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プレゼント 書評こぼれ話

  今年初めに
  毎月一冊はアガサ・クリスティーの作品を読もうと
  目標を立てて
  三月は最後の日での紹介となったので
  もっと早めに読まないとと
  反省したのですが
  今月も
  やっぱり最後の日にすべりこみとなりました。
  来月こそ
  もっと余裕をもって読みますね。
  今回紹介するのは
  『謎のクィン氏』という短編集。
  霜月蒼さんの
  『アガサ・クリスティー完全攻略』では
  ★★★★★
  高評価。
  ただ私はちょっと苦手でした。
  それとこの作品を読み解くには
  演劇とか音楽とか
  広い知識が必要かも。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  Mysteriousな短編集                   

 アガサ・クリスティーが1930年に発表した、短編集として三作目となる作品。
 不思議なタイトルがついているが、原題の「The Mysterious Mr.Quin」の方が作品の雰囲気を伝えているように思える。
 ここには12篇の短篇が収められていて、殺人事件を解く作品だけでなく、恋愛ものと呼んでいい作品もあって、単にミステリーというジャンルでくくられない。
 どの作品にも、「黒髪で、陰気で、微笑んでいながら、悲しげ」に見えるハーリ・クィン氏が登場するが、彼は「探偵」ではないし、この短編集の主人公とも言い難い。
 どちらかといえば、社交界の通じた69歳の紳士サタースウェイト氏が主人公といえる。
 彼は「人生という名のドラマの熱心な研究者」で、「人間たちがくりひろげる悲喜劇に、なみはずれた興味」を抱いている。
 だから、ここで描かれる12の事件は、サタースウェイト氏が自ら呼び寄せたものともいえる。

 さらに、クィン氏もまたサタースウェイト氏が呼びだした不可思議な存在といえる。
 クィン氏は自ら謎を解かない。彼は「印象というものに重き」をおき、それをサタースウェイト氏に伝えるだけだ。
 サタースウェイト氏も次第にクィン氏が現れたら、何か事件性があることに気がついてくるのだが、クィン氏が何者なのかはわかっていない。
 いや、サタースウェイト氏も次第にクィン氏がこの世に存在しないものであることに気がついてくる。
 短篇を読み進むうちに、読者もそのことに気がつくだろうが、ではクィン氏は何者なのか、わからない。
 なんともMysteriousな短編集だ。
  
(2021/04/30 投稿)

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  今日は昭和の日
  そして、今年もコロナ禍での
  大型連休が始まりました。
  行楽地に行くのもなかなかできないという人も
  多いでしょうが、
  この機会だから子供たちと本でも
  読んでみるのもいいのでは。
  先週の4月23日から
  こどもの読書週間が始まっています。(~5月12日)

    2021kodomo4C800_convert_20210427172702.jpg

  今年の標語は

     いっしょに よもう、いっぱい よもう

  ポスターのイラストは
  荒井良二さん。
  そこで、
  今日は
  長田弘さん作
  荒井良二さん絵の
  『空の絵本』を紹介します。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  最近空を見上げたこと、ありますか                   

 最近空を見上げたこと、ありますか。
 ひと頃「定年後」という言葉がとても気になって、実際自身がその「定年後」になってみると、空をよく見上げていることに気がつきました。
 仕事をしている時は、通勤時の満員電車の人の肩とか空を隠すようなビル群とか地下街やビルの中ばかりで、空はそこにあったはずなのに、見上げることは少なかった。
 そんな生活から解放されて、あ、今日は空がきれいとか雲が出てきたなとか雨近いなとか、空の下で息をしていることを実感します。

 詩人の長田弘さんが空のことについて書いた文は、「あっ 雨」から始まります。
 雨が次第に強くなってきて、空の色が、それは世界の色でもあります、青から灰色に変わっていきます。
 風も強くなり、雷鳴がとどろきます。
 と、そこで長田さんは「運命/みたいに たたきつけ」と、「運命」という固い言葉で綴ります。
 やがて、雨がやみ、空は明るさを取り戻していきます。
 だんだん日が暮れていき、夜になります。
 空は星でいっぱいになります。
 まるで私たちの人生そのもののような、空の姿です。

 荒井良二さんの絵がとてもよくて、絵本ですから音はないのですが、絵を見ていくとどんどん音楽が流れてくるようです。
 きっと音楽好きな人なら、あの曲が聴こえてくるようというでしょうが。
 ページを閉じたら、そっと空を見上げて下さい。
 どんな空ですか。
  
(2021/04/29 投稿)

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  この月曜日に
  アカデミー賞の発表がありました。
  第93回となる今回のアカデミー賞は
  中国人の女性監督のクロエ・ジャオさんが撮った
  「ノマドランド」が受賞して
  話題になっています。
  一方、日本の映画界では
  昨年コロナで亡くなった志村けんさんが主役を演じるはずであった
  山田洋次監督の「キネマの神様」が
  完成したというニュースがありました。
  原作は原田マハさんですが
  どうも原作とはかなり違うようなので
  今日は
  原作『キネマの神様』を
  再録書評で紹介します。
  今回改めて
  再読もしたのですが
  2013年に読んだ本でしたから
  結構忘れていました。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  涙を流すことは、ちっとも恥ずかしいことではない                   

 涙を流すことは、ちっとも恥ずかしいことではない。
 むしろ、諸々の思いを洗い流す浄化作用があるのではないか。
 ただ本を読んで涙を流すのは人の目がいささか気になるが、映画だと暗い席で思いっきり泣いても平気だ。映画館は泣く人のために暗くなっているのではないか。あるいは長いエンドロールは泣く人のためにいつまでも続いているのではないか。
 ところが、この小説に感涙してしまった。
 映画館のような暗闇でもなく、長いエンドロールもないのに、泣けてしょうがなかった。
 でも、いい涙だった。
 涙を流したあとは仕合せな気分だった。そう、まるで虹のような。

 大企業で新しいシネコンのプロジェクトで活躍していた歩は謂れのない誹謗をうけて会社を辞めることになる。40歳、独身。しかも、彼女の父親はギャンブル狂いの上に心臓に疾患さえもっている。
 彼女が退職した日は発作を起こして病院のベッドにいるという始末。
 父親の唯一の楽しみが映画を観ること。そんな父親に感化されたのか、歩も映画を観る目はしっかりしている。
 そんな彼女に老舗映画雑誌「映友」から誘いがきたのはいいが、この会社どうやら赤字続きらしい。
 起死回生で立ち上げた映画ブログのブロガーに採用されたのが、なんと歩の父親。80歳近くになる父親にはインターネットとは何かというところから説明が必要で、ところがそんな父親が書いた映画評が評判になっていく。

 キネマの神様。映画館にいる神様。
 歩の父親郷直(ハンドルネームはゴウ)は「キネマの神様」の存在を信じているのだが、物語は神様の奇跡のような展開を見せる。
 ゴウがブログに初めて書いた「フィールド・オブ・ドリーム」の映画評の中に「本作は野球賛歌の映画である以上に、家族愛の物語」という一節があるが、それを真似るならこの物語は「映画賛歌の小説である以上に、家族愛の物語」だといえる。
 気がつけば、それぞれの家族がさりげなくつながっている。まるで、生まれたばかりの子どもを囲んで喜び合う家族のように。

 涙が流れるのは、こういう家族愛にほだされるからかもしれない。
 でも、こういう家族っていいと、素直に思っている自分がいる。
 それで、泣いたって、どうして恥ずかしいことがあるだろうか。
  
(2013/12/03 投稿)

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  日曜日に
  『水の絵本』という絵本を
  紹介しましたが、
  その書評を書く際に
  茨木のり子さんの「水の星」という詩を
  引用しました。
  本棚からその詩が載っている
  詩集『倚りかからず』を出してきたので
  久しぶりに
  その詩集を読みました。
  もう何度読んできたでしょう。
  このブログでも
  何度めかの登場です。
  でも、
  コロナ禍で読むのは
  少し意味が違うかもしれません。
  そんなことを思いながら
  再読しました。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  今この詩集を読む意味                   

 「現代詩の長女」と称されることもある詩人茨木のり子さん(1926年~2006年)の代表作ともいえる詩集。
 1999年に茨木さんの8番めの詩集として刊行され、2007年に3篇の詩と高瀬省三さんの装画16点を入れて文庫本として出た。詩集としては15万部を超えるベストセラーになった。
 1999年の出た際に、茨木さんは「あとがき」にこんな文章を綴っている。
 「<今、詩を書くというのは、どういうことか?>と、みずからに問い続けざるを得ない歳月だった」と。

 <今、詩を書くというのは、どういうことか?>は、同時に<今、詩を読むといのは、どういうことか?>につながっていく。
 この詩集が出て、20数年の時が経ち、私たちは新型コロナウイルスという感染症と戦っている。
 最初の発症から1年経っても、まだこの病気を封じ込めないでいるこの時代になすべきことはなんだろう。
 この詩集の表題詩でもある「倚りかからず」で、茨木のり子さんは「もはや/いかなる権威にも倚りかかりたくはない」と書き、「じぶんの耳目/じぶんの二本足のみで立っていて/なに不都合のことやある」としたためた。
 コロナの時代に、私たちは自分の二本の足で立てているのだろうか。
 そもそも詩を読むことでもたらされるさまざまな感情を忘れていないだろうか。

 すぐれた詩は、時代がどんな表情をしていても有効だ。
 ふと立ち止まって、詩集を開くのも、いいではないか。
  
(2021/04/27 投稿)

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 新緑が目にうれしい季節になりました。

  20210424_131407_convert_20210424203113.jpg

 ただし、
 「新緑」は夏の季語。
 もう少し先ですが、
 今年は花々や木々はどんどん早く成長しているように思えます。

    摩天楼より新緑がパセリほど       鷹羽 狩行

 畑では
 ジャガイモのメークインに花が咲きました。

  20210424_132648_convert_20210424203204.jpg

 「馬鈴薯(じゃがいも)の花」も
 実は夏の季語。

    じやがいもの花の三角四角かな      波多野 爽波

 ジャガイモの花を見て
 何かの花に似ていると思いません。
 そう、ナスの花。
 ジャガイモはナス科の野菜ですから
 花の形も似ているのでしょうね。

 そのナストマトの苗を
 4月24日(土曜日)植え付けました。
 その畝は
 溝施肥でしました。

  20210424_134158_convert_20210424203240.jpg

 溝施肥というのは畝に溝を掘って
 そこに元肥を入れて
 また埋め直して畝に仕上げます。
 そこに苗を植えます。
 長い期間栽培できる野菜に効果的といわれています。
 植えたのは
 第二のエリアのジャガイモの手前の畝。

  20210424_141451_convert_20210424203322.jpg

 今回のナス(右側)は武蔵という品種、
 トマト(左側)はミニトマトで人気のアイコです。

 今週には菜園の苗も入荷してくるので
 いよいよ夏野菜本番です。

 イチゴ
 畑に行くつど収穫しています。

  20210424_161948_convert_20210424203350.jpg

 というのも
 アリとかの虫にすぐ食べられてしまうから。
 せっかく赤くなっても
 食べられていると
 悲しくなります。

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  今日から
  東京・大阪・兵庫・京都で
  三度めとなる緊急事態宣言
  始まりました。
  せっかく気候のいい季節になりながら
  新型コロナウイルスとの戦いに
  自粛をしなければならないのは
  残念ですが、
  ワクチンの接種が終わるまで
  きっと何度もこういうことが続くのだと思います。
  せめて
  本の中だけでも
  季節を味わいたい。
  そこで
  今日は
  長田弘さん文、
  荒井良二さん絵の
  『水の絵本』を
  紹介します。
  ちょっとは気分が変わるかもしれませんよ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  いのちの豊穣を抱えながら                   

 茨木のり子さんに「水の星」という詩があります。(詩集『倚りかからず』収載)
 その詩の一節に「いのちの豊穣を抱えながら/どこかさびしげな 水の星」とありますが、まさにその「いのちの豊穣」に呼応するように、この絵本で文章、それはまさに詩といってもいいですが、を綴った長田弘はこう書いています。
 「ははのように いのちを つくり/ちのように からだを めぐり/たましいを ぬぐってくれる」と。
 それは、水のことです。
 茨木のり子さんが「水一滴もこぼさずに廻る」と驚いたこの星は、水にあふれた星なのです。

 この絵本でまず驚くのは、荒井良二さんの絵だと思います。
 表紙の一面の黄緑色。普通水を絵で描けと言われたら、水色を使うのに、荒井さんはそうではない。
 黄緑色であっても、ああこれは水なのだと誰もが実感できる。
 長田さんの文にこうあります。
 「どんな いろお してないのに/どんな いろにでも なれるもの」。
 そういえば、水は決して水色でもない。
 透明であるけれども、いろんな色を持っている。
 そこにも、豊穣を感じます。

 宇宙に浮かぶ地球がこの絵本にも描かれています。
 茨木のり子さんが見た「水の星」は、ちょうどこの荒井さんが描いた星のようであったにちがいない。
 長田さんが思った水も、またそうであったにちがいない。
 色んなことを考えてしまう、そんな絵本です。
  
(2021/04/25 投稿)

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  昨日がミュージカル映画でしたが
  今日は
  日本が誇る時代劇
  子供の頃はチャンバラ映画って
  言ってました。
  夜店なんかで
  おもちゃの刀を買ってもらって
  それを振り回して遊んでいました。
  さすがに最近そんな子供は
  見かけませんが。
  今日紹介するのは
  春日太一さんの
  『時代劇ベスト100+50』。
  こういう本があると
  時代劇もうんと楽しめます。

  じゃあ、読もう。  

  

sai.wingpen  昔はチャンバラ映画っていいました                   

 念のためにまず書いておくと、この文庫本は2014年に出た新書版の『時代劇ベスト100』を加筆修正したものだが、その時のタイトルから「+50」増えているから、読み応え、鑑賞ガイドの量が増したと思っていい。
 著者も「文庫版あとがき」で、「時間のかかった分、ようやく満足のいくラインナップを組むことができた」と自信をのぞかせている。

 それにしても著者の春日太一さんの時代劇愛は半端ない。
 「時代劇・映画史研究家」を名乗っているとしても、ここで紹介されている時代劇は映画にとどまらずかつてのテレビ時代劇まで網羅されている。
 春日さんは「新書版はじめに」(この文庫版でもこれが載っている)で、「地上波から時代劇はほとんど消えた一方」、CSなどの放送媒体で観られるようになった作品も多いとあるが、確かに「時代劇専門チャンネル」があるくらいだから、結構時代劇が好きな人も変わらずにいるのだろう。

 もちろん時代劇も作品だから、すべて面白い、感動するという訳ではない。
 そういう時に、この本のようなガイド本があれば助かる。
 制作年、監督、出演者、そして(ここが肝心)春日さんの丁寧な解説。
 その解説はあらすじというより、見どころに焦点をあてて書かれている。

 これだけの作品数がありながら、やはりあの作品がないというぼやくは出てしまうのは仕方ないにしても、せめて大友啓史監督の「るろうに剣心」シリーズはいれて欲しかった。
  
(2021/04/24 投稿)

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  今日の書評にも書きましたが
  最近ミュージカル映画にはまっています。
  そして、ようやく
  「ウエスト・サイド物語」や「王様と私」、
  さらにはオードリー・ヘップバーン
  「パリの恋人」を観たところです。
  そこで見つけたのは
  今日紹介する
  萩尾瞳さんたちが執筆している
  『プロが選んだ はじめてのミュージカル映画』。
  この本でオススメの作品が
  50本ありますから
  まだまだ楽しめそうです。
  と、つい
  踊り出しそうになるのは
  ミュージカル映画中毒?

  じゃあ、歌おう。

  

sai.wingpen  お楽しみはこれからだ!                   

 最近ミュージカル映画にはまっている。
 人生の日々を重ねて、ふと若い頃を振り返ると、十代後半は間違いなく「映画青年」であったと思える時期があるのだが、その頃ミュージカル映画はほとんど見向きもしなかった。
 唯一観たのは「サウンド・オブ・ミュージック」ぐらいで、あの名作「ウエスト・サイド物語」すら観ていない。
 何しろ、ドラマの途中で突然歌い出したり踊り出したりするのはおかしいくらいに思っていたのだから。
 ところが、人生後半戦に入ってたまたま観たミュージカル映画、まさに名作「バンド・ワゴン」だったが、がとても面白く、観ていて心躍るという気分になった。
 もっとミュージカル映画が観たい。
 そこで見つけたのが、この本だった。

 「まえがき」で映画評論家の萩尾瞳さんはこう書き始めている。
 「ミュージカル映画ほど魅力きらめくジャンルはない。だって、そうでしょう? ドラマの魅力に音楽の魅力、ダンスの魅力が加わって、魅力が三倍どころか、三乗になるのだもの」って。もう文章が跳ねている感じ。
 そして、萩尾さんはじめ何人かのミュージカル映画のプロが50本のミュージカル映画の名作を解説してくれているのだから、ミュージカル映画大好きな人も、これからミュージカル映画を観ようとという人にも欠かせない一冊だ。

 ただ2008年刊行の本だから、最近の「ラ・ラ・ランド」とか「グレイテスト・ショーマン」といった名作は出てこない。
 自分で書き足す以外にない。
 まさに、お楽しみはこれからだ!
  
(2021/04/23 投稿)

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  佐野洋子さんといえば
  『100万回生きたねこ』で知られる
  絵本作家として有名ですが、
  私はエッセイストとしての
  佐野洋子さんが好きです。
  2010年に亡くなったのに
  こうしてまた新しい本が出たので
  うれしくなります。
  題して
  『佐野洋子 とっておき作品集』。
  まさに佐野洋子さん自身が
  「100万回生きた」人になるかもしれません。
  いやいや
  読者そのものが
  「100万回生きた」読者なのです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  佐野洋子さんの「埋蔵金」                   

 佐野洋子さんは幸せな作家だ。
 亡くなったのが2010年秋だからもう10年以上前のことになるのだが、こうして新しい本が編集されて出版されるのだから。
 それは書き手である佐野洋子さん以上に、佐野さんのファンである読者が幸せなのだろう。
 この本を担当した編集者が書いているように、まさに「埋蔵金」を見つけた気分だ。

 この本には新たに「発見された」佐野さんの単行本未収録の作品が収められている。
 童話、ショート・ストーリー、エッセイ、お芝居の脚本、元のご主人谷川俊太郎さんのことなど、それは幅広い。
 しかも、初出がわからないものも多い。
 編集者の弁によれば、「雑誌の切り抜きや生原稿から選んだ」とあるが、「埋蔵金」を探す探検隊の気分だったかもしれない。

 佐野さんの文章は、なんといってもエッセイがいい。
 この本に収録されている「ぞーっとする」というエッセイで、エッセイを書き始めた頃のことが綴られている
 そこには「初めてエッセイをたのまれた時は、大人になったような気がした」とある。
 絵本作家として「ひらがな」を書いていた佐野さんが感じた思いだ。
 佐野さんのエッセイのいいところは、ちらっと顔を出すそんな大人の部分の良さかもしれない。

 もしかしたらまだまだ佐野さんの「埋蔵金」は出てくるかもしれない。
 佐野さんなら「もういいじゃない」というのか、それとも「ふふふ」と笑うだけなのか。
  
(2021/04/22 投稿)

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  NHKの大河ドラマ「青天を衝け」
  毎週楽しく見ています。
  渋沢栄一のドラマですが
  草彅剛さん演じる
  徳川慶喜に惹きつけられます。
  そこで、本棚から
  今日紹介する
  司馬遼太郎さんの『最後の将軍』を
  引っ張りだして読みました。
  随分以前に読んだ作品なので
  ほとんど忘れていましたが
  今回大河ドラマを見ているので
  面白く読みました。
  渋沢栄一ですか?
  ちゃんと出てきますよ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  大河ドラマのもう一人の主人公                   

 もしその人物が全く別の時代に生まれていたら、その様相はまるで違うものになるものだろうか。それとも、やはりその人の生涯のありようは変わらないのだろうか。
 1966年(昭和41年)「別冊文藝春秋」に三回に分けて連載となった司馬遼太郎の長編小説(といっても司馬の作品では一冊の文庫本に収まるのだから短い部類だが)は、徳川幕府最後の将軍となった、第15代将軍徳川慶喜を描いた作品だ。
 その冒頭、司馬がこう書いた。
 「人の生涯は、ときに小説に似ている。主題がある。」
 では、慶喜の主題は何か。司馬は「世の期待をうけつづけてその前半生を生きた人物は類がまれ」で、それが慶喜の主題だという。

 慶喜という人物は実に不思議な男だ。
 司馬が作品の後半にはいるあたりで「慶喜は孤独」と書いた。
 「古来、これほど有能で、これほど多才で、これほど孤独な将軍もいなかったであろう。」
 慶喜は有能であったがゆえに、将軍になればどのような運命になるか見えていたのであろう。
 だから、徳川宗家の当主は継いだが、将軍になることを固辞し続けた。
 それでも、その職を受けざるを得なかった彼は、どんな夢を持ったのであろう。

 明治維新後、慶喜が静岡に隠棲した時、彼はまだ数え33歳に過ぎなかった。
 77歳で生涯を閉じるまでの長い晩年をどんな思いで過ごしたのか。
 そんな慶喜を綴る司馬の筆にどことなく慈しみを感じないでもない。
  
(2021/04/21 投稿)

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  今日は
  田辺聖子さんの短編小説
  『ジョゼと虎と魚たち』を
  紹介します。
  犬童一心監督の映画を観て
  原作を読もうと思ったのですが
  驚いたことに
  図書館では何人もの人が
  予約順番を待っているではないですか。
  文庫本は1987年に出たものですから
  その本が
  順番待ちということに
  びっくりしました。
  さらに昨年アニメにもなっているではないですか。
  読んだあとも、
  その人気の源がどこなのか
  わからないでいます。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  田辺聖子さん、教えてください                   

 不思議でならないのです。
 この奇妙なタイトルの短篇小説、文庫本にしてわずか20ページ余りの作品で、しかも初出が1984年ともう30年以上も前のものにもかかわらず、今でも若い人たちから熱い支持を得ているのですから。
 最初に映画化されたのが2004年。監督が犬童一心さん、脚本が渡辺あやさん。
 主人公のジョゼを池脇千鶴さんが演じ、彼女の恋人の恒夫を妻夫木聡さんが演じています。そして、この短編は2020年に劇場アニメにもなって上映されています。
 一体、この作品の何が人々を惹きつけるのでしょうか。

 主人公のジョゼは子供の頃病気になって足が動かない、25歳の女性。
 彼女の使う関西弁が心地いい。
 彼女の世話をするのが「管理人」と彼女から呼ばれる恒夫。
 ジョゼの本名はもちろんあるが、サガンの小説によく出てくる名前が気にいってジョゼと自分で呼ぶ。
 ジョゼと恒夫の出会いは偶然だったが、恒夫はいつしかジョゼに思いを持つようになっている。
 なんといっても、二人の最初の交わりの場面がいい。
 「アタイ、好きや。あんたも、あんたのすることも好きや」
 高飛車でワガママだったジョゼの心の声を聴いた瞬間だ。

 きっと男性の読者だけでなく、女性の読者もジョゼのことを離せなくなるセリフのような気がする。
 タイトルの「ジョゼ」はそういうことで主人公の名前だが、残りの「虎」と「魚」は何なのか、本文を読むしかない。
 でも、どうしてこんなに人を惹きつけるのでしょうね、田辺聖子さん。
  
(2021/04/20 投稿)

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 つつじが満開です。

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 今年はゆっくりと愛でる間もなく
 藤の花も咲き始めました。

  20210416_115639_convert_20210418132336.jpg

    藤棚や水に暮色のいちはやく      押野 裕

 紫の花といえば
 こちらは畑にある紫エンドウの花です。

  20210416_104405_convert_20210418132006.jpg

 実はこの紫エンドウ
 「ツタンカーメンエンドウ」とも呼ばれています。
 というのも
 古代エジプトのツタンカーメン王の墓から出土した
 豆の子孫といわれています。
 莢が紫色をしているのが特徴です。
 畑の紫エンドウ
 紫の莢が少しつきはじめました。

  20210418_104219_convert_20210418132230.jpg

 この紫エンドウを育てているエリアは
 こんなふうに四つに畝があります。

  20210416_104820_convert_20210418132145.jpg

 手前の畝にはタマネギ
 こちらも少しは膨らんできました。

  20210416_104612_convert_20210418132040.jpg

 その次が
 夏野菜の準備の畝。
 その次にジャガイモを植えて
 一番奥に紫エンドウを育てています。

 昨日(4月18日)、
 もうひとつのエリアの一番畝に
 エダマメの種を蒔きました。

  20210418_110619_convert_20210418132424.jpg

 こちらのエリアも四つの畝があって
 手前から一番畝を呼んでいます。

  20210418_114017_convert_20210418132552.jpg

 手前に防虫ネットをかぶっているのが
 蒔いたばかりのエダマメ
 その横でイチゴニンニクを育てています。

 二番畝と三番畝は
 夏野菜の準備畝で
 三番畝の真ん中にはサンチェを育てています。
 一番奥で
 サトイモショウガを育てています。

 そして、昨日
 最初のイチゴを収穫しました。

  20210418_121243_convert_20210418132722.jpg

 イチゴは実をつけてからも難しくて
 収穫までに
 アリに食べられたり鳥に狙われたり
 口にできるのは限られてきます。
 さて、今年はどれくらい
 食べられるでしょうか。

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  今日紹介する
  『アパートのひとたち』という絵本を描いたのは
  エイナット・ツァルファティさんというイスラエルの絵本作家で、
  この絵本はイスラエルで刊行されたものです。
  訳は青山南さん。
  書評の中で
  アルフレッド・ヒッチコック監督の「裏窓」という映画のことを
  少し書きましたが
  この映画は何度も観ています。

  

  主演がジェームズ・スチュアート
  その恋人役をグレース・ケリーが演じています。
  のちにモナコ公妃になる彼女ですが
  まさに一番輝いていた頃の作品かもしれません。
  なんといっても
  設定がいいので
  サスペンスとして大いに盛り上がります。
  絵本のあとは
  この映画も観ると楽しめます。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  こんなアパートに住んでみたい                   

 アルフレッド・ヒッチコック監督作品で1954年に作られた「裏窓」という面白いサスペンス映画がありました。
 事故で足を骨折して動けないカメラマンが退屈しのぎに裏窓から見えるアポートの人たちの生活をのぞき見していて、殺人事件らしきものを偶然見てしまうという話です。
 その映画に出てくるアパートの住人たちの生活ぶりが面白い。
 妻を殺す男もいれば、楽しく仲間たちと歌を歌っている男もいる。
 グラマラスな女性には男が近づき、暑くて眠れないと布団を外に出して寝ようとする夫婦もいたりする。
 表のドアを閉めてしまえば決してわからない住民たちの生活が垣間見れる面白さ。
 この絵本にも同じものがあります。

 女の子の住んでいるアパートは7階建て。
 各階に一軒ずつ住んでいるのですが、何故かドアがちょっとずつ違うのです。
 1階のドアにはかぎがいっぱい。
 なので、女の子はそこに住んでいるのは、きっとどろぼうの家族と想像します。
 ドアを開くと(もちろん女の子の想像です)黒い覆面をしたどろぼうの一家がくつろいでいます。
 女の子の想像は順番に上の階へと続いていきます。
 明かりの消えた真っ暗なドアの向こうには、きっと吸血鬼が住んでいるのだとか、酢漬けの魚のにおいがするドアの中には人魚と暮らす海賊が、しかも水中にいるのだとか、女の子の空想は広がります。
 それで、7階の自分の家はとっても普通。

 そんな空想が広がる楽しい絵本ですが、このアパートを裏窓からのぞけたらきっと面白いでしょうね。
  
(2021/04/18 投稿)

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  第164回芥川賞の候補作はレベルが高く、
  選考委員の松浦寿輝さんも
  「今回は優れた候補作が並んだと思う」と
  評価している。
  受賞作は
  宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』だったが
  候補作5作のうち
  今日紹介する
  木崎みつ子さんの
  『コンジュジ』で
  4作読んだことになる。
  こんなに候補作を読んだのは
  私も初めてでした。
  私にとっての一番の推しは
  乗代雄介さんの『旅する練習』でしたが。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  痛ましいところからの視点                   

 第164回芥川賞候補作。
 実の父親からの性的虐待を受けた少女を描いた、著者初めての中編小説となったこの作品で第44回すばる文学賞を受賞し、その後芥川賞の候補となるも惜しくも受賞には至らなかった。
 それでも、題材が悲痛で、芥川賞の選考委員の一人吉田修一氏も「とにかく内容がつらい」と記している。
 一方で、すばる文学賞を受賞した際の、こちらの選考委員である川上未映子氏は「子どもの、女性の、人間の、あるサバイブを描いた傑作」とし、そのラストは「詩も散文も含め言葉が描くことのできる、最良の場面のひとつ」と大絶賛している。

 タイトルである「コンジュジ」はポルトガル語で「配偶者」という意味だが、まずこのタイトルが作者の中には一つの灯りのようにあったようだが、結末は決してそうなっていない。
 それもまた書くという行為の、いい意味での産物だろう。
 主人公の少女せれなは母の家出、父の自殺未遂、そして違う国籍の新しい母とつらい日々を送っている。彼女の唯一の救いが伝説のロックスターへの想いだった。
 彼の伝記を読みながら、せれなは彼の空想の恋人となっていく。
 そんな彼女に父親の性的虐待が始まっていく。
 そして、空想の恋人であったロックスターへの幻想も破れ、せれなは行き場所を失っていく。

 この作品では架空のロックスターの伝記が巧みに使われている。
 芥川賞選考委員の山田詠美氏はそれを「ステレオタイプ」としていたし、確かに以前大ヒットしたロック映画を観ているような既視感があったが、あまりにも巧みで実際に存在したと思いながら読んでいたことを書いておきたい。
  
(2021/04/17 投稿)

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  今日は
  木村元彦さんの
  『13坪の本屋の奇跡』という本を
  紹介します。
  副題は
  「「闘い、そしてつながる」隆祥館書店の70年」と
  なっているように
  大阪中央区にある本屋さん隆祥館書店の物語です。
  写真で見ると
  街のどこかで見かける小さな本屋さんです。
  しかし、この小さな本屋さんが
  多くの出版関係者や本好きの人たちの
  注目を浴びているというから
  まさに「奇跡」。
  こんな本屋さんいいな。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  こんな本屋さんいいな                   

 本を読むきっかけはさまざまだ。
 大阪にあるわずか13坪の本屋の姿を描いたこの本を読むきっかけは、2021年3月27日の朝日新聞土曜日の別刷り「be」の「フロントランナー」で取り上げられていた記事を読んだからだ。
 隆祥館書店店主二村知子さん。61歳。
 記事の見出しに「心を渡し、支える最強の本屋」とある。
 二村さんは元シンクロナイズドスイミングの日本代表選手。泣き虫であったという彼女はその当時の井村雅代コーチに厳しい教えを受ける。
 やがて、父の経営する街の小さな本屋の店主になる。
 なんといっても、父である二村善明さんの本屋としての心意気がいい。
 「本を読むことで地域の人たちのリテラシーが高まる、本を読んでもらいたい」というのが創業以来の志だという。
 知子さんもその志をしっかり受け継いでいる。

 この本では町の書店が抱える経営上の問題点であるランク配本(これによって小さな書店には話題本が入ってこないこともある)、見計らい配本(取次から一方的に送られてくるとか)、同日入帳問題といった、善明さんや知子さんが取り組んできたことも記されているが、何よりも知子さんたちが本屋さんに来るお客さんに本だけでなく作者などとの集いを開く姿勢など興味をひく。
 「なにかお探しですか」、知子さんがかける一声が本を読むきっかけになることもある。

 本書ではすでに300回を超えたという作者との集いから、井村雅代さんや鎌田實さんなど4名の方の回の講演会の様子も収録されている。
  
(2021/04/16 投稿)

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  今日は
  高野慎三さんの
  『神保町「ガロ編集室」界隈』という本を
  紹介します。
  表紙の絵をみて
  林静一さんだとわかった人は
  おそらく「ガロ」という名前だけで
  胸ふるえるんじゃないでしょうか。
  林静一さんといえば
  「赤色エレジー」の作者。
  その漫画を歌にしたのが
  あがた森魚さん。
  書評に「COM」のことを書きましたが
  私は実はその「COM」派。
  「ガロ」に掲載されていた漫画は
  ちょっと苦手でした。
  それでも、つげ義春さんの漫画文庫なんか
  買ったりしてましたが。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  「ガロ」から生まれた漫画がいっぱい                   

 漫画雑誌「ガロ」は不思議な雑誌だ。
 「少年マガジン」や「少年ジャンプ」のように百万部のセールスをしたわけでもないのに、そのブランドは今でも当時のことがこうして文庫本となるくらいだ。
 「ガロ」が創刊されたのは昭和39年(1964年)の9月。
 今や伝説の編集者といえる長井勝一が白土三平の「カムイ伝」の連載を主たる目的で作られた。そもそも「ガロ」という誌名も白土の作品に登場する忍者に由来するらしい。
 この本は1966年に「ガロ」を発行していた青林堂に入社し、「ガロ」の編集に携わって庁舎が、当時の社会情勢や「ガロ」の名前を不動のものにしていく漫画家たちの姿を点景のように綴ったものだ。

 「ガロ」の漫画家たち。なんといっても、白土三平。そして水木しげる。
 そして、つげ義春、池上遼一(この二人は水木のアシスタントもしていた)、佐々木マキ、滝田ゆう、林静一と、名前を連ねるだけで、「ガロ」だと感じさせる。
 そのことを著者の高野慎三は本書でこう書いている。
 「『ガロ』の周辺は、“世間の目を気にしない”ということにつきる。ありていに言えば、余計なプライドが働かなかったのだとも言える」。
 その典型が、つげ義春だったのではないだろうか。

 「漫画の神様」手塚治虫は「ガロ」から遅れること2年半、「COM」を創刊するが、もちろんそれは白土の「カムイ伝」を意識した上だろう。
 このまるで性格の違う二つの雑誌は昭和40年代のマンガ界を牽引したことは間違いない。
  
(2021/04/15 投稿)

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  今日は
  漫画原作者梶原一騎さんの評伝
  小島一志さんの『純情 梶原一騎正伝』を
  紹介します。
  この本を読んでいる間に
  かつて「キックの鬼」と呼ばれた
  沢村忠さんが3月26日に亡くなったという
  訃報がありました。
  享年78
  沢村忠さんといえば、
  真空飛び膝蹴りで少年たちの心を
  鷲掴みにしたキックボクサー。
  「キックの鬼」は漫画のタイトルで
  その原作を書いたのが
  梶原一騎さんでした。
  なんか因縁めいたものを感じました。

  沢村忠さんのご冥福をお祈りします

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  「パンドラの箱」を開けてみれば                   

 漫画原作者梶原一騎が亡くなったのが1987年だからすでに30年以上経つ。
 梶原の名前を知らなくても彼が残した作品は今でもよく知られている。
 「巨人の星」「あしたのジョー」「愛と誠」「夕焼け番長」「タイガーマスク」「空手バカ一代」とその数は膨大である。
 1960年終わりから70年代にかけて梶原が原作を書いた漫画を目にしない時はなかったのではないだろうか。
 しかし、そんな華々しい活躍のあと晩年にはさまざまなスキャンダルや事件が起こる。
 そして、50年という短い生涯を病で終えるわけだが、彼がどのような人物であれ、彼が残した作品のきらめきは消えることがない。

 梶原の後半生に起こったさまざまな事件だけでなく、実は彼の生年月日もあまり詳しくわかっていないなど、梶原の人生には謎が多い。
 「正伝」とは「正しく伝えること」の意味だが、作家ですでに『大山倍達正伝』などの作品がある小島一志氏は「事実」を丹念に拾い集めることで、梶原の謎に迫っていく。
 その過程で明らかになっていく妻篤子の薬物依存、篤子と実母との確執(それは梶原の死後も続く)、兄弟との絆、そして金、酒、女、名誉。
 信頼と裏切り、懐柔と暴力、光と影、真実と虚偽。
 もしかしたら、本書を読んだ後も、梶原の実態はまだ遠いかもしれない。

 梶原一騎の生涯はまるで「パンドラの箱」に似ている。
 最後に残ったものは「希望」ではなく、「純情」だったということなのか。
  
(2021/04/14 投稿)

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  新型コロナウイルスの影響で
  最近は図書館に行っても
  書架を歩き回ることがなくなりました。
  本を返却して
  また新しい本を借りて帰る、
  そんな繰り返しです。
  コロナ禍以前は
  たくさんの人が
  新聞を読んだり本を読んだりしていましたが
  そんな姿も
  最近は少なくなりました。
  今日は
  前川恒雄さんの
  『未来の図書館のために』という本を
  紹介しますが
  今のような図書館の姿を見たら
  前川恒雄さんもさびしがるような気がします。

  じゃあ、読もう。

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  sai.wingpen  一図書館人の思い出                   

 東京都日野市の市立図書館の初代館長で、その後滋賀県立図書館長を務め、公共図書館の役割確立に長年関わってきた前川恒雄さんが亡くなってもう1年になります。(2020年4月10日、89歳で逝去)
 この1年は新型コロナウイルスの世界中の蔓延で図書館にとっても厳しい年だったと思います。
 地域によっては休館を余儀なくされたところもありますし、前川さんが図書館の役割として第一に掲げた本の貸出もままならない時期もありました。
 館内での閲覧時間も制限されたり、おはなし会等のイベントも軒並み中止となりました。
 近年図書館は高齢者ばかりという批判もありましたが、コロナ禍でその利用も減っています。
 利用者が少ない、ガランとなった図書館に立つと、無性に寂しい。
 図書館では私語を慎むように言われますが、それでも利用者がいることで書架の間あいだから人の賑わいを感じます。
 元のそんな図書館に早く戻って欲しいと心から願います。

 この本は前川恒雄さんが三人の友人たちにすすめられて語ったものを文章にまとめた「一図書館人の思い出」という自伝を核にして出来ています。
 自伝ですが、七尾市立図書館の司書だった前川さんが図書館協会で働くところから書かれています。1960年、前川さんが29歳の時です。
 それからの日々を時間とともに晩年までが綴られています。
 図書館を利用させてもらっているそのことの幸福があるのは、前川さんのように図書館を愛した図書館人がいたからだと、感謝しかありません。
  
(2021/04/13 投稿)

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 桜はもう葉桜になってしまいましたが
 それに替わって
 春の花々が咲き始めました。
 つつじの花もきれい。

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 街路樹として植えられている花水木
 かわいい花が満開になってきました。

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    一つづつ花の夜明けの花みづき      加藤 楸邨

 タンポポの花もわたになっています。

  20210403_090224_convert_20210404070713.jpg

 わたは漢字で書くと
 書けないし、読めない漢字です。

    たんぽぽのぽぽと絮毛のたちにけり     加藤 楸邨

 たまたま今日は加藤楸邨の句が並びました。

 この日(4月10日)、
 サトイモの種イモを植えつけました。

  20210410_111147_convert_20210410142139.jpg

 「歳時記」には
 「芋植う、里芋植う」という季語が載っていて
 その解説に「里芋などは、三、四月ごろ植付けをする」と
 あります。
 今年は種イモを2つ植えました。
 サトイモの隣には
 ショウガを植え付けました。
 溝施肥にして
 そこに種ショウガを4つ植え付けました。

  20210411_115751_convert_20210411134003.jpg

 植えたところがどのあたりかわかるように
 目印のヒモをつけておきます。

  20210411_120514_convert_20210411134121.jpg

 こちらは
 順調に育っているジャガイモです。

  20210410_112122_convert_20210410142533.jpg

 イチゴの実がかなりついてきたので
 傷まないように
 不織布を敷いて
 鳥に食べられないように網で防御しました。

  20210410_111240_convert_20210410142237.jpg

 先週蒔いた
 サンチュがもう芽を出しました。

  20210410_111504_convert_20210410142435.jpg

 暖かくなって
 適度に雨もあったりして
 発芽にはよかったのでしょう。

 天気も良かったので
 多くの人が土づくりに菜園にやってきていました。
 そんな人たちと交わす会話も
 楽しい菜園生活です。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介する
  谷川俊太郎さん文、
  和田誠さん絵の
  『ともだち』はもう何回か読んだことのある
  絵本です。
  2017年10月8日にも
  ブログに紹介しています。
  なので今回は再読書評
  書評も新しいものです。
  いい絵本は
  ちっとも古びない。
  谷川俊太郎さんの文も
  和田誠さんの絵も
  ちっとも古びない。
  今回の書評の結びは
  なんだか和田誠さんへの恋文みたいに
  なっちゃいましたが。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  ともだちって何だろう                   

 この絵本は2002年11月に出版されています。
 てっきり新学期が始まる頃に作られたとばかり思っていました。
 それでもやっぱりこの絵本は、入学式や新学期のある春にぴったりだと思います。
 そんな子供たちにそっと読んであげたい一冊です。

 文を書いたのは詩人の谷川俊太郎さん。
 なので、詩を読むように読むのがいい。
 最初に「ともだちって」とあります。
 谷川さんの文を読む前に、少し自分で考えてみましょう。
 「ともだちって」どんな人のことをいうのかな。
 谷川さんが書いたなかに「いっしょにかえりたくなるひと。」とあります。
 あなたも。そうですか。
 谷川さんの文を読んだら、もう一度「ともだちって」何だろうと考えてみるといい。
 その次に出てくるのは「ともだちなら」。次が「ひとりでは」、そして「どんなきもちかな」と続きます。
 この「どんなきもちかな」は、こんな時ともだちはどんな気持ちになっているか、考える問いです。
 「けんか」というのもあります。ともだちだから、いつも仲良しとは限らない。時にはけんかもします。
 「ともだちはともだち」では、「ことばがつうじなくてもともだちはともだち」とあります。
 このあたりから、絵本の世界はぐんと広がってきます。
 最後の「あったことがなくても」で綴られる文は、いろんなことを考えさせてくれます。
 だって、あったことのない世界で生きている人たちのことを考えるのですから。

 和田誠さんの絵がすばらしい。
 話もしたこともないし、もうなくなってしまいましたが、和田誠さんはわたしにとって片思いの「ともだち」みたいな人でした。
  
(2021/04/11 投稿)

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  第164回芥川賞の詮衡はかなり高いレベルで
  選考委員の選評も読み応えがありました。
  中でも
  川上弘美さんの選評には
  文学のもっている意義などを考えさせられるものでした。
  抜粋します。

   小説家たちは、「今この時」のことを書く。
   一見「今この時」のこととは思えなくとも、
   どの小説にも必ず「今この時」の照り映えが示されているのです。

  そう書いた川上弘美さんが一番に推したのが
  今日紹介する
  砂川文次さんの『小隊』です。
  戦争小説でもあるこの作品に
  「今この時」を感じる読者はきっと多いのではないでしょうか。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  「今この時」の小説                   

 第164回芥川賞候補作。
 この回の芥川賞を授賞したのは宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』だったが、その他の候補作も極めてレベルの高い作品が多かった。
 元自衛官の砂川文次さんのこの中編も評価が高かった。
 特に川上弘美選考委員は「一番に推そうと思い、選考の場に臨」んだという。
 それは「突然の理不尽がふりかかった時、人はどのように苦しみ怒り耐え放心しそれでも生きつづけるかを示すために」、この小説が川上さんを揺さぶったからだ。

 小説は、北海道にロシア軍が上陸し、日本が第二次大戦後初の「地上戦」を経験することになった様を、自衛隊員である安達の目を通して描かれる「戦争小説」だ。
 元自衛官とはいえ砂川さんも「戦争」を経験したわけではない。だから、この作品はもっぱら砂川さんの作った「戦争」である。
 ひと昔前であれば、筒井康隆さんが書いたかもしれない世界だが、ここには筒井さんのような毒も笑いもない。あるのは、けだるいような日常から「戦争」という極限の世界に振られるさまだ。
 川上さんは、この作品には「コロナ禍」という言葉もその影も出てこないが、極めて「今この時」を感じる作品だと書いている。

 確かに私たちはある日突然コロナ禍に巻き込まれた。その姿はこの作品に登場する自衛官によく似ている。
 とすれば、この作品が「今この時」のものだということがよくわかる。
  
(2021/04/10 投稿)

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  昨年(2020年)秋公開された
  河瀨直美監督の
  映画「朝が来る」の配信が始まったので
  さっそく観ました。

  

  第94回キネマ旬報ベストテンでは
  日本映画部門の第3位
  中学生で子供を出産するという難しい役を演じた
  蒔田彩珠さんが助演女優首を受賞しています。
  その他、昨年のいろんな映画賞で
  高い評価を得ています。
  人物へのアプローチはアップを多用し、
  風景はとてもナチュラルで
  光や風、海や山、咲く花散る花が
  登場人物の揺れる様を描いていました。
  最後はやや性急な終わり方でしたが
  そのあたりがやはり難しかったのだと思います。
  今日は
  その原作である辻村深月さんの
  『朝が来る』を再録書評
  紹介します。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  第1章のおわりはゾクッとします                   

 直木賞作家辻村深月さんが2014年1月から翌15年3月まで「別冊文藝春秋」に連載した社会派ミステリー。 
 
 四つの章に分かれた、その最初の章がなんといっても不気味な感触だ。
 住みたい街にランキングされる武蔵小杉のタワーマンションに住む佐都子のもとにかかってくる無言電話。夫と幼稚園児の息子朝斗との平穏な暮らしに、それは小さな棘のようにんって佐都子を悩ましている。
 そんな時朝斗が幼稚園で友達を突き落としたとされる事故が起こる。
 朝斗は否定し、佐都子も夫もそんな息子を信じようとする。やがて、事故は朝斗のいうとおり友達の嘘が判明する。
 そんな中、ついに無言電話の主が正体をあらわす。それは朝斗の実の母親ひかりを名乗る女性で、朝斗が佐都子たちの実の子でないことをバラすと脅迫してきた。
 そして、佐都子と夫は実の母親だという女性と会うことになる。
 朝斗は特別養子縁組で佐都子たちの子供になったのは間違いなく、一度だけ佐都子たちは実の母親に会ったこともある。しかし、今佐都子たちの目の前に現れた女性はひかりとは別人のようであった。
 ―あなたは一体、誰ですか。
 しかも、彼女は佐都子たちの前から姿を消したあと、行方が知れなくなっていた。
 佐都子たちの前に現れた女性は誰なのか。

 二章以降、佐都子たちがどのようにして朝斗とめぐりあい、実の母親であるひかりがどのようにして朝斗を生み、手離し、そして流浪していく様が描かれていく。
 主人公は佐都子のようでもあるが、やはりひかりという女性があまりにも切ない。幼さはあまりに残酷だ。
  
(2018/06/07 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  最近訃報記事が続いています。
  その間新しい本を読んでいない訳ではなく
  今日は桜木紫乃さんの新刊
  『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』を
  紹介します。
  書評にも書きましたが
  おかしなタイトルですが
  読み終わったあとには
  きっとこのタイトルに納得されると思います。
  タイトルの付け方って
  結構難しいですが
  桜木紫乃さんのこれまでの作品を見ると
  とてもタイトルの付け方が上手いと
  思っています。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  おとなのファンタジー                   

 小説巧者の桜木紫乃さんにしては随分そっけないヘタなタイトルをつけたものだと、読む前には思ったが、読んだ後は、この作品にぴったりのタイトルだと納得した。
 なので、タイトルだけでこの作品を読まないのは損だと最初に言っておく。
 さらにいえば、これって天使の話じゃないか。
 そう、例えばウィル・スミスが主演した「素晴らしきかな、人生」という映画(こちらもタイトルで随分損をしていたが)のような感じかな。
 もっともお話は全然違うけれど。

 主人公は北国のキャバレー「パラダイス」で働く二十歳の青年章介。
 夢も希望もなく、その日をただ生きているような日々に、博打打だった父の遺骨が母から持ち込まれる。だが、それをどうするあてさえない。
 章介の働くキャバレーにやってきた三人のタレント。
 自分のことを「師匠」と呼びなさいという世界的有名マジシャン「チャーリー片西」、シャンソン界の大御所という触れ込みの「ブルーボーイ」の「ソコ・シャネル」、今世紀最大級の踊り子といいつつ実はストリッパーの「フラワーひとみ」。
 彼らの世話だけでなく、章介の暮らす倉庫のような「寮」で公演期間をともに生活するようになる。
 底辺に生きながらもポジティブに生きる彼らにいつしか章介も影響を受けていく。

 章介が次第に変わっていく姿に読者も静かに感動している。
 桜木紫乃さんのこの長編小説はそんな素敵なファンタジーだ。
  
(2021/04/08 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  装丁家の平野甲賀さんが亡くなったことを
  しばらく知らずにいました。
  調べると先月の3月22日に亡くなられていました。
  平野甲賀さんの名前は知らなくても
  晶文社のこの犀のロゴは見たことはある人も多いと思います。

  20210404_115653_convert_20210404130113.jpg

  あるいは、
  独特の「描き文字」。
  多くの訃報記事に出ていた沢木耕太郎さんの『深夜特急』の表紙は
  以下のようなもの。

  

  きっとこの「描き文字」で書かれた
  表紙はたくさん見ていると思います。
  あまりにも独特なので
  この「描き文字」だけは
  平野甲賀さんのものだとわかります。
  今日はその追悼で
  平野甲賀さんの『〘装丁〙術 好きな本のかたち』を
  紹介します。

  平野甲賀さん
  たくさんの装丁、ありがとうございました。

  ご冥福をお祈りします


  

sai.wingpen  追悼・平野甲賀さん - 装丁で本を手にすることもある                   

 装丁家の平野甲賀さんが2021年3月22日に、82歳で亡くなった。
 訃報記事の多くで、沢木耕太郎さんの『深夜特急』の題字を代表作にあげていて、確かにあの本の平野さんの「描き文字」はインパクトが強く、沢木さんの作品を一層印象深いものにしていたと思う。
 平野さんの「描き文字」は、本の表紙を見ただけで、これは平野さんの手によるものということがわかるもので、おそらく本好きの人にとっては平野さんの名前は知らなくてもきっと何冊かは平野さん装丁の本を手にしたことがあるだろう。

 そして、何よりも晶文社の犀のロゴマーク。
 あれは平野さんの作品で、武蔵野美術学校を卒業後、高島屋や京王百貨店の宣伝部を経てフリーとなった平野さんが1964年以降晶文社の本のほぼすべての装丁にかかわったという。
 そんな平野さんが1986年7月に晶文社から出したのがこの本。
 晶文社から刊行した「小野二郎著作集」の装丁に携わる過程を綴りながら、自身のこと、装丁のこと、仲間たちのことなど語った一冊になっている。

 この中で平野さんは装丁が本と読者をつなぐのではなく、本と読者をつなぐのはその本の中身で「装丁は、ちょっとしたサービス」と書いている。
 先の沢木さんの『深夜特急』の本を手にすると、決して「ちょっとしたサービス」とも思えないが。
 また、平野さんは「仕事の完成度はできるだけ高いものにしたいけれど、完結してしまうのはいや」とも書いている。
 平野さん特有の「描き文字」こそ常に終りのない作品だったように思う。
  
(2021/04/07 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日の夕方
  脚本家の橋田壽賀子さんが4日に
  亡くなったという訃報がありました。
  95歳だったそうですから
  天寿を全うされたと思います。
  橋田壽賀子さんといえば
  「おしん」や「渡る世間は鬼ばかり」といった
  テレビドラマの歴史に名を残す作品を
  数多く手がけてきました。
  ある意味、橋田壽賀子さんが
  テレビドラマの姿を変えたといってもいいかもしれません。
  つまり茶の間という生活の場で
  人間のさまざまなドラマを観ることができるようにした
  脚本家だったといえばいいでしょうか。
  今日は
  追悼の意味で
  2020年1月に書いた
  橋田壽賀子さんの「私の履歴書」を本にした
  『人生ムダなことはひとつもなかった』を再録します。

  橋田壽賀子さん、
  たくさんのいいドラマをありがとうございました。

  ご冥福をお祈りします

  

sai.wingpen  追悼・橋田壽賀子さん - 橋田壽賀子という女の一生                   

 この本は、日本経済新聞朝刊の人気コラム「私の履歴書」に2019年5月に連載されたものの単行本化。
 2019年5月といえば元号が令和に改まって最初に迎えた月で、やはり新聞の編集部としてはそれにふさわしい人をと考えたに違いない。
 その点橋田壽賀子さんは昭和58年(1983年)に日本中を熱狂させたNHK朝ドラ「おしん」を始めとして平成にはいって始まったTBSの「渡る世間は鬼ばかり」が国民的ドラマになるなど時代をつなげていく脚本家として見込まれたのだろう。

 橋田さんは大正14年(1925年)生まれで、連載時には94歳。
 その最初に「夫の死」と題された、1989年に死別した夫岩崎嘉一さんの死の直前の様子が描かれ、最後に「本名、岩崎壽賀子。94歳。脚本家。天涯孤独。」という言葉が記されて、半生が綴られていく。
 まさのドラマの導入部のような書き方で、こんな風に書かれると続けて読みたくなる。
 読者(橋田さんにとっては視聴者)の心理がさすがによくわかっておられる。

 そんな橋田さんにもっとも影響を与えたのが石井ふく子プロデューサーだろう。
 橋田さんは石井さんからテレビドラマのあり方を学んだという。
 そのきっかけが昭和39年(1964年)4月、そう前回の東京オリンピックのあった年、に放送された「愛と死をみつめて」だった。橋田さん、38歳のこと。

 この履歴書には「おしん」の話が何回分かあるが、面白かったのは主演の田中裕子さんが撮影中橋田さんとは話さないどころか目も合わさなかったと記されていること。
 今だから話せる撮影裏話なのだろう。
 できれば、橋田さんとのコンビが多い泉ピン子さんについてももっと書いて欲しかったが。
  
(2020/01/15 投稿)

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 菜園の横を流れる
 鴻沼川岸の桜は何本もあって
 桜並木になっています。
 なので、木によってはまだ満開の
 今が見頃の桜もあります。

  20210403_085339_convert_20210404070523.jpg

 でも、さすがに盛りは終わって
 だいぶ花が散ってきました。

    中空にとまらんとする落花かな       中村 汀女

 散った桜が
 畑にも流れこんでいて
 まるで雪景色のようになっています。

  20210403_085854_convert_20210404070627.jpg

 ちょっと感動しました。
 そして、
 川に散った花びらが浮かんで
 花筏となっています。

  20210403_085035_convert_20210404070434.jpg

 これも素敵な風景です。

    一片のまた加はりし花筏      上野 章子

 畑でも
 かわいい花を見つけました。

  20210403_091330_convert_20210404070808.jpg

 紫エンドウの花です。
 春の季語に「豆の花」もあります。

    暁は花えんどうより見えはじむ        宇多 喜代子

 イチゴは花が咲いて
 小さな実がつきはじめました。

  20210403_104625_convert_20210404070922.jpg

 まだ赤くなるには時間がかかりますが
 今年は暖かい日が続いているので
 早いかもしれませn。

 4月になって初めての畑作業をした3日、
 夏野菜のための畝をひとつ作りました。
 先週こしらえた畝には
 サンチュの種を蒔きました。

  20210403_111344_convert_20210404071009.jpg

 サンチュはリーフレタスの仲間です。
 畝の中央に三カ所、
 両サイドには
 ピーマン白ナスを育てます。

 今年の桜は観測史上もっとも早い開花となったところが
 多かったようですが
 周りの草木の様子を見ていると
 ほぼ一カ月近く季節が先回りしているように
 思えます。
 こういう年は
 野菜の栽培どうなっていくのか
 期待にわくわくしています。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  二十四節気のひとつ、清明
  万物が溌剌とする意味だとか。

     清明や街道の松高く立つ      桂 信子

  私の住んでいるあたりでは
  今週8日に小学校の入学式があるそうです。
  まさに溌剌、
  ピカピカの一年生の誕生です。
  コロナ禍で
  入学式も人数制限とかあったり
  様がわりしているようですが
  それでも子供たちの笑顔に変わりはありません。
  今週あたりは
  学校で使うものに名前をいれたりするのでしょうか。
  そこで
  今日は長新太さんの
  『ぼくのくれよん』という絵本を紹介します。
  クレヨン一本一本に名前を書いたように
  思います。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  あの頃遊んだクレヨンどうしただろう                   

 クレヨンというのは、「石鹸・蝋・脂肪などに各種の顔料をまぜて棒状に造る」と「広辞苑」に出ている。「学童などが用いる図画用の絵具」ともあるように、ほとんどの子どもが使ったのではないだろうか。
 色鉛筆と違って、削らなくてよくて、描いていく感触も柔らかいのがいい。
 漫画の「クレヨンしんちゃん」とか児童書専門店の「クレヨンハウス」とか、やはり子供と関係して馴染み深い。
 そのクレヨンを題材にして、「ナンセンスの神様」という異名のある絵本作家の長新太さんが描いた作品が、この絵本です。

 一本のくれよん(絵本の表記がひらがななので、以下ひらがなで)がまず出てきます。
 大きな丸太のように、とても大きいのです。
 どうしてかというと、ぞうさんのくれよんだからです。
 ぞうさんが青いくれよんで大きな丸を描くと、まるで池みたいにみえます。
 まちがってカエルが跳び込んだりします。
 赤いくれよんで描くと、火事みたいに見えます。
 動物たちがあわてて逃げ出します。
 黄色のくれよんで、大きなバナナを描きましたが、もちろん食べられません。
 ぞうさんの大きなくれよんは、人騒がせなくれよんです。

 ページを開くと、子供たちの歓声と笑い声が弾きでるような作品です。
  
(2021/04/04  投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日
  俳優田中邦衛さんの訃報が報じられました。
  3月24日に88歳で亡くなられました。
  田中邦衛さんといえば
  個性のある演技と独特な口調で
  多くのものまね芸人にもまねをされていました。
  加山雄三さんの「若大将」シリーズは
  相棒の青大将役を演じ、
  黒澤明監督や山田洋次監督作品にも
  数多く出演されています。
  あるいは「網走番外地」や東映のやくざ映画にも出ていて
  幅広い演技で私たちを魅了しました。
  そして、なんといっても
  倉本聰さんの「北の国から」の父親
  黒板五郎役でしょう。
  田中邦衛さんと黒板五郎は一心同体。
  だから、田中邦衛さんの訃報は
  黒板五郎さんが亡くなったと同じ感慨があります。
  純も蛍も大丈夫かなと
  つい心配してしまいました。
  今日は2015年に書いた
  倉本聰さんのシナリオ『北の国から・前篇』を
  追悼として再録します。
  書評のタイトルは変更しました。

  田中邦衛さん
  長いあいだありがとうございました。

  ご冥福をお祈りします

  

sai.wingpen  さよなら、五郎さん                   

 「この本は、テレビドラマのシナリオです」と、この本の冒頭の「読者へ」という文章の中に倉本聰さんは書いています。
 「北の国から」といえば、1981年10月から翌年3月まで金曜の夜に放映された人気ドラマで、翌年以降はスペシャルドラマの形で2002年まで放映されました。倉本さんの代表作のひとつです。
 舞台となった北海道富良野はその後有数の観光地にもなりました。
 この本はそのドラマの前半12回分のシナリオが収められています。

 「読者へ」という文章に戻ります。
 倉本さんはシナリオは「普通の小説を読むのとはちょっと違って最初はとまどうかもしれません」と書きつつ、「シナリオを読むことに馴れてみてください」としています。
 「ただ読むだけではない、創るよろこびをも同時に持てるでしょう」という言葉で、終えています。

 シナリオはよく設計図だと言われます。
 どういうことかといえば、シオリオを読んで演出家は表現を考えます。役者は演技を考えます。大道具はどんな場面なのか組み立てます。衣装はどんな服を着たらその場面にあうかを考えます。
 そのすべての基が、シナリオなのです。
 いいシナリオはきっと読むだけでいろんな役割の人が動きやすいそういうホンなのかもしれません。
 この「北の国から」の場合、すでに見たことがある人なら真っ先に浮かんでくるのが、さだまさしさんのスキャットかもしれません。あの唄が流れれば、もうそこは「北の国から」の世界ではないでしょうか。

 妻の浮気をきっかけに東京を引き揚げ、自身の故郷北海道富良野に戻る五郎。純と蛍という小学生の息子と娘を連れています。
 ファーストシーンはその妻である令子とその妹雪子の会話です。
 浮気をして離婚させられた令子が「あの人には東京が重すぎたのよ」というセリフがあります。「あの人」というのは五郎のことです。
 とても、重いセリフだと思います。この短いセリフに、主人公の五郎が背負ってきたもののすべてが込められているような気がします。

 ドラマが放映されてから34年経ちました。もう五郎のような人はいなくなったような気がします。
  
(2015/08/26 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  岩橋淳さんの『いつだって本と一緒』という
  ブックガイドの本を
  紹介します。
  この本を知ったきっかけは
  2月20日に朝日新聞に掲載されて記事からでした。
  書評にも書きましたが
  かつて岩手の地方紙で連載をしていたブックガイドを書いていたのが
  岩橋淳さんでした。
  残念ながら
  2019年に58歳で亡くなりましたが
  かつてその連載を楽しみにしていた女子高生が
  出版社の社長となって
  本にすることを決断します。
  それが皓星社の晴山生菜さんです。
  なんだかこの話だけでも
  物語になりそうではないですか。
  いい本がたくさん読まれるといいな。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  一人の書店員から手渡されたバトン                   

 岩手県盛岡市の本屋さんといえば、さわや書店が有名だ。
 かつてさわや書店に児童書専門店MOMOがあった。残念ながら2005年には閉店しているが、この本の著者岩橋淳さんはかつてそこで店長をしていた。
 2004年4月から「岩手日報」という地元紙の若者向けのページに「コレ知ってる?」というブックガイドの連載を始めたのも、その頃だろう。
 MOMOの閉店とともにさわや書店を退社しているが、2005年3月から「U-18読書の旅」という新連載を開始、その後自身はジュンク堂盛岡店でまた書店員として働きだす。
 2007年から装いも新たに始めた連載が「いつだって本と一緒」。
 その連載は2018年9月まで続く。
 岩橋さんはきっとまだまだ続けたかっただろうが、2017年6月頃筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症し、キーボードを打つのもままならなくなったという。
 そして、2019年1月10日、58歳という若さで亡くなる。

 岩橋さんが2004年から2018年まで書き続けてきた273冊の本たち。
 かつて新聞の連載を楽しみにしていた一人の出版人が本にしようと決意する。
 それがこの本を出版した皓星社の晴山生菜社長。
 岩橋さんの本にかける思いが、こうして花を開く。

 本の冒頭、2018年9月17日付の「岩手日報」に載った最後の記事が転載されている。
 「本を読もう。」で始まるその一文で、岩橋さんは「本との幸福な巡り合いは、いつの日か漕ぎ出す海原で、すぐれた羅針盤となる  だろう」と綴った。
 そして、最後にこう締めくくる。
 「だから、若い人よ。精いっぱいの感受性を磨き、本を読もう。出会うために。」と。

 この本は岩橋淳という書店員から渡された、バトンである。
  
(2021/04/02 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は四月一日。
  エープリルフールでもあります。
  万愚節ともいうらしい。

    エープリルフールの駅の時計かな      轡田 進

  騙してもいい日だからということでもないですが
  今日は
  佐野洋子さんの『食べちゃいたい』という
  野菜や果物を
  不思議なタッチで描いた
  ショートショートを紹介します。
  読後感は
  何だか騙し絵を見せられたあとのような感じです。
  でも、最近
  四月一日だからといって
  嘘ついていないな。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  なんとも不思議な、ここは野菜王国                   

 「擬人法」を「広辞苑」で調べると、「人でないものを人に見立てて表現する技法」と出ている。
 画家で絵本作家でエッセイストでもある佐野洋子さんが1992年に発表したこの作品は、野菜と果物を「人に見立てて」不思議な世界を生み出したショートショートである。

 描かれているのは、ねぎ、れんこん、だいこん、山芋、じゃがいも(ここまでは目次の順)などの野菜、ほかにもピーマン、きゅうり、玉葱といったふうに、大抵の野菜は描かれている。
 果物はりんご、みかん、ばなな、メロンと、こちらもほとんどある。
 では、それがどんな風に擬人化されているか。
 例として、ばななをあげよう。
 ばななは一軒の家に住む五人の姉妹の姿で描かれる。
 ある日、上の姉さんがいない。「けっこう男の人に媚売ってた」とか妹たちにかげ口を叩かれている。
 次の日、一番下の妹がいなくなり、やがて私も男に連れ去られていく。
 男は「私のことじっと見たかと思うと、ひと思いに私を剥いたの」とある。
 そりゃばななだもの、皮剥きます。
 そんなショートショートが続くのです。

 野菜や果物をよく観察したものということもできますが、佐野さんってそんな軟な書き手ではないような気がする。
 読者を日常ではない世界に連れ出してやろう、と舌でも出しながら書いていたのではないだろうか。
 佐野さんの男と女のイラストも楽しめる、不思議な一冊。
  
(2021/04/01  投稿)

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