05/31/2021 初めてのメークインを収穫 - わたしの菜園日記

家庭菜園ならではの楽しみの一つですが、
中でも
私はナスの花が好きです。
野菜の花は黄色い花や白い花が多いですが
ナスの淡紫色が上品な感じがします。
うたたねの泪大事に茄子の花 飯島 晴子

写真は菜園で見つけたナスの花ですが
私の畑では今年は白ナスを育てているので
どんな色の花が咲くのか
楽しみにしています。

それぞれ収穫時のサインがあって
タマネギの場合
葉が倒れてきたら収穫時期とよくいいます。

私の畝のタマネギの葉も少し傾いてきたので
大きそうなものを5個採ってみました。

5個でほぼ1㎏ですからりっぱなものです。
皮をむけば
なんとも美しい美白の登場です。


ジャガイモの場合は葉が枯れてきたら収穫時期と
よくいいます。
雨も嫌うため
梅雨に入る前がいいともいいます。
なので
昨日(5月30日)ジャガイモをすべて伐採しました。
こちらがキタアカリ。

そして、こちらがメークイン。

キタアカリの方は3株分で
メークインは4株分です。
メークインは初めて栽培した野菜です。


写真のピーマンをこのあと採りました。

モロヘイヤとクウシンサイの種を蒔きました。

関東の梅雨入りはまだですが、
きっちり水分補給をしないといけない
暑い日曜日でした。

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05/30/2021 追悼・エリック・カールさん - はらぺこあおむし:再録書評「時代を超える」

絵本「はらぺこあおむし」で知られる
アメリカの絵本作家エリック・カールさんが
5月23日、91歳で亡くなられました。
絵本好きの人なら
必ず一度は読んだことがある「はらぺこあおむし」は
日本で出版されたのが1976年。
それから実に430万部を超えるロングセラーに
なっています。
絵本だけでなくあおむしくんをモチーフにした
グッズもたくさん出ています。
この作品のことをエリック・カールさんは
この本は希望の本だ。
子どもたちには希望が必要だ。
と語っていたそうです。
今日はエリック・カールさんを追悼して
2017年に書いた「はらぺこあおむし」を
再録書評で紹介します。
エリック・カールさん、ありがとうございました。
ご冥福をお祈りします。

この絵本のことを知らない子どもたちはいないかもしれない。
この絵本のことを知らない大人たちも少ないかもしれない。
まして、絵本大好きなママさんたちはこの絵本が大好きだ。
折り紙で「あおむし」君を作ったり、揃いの「あおむし」君Tシャツを着たりして。
何より、この絵本の読み聞かせともなれば、読む方も聞く方も楽しくて仕方がないのじゃないだろうか。
この絵本は仕掛け絵本というジャンルにはいるのであろうか。
大がかりな仕掛けではない。
「あおむし」君の食事と仕掛けがうまく重なって、仕掛けが何重にも面白く出来上がっている。このあたり、ページの中から子どもたちの歓声が聞こえてきそう。それってもしかしてもっとも大きな仕掛けだったりする?
しかし、この絵本の本当の仕掛けはその色ではないだろうか。
「あおむし」君の身体の緑ひとつとっても、その多彩さに目を奪われる。ましてや、成長してちょうちょになったその姿の豪華さはどうだろう。
子どもたちのため息が聞こえるようではないか。
おそらくこの絵本の魅力は何年経っても変わらないだろう。
私たちがいなくなっても、次の親たちが、その次の親たちへと、そしてそれは新しい子どもたちにも間違いなく続くだろう。
時代を超える。
これがもっとも大きな仕掛けではないか。
(2017/09/03 投稿)

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05/29/2021 今更ながら緒形拳は名優でした - 映画「復讐するは我にあり」

『時代を撃つ ノンフィクション100』という本を読んでいて
懐かしいタイトルを見つけました。
佐木隆三さんの『復讐するは我にあり』。
確か今村昌平監督で映画化されていたはず。
そこで、1979年の作品をオンラインで観ました。
日本映画の昔の作品はあまりにも時代と付き過ぎていて
時間を経て観ると
観るのがつらいこともよくあるのですが
この作品は違います。
今でも十分面白い。
やっぱりいい作品はちがいます。
なんといっても
主演の殺人犯を演じた緒形拳さんと
その父親役の三國連太郎さんの演技にしびれます。
その二人にからむ
倍賞美津子さんと小川真由美さんの競演も見もの。
ということで
先週観た映画の話を。

● 復讐するは我にあり
● ザ・ハッスル
● In Time
● バベットの晩餐会
● オリバー!
● エビータ

「バベットの晩餐会」もそう。
1987年のデンマーク映画。
この年のアカデミー賞最優秀外国映画賞を受賞した作品です。
小さな村でひっそりと暮らす年老いた姉妹のもとに
パリから亡命してきた一人の女性バベット。
その身元もよくわかりませんでしたが
姉妹は彼女を受けいれます。
姉妹の心にバベットもよく応え、
たまたま大当たりした宝くじの賞金で
バベットは姉妹と村人のために晩餐会を開きます。
彼女のつくる料理も
映画の楽しみのひとつ。
絶品料理も舌鼓をうちます。

「オリバー!」は1968年のキャロル・リード監督のミュージカル。
主演が「小さな恋のメロディー」で人気者になった
マーク・レスター君。
彼は1958年生まれといいますから
今ではいいシニア世代です。
そして、もう1本が
マドンナが主演した「エビータ」。
1996年の映画ですが
これは公開時に映画館で観た記憶があります。
なんといっても
「アルゼンチンよ泣かないで」は心に残る名曲です。
このブログを書くにあたって
この映画のモデルとなったエバ・ペロンをネットで調べましたが
本当に綺麗な人で
33歳で亡くなったアルゼンチンの伝説のファーストレディでした。

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05/28/2021 自己肯定感を味方にするレッスン(中島 輝):書評「私は私、人は人。」

昨日
三田紀房さんの
『ドラゴン桜 東大合格をつかむ言葉161』という本を
紹介しましたが、
今日紹介する
中島輝さんの
『うまくいっている人がしている 自己肯定感を味方にするレッスン』を読んで
「ドラゴン桜」の主人公が生徒たちを鼓舞しているのが
よくわかりました。
「自己肯定感」の本を調べると
教育の現場で使われていることが多くありました。
この本で紹介されている
「ポジティブワード」をひとつだけ紹介しておきます。
朝の光をたっぷり浴びて
「今日もすっきり気持ちよく」と、
ぐーんと伸びをしよう。
今日の朝からさっそくできますね。
ちなみに
書評のタイトルの「私は私、人は人。」ですが
自己肯定感の高い人の距離のとりかただそうです。
じゃあ、読もう。

最近「自己肯定感」をいう言葉を耳にする機会が何度かあって気になっていたところでした。
調べると、「自己肯定感」というのは心理学の領域の概念で、その定義も幅広いようです。
この本の著者で心理カウンセラーの中島輝氏はこの本の中でこう定義しています。
「私が私であることに満足でき、自分を価値ある存在だと受け入れられること」。
「自己肯定感」の高い人はずっと高いままだとこの本を読むまで思っていましたが、そうではなく、そもそも誰もに備わっているもので、実は上がったり下がったりするものだということです。
なので、あの人は高くて自分は低いと悩むことはないのです。
下がっていれば上げればいいのですから。
この本を読むきっかけは「自己肯定感」とは何だろうというものでしたが、読んでいる途中に気がついたことがありました。
それはこの本を読んでいること自体「自己肯定感」が高まっていることではないかということです。
会社員として働いている頃、多くのビジネス本や自己啓発本を読んでいましたが、あの読書体験も実は仕事上のスキルを高めるだけでなく、知らず知らずのうちに「自己肯定感」を高めていたのだと思います。
この一冊には「自己肯定感」が「自尊感情」や「自己受容感」「自己効力感」などに分類されるといった基礎的なことや「人生がもっと楽しくなるポジティブワード」(特にこの章は参考になります)など豊富につまっています。
この本を読んで、「自己肯定感」を高めましょう。
(2021/05/28 投稿)

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テレビドラマは癖になる。
単発ドラマであればいいのだが
連続ドラマとなれば
毎週見てしまう。
今春のテレビドラマでいえば
TBS系の日曜9時から放映されている
阿部寛さん主演の
「ドラゴン桜」にはまっている。
それで
最初のブームとなった
2005年当時の本を見つけたので
今日は紹介します。
漫画原作者の三田紀房さんの
『ドラゴン桜 東大合格をつかむ言葉161』。
ドラマが今後どのような展開をするのか。
やっぱりテレビドラマは癖になる。
じゃあ、読もう。

「ドラゴン桜」というのは、元暴走族の弁護士桜木健二が落ちこぼれ高校の生徒たちを東大に合格させるという三田紀房さんが2003年から2007年にかけて青年漫画誌「モーニング」に連載した漫画である。
当時そこで描かれる受験テクニックや勉強法が大きな話題となって、2005年にはテレビドラマ化されている。
この本は、2005年8月に出たもので、そういう点ではドラマ化のブームを当て込んだ企画本だといえるだろう。
ただ、原作となった漫画のエキスを摂取するにはちょうどいい。
何しろ鼓舞する言葉が161も並んでいるのだから。
落ち込んだ時、くじけそうになった時、この本をパラリと開けば心が高揚するはずだ。
それから16年。
「ドラゴン桜2」を原作としたテレビドラマが放映され、また話題となっている。
ドラマでは「東大」に合格するという受験方法だけでなく、生徒たちを引っ張っていく主人公の桜木の魅力がなんとも心地いい。
コロナ禍での政治家の右往左往ぶりを見ていると、やはりリーダーシップがいかに大事かというのがわかる。
もし、桜木のような男が政治家であればどうであっただろう。
桜木は「ルールが気にくわなかったら、ルールを作る側に回れ」、だから東大に行って人生を変えろといった。
その言葉に鼓舞されて、東大に行った人もいただろう。
でも、ルールを作る側に回れただろうか。もしかしたら、「忖度」なんていう世界に巻き込まれていないだろうか。
(2021/05/27 投稿)

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今日は
藤澤志穂子さんの
『釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝』を
紹介します。
表紙の漫画は
もちろん『釣りキチ三平』。
この絵を見てるだけで
ワクワクしてきます。
それにしても魚鱗ひとつひとつが
きらめいているかのようです。
矢口高雄さんは
コロナ禍が始まった頃
こんなメッセージを残しています。
ガマンだ ガマン
ここ一番が踏ん張りどころ
暗い闇夜も必ず明ける
まさに最後のメッセージとなりました。
じゃあ、読もう。

「釣りキチ三平」や「マタギ」、「おらが村」などで多くのファンを持つ漫画家矢口高雄さんが81歳で亡くなったのは2020年11月20日のことでした。
その矢口さんの「外伝」とつけられたこの本が出版されたのは翌月12月のことです。
矢口さんが亡くなるとは著者の藤澤志穂子さんは思いもしなかったでしょう。
ただ出版が大詰めになる頃は矢口さんの体調は思わしくなかったそうですから、矢口さんの生前に読んでもらえなかったことを藤澤さんはどんなに悔しかったことかと思います。
なので、この本の「あとがき」は「追悼にかえて」という文章になっています。
藤澤さんは東京出身の大手新聞社の経済記者でした。
取り立てて矢口漫画のファンではなかった彼女が何故矢口さんの本を書くようになったか。
きっかけは藤澤さんが新聞社の異動で秋田支局に赴任いたことでした。
そこで、矢口さんが故郷の横手市増田にある「まんが美術館」に尽力されていることを知ります。
矢口さんはかつて漫画が「悪書」として迫害されていた時代のことを知っています。
漫画は未来に残すべき遺産になる運動をすることで、「悪書」とする時代が二度と来ないようにしたい。それが漫画に対する恩返しだという思いです。
そして、矢口さんが描く漫画が自然の良さ厳しさを教えるものであること、などが藤澤さんが地方で暮らすことで得た知恵になっていきます。
この本は矢口さんの評伝ではありませんが、矢口さんとの30回以上に及ぶインタビューで生まれたものです。
まさに矢口高雄さんの、最後のメッセージといえる一冊です。
(2021/05/26 投稿)

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一年前の春に読んだ
東海林さだおさんの文庫版「丸かじり」シリーズの
ブログを読むと、
コロナ禍で飲食店がテイクアウトで
頑張っていると書いていました。
2020年4月21日の記事です。
それから一年が過ぎても
結局コロナ禍が収まらず
ワクチンでさえまだまだ普及していません。
飲食店の苦境は深刻さを増すばかり。
コロナが収まったら、ぜひ支援の対策を実施してあげて欲しい。
今日は
東海林さだおさんの「丸かじり」シリーズの
文春文庫版の最新巻
『バナナの丸かじり』を
紹介します。
じゃあ、読もう。

おなじみ東海林さだおさんの「丸かじり」シリーズの文春文庫版の最新巻。
2018年に単行本となったシリーズ41作目。
思い起こせばちょうど1年前、『焼き鳥の丸かじり』の文庫装丁が、今までずっと担当してきた和田誠さんが亡くなったあとの刊行ながら「和田誠事務所」となんとかつながっていたが、なんと! この巻では「デザイン 中川真吾」となっているではないか。
もう読んでやらないものネ! なんて心の狭いことはいわないが、さびしい・・・(涙)。
気分を変えて、今回の文庫本の解説は俳優の柄本佑さん。
柄本佑さんといえば、お父さんが柄本明さんで、お母さんは女優の角替和枝さん、弟は柄本時生さんという芸能一家で有名。さらにお嫁さんは安藤サクラさんというのだから、野球でいえば全員四番バッターみたいなおうち。
そんなお家の佑さんに東海林さだおさんの「丸かじり」を勧めたのがお母さんの和枝さんというから素晴らしい。
祐さんが17、8歳の頃だというが、夏目漱石とかトルストイではなく東海林さだおさんを勧めたというから、さすがお母さん。息子の気質をわかっていたのにちがいない。
そこから佑さんの「丸かじり」愛、東海林さだお愛はとまらない。
だからこそ、東海林さんの文章の魅力もよく読み解いていらっしゃる。
「表面上は軽くて酒脱で、一瞬、誰にも書けるんじゃないかと思わせるような近しさがある。けれど絶対にムリ」という東海林さんの文章の魅力は、演技の世界にも共通しているように思う。
いい解説文でした。
(2021/05/25 投稿)

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05/24/2021 ドクダミの花も好きです - わたしの菜園日記

この時期の花といえば
なんといっても紫陽花(あじさい)。

街を歩いているとよく見かけます。
それと、ドクダミの花。

十薬とも呼ばれる多年草ですが
これは薬効が多いからだとか。
白い十字花がかわいいですが、
実は中心の黄色い穂状のものが花だそうです。
毒だみや十文字白き夕まぐれ 石橋 秀野
畑ではキュウリの黄色い花が
雨のあとにあざやかに咲いていました。

過ぐるたび胡瓜の花の増えてをり 永島 靖子
この俳句のように
たくさん花がついてくれるといいですが。

雨が続いてようやく晴間になった日曜日(5月23日)
近所の田んぼでは
田植えもおわっていました。

忽ちに一枚の田を植ゑにけり 高浜 虚子
都会ではこういう光景もなかなか見られなくなったので
心がほっとする空間です。

紫エンドウとイチゴの撤去をしました。
初めての紫エンドウは
野菜の不思議を楽しめたので
満足、満足。

写真は別区画に植えている夏野菜に本支柱をしたところ。

左からミニトマト、ナス、そして先週植えたトウガラシ。

赤ジソを植えました。

去年赤ジソのジュースが美味しかったので
今年は欲張って6苗植えました。


雨が多いので
季節に映える芽といえます。

イチゴの間に植えていたニンニクを収穫しました。
それと
タマネギ。

これは一つに畝に植えられなかった余った苗が育ったもので
小さな出来でしたが
なんといっても初収穫。
畝で育てているタマネギは結構大きくなってきたので
楽しみです。

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05/23/2021 生きる(詩 谷川 俊太郎/絵 岡本 よしろう):書評「いのちって、何だろう?」

開催か中止かまだまだ予断の許さない
東京オリンピックだが、
開会式は7月23日で
今日でちょうどあと2ヶ月となりました。
コロナ禍にあって
多くの人たちが
生きるという意味を突き付けられているような気がします。
今日は
谷川俊太郎さんの詩に
岡本よしろうさんが絵をつけた
『生きる』という絵本を
紹介します。
この詩の最後はこうです。
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ
どうなる?
東京オリンピック。
じゃあ、読もう。

谷川俊太郎さんの詩に岡本よしろうさんが絵をつけた、詩の絵本。
2013年に月刊「たくさんのふしぎ」に載ったものを2017年にハードカバー化された。
谷川俊太郎さんの詩は、実はもっと以前のもの。
絵本の巻末に載っている谷川さんの言葉によると、「まだミニスカートが新鮮に感じられたころ」だという。「若い女性の写真といっしょに雑誌に載った」らしいから、女性誌からの依頼だったのだろうか。
「言葉は力まずに自然に出てきたように記憶」していると谷川さんが書いているように、言葉は平易だし、声に出して読むのにちょうどいい。
けれど、やはりテーマは重い。
海外向けだろうか、英文のタイトルは「WHAT’S LIFE?」となっている。
つまり、いのちって何だろう?
この詩の中で、特に第二連が好きだ。
「生きているということ/いま生きているということ/それはミニスカート/それはプラネタリウム/それはヨハン・シュトラウス/それはピカソ/それはアルプス/すべての美しいものに出会うということ/そして/かくされた悪を注意深くこばむこと」
なにげないものをいくつも並べ、それを「美しい」という。
普段の生活の中で、私たちはそのことを忘れていないだろうか。
そのことは岡本さんの絵にもいえる。
重いテーマの詩だが、つけられた絵はある町のどこにでもいるような家族の日常。
そんな日常の中にこそ「生きる」意味があるのだと教えられているような気がした。
(2021/05/23 投稿)

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05/22/2021 観れなかった「ディープ・スロート」 - 土曜日は、映画の話を。

映画に夢中になった青春期以上に観ている。
昔は映画を観る環境が映画館や試写会がほとんどだったが、
今はレンタルショップ、BSCS放送、さらにはオンライン配信と
本の世界の電子書籍以上に進んでいる。
そんなに映画を観ているので
せっかくだから、土曜日は映画の話をすることにしました。
題して、
土曜日は、映画の話を。

1. ラブレース
2. カツベン!
3. スパイの妻
4. ホテル・ローヤル
5. オペラ座の怪人
6. 現代任侠史
7. 無宿 やどなし
結構観てますね。
6.と7.は日本映画専門チャンネルで放映された
高倉健さんと梶芽衣子さんの共演映画。
特に「無宿 やどなし」は懐かしい。
勝新太郎さんとの共演で
斎藤耕一監督の1974年の作品。
この頃の斎藤耕一監督は絶好調でした。
この映画フランス映画「冒険者たち」をモチーフにしたもの。

やっぱり「スパイの妻」。
第77回ヴェネツィア国相映画賞で銀獅子賞を受賞した
黒沢清監督の2020年の作品。
この映画は昨年のキネマ旬報ベストテンで
日本映画の1位に輝いた作品。
なんといっても
主演の蒼井優さんの演技が素晴らしい。
さらに東出昌大さんもいい。
この人はスキャンダルがあったけど
それを乗り越えていけば
世界で通用するように思うのだけど。

いうまでもなく桜木紫乃さんの直木賞受賞作。
2013年に刊行された本が
2020年秋にやっと映画公開された武正晴監督作品。
主人公を波留さんが演じています。
父親役の安田顕さんがいい。
全体的にもう少し裏寂れた感じが欲しかったかな。
話の内容の割には美しすぎる。

最近すっかりミュージカル映画にはまっていて
これはレンタルDVDで観ました。

一番面白かったのは
アマンダ・セイフライド主演の2013年の「ラブレース」。
これは1970年代に世界中を席巻したポルノ映画「ディープ・スロート」に主演した
リンダ・ラブレースの衝撃的な半生を描いた伝記映画。
映画好きだった若い頃
「ディープ・スロート」の評判は聞いていましたが
残念ながら観ていない。
未成年でしたからね。
それにしても
外国映画は「事実を基にした」作品を実にうまく撮ります。
日本映画でそれができないのはどうしてかな。

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今日は
二十四節気のひとつ、小満。
万物の気が満ちて、草木が次第に枝葉を広げる頃。
小満や一升壜に赤まむし 斎藤 美規
といっても
今年は気候の進み具合がとても早く
草木の枝葉はすでに広がっているように感じます。
今日は
佐高信さんの
『時代を撃つノンフィクション100』という新書を
紹介します。
私はどうもブックガイドなるものが大好きで
つい読みたくなってしまいます。
読むと
この本読みたいとか
次はこの本だなとか
誘惑? されてしまいます。
今回も何冊かそんな本がありました。
じゃあ、読もう。

毎年7万点以上の本が出版されているという。しかも、それが毎年累積されていくわけで、絶版となる本があったとしても出版されていたと事実は残る。
それらの本はなかなか読むことは難しいが、探せばどこかしらにあるはずだ。
つまり、本はもうどんなに頑張っても全部を読むことなどできないのだ。
そこで、ブッグガイドなるものが登場する。
出版全般というより、ジャンルごとのブックガイドが多いように思う。
例えば、絵本であったり児童文学、あるいは古典に絞ったもの、時代小説や推理小説といったジャンルものもある。
この本ではタイトルにある通り、「ノンフィクション」に限定(といっても、城山三郎の『鼠』や吉村昭の『ポーツマスの旗』といったノンフィクション・ノベルも入っている)され、しかも100冊とあるように100冊の作品が選ばれている。
選んだのは、評論家の佐高信さん。
佐高さんが「時代を撃つ」とした100冊を選んだ基準は「徹底的に「上から目線」を排し、ローアングルで人間や社会をとらえる作品」だという。
中にはすでに書店では手に入りにくい作品もある。
柳田邦男さんの『マリコ』は1980年の出版だし、今では文庫本でも探せないかもしれない。
だから、読みたい本が見つかれば、図書館の所蔵を調べるのも一つの方法だ。
それにしてもこうして100冊を並べられると、真実を見つけるのもなかなか容易ではないことが実感される。
一歩進んで、自分だけの100冊を見つけるのも、いい。
(2021/05/21 投稿)

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05/20/2021 鬼才 伝説の編集人斎藤十一(森 功):書評「こんな人はなかなか出てこないだろう」

今日は
新潮社の編集人として
その名を轟かせた
斎藤十一の評伝
『鬼才 伝説の編集人斎藤十一』という本を
紹介します。
書いたのは、森功さん。
斎藤十一という人の評伝ではありますが
彼が発掘し育てた作家たちの姿も
面白く描かれています。
特に山崎豊子とのエピソードは面白い。
超一流の作家たちが
まるで斎藤十一の魔術のかかったかのよう。
そんな彼らが名作を生み出すのだから
編集人として
これ以上の人はいなかったのだろう。
じゃあ、読もう。

「広辞苑」によれば、「鬼才」というのは「人間のものとは思われないほどすぐれた才能。また、その才能を持った人」とある。
同じ「きさい」でも「奇才」は「世にも珍しいすぐれた才能。また、その才能を持った人」で、出版界で「伝説の編集者」と呼ばれたほどの人の場合は、やはり「鬼才」が似合うような気がする。
ただし、編集者であるから黒子に徹したという点では、本好きな人でもない限りなかなかその名前は知らないのではないかしらん。
斎藤十一(じゅういち、と読む)。1914年に生まれ、2000年に亡くなった「伝説の編集者」は、新潮社という文芸に強い出版社の文芸編集者として戦後の新潮社を築き、その後「芸術新潮」や「週刊新潮」を創刊し、雑誌ジャーナリズムを作ったといわれる。
創刊当時「週刊新潮」の表紙は画家の谷内六郎で、それを採用したのも斎藤である。
さらに斎藤は写真週刊誌「フォーカス」を創刊したことでも知られている。
その際には「人殺しの面を見たくないのか」と言ったという伝説まである。
かつて「週刊新潮」の編集部にいたこの本の著者森功だが、「評伝」というにはあまりにも斎藤の実態は描かれていない。
むしろ出版界における編集者たちの姿を描いたノンフィクションという方がいいかもしれない。
それほどに斎藤十一は「伝説」というベールに包まれた存在だったともいえる。
編集者としても面白味をいかんなく表出せしめたからこそ、斎藤十一は「鬼才」なのかもしれない。
(2021/05/20 投稿)

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05/19/2021 東京日記6 さよなら、ながいくん。(川上 弘美):書評「視点を変えれば不思議な日常」

今日は
川上弘美さんの「東京日記」シリーズの
6冊目、
『さよなら、ながいくん。』を
紹介します。
しばらく本がでなかったので
もしかしたら
一冊読みもれしたかと少し焦りましたが
ちゃんと読んでいました。
このブログの検索機能で
「東京日記」を調べると
ちゃんと今までの5冊を
読むことができます。
毎回読んでいるのですから
川上弘美さんへの愛も
長くなりました。
じゃあ、読もう。

この作品の初出は「WEB平凡」で、その連載が2021年2月で20年になったそうだ。
すごいな、20年。
生まれた子どもが成人式を迎えたわけだから、実に目出度い。
20年ともなれば、いろんなものごとが変わる。
20年前にはスマホなんてまだなかった。
20年前にはラインという通信手段もなかった。
それに、この作品では「ほんとうのこと」が7割だった(というのことは3割がうその話だった)のが、今ではほとんどが「ほんとうのこと」だという。
虚実まざって不思議な世界観を出していた作品が、実ばっかりになってまともな世界になったかというと、決してそんなことはない。
「ほんとうのこと」がほとんどになっても、川上弘美さんは不思議な世界にいる。
連載が20年になって、単行本も6冊めとなった。
この本には2016年4月から2019年3月までの「日記」が収められている。
つまりはコロナ前の「日記」になるのだが、今から思えば平和だったな、海外にもばんばん行けてたんだなとか、とっても懐かしい気分で読んだ。
私たちの日常は続いているのだが、きっとどこかで世界観が変わることもあるのではないか、そんなことも思ったりする。
ちなみにタイトルに出てくる「ながいくん」は、川上弘美さん愛用の長傘のことである。
(2021/05/19 投稿)

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05/18/2021 「繊細さん」の本(武田 友紀):書評「知ることで前向きになれる」

実は最近まで
今日紹介する「HSP」のことは知りませんでした。
それを知ったのは
少し前に新聞に出ていたからで
気になったので
図書館の所蔵本を調べて
今日の本、
武田友紀さんの『「繊細さん」の本』に
たどりつきました。
ベストセラーにもなっているので
ご存じの方も多いかと思います。
書評にも書きましたが
「HSP」というのは
「Highly Sensitive Person」(とても敏感な人)という気質です。
悩んでいる人もたくさんいます。
この本で
それがどういう気質をいうのかを
まず理解することは肝心だと思います。
じゃあ、読もう。

「ライオンはライオンと名づけられる前は得体の知れない凶暴な恐怖であったが、それをライオンと名づけた時から、凶暴ではあるが一個の四足獣にすぎないものとなった」と書いたのは、開高健だったと思う。
それは病気などにも当てはまって、昔は単に「ボケ」と呼ばれていたようなことも「認知症」という名前が与えられることによって対処するようになったことも、開高の「ライオン」の話を同じだろう。
「HSP」も同じだと思う。
これはアメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱した「Highly Sensitive Person」(とても敏感な人)という気質をいう。
それを著者のHSP専門カウンセラーの武田友紀さんが「繊細さん」と名付けることで、さらに身近なもの、克服できるものになっていく。
本書の副題に「気がつきすぎて疲れる」とあるが、これはHSPが持っている「感じる力が強い」という特徴が出過ぎた結果だろう。
この本にはアーロン博士による「HSP自己テスト」がついているので、自身がそうなのか試してみることができる。
例えば「他人の気分に左右される」とか「ミスをしたり物を忘れたりしないように気をつける」といった質問が23項目あって、それにはい、いいえで答える。簡単な自己診断なので、本書を読む前にまずやってみることをお薦めする。
この本は2018年に出ているが、今までにかなりの部数が出版されているようだ。
自分の性格が気になる人に、著者からの「人は、自分のままで生きると元気だ」というメッセージが心強い。
(2021/05/18 投稿)

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05/17/2021 ジャガイモに異変が!! - わたしの菜園日記


これはムギコスモスの花。
菜園に誰かが持ってくれた
鉢植えの花です。
もう一枚、これは私の畑に咲いていた
珍しい花。

これ、オカノリの花なんです。
オカノリはアオイ科の野菜ですから
オクラとかモロヘイヤの仲間です。

黒い斑点がでてきたということを書いたのを
憶えていますか。
その後やはりどんどん悪化して
ごらんのように枯れてきました。

ここまで悪くなると
どんなイモが出来ているかわかりませんが
とにかく伐採するしかありません。
恐々抜いてみると
見事とは決していえませんが
なんとかきれいなジャガイモが
収穫できました。

これはキタアカリという品種。
せめてこぶし大のものがもっとあればよかったのですが
土との相性が合わなかったのですから
仕方がありません。

トウガラシの苗を植えました。

鷹の爪という品種。
シシトウやピーマンは育てたことがありますが
純粋なトウガラシの栽培は
初めてです。
どんなふうに育つのか
楽しみです。

一番果がつきました。

これは早めに採ってしまいます。

成長著しいタマネギでワッサワッサ。

こんな元気な姿をみると
うれしくなります。

小さな芽が出てきました。


ジャガイモ以外に
サンチュも採りました。

結構うまく育ってくれました。

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05/16/2021 しげちゃんのはつこい(室井 滋/長谷川 義史):書評「あの子今頃どうしているのかな」

今日は
昨日の長谷川義史さんの絵本つながりということで
室井滋さん文、
長谷川義史さん絵の
『しげちゃんのはつこい』を
紹介します。
『しげちゃん』シリーズもこれで3作め。
すっかりお二人のコンビも
油がのってきました。
このコンビが末永く『しげちゃん』シリーズを
書かれることを願っています。
それにしても
長谷川義史さんという絵本作家は
幅広い。
昨日の『串かつやよしこさん』のようなギャグ絵本を描いたり
今日のように
ほんのりする作品を描いたり。
まいりました。
じゃあ、読もう。

女優の室井滋さんが文を書き、絵本作家の長谷川義史さんが絵を描いた絵本『しげちゃん』は、この絵本で三作目となります。
しげちゃんは小学三年生の女の子。今回はしげちゃんの、淡くて切ない初恋が描かれています。
初恋はいつのことだったのか、みなさんこっそり覚えているものです。
小学生の頃によくケンカをした女の子がいました。担任の先生が「ケンカをするのは好きだからだ」なんて、叱っていましたが、そんなことも昭和の小学校らしい記憶のような気がします。
しげちゃんの場合、大阪から転校してきたちょっとおかしい男の子サエちゃん。(佐枝一郎というのが本名だから、サエちゃん)
サエちゃんはちっとも勉強ができない。でも、いつの間にクラスの人気者になっている。
しげちゃんは気になっているのに、なんだかサエちゃんからはずれそう。
そんな時、サエちゃんが学校に来なくなった。
先生からサエちゃんの家に給食のパンをもっていくように言われたしげちゃんはドキドキ。
そして、しげちゃんはどんどんサエちゃんのことを知っていく。
けれど、サエちゃんはしばらくしてまた大阪に戻っていってしまう。
しげちゃんに自由勉強ノートに書いた最後の手紙を残して。
この絵本を読んで、あの頃のことを思い出しているのはお母さんやお父さんたちかも。
このシリーズ、ぜひとも今後も続けてもらいたい。
なんとしても「しげちゃん上京物語」(勝手にタイトルつけちゃった)は読みたい。
(2021/05/16 投稿)

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05/15/2021 串かつやよしこさん(長谷川 義史):再録書評「 お酒が飲みたくなる? 絵本」

今週は
コロナ禍で苦境に立たされた
飲食業の皆さんを
応援する一週間になりました。
最後は絵本で締めくくります。
え?! お酒と絵本?
そんな絵本があるのですかと思われる人もいるかと思います。
あります、あります。
長谷川義史さんの、そのものズバリ
『串かつやよしこさん』。
2011年4月に書いたものの
再録書評として
紹介します。
この絵本を読むと
串かつやさんや居酒屋さんがいかに楽しい場所なのか
よくわかります。
どんな感染症にも人類は打ち勝ってきました。
くじけず、くさらず、
今少しの辛抱。
居酒屋さんたちの復活を大勢の人が待っています。
じゃあ、飲もう。

長谷川義史さんの、おなじみオヤジギャグ満載の絵本です。でも、串かつやさんが舞台の絵本って前代未聞じゃないですか。
よしこさんは串かつ名人。なにしろよしこさんが揚げる串かつは人々を幸せにするんですから、こんなお店があったら行ってみたいもの。
最初にやって来たのはぷりぷり怒っているおじさん。よしこさんが揚げたのはイカ。それを食べたおじさんは、怒っているのも忘れて「ま、イッカ」と帰っていきます。
これ、絶対にオヤジギャグです。こんなこと、学校で言ったら、フンってされますよ。
そういう危険な? ギャグが不思議と長谷川さんの絵と合うんです。串かつにキャベツがぴったり合うように。これって相性ですかね。
この絵本の表紙裏にはよしこさんの串かつメニューがどっさり紹介されています。微妙に形態が違うところがまた面白い。
絵本を読んで、串かつやに行きたくなるのもどうかと思いますが、ま、いっか。
でも、お子様はおとなになるまで我慢してくださいね。
(2011/04/17 投稿)

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05/14/2021 居酒屋兆治(山口 瞳):書評「時代おくれの酒場でもいいもんだ」

お酒の本が続きます。
今日は
山口瞳さんの『居酒屋兆治』。
ちょっと昔の小説ですが
高倉健さんが出演した映画『居酒屋兆治』の
原作です。
書評にも書きましたが
この映画の大原麗子さんが細い糸のような
女性を見事に演じています。
高倉健さんの奥さん役を
加藤登紀子さんが演じていて
加藤登紀子さんが作詞作曲した
主題歌「時代おくれの酒場」を
高倉健さんが唄っていて
もう痺れます。
コロナ禍がおさまって
また居酒屋さんにたくさんのお客さんが
戻ってくるのを願っています。
じゃあ、飲もう。

1963年に『江分利満氏の優雅な生活』で第48回直木賞を受賞した山口瞳さんは1995年に亡くなるまで人気作家だった。
特にサラリーマンの読者が多かったという印象が強く、山口さんの代名詞ともなったエッセイ『男性自身』に勇気をもらった人は多いのではないだろうか。
そんな山口さんの代表作のひとつが、1982年に発表されたこの連作長編だ。
なんといっても、この作品は翌年降旗康男監督で映画化され、今でも人気が高い。
主人公の兆治を高倉健が演じ、彼を慕い忘れられない薄幸の女性を大原麗子が熱演している。今観ても、この時の大原麗子は美しい。
高倉健、つまり兆治の親友を演じていたのが先日亡くなった田中邦衛といったように、脇を固める俳優たちもいい。
映画の舞台は函館だったので、兆治の店がそこにあるようについ思ってしまうが、原作では山口さんが愛してやまなかった東京・国立になっている。
しかも、兆治のモデルとなったやきとりの店が国立にあったという。山口さんはそのお店の常連でもあったそうで、お客の酔う様や発する言葉を頭にとどめていたのだろう。
お酒を飲んでくだをまいたり、笑ったり、泣いたりする。
そんな時間をやさしく包み込んでくれる場所が居酒屋で、特に昭和の居酒屋にお世話になった人も多いにちがいない。
だから、互いに好きであっても別れるしかなかった男と女や、リストラで仲間を馘首するには忍びなく会社をやめていった男など、今では聴けなくなった演歌の世界のようだが、その良さを忘れたくない。
(2021/05/14 投稿)

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05/13/2021 ステーキを下町で(平松 洋子):再録書評「一見に如かず」

昨日
東海林さだおさんの
『ひとり酒の時間 イイネ!』という本を
紹介しました。
今日はその東海林さだおさんを
師匠のように慕う
平松洋子さんの『ステーキを下町で』を
再録書評で紹介します。
書いたのは2013年の5月。
書評にも登場する
赤羽の「まるます屋」さん。
ひとり酒のメッカのようなお店。
緊急事態宣言の中
どうなっているのか調べると
店頭販売のみで
店内は休業しているようです。
「まるます屋」さんに限らず
飲食のお店は厳しいでしょうが
コロナに負けないでと
応援します。
じゃあ、飲もう。

東京北区赤羽にある大衆酒場「まるます屋」に行ってきました。土曜のまだ3時前。こんな時間にお酒なんて飲んでいいのでしょうか。
あれ? これって書評ですよね。居酒屋レポートじゃないですよね。なんて思った方、あわてない、あわてない。これ、ちゃんとした書評ですから。
昼下がりの時間なのに、もう店内はいっぱい。さすがだ。
なにしろこのお店は「朝から酒飲みてえ」という先代の意向で朝の9時から開けているのです。
だとしたら、酔っ払いばっかし? とんでもない。このお店には「お酒類1人3本まで」という「お約束」があって、皆さん、楽しくお飲みになっています。
しかも、女性客も多いではありませんか。
さては、平松洋子さんの『ステーキを下町で』をお読みになったか。それも、違う。ただただ「まるます屋」のファンの皆様とお見受けしました。
朝から開いている大衆酒場「まるます屋」のことは、エッセイスト平松洋子さんの『サンドウィッチは銀座で』に次ぐ、味めぐりエッセイの第二弾のこの本の「朝の大衆酒場、夜はスナック」に紹介されています。
この本、味めぐり、旅行案内だけでなく、東京駅内に出現した名店街やあの「餃子の王将」といったホットスポットまで網羅されていて、さすが平松さん、文章だけでなく、取材対象にも心配りが感じられます。
今回も谷口ジローさんのいい画が添えられていて、さらに食欲がそそられるのです。
でもさすがに豚丼を食べに帯広には行けず、黒豚恋しくても鹿児島は遠く、ああでもこの本に紹介されているあの味この味、せめて一品でも食したい。
この本を読めば、誰でもそう思うはず。舌がむずむずするのです。
それもこれも平松さんの文章のなせるわざ。
ならば、赤羽はどうだ。これなら途中下車して行けます。できたら、平松さんが行ったのと同じ時刻がいいということで、冒頭の文章に戻ります。
食するのは、「酢味噌をつけてつまむと、いましも天国に招き入れられた心地に包まれる」と、平松さんおすすめの鯉の洗いにしましょう。
生ビールもつけて。
いやあ、昼からいいのでしょうか。
平松さんの本は、それ自体おいしいのですが、やはり一見に如かずです。
〆て750円の快楽。
次はどこに行こうかと、思案したくなる一冊なのです。
(2013/05/27 投稿)

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05/12/2021 ひとり酒の時間 イイネ!(東海林 さだお):書評「こんなご時世だから、せめてこの一冊を」

東京や大阪の緊急事態宣言は
5月31日まで延長されましたが、
そもそも国は5月11日で目途がつくと思っていたのでしょうか。
その要請内容をみると
やはり飲食業への締め付けはキツイと感じます。
もう少し
飲食を伴う理由による発症の確率とか明確にして欲しいもの。
そんなこんなのご時世ですので
せめて本の世界だけでも
楽しく飲んでみませんか。
なんといっても
お相手をしてくれるのが
東海林さだおさん。
タイトルは『ひとり酒の時間 イイネ!』。
では、まずおひとつ。
じゃあ、飲もう。

長びくコロナ禍の中、再三にわたる緊急事態宣言にまたもや飲酒業への酒類の提供禁止や休業要請、営業時間短縮など、まるでコロナの源がお酒にあるかの如き政策にあ然となる。
飲酒を伴えば自然と声が大きくなったり話が弾んだりする。それが感染症にはよくないのは理解できるが、お酒を伴わなくてもそういうことはよくあることだ。
それなのに、「ひとり酒」まで禁止することないのでは、と思う。
長年「ひとり酒」の楽しみ方について、研究?してきた東海林さだおさんは、居酒屋や定食屋で「ひとり酒」をしている人は「真面目」だと看破している。
そういう「真面目」な人たちから、お酒を取り上げていいのか、店を閉めていいのか。
漫画家東海林さだおさんは、「丸かじり」シリーズをはじめとして、数多くの食のエッセイを書いてきたエッセイストでもある。
当然その中にはお酒をネタにしたエッセイも数多くあって、この本はその中から選りすぐりの「ひとり酒」エッセイを集めたものだ。
しかも、国電(現在のJR)に載ってチョーチン(提灯)のぶらさがったビアガーデンを描いた懐かしい昭和の風景を描いた、東海林さんの初期の頃のものまであって楽しめる。
東海林さんは「だれがなんといったってビールッ」と叫ぶほどのビール党なので、この本一冊まるまるビール愛が吹きこぼれている。
こういう本を読むと居酒屋に行きたい、ビアガーデンに行きたい、誰もが思う。
思うけど、行けない。
こそっとも行かない。
だから、せめて家で缶ビールを「ひとり飲み」します。
(2021/05/12 投稿)

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05/11/2021 家族の味(平野 レミ/絵 和田誠):書評「愛は最高の調味料」

今日は
平野レミさんの『家族の味』という本を
紹介します。
絵を描いているのは
平野レミさんの夫和田誠さん。
この本、結構名言が多い。
作る人と食べる人って、いい関係じゃないとね。
特別に手伝ってくれなくても、
いいコメントを言ってくれる人がそばにいると、
自信もついてくるし、料理の上達にもつながる。
今日の書評のタイトルは
平野レミさんが歌った「わたしのキッチン」(作詞は和田誠さん)から
拝借しました。
食べる人を想ってお料理しましょう
愛は最高の調味料
じゃあ、読もう。

表紙の、和田誠さんが描いた平野レミさんの似顔絵が似ているかどうか、そっくりだという人もいれば似ていないという人もいると思います。
でも、これだけはいえます。
平野レミさんという人のことがとてもよくわかる似顔絵だということが。
これこそ夫和田誠さんの愛の力、なんていったら、妻平野レミさんは赤面するでしょうが。
料理愛好家としてテレビの料理番組にも出演し、その大胆な調理法に見る人を圧倒させている平野レミさんのこの本は、2007年の秋に筑摩書房から出た『笑ってお料理』が底本になっているので、使われているさし絵は和田誠さんによるものに間違いない。
この本ではさらに2014年に雑誌に掲載された「夫婦対談 和田誠×平野レミ」と和田誠さんが亡くなったあと雑誌「婦人公論」に載った「鼎談「和田誠を偲ぶ」清水ミチコ×阿川佐和子×平野レミ」が載っていて、これがまたいい。
平野レミさんの魅力だけでなく、和田誠さんの人柄もよくわかります。
何しろこのお二人、和田さんが「死ぬまでにあと何千回レミのご飯を食べられるかな」と言ったといい、レミさんが「それならきちっとやればいい」と応えたほど、料理の対する愛情が深かった。
それは食い意地がはっているのとは、違います。
料理を間にして、愛情をやりとりしていたのだと思います。
だから、この本は料理のレシピとかも載った料理本ではありますが、レミさんの愛情たっぷり愛情本でもあるのです。
和田さんだけでなく、家族全員、その友だちまで。
(2021/05/11 投稿)

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05/10/2021 紫エンドウの豆ごはん - わたしの菜園日記


赤飯?
お誕生日会?
お祝い事?
実はこれ、
紫エンドウでこしらえた豆ごはんを
一日おいたもの。
そうです、
紫エンドウ、別名ツタンカーメン豆を
ついに収穫しました。

収穫した莢は写真のように紫ですが
中の実は緑色したエンドウ豆。
収穫したその夜に
豆ごはんとして食べました。
その時は普通の豆ごはんですが、
一日おくと、こんな風に色が変化します。
これって、
ツタンカーメンの呪い? でしょうか。
ちなみに、
豆ごはんは夏の季語でもあります。
豆飯や軒うつくしく暮れていく 山口 青邨
デザートには
採れたてイチゴ。

イチゴもまた夏の季語。
青春のすぎしこゝろ苺喰ふ 水原 秋櫻子

先週植えたキュウリの畝に
ネットを張りました。

区画全体を
いつもと反対の角度から写すと
こんな感じ。


花がついていました。
白い花がピーマン、
黄色い花が大玉トマト。


夏野菜は
花もきれいですから
そちらも楽しみ。


ふっくらとしてきたのが
わかるようになってきました。
収穫まで
あと数週間です。

最初に蒔いた種が4つ。
芽がしっかり出たので
ひと穴に2つにします。
ハサミで間引きする苗を切ります。

どれを切ろうか
いつも悩むところです。
残すべきか、切るべきか
それが問題だ、と
ハムレットが言ったとか言わなかったとか。

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今日は母の日。
母の日のきれいに畳む包装紙 須賀 一恵
そんな日に
ぴったりの絵本を紹介できるなんて
とてもうれしい。
桜木紫乃さんが初めて書いた絵本
『いつかあなたをわすれても』。
母の日に
お母さんにプレゼントするのも
すてきでしょうね。
こういう絵本を読むと、
もし絵本ということで
大人の人たちが読まないとしたら
なんてもったいないことでしょう。
ぜひ、母の日に
子どもたちと一緒に
あるいは自分の母と一緒に
読んでみたらどうでしょう。
じゃあ、読もう。

桜木紫乃さんの初めての絵本は、とても考えさせられる女性の、家族の絵本でした。
この絵本に寄せた桜木紫乃さんのメッセージをネットで読むことができます。
そこには母から自分の名前を忘れられた自身の経験が書かれ、そのあとに「この先、どんどんわたしを忘れてゆく母のことを考えながら、「家族じまい」という小説を書きました。絵本「いつか あなたを わすれても」は、小説からは漏れた、孫の視点で書いてみました。」と綴られていました。
この絵本に登場するのは、幼い私、そしてママとママの名前を忘れたおばあちゃんの「さとちゃん」。
認知症の「さとちゃん」はママの名前だけでなく、これまでのことをゆっくり忘れていこうとしています。
ママはそのことを悲しむのではなく、しっかり受けとめています。
そんな「さとちゃん」がいたから、私とママは「女の子と女の人のちがい」や「初めてのキス」のことなど、少し大人の会話ができるようになります。
それは母から娘に手渡す大切な時間。
初めての絵本作りに桜木紫乃さんは、「不要な言葉を取り払ってゆく作業」と綴っています。
いつも書く物語の文体ではなく、言葉を絞ってしぼってできた絵本だからこそ、伝わる思いというのがあります。
桜木さんのそんな思いが、オザワミカさんの絵にもよく伝わっていて、ここでも「不要な」ものが取り払われています。
「いつか わすれてしまうじかんを/たいせつにすごす」、心の奥にジンをくる言葉です。
(2021/05/09 投稿)

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05/08/2021 ナイルに死す(アガサ・クリスティー):書評「ポアロは縁結びの神様」

先月、先々月と
アガサ・クリスティーの作品を
月末に紹介するという
ひやひやの読書記録となりましたので
今月は反省して、
さっそく今日紹介します。
しかも、
紹介するのが『ナイルに死す』という
アガサ・クリスティーの作品の中でも
有名な一冊。
いつもの霜月蒼さんの
『アガサ・クリスティー完全攻略』でも
★★★★の高評価作。
この本を読んで
エジプト旅行に行ってみたいと思った人も
大勢いるのではないかしら。
この本、
読んで損はしません。
じゃあ、読もう。

アガサ・クリスティーが1937年に発表した、いわゆる「ポアロもの」(名探偵エルキュール・ポアロが事件の謎をとくシリーズ)の長編作。
数多い「ポアロもの」の長編の中でも、「代表作」のひとつである。
実際とても面白い。
ただ犯人あてをいう側面では、私の推測があたったくらいだから、犯人がわかった読者も多いかもしれない。けれども、推理が解けたとしても、この作品の面白さを減少させるものではない。
この物語の面白さはなんといっても登場人物の多さだろう。
そうなれば、当然途中で名前がこんがらがって、前にページや表紙袖の「登場人物」一覧に戻ることになるが、それであってもそれぞれの人物の特長がはっきりしているのでわかりやすい。
新訳版の文庫で500ページ以上ある作品だが、70ページほどが「第一部 登場人物の紹介」で、最初の殺人事件が起こるのがほぼ半分あたりだから、いかに周辺の人々の描写が熱心に書かれたいたかがわかる。
そして、この作品でもポアロのあたたかみのある配慮が随所に見られる。
このポアロという男は、特に傲慢すぎるところがあるが、この作品では最初からやさしいおじさま風なのだ。
3つの殺人事件が起こる作品ながら、事件が解決する頃には新しい恋が2つも始まっているのだから、なんともほほえましい恋愛ものともいえる。
もしかすると、ポアロは縁結びの神様かもしれない。
(2021/05/08 投稿)

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05/07/2021 私の体を通り過ぎていった雑誌たち(坪内 祐三):再録書評「同じ時代の空気をまとって」

昨日
坪内祐三さんの
『一九七二 「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」』という
本を紹介しましたが、
その最後あたりに
雑誌「ぴあ」の話が出てきます。
そうあの「ぴあ」の創刊もまた1972年だったのです。
私が「ぴあ」を知ることになるのは
それから一年ぐらいしてから、
東京の大学生になってからですから
やはり坪内祐三さんは
年下でありながら
同世代の人という印象があります。
今日は坪内祐三さんの
『私の体を通り過ぎていった雑誌たち』という本を
再録書評で紹介します。
2005年に書いたものですが
その頃から
坪内祐三さんに共感するところが
あったようです。
じゃあ、読もう。

「同時代」という言葉は今でも使われているのだろうか。
この大仰な言い方は、それでも時代の気分というものがあり、それを口にするだけでいくつかの時代の謎が解けていったような気がする。
一九五八年生まれの坪内祐三は一九五五年生まれの私にとってまさに「同時代」の著作家であり、坪内の作品に書かれた内容以上に共鳴するのは、この「同時代」という言葉がもっている雰囲気によく似ている。
坪内はこの本のことをこう書いている。
「私が出会い、何らかの影響を受けた、あるいはその時代を象徴していた雑誌について、私の個人的体験を描きながら、一つの時代の精神史(とは少し大げさであるが)を書き残そうと思った」。
坪内と「同時代」を過ごした者として、個人的な体験は大きく違うものの(坪内は東京の街の子であるが、私は大阪の郊外の小都市の子供であった)、この本の中で彼が紹介する雑誌の多くが懐かしく、これこそが「同時代」を生きた者だけが共感しうる思いだと、この本を読みながら何度ほくそえんだことだろう。
坪内が中学時代に出会ったという映画雑誌『スクリーン』。この本の中の図版として紹介されている『スクリーン』の表紙はキャンデス・バーゲンである。
それがいつの号かはわからないが、この表紙には見覚えがあった。
当時坪内同様、映画に夢中になりかけた私もまた、彼女が表紙の『スクリーン』を買ったのは間違いない。そして、坪内と同じようにこの『スクリーン』に掲載されていた双葉十三郎や淀川長治の連載記事に夢中になっていたのも事実だ。
坪内のこの本の魅力は、例えば子供の頃に使っていた机のひきだしからメンコとかおまけのシールとかを見つけた時の思い、だろう。
ひきだしには子供の頃の宝ものがいっぱいつまっている。
今では何の役にも立たないけれど、その一つひとつがあの頃の自分を思い出してくれる。
思い出は、ほろ苦く、甘酸っぱい。
それこそが「同時代」的な感傷かもしれないが、どうしようもなく惹かれてしまう。
坪内は書き留めた雑誌たちは、確かに一つの時代の精神史を彩ったものだったに違いない。
(2005/05/24 投稿)

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今日紹介する
坪内祐三さんの
『一九七二 「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」』は
文化評論として
位置づけられていて、
2003年に書籍になっています。
坪内祐三さんは
1958年(昭和33年)生まれですから
私の弟世代になるのですが、
書評にも書いたように
坪内祐三さんは
早熟な少年だったようで
その経験は年下ながら
重なるところが多く
この作品もずっと気になっていた
一冊でした。
今更ながらに
早逝が惜しまれてなりません。
じゃあ、読もう。

手元にある岩波ブックレットの『年表 昭和・平成史』で、この本のタイトルにもなっている「1972年」を開いてみると、「浅間山荘事件」(2月)、「ニクソン米大統領、中国訪問」(2月)、「沖縄県本土復帰」(5月)、「日本列島改造論」(6月)、「日中国交樹立」(9月)などが、太文字で記されている。
もちろん、他には「札幌冬季オリンピック」(2月)や「田中角栄内閣成立」(7月)、「上野動物園のパンダ」(11月)など、懐かしい事柄が目に入る。
2020年1月に61歳という若さで早逝した坪内祐三さん(ということは、坪内さんは1958年生まれであった)は、何故「1972年」を「はじまりのおわり」と位置づけ、「おわりのはじまり」と見たのだろうか。
2000年の初めに雑誌「諸君!」で連載を始めた第一回めにこう書いている。
「高度成長期の大きな文化変動は1964年に始まり、1968年をピークに、1972年に完了すると。」
そして、自分(坪内さん)は「1972年以前に生まれた人となら、たぶん、歴史意識を共有出来る気がする」と。
しかし、この年坪内さんはまだ14歳の中学生に過ぎないことを考えれば、いかに早熟な少年だったことだろう。
しかも、坪内少年にはすでに渋谷の街の本屋や名画座に足を運ぶ、そんな子供であったから、そのあたりを差し引かないと、時代の共有はできないのではないだろうか。
というか、そんな坪内少年だからこそ、彼の数年先に生まれた世代とも「歴史意識を共有」できたといえる。
そして、坪内少年は幼い頃から他の誰よりもいそぎ足で人生を駆け抜ける人だったのかもしれない。
(2021/05/06 投稿)

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今日は
二十四節気のひとつ、立夏。
暦の上では
今日から夏。
「歳時記」も「夏の部」に変わります。
街角のいま静かなる立夏かな 千葉 皓史
まるでコロナ禍の今を詠んだような感じがしますが
もちろんそうではありません。
でも、いい句は
どんな時代も映し出してきます。
そして、
今日はこどもの日。
子供の日小さくなりし靴いくつ 林 翔
そこで今日は
こどもの日にぴったりの絵本を
紹介します。
湯本香樹実さん文、
はたこうしろうさん絵の
『あなたがおとなになったとき』。
大型連休も今日が最後。
いい一日をお過ごしください。
じゃあ、読もう。

この絵本の作者湯本香樹実(ゆもとかずみ)さんといえば、1992年に発表された『夏の庭 The Friends』を読んだ人が多いかもしれない。
あるいは、映画化された『岸辺の旅』を思い出す人もいるだろう。
どちらかといえば寡作の書き手だが、湯本さんの作品が好きという読者も多いのではないだろうか。
そんな湯本さんが児童というよりかもう少し上の少年少女向けに書いたのが、この作品。
絵本の判型をしているので、中学生や高校生となるとなかなか手にしにくいかもしれないが、読めば何ほどか心に残るものがあるだろう。
「あなたがおとなになったとき/どんな歌がすきだろう」
「あなたがおとなになったとき/空はおなじ青さだろうか」
このように、「あなたがおとなになったとき」がリフレインされていく。
この言葉のあとにつづく問いかけの、あなたの心に響くものがきっとあるだろう。
もうすっかりおとなの私の場合は、「あなたがおとなになったとき/いちばん手にとりやすいところにあるのは/なんの本だろう」だった。
そんな忘れかけているものを、それは子どもであっても少年であってもおとなであっても同じだろう、この言葉が思い出させてくれるはずだ。
そして、この絵本に登場する少女と少年のように、いつしか大きな塀を乗り越えて新しい世界に旅だしていくのだろう。
おとなになるために。
はたこうしろうさんの絵が湯本さんの文をまるで映画のように仕上げてみせた、そんな絵本になった。
(2021/05/05 投稿)

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05/04/2021 森の絵本(作 長田 弘/絵 荒井 良二):書評「だいじなものを さがしにゆこう」

今日はみどりの日。
体内の水の流れやみどりの日 和田 悟朗
そこで今日は
みどりも鮮やかな表紙の
長田弘さん文
荒井良二さん絵の
『森の絵本』を
紹介します。
ここ何日かで
お二人の絵本
『水の絵本』『空の絵本』、そして
この『森の絵本』と
紹介してきましたが
どの作品も長田弘さんの文もいいですし
荒井良二さんの絵も
素敵です。
お二人の個性が共鳴し合って
より広くて深い絵本に仕上がったのではないでしょうか。
じゃあ、読もう。

みどりは目に優しい色だといわれています。
初夏の頃の若葉のあざやかな緑を表わす夏の季語に「新緑」があります。
俳句の世界では、その他に中村草田男の「万緑の中や吾子の歯生え初むる」で広く愛用されるようになった「万緑」という季語もあります。
「歳時記」にはこの季語に「木々の緑が深まり、生命力に溢れる様子」と解説がついています。
みどりには、優しさだけでなく、いのちの生き生きとした姿を感じさせます。
この絵本の表紙も、そうです。
荒井良二さんのみどり色を基調にした森の絵が目をやさしくすると同時に、ページの中へと引き込んでいきます。
中には、詩人長田弘さんの文が、これもまた不可思議な呼び声となって、私たちを惹きつけます。
「きみの だいじなものを さがしにゆこう」
「きみの たいせつなものを さがしにゆこう」
みどりの深い森の中に、その答えはあるのでしょうか。
色や光や匂いや笑い声、いろんなものを見つけます。
そして、本。子どもの時にとても好きだった本。
「その本のなかには きみの だいじなものが ある。ぜったいに なくしてはいけない きみの思い出がー」と、声が教えてくれます。
本の詩をたくさん書いてきた長田さんだからこそ書ける詩の一文のように感じました。
そして、ふたたび森のみどりの中に私たちはいます。
大事なもの、大切なもの、それはずっと探し続けるものでもあります。
(2021/05/04 投稿)

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05/03/2021 夏野菜の植え付け始まる ー わたしの菜園日記

バラの花ももう見頃かと
大型連休に入ったばかりの金曜日に
近くにある公園に出掛けたのですが
さすがにきれいに整地されているバラ園でしたので
まだ多くの花は蕾でした。
それでも
奇麗に咲いているバラがあったので、パチリ



バラは夏の季語になります。
薔薇園の薔薇整然と雑然と 須佐 薫子

いよいよ夏野菜の植え付けが始まりました。
4月30日(金曜)に苗が入ったので
さっそく植え付けてきました。
これは三番畝。

右側がピーマン、真ん中が以前種をまいたサンチェ、
そして左にあるのが白ナス。
白ナスは初めての栽培で、
どんな実がなるのか楽しみです。

大玉トマトとキュウリを植えました。

この畝は野菜を選択できて
小玉スイカを選択した利用者もいますが
やっぱりキュウリははずせなくて
菜園で支給されたシャキットと
ホームセンターで買ってきた
夏ばやしという品種の2種類を植えました。
キュウリの横に植わっているのは
コンパニオンプランツとしてパセリです。

こんな感じになりました。

一番手前に防虫ネットをかぶっているのは
エダマエ。
ちゃんと芽がでました。


いくつかついてきました。

莢の中の実はまだまだ薄くて
収穫というところまではいきません。

ジャガイモ。
写真でわかるように
葉に黒い斑点がでてきました。

そして、黄色く枯れていきます。
調べると
土との相性が合わないようで
この症状が出ているのは
キタアカリの品種だけで
メークインの方には出ていません。
野菜も
結構デリケートなものです。

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05/02/2021 まわるおすし(長谷川 義史):再読書評「おとうさん、回転ずしに連れてって」

大型連休にはいったけれど
コロナ禍で
外出自粛要請が出ていたりで
なかなか晴れやかな気分にはなりません。
こんな時は
せめて家族で外食をしたいもの、と
回転寿司屋さんに出かける人も多いのでは。
そこで
今日は長谷川義史さんの面白絵本
『まわるおすし』を
紹介します。
実はこの絵本、2012年4月にも読んでいて
この時の書評もいいのですが
せっかくなので
新しく書きました。
なので、再録ではなく
再読書評。
大型連休はまだまだ続きますが
ステイホームで絵本を読んで
過ごすのもいいですよ。
じゃあ、読もう。

絵本作家長谷川義史さんの笑いと勢いは、大阪人ならではの芸風、いいえ作風です、といえます。
この絵本も月に一度おとうさんの給料日に回転ずしを食べに行く家族四人、おとうさんとおかあさん、そしてぼくといもうとの姿を面白おかしく描いたものですが、けっしてそれは突飛なものではなく、いるいる、あるあるの普段よく見かける光景でもあります。
せっかくなので、回転ずしの歴史をwikipediaで調べると、昭和33年(1958年)東大阪にある元禄寿司さんが「廻る元禄寿司 1号店」として開店したのが始まりとでています。
なんと、大阪藤井寺に昭和36年(1961年)生まれた長谷川さんと同じ文化圏で生まれ育ったことが判明し、長谷川さんの絵本人生で避けて通れなかった作品だというのがわかります。
と、大袈裟な表現も大阪人ならではのもので、その気分も楽しまないと長谷川さんの絵本も面白くないのではないでしょうか。
回転ずしといえば、ねたによって価格がちがうのをお皿の色で分けているのも特長のひとつ。
この絵本でも、おとうさんの合図でまずは青いお皿(このあたりが最初としての値ごろ感がいい)に手を伸ばし、やがて黒い皿(気合がはいる価格帯)にたどりつきます。
この絵本の家族ほどではないにしても、回転ずしに行くと、やはりお皿の色が気になるもの。
長谷川さん、よく見てはる。
この絵本を読んだら、回転ずしをねだる子どもたち続出かも。
(2021/05/02 投稿)

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