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 昨日『昭和の映画絵看板』という
 ゴキゲンな本を紹介しましたが
 映画という表現芸術は
 映画自身を題材にしてたくさんの映画を
 作っている点でも
 他の創作とはちがった見方をすることができます。
 先日、
 ニコール・キッドマン主演の「オーストラリア」という
 2009年公開の映画を観たのですが、
 ここでもジュディ・ガーランドの「オズの魔法使い」(1939年)が
 うまく使われていました。
 このように映画を使うだけでなく
 映画人や映画関係そのものを映画にした作品も
 たくさんあります。
 今日はそんな話です。
 
 映画そのものを
 あるいは映画館を描いた作品で
 ベスト1はやはり1989年公開の
 「ニュー・シネマ・パラダイス」ではないかな。
 ジュゼッペ・トルナトーレ監督のイタリア映画。

  

 物語の舞台は、シチリア島の小さな村。
 そこにある唯一の映画館の映写技師アルフレードを
 父同然に慕う少年トトの物語。
 この映画館に集まるトトをはじめとした悪ガキの子どもたちや
 さまざまな村の人々がなんともいい。
 昔は映画に一喜一憂していたのがよくわかります。
 どんな名画であってもキスのシーンの上映を禁止する司祭。
 アルフレードは仕方なくその場面を切断します。

 ある夜、
 映画館に入れない観客のために
 アルフレードは機転を利かして村の広場の建物の壁に
 映像を映し出す。
 ゆっくりと映像が動いていく場面の美しいこと。
 そして、そのあとの火災という悲劇。
 トト少年はその火災現場から
 アルフレードを助け出すことで
 二人の友情はさらに深まっていくのです。

 やがて、
 成長したトト少年は恋もし、失恋もし、
 村を去る日がやってくる。
 そんなトトにアルフレードは
 「若いのだから外に出て道を探せ、そして帰ってきてはいけない」と
 諭すのだ。
 この時にいうセリフは
 和田誠さんも『お楽しむはこれからだ PART5』に載せています。

   人生は映画とは違う。人生はもっと困難なものだ。

 トトは結局アルフレードの教えを守って
 村には戻らなかったが
 アルフレードの訃報を聞いて
 今では様変わりした村に戻ってきます。
 アルフレードの老妻から渡されたものは
 かつて禁止されたキスシーンだけを集めたフイルムでした。

 この映画はストーリーもいいし、
 エンリオ・モリコーネの音楽もいい。
 映画ファンにとって、絶対はずせない一本です。

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  私が生まれたのは
  だんじり祭りで有名な大阪・岸和田。
  大阪の繁華街であるミナミに行くには
  南海電車に乗って30分ばかりだろうか。
  子供の頃は
  そこにあった高島屋に行くのが
  とても豪勢なことだった。
  ただし、親に連れていってもらうのだが。
  一人であるいは友人とミナミまで出るのは
  高校生の頃だろうか。
  1970年あたりだろうか。
  それ以前となると、あまり記憶はない。
  今日紹介する
  『昭和の映画絵看板』には実はそれ以前の
  ミナミの映画館の景観が堪能できる。
  しかも、当時封切られていた懐かしい映画と
  それの宣伝を担った絵看板の数々。
  もう見ているだけで、
  大満足の一冊でした。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  かつてそこは夢の国への入り口だった                   

 映画観客人口が最も多かったのは、昭和33年(1958年)。その数、実に11億2700万というからすごい。
 もっともその頃、テレビの普及はまだされていなかったから、おのずと人々の関心は映画に向いたのだろう。
 その2年後には公開作品数と映画館数がピークになって、大都市だけでなく小さな町々に映画館ができたのはないだろうか。
 その当時の、昭和30年から40年にかけての映画館の前には上映作品のスチール写真やチラシの掲示だけでなく、看板絵師たちの手による手書き看板が道行く人々の興味を誘っていた。
 シネマコンプレックスの時代になって、今やそんな昭和の映画館の風景はほとんど見る機会がなくなった。
 そして、それらを記録したものも。

 ところが、ここに奇跡のような本が登場する。
 場所は大阪ミナミ劇場街。そこで昭和30年代の絵看板を記録した写真が見つかる。
 本書の監修を担当している国立映画アーカイブ主任研究院の岡田秀則氏は「それら技芸がもたらした成果を一つひとつの作品と見なし、臆することなく私たちの文化遺産であると見なす」と書いている。
 映画絵看板の記録だけでなく、映画館の前を行き交う人々、映画館に入る人々など、当時の人々の様子もうかがえるし、今やすっかり景観を変えた大阪のミナミの街並みも見ることができる。
 また、当時これらの絵看板の制作に携わった絵師たちの座談会も収録されていて、映画そのものではないが映画を盛り上がてきた貴重な資料といえる。
  
(2021/07/30 投稿)

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  今日は
  超豪華な一冊
  「THE GENGA ART OF DORAEMON ドラえもん拡大原画美術館」という本を
  紹介するのですが、
  「ドラえもん」が小学館の学年誌に最初に発表されたのが
  1969年.
  さすがにこの頃には中学生になっていたので
  「ドラえもん」世代ではありません。
  でも、最初の「ドラえもん」世代ももう50歳を超えているのでは。
  つまり、この国を背負っている多くの人たちは
  「ドラえもん」によって
  多くのことを学んできたにちがいありません。
  今日の本は
  そんな「ドラえもん」世代だけでなく
  漫画をこよなく愛する人たちにも
  読んでもらいたい一冊。
  ちょっと豪華すぎますが。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  なんとも豪華な一冊です                   

 作家たちの自筆原稿には、加筆や修正など創作過程がわかって興味深いという人は多い。
 けれど、ワープロからパソコンと執筆形態も進化してくると、若い書き手たちの自筆原稿を見る機会は将来減っていくのだと思う。
 漫画の場合はどうか。
 最近ではパソコンを使って作画することも多いようだが、やはりそうなると作家と同じで創作過程が見れなくなる。
 そもそも漫画の創作過程を見ようとすれば、「原画」にあたるしかない。
 最近でこそ、漫画家の展覧会などが頻繁に開催されるようになったから、漫画の「原画」を見る機会も多くなった。

 では、漫画の「原画」をどう見るか。
 藤子・F・不二雄さんの不朽の名作「ドラえもん」の拡大原画で、藤子さんの創作過程や「ドラえもん」の世界観をまとめたこの豪華本の巻頭にこう記されている。
 「微妙なペンタッチや墨の濃淡、丁寧にホワイトで修正された跡、かすかに残る鉛筆の線」をたどることで、「原画の力」を読む解いていく。。
 この本では「原画の見方」という鑑賞のポイントをまとめたページがあるので、そこから入るのがいいでしょう。
 さらに、日本美術を専門にしたライターでもある橋本麻里さんによる、「ドラえもん」と日本美術との比較などがあって、今や漫画や「ドラえもん」が日本文化に欠かせないものであることがよくわかる。

 将来「鳥獣戯画」と「ドラえもん」の共同展覧会が開催されないとも限らない。
  
(2021/07/29 投稿)

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  最近吉村昭文学にはまっている。
  吉村昭さんの作品を初めて知ったのは
  随分以前のことで
  私が高校生あたりのことだったと思う。
  今日紹介する『花火 吉村昭後期短編集』のような
  中公文庫シリーズでいえば
  初期篇あたりだから
  かなり初めの頃から吉村文学にはまっていたことになります。
  もう少し読み続けるつもりです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  吉村昭の後期短編を堪能しました                   

 本書は中公文庫による吉村昭の短編集の、「初期1」「初期2」「中期」に続く4冊めにあたる「後期」篇である。
 これまでの3冊は、「自選」とあって、吉村が生前自ら編んだ「自選集」からのアンソロジーだったが、後期は吉村の逝去(2006年没)直前までの作品が収められているので「自選」ではない。
 純粋に本文庫の解説も執筆している文芸評論家の池上冬樹さんのよる編集となっている。

 この「後期」篇には短編11作と掌編5作が収録されている。
 そして、今までの短編集の中でももっともバリエーションに富んだ作品群となっている。
 吉村の得意とする歴史小説としても読みごたえのある「船長泣く」は大正末期の漁船の漂流を描いたものだし、巻末の「死顔」はいうまでもなく吉村の遺作となった生と死を描いた重厚な短編である。
 その一方で原稿用紙10枚ほどの掌編小説群、「観覧車」「西瓜」などは中間小説誌に発表されたもので、堅物と思われがちな吉村がこういう作品も書いていたことに、少々安堵した。

 中でも気にいったのは、平成10年に「文學界」に発表された「遠い幻影」で、幼い頃の記憶をたどる話ながら、単にノスタルジックな物語になるのではなく、ノンフィクション作家のごとく厳密に調査する姿勢に感服した。
 「死が訪れるまでの間に、曖昧な事柄をすべて明確にしたいという心理」と自ら分析しているが、吉村文学の魅力はそのあたりにあるような気がする。
  
(2021/07/28 投稿)

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  今日は
  久しぶりの時代小説、
  砂原浩太朗さんの『いのちがけ 加賀百万石の礎』を
  紹介します。
  砂原浩太朗さんはこの作品がデビュー作。
  私が読んだのは講談社文庫版(2021年5月刊)ですが
  単行本は2018年に出ています。
  このあと発表した『高瀬庄左衛門御留書』で
  藤沢周平さんの再来とか
  とかく評判の高い作家のひとりです。
  これだけの作品を書き上げる力量からすれば
  やはり将来が楽しみです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  目立たないが、しっかり支えています、そんな男の物語                   

 受賞には至らなかったが、第165回直木賞の候補作となった『高瀬庄左衛門御留書』が評判の砂原浩太朗さんのデビュー作である。
 この作品で、第2回「決戦!小説大賞」を受賞している。

 主人公は、副題にあるように「加賀百万石」の礎を築いた前田利家の忠臣・村井長頼。といっても、この時代の信長や秀吉、あるいは家康といった有名な武士でもなく、長頼の主である前田利家ほどにも名は知られていない。
 主人公としては地味ではあるが、有名な桶狭間の戦いの前後あたりを描いた表題作の「いのちがけ」から、利家亡きあと家康によって御家の危機に陥った前田家を救う最終話まで、長頼は派手さはないが、こういう家来がいると大きな支えになる。
 ちょうど、社長を支える大番頭といったところだろうか。
 面白いのは、長頼にはそんな大番頭という風格もあまり感じないところだ。

 この作品は長頼を主人公にした長編小説という読み方もできるが、「いのちがけ」が桶狭間の戦いを描いたように、それぞれ各章で長篠の戦、賤ヶ岳の戦い、秀吉による朝鮮出兵といったように、連作短編としても楽しめる。
 もちろん、主である利家と従である長頼の、友情にも似た関係という一本の太い糸はゆるぎないし、最初の作品「いのちがけ」で謎かけのように登場する娘が終わり近くに重要な役どころで姿を現すのも、小気味いい。

 今回直木賞受賞には至らなかったが、将来が有望な書き手である。
  
(2021/07/27 投稿)

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 大暑を過ぎて
 毎日暑い日が続くようになりました。
 俳句の季語には「猛暑」もありますが
 「極暑」という言葉で『歳時記』に載っています。

    蓋あけし如く極暑の来りけり      星野 立子

 暑いのは嫌ですが
 空を見上げると
 晴れ渡った夏空が気持ちいいものです。

  20210725_090000_convert_20210725100211.jpg

    育ちゆく入道雲に肩背中       本井 英

 猛暑が続くと
 野菜の水やりが欠かせません。
 朝早くか、
 夕方には水やりに行きます。
 水やりは野菜を育てている畝だけでなく
 畝と畝の間にも散水しておくようにしています。

  20210725_085142_convert_20210725100016.jpg

 これは第一の区画の
 四番畝の方から撮った写真。

  20210723_094826_convert_20210725095619.jpg

 ショウガの根本に敷いた藁が
 涼しく感じます。

 これは
 トウガラシの鷹の爪

  20210723_094937_convert_20210725095747.jpg

 たくさんなってきました。
 でも、赤くなるのは時間がかかります。

 オクラは種を蒔いたのが遅かったせいか
 なかなか花も咲きません。
 オクラの花は夏野菜の花の中でもきれいさでは一番なので
 ご近所のオクラの花の写真を
 撮らせてもらいました。

  20210723_095016_convert_20210725095905.jpg

 収穫は白ナスと赤いミニトマト

  20210720_175910_convert_20210725095531.jpg

 ミニトマトの収穫は
 もうすぐ100個に届きそうです。

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  東京オリンピックがいよいよ開催されました。
  新型コロナ禍の影響でオリンピック史上初の1年延期となった
  この大会ですが
  205の国と地域、それと難民選手団の選手が参加しています。
  開会式で
  それらの国々の選手たちが
  さまざまな服装で入場していたのをニュースで見ました。
  やはり世界とは実に多様な世界です。
  いろいろな制約のある中での大会ですが
  子どもたちにはそういうこともしっかり見てほしいと思います。
  今日紹介する
  カンタン・グレバンさん絵、
  エレーヌ・デルフォルジュさん文の
  『ママン 世界中の母のきもち』でも
  そういう世界の多様性が描かれています。
  訳は内田也哉子さん。
  オリンピックのこの期間に
  読むのもいいですよ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  さまざまな母子の姿を通して                   

 世界中のあらゆる国の母親の姿を描いたこの絵本には、ある特長があります。
 それは絵を担当しているカンタン・グレバンさんの名前が先にあって、文を書いたエレーヌ・デルフォルジュさんの名前があとにあること。
 文と絵が別々の作者でできている絵本はたくさんありますが、普通は文を書いた人の方が先に印字されています。
 二人の経歴を見ても、エレーヌさんはこの本が初の著作で、カンタンさんはボローニャ国際児童書展に何度も入選している絵本画家です。
 となると、カンタンさんの絵が先にあって、エレーヌさんがあとから文章を書いたのかもしれません。
 でも、一組の母と子の絵は2つずつ。
 そこにつけられた文章は、長いものもあります。
 そうなれば、お二人で話しながら作っていったのかもしれません。
 その創作過程が気になりますが、読者が絵を見ながら自由に物語を紡いでも面白いと感じました。

 訳者の内田也哉子さんは、樹木希林さんがお母さんで、自身三人の子どもさんを育ててきました。
 その内田さんはこの絵本について、「世界中の女性の生き方。まなざし、何に憧れて生きているのか、何を恐れ、何と日々向き合っているのかといった本質的な部分が、ママン=母親という1つの切り口からあぶりだされている」と感じたといいます。
 この絵本に出てくる母親がすべて幸せな人ではありません。子育てに苦労している母も、子供から離された母もいます。
 そんなさまざまな母と子の姿から、幸せとは何だろうと考えている自分に気づくはずです。
  
(2021/07/25 投稿)

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 原田マハさんの新刊『リボルバー』は
 天才画家ゴッホの死はゴーギャンとの諍いによる事故死という
 大胆な仮説で描かれた小説ですが、
 その作品の中にも紹介されていた
 ゴッホの死に関する本があります。
 それが、スティーブン・ネイフグレゴリー・ホワイト・スミスが書いた
 『ファン・ゴッホの生涯』。
 その本では、ゴッホの絵をからかっていた
 高校生による「他殺説」が描かれているそうです。
 この本が出版されたのは2011年。
 今日は
 それと同じようにゴッホの死が描かれた映画の話です。

 映画のタイトルは
 「永遠の門 ゴッホの見た未来」です。

  

 2018年のギリス,フランス,アメリカの合作映画。
 監督はジュリアン・シュナーベル
 この映画でゴッホを演じているのはウィレム・デフォー
 この人、この作品でその年のアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたほどで
 まさにゴッホが乗りうつったような迫真の演技です。
 しかも、ゴーギャンとも別離で
 耳切り事件を起こしたあと、
 耳に包帯した顔なんて、
 ゴッホの有名な自画像そっくりなのでびっくり。

 それだけでなく
 この映画に出てくる絵画も自然も素晴らしく、
 ゴッホの息遣いがそのまま伝わってくる感じです。
 印象的だったのは
 ゴーギャンとの共同生活の中でともに絵を描いていた場面で
 ゴーギャンがゴッホにいうセリフ。
 「君の絵は彫刻みたいだ」。
 ゴッホの絵を見た人ならわかりますが、
 確かに彼の絵は絵の具を塗り重ねています。
 おそらく当時の人には
 ゴッホの作品はゴーギャンのいうように
 絵画には見えなかったのかもしれません。

 そして、この映画では
 ゴッホの死は若者たちによる「他殺説」で
 描かれています。
 きっと先にあげた『ファン・ゴッホの生涯』が参考になっているのでしょうね。

 この映画にゴッホを見舞う神父役で
 マッツ・ミケルセンが出ているのですが、
 この人を見ると
 つい「007 カジノ・ロワイヤル」(2006年)の血の涙を流す悪役を
 思い出してしまいます。

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  今日は
  東京オリンピックの開催日
  でも、
  今日はきのうのつづきで、
  原田マハさんの新刊『リボルバー』を昨日紹介したので
  以前原田マハさんが書いた
  『ゴッホのあしあと』を
  再録書評で紹介します。
  2018年に書いたものです。
  実は
  ゴッホが亡くなったのは1890年7月29ですから
  まもなく歿後131年となります。
  それでも
  今でもこれだけの人気ですから
  すごいものです。
  明日の映画の話も
  ゴッホで続けましょう。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  ゴッホに魅せられて                   

 アート小説の旗手、原田マハさんが『モネのあしおと』に続いて幻冬舎新書に書いた画家シリーズ。
 今回取り上げているのは、日本人が大好きなフィンセント・ファン・ゴッホです。
 この新書が誕生する下地として、原田マハさんが2017年に発表した小説『たゆたえども沈まず』があります。
 あの作品が刊行された時、遂に原田さんがゴッホを書いたという、一読者としても喜びのようなものがありましたが、この新書で原田さんはゴッホを「意識的に避けてきた」と書いています。
 そのわけを、「一度入り込むととことんまでのめり込んでしまいそう」としていますが、確かにゴッホの絵画にはそんなところがあります。

 ひとつにはゴッホの色使い(この新書の図版は白黒なのがとても残念です)があるでしょうし、筆のタッチもそうです。
 そして、彼の人生そのものもひきつけてやみません。
 この小さな評伝のような新書で、原田さんはとてもわかりやすくゴッホの足跡をたどっています。
 そして、何よりもこの新書で、小説『たゆたえども沈まず』の創作の秘密を吐露しています。小説は当然作品だけで評価すべきでしょうが、作者自身による創作の解説がなされることで、小説の世界が広がります。
 ましてや、この小説では今まであまり知られていない林忠正という画商を取り上げていますから、原田さんが林に込めて思いというのが、この新書でよく理解できました。

 最後には「ゴッホのあしあとを巡る旅」という、旅行ガイドまでついています。
 この新書を持って、フランスに行けたら、どんなにいいでしょう。
  
(2018/07/24 投稿)

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  今日は
  二十四節気のひとつ、大暑
  いよいよ夏本番です。

     兎も片耳垂るる大暑かな     芥川 龍之介

  芥川龍之介の有名な俳句です。
  そして、
  今日はオリンピック関連で今年限りの特例として
  祝日が移動して
  今日が海の日
  明日東京オリンピックの開催日に合わせて
  スポーツの日
  ただ暑いだけのオリンピックだったら
  どんなによかったことか。
  まあさまざまな思いがある中での
  オリンピック開催となりました。
  今日は
  そんなオリンピックと関係なく
  原田マハさんの新作『リボルバー』を紹介します。
  しかも、今回はゴッホですから
  楽しみにしている読者も多いのではないでしょうか。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  誰がゴッホを殺したのか                   

 わずか37年の生涯ながら、その死以降どれほどの人が彼の絵画を絶賛し、その生涯をたどろうとしただろう。
 彼の名前は、フィンセント・ファン・ゴッホ。
 1853年(ちなみにこの年日本では浦賀にペリーが来航している)オランダに生まれ、亡くなったのは1890年7月29日。
 歴史の彼方にあるような人が今でも人々を魅了するのはもちろん彼の絵画の魅力もあるだろうが、短いながらも波乱に満ちた生涯もまた、人々を魅了する。
 あの絵を描いた人はどんな人物なのか、こんな人だからあんな素晴らしい絵が描けたのか。

 アート小説の第一人者である原田マハもそんな一人である。
 これまでにも何作かゴッホを描いた作品を発表している。そして、今回はゴッホと一時期共同生活を送り、最後には有名なゴッホの「耳切り事件」で決別したゴーギャンとの関係を描きつつ、後期印象派の代表格となった二人の芸術性を描いている。
 その点ではゴッホだけでなくゴーギャンの魅力も堪能できる贅沢な試みとなっている。
 同時に、今なお謎の多いゴッホの死因(拳銃による自殺説)を作家の大胆な仮説により展開しているのも面白い。
 実際自殺に使ったとされるリボルバーがオークションにかけられたのは事実であるから、原田さんが果敢に想像の翼を広げているのも無理のないところだ。
 しかも、もしかしてそういうこともあったではと読者に思わせる力量はさすがだ。

 これでまた一つ、原田マハさんのアート小説の代表作が追加されたといえる。
  
(2021/07/22 投稿)

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  ここしばらく
  吉村昭さんの作品を読む機会をつくるようにしています。
  吉村昭さんの感情を抑え気味の文章が
  60歳半ばを過ぎた
  今の自分に合っているのかもしれません。
  吉村昭さんが亡くなったのは
  2006年7月31日。
  もうすぐ命日を迎えます。
  今日紹介する『死顔』は
  吉村昭さんが死の直前まで推敲を重ねていた短編です。
  新潮文庫版にはそのほかにも
  自身の若い頃過ごした湯治場の一景を描いた「ひとすじの煙」、
  「死顔」と同じテーマとなる兄の死を描いた「二人」、
  介護の果てに夫と殺した女性の出所後の姿を描いた「山茶花」。
  明治期の条約改正の一挿話の「クレイスロック号遭難」が
  収められています。
  書評は2011年(もう10年も前です)に書いたものの
  再録書評です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  悲しみの刻                   

 2006年に亡くなった吉村昭さんの遺作短編集です。
 最後の遺作となった作品が『死顔』というのも不思議な予感のものを感じますが、この作品は吉村さんの次兄の死を題材にしたもので、同じ題材を扱った『二人』という短編もこの短編集に収められています。

 特に『死顔』は癌で入院していた病床で何度も推敲していた作品で、そのあたりの事情と吉村さんの死の直前の様子を綴った夫人で作家の津村節子さんがつづった「遺作について」もこの文庫版に併録されています。
 その文章の中で津村さんは「遺作となった「死顔」に添える原稿だけは、書かねばならなかった」と綴っています。その理由はその短文全体で推しはかるしかありませんが、この作品そのものが吉村さんの死とつながっているといった思いが夫人にはあったのでしょう。
 それにしても自身の死の予感にふれながら、吉村さんはどんな心境で兄の死と自身の死生観を描いた『死顔』と向き合っていたのか。そのことを思うと、作家というのも残酷な職業だといえます。

 吉村さんの死生観と書きましたが、『死顔』の中で吉村さんは死についてこう書いています。
 「死は安息の刻であり、それを少しも乱されたくない」と。だから、死顔も見られたくないと。
 その死生観そのままに、吉村さんは次兄の死の知らせのあと、「行かなくてもいいのか」と訊ねる妻の言葉に「行っても仕様がない」とすぐさま駆けつけようとしません。
 その姿を冷たいというのは簡単ですが、吉村さんにとってその刻は次兄の家族たちのみが持つ「悲しみの刻」であり、いくら弟とはいえ自分が行けばそれが乱れると思ったにちがいありません。
 次兄の死を描きながら、そしてそれを推敲しながら、吉村さんは自身の死を思ったことでしょう。そして、妻や子供たちの「悲しみの刻」にも思いを馳せたのではないでしょうか。それでも何度もなんども推敲する。それこそ、吉村昭という作家の強さだと思います。

 吉村さんはかつて最愛の弟の死を描いた『冷い夏、熱い夏』という作品を残しています。吉村さんの数多い作品の中でも名作と呼んでいいでしょう。そして、最後の作品が次兄の死を描いた『死顔』。
 吉村さんの悲しみを想わざるをえません。
  
(2011/09/26 投稿)

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  今日は
  松本侑子さんの
  『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』を紹介します。
  この本を読むきっかけは
  書評にも書きましたが
  野原一夫さんの『回想 太宰治』の
  ある場面から、
  山崎富栄というのはどんな女性だったのだろうという
  興味からでした。
  文庫本の表紙に18歳の山崎富栄さんの写真が使われていますが
  美人だったことがよくわかります。
  それにしても
  戦争さえなかったら、
  山崎富栄さんはまるで違った人生だったのでしょうが
  あの当時山崎富栄さんのような女性はたくさんいて、
  そのことで逆に非難される対象にもなったといいます。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  父の姿があまりに悲しい                   

 この評伝小説の執筆動機について、作者である松本侑子さんが「文庫本あとがき」に「太宰治と山崎富栄の生涯、二人の恋と心中について、山崎家と富栄の視点から考えてみたい、という思い」と書いている。
 私が2009年に書かれ、その後2012年に文庫化されたこの本を読もうと思ったのは、晩年の太宰のそばでその生活を見ていた編集者野原一夫さんが書いた『回想 太宰治』に、二人の遺体が玉川上水で見つかったあと、多くの支持者によって土手から引きあがられた太宰に対し、その場に据え置かれた富栄の遺体に傘を差し伸べる父親の姿を描いた場面が出てくる。
 娘を、しかも戦争によってわずか12日ばかりで結婚したばかりの夫と引き裂かれた娘をこんな無惨な姿で迎えなければならなかった父親は、どんなにつらかっただろう。
 心中した相手が新進の流行作家とはいえ、かつて何度も自殺や心中事件を起こした男で、妻や子があるにも関わらず、富栄以外にも子をなした愛人がいたそんな男を責めることもできずに、頭を下がるしかなかった父親。

 松本侑子さんは「単行本あとがき」で「本書は、富栄の小説ではあるが、書き終えた今、本当の主人公は、明治の東京に生まれ育ち、日本の美容教育の近代化、自らの立身出世をめざして孤軍奮闘しながらも、軍国主義と戦争にまきこまれ、一切を失った父晴弘だったかもしれない」と書いている。

 山崎富栄が亡くなったのは満28歳の時。
 もし戦争がなかったら、富栄の人生も、父晴弘のそれも大きくちがっていただろう。
 それは多くの日本人の悲劇だったともいえる。
  
(2021/07/20 投稿)

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 関東では梅雨明けした途端に
 連日猛暑日が続いています。

  20210716_111308_convert_20210717201748.jpg

 空の青さもすっかり夏色になりました。

    夏空へ雲のらくがき奔放に      富安 風生

 畑の作業も熱中症に気をつけています。
 まずは必ず水分補給。
 それとこまめに休憩をとるようにしています。

 雨が続いたので
 伸びた雑草とりをしたあと、
 暑さ対策として
 乾燥が苦手なショウガ藁敷きをしました。

  20210718_091556_convert_20210718125733.jpg

 そして、収穫の終わったエダマメのあとは
 太陽熱消毒のための処置をしました。
 まずは畝をこしらえ、そこにたっぷり水をいれます。
 そのあと、透明マルチで畝を覆います。
 こうすることで太陽熱で土の中の雑菌を退治できます。

  20210718_102448_convert_20210718125912.jpg

 写真で白く見えているのが
 太陽熱消毒をしているエリア。
 手前に畝わきに植えた青ジソが見えます。
 奥にあるのがキュウリ大玉トマト

 その大玉トマト
 でっかい実が収穫できました。

  20210714_160648_convert_20210717201401.jpg

 普通の大玉トマトと比較すると
 倍以上の大きさです。

  20210714_162535_convert_20210717201456.jpg

 さあ、ここからは新鮮夏野菜のオンパレード。
 まずはナス

  20210716_175355_convert_20210717201847.jpg

 それから、ピーマン

  20210714_160916_convert_20210717201639.jpg

 そして、たわわに実ったミニトマトの房。

  20210717_083237_convert_20210717201949.jpg

    日の余熱まだある茄子をもぎにけり      栗原 憲司

 この句のように
 もいだばかりの夏野菜は太陽のひかりでほっこりあたたかいんです。

 最後に
 これ、わかりますか。
 右側の野菜です。

  20210716_110659_convert_20210717201541.jpg

 葉っぱに特徴がある
 クウシンサイ
 漢字で書く方が似合う野菜です。
 空芯菜
 つまり、茎の芯が空洞になっている野菜です。

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  7月12日のこのブログの「わたしの菜園日記」で
  エダマメの収穫の記事を書きました。

  20210710_180933_convert_20210711073937.jpg

  そのあと、もう一回収穫して
  このシーズンのエダマメは終了しました。
  できれば
  大豆まで育ててみたいのですが
  そうすると次の野菜が育てられなくなるので
  がまんです。
  今日はそんなエダマメの絵本です。
  こうやすすむさん文、
  なかじまむつこさん絵の
  『だいず えだまめ まめもやし』。
  エダマメのおいしい季節にぴったりの絵本です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  エダマメは大豆の子ども                   

 恥ずかしながら、還暦を過ぎて家庭菜園を始めるまで、エダマメが大豆の未成熟のものだと知りませんでした。
 夏野菜の中でも人気のエダマメですが、収穫せずにおいておくと当たり前のように大豆になります。
 子どもの時に、こうやすすむさんが書いた(なかじまむつこさんが絵を担当)この絵本を読んでいたら、そういうこともわかったのですが。
 しかも、この絵本に登場する、いちろう、はなこ、じろうの三人のきょうだいが、別々の収穫方法をしてくれるので、エダマメと大豆がどういう関係なのかよくわかります。
 では、まめもやしはどうでしょう。
 これは忘れん坊のいちろうが大豆を水につけたまま畑にまくのを忘れていたというのです。
 その種を暗い物置に置いたままにしていたら、まめもやしになってしまいました。
 一粒の豆からいろんなバリエーションが楽しめるのですから、大豆っていい野菜です。

 ちなみに大豆はマメ科ですが、スナップエンドウやソラマメとちがって背丈がうんと高くなるわけではありません。花が咲いて、その花がしぼんだあとに莢(さや)ができ、その中で豆が膨らんできます。
 なかじまむつこさんの絵は細密画ではありませんが、エダマメの育ち方がよくわかるように描かれています。

 子どもたちとこの絵本を見ながら、実際のエダマメが育っていく様子を観察できたら、どんなにいいでしょう。
  
(2021/07/18 投稿)

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 先日
 第165回芥川賞直木賞が発表されました。
 芥川賞が
 石沢麻依さんの『貝に続く場所にて』と、李琴峰さんの『彼岸花が咲く島』。
 直木賞は
 佐藤究さんの『テスカトリポカ』と澤田瞳子さんの『星落ちて、なお』。
 芥川賞直木賞それぞれ2作品の受賞というのは
 10年ぶりということで
 何はともあれおめでとうございます。
 そこで
 今日の映画の話は
 芥川賞を受賞した映画の話です。

 芥川賞は文学賞のひとつですが
 社会的なイベントにもなっていて
 受賞のニュースも大きく取り上げられるし
 受賞作ともなれば売れ行きも大きくちがってきます。
 つまり、作品として潜在的なニーズがある訳で
 映画化となればある程度の観客動員が読めることになります。
 だからといって
 芥川賞の場合は直木賞ほど映画化が多くないのは
 映画化にしにくい文学性も関係しているのかもしれません。

 先日第158回芥川賞を受賞した
 若竹千佐子さん原作の『おらおらでひとりいぐも』の映画作品を
 観ました。

  

 2020年公開の沖田修一監督作品です。
 主人公の桃子さんを15年ぶりの主演となる田中裕子さんが演じ
 若い桃子さんを蒼井優さんが担当しています。
 小説としてのこの作品は
 東北弁を巧みに駆使し、老齢にさしかかった女性の孤独感を見事に描いていました。
 内面の声を
 映画化では濱田岳さんや宮藤官九郎さんなど3人の俳優で表現していましたが
 ちょっと違和感がありました。
 原作の良さが生きていないのが残念でした。

 芥川賞受賞作の映画化で有名なのは
 やはり第34回受賞石原慎太郎さんの『太陽の季節』。
 古川卓巳監督で昭和36年映画化されています。
 脇役の出演ですが石原裕次郎さんのデビュー作にもなっています。
 私が印象に残っているのは
 第44回受賞三浦哲郎さんの『忍ぶ川』。

  

 原作も歴代芥川賞受賞作でも屈指の作品だと思いますが
 熊井啓監督の映画作品(1972年)もよかった。
 ヒロインを栗原小巻さんが演じています。
 この作品はその年のキネマ旬報の日本映画部門のベストワンにも
 選ばれています。

 そのほか
 調べるとまだまだ芥川賞の映画化がありますから
 そんな作品で映画を観るのも
 面白いかもしれません。

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  昨日紹介したのは
  佐久間文子さんの『ツボちゃんの話 夫・坪内祐三』は
  愛する夫亡くした妻が生前の夫の姿を描いた
  随筆でしたが、
  今日は父との別れを描いたエッセイを
  紹介します。
  益田ミリさんの『永遠のおでかけ』。
  2018年1月に出た本で、
  読みたいと思いながら
  機会を逸していた一冊です。
  私の父がなくなって
  もう来年には10年になります。
  有難いことに
  私は父の最後の時間と共に過ごすことができました。
  そんなことを思い出しつつ
  胸にジーンとさせて読み終わりました。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  愛する人を亡くした時、そっと寄り添ってくれる一冊                   

 「すーちゃん」シリーズなどのコミックエッセイで人気の益田ミリさんが父親との死別した前後の日々を綴った書き下ろしエッセイ。
 ガンで余命6ヶ月と診断された父。東京で暮らすミリさんは父のいる大阪の実家との間を行ったり来たりしつつ、父と過ごした時間を思い出したりいていく。
 そして、父の子供時代の話を聞こうと思いつく。
 そんな風に過ごす時間の中で、ミリさんは「叶えてあげたいこと、叶えられないこと。この先、わたしたち家族はひとつひとつ答えを出しながら、父の死と対峙していくのだ」と綴っている。

 そして、迎えた父の死。
 余命宣告されていたとはいえ、それは突然だった。
 東京のミリさんに母から父の容態が良くないと連絡があった数時間後、父は亡くなる。
 東京から大阪に向かう新幹線の中のミリさんはこう思う。
 「今夜、わたしが帰るまで、生きて待っていてほしかった。(中略)それは、違うと感じた。これは父の死なのだ。父の人生だった。(中略)父個人のとても尊い時間なのだ。」
 その時、夕焼けが車窓に広がるが、父はこんなにきれいな夕焼けも見れないという、当たり前のことに気づく。
 「死とはそういうものなのだと」ミリさんは改めて思ったという。
 二十編のエッセイでできているこの作品の中でも、この箇所はやはり胸をうつ。

 父の死を描きながら、随所に笑いがはいるのは、関西人特有の癖みたいなものだ。
 だからといって、ミリさんがふざけているのではない。
 余計に悲しみを感じる。
 愛する人を亡くした時、そっと寄り添ってくれる一冊になるだろう。
  
(2021/07/16 投稿)

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  作家とは本来作品だけで評価すべきかもしれないが、
  やはりどんな人がその作品を書いたのか
  気にはなります。
  ましてや
  エッセイ風読み物で
  自身の少年時代や過ごしてきた時間を書いてきた人なら
  余計にどんな人であったのか
  関心がわきます。
  2020年1月、急逝した坪内祐三さんが
  まさにそんな作家です。
  今日紹介するのは
  坪内祐三さんの妻である
  佐久間文子さんの『ツボちゃんの話 夫・坪内祐三』です。
  そうか、坪内祐三とは
  こういう人であったのかと
  知ることができる貴重な一冊です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  ぼくが死んだらさびしいよ?                   

 「ツボちゃん」こと、作家でエッセイストであった坪内祐三さんが亡くなったのは、2020年1月13日で、まだ61歳の若さでした。(坪内さんは1958年生まれ)
 坪内さんの愛読者だけでなく、多くの出版関係者にとって、それはあまりにも突然の死で、ただ呆然とするしかありませんでした。
 その逝去から二カ月後、新潮社の編集者の勧めで元朝日新聞記者で妻の佐久間文子さんが「亡くなった日のこと」(単行本で最初の章になっている)と数編の生前の「ツボちゃん」のことを書き、文芸誌「新潮」の2021年5月号に先行されます。
 その後いくつかの章が書き加えられたのが、本作品です。

 「亡くなった日のこと」を読むと、坪内さんの死があまりに突然すぎて警察の検視を受けたこともわかります。
 残された人にとって、それはほとんど理解不能の出来事だったでしょう。けれど、佐久間さんは冷静にその日起こったことを綴っています。
 そもそも坪内さんと佐久間さんには出会う前には別々のパートナーがいました。それでも魅かれ合って結婚するのですが、坪内さんの感情の振幅の激しさに度々衝突したことなどがここでも書かれています。
 それでも、亡くなったあと、「想像した以上に彼のいない毎日はさびしい」と綴っています。

 「怒りっぽくて優しく、強情で気弱で、面倒だけど面白い、一緒にいると退屈することがなかった」と、妻に書かれた坪内祐三さんはやっぱりいい人生だったにちがいない。
  
(2021/07/15 投稿)

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  東日本大震災の震災ルポルタージュ『南三陸日記』に
  感動して
  その書き手である三浦英之さんの名前を意識していて
  新しい本を見つけたので
  手にしました。
  それが今日紹介する
  『白い土地 ルポ福島「帰還困難区域」とその周辺』です。
  2020年10月の刊行です。
  ここに書かれている
  2020年春の
  東京オリンピック延期の話など
  今から思えばまるでずっと以前のように感じます。
  でも、まだたった1年。
  それでも結局コロナ禍の不安が解消されないまま
  東京オリンピックが開催されようとしています。
  「復興五輪」は
  今から思えばオリンピック誘致のための
  甘い誘い言葉だったのでしょうか。
  今だから
  この本を読む意味があると思います。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  真実はどこにあるのか                   

 著者の三浦英之さんは現役の朝日新聞記者である。
 つまり、会社の都合により(時には本人の希望もあるだろうが)異動があり、取材拠点が変わるということだ。
 2011年3月の東日本大震災のあと、宮城県南三陸に駐在し、そこで見知った人たちを描いたルポルタージュ『南三陸日記』を執筆し、その後アフリカ特派員になった際いは『牙 アフリカゾウの密猟問題を追って』というノンフィクション作品を書き上げている。
 2017年には福島局員となり、2019年5月に福島の南相馬支局に転勤となっている。
 この本は、そこから2020年春までの1年間に、三浦さんが「白地」と呼ばれた土地で出会った人たちを描いた人物ルポルタージュである。

 本のタイトルにもなっている「白地(しろじ)」は「東京電力福島第一原発が立地する福島県大熊町などで使われている隠語」で東日本大震災の際に発生した原発事故で漏れた放射線量が極めて高く、「帰還困難区域」の中でも将来的に居住の見通しが立たないエリアをいうとある。
 そして、三浦さんが南相馬で取材をした時期、この国は「復興五輪」を大義とした東京オリンピックを進めようとしていた。
 その後、コロナ禍で2020年開催予定のオリンピックは延期となった(この本では2020年の春の延期判断の時点まで描かれている)今、もう誰も「復興五輪」と言わなくなっている。

 福島原発事故でもそうだが、結局私たちは何も本当のことを教えられていないことをあらためて感じる。
 だからこそ、三浦さんのような記者が何人も出てきてもらいたい。
  
(2021/07/14 投稿)

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  今日は
  アガサ・クリスティーの『もの言えぬ証人』を
  紹介します。
  ポアロものです。
  この作品は
  アガサ・クリスティーの愛犬ピーターに捧げられてもので
  献辞には
  「友人たちのうちで最も忠実であり、
  連れとして最も親しく」と
  大賛辞を捧げている。
  作品にも犬が登場して
  アガサ・クリスティーが犬好きだったことがわかる。
  いつもの
  霜月蒼さんの『アガサ・クリスティー完全攻略』では
  ★★★★☆
  ポアロものの中でも評価が高い作品。
  ちなみに
  私は犯人がわかりませんでした。

  じゃあ、読もう。 

  

sai.wingpen  犬派だったアガサ・クリスティー                   

 原題が「Dumb Witness」という。
 アガサ・クリスティーが1937年に発表したポアロものの長編小説。
 「Dumb」という言葉には「頭の悪い」とか「ばかな」という意味があるが、ここはやはり「口のきけない」という意味だろう。
 「Witness」は日本語タイトルにもある「証人」という意味もあるが、「目撃者」という意味もあるらしいから、こちらの方が作品の内容に近いような気がする。

 この作品ではポアロの相棒として馴染みのヘイスティングズの語りで事件が語られる。
 ある日ポアロのもとに見知らぬ老婦人から命の危険をうかがわせる謎の手紙が届く。
 ポアロたちがその老婦人の住所に行ってみると、なんと老婦人は死んでいた。
 つまり、今回は依頼人のいない事件なのだ。
 しかも、依頼人は病死となっていて、ポアロの出番はなさそうにみえる。
 ただ亡くなった老婦人には莫大な資産があって、それが親族ではなく家政婦に全額与えるという遺言が残される。
 ポアロは老婦人の住んでいた村で、医者や友人、そしてもちろん親族である姪や甥たちと接触して、謎を解き始める。

 では、タイトルとなった「口のきけない目撃者」とは誰であろう。
 この作品にはボブというテリア犬が登場する。
 老婦人はこの犬が日頃遊んでいたボールに足をとられて大けがをしたことがある。
 しかし、ポアロはこの事故に犯罪の匂いを感じる。
 「口のきけない」ボブは果たして「目撃者」だったのか。
 犬好きでなくても、夢中で読める作品だ。
  
(2021/07/13 投稿)

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 今年の梅雨は雨が多いように感じます。
 この時期の畑作業で一番気になるのが
 天気予報。
 特に週末の天気は気になります。
 日曜は雨みたいだから土曜には畑に行かないととか
 週末は二日とも雨みたいだからどうしようとか。
 週間の天気予報では
 今週は久しぶりに晴れマークが並んでいるので
 もしかしたら梅雨明けもあるかも。

    梅雨明けぬ猫が先ず木に駈け登る      相生垣 瓜人

 そんな天気の中
 すっくと伸びた向日葵を見つけました。

  20210710_102701_convert_20210710171314.jpg

 雨が久しぶりにやんだ土曜日(7月10日)、
 畑に行くと
 雑草ですごいことになっていました。
 どこにニラがあるのかわかりません。
 なので
 この日は雑草取り。
 作業前と作業後を並べてみました。

  20210710_084230_convert_20210710171202.jpg  20210710_091828_convert_20210710171247.jpg

 畝の外にあるのがニラです。

 大玉トマトも赤く熟してきました。

  20210710_083356_convert_20210710171103.jpg

 右側に見えるのはバジル
 トマトコンパニオンプランツとして栽培しています。
 このあとこのトマトを収穫して
 持ち帰って記念写真。

  20210706_163858_convert_20210710170936.jpg

 大きさ、色合い、りっぱなトマトです。
 もちろん、味もこれぞトマト

 もう一品、
 これも夏らしい野菜。
 エダマメを収穫しました。

  20210710_180933_convert_20210711073937.jpg

 さっそく塩茹でにしていただきました。
 実はエダマメ秋の季語
 「歳時記」に
 「熟す前の青い大豆」とあるように
 収穫しないでおいておくと大豆になります。
 ちなみに
 エダマメは枝ごと採るから枝豆というらしい。

    枝豆の莢をとび出す喜色かな      落合 水尾

 でも、
 エダマメは冷えたビールに合う
 夏が似合うと思いますが。

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  一学期ももうすぐおしまい。
  この春小学一年生になった子どもたちを見ていると
  始まったばかりの頃はとても元気だったが、
  月日が経つと
  どことなく最初の頃の元気がない。
  わくわく、ピカピカから
  生活に馴染んできた証拠だろうか。
  クラスにも慣れ
  新しい友達もでき、
  きっと成長の一階段をのぼったところだろう。
  今日はそんな子どもたちと一緒に読みたい
  絵本を紹介します。
  つちだのぶこさんの
  『にんきものいちねんせい』。
  どんな人気者になれたか
  聞いてみたい。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  あなたはどんな「にんきもの」でしたか                   

 人生にはたくさんのイベントがあるが、小学生に入学した頃は結構記憶に残るものだ。
 つちだのぶこさんのこの絵本に登場するたくさんの「にんきものいちねんせい」のタイプで、そういえば、自分は「おもしろいこといって みんなをわらわせる」芸人みたいなタイプの一年生だったと、思い出したりしている。
 では、そのほかにどんなタイプの「にんきもの」があるかというと、まず出てくるのが友だちに大きな声で挨拶する子。みんなを元気にする「にんきもの」だ。
 授業中に進んで手をあげ、みんなの前でお話できる子も「にんきもの」だし、休み時間にみんなを誘って遊ぶ子も「にんきもの」。
 給食当番の時にてきぱきしたくができる子も、そうじの時間にきれいに片づけができる子も「にんきもの」になっている。

 この絵本を見ていると、小学校で子どもたちはさまざまな生活の時間を過ごしていることに気づかされる。
 学校は勉強するだけの場ではなく、人と交わることを学ぶ場でもあるのだ。
 そして、そのそれぞれの場で、そこで活躍したりみんなの注目を浴びたりする子どもがいる。そういう子どもたちをしっかり見つけてあがることも、先生や親の大事な役目だと思うし、そこで現れる子どもたちの個性をしっかり伸ばせてあげたいものだ。

 子どもたちをしっかり見てあげられるおとなこそ、「にんきもの」になれるはずだ。
  
(2021/07/11 投稿)

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 最近「リマスター」という言葉を
 よく目や耳にします。
 調べると
 「古い映画フィルムを最新の電子機器でデジタル化し、汚れ・傷を取り、色の補正や音質の調整などをする作業」と
 出てきます。
 NHK4Kで「ウルトラセブン」を4Kリマスター版で放送していて
 観ると
 画面の美しさに驚きました。
 「リマスター」すごい!
 昔の白黒映画なども
 「リマスター」されることが多くなって
 今日は、そんな映画の話です。

 映画は
 先日日本映画専門チャンネルで放送されていた
 山中貞雄監督の「人情紙風船」(1937年)。

  

 この作品が公開されたのは1937年ですから
 もちろん白黒映画。
 今回これを4Kリマスター版に修復し、
 2Kダウンコンバートで放送という
 結構ややこしい? 方法となっています。

 山中貞雄監督といえば
 1938年に兵役で招集された戦地で病に冒され28歳で亡くなった
 日本映画の名監督です。
 しかし、何分古い時代のため
 残っている作品はわずか3作品といわれています。
 「人情紙風船」はそのうちの一本。
 しかも、この作品が山中貞雄監督の遺作となっています。
 山中貞雄という名前は
 映画青年だった10代の頃から耳にしていました。
 その作品をまさか今観られるとは思っていませんでした。

 1937年ということは昭和12年ですが
 そのセットにまず驚きます。
 落語の世界にあるような
 大家さんがいてうるさい店子がいるそんな裏長屋のセットが
 実に見事に再現されています。
 夜のシーンも
 雨のシーンも
 さすが4Kに修復されていて
 今の映画の画質に劣りません。

 内容は
 裏長屋に暮らすやくざものと
 仕官を願う浪人が軸となっています。
 全体的には暗い話といえますが
 そんな暗さを裏長屋の住人たちが癒してくれます。
 戦時下で力強く生きる庶民の姿と
 重なるところがあって
 まさに名作といっていいでしょう。

 日本映画専門チャンネルでは
 三か月にわたって
 山中貞雄監督の残された3作品を放送予定です。
 これは見逃せません。

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  今日は
  谷川俊太郎さんの新しい詩集
  『どこからか言葉が』を紹介します。
  詩集の紹介は久しぶりです。
  書評にも書きましたが
  谷川俊太郎さんは
  今年12月で90歳になります。
  生涯詩人ですから
  頭が下がります。
  それに
  谷川俊太郎さんはたくさんの絵本の制作にも
  関わっていて
  子どもたちもその名前は広く知られています。
  まさに稀有な詩人です。
  これからも
  まだまだ谷川俊太郎さんの元気を
  もらいたいと思います。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  詩人の厚着を脱がすのは                   

 2016年9月朝日新聞夕刊に毎月1回連載されている詩52篇を集めた詩集。
 新聞の連載ということもあって、詩の長さは詩集でいえば全編見開き2ページに収まっている。
 谷川さんの詩業というのは、1952年に第一詩集『二十億光年の孤独』から始まっているから、ゆうに70年近い時間を重ねてきたことになる。
 その詩の形はさまざまで、特にひらがな書きの詩など有名だ。
 それはこの詩集でもそうで、谷川さんの表現形式の多様さが楽しめる。

 そして、今年90歳になる谷川さん(谷川さんは1931年生まれだ)らしい命をみつめた詩も、現役の詩人ならではの作品といえる。
 巻末の「元はと言えば」という詩の冒頭。
 「実物の私はただの老人/だが詩人という肩書が付くと/普通と違う老人に見えるらしい/ちょっと嬉しいが大いに迷惑」
 そんな詩人はコトバで着膨れてきたという。
 「歳をとると厚着が重い/コトバを脱いで裸になって/宇宙の風に吹かれたい」らしい。
 しかし、谷川さんがコトバを脱ぐことはないのではないか。
 みんなで寄ってたかって、まだまだ厚着をせまる。

 「北風と太陽」という寓話で男の外套を脱がしたのは太陽だったが、谷川さんの厚着は誰が脱がすのだろう。
  
(2021/07/09 投稿)

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  今日は
  昨日の川本三郎さんの『映画のメリーゴーラウンド』に続いて
  また映画の本を紹介します。
  和田誠さんの
  『お楽しみはこれからだ PART4』。
  以前に書いたかもしれませんが
  和田誠さんのこのシリーズは刊行と同時に買っていて
  手元の本の奥付を見ると
  1986年12月とあります。
  なので、もう30年以上前の本です。
  和田誠さんのこのシリーズは
  PART7まであるのですが
  年内には再読おわるかな。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  おもちゃ箱をひっくり返して                   

 イラストレーター和田誠さん(2019年逝去)が映画雑誌「キネマ旬報」に連載した人気シリーズの「PART4」で、1986年に刊行されている。
 連載のスタートが1973年だから、連載も長くなると少し工夫しないといけなくなるから、読んでいる方は目先が変わっていいが、書く方は苦労する。
 この回では「映画人」である監督や俳優の言葉が取り入れられている。なので、「映画の名セリフ」ではないが、それはそれで映画人の本音(らしきもの?)が読めて楽しい。

 表紙がオーソン・ウェルズ。この巻の「あとがき」の締めの言葉もオーソン・ウェルズで、こちらの方がかっこいい。
 「映画はあらゆる子どもの持ってる中で、いちばんでっかいおもちゃの汽車だ」というもの。まさに和田さんにとってはそうだったに違いない。
 その他、ジョン・ウェイン、ヒッチコック、ジョン・フォード、ジーン・ハックマン、オードリイ・ヘプバーン、メリル・ストリープなどなど、かなりの映画人の言葉が紹介されている。
 映画人がおしゃべりというわけではなく、公開時にインタビューされたりしてそれが活字となって残るということだろう。
 もう一つ、映画監督の言葉を書き留めておく。
 フェデリコ・フェリーニ監督(「道」や「甘い生活」など代表作数知れず)の言葉。
 「映画ならどんな夢でも具体化できる」。

 まさかこの言葉に誘われた訳でもないだろうが、和田誠さんも1984年に「麻雀放浪記」を監督、夢を具体化している。
  
(2021/07/08 投稿)

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  今日は二十四節気のひとつ、
  小暑
  暑さがここから本格的になっていく頃。

    塩壺の白きを磨く小暑かな     山西 雅子

  今日は
  川本三郎さんの『映画のメリーゴーラウンド』という本を
  紹介します。
  そういえば、
  映画のタイトルに「7月7日」とついた作品があって
  それが「7月7日、晴れ」(1996年)。
  観月ありささん主演のラブロマンス。
  観てなくて、ゴメンですが。
  そんなふうにいろんな視点で
  映画を観ていけば
  観たい映画ばかりになってしまいます。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  次は何を観ようか                   

 読書のうまい人は、一冊の本から次から次へと読みたい本が出てくるといいます。
 映画も同じで、一本の作品から同じ監督の作品、好みの俳優たちの作品と観たい作品が出てきます。
 あるいは、映画に登場する場所や小道具からも連想することがあります。
 映画評論家の川本三郎さんのこの本は「連想によって映画を次々とつなげてゆく」もので、
 自身「こういう趣向の本はこれまでなかったと思う」と書いています。
 さらに、「映画のメリーゴーラウンド(つまり、尻取り遊び)とは、遊びながら、同時に普通、忘れがちなディテイルをよみがえらせようとする試み」とあるように、映画の楽しみ方は奥が深い。

 そのうえ川本三郎さんは外国映画だけでなくて日本映画にも造詣が深い。
 「ローマの休日」から最後には山田洋次監督の「寅次郎夕焼け小焼け」につながる映画の話でどうつながっているのか気になるが、これがきれいにつながるのだから面白い。(この話の場合は音楽がつながりのキーになっています)
 さらに川本さんは昔の映画にも詳しいし、川本さんも書いているように最近昔の日本映画を上映する映画館が増えたし、洋画も昔の作品のDVD化が進んでいるようです。
 特に今は昭和の風景をたどるには昔の日本映画を観るのが一番参考になるのではないでしょうか。

 この本は映画好きには極上の一冊で、しかも本文にはさまっている高松啓二さんのイラストがおしゃれなタッチでとてもいい。
 それもお楽しみです。
  
(2021/07/07 投稿)

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  NHK大河ドラマ青天を衝け」を欠かさず見ています。
  徳川慶喜役の草彅剛さんが話題になっていますが
  第43作の「新選組!」で近藤勇を演じた香取慎吾さんを
  ゲスト出演させたら
  もっと話題になったのにと思います。
  さらにいえば、
  西郷隆盛役は第57作「西郷どん」の鈴木亮平さん、
  篤姫にいたっては第47作「篤姫」の宮崎あおいさんとくれば
  もう完璧の幕末ドラマのできあがりなんですが。
  今日は
  そんな大河ドラマをもっと楽しむ一冊を
  紹介します。
  春日太一さんの『大河ドラマの黄金時代』。
  懐かしい作品がずらり
  そろっています。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  これであなたも「大河ドラマ」通になれるかも                   

 現在放送中のNHK大河ドラマ「青天を衝け」(大森美香 脚本)は、大河ドラマとしてちょうど60作めにあたる。
 「時代劇を、豪華キャストを集めて一年間の連続シリーズを制作する」という意図で1963年4月、「花の生涯」という作品が第1作め。それからまだ60年にあたらないが、すでに60作めとなっているのは、途中人気回復のため、半年間の大河ドラマとしては短い作品が作られているからだ。
 60作も作り続けていれば、視聴者の嗜好も変化するし、ドラマ化できる題材も限りがある。さらに視聴率の高低も、NHKとはいえ気になるだろう。
 映画史・時代劇研究家である春日太一さんの大河ドラマの各作品がどのように制作されていったかをまとめたこの本では、視聴者の高い支持を得ていた、いわゆる「黄金時代」である第1作から第29作の「太平記」(1991年)までの作品を考察している。

 この本の面白いところは、各作品の制作にたずさわったNHKのプロデューサーとディレクターの証言のみで構成されていることだ。
 映画は監督、テレビドラマは脚本家とよくいわれるが、この本では映画の監督にあたるディレクターにも着目している点が目新しい。
 もっとも大河ドラマでも橋田壽賀子さんを筆頭に有名な脚本家が支えていたのも事実で、そのあたりの証言、あるいは俳優たちのそれも加われば、重層感が増しただろう。

 「大河の主人公に求められるのは、何らかの形で時代を前進させた人物」とあるディレクターが語っているが、そういう視点で見ると大河ドラマもまた面白いのではないだろうか。
  
(2021/07/06 投稿)

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 梅雨とはいえ、
 こう大雨、長雨が続くとうんざりします。
 そして、まさしても水害が発生しました。
 ニュースで駆け下る土石流の映像を見ると
 自然の驚異に呆然となります。
 「歳時記」に「出水」という季語があって、
 「梅雨時の集中豪雨によって河川が氾濫すること」とあります。
 昔からこの時期は出水が多かったのでしょう。

    目のついてゆけぬ迅さの出水川       藤崎 久を

 そうはいっても
 この時期の雨は貴重な一面もあります。
 近くの田んぼの稲は
 青々としてきました。

  20210703_141110_convert_20210704083338.jpg

 雨が続いているので
 畑にもなかなかいけません。
 収穫もしないといけないので
 お天気を気にかけながら
 でかけています。
 サトイモの葉にとまった雨の雫には詩情があります。

  20210703_142558_convert_20210704083736.jpg

 こちらはミニトマト

  20210703_141914_convert_20210704083645.jpg

 ミニトマトはこうして実をつけますが
 赤くなるのは枝に近い方から順々です。
 今年最初の大玉トマトも収穫しました。

  20210701_153502_convert_20210704083939.jpg

 赤く色づいたので収穫しましたが
 大玉トマトというより中玉ほどでした。
 ミニトマトと比べると大きいですが。

 そのほか
 天気の合間に収穫した夏野菜たち。

  20210628_175427_convert_20210704083813.jpg

 白ナスも採れました。
 夏野菜の成長はとても早いので
 雨が続くと
 収穫のタイミングも難しくなります。

 こちらは
 トウガラシの鷹の爪

  20210703_141858_convert_20210704083456.jpg

 トウガラシは空にむかって手をのばすように
 実をつけます。
 赤くなるまでまだ少し時間がかかるのかな。
 長雨で
 今は日照時間も少ないので
 梅雨明けを待つしかありません。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  日系アメリカ人の絵本作家アレン・セイさんが絵も文も書いた
  『はるかな湖』という絵本を
  紹介します。
  この絵本を手にとったのは
  翻訳しているのが椎名誠さんだったから。
  あのシーナさんがどんな絵本を翻訳しているのか
  興味がありました。
  父が子どもの時に遊んだ山にある湖を
  息子の少年とともに目指すという話ですから
  やはりシーナさんにぴったりの絵本といえます。
  もうすぐ夏休みですが
  今年もまだコロナ禍ですから
  なかなか旅行とかもままならないと思いますが、
  この絵本の父と子のような
  普段過ごせない時間を共有できたら
  いいですね。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  父が息子に見せられる大切なもの                   

 父の背中を見て育ったとかよく耳にします。
 それって、実はそんな大げさなものではなく、日常のなにげない父の姿に教えられるということかと思います。
 ただ、背中は後ろにあります。目に見えない後ろにあるからそれはあまり目にしないものなのかもしれません。

 日本で生まれた日系アメリカ人の絵本作家アレン・セイが1999年の発表したこの絵本を読んでいても、主人公の少年の父親が少年に見せるのは、普段少年が目にしない姿でした。
 冒頭、「夏やすみにとうさんの家へ遊びにいった。」という一文があります。
 これはもしかしたら、少年は日常では父と離れた生活をしていることを意味しています。
 単身赴任でしょうか、両親の離婚でしょうか。
 なので、少年は余計に父のことがわかりません。
 ある時、父が少年をキャンプに連れ出してくれます。
 少年が退屈まぎれに部屋の壁に貼った山や川の写真を見たからです。
 ここから、一気に少年と父の距離が縮まります。
 山道を歩くたくましい父。父が子どもの頃に遊んだ秘密の湖。(もっとも、ここは今ではすっかり観光地されていて二人はもっと山深い湖を目指します)
 キャンプをしながら料理をつくってくれる父。
 父にとってはいつもと変わらないそんな姿が、少年には新鮮に見えます。

 父の背中とはきっとそういう普段目にしないもの。
 だから、子どもにとってはとても貴重なものになるのでしょう。
 こういう父と息子の物語に、やはり椎名誠さんがよく似合います。
  
(2021/07/04 投稿)

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 この春に亡くなったジャーナリストの立花隆さんが
 2020年1月に出した『知の旅は終わらない』の「はじめに」で
 自身は「いまでいう現代哲学的な意味での“ノマド(遊牧民)”」と書いているのを見つけて驚きました。
 というのも、
 「ノマド」という言葉を私はつい最近まで知らなかったからです。
 知ったきっかけは
 映画「ノマドランド」を観てから。
 というわけで
 今日の映画の話は「ノマドランド」です。

  

 いうまでもなく
 映画「ノマドランド」(2021年)は第93回アカデミー賞の作品賞を受賞した作品です。
 それだけではなく、クロエ・ジャオ監督が監督賞を受賞。
 彼女は非白人女性監督として初めての受賞ということで話題になりました。さ
 主演をつとめたフランシス・マクドーマンドさんが主演女優賞
 フランシス・マクドーマンドさんといえば
 「ファーゴ」(1996年)「スリー・ビルボード」(2017年)に続く
 3回めの主演女優賞です。
 しかも、彼女はこの作品のプロデューサーの一人でもあるのですから立派。
 まさに今もっともノッテいる女優さんの一人です。

 その「ノマドランド」ですが
 原作があります。
 ジェシカ・ブルーダーさんのノンフィクション
 『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』です。

  

 このノンフィクションを基にフィクションと組み合わせてできています。
 この原作は日本でも2018年に春秋社というところから
 翻訳出版されています。

 主人公ファーン(フランシス・マクドーマンド)は工場の閉鎖によって
 家を売り、自家用車に生活用具を積み込んで日雇いの職を求めて
 転々とします。
 そういう生活があるなんて知りませんでしたし、
 ファーンは姉からともに暮らそうと提案されても
 転々と移動している生活の中で出会った男性から
 一緒に暮らさないかと声をかけられても
 彼女はひとり新しい生活を求めて旅立っていくのです。
 ある時彼女は旅の途中で出会った老女の死を知ります。
 死を悼むノマドたちの集まりで
 ノマドの生活には「さよならがない」ことを教えられます。
 あるのは、再びの出会い。
 そして、そうして彼女たちは
 また新しい出会いを求めて旅立っていきます。

 アメリカの広大な自然が静かに語りかけてくるもの。
 それこそ経済一辺倒ではない
 人間が本来持っていた営みのような気がします。
 いい映画でした。

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 今日は半夏生(はんげしょう)
 夏至から11日めにあたり、
 この日までに田植えを終えるようにいわれています。

    父の声すこし嗄れたる半夏生      三吉 みどり

 中高生は期末試験の真っ最中の頃かと思いますが
 試験が終われば
 夏休みまでもう少し。
 がんばれ! がんばれ!
 本屋さんでは
 さっそくおなじみの夏の文庫フェアが始まっていて
 君たちが来るのを待ってますよ。

  20210626_183553_convert_20210627091703.jpg

 今年ちょっと目新しいのは
 新潮文庫の新刊として出た『ほんのきろく』。

  

 「100冊分の思い出を、一冊に。」が謳い文句。
 つまりは、文庫の形をした読書ノートになっています。
 この本の使い方が
 夏の文庫フェアの「新潮文庫の100冊」に載っています。

   1.読んだ本を「きろく」しましょう。
   2.心の残った文章や、考えたこと、思いついたことも書いてみましょう。
   3.本の写真を貼りましょう。

 最後の本の写真は「新潮文庫の100冊」に載っているものを
 貼れるようになっています。
 さあ、この『ほんのきろく』で
 「新潮文庫の100冊」に挑戦してみませんか。
 今年の「新潮文庫の100冊」は
 三島由紀夫の『金閣寺』も復活しています。

 集英社文庫は今年も「ナツイチ」。

    きみとぼくを、つなぐ一冊。

 ちなみに7月21日は「ナツイチの日」だそうで、
 「好きな本の世界へ、冒険にでる日」です。
 その次の日の22日は「海の日」で
 23日は「スポーツの日」と
 今年だけの祝日の移動がありますから
 カレンダーにも注意しないといけません。

 角川文庫
 「世界を照らそう。 カドフェス2021」。

  先の見えないこんな時代、
  本はあなたのそばで、
  世界を照らしていたいのです。

 それにしても新潮文庫
 カミュの作品を文庫でそろえているのに
 どうして『異邦人』ではなく『ペスト』を
 100冊に選ばないのかな。
 中高生もこのコロナの時代をどう生きていくか
 『ペスト』はその道標になると思うのですが。

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