08/31/2021 サンドイッチクラブ(長江 優子):書評「砂像って知っていますか」

今日は8月最後の日。
明日から新学期が始まる子どもも多いと思います。
まだ読書感想文の宿題できてないと
焦っている子はいませんか。
そこで今日は
第67回青少年読書感想文全国コンクールの
小学校高学年(5・6年)年の課題図書に選ばれた作品、
長江優子さんの『サンドイッチクラブ』という物語を
紹介します。
さすがに小学校の高学年向けの話ですから
少し長めの作品になっています。
絵もありませんし。
でも、がんばれば一日で読めると思います。
途中からぐんぐん面白くなってきるので
最後までがんばりましょう。
そして、明日からの新学期、
明るい笑顔で迎えましょう。
じゃあ、読もう。

第67回青少年読書感想文全国コンクール小学校高学年(5・6年)年の課題図書に選ばれた作品。
タイトルの「サンドイッチ」と表紙のおいしそうなタマゴサンドの絵で、サンドイッチが何等かの形で関わってくる物語だろうと、多くの人が想像するかもしれないから、おなかをすかして読もうなんて思わないことです。
この物語のサンドはサンドでも「砂」のこと。表紙の絵もよく見ると、背景は砂っぽい。
主人公は中学受験を目指してダブル塾通いをしている小学6年生の珠子。彼女の通う塾で、いつも机の下を砂だらけにする変な子がいる。
その子の名前は、羽村ヒカル。
どれくらい変わっているかというと、大きくなったらアメリカの大統領になって世界中から戦争をなくしたいと思っているような女の子。
珠子と羽村ヒカルが仲良くなって、お互い呼び合うのが「タマゴ」と「ハム」だから、サンドイッチと関係なくはない。
ヒカルが変わっているのはほかにもある。
彼女は砂像づくりに夢中になっていて、葉真(ようま)という男の子と砂像作りを競っているのだ。
「砂像」というのは、砂と水だけで作る彫刻のこと。
ヒカルたちがしているのは公園の砂場を使っての砂像づくり。
受験にも今ひとつ燃えてこない珠子は、自分を変えてみたいとずっと思っている。
そんな時に出会ったヒカルと砂像づくり。
これは小学生最後の夏を、自分を変えるために砂像づくりに夢中になった素敵な女の子たちの物語だ。
きっと読み終わったら、インターネットで砂像の写真を見たくなる。
(2021/08/31 投稿)

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08/30/2021 明日(8月31日)は野菜の日 - わたしの菜園日記

これは、野菜の良さを見直してもらうため、
「や(8)さ(3)い(1)」の語呂合わせから、
食料品流通改善協会や全国青果物商業協同組合連合会など9団体が
1983年(昭和58年)に制定した記念日です。
最近ではカゴメとかキューピーといった有名メーカーも
力をいれています。
そこで問題。
野菜は一日どれくらい食べればいいでしょうか。
答えは350グラム。
では、その摂取量が一年でもっとも少なくなるのはいつでしょう。
この答えには驚いたのですが
実は夏なんですね。
暑いから野菜の過熱料理が少なくなるからだとか。
いろんな種類の多い夏野菜が楽しめるのに
残念です。
私の個人的な感想でいえば
夏野菜がたくさん採れるこの時期は
毎日なんらかの野菜を食べているように感じているのですが。
せっかくなので
先日の土曜に収穫した野菜がこちら。

赤いのはトウガラシの鷹の爪。

伐採しました。
この夏採れたミニトマトは200個。
なかなかよく採れました。


まるで空中に並んだ音符みたいにかわいい。
そのうしろに見えるのが
モロヘイヤとクウシンサイですが、
これも次の秋冬野菜の準備のためにおしまいです。
ちょっと残暑が厳しい日でしたが
がんばって畝づくりをしました。


こちらには今週末にダイコンの種を蒔きます。
その向こうが先週作った畝。
そこには9月の10日過ぎにキャベツと玉レタスの苗を植えます。
手前に見えているのは
青ジソです。

ニンジンの種をまず先行して
先週蒔きました。

その横には
芽キャベツを植えようと思っています。

摂取量も多くなっているように感じます。
一年中、野菜の日であればいいですね。

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08/29/2021 うそ(詩 谷川 俊太郎/絵 中山 信一):書評「詩に絵をつけて生まれる不思議」

今日は
谷川俊太郎さんの詩に
中山信一さんが絵をつけた
『うそ』という絵本を紹介します。
この絵本の巻末に
谷川俊太郎さんが1964年に発表した
「うそとほんと」という詩が載っています。
この1964年というのは
昭和39年。
前回の東京オリンピックが開催された年です。
実は谷川俊太郎さんは
市川崑監督の東京オリンピックの記録映画に
脚本家の一人として参加していました。
谷川俊太郎さん、この時32歳。
若い力が開花していました。
これ、うそじゃないですよ。
じゃあ、読もう。

この絵本を読んで、まっさきに思ったことは、谷川俊太郎さんってなんて幸せな詩人だろうということでした。
どうしてかというと、この絵本は2021年4月に出版されているのですが、絵本で綴られた谷川さんの詩自体は1988年に刊行された『はだか』という詩集に収められた一篇の詩なのです。
それが、こうして絵本になる。谷川さん自身、この絵本の巻末の短いエッセイに「こんな不思議な絵本ができました」と書いているくらいです。
詩を、それもそんなに単純な内容ではない詩に絵をつけるのは、難しいだろうと思います。
少なくとも、この「うそ」という詩には物語(ストーリー)があるわけではないのですから。
「ぼくは/きっと/うそをつくだろう」、そんな書き出しの詩に、あなただったら、どんな絵を描きますか。
次の詩文を読まないとわからないよ。
では、「おかあさんは/うそをつくなと いうけど」と続きますが、さあて描けますか。
こういう絵本の読み聞かせって難しいだろうな。
単に朗読だったらできるかもしれませんが、絵とうまく調和できるだろうか。
そんな難しい詩に、1986年生まれの若いイラストレーターの中山信一さんがなんともぴったりの絵を描きこんでいます。
谷川さんの詩をじっくり読み込み、そのあといったん離れて自身の世界を思い描く、そしてまた谷川さんの詩に寄り添う。
そうして出来上がった絵本のように感じました。
(2021/08/29 投稿)

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沢木耕太郎さんの『オリンピア ナチスの森で』は、
ヒットラーのナチス政権下のベルリンで開催された
第11回オリンピックの記録映画を撮った
女性監督レニ・リーフェンシュタールとのインタビューを核にした
ノンフィクション作品でした。
レニが監督したベルリン・オリンピックの記録映画は
総タイトルに「オリンピア」とついていますが
「民族の祭典」と「美の祭典」の二部構成でできています。
ベルリン・オリンピックが開催されたのが1936年、
そして映画が出来上がったのは1938年。
今日は、その映画の話です。

今でもこの2つの映画は観ることができます。
私はTSUTAYA TVで2本とも観ました。
「民族の祭典」の方がメインでしょうか、
開会式と陸上競技が記録されています。
「美の祭典」の方は、陸上以外の競技が収められています。
但し、日本人を熱狂させた前畑秀子さんの女子二百メートル平泳ぎは
映像に残っていません。
きっとこの作品を観た当時の人は不平不満だったのではないでしょうか。
ただ、この二つの作品では
多くの日本人が撮られているのも事実です。
有名なのは「民族の祭典」に出てくる
西田選手と大江選手が銀メダルと銅メダルを半分に分け合って
友情のメダルとなった棒高跳び。
この競技は優勝争いが熾烈で
競技は深夜まで及びます。
そこで、レニ監督は競技のあと撮り直しをします。
いわゆる再現映像です。
なので、この記録映画2作品はドキュメンタリー映画ではありません。
沢木耕太郎さんとのインタビューでも
レニはそのことを認めています。

この映画がナチスのプロパガンダだったかという問題です。
「民族の祭典」を観ると
確かにヒットラーの姿がたびたび出てきます。
子どものように無邪気に喜んでいるヒットラー、
それを称えるドイツ国民となれば
なかなか難しいところだと感じました。
さすがのレニもヒットラーの登場場面を減らせられなかったということでしょうか。

ベルリン・オリンピックで印象に残る人と聞かれ、
アメリカの黒人選手ジェシー・オーウェンスの名前をあげています。
沢木耕太郎さんも作品の中で
「ベルリン大会を代表するヒーローをひとり挙げよと言われれば、
誰しも躊躇なくジェシー・オーウェンスと答えるだろう」と書いています。
陸上100メートル。200メートル、走り幅跳び、400メートルリレーで
金メダルを取った黒人の選手です。
そのジェシー・オーウェンスを主人公にした映画があります。
2016年に公開された
「栄光のランナー/1936ベルリン」です。
黒人ゆえに
ナチス政権下のオリンピックに出ることがベストなのか悩む
ジェシー・オーウェンスの苦悩が描かれています。
この映画でもレニが登場します。
走り幅跳びの競技のあと
再現を求められたジェシー・オーウェンスがレニに
「イカサマ?」と問うシーンがあります。
レニは「偉大な功績を遺すため」と答えています。
確かにレニが撮った「民族の祭典」のジェシー・オーウェンスは
美しい、
彼を撮ったことで
レニ・リーフェンシュタールは歴史に残る名監督になったように思います。

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08/27/2021 繊細すぎてしんどいあなたへ(串崎 真志):書評「一人で悩む前に」

もうすぐ新学期が始まります。
学校が始まるのを
とても楽しみにしている子どももいれば、
始まることに怖さを感じている子どももいることと思います。
怖さを感じるには
いろんな理由があります。
いじめられている子は
またいじめられるのではないかと思うでしょうし、
繊細すぎる子は
学校そのものに居づらさを感じます。
今日は
串崎真志さんの
『繊細すぎてしんどいあなたへ』という
岩波ジュニア新書の一冊を
紹介します。
悩んでいる子どもたちへ。
あなたは決して一人ではありませんよ。
あなたは唯一無二なあなたなのですから。
じゃあ、読もう。

副題に「HSP相談室」とあるように、臨床心理学を専門にしている串崎真志さんが高校生向けに「繊細すぎる性格」のことは紹介した一冊。
「繊細さん」とも呼ばれる「HSP」(Highly Sensitive Person)は「繊細な性格をもつ人」のことで、決して病気ではありません。
串崎さんもこの本の中で「HSPは気質と呼ばれる、生まれつきの性格で、「私らしさ」の基本になっているもの」と説明しています。
そうはいっても、繊細すぎて生きづらさを感じることはあります。
特に青春期の多感な時期はそれは顕著にあらわれたりするものです。
でも、「繊細さ」は短所ばかりではなく、長所もあります。
さらに「繊細さ」はあるひとつの症例を指すのではなく、さまざなな特徴を持っています。
この本では「怒っている人が怖い」「友達の顔色をうかがう」「教室に居づらい」「人の気持ちに気づく」「空想が大好き」「匂いや音に敏感」といった6つのタイプで説明がなされています。
こうしてみると、「空想が大好き」なんて決して短所と思えません。
「繊細すぎる」ことで悩む前に自身がどのようなことに繊細になりすぎるのか、自身で判断するのもいいかもしれません。
この本では自身での解決方法だけでなく、学校内でのスクールカウンセラーへの相談や「思春期外来」への相談方法など、具合的に説明されています。
「繊細」だけでなく、「いじめ」の問題もそうですが、自分ひとりで悩むのではなく、他力に頼るのもひとつの方法です。
(2021/08/27 投稿)

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08/26/2021 九十歳のラブレター(加藤 秀俊):書評「社会学者の「愛情物語」

今日は
加藤秀俊さんの
『九十歳からのラブレター』という本を
紹介します。
加藤秀俊さんは社会学者で
たくさんの著作を残しています。
その著作を今回改めてインターネットで調べたのですが
どうも読んだ記憶がないのです。
ところが、
何故か加藤秀俊という名前はすごく印象に残っていて
この本のことを
新聞の広告で見つけた時は
読みたいとパッと感じました。
あれはどうした具合だったのか
自分でもわかりません。
でも、この本はとっても良かった。
じゃあ、読もう。

愛する人を突然喪う悲しみは、いくつであっても同じだ。
これは1930年生まれの著名な社会学者がともに90歳にとどこうという2019年9月に、愛する妻を突然亡くし、そのあとの日々の中で妻との出会いからともに過ごした日々を綴ったものである。
「あなた」と呼びかけられた文章は、確かに「ラブレター」と呼ぶのにふさわしい。
そして、書かれている内容も愛に満ちている。
加藤秀俊さんと妻の隆江さんの出会いは小学校の入学までさかのぼるという。
その当時はお互いを知っている程度で、何しろその頃は男子と女子は別クラスだったそうだ、再会は戦争が終わったあとの青年になってからだった。
しかも偶然の駅での再会。
そして、淡い交際が始まる。
その当時の自分のことを、こう書いている。
「ぼくはどうしてもあなたが好きだった。」
この「どうしても」という言葉に、当時の彼の思いが伝わってくるようだ。
そして、彼がハーバード大学の研究生に招聘されるのに合わせて、二人は結婚する。
1950年代の初め、先に渡米した彼を追って彼女も長い船旅でアメリカにわたる。
彼は書く。
「あの若いころの瞬間をぼくは九十歳になったいまも、ついさっきのできごとだったように鮮明に記憶している。」
この「ラブレター」はこのようにして彼女が心不全で突然死するまでの二人の生きてきた日々を綴っている。
加藤さんは愛する人を喪った悲しみをこうして癒していったのだろう。
執筆している時には、もしかしたらいつも奥さんがそばにいたのかもしれない。
これはなんとも美しい「愛情物語」だ。
(2021/08/26 投稿)

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08/25/2021 ザボンの花(庄野 潤三):書評「昭和の家庭はこんな風であった」

少し前の話ですが
再放送されていたNHKEテレの
「趣味どきっ! こんな一冊に出会いたい 本の道しるべ」を見ていて
モデルで女優の菊池亜希子さんが薦めていたのが
今日紹介する
庄野潤三さんの『ザボンの花』。
大きな事件が起こるわけではないんですが、幸福ってこういうことかな?
菊池亜希子さんのそんな言葉に誘われて
この本を手にしました。
読んでみて
確かにその感じよくわかります。
小さななんでもないことが
ちょっと心にひっかかる。
そんな幸福感がよく出た小説です。
また、庄野潤三さんの作品を読んでみたくなりました。
じゃあ、読もう。

昭和30年に『プールサイド小景』で第32回芥川賞を受賞した庄野潤三は1921年2月9日生まれで、今年生誕100年を迎えた。
2009年9月に88歳で亡くなったが、今でも庄野文学を愛する読者は多い。
今でも新しい文庫本が出版されることもあって、今年の2月には読売新聞で「静かなブーム」と謳った記事も出ていたようだ。
その記事の中で庄野の長女が「父のファンの方は、熱心に本を読み、雰囲気がよく似たいい人が多い」とコメントを寄せている。
この小説は庄野が芥川賞を受賞した昭和30年に日本経済新聞に連載された家庭小説である。
大阪からまだ麦畑の残る東京の郊外に越してきた矢牧一家の何気ない日常の姿を淡々と描いた作品ながら、この作品が発表されてすでに60年以上経つが今でもファンが多い庄野の代表作のひとつだ。
矢牧家には三人の子どもがいる。小学4年の正三、2年になる妹のなつみ、まだ幼稚園にもいかない四郎。
引っ越してきたばかりの矢牧と千枝夫婦は知り合いもいなかったが少し離れたところに心やすい隣人ができる。
小さな世界ではあるが、現代のようにぎすぎすしていない。
時間の進み方がまるで違うように感じてしまう。
それが庄野潤三の文学の魅力ともいえる。
おそらく庄野の長女が「雰囲気がよく似た」人というのは、少なくともそんな時間を愛する人たちなのかもしれない。
親が親として、子が子として、そこにあたたかなものがあった時代の、家庭小説の名品といえる。
(2021/08/25 投稿)

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08/24/2021 オリンピア ナチスの森で(沢木 耕太郎):書評「今だからもう一度この作品を読む」

今日から
東京2020パラリンピックが始まります。
そこで
今日は沢木耕太郎さんが1998年に発表した
『オリンピア ナチスの森で』という
第11回のベルリンオリンピックを描いた
ノンフィクション作品を紹介します。
まだこの時には
パラリンピックは生まれていませんが。
この作品は刊行された時に読んでいますが
コロナ禍の中開催が強行された
今回の東京オリンピック。
さまざまな意見がある中で
やはりアスリートたちがどう受けとめたかが
大事なんだろうと思います。
またこの作品の舞台となったオリンピックとの比較も
こんな時代だから
読んでみるのもいいかもしれません。
じゃあ、読もう。

ノンフィクション作家沢木耕太郎さんは、世界的なコロナ禍の中で開催された東京オリンピックを「大義のない大会」と大会が始まる前に書いていた。
そんな沢木さんはかつてオリンピックを題材にした作品を五部作にして書こうとしたことがあった。その最初の作品が1998年に発表されたこの作品である。
しかし、さまざまな事情で沢木さんはついに書けないまま現在に至っている。
唯一書かれた「オリンピア」と冠した物語は、1936年ベルリンで開催された第11回オリンピックだった。
もちろんこの時のオリンピックはヒトラーによるナチス政権下のもので、歴史をさかのぼると今だからよく開催されたといえるが、当時の人々にとって第一次世界大戦と第二次世界大戦のはざまの大規模な大会だったに違いない。
そして、その時制作された記録映画は映画史上でも傑作といわれる作品となって世に残ることになった。
沢木さんの取材はこの映画を監督したレニ・リーフェンシュタールへのインタビューが核となっている。
この大会の競技数はわずか19ながら、今でも語り継がれるアスリートがいる。
それは水泳女子2百メートル平泳ぎの前畑秀子であり、マラソンの孫基禎である。
二人の心の葛藤を描いた「故国のために」という章を読むと、今回のオリンピックで勝てたり期待に応えられず敗れた日本のアスリートたちのことを思わないではない。
開催の中止を求める世論の中で、彼らが大会に寄せた思いは何であったか。
それらが明かされるのはまだ先のことだろう。
未来の人は、地球規模で感染が広がる中開催された東京オリンピックをどう評価するのだろうか。
(2021/08/24 投稿)

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08/23/2021 秋冬野菜のための畝づくり始まりました - わたしの菜園日記

処暑。
この頃に暑さが収まってくるといわれています。
まだ暑いですが。
水平にながれて海へ処暑の雲 柿沼 茂
それでも
夏野菜で一番きれいな花といわれる
オクラの花もそろそろ終わりかも。


大玉トマトの苗は
ごらんのとおり枯れてしまいました。

雨が続かなかったら
もう少し収穫できたかもしれませんが
残念ですが
今年の大玉トマトはおしまい。
結局17個の収穫でした。

そのあとに秋冬野菜のための畝づくりを始めました。
まずは、区画を決めます。

ひもを張ることで区画の目安ができます。
そのあとに
元肥をいれます。

この畝の場合、
牛ふんと鶏ふん、そして黄色く見えている油かすをいれます。
畑は有機栽培ですから
化成肥料などは使いません。
そして、畝を立てて
黒マルチを張って出来上がりです。

この畝には
9月10日頃にキャベツと茎ブロッコリーなどを植えます。
写真の手前に写っているのは
モロヘイヤです。

赤さを増してきた
とうがらしの鷹の爪。

先日収穫したものをちょこっと齧ってみましたが
その辛いこと。
しばらく舌がジンジンしていました。
よい子は真似しないように。

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夏休みも後半戦にはいってきました。
子どもたちは夏休みの宿題順調に
進んでいるのかな。
今日は
そんな子供たちのために
今年の青少年読書感想文全国コンクールで
小学校低学年の部の課題図書に選ばれた一冊
『あなふさぎのジグモンタ』を
紹介します。
とみながまいさん作、
たかおゆうこさん絵の
絵本です。
小学校低学年ならもっと字の多い本の方がいいのではと
考える人がいるかと思いますが、
無理強いすると
一生本が苦手な人になってしまいますから
子どもたちが自由に
自分の好みに合わせて読むのがいいと思います。
じゃあ、読もう。

第67回青少年読書感想文全国コンクールの小学校低学年の部の課題図書。
童話というより絵本のジャンルにはいるのでしょうが、長い文が苦手な子どもや絵がないと楽しめないという子どもには、これなら感想文も書けるかもしれません。
それに色彩の鮮やかなたかおゆうこさんの絵や、まるでスタジオジブリのアニメになりそう素敵なタイトル(実際ストーリーも短編アニメにしてもいいような出来上がりです)など、ちょっとおしゃれを意識し始めた子どもたちにはぴったりかもしれません。
物語の主人公は何代も続いている「あなふさぎや」のジグモンタ。
「あなふさぎや」というのは洋服に空いてしまった穴をふさぐ仕事。昔は子どもたちがこしらえた服の穴などはお母さんが夜なべをしながら繕ってくれたものです。
ジグモンタはジグモという蜘蛛。
なので、8本の手足を巧みに使って、穴をふさいでいきます。
ところが、最近空いた穴をふさぐのではなく、服を新調してしまうお客が増えてきて、ジグモンタはさびしくなっています。
そんなジグモンタは、フクロウの親子が破れた毛布で寒そうにしているのを見て、夢中でそれを繕ってあげました。
フクロウのお母さんはとても喜びました。
ジグモンタも自分の仕事にやりがいを感じ、さらに新しい手法であなふさぎを始めます。
ものを大事にあつかうことの大切さだけでなく、少しばかりの工夫でひとに喜んでもらえることができる。
そんなことを教えてくれる、とってもおしゃれな絵本です。
(2021/08/22 投稿)

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08/21/2021 蝶のように舞い - 映画「百円の恋」の話

脚本家足立紳さんの『それでも俺は、妻としたい』は
2017年から19年にかけて
中間小説誌「小説新潮」に連載されたものだが、
2019年秋に単行本化されるに際し、
物語の後日談といえる「エピローグ」が書き下しで載っている。
そこでは2人めの子どもが生まれることになって
ダメ亭主の豪太が100円コンビニでアルバイトする姿が描かれている。
シナリオが書けない主人公だが、
「書いてみようと思っている話はある」という。
「100円コンビニでアルバイトする32歳の不貞腐れた女店員が
ボクシングのプロテストを受けてデビュー戦で砕け散るという話」だという。
あれ? このストーリー聞いたことがある。
そう、これこそ脚本家足立紳さんの名前を一躍有名にした
「百円の恋」の生まれる瞬間なのです。

2014年に公開された武正晴監督作品。
脚本はこれで「第1回松田優作賞」グランプリを受賞した
足立紳さん。
そして、映画化のあと
足立紳さんはこの年の日本アカデミー賞やヨコハマ映画祭などの
脚本賞を総なめすることになります。
主演の不貞腐れた女を安藤サクラさんが熱演。
彼女のこの映画の演技が評価されて
この年の日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞したくらいですから
その演技だけでなく
この作品にかける女優魂に敬服します。

最初はドテンと肥えた肉体をさらけ出し、
肉体で不貞腐れ感満載の存在感を見せるのですが
後半ボクシングにはまって
どんどん肉体もしまっていきます。
眼の光も変わっていくのですから
いやあすごいものです。
しかも、安藤サクラさんの拳闘シーンの美しいことといったら。
かつて世界王者モハメド・アリが
「蝶のように舞い、蜂のように刺す」と
名言を口にしましたが
安藤サクラさんはまさに蝶のように舞っていました。
それは拳闘というより
もうダンス。

ボクシングを始めるきっかけを作ったのは
ボクサーだった男へのほのかな恋。
彼を演じるのは新井浩文さん。

その年のキネマ旬報ベストテンの第8位。
8位にしておくのは
もったいない
日本映画の傑作です。

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08/20/2021 それでも俺は、妻としたい(足立 紳):書評「段差が大きいほど感動も大きい」

足立紳さんの『乳房に蚊』を最初に読んだ時の書評に
私はこんなことを書いていました。
「作品全体は中編小説に位置づけられる長さだが(略)
できれば、うんと短くして短編連作の方がもっと鋭くなったかもしれない。」
ところが、
なんとそのあとに足立紳さんはちゃんと
連作短編を発表していたのです。
それが今日紹介する
『それでも俺は、妻としたい』です。
2019年に刊行されていました。
これは前作以上にパワー全開の作品で
最後まで主人公のダメぶりが徹底しています。
一連の作品が自伝風という位置づけですが、
このあと
足立紳さんの運勢が開花していきます。
じゃあ、読もう。

2016年2月に『乳房に蚊』(のちに『喜劇愛妻物語』に改題)でさっそうと作家デビューを果たした脚本家の足立紳さんが、『乳房に蚊』で主人公だった年収50万の売れない脚本家豪太と彼を支えるチカ夫婦の徹底した夫婦愛憎物語(ただし、愛<憎なのか愛>憎なのかは意見の分かれるところだろうが)をさらに追い続けた連作集である。
2017年11月から2019年3月にかけて、単発的に中間小説誌「小説新潮」に発表されたもの。
発表誌の性格もあるのだろうか、「妻としたい」「妻としちゃった」「妻と働く」「妻と帰る」「妻と笑う」の各作品の総タイトルが『それでも俺は、妻としたい』だから、尾崎放哉の句からとった『乳房に蚊』からあまりにもグレード感が下がりすぎている。
さらに、主人公である豪太のダメさも数倍落ちていて、息子(前作では娘であったが、この連作では息子に変わっている)の保育園のママ友とスワッピング騒動を起こしたり、素人漫才のネタをパクったり、こんなひどい夫にチカはよく耐えているものだと思わないでもない。
「妻と帰る」は、家族で豪太の実家に帰省する話だが、そこに登場する豪太ママも豪太以上の人物でチカは孤軍奮闘ダメ母子と戦うことになる。
しかし、豪太のダメさが徹底されればされるだけ、そこからの改善度合いが大きくなる。そのことで、感動が生まれるというのは、シナリオ作りの鉄則のようなもので、作者の足立紳さんの作法はそれに徹しているといえる。
タイトルでひいてしまう読者もいるだろうが、読んで損はしない。
(2021/08/20 投稿)

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08/19/2021 喜劇愛妻物語(足立 紳):書評「気をつけよう、もとは『乳房に蚊』という作品」

書評のタイトルにも書きましたが
今日紹介する
足立紳さんの『喜劇愛妻物語』は
『乳房に蚊』を改題したものです。
『乳房に蚊』なら
出たばかりの2016年4月6日に
このブログに書評も載せています。
つまり、これは再読? になるのかな。
今、その時の記事を読むと
映画化されたら足立紳さんが脚本書くのかなと書いていますが、
脚本どころか
監督までしています。
足立紳さんはもうとっくに来ていました。
じゃあ、読もう。

第94回キネマ旬報ベストテン(2021年)で主演女優賞を受賞した水川あさみさんは、足立紳監督の映画「喜劇愛妻物語」での演技が評価されてもので、この作品で水川さんはこの年の数々の映画賞を受賞している。
その映画の原作がこの作品である。
ただし、気をつけないといけないのだが、この作品はもともと『乳房に蚊』というタイトルで2016年に刊行された脚本家足立紳さんの小説家デビュー作なのだ。
その作品を映画化するに際し、タイトルが変更され、原作も文庫化にあたって映画と同タイトルに改題されている。
映画を観ても、それが『乳房に蚊』を原作にしたものと気づかない方もどうかしているし、映画が面白かったので、それじゃあ原作を読んでみるかと、文庫本の「解説」を読むまでそのことに気づかないのだから、どうしようもない。
それでは、この作品がそんなどうにもならないくだらない作品かといえば、決してそんなことはない。
映画も面白かったが、原作も抜群に面白い。一気に読ませる。
結婚して10年、年収わずか50万という売れない脚本家豪太の目下の願いは妻とのセックスのみというダメさぶり。その妻チカは学生時代に豪太に憧れてはいたものの、結婚してもほとんど芽の出ない夫に絶望している。
そんな夫のもとにシナリオの仕事を舞い込んで、娘と三人で四国へ取材旅行に出かけることになったのはいいが、行く先々で問題勃発。
原作を読んだら映画を観たくなる。
映画を観たら原作を読みたくなる。
そんな作品だ。
(2021/08/19 投稿)

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08/18/2021 ゴハンですよ(東海林 さだお):書評「おかわりしたくなる食のエッセイ」

今日は
東海林さだおさんの楽しい食のエッセイ
『ゴハンですよ』を
紹介します。
この本の中に「ごはんのヘンテコ食い」というエッセイがあって
そこにこうあります。
「フォークの背中にごはんをのせて食べた経験はありませんか。」
東海林さだおさんも「あります」と書いていますが、
私もあります。
きっと昭和生まれの人のほとんどは
そうした経験があるのではないでしょうか。
あと、お皿にのってでてきたごはんに
食塩を振りかけたことないですか。
私はあります。
あれも、どういう理由だったのでしょう。
お茶碗のごはんには
かけないですものね。
そんなこと、つい思い出しちゃった。
じゃあ、読もう。

ゴハンだけで一冊の本を作ってしまうなんて、さすが「食の王様」(と、勝手に呼ばせてもらいます)東海林さだおさん。
漫画家としての顔もありながら、食のエッセイ、大人のエッセイを書かせてももう立派な勲章もの、だと思ったら、すでに紫綬褒章とか旭日小綬とか本物の勲章を頂戴しているエラい人物なのです。
そんなエラさを表に出さないのが東海林さんのいいところで、勲章までもらった人が「梅干し一ケで丼めし」を食べるなんてします? 普通はしない。でも、東海林さんはやってしまう。
卵かけご飯に舌鼓を打ち、猫めしを絶賛する。
勲章もらった人ですよ。
いや、もしかしたらそれは逆で猫めし食べたから勲章もらったのかもしれない。
だったら、国民みんなで猫めし食べよう、汁かけ飯食べよう。
この本は東海林さだおさんが名著「丸かじり」シリーズや「オール讀物」に今でも連載中の「男の分別学」などから、ゴハンについて語った数々のエッセイを選りすぐって集めたもの。
「ゴハンの食べ方編」「ゴハンのお供編」「ゴハンの文化編」「おにぎり編」「お弁当編」に分かれている。
さらに、椎名誠さんとの「白メシ対談」もついてます。
これだけ食べれば、満腹になること間違いなし。
東海林さんも言ってます。
「ゴハンを楽しみましょう。ゴハンで幸せになりましょう。」
ハイ、おかわりできますか。
(2021/08/18 投稿)

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テレビのチャンネルをたまたま触っていて
NHKEテレで「高校生講座 日本史」を偶然見つけました。
高校生講座なんて
今まで見たこともなかったのですが、
なんとアイドルで歴ジョでもなる小日向エリさんがMCをしていて
やさしく解説しているではありませんか。
彼女のような存在を「歴ドル」というんだそうです。
で、内容はスカスカどころが
みっちり充実しています。
この番組見たら、日本史はバッチリ。
さらに、強化すべき手にしたのが
石ノ森章太郎さんの『マンガ 日本の歴史』。
ちょうどこの18巻めが
高校生講座で先日勉強した? 範囲。
俄然、日本史が面白くなってきました。
じゃあ、読もう。

学問や技術の習得に欠かせないのは、その本人の興味の強さだろう。
興味がないものをどれだけせっついても、あまり効果がないように思う。興味があれば、自ずと勉強をすることになる。
では、その興味はどのようにもたせるか。
その一つの方法は、やはりマンガだろう。
石ノ森章太郎が全巻書き下ろししたこのシリーズが刊行されたのは1991年だが、実はその時以上現在の方がこのシリーズの価値が高まっているように思う。
よく読むと、マンガとはいえ、高校の日本史のレベル以上の高い水準で描かれている。
18巻めとなるこの巻では、鎌倉幕府の滅びと後醍醐天皇による建武の新政、そして足利尊氏の台頭までが描かれている。
最近新書で話題となってなっている「中先代の乱」まで描かれている。
このシリーズで興味を持って、日本史が好きになった人も多いのではないだろうか。
これからも読み続けていきたいシリーズである。
(2021/08/17 投稿)

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08/16/2021 オクラはとれましたが・・・ - わたしの菜園日記

また大きな被害となりました。
水につかった田んぼや畑を見ると
胸が痛みます。
「出水」は梅雨時期の夏の季語ですが
台風などでも発生するものは
「秋出水」と呼びます。
一軒の家を貫く秋出水 白濱 一羊

テレビなどでも野菜の番組が気にかかるようになりました。
NHKEテレの「やさいの時間」は
今でも欠かさず見ていますし、
NHKBSの月曜夜7時から放映している
「梅沢富美男と東野幸治のまんぷくメシ!」も
楽しく見ています。
この番組は以前は「まんぷく農家メシ!」といっていたくらいで
農家で育てている野菜の料理番組なのですが
なんといってもMCの二人の掛け合いが
とても面白い番組です。
先週その番組で
湘南の白ナスが取り上げられていました。
農家さんいわく、
白ナスは葉にこすれるとすぐに傷がつき見た目が悪くなるので
栽培が難しいとのことです。
農家さんは野菜が売れないとどうしようもないので大変です。
その点、楽しみで栽培しているものは
あまり気にしませんでしたが
さすがに先週の風と雨で
我が家の白ナスもごらんのとおり。

確かにこれでは商品にはならないかもしれません。

この長雨で終わりに近くなったでしょうか。
先週なかばに収穫した野菜。

オクラがようやく採れましたが、
写真でもなんだかこっそりしています。

サトイモ。

大きくなっているので
収穫が楽しみです。

夏野菜の片づけが始まります。
なんだかあっという間に夏が過ぎた気分です。

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昨日紹介した映画
「日本のいちばん長い日」は
もちろん半藤一利さんの原作がもとになっています。
半藤一利さんは
自身15歳の時に東京大空襲を体験されています。
今日は
半藤一利さんが初めて絵本の作品を書いた
『焼きあとのちかい』という絵本を紹介します。
絵は塚本やすしさん。
半藤一利さんの文によく寄り添った
とても印象的な絵です。
戦争はいけない、と人類はいい続けながら
世界から戦争はなくなりません。
どうか
この絵本の込めた半藤一利さんの思い、
戦争だけは絶対にはじめてはいけない
を、共有できますように。
じゃあ、読もう。

「歴史探偵」を自認していた作家の半藤一利さんが亡くなったのは、コロナ禍が猛威をふるっていた2021年1月のことでした。享年90歳でした。
自身初めての絵本となったこの作品は2019年7月に刊行されたものです。そのテーマは「戦争」です。
半藤さんは1930年で東京の向島に生まれました。
この絵本のはじめの方では、友だちと遊びころげていた姿が描かれています。
そんな生活が一変したのが、1941年12月のアメリカとの開戦でした。その時の町の人々の表情が「晴れ晴れとして明る」かったと、半藤さんは記憶しています。
しかし、いろんなものが生活から消えていきます。大好きだったベエゴマ、動物園の動物たち。
やがて、町の人たちから笑顔も消え、母ときょうだいも疎開し、15歳の半藤さんは父と二人残ることになります。
そして、1945年3月10日、東京下町に大量のB29機が襲いかかってきます。東京大空襲です。
その時の様子を半藤さんはこの絵本で詳細に綴っています。
生きるのも死ぬのも、わずかな違いだったともいえます。そんな生死の境を半藤さんは生き延びました。
「いざ戦争になると、人間が人間でなくなります」と、半藤さんは書いています。
焼きあとに立った半藤さんは、自分が死なないですんだのも偶然だし、生きているのも偶然、この世に「絶対」はないと思います。
そして、「絶対」という言葉を使わないで生きていきます。
そんな半藤さんですが、この絵本でその言葉を使って、こう語りかけます。
「戦争だけは絶対にはじめてはいけない」
絵本の形でこのメッセージが残された意義を伝えていかなければなりません。
(2021/08/15 投稿)

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08/14/2021 明日は終戦記念日 - 映画「日本でいちばん長い日」の話

76回目の終戦記念日。
堪ふることいまは暑のみや終戦日 及川 貞
昭和20年8月15日、
昭和天皇によるポツダム宣言受諾の玉音放送にいたる一日を
「日本のいちばん長い日」としてまとめたのが
作家の半藤一利さんでした。
昭和40年(1965年)に初版刊行された際は
大宅壮一編としてでましたが、
30年後の1995年に半藤一利さん著作と
正しい表記に直されたドキュメント文学です。
今日は
映画化された「日本のいちばん長い日」の話です。

1967年公開の岡本喜八監督作品と
2015年公開の原田眞人監督によるものです。
前者は白黒作品ですが、
作品の出来としては
私は岡本喜八監督の方がよかったです。
白黒画面に漲る緊張感
暴発寸前の青年将校たちの熱気、
そのあたりが作品としての密度を高めていたように思います。

昭和天皇の描き方でしょうか。
岡本作品では公開時まだ昭和天皇がご存命でもあって
その描き方は慎重になっていましたが
原田眞人作品では
昭和天皇を演じた本木雅弘さんにうまく
スポットがあたっていました。
それに本木雅弘さんは演じることに苦慮されたと思いますが
とても印象的な演技でした。

阿南惟幾陸軍大臣が
終戦と徹底抗戦をとなえる青年将校の間で
揺れ動く重要な登場人物ですが、
映画でもやはりこの人が主役となっています。
岡本作品では三船敏郎さんが、
原田作品では役所広司さんが演じています。
役所広司さんも熱演ですが
やはり世界のミフネの迫力には一歩及びません。

青年将校たちは
天皇の録音テープをなんとしても取り返そうと
やっきになっていきます。
その中心人物が畑中少佐という人物です。
岡本作品では黒沢年男さん
原田作品では松坂桃李さんが演じています。
ここでも松坂桃李さんが熱演されていますが
あまりにも現代風の容貌が役作りにじゃまをしているように
感じました。
もちろん、それは松坂桃李さんの問題ではありませんが。

2時間以上の上映時間ですから
2本続けた見たら
「日本でけっこう長い一日」になるかもしれません。

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漫画家のサトウサンペイさんが亡くなって
東海林さだおさんが朝日新聞に載せた追悼文の書き出しが
「僕にとってはいろんな面で「兄貴」でした」というものでした。
東海林さだおさんは今83歳ですから
年齢的にも弟分にあたります。
同じサラリーマン漫画を描いてきた二人ですから
通じるものがあったと思います。
今日紹介する『見たり、描いたり』の書評で
「後輩に道を譲る」というエピソードは
東海林さだおさんの追悼文に書かれていました。
サトウサンペイさんの漫画に笑い転げていた人たちは
今はすでに現役を退いたサラリーマンの人たちだったでしょうが
現役時代はどれだけ癒されていたことか。
ご冥福をお祈りします
サトウサンペイさん
楽しい漫画、面白かったですよ。

漫画家のサトウサンペイさんが7月31日、91歳で亡くなりました。
サトウさんといえば、朝日新聞に1965年から91年にかけて連載した新聞漫画「フジ三太郎」が有名で、サラリーマン漫画の創始者といわれています。
ちょうど日本が高度成長期にはいっていく頃、モーレツ社員がいる一方でサトウさんが描くどこかほんわかしたサラリーマンの姿が当時一服の清涼剤の役目を担っていたように思います。
サトウさんの漫画を「おもしろい! これがほんとうの漫画だ!」と絶賛したのが「暮しの手帖」の花森安治編集長。
花森氏はサトウさんに「絵に短い文をつけた戯評を描くといい」と勧めたそうです。
そして、1992年から2年半ほど「暮しの手帖」に連載したエッセイが、この作品です。
この中でも面白いのが「人生は運鈍根で」というタイトルがついた自身の半生を綴った章。
サトウさんの有名な逸話として大丸百貨店に入社するに際して提出した履歴書を漫画で描いたというもの。
そのサトウさんが漫画家になるのはもう少し先のことで、30歳を超えた頃。
ここではその頃お世話になったたくさんの人も描かれています。
サトウさんはこの本の中で「ヒントは発見、アイデアは発明。」と、漫画家にとってヒントが大切なことを記している。
サトウさんはほぼ60歳で新聞漫画の連載をやめています。その理由は「後輩に道を譲る」というもの。
サトウさんが描くフジ三太郎はおとぼけサラリーマンでしたが、サトウサンペイさんはかっこいい漫画家でした。
(2021/08/13 投稿)

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08/12/2021 雑誌を歩く - 「文藝春秋」9月特別号:編集長が変わりました

恒例となった芥川賞発表号となった九月特別号からです。
おしまいのページにある「編集だより」にこうあります。
★今月号より編集長を務める新谷学と申します。
「文藝春秋」は今も昔も当事者の肉声にこだわる雑誌です。
新谷学さんといえば、文春砲の立役者ともいえる「週刊文春」の元編集長。
文藝春秋でいえば
今もっとも名前の売れている人ともいえます。
最初の号ですから
気合も入っています。

第165回芥川賞の発表はもちろん
なんといっても
「台湾・蔡英文総統 単独インタビュー」が目をひきます。
新谷学新編集長は
「オンライン越しにも誠実さが伝わってきました」と書いています。
その一方で
この国の総理大臣は
「発する言葉から自信も力強さも伝わらなくなって」と書いたのは
同じ自民党の高市早苗さん。
「特集 四面楚歌の菅政権」で
「総裁選に出馬します!」という寄稿を載せています。
意味不明の長老議員に説得されることなく
ぜひ堂々に政策論争を闘ってもらいたいものです。
同特集には政治ジャーナリストの後藤謙次さんの
「「裸の王様」につけるクスリ」という
興味深い記事もあります。
オリンピック、パラリンピックが終われば
一気に政治の季節になります。
なんとしても、
誠実さが伝わってくる人をリーダーに選んでほしいものです。

オリンピック関連の記事はほとんどありません。
あるのは
「池江璃花子は病室で笑った」と
「戦場に消えた六人のオリンピアン」。
来月号でドーンと特集組むのかな。

誌面に変化を感じるようになるのはどのあたりでしょうか。
「多様な視点の提示も本誌の役割」とのこと。
新谷学新編集長がどんな手腕を見せてくれるか
楽しみです。

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08/11/2021 杉の柩(アガサ・クリスティー):書評「不思議なタイトルですが、面白さは抜群」

今日は
アガサ・クリスティーの『杉の柩』という本を
紹介します。
いわゆるポアロもの。
私はこのタイトルのことは知らなかったのですが、
いつもお世話になっている
霜月蒼さんの『アガサ・クリスティー完全攻略』によれば
この作品は人気作品だということです。
「しかも本気度の高いクリスティー・ファンが、
「じつはこれが一番好き」といった感じで本作を推す」らしい。
評価も高い。
★★★★☆と、高得点。
きっとまだまだ私が未読の面白い作品が
アガサ・クリスティーにはありそうです。
じゃあ、読もう。

原題が「Sad Cypress」という、アガサ・クリスティーが1940年に発表したポアロものの長編小説。
この原題を直訳すると「悲しいイトスギ」で、シェイクスピアの戯曲の一節らしい。それを坪内逍遥らが「杉の柩」と訳したのが、ここでも使われているらしい。
その言葉を引用したのは、殺人罪で公判中の女性エリノアの叔母ウエルマン夫人。しかし、この言葉と事件とは直接関係していない。
エリノアが何故殺人罪を問われているのか。
ここまできたら、さすがのポアロといえ出番がなさそうに思えるが、エリノアを密かに想っている医師ロードが彼女の無罪を信じてポアロに事件の真相をあばくように依頼したもの。
400ページほどある文庫本で、殺人が起こるのは160ページあたり。
つまり、そこまではエリノアを中心として殺された女性メアリイ、エリノアの婚約者でありながらメアリイに言い寄るロディーなどの関係が描かれていく。
メアリイを殺す動議はエリノアにはあった。しかも事件現場に彼女はいたわけだし、亡くなった叔母さんの遺産というお金の問題もある。
途中で怪しい動きをするロディーなど、アガサの仕掛けは用意周到である。
これで犯人を見つけ出せと言われても、できるはずもない。
今回はポアロの推理が公判中の裁判の中で活用されていく。
そういう点では裁判劇のような緊迫感のある作品に仕上がっている。
(2021/08/11 投稿)

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08/10/2021 やかまし村の子どもたち(リンドグレーン):書評「楽しみは世界に満ちている」

夏休み真っ最中です。
今週はお父さんやお母さんもお盆休みにはいったりして
よけい楽しみのボルテージがあがっているかも。
でも、コロナ感染が増えているから
どうしようと困っている人も多いかも。
せめて、楽しくなる本でも読んでみてはどうでしょう。
今日は
有名な児童文学、
リンドグレーンさんの『やかまし村の子どもたち』を
紹介します。
この本を読むきっかけとなったのは
書評にも書きましたが
三谷幸喜さんが朝日新聞の夕刊に連載している
エッセイにこの本のことを書いていたからです。
三谷幸喜さんも「五十九歳にして初めて接するリンドグレーンの世界」。
私なんか六十六歳にして初めて接する
リンドグレーンの世界になりました。
じゃあ、読もう。

有名なスウェーデンな児童文学。
作者はアストリッド・リンドグレーンという女性。2002年に94歳で亡くなっている。
日本でもその作品集が出版されているほどで、中でも『長くつ下のピッピ』は人気が高い。いやいや『名探偵カッレ君』でしょ、という人もいるだろうが、脚本家の三谷幸喜さんが小学生の息子さんとともにはまったのが、やかまし村に住む六人の子どもたちを描いたこの作品。
三谷さんは自身のエッセイの中で、この作品にはまった理由として「彼らの暮らしが、あまりに楽しそうだから」と書いている。
また「自分の少年時代をぴったりと重ねることが出来た」という。
もちろん、ここには塾もテレビゲームもスマホも出てこない。
それでも、やかまし村の子どもたちは毎日楽しそうなのだ。
現在の子どもたちは、あるいは大人もそうだが、その楽しみを忘れてしまっているかもしれない。
物語の主人公は七歳のリーサ。彼女には九つのラッセと八つのボッセという二人の兄がいる。
リーサの家の隣には八つのオッレという男の子(オッレの飼っている犬スヴィップを手にいれたエピソードはこの物語の中でも秀逸)と、反対側の隣の家には九つのブリッタとリーサと同い年のアンナという女の子二人が住んでいる。
男の子三人、女の子三人とうまい案配になっていて、仲がいい時もあるし、ケンカしている時もある。
おそらく彼らの暮らしには何もないから、楽しみは自分たちで見つけるしかない。でも、それで見つかるのだから、この世界はきっと楽しみに満ちているのだろう。
(2021/08/10 投稿)

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08/09/2021 トウガラシの収穫 - わたしの菜園日記

秋の季語に「稲の香」という言葉もあります。
稲の香や屈めば水の音聞こゆ 矢島 房利
この俳句のように
水田のそばに寄ると稲の香りがわきたってきます。


畑の野菜はできるだけ収穫しました。

右端にあるのはモロヘイヤ。
ミニトマトとかピーマンの出来はいいですが
今年もキュウリは不作でした。
2苗植えましたが、
収穫は30本でした。
次の秋野菜の準備もあるので
ここで断念。
伐採すると、やはり根が張っていませんでした。

収穫がよくない野菜は
根の張り具合がよくないことがわかります。
同じ畝で育てても
キュウリはダメで大玉トマトはイイというように
どうも品種によって違いがあるようです。

コロナ禍ですから
密を避ける工夫もされていて
屋内での講習はされません。
外では日差しが強いので
グリーンカーテンでおおった場所でされます。

なんだか子どもの頃の林間学校みたい。
もっとも7年めになる私は講習会に参加せずに
もっぱら作業、といっても今は草刈りが中心ですが、に専念しています。

うちのオクラの花。

でも、まだ収穫はゼロ。
やはり種まきが遅かったせいでしょうか。

収穫したばかりのトウガラシの鷹の爪。

赤さが際立ちます。
これからたくさん採れそうで
この夏期待の野菜になりました。

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連日の熱帯夜でうんざりしている人も多いと思います。
もちろん、「熱帯夜」は夏の季語。
手と足と分からなくなる熱帯夜 五島 高資
今回のオリンピックは地元開催という点では
夜中まで競技中継がなかっただけでも
寝不足にならないでよかったかも。
そのオリンピックも賛否いろんな意見がある中で
今夜閉会式。
おっと、その前に
女子バスケットボールの決勝戦があります。
今回のオリンピックでも
さまざまな競技で感動をもらいましたが、
その最後の締めくくりがこの競技。
日本女子がバスケットボールの決勝に進出なんて
まるで夢のよう。
今夜彼女たちが美酒に酔えますように。
今日の絵本は
ペク・ヒナさん絵、
長谷川義史さん訳の
『お月さんのシャーベット』です。
じゃあ、応援しよう。

韓国の絵本作家で、自称人形いたずら作家のペク・ヒナさんの作品は韓国だけでなく、日本でも人気が高い。
すでに『天女銭湯』とか『天女かあさん』とか『ぼくは犬や』などの絵本が日本でも出版されている。いずれも訳は長谷川義史さんで、長谷川さんの大阪弁の訳文が絵本の画調によく合っている。
そのペク・ヒナさんの(訳はもちろん長谷川義史さん)の新しい絵本が2021年6月に日本で出版された。
でも? あれ? なんだか、ちょっと雰囲気が違う。
人形いたずら作家のはずが、人形があまり出てこない。
どうなっているの?
ペク・ヒナさん、もしかしてスランプ? と、つい心配して、奥付を見ると、韓国での出版が2010年になっているではないか。
そうなのです、この作品はペク・ヒナさんの作品経歴でいえば『天女銭湯』より2年も前の作品なのです。
つまり、人形いたずら作家が誕生する前史の作品といえます。
もちろん、熱帯夜の暑さで月が溶けてしまって、そのしずくでシャーベットをこしらえるといった奇想天外なストーリー展開はすでにこの頃からあったし、写真を使った画作りもここではまだ実験途上ともいえますが、おそらくペク・ヒナさんの中では、新しい絵本作りが生まれつつあったのではないでしょうか。
溶けてしまって住むところがなくなったと登場するのが、月のうさぎ。
韓国でも月にはうさぎがいて、お餅をついていると、そんな話があるのだろうか。
(2021/08/08 投稿)

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08/07/2021 八月がつく映画 - 映画「八月の濡れた砂」とかの話

毎日猛暑ですが、よく言われるように
暦の上では秋です。
草花を画く日課や秋に入る 正岡 子規
実は「八月」というのも秋の季語。
八月のダム垂直に水落とす 佐藤 和枝
『歳時記』にも八月はお盆や終戦記念日などがあって
故人を偲ぶことも多い月と書かれています。
タイトルに「八月」がついた映画もたくさんあります。
そこで、今日は「八月」の映画のお話。

老姉妹の夏の日々を描いたアメリカ映画。
この作品の中の名セリフがこちら。
人生の半分はトラブルで、あとの半分はそれを乗り越えるためにある。
この時主演をつとめたリリアン・ギッシュは93歳だったそうです。

世界のクロサワ、黒澤明監督の『八月の狂詩曲(ラプソディ)』。
1991年の作品ですが、これは公開当時に映画館で観ました。
村田喜代子さんの芥川賞受賞作『鍋の中』の映画化ですが、
リチャード・ギアが出てたりして
私はなんだか不思議な感じがしました。
この頃の黒澤明作品は、
作品よりも監督の名前だけがとても大きくなっていた印象があります。
やはり黒澤明作品では
後期の作品群より初期から中期にかけてのものが
段違いにいいと思うのですが。

1998年の韓国映画。
不治の病で余命いくばくもない写真館の青年が主人公。
演じているのは、ハン・ソッキュ。
その写真館にしばしば訪れる若い婦人警官(シム・ウナ)。
やがて、二人は静かに心を通わせていく。
しかし、死が迫った青年がそのことを彼女に告げることなく
死んでいく。
喫茶店の曇ったガラスを拭うと、その先に何も知らずに
働いている彼女の姿が見える場面の切ないことといったらない。
何度観ても、いい。

もう何度観たかわからない作品、
1971年公開の日活作品「八月の濡れた砂」。
藤田敏八監督作品。
この作品を最後に日活はロマンポルノに転向していきます。
印象深いのは、
なんといっても石川セリさんが歌う同名の主題歌。

まさに行き場のない若者たちを描いた作品。
先日この作品をまた観ましたが、
古いことは古いですが、
やはりあの頃はこれこそが青春だったのだと感じていたのだと
今でも思います。
私が16歳の時の青春映画です。

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08/06/2021 犯罪(フェルディナント・フォン・シーラッハ):書評「読むのがやめられなくなる短編集」

今日は
ドイツの作家フェルディナント・フォン・シーラッハさんの
『犯罪』という短編集を
紹介します。
ほとんど海外小説を読んでいない私ですが、
この作品を読むきっかけは
中公文庫の「吉村昭短編集」シリーズの解説を担当している
池上冬樹さんにあります。
池上冬樹さんは
吉村昭さんの文体が
ドイツのこの作家によく似ていると書いていました。
私はまったく未知の作家だったので
どんな作品だろうかと
初めて読んでみました。
それがなんととっても面白い。
海外小説でも
こんなにいい作品があるのだと
あらためて感じました。
それに、確かに吉村昭さんの文体に
よく似ていると思いました。
いい作家を知りました。
じゃあ、読もう。

ドイツの弁護士でもあるシーラッハ氏の、作家としてのデビュー作。
11篇の短編が収められた短編集で、書籍タイトルのとおり、犯罪小説といっていい。
本国ドイツで2009年発表され、ベストセラーとなり、日本での翻訳は2011年。
日本でも話題となって、2012年本屋大賞「翻訳小説部門」で第1位になっている。
11篇それぞれストーリーが面白いが、この作品の魅力はシーラッハ氏の文章力だろう。
創元推理文庫版の「解説」で松山巌氏は、氏の文体を「短い一節で時空間の流れを畳み込むように表現する」と説明している。
そのせいか、妻殺しであれ(「フェーナー氏」)であれ、偽証罪であれ(「ハリネズミ」)であれ、銀行強盗であれ(「エチオピアの男」)であれ、犯罪を扱っていながら、湿気がほとんど感じられない。
いとも淡々と、事実が羅列されていく。
そして、これらの短編は単に犯罪を描いただけではない。
そこには必ず人間の秘めた姿がある。
冒頭の「フェーナー氏」は妻殺しの犯罪ながら、妻に蔑まれながらも耐えてたえて行ったもの。法はそんな彼を裁くが、彼を裁いているのは彼自身といえる。
11篇の短編の中では「チェロ」という作品がいい。
豪腕な父との生活を嫌って家を出る姉と弟の物語。しかし、二人には過酷な生活が待っている。病にかかり、死の前にあった弟を手にかけてしまう姉。その姉もまた拘置所で自殺してしまう。そして、あの父もまた、二人のあとを追う。
悲しみの色濃い作品である。
(2021/08/06 投稿)

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08/05/2021 私の文学漂流(吉村 昭):書評「吉村昭はこうして世にでていく」

今日は
吉村昭さんの小説ではなく、
吉村昭さんが生前書いた
半自伝作品『私の文学漂流』を
紹介します。
吉村昭さんが作家として認められていく誕生秘話ですが
その過程には
多くの先輩作家たちの温かい目がありました。
中でも高見順とのエピソードは感動します。
高見順が亡くなったあと、
彼の妻から吉村昭さんはこんな話を聞きます。
「高見は、あなたのことをひどく気にかけていました。
あなたは必ず伸びると言っていた高見が、眼がなかったと言われないように、
いい作家になって下さいね」
高見順の見込みどおり、
吉村昭さんはいい作家になりました。
じゃあ、読もう。

この作品は、平成2年から2年間にわたって刊行された全15巻に及ぶ「自選作品集」の月報に連載された「私の文学的自伝」が基になっている。
「自伝」と謳ったものの、ここで書かれているのは、吉村昭さんが作家としての道をこじあけるきっかけとなった『星への旅』が1966年に太宰治賞を受賞したところまでのため、改題したとこの本の「あとがき」にある。
ただ、「文学漂流」というのは、あたっているようで、そぐわないような感じもする。
あたっているというのは、吉村さんが太宰治賞を受賞するまで、実は芥川賞の候補に4度選ばれるがいずれも受賞に至らず、一度は受賞の連絡を受けたのちそれが間違いであったという辛い経験もしている。
あるいは、妻である津村節子さんが芥川賞を受賞し、周囲の冷ややかな目にされされたこともある。
あるいは、生活のために兄の会社の経営に携わって、一時執筆活動から遠ざかったこともある。
そういうことでは、「漂流」であったかもしれない。
しかし、どのような時であっても、吉村さんの文学観はぶれていない。
芥川賞に選ばれない時も、「それぞれに人間には個性があって、小説を読む眼も異な」るのだから、仕方がないと考える。
だから、「自ら充足感をおぼえるような小説」を書いてゆくことを思う。
また、吉村さんは作品を絶対的なものとも考えていなかったふうでもある。
「読む人もいるだろうが、大半は読んでくれない。それが作品のもつ宿命」と本書の中にもある。
そんな作家の生きてきた道を「漂流」とはいわないはずだ。
それが、このタイトルに感じたそぐわなさだ。
(2021/08/05 投稿)

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08/04/2021 シンプルな情熱(アニー・エルノー):書評「映画化されてまた読まれている仏文学」

今日は
最近映画が封切られて
話題になっている
アニー・エルノーさんの『シンプルな情熱』を
紹介します。
赤裸々な自身の性愛体験とありますが
ちっともヘンな小説ではありません。
渡辺淳一的世界ではなく
吉行淳之介的世界かな。
つまり、モロに描かれていなくて
読者の想像に喚起させる
そんな作品といっていいのではないでしょうか。
じゃあ、読もう。

フランスの女性作家による、自身の性愛体験を綴ったこの作品がフランスで発表されたのが1992年。ベストセラーとなったこともあったのだろう、日本での翻訳が出版されたのは1993年と実に対応が早いのは、日本でも読まれるだろうという予感があったのだろう。
当時、この本のことは全然知らなかったが、今年(2021年)映画が公開されるということで映画宣伝で、本書のことを知った。
この人の作品を熱く支持するという林真理子さんが、この作品を評して「恋する情熱とは神様から与えられたギフトと思います。本作はある日突然そんな「ギフト」が与えられた女性の物語」と書いています。
性愛体験を綴ったと評判の作品ですが、そういう場面はほとんどありません。
40代後半の女性が、およそ一年間にわたって自宅で10歳余りも年下の男性と逢引を重ね、彼が妻のいる自分の国に帰国後も恋求めてやまない、そんな姿を描いた物語が、実はこの作家の実体験であることに、まず驚かされます。
しかも、この作品が単なる実録告白ものとちがって、格調の高い表現で描かれていて、日本でいうところに純文学的な匂いが強い点も、読者の心理に響いたともいえます。
この作品の最後は、こんな言葉で締めくくられます。
「今の私には、贅沢とはまた、ひとりの男、またはひとりの女への激しい恋(パッション)を生きることができる、ということでもあるように思える。」
おそらく、この本が多くの読者を得たのは、そういう作者の姿勢に対する賞賛だったのだろう。
(2021/08/04 投稿)

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08/03/2021 お楽しみはこれからだ PART5(和田 誠):書評「名画座にいるように」

先日の土曜日の映画の話は
「ニュー・シネマ・パラダイス」で
その中で、
和田誠さんの『お楽しみはこれからだ PART5』に
載っていた名セリフのことも
書きました。
今日は
その『お楽しみはこれからだ PART5』の本の
紹介です。
表紙は
ロバート・アルトマン監督の「ザ・プレイヤー」。
残念ながら
私は観ていません。
その中の名セリフ。
「私は映画館に行かないわ」
「どうして?」
「人生は短いから」
この逆もいえるかも。
人生短いから、映画館に足を運ぶって。
じゃあ、読もう。

2019年に亡くなったイラストレーター和田誠さんの代表作のひとつ、映画の名セリフ(だけでなく、和田さんの心に残ったセリフもたくさん)と和田さんの得意分野である似顔絵イラストで綴った映画エッセイ『お楽しみはこれからだ』のPART5。
1995年5月の刊行である。
和田さんが映画雑誌「キネマ旬報」に連載を始めたのが1973年。最初の単行本が出たのが1975年で、それから20年。
雑誌の連載は途中何度か休載期間もあるので、これだけかかったともいえるし、これだけの長期間よくぞ連載をしてくれたともいえる。
なんといっても、何度読み返しても、いつの時代に読んでも、けっして古びていない。
というか、そもそも連載時から結構古い映画を紹介している。
このPART5であれば、1947年の「幽霊と未亡人」とか1950年の「イヴの総て」とか1951年の「恋愛準決勝戦」といったように。
つまり、和田さんのこのシリーズは連載時からまるで名画座のようだったのだ。
一冊の本になるには120本の映画が収録されていることになる。
今回は特に訃報がらみの記述が多かったと、和田さんも「あとがき」に書いていて、そのことは「仕方がないことだが、やはり寂しい。」と心のうちを吐露している。
そんな和田さんも、もういない。
本が残ってそれはうれしいし、ありがたいが、やはり寂しい。
(2021/08/03 投稿)

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08/02/2021 菜園アドバーザーのAさん、ありがとうございました - わたしの菜園日記(7月31日)

それでも、
次の土曜日は立秋ですから、暦のうえでは秋近しです。
近くの田んぼの稲に
よく見ると花が咲いています。

稲の花は秋の季語ですが、
「歳時記」に「炎暑の日の午前中咲くことが多い」とあります。
東の空の明るく稲の花 大西 朋

シェア畑といって
アグリメディアという民間の会社が運営している
レンタル菜園です。
この施設の特徴は
鍬とかの農具がそろっていること、
季節ごとに苗や種の提供があること、
水まわりやトイレといったインフラが整備されていること、
そして、何より
菜園アドバイザーと呼ばれるスタッフがいて
講習会で教えてくれたり、栽培の助言をしてくれたりします。
なので、
野菜づくりが初めての人でも安心してできるようになっています。

私もその時から始めました。
7月31日の土曜日、
開園当時からずっと指導をしていただいた
アドバイザーのAさんが定年を迎えました。
Aさんはそれこそ
畝づくりの最初から教えてもらいました。
わき芽の見分け方、溝施肥などの施肥の仕方、
自宅からイチゴの苗を持ってこられて
その成長の過程を教えてくれたり。
きっとAさんのアドバイスがなかったら
ここまで菜園ライフを続けられなかったかもしれません。

シニア向けのお茶会なども始められたAさん。
最後のこの日は
会社の仲間だけでなく
私のような菜園利用者もたくさん集まって
その最後を拍手で見送りました。
_convert_20210801080717.jpg)
菜園アドバイザーのAさん、
お疲れ様でした。
そして、ありがとうございました。

今年もミニトマトが豊作です。
この日採れた山盛りのミニトマトです。

ありがとう、野菜たち。
ありがとう、Aさん。

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