04/21/2021 最後の将軍(司馬 遼太郎):書評「大河ドラマのもう一人の主人公」

NHKの大河ドラマ「青天を衝け」を
毎週楽しく見ています。
渋沢栄一のドラマですが
草彅剛さん演じる
徳川慶喜に惹きつけられます。
そこで、本棚から
今日紹介する
司馬遼太郎さんの『最後の将軍』を
引っ張りだして読みました。
随分以前に読んだ作品なので
ほとんど忘れていましたが
今回大河ドラマを見ているので
面白く読みました。
渋沢栄一ですか?
ちゃんと出てきますよ。
じゃあ、読もう。

もしその人物が全く別の時代に生まれていたら、その様相はまるで違うものになるものだろうか。それとも、やはりその人の生涯のありようは変わらないのだろうか。
1966年(昭和41年)「別冊文藝春秋」に三回に分けて連載となった司馬遼太郎の長編小説(といっても司馬の作品では一冊の文庫本に収まるのだから短い部類だが)は、徳川幕府最後の将軍となった、第15代将軍徳川慶喜を描いた作品だ。
その冒頭、司馬がこう書いた。
「人の生涯は、ときに小説に似ている。主題がある。」
では、慶喜の主題は何か。司馬は「世の期待をうけつづけてその前半生を生きた人物は類がまれ」で、それが慶喜の主題だという。
慶喜という人物は実に不思議な男だ。
司馬が作品の後半にはいるあたりで「慶喜は孤独」と書いた。
「古来、これほど有能で、これほど多才で、これほど孤独な将軍もいなかったであろう。」
慶喜は有能であったがゆえに、将軍になればどのような運命になるか見えていたのであろう。
だから、徳川宗家の当主は継いだが、将軍になることを固辞し続けた。
それでも、その職を受けざるを得なかった彼は、どんな夢を持ったのであろう。
明治維新後、慶喜が静岡に隠棲した時、彼はまだ数え33歳に過ぎなかった。
77歳で生涯を閉じるまでの長い晩年をどんな思いで過ごしたのか。
そんな慶喜を綴る司馬の筆にどことなく慈しみを感じないでもない。
(2021/04/21 投稿)

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