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プレゼント 書評こぼれ話

  この月曜日に
  アカデミー賞の発表がありました。
  第93回となる今回のアカデミー賞は
  中国人の女性監督のクロエ・ジャオさんが撮った
  「ノマドランド」が受賞して
  話題になっています。
  一方、日本の映画界では
  昨年コロナで亡くなった志村けんさんが主役を演じるはずであった
  山田洋次監督の「キネマの神様」が
  完成したというニュースがありました。
  原作は原田マハさんですが
  どうも原作とはかなり違うようなので
  今日は
  原作『キネマの神様』を
  再録書評で紹介します。
  今回改めて
  再読もしたのですが
  2013年に読んだ本でしたから
  結構忘れていました。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  涙を流すことは、ちっとも恥ずかしいことではない                   

 涙を流すことは、ちっとも恥ずかしいことではない。
 むしろ、諸々の思いを洗い流す浄化作用があるのではないか。
 ただ本を読んで涙を流すのは人の目がいささか気になるが、映画だと暗い席で思いっきり泣いても平気だ。映画館は泣く人のために暗くなっているのではないか。あるいは長いエンドロールは泣く人のためにいつまでも続いているのではないか。
 ところが、この小説に感涙してしまった。
 映画館のような暗闇でもなく、長いエンドロールもないのに、泣けてしょうがなかった。
 でも、いい涙だった。
 涙を流したあとは仕合せな気分だった。そう、まるで虹のような。

 大企業で新しいシネコンのプロジェクトで活躍していた歩は謂れのない誹謗をうけて会社を辞めることになる。40歳、独身。しかも、彼女の父親はギャンブル狂いの上に心臓に疾患さえもっている。
 彼女が退職した日は発作を起こして病院のベッドにいるという始末。
 父親の唯一の楽しみが映画を観ること。そんな父親に感化されたのか、歩も映画を観る目はしっかりしている。
 そんな彼女に老舗映画雑誌「映友」から誘いがきたのはいいが、この会社どうやら赤字続きらしい。
 起死回生で立ち上げた映画ブログのブロガーに採用されたのが、なんと歩の父親。80歳近くになる父親にはインターネットとは何かというところから説明が必要で、ところがそんな父親が書いた映画評が評判になっていく。

 キネマの神様。映画館にいる神様。
 歩の父親郷直(ハンドルネームはゴウ)は「キネマの神様」の存在を信じているのだが、物語は神様の奇跡のような展開を見せる。
 ゴウがブログに初めて書いた「フィールド・オブ・ドリーム」の映画評の中に「本作は野球賛歌の映画である以上に、家族愛の物語」という一節があるが、それを真似るならこの物語は「映画賛歌の小説である以上に、家族愛の物語」だといえる。
 気がつけば、それぞれの家族がさりげなくつながっている。まるで、生まれたばかりの子どもを囲んで喜び合う家族のように。

 涙が流れるのは、こういう家族愛にほだされるからかもしれない。
 でも、こういう家族っていいと、素直に思っている自分がいる。
 それで、泣いたって、どうして恥ずかしいことがあるだろうか。
  
(2013/12/03 投稿)

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