と思えれば、それが幸福の基準」だと。
 だから、鎌田さんが紹介しているからいいのではなく、いいか悪いか、自分に合っているかいないのかを決めるのは自分だということを持つことが大切です。
 鎌田さんはそのための道しるべを示してくれているのだと思います。

 鎌田さんはまた「自分にとっての1冊」を持つことが大切とも教えています。
 そんな一冊がこの本で見つかれば、どんなにいいでしょう。
  
(2021/02/17 投稿)

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  今日は
  斎藤美奈子さんの『中古典のすすめ』という
  本を紹介します。
  斎藤美奈子さんといえば
  1994年に『妊娠小説』という文芸評論で
  颯爽とデビューし、
  今や文芸評論ではトップランナーです。
  しかも、私とほぼ同世代ということもあって
  同じようなベストセラー群で
  成長してきたといえます。
  なので
  この本の目次を見ただけで
  読む前からワクワクでした。
  もちろん、面白かったですよ。
  できたら、斎藤美奈子さんご自身の
  『妊娠小説』もすすめて欲しかったなぁ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  青春期の本もすでに中古典・・・か                   

 本のタイトルにある「中古典」というのは、著者の斎藤美奈子さんの造語で「古典未満の中途半端に古いベストセラー」のことで、夏目漱石だとか森鴎外といった明治の文学はもう立派に古典だし、戦後の吉行淳之介とか安岡章太郎といった「第三の新人」世代も入っていない。
 年代でいえば、1960年代から90年代半ばにかけてのベストセラーを現在の時点から読み直すということだ。
 斎藤美奈子さんは1956年生まれだから、まさにこれらの本とともに成長したといえる。(私もそうだ)

 年代別に紹介されている本の数を並べていこう。(括弧内は私が読んだ本の数)
 まず1960年代、15冊(7)。70年代、15冊(5)。80年代、15冊(6)。90年代、3冊(2)。
 次にどんな本が挙げられているか、代表的な作品を書いておくと、まず60年代は柴田翔の『されどわれらが日々―』や庄司薫の『赤頭巾ちゃん気をつけて』。70年代は高野悦子の『二十歳の原点』、小松左京の『日本沈没』、80年代は山口百恵の『蒼い時』や黒柳徹子の『窓ぎわのトットちゃん』、ここには村上春樹の『ノルウェイの森』や吉本ばななの『キッチン』も入っている。そして、90年代は司馬遼太郎の『この国のかたち』など。
 これらの作品名を見つけると、食指が動くのはこの世代としては仕方がない。
 しかも、読み直しているのが、辛口の批評家斎藤さんとあっては、読まずにいられない。

 中でも、80年代の渡辺淳一の『ひとひらの雪』の一文だけは外せない。
 斎藤さんにとって、渡辺淳一は「失笑作家」と冒頭から書かれている。もちろん、この作品の名作度使える度ともに最低だ。
  
(2021/02/16 投稿)

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 先日の土曜日(2月13日)の深夜、
 福島で大きな地震がありました。
 私の住んでいるさいたまでも
 揺れが大きく驚きました。
 10年前の東日本大震災を思い出した人も多かったと思いますし、
 実際今回の地震があの時の余震だと聞くと
 いかに10年前の地震が大きかったか
 改めて感じました。
 10年前の3月はまだまだ寒かった。
 被災地では雪も舞っていました。
 それに比べて
 この土日の暖かさはどうでしょう。
 桜が満開になる頃の暖かさと聞くと
 やはり気分も高揚してきます。
 公園で
 咲きそろったスイセンを見つけました。

  20210212_121602_convert_20210213195030.jpg

 水仙は冬の季語ですが
 喇叭水仙は春の季語。

    点滴も喇叭水仙も声なさず      石田 波郷

 菜園も
 いよいよ7年めの春を迎えました。
 今年最初の栽培として
 ジャガイモを植えつけました。
 今回植え付けたのは
 キタアカリメークイン
 ジャガイモはこれまでにも何回か育てていますが
 今年は育て方を変えました。
 本などによく紹介されているので
 王道のやり方です。
 買ってきた種イモを日光にあてて
 まず芽を出させます。
 これを「浴光催芽(よくこうさいが)」といいます。

  20210212_093251_convert_20210213195144.jpg

 写真で丸いのがキタアカリ
 細長いのがメークイン

 そして、植え付ける前に
 芽が出ている方は切って
 その切り口に草木灰をまぶせます。

  20210212_110900_convert_20210213195313.jpg

 今までは丸ごと一個種イモとしていましたが
 今回初めてこの方法をやりました。
 これは種イモの腐敗を防ぐそうです。

 そして、
 畝に溝を掘って
 種イモを置きます。

  20210212_111549_convert_20210213195537.jpg

 今回はメークイン4個、
 キタアカリが6個育てます。
 そのあとに
 黒マルチを張って地温を高めて
 発芽を促します。
 黒マルチの上に目印のヒモを張っています。

  20210212_112729_convert_20210213200041.jpg

 ね、結構王道でしょ。

 収穫は今週もホウレンソウ
 いつもの写真だと変わり映えしないので
 ポパイのホウレンソウの缶詰を
 イメージして、パチリ。

  20210212_123500_convert_20210213195655.jpg

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日はバレンタインデー
  春の季語にもなっていますが、
  文字数が多くて
  詠みにくい季語でもあります。

    バレンタインデーと頭の片隅に      本井 英

  そこで、今日は
  恋物語の「大人の童話」を。
  あらい太朗さんが描いた
  『雷になったいのばあちゃん』。
  あらい太朗さんはこの作品を
  「おじいちゃんとおばあちゃんの恋物語」の思いで
  描いたとあったので、
  今日の書評のタイトルにしました。
  映画「漫画誕生」では
  このいのさん役を篠原ともえさんが
  好演されていたのが
  印象に残っています。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  おじいちゃんとおばあちゃんの恋物語                   

 タイトルに出てくる「いのばあちゃん」というのは、日本で最初の職業漫画家になった北沢楽天の奥さん北沢いのさんのこと。
 楽天は明治から昭和にかけて活躍した漫画家で、晩年は先祖代々の地であった埼玉大宮に住みます。当時の大宮市の名誉市民第一号にもなっています。
 楽天は昭和30年(1955年)に79歳で亡くなりますが、いのさんはその後十年一人で過ごします。
 この本の作者であるあらい太朗さんはさいたま市を拠点に活躍されている漫画家ですが、同時の北沢楽天といのさんの顕彰をライフワークにされてもいて、楽天を主人公にした映画「漫画誕生」(2019年)の制作にも関わっています。

 そんなあらいさんだからこそ、楽天死後一人になったいのさんの寂しさとさらに募る夫楽天の思いを雷に託した「大人の童話」が書けたのだと思います。
 そして、雷が登場するヒントになったのが、楽天が描いた掛け軸「雷と蛙」。この掛け軸の図版も作品解説もこの本の巻末に載っています。
 物語はいのさんのところに雷のお父さんがやってきて、楽天の掛け軸を見て、雲の上の様子が違うことをいのさんに話します。興味を持ったいのさんは、だったらと雷と一緒に雲の上に。そこで、もっと上の天上にいる楽天と再会します。

 物語も素敵ですが、あらいさんが考案されたという「ぽんぽん版画」による挿絵がかわいくて、いのばあちゃんってきっとこういう人だったのだろうって微笑ましくなります。
  
(2021/02/14 投稿)

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  和田誠さんの本は
  結構読んできたつもりですが
  何しろたくさんの本を
  書いてきた人ですから
  まだまだ未読の本がいっぱいあって
  和田誠ファンとしては
  うれしい限りです。
  今日はそんな一冊。
  2014年に出た
  『和田誠シネマ画集』。
  裏表紙には
  チャップリンの「モダン・タイムス」の
  ラストシーンのイラストが載っています。
  このイラストのポストカードを
  持っていて、
  何だかヤッター! って、
  気分です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  和田誠さんの得意分野なので安心できます                   

 和田誠さんはイラストレーターですから、様々なジャンルのイラストを描いています。
 それは装丁とか絵本とか多岐に渡っていますが、なんといっても映画関係のイラストは和田さんがもっとも得意とする分野ではなかったでしょうか。
 2014年に刊行されたこの画集は、「シネマ」と銘打っているように和田さんの得意な分野に関係したイラストだけを集めたものです。
  
 和田さんと映画といえば、何といっても映画のワンシーンのイラストと名セリフを集めた『お楽しみはこれからだ』シリーズが有名ですが、この画集にはほとんど文章がありません。
 和田さんの色刷りのイラストと映画のデータが並んでいるだけ。
 ただ巻頭に「自分史の中の映画」と題された、ちょっと長めのエッセイ(誠少年がどのように映画に染まっていったかが綴られています。特に和田さんがノーギャラで描いたという伝説となった日活名画座のポスターの話は、何度聞いてもいい話です)と、それぞれの作品のまとめのような文章があるだけです。
 なので、じっくり和田さんのイラストを楽しめます。

 題材になっているのは、映画の名場面や監督、俳優だけでなく、原作を書いた文学者たちも描かれていて、ドストエフスキーやサルトル、もちろんアガサ・クリスティーもいたりします。
 中でも、桜色の背景で描かれたチェーホフは圧巻の一枚になっています。

 こういう画集を開くと、なんだか和田さんがまだそこにいるような、そんな気がします。
 (和田誠さんは2019年10月に亡くなっています)
  
(2021/02/13 投稿)

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  今日2月12日は
  司馬遼太郎さんの忌日、菜の花忌

    菜の花忌眩しき潮の流れゐる     角川 春樹

  もし司馬遼太郎さんが生きていたら
  このコロナ禍での
  政治や社会の混迷に対して
  どんなメッセージを出していたでしょう。
  今日は
  司馬遼太郎さんが総合誌「文藝春秋」に書き継いできた随筆
  『この国のかたち(一)』を
  再録書評で紹介します。
  2016年に書いたこの書評の最後に
  「果たして私たちは司馬の期待どおりの「この国」を持ちえただろうか。」と
  書いていますが、
  それから5年が経って
  司馬遼太郎さんの期待から
  さらに遠くにきてしまったような気がします。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  私たちは司馬遼太郎の火を消していないか                   

 この本は何度読んでも難しい。
 総合誌「文藝春秋」の「巻頭随筆」として1986年3月号から連載を始めたものがこのシリーズで、この一には2年分のそれが収められている。
 司馬遼太郎は23歳の時、終戦を迎える。その時、「なんとおろかな国にうまれたことか」と忸怩たる思いだった。
 「むかしは、そうでなかったのではないか」という思いがその後の作品を描いていく基本のトーンであり、「二十三歳の自分への手紙を書き送るようにして書いた」。
 手紙を書き続けることで感じたさまざまを「形象としてとりだし、説明的文体」で書かれたのが、この作品である。
 もしかすれば、もっとわかりやすい表現形式はあったかもしれないが、司馬が作品として描けなかった「昭和」を語るとすれば、これしかなかったのかもしれない。

 この巻の中で「-あんな時代は日本ではない。と、理不尽なことを、灰皿でも叩きつけるようにして叫びたい衝動」があると記した司馬。
 「昭和」という時代(戦前のそれ)を「鬼胎」の時代と呼んだ司馬は、長い連載の中で戦国時代や江戸時代、あるいは幕末、明治という彼がこれまでに見てきた歴史をたどっていくことで、まさにこの国のありようをみていく論考になっている。

 一方で、この1980年代後半の「この国」が置かれていた状況をみて、その将来を憂いている(「14 江戸期の多様さ」)のも、司馬という一人の作家を考えた場合、重要な視点となる。
 晩年の司馬はしばしば「この国」の審判官のようであったことを思い出す。
 この国の未来を司馬が一人で背負っているような悲壮感さえあった。
 司馬もまたそれに実直に答えようとした。
 この作品もそんな司馬の成果物としてある。

 我々日本人を司馬はこう表現している。(「15 若衆と械闘」)
 「日本人はつねに緊張している。ときに暗鬱でさえある。理由は、いつもさまざまの公意識を背負っているため、と断定していい」。
 東日本大震災のあとの被災者たちの姿そのものといえる。もちろん、司馬はその時にはもういなかったのだが。
 果たして私たちは司馬の期待どおりの「この国」を持ちえただろうか。
  
(2016/03/23 投稿)

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 昨日(2月10日)の朝日新聞朝刊に載った
 「文藝春秋」3月特別号の発売広告が
 カラー刷りだったのには
 驚いた。

  20210210_145050_convert_20210210172002.jpg

 何しろ3月号は
 恒例の芥川賞の発表号
 今回の受賞者は
 「’99年生まれ、21歳の現役大学生」で
 しかもかわいいとくれば
 写真も入れろ、カラーで刷れ、ぐらいの
 気合は入ろうというもの。
 何しろ、芥川賞史上三番目の若さというから
 すでに単行本化されて
 そちらも売上好調となれば
 「文藝春秋」だって負けてはいられない。
 そんな熱い思いを感じる
 カラー刷り広告でした。

  

 その第164回芥川賞である
 宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』は
 読んでからまた書くとして
 3月号の紙面を見ると
 やはりコロナ関連の記事が大きい。
 総力特集として
 「コロナ第三波「失敗の本質」」とある。
 その関連記事として
 ジャーナリストの後藤逸郎さんの
 「東京五輪を中止すべき「7つの理由」」
 読ませる。
 もっともこのあとで
 森会長による女性蔑視の差別発言が出るなど
 思いもしなかったでしょうが。

 実は「文藝春秋」には
 詩・短歌・俳句といった文芸ものも掲載されていて
 さすが総合誌だけのことはあると
 いつも感心している。
 3月号の短歌は
 俵万智さんが詠んでいて
 その中に面白い歌があった。

    領収書の整理をすれば令和二年「服飾「交通」まこと少なし    俵 万智

 3月号はほかにも
 「さようなら、半藤一利さん」という
 追悼特集もある。
 なんといっても半藤一利さんは
 「文藝春秋」の編集長もされた方ですので
 グラビアには「最後の原稿」まで
 掲載されている。

 とにかく読み応え十分だから
 今日の建国記念の日の祝日には
 「文藝春秋」3月号だけで
 一日過ごせるだろう。

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プレゼント 書評こぼれ話

  大学の入学で
  東京に出てきて
  初めて銀座で待ち合わせしたのは
  和光の前だったと思う。
  その後、ライオンで食事をしたと思うのだが、
  今日紹介する
  坪内祐三さんの『新・旧 銀座八丁 東と西』を読むと
  和光とライオンはほとんど
  向いあって建っていることがわかった.
  つまり、
  銀座四丁目西の和光から
  交差点を渡って
  銀座五丁目東の角のライオンで
  食事をしたのだ。
  ちっとも銀座を歩いていない。
  そんな思い出とともに
  銀座の面白さを
  再発見できる
  貴重な一冊です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  坪内さんと一緒に銀座を歩けば                   

 大阪郊外の町で生まれた者にとって、例えば大阪ミナミにあるデパートに行くのは、よそ行きのいい服を着て行くような「ハレの日」の行事だった。
 東京の銀座に対してもそんな気分で、初めて東京に出てきて銀座に行った時も、それから何十年も経った今でも銀座といえば、よそ行きの「ハレの日」の街に感じる。
 昭和33年に東京の初台に生まれ、その後世田谷赤堤で大きくなったこの本の著者坪内祐三さん(それにしてもこの人の早すぎる死は残念で仕方ない)にとって、銀座は映画の街であり、働き出してからは雑誌「東京人」の編集者として、色濃く関わってきた街だった。
 この本はそんな坪内さんが自分の経験した過去の銀座と現在の銀座を通して、「2020年の東京オリンピック前」(という言い方が2018年刊行の本では当たり前のように書かれていて、こういう書き方も記憶として残るのだろうと思う)の街と人と思い出を綴った記録である。

 「銀座八丁」とあるのは、銀座には東京寄りに一丁目があり、そこから新橋に向かって八丁目まで続く。
 大きく銀座を横断する中央通りを挟んで、山手線に近い方が西で、反対側が東である。
 銀座の地図をほとんど知らない人間にとっては、巻頭にある地図を行ったり来たりしながらの銀ブラだが、実に楽しかった。
 現在の(もしかしたこの本が出た後さらに変化しているかもしれない)銀座の街に、昔の街の建物が重なり、そんな街を懐かしい人たちが歩いていく。

 この本を読んだら、銀座の街を端から端まで歩きたくなる。
 今は亡き坪内さんと一緒に。
  
(2021/02/10 投稿)

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   きみ、人間一生かかって、そんなに本は読めるものじゃァない。

 これは民俗学者の柳田国男の言葉だと、
 作家の戸板康二さんがエッセイ「耳ぶくろ」で紹介している。
 そうだよな、そんなに読める訳ない。
 何しろ一年間に出版される点数だけでおよそ8万点。
 つまりほとんど無理なのだ。
 しかも、本棚には一度読んだ本たちが並んでいる。
 今年は本棚に並んだ本を
 せめて毎月3冊程度は読んでいくことを目標にしている。
 今日紹介する
 日本エッセイスト・クラブ編の
 『’83年版ベスト・エッセイ集 耳ぶくろ』は
 そんな一冊。

  

 このシリーズだけで29冊あって、
 毎年一冊読んでいたら
 一体いくつになってしまうことか。
 この本はまずは単行本で出て、
 その後文庫本化されている。
 この『耳ぶくろ』の場合だと
 単行本として出たのが1983年で、
 文庫化は1986年になっている。
 なので、今回読むのは3度めということになる。
 文庫本で買い揃えていた時は
 もちろん私も若かったので
 いずれ退職したあとは余生としてまたじっくり読みたいと
 思っていたものだ。
 今が余生かどうかは別にして。

 1983年といえば
 まだ20代の頃だ。
 昭和でいうと58年。
 年表をひもとくと
 パソコン・ワープロが急速に普及したり
 ロッキード事件で田中角栄元首相が有罪になったり
 NHKの朝ドラ「おしんが人気になった
 そんな年だった。
 東京ディズニーランドが開園したのも
 この年で
 私の下の娘が生まれたのも
 この年の暮れだった。

 この本に収められている61篇のエッセイの書き手たちを見ても
 井伏鱒二、開高健、野坂昭如、山口瞳、三浦朱門など
 多くの人が鬼籍に入っている。
 そりゃそうだな、
 ほとんど40年前だもの。
 読んだ当時は
 いずれここに収められたエッセイのような
 歯切れのいい、
 情緒のある文章を書きたいものだと思ったものだ。
 今回読んで思った。
 いい文章は古びない。

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 関東では
 立春の過ぎた次の日に
 観測史上最も早く
 春一番が吹きました。

    春一番武蔵野の池波あげて      水原 秋櫻子

 日差しにも春を感じさせる
 温かさが戻った気がします。

 先週の「菜園日記」のおしまいに
 ホウレンソウも春の季語と書きましたが
 昨日そのホウレンソウ
 たくさん収穫できました。

  20210207_104047_convert_20210207195655.jpg

 ホウレンソウは漢字で書くと
 菠薐草
 菠薐とは中国語でペルシャのことで
 その西アジアが原産です。

    菠薐草父情の色と思ひけり      井上 弘美

 寒さにあたると甘くなるといわれるように
 春とはいえ
 まだ朝晩が冷えているので
 ホウレンソウも甘くできました。

 そして、
 もう一つ。
 念願のロマネスコを収穫しました。

  20210207_103936_convert_20210207195533.jpg

 といっても、
 結局小さいままでした。
 それでも初めて食べることができました。
 ロマネスコ
 形は風変りですが
 カリフラワーの一種なので
 味もカリフラワーとほとんど変わりません。
 大きさは残念でしたが
 食べられただけでも
 よかったです。

 春といえば
 こちらは春キャベツ(右側)と
 春ブロッコリー(左側)。

  20210207_094736_convert_20210207195140.jpg

 春を待ちつつ大きくなってきました。
 そして、イチゴの畝には
 黒マルチをかけて
 これから暖かくして大きくします。

  20210207_094747_convert_20210207195325.jpg

 寒い冬には寒さを
 温かくなればそれを助けてあげて
 より成長を促す。
 野菜も四季とともにあります。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介する絵本は
  田島征三さんの『つかまえた』。
  この絵本を知ったきっかけは
  昨年(2020年)の秋
  NHKの「日曜美術館」という番組で
  田島征三さんが特集されていたからです。
  その中には
  この絵本の制作の様子とかもあって
  80歳になっても
  力強く絵筆をふるう田島征三さんの姿が
  印象に残りました。
  この作品には
  そんな筆のあとがくっきりと
  出ています。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  命をつかまえる                   

 収束が見えないコロナ禍で、政治にしても経済にしても閉塞感がぬぐい切れない。
 そんな中、絵本作家田島征三さんは元気だ。
 1940年生まれというから、時の総理よりもまだ年上。それでも、これだけ元気。
 もともとの画風が力強いものだが、今回のこの作品はその極地ともいえる。
 一人の少年が川の浅瀬で見つけた大きな魚を捕まえる牧歌的な話で、田島さんの少年時代の思い出が色濃く反映されているといわれます。
 牧歌的なのはそういう背景だけで、実際には魚を捕まえるという人間と魚との力のぶつかり合いが描かれています。
 そこに水や大地、あるいは風や光といった自然のありようも重なり合います。

 ようやくにして捕まえた魚を抱いて少年は大地に寝ころんで、しばしまどろみます。
 その時見た夢は魚に抱かれている自分です。
 捕まえられたのは魚だったのか、少年だったのか。
 夢から覚めた少年は、魚が死にかけていることに気づきます。あわてて水のあるところまで駆けていきます。
 魚は無事息を吹き返しますが、同時に少年の手からも逃げ出すことでもありました。
 少年はこうしてせっかく捕まえた魚に逃げられてしまうのです。

 少年は魚に逃げられましたが、命を実感したかもしれません。
 自分の腕の中で暴れる強い命、胸の中で次第に弱っていく命、そして生き返る命。
 この絵本はそんな強い命に溢れた作品です。
  
(2021/02/07 投稿)

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  先日本屋さんに行くと
  開高健の『オーパ!』の完全復刻版
  店頭に並んでいました。

  

  その横に
  先日紹介した菊池治男さんの
  『開高健は何をどう読み血肉としたか』と
  今日紹介する
  『開高健とオーパ!を歩く』が
  まるで同行するように並んでいました。
  但し、この『開高健とオーパ!を歩く』は
  最近出た増補新版でした。
  今回私が読んだのは
  2012年に出た最初の版。
  やっぱり『オーパ!』はいいなぁ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  驚くことからすべて始まる                   

 作家開高健がブラジル・アマゾンの釣り紀行したのは1977年のことだった。
 その日数65日。旅に同行した担当編集者は入社してまだ2年の若者だった。
 彼が所属していた「PLAYBOY日本版」にこの釣り紀行は連載され好評を博した。そして、単行本化され、もしかしたら開高健の芥川賞受賞作やその後の数々の名作よりもいまだに読まれているかもしれないロングセラーとなった。
 それが『オーパ!』だ。

 この作品は若い担当編集者だった菊池治男氏が当時の旅での「小説家」の姿を書き留めるとともに、あの旅から33年経ってブラジルを再訪した時の印象を重ねあわせ、『オーパ!』の感動を蘇らせてくれるものとなった。
 『オーパ!』というタイトルには「何事であれ、ブラジルでは驚ろいたり感嘆したりするとき、「オーパ!」という」という言葉が添えられている。
 旅の途中で開高はあるところでこんなことを話したという。
 「わたしたちは日本からここへ、驚きを求めてやってきました。(中略)わたしはただ驚きたい。そして、驚くことを忘れた現代人に驚くことの大切さ、驚くことからすべてが始まることを伝えたい」
 まさにこの精神が『オーパ!』に漲っているから、いつまでもあの作品は新鮮で瑞々しいのだと思う。
 菊池氏には、よくぞこの言葉を書き留めてくれたと感謝しかない。

 しかし、開高のそばにいて一番驚いていたのは菊池氏だっただろう。
 それは、あの旅から33年、そしてそれ以降も開高の姿を追い続けていることからよくわかる。
 菊池氏は驚きの正体を見つけようとしているのだろう。
  
(2021/02/06 投稿)

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  先月第164回芥川賞直木賞
  発表されました。
  芥川賞には宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』、
  直木賞には西條奈加さんの『心淋し川』が
  決まりました。
  中でも芥川賞の宇佐見りんさんは
  史上三番目の若さでの受賞でした。
  では、一番はといえば
  綿矢りささん。
  そして、二番めが今日紹介する
  金原ひとみさん。
  綿矢りささんも金原ひとみさんも
  現在もっとも乗っている作家に
  なっているといっても
  過言ではありません。
  今日紹介する金原ひとみさんの
  『テクノブレイク』も
  コロナ禍での問題作として
  文学史に残るのではないでしょうか。
  宇佐見りんさんのこれからにも
  期待しています。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  コロナに揺さぶられる恋人たちの物語                   

 十年前に、東日本大震災が起こった時、多くの作家たちは書くという行為について大きく揺さぶられました。
 書けなくなったという人もあれば、書く視点を変えざるを得なかった人もあります。
 あの時、多くの人は「絆」といい、結び合うことを良しとしました。
 その時と反対のことが、今のコロナ禍で起こっているように感じます。
 そして、そんな世界の中で作家たちも書くことの意味を再び問われているのではないでしょうか。

 そんな中、芥川賞作家金原ひとみさんの執筆活動に作家としてのある姿勢を感じます。
 彼女が描こうとしたことは「コロナ禍の中での恋人たちの物語」です。
 コロナの第一波が発生した頃『アンソーシャルディスタンス』という物語を発表(「新潮」6月号)し、さらに収まる気配が感じられない2020年暮れにこの『テクノブレイク』(「新潮」1月号)を発表しています。
 登場する人物たちも背景も違いますが、この二つの作品には大きな違いがあります。
 今回の主人公の方がコロナに対して恐怖感を強く持っているということです。
 恋人に手洗いを求め、外での飲み会を嫌悪するようになっていきます。ついには恋人も部屋には来ないなります。
 そんな彼女の唯一の楽しみは、かつて撮った恋人とのセックスのビデオを見ること。
 「私はコロナに罹っていないのに、コロナに蹂躙されている」、彼女はそう感じるようになっていきます。そして、二人の関係は破綻します。

 コロナ禍で恋人との関係が試されている。
 それは作家としての態度もまた同じです。
 そんな中での金原ひとみさんの活動に拍手を送りたい。
  
(2021/02/05 投稿)

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  今日紹介する
  久世番子さんと栗原祐司さんの
  『博物館ななめ歩き』の書評を書くのに
  「不要不急」という言葉を
  「広辞苑」で調べてみて
  「不要」と「不急」という別々な言葉で出ていることが
  わかりました。
  ちなみにこれは「広辞苑」第五版なので
  現在の版は違うかもしれません。
  コロナ禍で
  ほとんど外出をしないようになっていて
  この本で「行きたい」博物館を見つけても
  今はがまんです。
  「行きたい」と思ったのは
  「漱石山房記念館」(新宿区)
  「向田邦子文庫」(渋谷区)
  「石神井公園ふるさと文化館」(練馬区)
  まだまだあって
  書ききれない。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  しばらくがまんの「ななめ歩き」                   

 コロナ禍でよく「不要不急の外出を控える」ように言われていますが、「不要不急」という言葉をなんだかわかったようなわからないような感じがします。
 「広辞苑」で調べると「不要」が「必要でないこと」で「不急」が「急を要しないこと」と、別々の言葉が合わさってできた言葉のようです。
 でも、必要でないか急を要していないかというのは個人個人によって違うので、例えば渋谷あたりを歩いている若い人にとっては、きっと「不要不急」にあたらないのでしょう。
 それでは、博物館や美術館に行くのはどうなのか。
 人によっては、今日どうしても「漱石山房記念館」に行かないといけないということも(たまにでしょうが)あるかもしれないし、今すぐ渋谷にある「古代エジプト美術館」でエジプト文化に浸らないといけないということも(たまにでしょうが)あるかもしれません。
 もっとも地域によっては自主的に休館しているところもあるですが。

 そうゆう最中の2020年10月刊行されたこの本なので、まずはその英断(!)に拍手を送りたい。
 独特な画風の漫画家久世番子さんをフォローするのが全国6200以上の博物館を訪問しているという栗原祐司さん(単行本刊行時の肩書が京都国立博物館副館長)というのが心強い。
 なので、この本を読んでいると、「不要不急」ではなくなりそうで怖い。
 なんで、この時期にこんな面白い本を出版するのだと、変なボヤキもいいたくなる。

 もとは2009年頃から文科省の広報誌に連載されていたもので、中にはすでに閉館した博物館もあるようで、今回のコロナ禍でその数が増えないことを祈るばかりだです。
  
(2021/02/04 投稿)

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  今日は立春
  よく言われるように
  今日から暦の上では春。

    立春の米こぼれをり葛西橋      石田 波郷

  まだまだ寒い日もあるだろうし
  コロナ禍も続くだろうが
  やっぱり気持ちにポッとあかりが
  灯る感じがします。
  今日は
  大田垣晴子さんの画文集
  『徒然絵つづり百人一首』を
  紹介します。
  百人一首といえば
  落語の噺にもなっている
  崇徳院

    せをはやみ
    いはにせかるる たきがはの
    われてもすゑに
    あはむとぞおもふ

  ぐらいの知識しかありませんでした。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  母親の力は侮れない                   

 「画文」というのは、イラストとエッセイを組み合わせた手法で、この本の著者である大田垣晴子さんはその先駆者のような漫画家だ。
 なんといっても、そのイラストのほのぼの感がいい。それがあるから、文章も合わさるようなテンポで進んでいく。
 そんな大田垣さんが「百人一首」に挑戦したのが、本書。
 そのきっかけは、当時小学一年生だったお嬢さんが「かるたやりたい!!」と言い出したことで、お嬢さんがそう言い出したのは、 大田垣さんのイラストからする2017年に封切られた「名探偵コナン から紅の恋歌」からの影響のようだ。
 ここからが母親大田垣さんのエライところで、お嬢さんのために毎日数首歌本を作り出したのそうだ。
 それがこの本のネタ本になったいうから、母親の力は侮れない。

 さて、「百人一首」である。
 これは歌人藤原定家が編纂したといわれるもので、その時定家が滞在していたのが「小倉山の山荘」だったので「小倉百人一首」とも呼ばれている。
 なんて、大田垣さんの「画文」のおかげの知識だ。
 「あきのたのかりほのいほのとまをあらみわがころもではつゆにぬれつつ」という天智天皇による第一番から百番の順徳院の歌まで、大田垣さんのイラストと口語訳で、とてもわかりやすく描かれている。
 こういう素敵な歌本が出来上がる前に、お嬢さんはすっかり歌を覚えたそうだが。
  
(2021/02/03 投稿)

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  今日はいつもより一日早い
  節分

    鬼の豆たんと余つてしまひけり       片山 由美子

  豆まきの声も最近ではあまり
  聞かなくなりました。
  私も明日の朝の片づけを考えて
  豆まきというか
  そっと置くような感じで
  「鬼は外、福は内」しています。
  今日は
  ドリアン助川さんの『あん』。
  河瀨直美監督の映画「あん」は
  もう何度も観ていますが
  原作は初めてです。

  

  この映画、なんといっても
  小豆の煮てくるさまが最高にいい。
  その点では
  やはり映画の方が優位。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  映画を観た人はぜひ読んで下さい                   

 2015年に封切られた河瀨直美監督の映画「あん」の原作である。
 主人公の千太郎という青年が営んでいるどら焼き屋のあん作りを手伝う謎の老女である吉井徳江を演じたのが、この作品が最後の主演となった樹木希林さん。
 希林さんや千太郎役の永瀬正敏さんの好演だけでなく、女子中学生のワカナ役が希林さんの孫である内田伽羅さんといった話題もあり、映画の評価も高かった。
 映画は観たけれど、原作は読んでいないという人も多いかもしれないが、実は原作の評価も高く、第25回読書感想画中央コンクールの指定図書にも選ばれている。
 「読書感想画」というのは「読書によって得た感動を絵画表現する」もので、やはりこの作品の冒頭の満開の桜や月夜など、絵画としても映えるのだろう。

 原作を読むと、映画よりも余計徳江さんのハンセン病への表現が多いことがわかる。
 もちろん、一方では千太郎の再生の物語という要素もあるが(映画ではどちらかといえばこの方が強く出ている)、原作では徳江さんが生きてきた時間が濃厚に描かれているように感じた。
 徳江さんが最後に千太郎に書き残した手紙も映画でも感動を誘うシーンだが、原作ではもっと重みがあるものに映ったのは、文章表現と映像表現の違いだろうか。
 徳江さんが書き残した「この世に生まれたきた意味」とは、「この世を観るために、聞くために」そのことだけというのが、とてもシンプルだけど、心に深く刺さるものだった。
 映画を観た人なら原作を読んでもらいたいし、原作だけなら映画も観て欲しい、そんな作品だ。
  
(2021/02/02 投稿)

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 今日から二月。
 あさってには立春とはいえ
 まだまだ寒い日もあって
 昨日の日曜日
 朝畑に行くと
 一面霜柱でびっちり覆われていました。

  20210131_094018_convert_20210131141715.jpg

    霜柱伸び霜柱押し倒す       右城 暮石

 畑に置いていた小さなバケツにも
 結構厚く氷が張っていました。

  20210131_094418_convert_20210131141753.jpg

 この時期の季語に
 「春隣」という美しいものがありますが
 こういう光景を見ると
 もう少しかなと思います。

    叱られて目をつぶる猫春隣      久保田 万太郎

 この時期の畑の収穫はほとんどありませんが
 茎ブロッコリーは少しずつでも
 収穫できます。

  20210131_094654_convert_20210131141828.jpg

 収穫は手でもできます。
 ポキッと茎から折るようにして
 収穫します。

 これは成長の遅い
 ロマネスコ

  20210131_095851_convert_20210131141913.jpg

 先日見た時よりは
 少し大きくなっているようにも見えますが
 食べられるところまで
 大きくなるかな。

 こちらは
 だいぶ成長したシュンギク

  20210131_100318_convert_20210131141950.jpg

 これは春の季語で
 「歳時記」にも
 「鍋物をよく食べる冬のもののような印象を受けるが、
 本来は春の野菜」
 と、説明がついてます。

    春菊にまだ降る雪のありにけり      大峯 あきら

 この句などは
 シュンギクの成長の場面を
 よく見ています。
 奥のホウレンソウも大きくなってきました。
 ちなみにホウレンソウ
 春の季語です。

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