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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は四月一日。
  エープリルフールでもあります。
  万愚節ともいうらしい。

    エープリルフールの駅の時計かな      轡田 進

  騙してもいい日だからということでもないですが
  今日は
  佐野洋子さんの『食べちゃいたい』という
  野菜や果物を
  不思議なタッチで描いた
  ショートショートを紹介します。
  読後感は
  何だか騙し絵を見せられたあとのような感じです。
  でも、最近
  四月一日だからといって
  嘘ついていないな。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  なんとも不思議な、ここは野菜王国                   

 「擬人法」を「広辞苑」で調べると、「人でないものを人に見立てて表現する技法」と出ている。
 画家で絵本作家でエッセイストでもある佐野洋子さんが1992年に発表したこの作品は、野菜と果物を「人に見立てて」不思議な世界を生み出したショートショートである。

 描かれているのは、ねぎ、れんこん、だいこん、山芋、じゃがいも(ここまでは目次の順)などの野菜、ほかにもピーマン、きゅうり、玉葱といったふうに、大抵の野菜は描かれている。
 果物はりんご、みかん、ばなな、メロンと、こちらもほとんどある。
 では、それがどんな風に擬人化されているか。
 例として、ばななをあげよう。
 ばななは一軒の家に住む五人の姉妹の姿で描かれる。
 ある日、上の姉さんがいない。「けっこう男の人に媚売ってた」とか妹たちにかげ口を叩かれている。
 次の日、一番下の妹がいなくなり、やがて私も男に連れ去られていく。
 男は「私のことじっと見たかと思うと、ひと思いに私を剥いたの」とある。
 そりゃばななだもの、皮剥きます。
 そんなショートショートが続くのです。

 野菜や果物をよく観察したものということもできますが、佐野さんってそんな軟な書き手ではないような気がする。
 読者を日常ではない世界に連れ出してやろう、と舌でも出しながら書いていたのではないだろうか。
 佐野さんの男と女のイラストも楽しめる、不思議な一冊。
  
(2021/04/01  投稿)

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