
今年の初めに
いくつか目標をこしらえました。
その一つに
毎月一冊アガサ・クリスティーを読もう
としたのですが
三月最後に日になんとか
今月も間に合いました。
今日は
アガサ・クリスティーの『ポアロ登場』。
短編集です。
いつもの霜月蒼さんの
『アガサ・クリスティー完全攻略』では
★★★で
読んで損なし、という評価。
でも、若々しいポアロが
なんともいい。
じゃあ、読もう。

アガサ・クリスティーの作品に欠かせない名探偵といえば、「灰色の脳細胞」を駆使するエルキュール・ポアロ。
ポアロが初登場したのは、1920年に発表された長編『スタイルズ荘の怪事件』で、それから4年後の1924年に刊行された初の短編集が本作である。
この短編集には14篇の作品が収められていて、いずれもポアロとその相棒であるヘイスティングズが登場する。
いずれも文庫本にして40ページほどの短さだから、いかにコンパクトに事件とポアロによる解決がまとめられているかわかる。
もちろん読者としてはいささか物足りなさを感じるだろうが、ポアロが登場してまだ日が浅いことを考慮すれば、ポアロがどういう人物なのかわかるための一冊といってもいい。
端的にいえば、自負心が強く、ちょっと友だちにするには躊躇いそうだ。
だから、語り部でもあるヘイスティングズがよく耐えていると思わないでもない。
いくら傍で難解な事件の謎を解くのを見られたとしても、だ。
そもそもこの二人の出会いはあまり語られていないようで、最初の長編の際にスタイルズ荘のある村の郵便局前で偶然に再会したという。
14篇の作品ではポアロの名解決だけでなく、犯人探しに失敗した事件も描かれている。(「チョコレートの箱」)
ポアロがたどりついた犯人が間違っていることを真犯人に教えてもらうという結末だが、これなどはむしろアガサ・クリスティーが「どう私の謎のかけかたは」と自慢しているような気がする。
つまり、ポアロとアガサはよく似た性格だというところだろう。
(2021/03/31 投稿)

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03/30/2021 ははのれんあい(窪 美澄):書評「家族は変化する」

今日は
窪美澄さんの新刊
『ははのれんあい』を紹介します。
この作品は
窪美澄さん初の新聞小説だったそうです。
新聞には
必ず新聞小説が載っていますが
大手の新聞だと独自の連載で
中小の新聞だと
共同配信のような連載方法をとっているようです。
窪美澄さんの小説が
新聞で読めるなんて
なんかおしゃれっぽいな。
こういう若い作家が
どんどん新聞小説を書くと
楽しくなります。
じゃあ、読もう。

「神戸新聞」他数紙で2018年7月から翌年9月にわたって連載された窪美澄さん初の新聞小説となった作品。
タイトルは『ははのれんあい』となっているが、恋愛小説というより家族小説といった方がいい。実際に家族の話を書いて欲しいという要請があったそうで、それならと窪さんが選んだのが、家族が崩れていく姿とそのあとのシングルマザーの話である。
物語の舞台は、街にある工場には外国から働きに来ている人も多くいる、ある地方の小さな街。そこで、家族で営む縫製工場の一人息子の智久と結婚した由紀子の妊娠から物語は始まる。
つまり、最初は智久と由紀子、そして生まれてきた智晴の「家族」の物語として始まる。
そんな小さな「家族」はやがて縫製業の不振で厳しい生活を強いられることになる。
由紀子は生まれたばかりの智晴を保育園に預けて、駅の売店で働き始める。夫の智久は慣れないタクシー運転手となる。
幼い智晴の突然の病気など由紀子の負担は大きいが、それでもこの「家族」はなんとかやっていく。そんな時に由紀子の二度目の妊娠。しかも、今度は双子の出産。
由紀子の負担はさらに増える。智久も手伝ってくれているが、いつの間にか夫婦の間にはゆがみが生まれていく。
そして、智久の浮気。二人は別々の道を選択する。
ここまでが第一部で、第二部は離婚後の半分ずつになった「家族」の物語となる。
「家族」とは変化するもの。ひっついたり別れたり、それは誰も同じはずなのに、何故か「家族」とはこうでないといけないという思い込みが生まれたりする。
窪さんのこの家族小説はそういう地平から遠いところにあるように感じた。
(2021/03/30 投稿)

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03/29/2021 さまざまなこと思い出す桜かな ー わたしの菜園日記

菜園のそばの鴻沼川の桜は
まだもう少し楽しめそうです。
この季節やはり写真におさめたくなります。


桜といえば
やはり松尾芭蕉のこの俳句がいい。
さまざまの事おもひ出す桜かな 松尾 芭蕉
松尾芭蕉はこんな桜の句も詠んでいます。
花の雲鐘は上野か浅草か 松尾 芭蕉
花はもちろん桜のこと。
こちらは畑の菜の花と桜の競演。

春でしか見られない風景です。

ジャガイモの成長が早くて
一週間畑に行かないと大きくなっていて
都度土寄せをしています。



まだ丸くなっていませんが
茎が随分太くなってきました。
もうしばらくかかります。


冬に刈り込んで
新しい芽が育ってきたところ。
ニラは漢字で書くと韮。
これも春の季語です。
むさし野に住みつく韮の苗育て 沢木 欣一


冬を乗り切って
これから葉も増えていきます。
その横にあるのはニンニク。
ニンニクも5月頃の収穫になります。

定年後なんで
まる六年が経ちました。
なんとも楽しい時間を過ごせたことか。
この春定年を迎える人にも
ぜひすすめたい生活スタイルです。

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絵本を読んでいて
時々思いことがあります。
絵本というだけで
大人の目に触れることが少ないのは
とても残念だということ。
今日紹介する
トーマス・ハーディング文、
ブリッタ・テッケントラップ絵、
落合恵子さん訳の
『あの湖のあの家におきたこと』という絵本は
子供というより
大人の人に読んでもらいたい一冊です。
でも、そうはいっても
なかなか大人の目に触れる機会は
少ないのが現状です。
大人って
ちょっとかわいそう。
じゃあ、読もう。

これは湖のほとりにある、一軒の小さな木の家の物語です。
それは長い時の物語でもあります。
絵本ですが、まるで長編の物語を読むようでもありますし、長い一篇の映画を観るようでもあります。
でも、これは絵本です。
ゆっくりと頁をめくる、そんな絵本です。
家はこの絵本の作者であるトーマス・ハーディングさんの曽祖父が1927年に建てたものです。曽祖父は医者で、4人の子どもたちが自然の中で暮らせるように、湖のほとりに建てたそうです。
でも、時代がよくありません。
戦争になって、ユダヤ人であった一家はこの家を去ることになります。
次に住んだのは、音楽好きの一家。
でも、彼らも戦争のせいでこの家を出ていきます。
さらにまた別の一家、さらに戦争が終わって別の家族がこの家で暮らします。
家はきっと住む人たちの、さまざまな様子や感情を見てきたでしょう。
その姿はそれぞれだったでしょうが、きっと家を愛するということでは同じだったかもしれません。
家はそこに住んだ家族のことを覚えているのでしょうか。
そこで笑ったり泣いたり怒ったりした家族のことを覚えているでしょうか。
訳者である落合恵子さんは、2020年の春浅い日々から晩春にかけてこの本とずっと一緒だったと綴っています。
コロナ禍の時、落合さんは戦争で揺さぶられた家とともにあったのです。
この絵本はそんなふうにして、時代の中で何かを考えさせる一冊です。
(2021/03/28 投稿)

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03/27/2021 春です! 英語の勉強始めます!

現役で仕事をしている時の方が
定年してからの時よりも強かったのは
不思議な気がします。
時間がありすぎると
何かしようという意欲も薄れるのかな。
人間、少しハングリーの方がいいかも。

やはり春なので
久しぶりに勉強の虫がうずうずしてきました。
本屋さんに並んだ
NHKテキストを順番に見ていきました。
学びたいのは
英語。
少しは聴けて、
少しは話せて。
でもな、一体どれだけNHKの英語講座に挫折してきたことか。
まさに死屍累々(ししるいるい)。

中学1年の時に「基礎英語」を聴いていたものの
クラブ活動のあとでは
とても無理。
以降、どれだけチャレンジしてきただろう。
あれから半世紀以上経って
この春挑戦するのが
「もっと伝わる! 即レス英会話」。

今回私が挑むのは一番下のレベル。
中学1年の「基礎英語」より少し上あたりの番組。
うえーん。


これがEテレのテレビ放送だということ。
これなら録画できるので
見落とすことはないでしょう。(← 結構前向き)
そして何より
テキスト開くと簡単そう。(← このあたりはすでに弱気)

これなら続くかな。
放送は来週3月29日の月曜から。
がんばります!

コロナ収束後の海外旅行。
さてさて、どうなることやら。
人間いくつになっても
少しはハングリーでないと。

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03/26/2021 罪の声(塩田 武士):書評「「キツネ目」の男も読んだのだろうか」

今日紹介する
塩田武士さんの『罪の声』は
評判に違わず面白かった。
なにしろこの作品は
2016年度週刊文春ミステリーベスト10で
国内部門で堂々の1位になった作品で
昨年映画化され、
それで気になって手にした作品でしたが
これが大当たり!
もうメチャクチャ面白かった。
映画の方も面白そうだし
レンタル始まったら
絶対観ようっと。
じゃあ、読もう。

2020年に映画化され話題となった作品の原作である。
2015年に発表されたミステリー小説だが、モデルとなっているのは昭和59年(1984年)から翌年にかけて日本中を震撼とさせた「グリコ・森永事件」で、菓子メーカーであったグリコの社長が誘拐されたり、子供が食べるお菓子に猛毒の青酸が混入されたりした。
犯人逮捕の寸前までいきながら、結局は未解決事件となった。
この事件の象徴ともいえるのが「キツネ目」の男だし、子供の声による脅迫テープの存在だ。
作者の塩田氏は作中で描かれる事件の「発生日時、場所、犯人グループの脅迫・挑戦状の内容」等は「極力史実通りに再現」したと書いている。
おそらく、事実の挟間に創作の仕掛けがあり、いつの間にか読者はフィクションの世界に連れ去られていくのだが、仕掛けがうまく、一体どこまでが真実でどこからか創作なのかわからなくなる。
ある日一人のどこにでもいるだろう男が偶然に手にしたテープと手帖。そのテープには昭和の未解決事件で使われた子供の脅迫音声が入っていた。しかも、それは自分だということに彼は気づき、その謎を解明しようとする。
一方、新聞社の記者は企画記事としてこの事件の解明に関わるようになる。
二つの線は犯人像に肉薄していく。
読んでいる途中からどんどんはまっていく。
やがて、事件の真相が明らかになり、何故子供が音声を録音するに至ったかを知り、愕然とした。それは犯人像以上のものだった。
一級のミステリー作品といっていい。
(2021/03/26 投稿)

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03/25/2021 みんなの朝ドラ(木俣 冬):再録書評「「朝ドラ」大好き!」

昨日現在放送中の
NHK朝ドラ「おちょやん」のモデルとなった
浪花千栄子さんを描いた小説
『大阪のお母さん』という本を紹介しましたが、
今日はその続きで
朝ドラの話を。
先日106作めとなる「ちむどんどん」という作品の
ヒロイン役の発表がありました。
えー、まだまだ先でしょうと
驚きました。
次回作は清原果耶さん主演の「おかえりモネ」で
その次が「カムカムエヴリバディ」。
「ちむどんどん」はその次。
「おちょやん」がどんなふうに終わるのかもわからないのに
忙しいことです。
今日は
木俣冬さんの『みんなの朝ドラ』を
再録書評で紹介します。
じゃあ、読もう。

月曜から土曜の朝8時から15分放送されるNHKの「朝ドラ」、正式には「連続テレビ小説」という、は1961年の第1作「娘と私」から2020年上半期放送の「おちょやん」まで103作めを数える。
今でも20%を超える高視聴率番組だが、けっして平坦な道ではなかった。
特に2000年代は20%に届かない作品が続出する。
それが変化の兆しを見せ出すのが、2010年上半期の第82作の「ゲゲゲの女房」あたり。
この本では2010年代の「朝ドラ」作品を中心にして、「朝ドラ」の魅力を探る。
本書で章立てされて論じられている作品を見ていくと、「マッサン」(2014/下)「ごちそうさん」(2013/下)「あさが来た」(2015/下)「花子とアン」(2014/上)「とと姉ちゃん」(2016/上)「べっぴんさん」(2016/下)「まれ」(2015/上)「カーネーション」(2011/下)「あまちゃん」(2013/上)である。
その他に主人公がシングルマザーだった「私の青空」(2000/上)と「朝ドラ」を語る上ではずせない第31作「おしん」(1983)が章立てに加わっている。
私が「朝ドラ」を見始めたのが第85作めの「カーネーション」。脚本は渡辺あやで、この本の中でも「朝ドラを超えた朝ドラ」と絶賛されている。
やはりいいドラマを観ると、継続視聴のきっかけになるような気がする。
「朝ドラ」の人気が高い理由はさまざまだろうし、木俣氏がいうように最近の作品ではSNSでの評判拡散の影響が大きいこともわかる。しかし、それは「朝ドラ」に限ったことではない。
いずれにしても「朝ドラ」を話し出すと尽きることはない。
(2017/06/27 投稿)

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03/24/2021 大阪のお母さん(葉山 由季):書評「「朝ドラ」のモデルはこの人」

現在放送中の
NHK朝ドラ「おちょやん」。
主演が杉咲花さんで
モデルが浪花千栄子さんということで
すごく期待していたのですが
かなりシビアな視聴率で推移しているようです。
おそらく浪花千栄子さんの生涯が
それほどに厳しく辛いものだったということかもしれません。
これから先、
ご主人の裏切りとかあるのですが
そのあたりどう表現するのでしょうか。
今日は
浪花千栄子さんの生涯を描いた小説、
葉山由季さんの『大阪のお母さん』を
紹介します。
じゃあ、読もう。

NHKの朝の時間帯の帯ドラマのことを「朝ドラ」と呼んでいるが、これはあくまでも愛称であって、正しくは「連続テレビ小説」という。
半年のサイクルで放送されていて、現在(2020年下半期)放送されている「おちょやん」で103作めとなる。
一時不人気となった時期もあったが、最近の作品は安定した人気で視聴率も高い。
それだけ影響力も高く、今回の「おちょやん」でもそうだが、モデルとなる人物がいるとその関連本が多く出版されたりする。
文庫書下ろしとなる葉山由季さんのこの小説もそうで、出版されたのが2020年12月だから、「朝ドラ」ゆえの作品であることは間違いない。
「おちょやん」のモデルは「大阪のお母さん」と呼ばれた女優の浪花千栄子さんで、副題にもあるようにその生涯を描いている。
作者の葉山さんは1955年生まれというから、浪花さんの現役の姿をきっと見知った最後あたりの世代になるだろう。
浪花千栄子さんは明治40年生まれ。本名が南口キクノというところから、晩年軟膏薬の宣伝に起用されることになったエピソードは有名。
亡くなったのは、昭和48年12月で、66歳だった。
晩年はお母さんというよりおばあさんという感じがしたものだが、まだ66歳だったのだから、現在ではまだまだこれからということになる。
本作は小説だが、取材もしっかりしている。参考文献もきちんと記載されている。
もし、「朝ドラ」のモデルにならなかったら、こうしてその生涯を再現されることもなかっただろう。
「朝ドラ」とはすごいものだ。
(2021/03/24 投稿)

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03/23/2021 災害特派員(三浦 英之):書評「もう一つの『南三陸日記』」

先日の土曜の夕方、
宮城県で大きな地震がありました。
津波注意報が発令され、
10年前の東日本大震災のことを思い出した人も
多かったのではないでしょうか。
たまたまその時
私が読んでいたのが
今日紹介する
三浦英之さんの『災害特派員』。
あの『南三陸日記』の著者によって書かれた
10年前と向き合う一冊でした。
この本の中で
三浦英之さんはこう書いています。
人を殺すのは「災害」ではない。
いつだって「忘却」なのだ。
私たちは地震のある国に住んでいることを
忘れていけない。
じゃあ、読もう。

2011年3月11日に起こった東日本大震災。その翌日には被災地に入った新聞記者は、それから程なくして宮城県南三陸町に赴任し「災害特派員」となった。
そこで彼が見聞きした被災地の様子や被災者の人たちの姿をのちに一冊の本にまとめられていく。
それが『南三陸日記』だ。書いたのは、朝日新聞の記者である三浦英之さん。
あれから10年。
被災地の人々にも10年という月日が流れたように、記者である三浦さんにも同じだけの月日が流れていった。
それだけの時間を経た今だから書けること、あの時に「描ききれなかった、もう一つの『南三陸日記』」というきっかけはあったとしても、三浦さんにとっては「個人的な取材体験を綴った「手記」」であり、あの時現地の人たちと生活を共にした「回想録」でもある。
だから、『南三陸日記』に象徴的に登場する震災直後に生まれて少女とその家族の話は本書にも登場するし、新米記者として初めて宮城県に赴任した三浦さんを励ましてくれた恩人で、津波で亡くなった消防士とのことなども描かれている。
その一方で、「災害特派員」の勤務のあと三浦さんが米国留学で学んだ「ジャーナリズム」の話など刺激的なものもある。
10年という月日は、あの直後に生まれた赤ちゃんを10歳に少女に成長させただけではない。
三浦さんとともに被災地を駆けまわり取材し続けたライバル紙の記者はガンで亡くなった。
あるいは、当時の環境とはまったく違うところにいる人もいる。
それぞれが迎えた、震災からの10年。
本書は三浦さんの「回想録」だけでなく、それぞれの人にとっての「回想録」でもある。
(2021/03/23 投稿)

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03/22/2021 ひっそりと、ダイコンの花 - わたしの菜園日記

だいぶ咲いてきているようですが
私の菜園の横を流れる鴻沼川沿いの桜並木は
まだ咲き始め。

見頃はやはり4月の最初頃でしょうか。
今日は畑で見つけた珍しい花を紹介します。
まず、こちら。

ダイコンの花です。
ダイコンの花は春の季語にもなっています。
「歳時記」には「菜の花のような明るさは感じられないが、
ひっそりとした味わいがある」と書かれている。
大根の花紫野大徳寺 高浜 虚子
それに反して、「明るい」のがこちら。

普通の菜の花以上に明るく見えます。
これは、ハクサイの花。
どちらもアブラナ科ですから
よく似ていますが、性格ちがうんでしょうね。
そして、こちらは開花目前の
つまりはまさに収穫時期の
ナバナ。

こちらもアブラナ科。

出そろったので
マルチをはがして、お目見えです。

これからは成長のつど
土寄せをしていきます。

夏野菜の畝づくりです。
去年根こぶせんちゅうでキュウリとかが
うまく栽培できなかったので
去年育てていたマリーゴールドを伐採後干して
それを粉砕したものを
元肥にまぜこみました。

どこまで効果があるかわかりませんが
マリーゴールドはコンパニオン植物として有効なので
まずはチャレンジです。
こちらが今回こしらえた畝です。


側花蕾が大きくなったブロッコリー。

最初に大きくなるのが頂花蕾で
わき芽から育つのが側花蕾です。
この品種はどうも側花蕾がたくさんできるものだったみたい。

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03/21/2021 会いたくて会いたくて(作 室井 滋/絵 長谷川 義史):書評「会えない時間が生んだ絵本」

今日は
室井滋さん作、
長谷川義史さん絵の
『会いたくて会いたくて』という絵本を
紹介します。
お二人はこれまでにも『しげちゃん』などで
共演されてきた
いわば黄金コンビです。
今日の書評の中に書いたお二人のコメントは
3月13日の朝日新聞朝刊に載った
お二人のインタビュー記事から
抜粋したものです。
書評タイトルはこの記事から
拝借しました。
記事では仲のいいお二人のツーショット写真も
ありましたよ。
じゃあ、読もう。

コロナ禍で介護ホームにいる肉親と会えなくなったという話をよく耳にします。
ガラス越しに会っている光景も目にしたりしました。
女優の室井滋さんが文を、絵本作家の長谷川義史さんが絵を描いたこの絵本は、こんな時代に生まれた絵本です。
室井さんは大人の人やお年寄りの人が手を取りたくなるような絵本をつくろうと思ったそうです。
なので、長谷川さんには「線画でちょっと大人っぽく、繊細な線で描いて欲しい」とお願いしたそうです。
長谷川さんの絵を見てきた人には、あれ? いつもと違うって感じるでしょうが、とてもいい絵になっています。
お話はボクの大好きなおばあちゃんがいるホームに行くのですが、会えない日が続くところから始まります。
絵本の中では「コロナ」という言葉は出てきません。
コロナでなくても会えない時はあります。
この絵本は、会えない時にその人のことを思いやることを教えてくれます。
とうとうボクはおばあちゃんと窓越しに会えます。会話は「糸電話」で。
ボクが初めて目にする「糸電話」。
長谷川さんは「そういうアナログなこと、空間、時間をとても大切にする生き方を教えてくれている」と話しています。
室井さんはこのつらい時代に「絵本が明日への希望につながってほしい。会えない人ともつながっているっていうふうに」と、この絵本への思いを語っていました。
(2021/03/21 投稿)

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03/20/2021 はるのごほうび(作 内田 麟太郎/絵 村上 康成):書評「おーい、雲よ。おーい、春よ。」

今日はいつもの土曜日でお休みだと
思っている人いませんか。
カレンダーをよく見ると、
赤字になっていませんか。
そう、今日は春分の日の祝日なんです。
春分の日というのは必ずこの日と決まっているわけではなく
3月20日か21日のどちらかだそうです。
そして、彼岸の中日でもあります。
彼岸といえば
やはりこの俳句。
毎年よ彼岸の入に寒いのは 正岡 子規
各地で桜の開花も始まったようだし、
今日は春の絵本を紹介しましょう。
内田麟太郎さん作、
村上康成さん絵の
『はるのごほうび』。
じゃあ、読もう。

「春はあけぼの。」
有名な清少納言の『枕草紙』の書き出しです。古典で習いました。
続く「やうやう白くなりゆく、」あたりまで覚えている人もいると思います。
一方、こちらは漢詩。
「春眠暁を覚えず」、孟浩然の作。漢文の授業で習いました。
清少納言は早起きで、孟浩然は気持ちよくてなかなか起きられなかったようです。
いずれにしても、春は気持ちのいいものです。
ブタが空に浮かんでいても、ネコが浮かんでいても、カエルもタヌキも、クマだって浮かんでいても、ちっともおかしくない。
だって、春ですもの。
内田麟太郎さん作のこの絵本には、春の気分が満載です。
なんといっても、村上康成さんの、ほんわかした絵がいい。
ページを開くだけで、春がこぼれてきそう。
早起きしようが、いつまでも起きられなくても、町に出てみると、誰でも空に浮かびそう。
でも、どうしてみんな空に浮かぶことができたのでしょう。
その答えを、こいのぼりが教えてくれました。
はるかぜをおなかいっぱい吸い込むのだとか。
「だれだって もらえる はるの ごほうびです。」
外出もままならない、コロナ禍の時代。
せめて絵本をひろげて、はるかぜをいっぱい吸い込んで、空に浮かんでみたいもの。
誰でももらえるごほうびなのですから。
(2021/03/20 投稿)

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03/19/2021 マスクは踊る(東海林 さだお):書評「ショージ君、まだまだやります」

今日は楽しく
東海林さだおさんの最新エッセイ
『マスクは踊る』を紹介します。
この本を読んで
一番驚いたのは
東海林さだおさんのお年。
83歳!
日本人男子の平均年齢81歳だから、
もうそれを超えちゃった。
それでもこれだけ元気。
思うに東海林さだおさんがお元気なのは
好奇心の塊だからでしょうね。
そうでないと
こんな面白い話や漫画はかけないでしょう。
東海林さだおさんの本を読んで
元気になりましょう。
じゃあ、読もう。

東海林さだお。愛称、ショージ君。職業漫画家。エッセイストとしても活躍、ということは副業のはしりである。
1937年東京に生まれる。ここは元号表記の方が、このエッセイ集ではいい。何しろ冒頭のエッセイの書き出しが「かくして令和の時代が始まった」のだから。
昭和12年生まれ。そして、令和3年、83歳になる。
そんなショージ君が「オール讀物」に平成31年から令和2年にかけて連載された「男の分別学」と、「週刊文春」に同時期に連載された漫画「タンマ君」から抜粋した数篇が収められているのが、本書である。
ショージ君のすごいところは「男の分別学」の連載が2020年で40年、「タンマ君」にいたっては開始が1968年というから半世紀以上描いていることになる。
おそらく「オール讀物」も「週刊文春」もその読者層の多くはせいぜい50歳代あたりだろうから、書き手のショージ君の83歳は稀有な存在だろう。
しかし、この本の中でショージ君はこう述べている。
「仕事が何よりも大好きなので、それができなくなることが一番不満ですし、人生がつまらない。」
すごいでしょ、この83歳。
さらにこんなことも。
「三つの時代を生き抜いて、仕事が生き甲斐。」
こんなこと、なかなか言えない。
そんなショージ君だけあって、まだまだ観察眼は鋭い。
安倍総理の時代に書いたエッセイの中で「衆議院予算委員会における質疑、などと、もっともらしい名前がついているが、実態は読みっこ対読みっこ、読みっこごっこというごっこの世界」と揶揄している。
つまりは菅総理はそれを踏襲しているだけ…かも。
(2021/03/19 投稿)

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これは本当に偶然なのですが
今日紹介する
中川右介さんの『アニメ大国建国紀1963-1973』を読んでいる途中に
アニメーター大塚康生さんの訃報が
15日にはいってきました。
アニメの世界に詳しくはないですが
大塚康生さんは
昭和30年代からアニメーションの制作に携わり、
「ルパン三世」シリーズや「 未来少年コナン」などの
多くの作品に関わってきた
ビッグネームです。
今日紹介する本の中にも
たくさん出てきますし、
アニメーターの世界を描いた朝ドラ「なつぞら」で
川島明さんが演じた人物が
大塚康生さんがモデルと書かれています。
89歳で大塚康生さんは亡くなりましたが
大塚康生さんの残したアニメと若いアニメーターたちが
たくさん残りました。
ご冥福をお祈りします。

「クールジャパン」というのは日本のカッコイイ魅力の指す言葉で、その代表的なものにマンガとアニメがある。
中でもテレビアニメは今ではそれ専門の衛星放送のチャンネルがあるほど活況を成している。
本書は間もなく60年を迎えるテレビアニメの歴史を、最初の国産連続テレビアニメの始まりとなった1963年1月1日に放送が始まった手塚治虫の「鉄腕アトム」から掘り起こしていく。
アニメーションは「鉄腕アトム」以前にもあった。特に東映動画が制作した「白蛇伝」など現在でも高く評価される長編作がある。
しかし、手塚治虫の「鉄腕アトム」によって、日本のアニメは一気に大国化が進む。
その初期の作品群を見ると、昭和30年代に少年期を過ごしたものにとって、懐かしさとそのほとんどを見ていることに呆れるほどだ。
ちなみに1963年に放映が始まったアニメは「鉄腕アトム」「鉄人28号」「オオカミ少年ケン」「エイトマン」と、今でも主題歌が歌える。
本書にはそこから次から次へとつくられていくアニメ制作会社やアニメーターたちの名前が続々と登場する。
あの宮崎駿がアニメ「鉄腕アトム」には製作費の低さなど弊害があったが、いずれ王国が生まれただろうと述べている。しかし、手塚がしなければその王国はもう少し後だっただろうし、もしそうだったら年に一作か二作の長編をじっくり作れたかもしれないと、アニメへの思いを吐露している。
それでも、「鉄腕アトム」に夢中になった世代にとって、あの頃のアニメは「クール」だった。
(2021/03/18 投稿)

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03/17/2021 「週刊文春」編集長の仕事術(新谷 学):再録書評「スクープ記事だけではありません」

昨日
柳澤健さんの『2016年の週刊文春』という本を
紹介しましたが
その中でスポットがあたっていたのが
2016年当時の「週刊文春」の編集長だった
新谷学さん。
その年には誰もが注目するスクープ連発だったので
編集長の新谷学さんも脚光があたりました。
そこで、出版されたのが
『「週刊文春」編集長の仕事術』。
今日は昨日の続きの気分で
新谷学さんの本を
再録書評で紹介します。
でも、ニュースのスピードがあまりに早すぎて
2017年に何があったか
ちっとも思い出せないのは
困ったものです。
じゃあ、読もう。

週刊誌の新聞広告なり吊り広告を見るのは楽しい。
広告だけで仲間内の話が盛り上がったりするくらい面白い。
特に「文春砲」とまで言われる「週刊文春」と「週刊新潮」。
発売日によって両誌の広告が並ぶと、「文春」頑張ってるな、「新潮」やるなと、つい比べてしまう。
「週刊文春」の場合、右側の大見出しを「右トップ」、左側を「左トップ」と呼んで、右は政治などの硬めの記事、左は芸能などの軟らかめの記事だという。
それがわかるだけで、あの広告も見る楽しさが倍増する。
これだけで「週刊文春」の編集長が書いた本を読んだ価値がありそうだが、滅相もない。
この本はタイトルに「仕事術」とあるとおり、仕事に向かうモチーベーションとか組織のあり方、何よりもリーダー論として優れた一冊になっている。
だから、単に「週刊文春」のスクープ記事がどのように生まれているのかといった下世話な本ではなく、純粋に良質なビジネス本として読むことをオススメする。
なかにこんな一文がある。
「自分に異論を言う人に冷たく当たるのは絶対にダメだ」。
まさか今の政治リーダーの言論を見越して書かれていた訳ではないだろうが、まさにここに書かれているそのことが国民にそっぽを向かれることになっている。
リーダーとしての権力が停滞するとどうしてもそうなる。
もちろん、これは政治だけの話ではない。大企業の不祥事の多くも同じような構造で起きているように思う。
就活中の人たちにも読んでもらいたい一冊であることを書き加えておく。
(2017/07/21 投稿)

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03/16/2021 2016年の週刊文春(柳澤 健):書評「次はどんなスクープか」

変な話だが
今一番熱心に読む新聞記事は
もしかしたら
毎週木曜日に載る
「週刊文春」と「週刊新潮」の広告記事かもしれない。
特に最近は
「週刊文春」がその威力を強めていて
目が離せられない。
先日の総務省関連の記事では
まだ何か核心の隠し玉があるのではないかと
期待しつつ見ているのだが。
今日は
そんな「週刊文春」を生み出した
二人の特異な編集長にスポットをあてた
柳澤健さんの『2016年の週刊文春』を
紹介します。
じゃあ、読もう。

現職総理大臣の長男が働く放送会社が総務省の幹部を接待していたというスクープに、世間は騒然となった。「文春砲」の炸裂に、さすが文春、文春だけがジャーナリストとSNS上で賑やかだ。
「週刊文春」がスクープを追求したのは、今に始まったことではな
しかし、その印象をすっかり変えた事件がある。
それは、本書のタイトルとも関係する「2016年」のあるスクープ記事だ。
わずか5年ばかり前のニュースだが、「2016年」だけでは思い出すことはないかもしれない。それほどに月日のスピードは速く、次から次へと「スクープ」が出現する。
「2016年」の正月早々に出たのは芸能人ベッキーのスキャンダルだった。きっとそういえば、思い出す人も多いだろうが。
しかし、本書は決してそんなスクープを追体験するものではない。
その当時の「週刊文春」の編集長だった新谷学氏の編集者としての姿と、その大先輩でかつて「週刊文春」の黄金期を作った花田紀凱氏がどんな編集者だったかを描いた、実に面白いノンフィクションになっている。
さらにいえば、単に「週刊文春」だけでなく、創業者菊池寛から100年の長きにわたって連綿と続く「文藝春秋」という「この国と密接に関わり、社会現象をいくつも作り出してきた稀有な出版社の盛衰」を見事に描ききっている。
一体次はどんな「スクープ」を提供してくれるのか、楽しみな「週刊文春」だが、この本を読めば、さらに期待が高まるだろう。
(2021/03/16 投稿)

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03/15/2021 蒲公英っていう漢字、読めますか - わたしの菜園日記

平年よりうんと早く桜の開花宣言があったようです。
一方、
我が家の盆栽桜は
一足早く七分咲きになりました。

昨年の春もそうですが
コロナ禍で
今年も花見は出来そうもないので
盆栽桜とか家でかわいい花見をするのが流行っているとか。
これはこれでいいですが、
やはり自然の中で見たいもの。
今が盛りなのか
木蓮。

声あげむばかりに揺れて白木蓮 西嶋 あさ子
この花が咲くと
やはり春の訪れを感じます。
そして、もう一つ。
これは畑で見つけたタンポポ。

顔じゆうを蒲公英にして笑うなり 橋 閒石
タンポポは漢字で書くと、蒲公英。
なかなか読めません。

イチゴの花が咲きました。

赤い実になるまで
まだしばらくお待ちください。

張った黒マルチが何カ所か盛り上がっていました。
そっとはがしてみると
ありました、ジャガイモの芽。

もう少し大きくなったら黒マルチをはずして
お披露目しましょう。

春ブロッコリーのわき芽。

大きくなってりっぱに食べられそうです。
欲張って
もう少し大きくなるまで置いておきましょう。

この日収穫したホウレンソウは
八百屋さんで見かけるように
青いテープでくくってみました。

店頭に並んでいるのは紫色のテープですが
あれは野菜が美味しく見えるようにだとか。
やっぱり青いテープでは
もうひとつかな。

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03/14/2021 解決できないことをこまぎれに考えつづけること。 - 川上弘美さんの寄稿文を読んで

作家の川上弘美さんが寄稿された
「生きている申し訳なさ」という文が掲載されていました。
「二十七年前、「神様」という短いお話を書いた。」という文章で始まる長文の
東日本大震災10年にあたっての寄稿です。
その「神様」を、東日本大震災の一週間後に書き直したものが
「神様2011」である。

川上弘美さんはもしかしたら住んでいた東京を離れるしかないかもと感じながら
これを書いたといいます。
あれから十年。(中略)
「神様2011」を書いた震災の一週間後は、
自分は原発事故の「当事者」だと思っていた。
けれどいつの間にかわたしは「当事者」ではなくなり、
「傍観者」となっていたのである。

震災があった日、東北で大きな津波被害を受けた人たちだけでなく
あの日の夜帰宅困難となって暗い街を歩き続けた人も
それからあと緊急地震速報のアラーム音に震えていた人も
あの時「当事者」だったのです。
しかし、いつの間にか「傍観者」となってしまった。
もしかしたら、そういう意識もなくなっているかもしれない。

解決できないことをこまぎれに考えつづけること。
たぶんわたしにできるのは、それだけなのだ。

* * * * * * *

東日本大震災関連の絵本の話を書こうと思っていたのですが
昨日新聞で川上弘美さんの寄稿文を読んだので
そのことを書きました。
東日本大震災から10年。
だからと言って、すべてが元に戻ったわけでも
鎮魂が終わったわけでもありません。
地震大国のこの国で生活する限り、
またいつか大きな災害がこないとも限らない。
そのいつかのために
私たちは東日本大震災のことを忘れないでいよう。
それが
生き残った私たちの使命だと思います。

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03/13/2021 想いつなげ! -『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』(佐々 涼子)を再読しました

10年という節目の年になった今年、
震災のあった3月11日だけでなく
それと前後して
テレビでも震災関連の報道が多くありました。
あの日東北の太平洋沿岸を襲った
津波の映像は
今見ても生々しく
被災者の人にとってはやはりつらかったと思います。

出版の世界でも
震災関連の本がたくさん出版されてきました。
やはりあれだけの大きな災害ですから
小説などのフィクションよりも
ノンフィクションの作品の方が
強いインパクトを与えたように思います。
今回節目の年に
どんな作品を再読しようかと考えた時に
すぐに浮かんだのが
今週ここで書いてきた
『南三陸日記』(三浦英之)『三陸海岸大津波』(吉村昭)、
そして、今日紹介する
佐々涼子さんの
『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』でした。

なんといっても
電子書籍は雑誌や漫画本で大きく躍進しています。
東日本大震災の際に
一冊の「少年ジャンプ」を大勢の子どもたちが回し読みしたという
ニュースがありました。
まだ媒体としての紙が強かったのだと思います。
佐々涼子さんの『紙つなげ!』の中にも
こんな一節があります。
大人にもこの時期、本が必要だった。

コロナ禍の時代でまた本を読む人は増えたといいます。
けれど、コロナ後の新しい世界では
また違った様相になるのではないでしょうか。

やはり本より映像の方が数段強い。
けれど、
活字の余白を埋めていくのは
人々の想いです。
つなげていかなければならないのは、
そんな人々の想いだと思います。
次の10年、
私たちはどんなふうであるでしょうか。

こちらからお読み頂けます。 再読する

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03/12/2021 映画「Fukushima 50」のこと

「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系)で
昨年3月に公開された
若松節朗監督の「Fukushima 50」が地上波初
ノーカットで放送されます。
原作は
門田隆将さんの『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』。
描かれているのは
2011年3月11日の東日本大震災の際に発生した
東京電力福島第一原子力発電所の事故と
それを最小限に食い止めようとした人たちの姿です。

渡辺謙さん。
その時の当直長伊崎さんを演じているのは
佐藤浩市さん。
その他、吉岡秀隆さん、緒形直人さん、安田成美さんなど
オールキャストで演技陣を固めています。
あの時無謀にも現地に向かった総理大臣役は
佐野史郎さん。
いい役なのかそんな役まわりなのか、どうでしょう。
私は現場のたたき上げの職員を演じた
火野正平さんがよかった。

第63回ブルーリボン賞で作品賞を受賞していて
もうすぐ発表される
日本アカデミー賞でも優秀作品賞に選ばれるなど
評価も高い一方で
つっこみ方が足りないなどの批判もあります。
私はうまく出来た作品だとは思いましたが
もっとザラザラした感じが出ればよかったのにと
感じました。
きれいに撮られ過ぎているような気がしました。
極端なことをいえば
白黒画面で見せた方がもっと緊迫した印象が
残ったのではないでしょうか。

終ったわけではありません。
今でも故郷に戻れない人たちがたくさんいます。
あるいは
事故処理だってまだまだ未処理です。
あれから10年経っても
厳しい状況は変わっていない。
そんなことを思いながら
今夜9時からの放送を見るといいかもしれません。

書評はこちらからお読み頂けます。 再読する

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03/11/2021 あの日から10年 ー 『三陸海岸大津波』(吉村 昭)を再読しました。


東北地方を中心に起こりました。
それによって発生した大津波で東北の太平洋沿岸では
多くの犠牲者がでました。
また、福島にあった原子力発電所も事故を起こします。
のちに東日本大震災と名付けられたこの地震の日、
私は東京世田谷で仕事をしていました。
首都圏の多くの人がそうであったように
帰宅難民となって
仕事場で泊まったことを覚えています。
金曜の夜でした。

おそらく多くの人が
あの日の自分を思い出すことができるのではないでしょうか。
あるいは
あの日を境にして変化した日常を
思い返すこともできるでしょう。
実際に愛する人を亡くした人たちにとって
今日は忘れることのできない日だと思います。

よく耳にします。
けれども、記憶はいつか消えていくものだと思います。
それでも、消えかかる記憶の火を
また大きな火にすることはできます。
私は東日本大震災のあったこの日、
もう何度
吉村昭さんの『三陸海岸大津波』を読み返してきたでしょう。
だからといって
細かいところまで覚えているわけではありません。
読み返すたびに
ああそうだった、こうして吉村昭さんは
警告を鳴らしてくれているのだと
思い返しています。
津波は、自然現象である。
ということは、今後も果てしなく反復されることを意味している。
と、この本の中で
吉村昭さんは書いています。
誰もがそのことを忘れないでおく。
それが生きている私たちの
責務だと思います。

そっと、静かに振り返る
今日がそんな一日でありますように。

吉村昭さんの『三陸海岸大津波』の書評はこちらから読むことができます。 再読する

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03/10/2021 映画「風の電話」のこと

第94回キネマ旬報ベストテンで
新人女優賞を受賞したのが
モトーラ世理奈さんでした。
彼女のことも
彼女は主演した映画「風の電話」のことも
全く知りませんでした。
受賞式のインタビューに答える
モトーラ世理奈さんの姿が印象に残って
映画「風の電話」を観ました。
今日は
その話です。

2020年1月に公開された
諏訪敦彦監督の作品です。
第70回ベルリン国際映画祭で国際審査員特別賞を
受賞しています。
タイトルにもなっている
「風の電話」は岩手県大槌町の
三陸海岸を見下ろす丘に実際設置されている
電話ボックスのことです。
大槌町、三陸海岸でわかるように
この電話ボックスは東日本大震災で犠牲となった人々と
心でつながる電話として
知られるようになりました。
映画は
東日本大震災で家族が犠牲となり
一人残されたモトーラ世理奈さん演じる女子高生ハルが
避難先である広島から
一人故郷の大槌を目指す
ロードムービーです。

彼女はさまざまな人と出会います。
なかでも
福島の元原発作業員だった
西島秀俊さん演じる森尾は
大槌までハルを送り届ける重要な役どころです。
やがてハルは
津波に流され土台だけになった家に
戻ってきます。
「ただいま」といっても
誰も答えてくれない家です。

たどり着きます。
もう一度、話したい
電話ボックスでのモトーラ世理奈さんの演技は
圧巻です。

明日で10年。
きっとたくさんの人が
あの日別れた人たちともう一度、話したいと
願っているでしょう。
その思いが
きっと別れた人たちとつながる、
そう信じたい。
それが、映画「風の電話」を観て思ったことです。

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03/09/2021 東日本大震災からもうすぐ10年 - 『南三陸日記』(三浦 英之)を再読しました

東日本大震災から
まもなく10年になります。
このブログでも震災のあと
数多く出版されてきた震災関連の本や絵本を
紹介してきました。
それらの記事は
「3.11の記憶」というカテゴリーにまとめています。
この木曜には
その東日本大震災から10年という節目を迎えるので
今日から日曜日まで
いま一度あの日を振り返ってみたいと思います。
* * * * * * *

三浦英之さんの『南三陸日記』のことです。
この本を読んだのは
2019年5月ですから
結構遅い時期です。
今回改めて再読して、
「文庫版のためのあとがき」を読んで
またグッときました。
「あとがき」で泣ける本って
そうそうありません。
この本の中で
三浦英之さんはこんな文章を残しています。
避難所が消え、がれきが少しずつ撤去され、
「被災地」はどんどん目に見えなくなっていく。
記憶を未来にどうつなげるかー。
被災地は今、難しい問題に直面している。

2012年の春。
震災から1年の頃です。
震災から10年を迎える今でも
この言葉は有効だし、
私たちは忘れてはいけないと思います。
記憶を未来にどうつなげるかー。
この文庫本の表紙の少女も
この春10歳になります。

じゃあ、読もう。

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03/08/2021 春キャベツを収穫しました - わたしの菜園日記(3月5日)

近所の河津桜が一輪咲いていた話を書いたのを
覚えていますか。
あれから2週間経って
満開となりました。

人はみななにかにはげみ初桜 深見 けん二
まさにこの句のように
コロナ禍でも励まされる程
見事に咲いています。


春キャベツを収穫しました。
秋どりキャベツとちがって
柔らかく甘いのが特徴。

断面はごらんのように
秋どりキャベツより少し緩めにまいています。
春キャベツは収穫の時期が難しいといわれています。
というのも、
とう立ちしやすい時期なので
球の内部でとう立ちが進むと
球が割れてしまうこともあるそうです。
これを裂球といいます。
桜の開花も早そうだし、
春キャベツの収穫は早い方がいいかも。

春ブロッコリーも収穫しました。
それにナバナも採れはじめました。

この時期の野菜は
寒さにあたってきたので
とても甘いです。

タマネギ。

まだまだ膨らみというところまではいきません。
その横にあるのが
ホウレンソウ。
これはそろそろ収穫できます。

まだこれから。

タマネギにしてもイチゴにしても
収穫まであと2ヶ月は
かかりそう。

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もうすぐ東日本大震災から10年になります。
あの日亡くなった多くの人たちのことを思うと
誰もが今でもふっと悲しくなるのではないでしょうか。
ましてや
父であったり母であったり兄弟、祖父母といった身内の方々
親友や同僚、世話になった人、
そして夫や妻、愛する子どもともなれば
悲しみは消えることはないと思います。
人が亡くなるのは
さまざまです。
そんな悲しみの中にいる人に
ぜひ読んでもらいたいのが
今日の絵本、
『悲しみのゴリラ』です。
落合恵子さんが翻訳されている
海外の絵本です。
じゃあ、読もう。

愛する人を亡くした悲しみから、人はどのように立ち直っていくのだろう。
この本は絵本ですが、そんな深い問いを描いた一冊です。
だから、絵本だからといって子どもだけのものではなく、今も悲しみの中にいる大人の人にも読んでもらいたい作品です。
絵本はお葬式の場面から始まります。
亡くなったのは、まだ若いママ。パパと男の子が残されます。
ママが丹精込めた庭で、一人ぼっちでいる男の子に、一頭の大きなゴリラが近づいてきます。
男の子はゴリラに「ぼくのママ、しんだんだよ」と話しかけます。ゴリラは「そうだね、しってるよ」と返します。
こうして、男の子とゴリラの対話が始まります。
ゴリラは男の子の心のなかにいるのでしょう。
なので、ゴリラとの対話は男の子自身との向き合いです。
男の子はこうしてママを亡くした悲しみと戦っていたのでしょう。
ある時、男の子は部屋で泣いているパパを見つけます。
「ママにあいたい。」という男の子と抱き合うパパ。
そんな二人をゴリラは大きな体で包み込んであげるのです。
この時を境にして、男の子とパパはママの喪失の悲しみを共有しあうようになります。
男の子にとっての「悲しみのゴリラ」はやがていなくなります。
ママを亡くした悲しみは決して去らないでしょうが、パパと悲しみを共有することで男の子は前を向くことができました。
夕焼けの中を去っていくゴリラはもう「悲しみのゴリラ」ではないのかもしれません。
(2021/03/07 投稿)

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03/06/2021 旅する練習(乗代 雄介):書評「私だったら、この作品に芥川賞を差し上げます」

第164回芥川賞候補作は
選評を読む限りにおいては
かなり充実していたようです。
受賞作となった
宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』も
良かったけれど
受賞には至らなかったですが
今日紹介する
乗代(のりしろ)雄介さんの
『旅する練習』は
私には受賞作以上に読み応えのある作品でした。
ロードムービーというのは
映画の一ジャンルとしてありますが
これはまさにそれ。
風景が見える作品です。
一読をオススメします。
絶対、推し!
じゃあ、読もう。

第164回芥川賞候補作。
作品の好き嫌いは結局読んだ人の好みによるものだろう。例えば、第164回芥川賞候補作となったこの中編小説についていえば、受賞作であった、そしてその作品も面白く読んだ宇佐見りんさんの『推し。燃ゆ』よりも、私は好きだな。
こちらが受賞作でも不思議はないし、同時受賞ということもあったのではないか。
そう思える作品だった。
2020年春、コロナ禍の中、小学校を卒業したばかりのサッカー少女亜美(アビと読む。この名前の由来もいい挿話になっている)とその叔父である小説家とのサッカーの聖地鹿島を訪ねるロードノベルだ。
なんといっても、主人公の少女の造形がいい。彼女の個性をさらに際どらせるように、旅の途中で問題を抱える若い女性を登場させたり、鹿島をサッカー王国に作ったジーコの逸話など、物語として読みどころが多い。
もちろん、芥川賞の「選評」で山田詠美委員が「たくらみが過ぎてあざとく」見えることもあるだろうし、既視感のような感覚もないではない。
それでも、この作品にはこれらのことを凌駕する強さを感じる。
吉田修一委員は「非常に面白かった」とし、「コロナに対して極端に過敏でもなく、かといって露悪的に鈍感でもない、いわゆる平均的な人々がこの時期をどのように生きたかが、この小説にはあるように思う」と絶賛している。
この物語のラストは、ここには書けないけれど、結構衝撃的だったが、旅の終わり方としてそれもアリかなと思った。
誰か、この作品映画にしないかな。
(2021/03/06 投稿)

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03/05/2021 約束の川(星野 道夫):書評「星野道夫というおいしい水」

今日は二十四節気のひとつ、
啓蟄。
冬眠していた虫などが穴から出る頃。
啓蟄の蚯蚓の紅のすきとほる 山口 青邨
今日は
星野道夫さんのエッセイアンソロジー
『約束の川』を紹介しますが、
星野道夫さんが冬眠しているクマの穴に
入る場面を描いた作品「雪、たくさんの言葉」も
収められています。
雪の下でじっと春を待つその姿は、
地上で動く姿よりもっと強い生命のたたずまいがあった。
実際に体験したものにしか書けない
文章だと思います。
こうして、
星野道夫さんの作品が
新しい本として刊行されたことを
うれしく思います。
じゃあ、読もう。

本書は、百科事典の平凡社が提案する随筆シリーズ「STANDARD BOOKS」の第四期の最初の巻となった一冊です。
2015年12月に書かれた「刊行に際して」という文章に、「科学と文学、双方を横断する知性を持つ科学者・作家の作品を集め」とあります。
第一期の寺田寅彦から始まって、第三期まで既に22人の著名人の作品が刊行されています。
そんな一冊に、写真家星野道夫さんの作品が収められるなんて、うれしいというしかありません。
「刊行に際して」はまだ続きます。
「境界を越えてどこでも行き来するには、自由でやわらかい、風とおしのよい心と「教養」が必要です」。
星野道夫さんがアラスカに魅了され、定住の地と決意するまでに至った経緯は、本書にも収録されている「シシュマレフ村」という随筆にあるように、偶然手にした一冊の写真集でした。学生だった星野さんは、まさに「自由でやわらかい」心でその村に手紙を送ります。
もし、星野さんが知り合いもまして言葉も十分でないことに尻込みをしていたら、アラスカとの出会いはなかったと思います。
そして、写真家であった星野さんがこれほどまでに上品で美しい文章を書けたというのも、今となっては奇跡のようなことかもしれません。
単にカメラ越しに物を視るのではなく、星野さんは心にそれらを写し取っていたのだろうと思います。
それが、言葉になるのは、まるで谷川からの流れ来る自然の水のようではなかったでしょうか。
私たちは星野道夫というおいしい水を飲めているのです。
(2021/03/05 投稿)

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今日は
金智英さんの
『隣の国のことばですもの - 茨木のり子と韓国』という
詩人茨木のり子論を
紹介します。
タイトルになっている
「隣の国のことばですもの」は
ハングルの勉強を始めた茨木のり子が
その動機を聞かれて困ってしまい、
考えついたのが
この「隣の国のことばですもの」だったという。
茨木のり子という詩人の生涯をたどると
愛する夫の死をはさんで
ハングルを学んでいく姿もまた
茨木のり子という女性らしい
生き方だと思っていたので
この本は興味深く読みました。
じゃあ、読もう。

本書は韓国の若い女性によって書かれた、詩人茨木のり子論である。
著者の金さんが立教大学大学院文学研究科に提出した博士論文「茨木のり子における韓国」をベースに書かれたとあるし、本書の副題にも「茨木のり子と韓国」とある。
確かに茨木のり子と韓国のことが核にはなっているが、アプローチとしては茨木が戦後同人誌「櫂」の主要なメンバーとして詩人として立つところから順に進めていくことで、茨木のり子の詩や言葉に対する考え方などの理解がとてもわかりやすい。
詩人論であることは間違いないが、その平明な語り口は茨木のり子の入門書としても立派に通用する。
茨木のり子がハングルを学び始めたのは50歳の時。夫と死別したあとのことだ。
もしかしたら、夫を亡くした哀しみを癒すためにハングルをしゃにむに勉強したと自身語ったこともある。
しかし、著者は茨木の韓国への関心は以前からあって、「それまで必ずしも意識的な対象ではなかった韓国を、夫の死から得た自由により、自分の意思で具現化した」とみている。
「夫の死から得た自由」こそ、哀しみから解き放たれる思いだったと思う。
茨木はそのようにしてハングルを学び、やがて韓国の詩人たちの作品を翻訳するまでとなる。
本書では茨木の翻訳がどのようなものであったかという点も明らかにしている。
それは「日本語の語感」を大切にした詩人ならではのものだったということ。
そして最後には現代の韓国において、茨木のり子の詩がどのように読まれているかも説いていて、目配りが利いた論になっている。
(2021/03/04 投稿)

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今日は雛祭。
季語としては「雛祭」ですが、
傍題として
桃の節供、雛人形、雛あられ、白酒と
もうたくさんあります。
俳句もいっぱいあって
どれを載せようか
迷ってしまいます。
白酒の紐の如くにつがれけり 高浜 虚子
と、高浜虚子の句を選びました。
今日は俳句の本。
岸本葉子さんと岸本尚毅さんの
『あるある!お悩み相談室「名句の学び方」』。
あなたなら
どんな句を詠みますか。
じゃあ、読もう。

「NHK俳句」はもちろんNHKの番組だが、そのテキストもあって番組で紹介された投稿句や紹介には至らないが佳作の作品などが掲載されている。
選者の記事もあるが、それ以外にも俳句関連の記事もあって、番組もそうだが毎月発売されるテキストを楽しみにしている俳句愛好者も多いのではないだろうか。
そのテキストに2019年5月号から一年連載されていた「名句で解決! 「あるある」お悩み相談室」を核にして単行本化されたのが、本書である。
「NHK俳句」で番組の司会を務め、自身も句作を初めて12年というエッセイストの岸本葉子さんが、「教官」と慕う俳人の岸本尚毅さんに、俳句を作る際に誰もが悩む疑問を読者に代わって相談するという形式で進む。
どんな悩みかといえば、「季重なり」のことや「字余り」の良し悪し、「説明的」といわれるその意味や「文語文法」に関する用法のことなど、俳句を始めるといつかはぶつかる「お悩み」のオンパレードである。
「お悩み」の中身を知るだけで、不安なのは自分だけでないという安心が得られるかもしれない。
特にいいのは、俳人高浜虚子の推敲例がたくさんあって、あの巨人でさえ、一文字一文字に悩んでいたことがわかって参考にしやすい。
この「お悩み相談」以外に、本書では岸本尚毅さんが「学びたい」と選んだ名句集七選が載っていて、句集のことはあまり目にする機会がなかったから新鮮だった。
(2021/03/03 投稿)

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03/02/2021 和田誠シネマ画集Ⅱ(和田 誠):書評「映画愛が満載の画集」

今日は
2017年に出た
和田誠さんの
『和田誠シネマ画集Ⅱ』を
紹介します。
いつ見ても
和田誠さんのイラストは素敵で
毎晩眠る前にこの画集を開いたら
夢は映画ばかりになりそう。
残念なのは
和田誠さんがもういないので
新しい映画のイラストが見れないこと。
きっと新しく出てきた映画人たちも
悔しがっているだろうな、
和田誠さんに描いてもらえなくて。
じゃあ、読もう。

この本には文字がない。
正確には、和田誠さんのイラストに、その題材となった映画の制作年度とタイトルがあるだけで、この本の正編である2014年版では和田さんのエッセイがはいっていたが、この「Ⅱ」ではそういった文章が全くない。
ひたすら和田さんの映画(「シネマ」ですね)イラストが、映画制作年度順に並んでいるだけ。
最初が1920年の「東への道」、最後が2001年の「真夜中まで」(これは和田さんが監督した作品)。
読み応え、というか、見応え十分の一冊だ。
和田さんのシネマイラストは俳優の似顔絵が基本になっているが、映画の一場面をそのまま描いたものもあれば、映画の雰囲気をもっとも感じさせる構成になっていたり、映画好きな和田さんならではの作品といえる。
よく見ると、その描き方は決して一通りでなく、様々な工夫が施されていることがわかる。
単色で描いたもの、色の組み合わせを考えたもの、太い線で描かれたもの、細い線で描いたもの。
さらにいえば、好きな俳優とか苦手な俳優といった、和田さんの個性まで出ている。
表紙に採用されている「帰らざる河」のマリリン・モンローなんかは、和田さん大好きだったにちがいない。
できれば、これらの作品の初出は載せて欲しかった。
映画雑誌「キネマ旬報」の表紙を飾った作品が何点かあるのはわかったが。
(2021/03/02 投稿)

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