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プレゼント 書評こぼれ話

  ひところ
  日曜早朝のNHKEテレの「NHK俳句」を
  欠かさず見ていた時期がありました。
  その頃から
  岸本葉子さんは司会をされていて
  やはり心得があるので
  まとをえた進行に感心していました。
  その岸本葉子さんが
  初めての句集を出版されて
  それが今日紹介する
  『句集 つちふる』です。
  この「つちふる」のこと、
  書評ではあたかもよく知っていた季語のように書いていますが
  この句集を読んでから
  『歳時記』で調べました。
  黄砂といえば
  砂塵がまったりちょっと嫌なイメージですが
  「つちふる」とすれば
  きれいな響きになります。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  好きな句がすぐさま一山                   

 エッセイストの岸本葉子さんの初めての句集。
 とはいえ、俳句好きの読者であれば、岸本さんが毎週日曜の朝放送されているNHKEテレの「NHK俳句」の司会を2015年からされていることをご存じだろうし、その関係で俳句についてのエッセイや俳人の皆さんとの共著で初心者向けの俳句入門の本も数多く出版されている。
 「あとがき」によれば、2008年に句会に参加することから句作を始めたという。
 この句集にはそれから2020年までに句会等で詠んだ数多くの作品から349句が収められているという。

 肩書だけが人間のすべてではないが、岸本さんはいまや「エッセイスト」だけでなく「俳人」という肩書をつけてもいいのではないだろうか。
 この句集のどれひとつとっても、アマチュアというよりりっぱな詠み人、俳人だ。
 これだけの句があるから、好き嫌いはあるだろう。
 私ならこの句を採る(つまりは、「いいなぁ」と言いたくなる)という句の一山ぐらいすぐにできそうだ。
 例えば、この句。「缶コーヒーごとりと落つる余寒かな」。
 「缶コーヒー」という現代の飲み物に「ごとり」というややおおげさな擬音を使うことで「余寒」という季語をさらに生かした句など、好きだな、「いいなぁ」。
 こんなふうに自分の好きな句を見つければいい。

 ちなみに句集のタイトルになっている「つちふる」は、大陸から飛んでくる黄砂をいう春の季語。
 岸本さんは「つちふるや汀の線のかく歪つ」と詠んでいる。
  
(2021/09/30 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日先日亡くなった
  芥川賞作家の高橋三千綱さんの受賞作
  『九月の空』を紹介しました。
  これからもその作品が読まれ続けるといいのですが。
  今日紹介する
  庄野潤三さんも芥川賞作家の一人です。
  『プールサイド小景』で第32回芥川賞を受賞しています。
  庄野潤三さんはその後も
  多くの作品を書かれ、
  亡くなったのは2009年ですが
  今でも多くのファンがいます。
  今日紹介する『夕べの雲』は
  読売文学賞を受賞した
  庄野潤三さんの代表作のひとつです。
  これからも
  読んでいきたい作家のひとりです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  時代を超えて読み継がれる名作                   

 庄野潤三さんの代表作ともいえるこの長編小説は、昭和39年9月から昭和40年1月まで日本経済新聞夕刊に連載された新聞小説です。
 この時期といえば、その年の10月に東京オリンピックが開催されて、日本中がその熱気に沸騰していました。
 しかし、庄野さんのこの小説にはそんな時代の熱気はありません。
 山の上の家に暮らす父と母、娘と二人の兄弟の姿を淡々と描いた家庭小説で、あの時代にこの静謐な作品を書け、それが多くの読者に支持されたのですから(この作品は翌年に読売文学賞を受賞)、庄野さんの文学に対する姿勢の強さを感じます。
 それゆえに、発表から50年以上経っても、新しい読者を生む名作になりえています。

 もちろん、昭和39年にこの作品を読んだ人々と令和の時代にこの作品に接する人とは、同じ温度というわけにはいきません。
 今読むと、へえ、これが昭和という時代だと感じるところもたくさんあります。(何しろ家の中にムカデが大量に発生することなど今はちょっと信じられません)
 しかし、この作品には時代を超えて重要なことがらがたくさんあります。
 なんといっても、家庭の姿です、
 こんな家庭のありようなど今はなくなっているかもしれませんが、それでもどこかでこういう親子、こういう兄弟、こういう隣近所、のありようを願っているところがあります。

 おそらくこの作品はこれからも時代時代に合った読み方をされていくのだと思います。
 そして、そのたびに新しいものを読者に与える作品にちがいありません。
  
(2021/09/29 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  それは小さな死亡記事でした。

    作家の高橋三千綱さん死去 「九月の空」で芥川賞受賞

  あの精悍だった芥川賞作家の高橋三千綱さんが
  8月17日に73歳で亡くなったという記事でした。
  高橋三千綱さんが
  『九月の空』で芥川賞を受賞したのは
  1978年。
  高橋三千綱さんが30歳の時です。
  私もまだ20代の前半で、
  青春小説が芥川賞を受賞したことが
  少し驚きでもありました。
  今日は追悼の意味も込めて
  受賞作の『九月の空』を紹介します。
  私自身何十年ぶりかで読み返したことになりますが
  この若々しさに引き込まれてました。

  高橋三千綱さんの
  ご冥福をお祈りします

  

sai.wingpen  追悼・高橋三千綱さん - この作品の良さに気づく年齢になりました                   

 第79回芥川賞受賞作。(1978年)
 高橋三千綱さんがこの作品で芥川賞を受賞した時、私はまだ大学生でした。
 15歳の剣道部員の高校生を主人公にして、彼の心情や彼の先輩や同級生との関係、彼にほのかな想いを寄せる女子の存在といった、まるで受験雑誌に掲載されているような青春小説が芥川賞を受賞することもあるのだなと思ったことを、ぼんやりと覚えています。
 当時の選考委員は、井上靖、遠藤周作、大江健三郎、安岡章太郎、吉行淳之介など錚々たる作家たちが名を連ね、さらにはこの回より開高健、丸谷才一まで加わって総勢10名の強力な布陣になっていました。
 辛口で知れ渡ることになる開高健の選評にはこの作品は触れられず、丸谷才一は「格別の感想が浮かばなかった」と冷たい。
 その一方で、遠藤周作は「読後、あと味のいい小説」とし、井上靖も「汚れのないのびのびとした筆」と評価している。
 印象に残ったのは、中村光夫の選評でした。
 「題名通り、初秋の空のように爽やかな小説です。思春期を扱って厭味でなく、いわゆる青春小説が文学になり得た稀な例でしょう。」

 受賞から40年以上経って、あらためて読み返すと、中村光夫の評価がよくわかります。
 もしかしたら、受賞当時私はまだ青春の爽やかさそのものに顔をそむけたくなるくらい、あまりにも若かったのかもしれません。
 ようやくこの作品の良さに気づく年齢になったのでしょう。
  
(2021/09/28 投稿)

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 秋分の日を過ぎて
 これから冬至に向けて徐々に夜の時間が
 長くなってきます。
 これからがまさに秋本番。
 「爽やか」というのは
 この季節の清々しさをいう秋の季語にもなっています。

   爽やかや流るるものを水といふ        村松 ひろし

 コロナ禍が収まって
 早く爽やかな秋を満喫したいものです。

 畑では秋冬野菜の植え付けは
 終わりました。
 10月に入れば
 イチゴソラマメといった冬越し野菜の植え付けが
 始まります。
 こちらは
 青首ダイコン

  20210925_105923_convert_20210925130622.jpg

 ひと穴に4粒ほどの種を蒔いたので
 だいぶ混みあってきました。
 このあと、成長のいいものを1本だけ残して、
 あとは間引きしました。

 こちらはニンジンの横で育てている
 ミニダイコンで芯まで赤くなるモミジスティックという品種。

  20210925_102713_convert_20210925130556.jpg

 こんな小さな芽ですが
 軸はすでに赤くなっています。

 ダイコンそのものは冬の季語ですが
 「大根蒔く」は秋の季語になっています。

    大根蒔く短き影をそばに置き       加倉井 秋を

 こちらはハクサイ

  20210925_094121_convert_20210925130529.jpg

 このあたりまでは毎年順調に育っていきます。
 このあと
 虫との闘いになるのですから
 油断はできません。

 これは
 第一区画の二番めの畝に植え付けた
 キャベツ(右)、玉レタス(中央)、茎ブロッコリー(左)。

  20210925_111554_convert_20210925130646.jpg

 防虫ネット越しの写真は
 ネットをはずしての作業となれば
 虫の侵入があぶないからで
 今のところ
 虫被害はないようなので
 ネットをはずしませんでした。
 何しろアブラナ科の野菜って
 おいしいですから
 虫だって食べたくなるのでしょうね。

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  今日の絵本は
  先週に続いて
  谷川俊太郎さん文の
  『オサム』です。
  絵は動物絵本の人気作家あべ弘士さん。
  書評にも書きましたが
  絵本の表紙だけ見ると
  オサムというのはゴリラの名前のようですが
  そうではありません。
  あべ弘士さんは
  谷川俊太郎さんの詩を読んで
  ゴリラのことが頭に浮かんだそうです。
  さすがに
  動物園で働いていた人は動物たちのことを
  よく見ていますね。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  絵は言葉から生まれる翼                   

 この絵本のおしまいに、谷川俊太郎さんの「ぼくのゆめ」という詩が載っています。
 大きくなったら何になりたいと大人の人が訊けば、「いいひとになりたい」と答えるという、そんなはじまりの詩です。
 なかほどに「えらくならなくていい/かねもちにならなくていい/いいひとになるのが ぼくのゆめ」という一節が出てきます。
 そうなんだ、この絵本の「オサム」はゴリラの名前ではないんだ。
 きっと谷川さんは「いいひと」の代名詞として「オサム」を使ったのだ。
 そんなことを思いました。

 出版社さんからの案内に谷川さんが「いいひと」を「コトバに書くのはむずかしいので絵で描いてほしい」と話されていたとあります。
 絵を描いたあべ弘士さんにとっての「いいひと」は、ゴリラだったのです。
 なので、谷川さんの「オサム」という詩に、どんな絵を描いてもいいのです。
 まずは、真っ白な画用紙をさしあげましょう。
 クレヨンでも色鉛筆でも構いません。
 谷川さんの「オサム」に絵を描いてみましょう。
 それがきっと読者の考える「いいひと」なんだと思います。
 それは、もしかしたら学校のともだちかもしれないし、おとうさんやおかあさんかもしれない。

 詩は自由だし、絵は言葉から生まれる翼です。
 そんなことを考えた、絵本です。
  
(2021/09/26 投稿)

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 「定年後は本当に本が読めるのか!?」という特集だった
 「本の雑誌」10月号を読んでいて
 中に「老後に読みたい本」という読書アンケートがありました。
 10人ほどの読者が薦める本が載っているのですが、
 元中学教諭の63歳の男性からの記事を面白く読みました。
 薦めていたのは
 マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』ですが
 そのきっかけが1本の映画だというのです。
 映画のタイトルは「イコライザー」とその続編の「イコライザー2」。
 亡くなった奥さんが読んでいた本を読む元CIAのエージェントの話。
 面白そう。
 さっそくアマゾンプライムで2本続けて観ました。
 そこで、今日は「イコライザー」の話です。

 「イコライザー」は2014年秋に公開されたアメリカ映画です。

  

 主人公のマッコールを演じているのは
 「トレーニングデイ」(2002年)でアカデミー賞主演男優賞を受賞した
 デンゼル・ワシントン
 マッコールは元海兵隊員で凄腕のCIAのエージェントだったが
 妻の死をきっかけに現から姿を消す。
 世間では彼は事件に巻き込まれて死んだことになっている。
 身分も過去も隠して
 ホームセンターで働く彼の唯一の楽しみが
 妻が生前読んでいた本を
 順番に自分も読んでいくというもの。
 妻は100冊の本を読む計画の97冊めで亡くなった。
 そんな彼が今読んでいるのが
 ヘミングウェイの『老人と海』。
 そんな彼に「もう魚は釣れたの?」と声をかけた娼婦に
 同じ孤独の匂いを感じるマッコール。
 その彼女が組織からひどい乱暴を受けたことをきっかけにして
 マッコールの裏の顔が姿を見せる。
 何しろ公開時の宣伝文句が
 「19秒で世の悪を完全抹消する」だから
 彼の強いこと強いこと。
 アクション映画としてもよく出来ています。
 事件が解決して
 最後に彼が読んでいるのが
 『見えない人間』。
 これはラルフ・エルソンの長編小説で
 アメリカでは有名な作品だそうです。

 マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』が出てくるのは
 2018年に公開された「イコライザー2」。

  

 ここでもデンゼル・ワシントンはかっこいいのですが
 1作めと比べると
 敵が弱いのが難点。
 やはりこの手の映画は
 敵が巨大で強いほど
 主人公のカッコよさが際立ちます。
 でも、2作ともスカッとする
 面白い映画でした。

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  今日は
  和田誠さんが少年時代のことを語った
  『ISSUE 和田誠のたね』という本を
  紹介します。
  この本の巻末に
  谷川俊太郎さんのエッセイが載っていて
  その書き出しはこうです。

   和田誠は生まれた時から終始一貫和田誠以外の何者でもなかった。

  さすがに長い間いろんな場面で
  仕事をしてきた谷川俊太郎さんだけあって
  うまいことをいうものです。
  この本を開くと
  和田誠さんの幼児の頃のお絵描きなどがあったりして
  まさに生まれた時から
  和田誠だったことが実感できます。
  いいな、この本。

  じゃあ、読もう。 

  

sai.wingpen  「たね」が芽を出すのに必要なもの                   

 和田誠さんの代表作のひとつ『お楽しみはこれからだ』は、映画の名セリフをまとめたイラスト付きエッセイだが、それに倣って和田さん自身の名セリフを書いておきたい。
 「ぼくは小さい時から絵を見ること、描くことは好きだった」
 この本はそんな和田さんが生前自身の少年時代から大学に入るまでの、まさにまだ「たね」の時代を川口恵子さんという編集者に語ったインタビューをメインにして出来上がっている。

 川口さんにインタビューの提案をしたのは、和田さん自身だったという。
 それに応えるように、ここにまとめられたインタビューは「できるだけ和田さんの口調をそのまま残し、そのお人柄や雰囲気が伝わるように」できている。
 そして、なんといっても図版の多さがうれしい。
 「たね」も「たね」、和田さんが三歳か四歳の時に描いたという「動物の絵」に始まり、絵本のように綴られた作品数点が続く。
 絵本のように綴じてくれたのは、母親だそうだ。
 母親だけでなく、兄や父との関係もインタビューの中で語られている。
 そして、映画の話。何しろあれだけ映画が好きだった和田さんのことだから、小さい頃から友人とともに映画館に出入りしている。

 そして、和田さんのイラストの「たね」となった小学4年の時の担任柳内先生との出会いから始まる中学高校の時の懐かしい話。
 有名な先生の似顔絵でできた「時間割表」もちゃんと図版で収められている。

 この本を読んでいると「たね」が芽を出すには、家族や友人、あるいは先生といった周りの人たちがあってのことだということがよくわかる。
  
(2021/09/24 投稿)

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 「本の雑誌」という雑誌が「本の雑誌社」から出ています。
 ややこしいな。
 「本の雑誌」というくらいですから
 書評を中心に本と活字にまつわる様々な話題を扱った月刊誌です。
 創刊されたのが1976年で
 今年創刊45年を迎えました。
 そもそもが
 椎名誠さん沢野ひとしさん目黒考二さん木村晋介さんによって設立されたことなど
 本好きの人にとって
 常識でもあり伝説でもあるくらい
 とっても有名な雑誌なのです。

 そんなに有名な「本の雑誌」を今回初めて
 恥ずかしながら、購入しました。
 「本の雑誌」10月号(750円+税)、
 「サンマ高飛び号」(?)となっています。

  

 何故、今さら、恥ずかしげもなく「本の雑誌」を買ったのか。
 その答えは、この号の特集にあります。
 「定年後は本当に本が読めるか!?
 まずは、そのリード文から。

   本好きなら誰もが夢見る定年後の晴読曇読雨読パラダイス。
   さあ、朝から晩まで読みまくるぞ!のはずが、
   どうも思ったほど読めないらしい。
   それは本当か。
   オレが定年後に読もうと積んでいる本の山は
   いったいどうなってしまうのか!?


 ね、定年後を過ごしている皆さん、
 これから定年を迎える皆さん、
 とっても気になりますよね。
 編集者や書店員の皆さんの定年後の読書事情や
 永江朗さんの「老後読書と電子書籍」、
 「私の老後読書アイテム」(老眼鏡などやはり衰える眼のケアですね)、
 伝説の書店員田口久美子さんの持っている本の処分の方法や
 「老後に読みたい本」という読書アンケートまで
 ずらりと並んでいます。

 特集を読んだ感想を書けば、
 時間がある定年後だからといって
 読書数が増えるということはないようです。
 今まで読めなかった長編小説を読もうという人もいますが
 それも実際はうまくいかない。
 私の実体験で書くと、
 定年後になったら読み返したいと思って取って置いた本はあります。
 「年度毎のベスト・エッセイ集」とか文庫になっている「天声人語」シリーズ、
 司馬遼太郎さんの「街道をゆく」とか
 夏目漱石だって岩波文庫で揃えたし。
 ところが、哀しいかな
 昔の本って活字がメチャ小さいんですよね。
 なので、最近出版される「新装版」は活字が大きくなっています。
 つまり、持っていても読むのがつらい。

 まあ、そうはいっても
 本が手放せないことは変わりません。
 「本の雑誌」を開けば、読みたい本が出るわ出るわ。
 いやあ、定年後も忙しいことで。

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  現在放映中の
  NHKの朝ドラ「おかえりモネ」は
  東日本大震災で大きな被害が出た気仙沼出身の
  主人公百音が天気予報士として成長する姿を描いていますが
  百音は震災の時その場にいなかったという負い目を
  ずっとひきずっています。
  彼女の同級生や妹たち、あるいは両親たちとの会話の中で
  それをどう乗り越えていくかという
  大きなテーマを描いている作品にもなっています。
  今日紹介する
  第165回芥川賞候補作にもなった
  くどうれいんさんの
  『氷柱の声』もまたそのことを考える
  同じようなテーマといえます。
  私はこの作品は受賞作より好きかな。
  ちなみに、
  「氷柱」はつららと読みます。
  もうひとつ、ちなみに
  朝ドラ「おかえりモネ」は
  10月29日までですよ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  この小説の素直さが好きだ                   

 第165回芥川賞候補作。
 惜しくも受賞には至らなかったが、東日本大震災を扱ったテーマに真摯に向き合っている印象を受けた。
 今回の受賞作、石沢麻依さんの『貝に続く場所にて』も東日本大震災のあとを生きる若い世代を描いていたが、2011年の震災から10年を経て、若い人たちがあの日とその後を描こうとする姿勢に拍手を送りたい。

 作者のくどうれいんさんは、1994年生まれの岩手県盛岡出身の歌人。この小説の主人公である伊智花と同じようにあの震災の時は高校生だったろうか。
 俳句や短歌の時は工藤玲音、長い文章の時はひらがな表記の著者名にしているという、そんな彼女のこれは初小説になる。
 震災当時高校生だった彼女のその後を点景のようにして描いていく作品で、彼女が出会う人たちもまた震災の傷をひっぱっている。
 伊智花は震災体験者といっても、内陸であったおかげで大きな被害を被ったわけではない。しかし、その一方で彼女はそのことに後ろめたさのようなものも感じている。
 「何かを失った人間にしか、当事者しか起きたことを語る資格はない、と思うきもち。(中略)綺麗事を言うなと叫ぶ行為そのものが、またひとつの綺麗事になってしまう途方のなさ。」
 あれだけの大きな犠牲者が出た災害だけに、そのことを表現することの難しさやもどかしさを実に正直に描いた作品といえる。

 東日本大震災をめぐる作品群は、発生から10年を経て、前に向かって歩き出したのだろう。
  
(2021/09/22 投稿)

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  昨日は敬老の日でしたが
  アガサ・クリスティーの愛すべきミス・マープル
  セント・メアリ・ミード村に住む
  心優しい独身の老婦人だが
  おいくつになるのだろう。
  編み物が趣味の彼女だが、
  年を重ねることで目が悪くなったり
  持病のリュウマチに悩まされたりすることになります。
  ただ彼女の場合の元気の素は
  犯罪を解くことというのも
  面白いものです。
  今日は
  そのミス・マープルものから
  『動く指』を紹介します。
  いつもの
  霜月蒼さんの『アガサ・クリスティー完全攻略』の評価は
  ★★★★の、
  結構高評価作品です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  ミス・マープルはいつ出てくるの?                   

 アガサ・クリスティーが1942年に発表した「ミス・マープル」ものの長編小説。
 原題が「The Moving Finger」なので、日本語タイトルもそのままなのだが、その意味はあまりよくわからなかった。
 誹謗中傷する手紙が町中の人たちの元に送られてくることが事件の中核になっていて、その手紙の封筒に印字されたタイプライターを打った人間こそ犯人、という意味のタイプを打つ指のことを指しているともいえる。

 この作品は「ミス・マープル」ものの一篇だが、愛すべき老婦人マープルの登場シーンは少ない。
 読んでいる途中で、あれ? マープル出てこないけど、と心配になったりする。
 何しろ読んだ文庫本でいえば、390ページほどの作品でミス・マープルが登場するのがなんと280ページを過ぎたあたり。
 しかも、事件を解決するのは確かに彼女だが、すごい活躍があるわけでもない。
 だから、物足りなさを感じる読者も多いかもしれないが、ミステリーとしては面白いのではないだろうか。

 中傷の手紙が届いたと思われる夫人がショックのあまり自殺したが、ここまでであればそんなひどい手紙を送った犯人捜しで終わるのであるが、そのあとに夫人の家のお手伝いの女性が殺される。
 彼女には殺される理由があったのか。
 小さな町のいわくありげな登場人物たち。そして、今回も男と女の愛情物語が幾重にも絡まっている。
 そうなると、やなり謎を解くのは「人間のやらかすさまざまな不正や悪について、じつによく知っている」ミス・マープルになるのだろう。
  
(2021/09/21 投稿)

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 日本列島を真横に横断した
 台風14号が行き過ぎた昨日の日曜日(9月19日)、
 埼玉は秋晴れとなりました。
 せっかく咲き始めた金木犀
 台風の雨でだいぶ落ちてしまったのは残念ですが。

  20210915_152333_convert_20210919113059.jpg

    見えさうな金木犀の香なりけり      津川 絵理子

 秋の花が楽しめるのもこの時期ならでは。
 これは曼珠沙華

  20210917_103502_convert_20210919113124.jpg

 彼岸花のこと。
 彼岸の頃に毎年きちんと咲くのですから
 えらいものです。

    人の世を遠巻にして曼珠沙華      角川 源義

 そして、なんといってもコスモス

  20210919_104128_convert_20210919113341.jpg

    コスモスのまだ触れ合はぬ花の数      石田 勝彦

 畑の畝横で育てている青ジソ
 花が咲いて穂紫蘇になってきました。

  20210919_102711_convert_20210919113316.jpg

 第二区画で育てていた
 オクラナスももうおしまい。

  20210919_093700_convert_20210919113152.jpg

 写真のあと
 どちらも伐採しました。
 手前の防虫ネットをしている畝で育てているのは
 ハクサイ
 ハクサイは毎年害虫に悩まされるのですが
 ハクサイなどのアブラナ科の野菜の
 コンパニオンプランツとして有効なのが
 キク科の野菜と最近知って
 まわりにシュンギクの種を蒔きました。
 写真の黄色い丸で囲ったのが
 シュンギクです。

  20210919_100629_convert_20210919113248_LI.jpg

  ※コンパニオンプランツというのは
  育てたい野菜や花のそばに植えることでよい影響をもたらす植物のことです。

 どれだけ効果があるかわかりませんが
 こうして色々試してみるのが好きです。

 そういえば
 ニンジンの方もなんとか芽が出てきました。

  20210919_100251_convert_20210919113218.jpg

 このまま育ってくれると
 いいのですが。

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プレゼント 書評こぼれ話

  春のゴールデンウイークに対して
  秋の大型連休を
  シルバーウイークといいます。
  まさに今日の日曜日をはさんで
  明日の敬老の日、木曜の秋分の日と
  お休みが続く
  今がまさにシルバーウイークです。
  今日は
  谷川俊太郎さん文、
  はたこうしろうさん絵の
  『ぼくとがっこう』という絵本を紹介します。
  コロナ禍で
  10代の子どもたちにも感染が広がって
  学校も通学とオンライン授業が併用されているようです。
  子どもたちの学習機会を減らさないためですが
  学校とは学習だけでなく
  人とのまじわりも大切です。
  早く通常の学校生活に戻るといいですね。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  絵で読むもうひとつの物語                   

 あなたは学校が好きですか。
 もしかして、嫌いですか。
 こんな言い方もできます。学校が苦手ですか。
 この絵本の男の子(小学生です)も、「がっこうにいきたくないひもある」し、運動会の時などは「がっこうがたのしいひがある」と思います。
 「なかがいいともだち」もいるし、「きらいなともだち」もいます。
 けんかもしたり、なかよくなったり。
 そんなことを思えば、学校は好きか嫌いか、得意か苦手ではなく、まるでこれから出ていく社会という世界の縮図みたいなんだと思えてきます。

 詩人の谷川俊太郎さんの文に、絵本作家のはたこうしろうさんが絵を描いています。
 主人公の男の子がサメ好きの設定は(谷川さんの文には出てきません)、はたさんがこしらえたものでしょうか。
 いくつものページにサメが描かれています。
 「きらいなともだち」と仲良くなるのも、その子もサメが好きだとわかったから。
 文章にはないけれど、絵が多くのことを物語っています。
 だから、この絵本は谷川さんの文だけでなく、はたさんの絵も物語として読めます。

 おしまいは卒業の場面。
 学校から外に駆け出していく男の子の姿に、エールを送りたくなりました。
 がんばれ、おとな一歩手前の君!
  
(2021/09/19 投稿)

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 昨日
 元来渉さんの『踊る大ハリウッド』という本を
 紹介しました。
 この本の副題が
 「ケリー、アステアから考えるミュージカル映画の深化」で、
 ケリーというのはジーン・ケリー
 アステアというのはフレッド・アステアのこと。
 二人ともミュージカル映画の基礎を作った大スターです。
 元来渉さんの本では主にジーン・ケリーについて書かれています。
 そこで、
 今日はジーン・ケリーの代表作ともいえる
 「雨に唄えば」の話を。

 「雨に唄えば」(1952年)は
 ジーン・ケリーの最高作3作のひとつです。

 

 残る二つは「踊る大紐育」(1949年)「巴里のアメリカ人」(1951年)ですが、
 なんといっても「雨に唄えば」は
 ミュージカル映画だけでなくすべての映画ランキングでも上位にくる名作です。
 でも、公開時はそれほど評価されなかったようです。
 では、何故ここまで評判が高まったか。
 元来渉さんはこう見ています。
 「1958年の米国での再公開や60年代半ばからのカラーテレビの普及、
 74年のアンソロジー映画「ザッツ・エンタテインメント」の公開、そして80年代のビデオの普及」
 などで、現代の人にも広く観られるようになったからだとあります。
 実際今回私が観たのも
 アマゾンプライムでの視聴でした。

 このミュージカル映画は何度か観ています。
 なんといっても
 土砂降りの雨の中を主人公のジーン・ケリーが歌って踊る場面は
 印象に残ります。
 元来渉さんの本でもこのシーンを
 「単純であるがゆえにより深く、観客の胸に届けることができた」と
 評価しています。
 しかし、この映画が今でも多くのファンを得ているのは
 これが映画製作の裏側を描いた
 いわゆるバックステージ物ということも
 要素としては大きいように思います。
 映画が無声からトーキーへと変わる頃の可笑しさが
 とてもよく描かれています。
 無声映画では大スターだった女優の声がとんでもないことでまきあがる笑い、
 それを解決するために奮闘するジーン・ケリーたち。
 あの雨の名場面は
 解決策を見つけたジーン・ケリーの喜びがあふれています。

 ミュージカル映画には名作が数多くあります。
 でも、やっぱり「雨に唄えば」は一度は観ておきたい作品です。
 欲をいえば
 ジーン・ケリーフランク・シナトラと組んだ
 「踊る大紐育」は、もっとオススメです。

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プレゼント 書評こぼれ話

  ミュージカル映画は昔から嫌いではありませんでしたが、
  最近特に面白いと思うようになったのは
  NHKBSで放映された
  ジーン・ケリーの「踊る大紐育」を
  たまたま観たあとからでしょうか。
  そんな時に見つけたのが
  今日紹介する
  元来渉さんの
  『踊る大ハリウッド』。
  副題が「ケリー、アステアから考えるミュージカル映画の深化」。
  どんな内容か知らないまま
  読んだのですが
  これはミッケものの
  大ミュージカル映画論でした。
  本当なら映画の写真などがあってもいいのでしょうが
  なくても十分楽しめます。
  ミュージカル映画好きの人には
  欠かせない一冊です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  この本に脱帽しました                   

 本の巻末にはよく著者の略歴などが載っていることが多い。
 ほとんど知らない著者の場合、書いたのはどんな人か気になる時はよく見る。
 この本の著者元来渉(もとき わたる)さんの場合でいえば、「1953年 埼玉県生まれ/趣味でミュージカル映画のダンスについて研究」とあるばかり。
 趣味で、こんなにりっぱなミュージカル映画論あるいはミュージカル映画の名優であったジーン・ケリー小伝が書けるのだから、たまげてしまう。
 そういえば「あとがき」にも、「仕事も経歴もまったくミュージカルやダンスとは関係ない門外漢が書いたもの」とあるが、この一冊の出来栄えの見事さといったらなかなか比べるものはないほどだ。

 この本の構成を書き留めておくと、「ミュージカル映画の進歩にダンスの面から多大な貢献を成し遂げた二人のスター」ジーン・ケリーとフレッド・アステアが本書の対象だが、そのほとんどのページをジーン・ケリーの生涯の記述に割かれている。
 フレッド・アステアのファンにとっては少し残念だが、アステアのダンスの魅力の分析は少ないページながら読ませる点が多い。

 ミュージカル映画を語るにジーン・ケリーは外せない。
 だから、ジーン・ケリーを語りながら、実はミュージカル映画の魅力を著者は描きたかったにちがいない。
 特にジーン・ケリーの代表三作、「踊る大紐育」「巴里のアメリカ人」「雨に唄えば」はそれぞれ一章ずつ配分され、十分に堪能できるようになっている。

 「索引」も「参考文献」も「註」もジーン・ケリーとフレッド・アステアの「フィルモグラフィー」もしっかりまとまっていて、ここまできたら「趣味」どころではない。
  
(2021/09/17 投稿)

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  今日は
  向田邦子さんがテレビ向けに書いた
  一話完結のドラマの脚本を集めた
  『向田邦子シナリオ集』を
  紹介します。
  シナリオを読むというのは
  あまり多くはないと思いますし、
  シナリオ集が本になることも
  そんなに頻繁ではありません。
  その点、向田邦子さんの場合は
  シナリオもまた多く本となって
  出版されています。
  シナリオも読みなれないと
  なかなか読みにくいかもしれませんが
  ぜひこの機会に読んでみると
  面白いですよ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  向田邦子さんが視ていたもの                   

 向田邦子さんが亡くなって40年になります。
 それでも今でも人気が高く、向田さんの関連本が今でも本屋さんの店頭に並びます。
 この本も2021年7月に出たばかりの、ちくま文庫のオリジナルです。

 向田邦子さんにはいろいろな肩書がありますが、今の読者にとっては向田さんはどんなイメージで読まれているのでしょうか。
 やはりエッセイストとしての向田さんでしょうか。
 直木賞作家の小説家としては、少しばかり作品が少ないかもしれません。
 脚本家向田邦子さんはどうでしょう。
 向田さんの脚本の主戦場はテレビの世界で、映画ではありませんでした。
 なので、映画のように昔の映像が容易に観れるわけではありません。
 では、どうするか。
 「脚本は残しておかない。どんどん捨ててしまいます」と向田さんは生前語っていましたが、幸いにも向田さんというビッグネームになれば、脚本を読むことはできます。
 脚本を読むことで、向田さんが表現しようとした家族や男女の機微を今でも味わうことができるのです。

 このシナリオ集では一話完結ものである「隣りの女」「きんぎょの夢」「毛糸の指輪」「眠り人形」「七人の刑事 十七歳三か月」の五篇が収められています。
 中でも、1977年に放送された「眠り人形」は成人しそれぞれ家庭を持ちながら互いに秘密を抱えた長女と次女の駆け引きが巧に描かれた秀逸です。
 こういう作品を読むと、どんな人間関係であっても向田さんという才能なら見破ってしまいそうで、少し怖くなります。
  
(2021/09/16 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  本の雑誌編集部編の
  『10代のための読書地図』という本を
  紹介します。
  この本を読みながら
  自分の10代の頃にはどんな本を読んでいたか
  思い出していました。
  小学生の高学年から中学生にかけて
  もっぱら読んでいたのは
  旺文社文庫でした。
  なので、あのあたりの古典は読んでいたかな。
  高校生になると
  大江健三郎とか安部公房倉橋由美子あたりは
  読んでいたでしょうか。
  でも、この本のような「読書地図」があれば
  また読書傾向も違っていたでしょうね。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  こんな「読書地図」があればよかった                   

 「十年をひと昔というならば」は、壺井栄が昭和29年に発表した名作『二十四の瞳』の有名な書き出しですが、それに倣うならばもう「いつつ昔」となる自分の10代の時にどんな本を読んでいたのか、あまり思い出せない。
 『二十四の瞳』は昭和30年代や40年代の子どもにはよく読まれていたように思うが、現代のように児童文学やそれに続くヤングアダルト小説が広く流通していたわけではない。
 あるいは、自身がそのような作品に接しなかっただけだろうか。
 そういえば、小学生の高学年の頃には松本清張の社会派推理小説を読んでいる友達もいたから、それほど幼くもなかったかもしれない。

 この本は10代の子ども(だけでなく少年少女や青年も含まれる)向けに編まれたブックガイドで、読書が苦手な子どもであっても1冊くらいは読んでみたいと思える本が見つかるのではないだろうか。
 最初に新井久幸さん池澤春菜さん大森望さんによる「おすすめ100冊」を選ぶ鼎談が載っています。親切にも「小・中・高世代別」になっていて、子どもたちだけでなく、この世代のお子さんを持つ親世代にもきっと役立つ記事だ。
 何しろ「いつつ昔」に10代だった者にとっては、ほとんど知らない作家や作品だったので、ひたすら「はぁー」とか「へぇー」の連続だったが。

 その後は「ジャンル別おすすめ本」や「本の買い方・探し方」、あるいは「読書感想文の書き方」まで、本に関しての記事が満載されている。
 この本は本を見つけるだけでなく、もしかしたら本好きになるために欠かせない「読書地図」かもしれません。
  
(2021/09/15 投稿)

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 コロナ禍の中、
 何度も緊急事態宣言は発令されて
 飲食業をはじめてとして
 さまざまな業種に影響が出ています。
 それはイベントとか展覧会でもそうで
 開催期間のすべてで休館となってしまった展覧会もあったそうです。
 今年の4月24日から
 世田谷文学館で始まった
 「イラストレーター 安西水丸展」も
 緊急事態宣言での開催となってしまいました。
 残念だけど見逃してしまうかもと思っていましたが
 ワクチン接種もなんとか2回打つことができ、
 開催期間も当初の8月末から
 9月20日まで伸ばしてくれたので
 先週の金曜(9月10日)
 なんとか観に行くことができました。

  20210910_110132_convert_20210912134919.jpg

 久しぶりの東京行きの電車に乗って
 世田谷文学館のある芦花公園に向かいました。
 世田谷文学館のあるあたりは
 静謐な住宅街で
 都心の中にいるような感じがしません。

  20210910_110225_convert_20210912135006.jpg 
  20210910_114448_convert_20210912135355.jpg

 ここは何度来ても
 いいところです。

 さて、今回の「イラストレーター 安西水丸展」です。
 安西水丸さんが71歳でフイにいなくなったのは
 2014年3月のことです。
 あれからもうたくさんの時間が流れました。
 安西水丸さんの活躍の場は
 イラストにとどまらず
 村上春樹さんの著作の多くがそうであったような本の装丁や
 映画や旅のエッセイ、
 さらには小説や絵本の執筆と
 実に多岐にわたっています。
 それらを集めた大掛かりな展覧会は
 2016年からすでに各地で開催されていたのですが、
 東京では今回の世田谷文学館が初お目見えです。

 会場の入り口から
 安西水丸ワールド全開です。

  20210910_110249_convert_20210912135043.jpg

 今回の展覧会では写真撮影ができるのも
 うれしい点です。

  20210910_111253_convert_20210912135206.jpg

  20210910_111934_convert_20210912135255.jpg

 会場は
 「ぼくの仕事」「ぼくと3人の作家」「ぼくの来た道」「ぼくのイラストレーションン」という
 4つのエリアで区分されています。
 ちなみに「3人の作家」とは
 村上春樹さん、嵐山光三郎さん、和田誠さんのこと。
 この会場の中だけで
 どれくらいの数の作品や関連資料があったことか。
 もうずっとここにいたい!

 もちろん、そういうわけにもいかないので
 ショップで
 永久保存版の図録を購入。(税込み2750円)

  20210910_161826_convert_20210912135455.jpg

 「水丸さん初作品集!」と書かれているくらいですから
 大事にします。

 こんな素敵な展覧会も
 会期終了まであとわずか。
 入場料は900円ですが
 65歳を過ぎた私は600円になりました。
 しっかりマスクをして対策していれば
 まだ間に合います。
 大満足の一日でした。

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 いつもなら
 9月に入っても残暑が厳しいのですが
 今年は記録的な低温が続いています。
 それでもさすがに
 近くに田んぼで稲刈りが始まっていました。

  20210911_114342_convert_20210911174205.jpg

    世の中は稲刈る頃か草の庵      松尾 芭蕉

 人間より
 植物の方が季節に正直なのかもしれません。

 先週蒔いたダイコンの種も
 一週間でちゃんと芽を出しました。

 20210911_112359_convert_20210911174141.jpg

 ダイコンは発芽しやすい野菜です。
 その点、ニンジンは発芽が難しい。
 先々週に蒔いた種もまだこんな感じで
 芽が出たり出なかったり。

  20210911_110152_convert_20210911174052.jpg

 仕方ないので
 芽が出ていないところに追い蒔きをしました。

  20210911_110212_convert_20210911174118.jpg

 合わせて隣には
 ミニダイコン小カブの種を蒔きました。
 どちらの方が先に芽を出すかな。

 9月11日の土曜日は
 秋冬野菜の苗植えをしました。

  20210911_100013_convert_20210911173956.jpg

 第一区画の2番めの畝に植えたのは
 写真の右側からキャベツが2苗、
 その横に玉レタスを2苗、
 左側に茎ブロッコリーを1苗植えました。
 手前に見えている防虫ネットのところが1番めの畝で
 ダイコンを育てています。
 4番めの畝のショウガのあとに
 芽キャベツの苗を植えました。

  20210911_100729_convert_20210911174027.jpg

 芽キャベツを栽培するのは今回で2回め。
 前回はうまく育たなかったので
 今回は期待してるのですが
 果たしてどうでしょう。

 第2区画の方も
 秋冬野菜の準備。
 ニンジンを育てているのは
 こちらの区画です。
 そこの4つめの畝に
 ハクサイの苗を植えました。

  20210912_101655_convert_20210912130530.jpg

 ハクサイは虫被害が結構あるので
 これもどうなることやら。
 ここには4苗植えて
 その横にミズナコマツナの種を蒔きました。

 芽が出ること、
 枯れないこと、
 虫に食べられないこと、
 願いはたくさんあります。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  児童向けの伝記ものの紹介です。
  しかも、マンガ(コミック)。
  瑞樹奈穂さんが漫画を担当した
  『コミック版世界の伝記 グレース・ケリー』です。
  この本には二重で驚きました。
  まずは、マンガだということ。
  最近はさまざまなジャンルでマンガ表現が使われているので
  子どもたちはちっとも驚かないかもしれませんが。
  もう一つは、
  グレース・ケリー
  児童向けの伝記の一冊として
  取り上げられていることです。
  最近の伝記事情も様変わりしていることは
  うっすらと知っていましたが
  まさかグレース・ケリーまでとは
  思いませんでした。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  彼女はシンデレラだったのか                   

 グレース・ケリーを知っていますか。
 ハリウッドの映画女優で、その気品のある美しさで「クール・ビューティー」 (cool beauty) と称されることもありました。
 彼女が出演した代表作といえば、ヒッチコック監督の「ダイヤルMを廻せ!」や「裏窓」があります。
 1955年には映画「喝采」で第27回アカデミー賞主演女優賞を受賞しています。
 グレースが25歳の時でした。
 しかし、彼女の大きな転機は翌年26歳の時に起こります。
 それがモナコ国の君主レーニエ公とのご成婚です。
 彼女はモナコ公妃となったのです。
 まさに現代のシンデレラ物語です。

 幸せそのものに見えた彼女の人生ですが、実際には苦労が絶えなかったようです。
 そして、1982年9月彼女は交通事故で生涯を終えることになります。
 52歳という若さでした。

 この本はそんな彼女の生涯をコミックで描いたものです。
 「コミック版世界の伝記」シリーズの一冊として2014年に刊行されています。
 今の子どもにはグレース・ケリーという女性はなかなか馴染みがないように思いますが、この本で興味を持ったなら、2014年に作られたニコール・キッドマンがグレース・ケリーを演じた「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」という映画を観るといいでしょう。
 この映画にはモナコ公妃となったあとのグレースの苦悩が描かれています。
 そして、もちろんグレースが一番輝いていた頃の出演映画も観ると、一層この伝記が身近なものになるでしょう。
  
(2021/09/12 投稿)

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 フランスの名優ジャンポール・ベルモンドさんが
 9月6日亡くなりました。
 88歳でした。
 ベルモンドさんが活躍した60年代から70年代は
 フランス映画は日本でも大変な人気でした。
 中でも、
 二枚目アラン・ドロンは大人気で
 多くの女性ファンが彼の作品に足を運んだものです。
 その彼と人気を二分したのが
 ベルモンドさんでした。
 ただ私は彼の映画をほとんど観ていません。
 唯一印象に残っているのは
 手塚治虫さんの劇場用アニメ「千夜一夜物語」(1969年)で
 ベルモンドさんをイメージしたキャラクターが造形されたことです。
 それくらい
 ベルモンドさんの顔は従来のスター俳優とは
 違っていましたから。

 今回訃報を知って
 ベルモンドさんの代表作ともいえる
 ジャンリュック・ゴダール監督の
 「勝手にしやがれ」(1960年)を初めて観ました。
 初めて、というのも恥ずかしいくらい
 当時の代表作のひとつです。
 かなり昔の映画ですが
 TSUTAYA TVで観ることができます。

  

    大人社会の秩序や道徳に息苦しさを感じていた若者は、
    新しいヒーローの誕生に熱狂した。

 これは9月8日の朝日新聞に載った
 「評伝」の一節です。
 映画を観るとその感じがよくわかります。
 そして、
 ベルモンドさんの表情なりしぐさが
 当時の若者にすごく影響しただろうと思われます。
 それは
 例えばショーケン(萩原健一)松田優作といった
 日本の俳優たちの演技にも影響していたのではないでしょうか。
 つまり、
 ベルモンドさんはカッコよかったのです。

 ちなみにこの「勝手にしやがれ」は
 ヌーベルバーグの記念碑的作品で
 まさにここから映画はずっと自由に表現するように
 なっていきます。
 この作品でベルモンドさんの相手役を演じたのは
 ジーン・セバーグ
 ベルモンドさんとともにヌーベルバーグの寵児といわれています。
 その可憐なこと。
 これは必見です。

 ジャンポール・ベルモンドさん
 たくさんのいい映画、ありがとうございました。

 ご冥福をお祈りします。

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 昨日「かわうそ」など
 向田邦子さんの直木賞受賞作3篇を収めた
 『思い出トランプ』という短編集を紹介しましたが
 受賞に際して向田邦子さんはこんな言葉を残しています。

    五十を過ぎて、新しい分野のスタートラインに立てるとは、
    何と心弾むことでしょうか。

 まさかそれから1年余りで亡くなるなんて
 誰も、もちろん本人も思わなかったでしょう。

   向田邦子さん、1981年8月22日、
   台湾旅行中に航空機事故で死去。
   52歳でした。

 向田邦子さんが亡くなって、
 今年没後40年になります。
 今日紹介するKAWADEムック
 「文藝別冊 向田邦子<増補新版> 脚本家と作家の間で」は
 2013年6月に刊行されたものの増補新版で
 亡くなる1年前に当時連載中であった雑誌の編集者に宛てた
 パリからの手紙と原稿が
 紙上初公開として加えられています。

  

 その原稿を見ると
 向田邦子さんの字のあまりの汚さ(失礼ながら)に驚きはず。
 書きなぐったような字を見ると
 まるで生き急いでいたようにも感じます。

 新しい記事だけでなく
 目次を開くと
 わくわくするような人の名前が盛りだくさん。
 まずは「オマージュ」を捧げているのが
 角田光代さんに小池真理子さん。
 スペシャル対談として
 太田光さんと向田さんの妹である向田和子さん。
 エッセイの書き手は
 久世光彦さん、黒柳徹子さん、柴門ふみさん、
 水上勉さん、山口瞳さんなどなど。

 さらには向田邦子さんの
 単行本未収録エッセイや
 森繫久彌さんや山田太一さんといった方々との対談も
 収録されています。
 うれしいことに
 教科書に載った向田作品
 「字のない葉書」と「ごはん」が全文紹介されています。
 もちろん
 こういう一冊には欠かせない
 「向田邦子主要ブックレビュー」「向田邦子主要ドラマリスト
 それと「向田邦子年譜」と
 充実しています。

 なんともうれしい
 まるごと向田邦子の、一冊です。

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プレゼント 書評こぼれ話

  脚本家で直木賞作家でエッセイストでもあった
  向田邦子さんが亡くなって
  今年の夏(8月22日)で40年になりました。
  今でも
  エッセイ集やシナリオ集が出るほどの人気をもった
  向田邦子さん。
  今日は再読になりますが
  直木賞を受賞した作品を含む短編集
  『思い出トランプ』を紹介します。
  前に読んだのは
  2012年ですが、そのあと
  この短編集に収められている「かわうそ」という作品を
  書き写したこともあるので
  実際に読むのは
  もう何度かめになります。
  いつ読んでもおいしい短編集です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  上質なお肉をいただきましょう                   

 第83回直木賞受賞作(1980年)である「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を収録した短編集。
 向田邦子さんが台湾での取材中に不慮の飛行機事故で亡くなったのが1981年8月22日、51歳の時でした。
 あれから40年という歳月が流れましたが、向田さんの名前は色褪せることなく、昭和、平成、そして令和と続いています。

 亡くなる1年前の直木賞受賞時の選考委員の「選評」を読むと、決してずば抜けて評価が高かったわけではないようです。
 「向田さんを推す委員は三名で、(同時受賞の)志茂田景樹氏の「黄色い牙」推薦の四名と激突して、数の上で敗けた」のを、山口瞳、阿川弘之、水上勉の三名の委員が「二人授賞へもっていった」ことを、水上勉委員自身が「選評」に書いています。
 こういう熱狂的な委員がいなければ、向田さんの直木賞はなかったかもしれません。何故なら、小説家としての向田さんはほとんど新人に近く未知数だったからです。
 もちろん、それから40年以上経っても、その作品の評価が高いのですから、この時熱狂的に支持した委員の眼力は確かなのものだったと思います。

 そういえば、この短編集に収められた「三枚肉」という作品にこんな一節がありました。
 「なにもないおだやかな、黙々と草を食むような毎日の暮しが、振りかえれば、したたかな肉と脂の層になってゆく。」
 まさに向田さんのこの短編集自体にそんな印象があります。
 上質な和牛のすき焼きをめしあがれ、といいたい。
  
(2021/09/09 投稿)

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  今日は
  窪美澄さんの『朔が満ちる』という
  長編小説を紹介します。
  久しぶりに
  大感動、
  絶対オススメの一冊です。
  窪美澄さんの作品は
  ほとんど読んでいますから
  好きな現代作家の一人です。
  朝井まかてさんとか
  原田マハさんとか
  桜木紫乃さんとか
  私が気になる現代作家は
  ほとんど女性作家です。
  波長が合うのでしょうね、きっと。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  彼らを救うのは新しい愛                   

 読み終わって、本を閉じた後、思わず立ち上がって拍手したくなる。
 こういう読書体験を久しぶりに味わった気がする。
 2009年に『ミクマリ』でデビューして以来、多くの感動作を発表してきた窪美澄さんが、2019年から20年にかけて「週刊朝日」に連載した長編小説である。

 いきなり父親を殺す夢の場面から始まる。
 それは夢なのだが、主人公の史也は実際13歳の時に家庭内暴力がひどい父親に殺意を抱いたことがある。振り下ろした斧は父親を殺すまでには至らなかったが、大きな傷を負わせることになった。
 そのあと、史也は伯母に引き取られ、成人していく。
 28歳になった彼は建築写真家を目指す青年になった。
 家が破綻した青年に家の写真を撮らせるという設定の巧さ。だから、「家には秘密がこもる。その家族だけが抱えている秘密が。」のような文章が胸に突き刺さる。

 そんな史也が出会ったのが、新生児の時に母親に捨てられた梓という女性。
 梓は子どもの頃に養子に出され、今は医者の娘として恵まれているが、本当の母に会いたいとも思っている。
 家族に捨てられた女性と家族を殺そうとした男が互いの過去に向き合うために向かう故郷。
 やがて、二人の間には愛が芽生え、許しと再生の中で感動のラストにつながっていく。

 タイトルの「朔が満ちる」に付けられた英語タイトル「The Moon Waxes From New To Full」が、この物語をうまく言い表している。
 ちなみに各章には「三日月」や「上弦の月」等月の状態名がついていて、最後は「新月」すなわち「朔」で終わる。
  
(2021/09/08 投稿)

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  今日は二十四節気のひとつ、
  白露
  露が凝って白くなるという意味だが
  要は秋の深まりをいっている。

     姿見に一樹映りて白露かな      古賀 まり子

  先週、
  第165回芥川賞受賞作
  李琴峰さんの『彼岸花が咲く島』を紹介しましたが
  今日は
  同時受賞となった
  石沢麻依さんの『貝に続く場所にて』を
  紹介します。
  この作品を読んでいる頃、
  現在放送中のNHK朝ドラ「おかえりモネ」でも
  東日本大震災を経験した主人公たちが
  震災についての思いを語っている場面がありました。
  この作品でも
  そういう思いが語られています。
  震災から10年経って、
  小説やドラマできちんと語られるようになったのだと
  感じました。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  小説でしか出来ないやり方とは                   

 第165回芥川賞受賞作。(2021年)
 この作品で第64回群像新人文学賞を受賞し、デビューしたというから、まさにまっさらな新人作家の誕生といえる。
 しかも、選考委員の「選評」を読むと評価が高いのがわかる。
 「完成度の高い作品」(吉田修一委員)、「小説にしかできないやり方で、東日本大震災の体験を刻み付けようとする本作の試みを高く評価したい」(小川洋子委員)、同じように山田詠美委員も「小説でしか出来ないやり方」という表現を使って評価している。

 この作品における「小説にしかできないやり方」とは何だろう。
 主人公はドイツで暮らす美術史研究者の女性。(作者の石沢麻依さん自身大学院で西洋美術史を専攻し、ドイツに留学し、現在もドイツで暮らしている)彼女はあの東日本大震災を仙台で経験している。そこにやってくる大学の同級生野宮。しかし、彼はあの時の津波で行方不明になったままで、「幽霊」という設定になっている。
 そこにかつてそのドイツの街に住んでいたという「寺田寅彦」も現れることで、時空も彼岸も此岸も超えた空間が生まれることになる。
 そんな空間の中で、主人公は死と向き合うことになる。

 自身が仙台で経験した「喪失感」は、もっと大きな被害にあった人とは「喪失の深度」が違う、と感じる主人公だからこそ、「幽霊」の野宮と対話できるのかもしれない。
 決して読みやすい作品ではないが、コロナ禍のこの時代に(ドイツでのコロナ禍での生活も描かれている)読む意味は大きいように感じた。
  
(2021/09/07 投稿)

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 9月に入ったばかりというのに
 雨ばかり続いて
 気温も10月並みの日が続いています。
 畑に行くのも
 毎日の天気予報を見ながら
 しかも雨の降っていない合間をねらう
 そんな日が続いています。

 畑に行くと
 畝の脇に植えているニラ
 かわいい花を咲かせていました。

  20210905_091713_convert_20210905111816.jpg

 「歳時記」によれば
 「韮(ニラ)は晩夏のころ長い花茎を伸ばし、
 先端に散形花序の白い小花を多数開く」とあります。
 まさにそのまま。

     人去つて風残りけり韮の花      岸田 稚魚

 時期的にいえば
 今がダイコンの種まきの頃。
 今年は少し気温が下がっているので
 あまり蒔き時期を遅らせたくなくて
 昨日(9月5日)の雨の合間に作業をしてきました。
 菜園での基本パターンは畝の半分にダイコン
 残りは葉物野菜ですが
 今年もひと畝すべてダイコンにしました。

  20210905_093910_convert_20210905111847.jpg

 今回育てるダイコンの種類は2つ。
 写真の右側の6つで「総太り」という品種、
 左側6つで「宮重」というダイコンを育てます。 
 巻き終わった後は巻き終わった後は防虫ネットをかけます。

  20210905_100012_convert_20210905111912.jpg

 雨が続いていて
 夏野菜の成長もパタッととまりました。
 それでも元気なのがバジル

  20210905_100618_convert_20210905111935.jpg

 ナスが見えていますが
 少し硬くなってきて
 こちらはやはりそろそろおしまい。

 おしまいでいえば
 ショウガも元気がなくなってきました。
 雨ばかりなので
 土の中とはいえ腐ってしまう恐れもあって
 収穫しました。

  20210905_104503_convert_20210905112003.jpg

 やはり小さな出来でしたが
 齧ってみれば
 やはりショウガの辛さ。

    新生姜身の丈ほどの暮らしかな      七田谷 まりうす

 おもわず納得の一句でした。

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プレゼント 書評こぼれ話

  家庭菜園でニンジンを育てる時に
  よくいわれるのが
  発芽したらほとんどうまくいくが
  発芽までが難しいということ。
  昨年もニンジンの種を蒔いたが
  うまく発芽しませんでした。
  今年も先々週種を蒔きましたが
  ここにきて長雨低温になっているから
  心配しています。
  せめて、収穫のイメージでもというわけでもないが
  今日は
  いわさゆうこさんの絵本「どーんとやさい」シリーズから
  『にににん にんじん』を
  紹介します。
  ちなみにニンジンは冬の季語になっています。
  夏の終わりに種を蒔いて
  収穫が冬の頃からでしょうね。

  じゃあ、読もう。 

  

sai.wingpen  にんじん、苦手ですか?                   

 「いっぽんでもにんじん」という有名な子どもの歌があります。
 作詞したのは前田利博さん(作曲は佐瀬寿一さん)、歌ったのはフォークシンガーのなぎらけんいちさんでした。
 1975年に出て大ヒットした「およげ!たいやきくん」のB面曲だったそうです。
 楽しい歌ですが、登場するにんじんを苦手とする子どもも多いようです。
 この絵本のおしまいに、作者のいわさゆうこさんが「にんじんのはなし」というミニ解説を書いていますが、その中でもにんじんのにおいを「主張の強いにおい」と表現しています。
 さらに「香りの強いセリ科のなかまですから、くせにある野菜」と説明しています。
 一方で、にんじんが栄養価の高い野菜ということも書いていますから、この絵本を読んでにんじん好きの子どもが増えるといいですね。

 絵本ではにんじんの成長が丁寧に描かれています。
 まずは、特徴的なほそい芽から。その次にぎざぎざの葉っぱも出てきます。
 にんじんは地中で大きくなりますから、その様子も描かれています。こういうあたり、絵本ならではの描き方といえます。
 そして、収穫。まっすぐに大きくなったにんじんだけでなく、二股三股に分かれたにんじんもあります。
 あるいはオレンジ色のものだけでなく、黄色いものやだいこんのように白いもの、あるいは紫のものといったカラーにんじんも、ちゃんと紹介されています。
 収穫せずに畑に残したにんじんは、春になると花を咲かせます。
 この絵本で、にんじんの一生がたどれるわけです。

 こんな素敵なにんじん、やっぱり苦手?
  
(2021/09/05 投稿)

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 昨日第165回芥川賞を受賞した
 李琴峰さんの『彼岸花が咲く島』を紹介したので
 今日の映画は
 花の名前つながりで
 1958年(昭和33年)公開の小津安二郎監督の
 『彼岸花』の話です。

  

 え、そんな単純なことでいいのと言わないで下さい。
 この映画の話には
 追悼の意味もあります。
 先日新聞で小さな訃報記事を見つけました。

   元松竹取締役で映画プロデューサーの山内静夫さんが8月15日、老衰で死去。

 96歳で亡くなったこのプロデューサーの名前は
 小津安二郎の映画ファンなら馴染みだと思います。
 多くの小津映画の制作にかかわってこられた方です。
 『彼岸花』という映画もそうです。
 山内静夫さんは作家里見弴の息子さんでもあって
 実はこの『彼岸花』という映画の原作は
 里見弴となっています。
 脚本は小津安二郎と盟友野田高梧
 山内静夫さんがいなければ
 小津安二郎の数々の名作はもしかしたら
 生まれていなかったかもしれません。

   山内静夫さんのご冥福をお祈りします。

 そんな映画である『彼岸花』ですが
 実はこの作品が小津安二郎監督の初のカラー映画でもあります。
 しかも、小津映画にはあまり馴染みがありませんが
 この当時大映のスターだった山本富士子さんが重要な役で出ています。
 その母親役では
 前回のNHK朝ドラ「おちょやん」のモデルになった
 浪花千栄子さんが面白い京都のお母ちゃんを演じています。

 ストーリーは
 婚期を迎えた娘の父親(佐分利信)が
 外向けには理解のある男性ながら
 いざ自分の娘(有馬稲子)に結婚したい男性が現れると
 猛烈に反対する姿を描いている。
 最後には理解を示すことになるが
 父親の寂しい姿が印象に残る佳作です。
 夫の無理解に反抗する母親を演じているのは田中絹代さん。
 小津安二郎監督の独特のローアングルのカメラワークが
 いい味を出しています。

 彼岸花というのは
 彼岸の頃に赤い花を咲かせます。
 曼殊沙華ともいいます。
 秋の季語でもあります。

    むらがりていよいよ寂しひがんばな       日野 草城

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は昨日につづいて
  李琴峰さんの作品の紹介です。
  今日が彼女の名前をいっきに広げた
  第165回芥川賞受賞作
  『彼岸花が咲く島』。
  私はどちらかいうと
  昨日紹介した『独り舞』の方が読みやすかったですが
  李琴峰さんは
  受賞作の方は「書きたいものを書いて力を出し切った」という
  手ごたえを持った作品だそうです。
  今後彼女がどのような作品で
  この日本やこの社会と対峙するのか
  興味があります。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  これはSF小説といってもいいかも                   

 第165回芥川賞受賞作。(2021年)
 作者の李琴峰(り ことみ)さんは台湾出身で、日本語を母語としない作家としては『時が滲む朝』で第139回芥川賞を受賞した楊逸(ヤン イー)さん以来2人めの受賞だそうだ。
 もちろんだからといって、特別な目で見られることを作者は受け入れていない。受賞後のインタビューで、「台湾出身ですが、台湾で人気のタピオカミルクティーは好きじゃない」とユーモア含めて答えていたのが印象に残った。

 受賞作は<ニホン語>と<女語>が話される架空の島が舞台になっている。
 言語が重要な意味を持つという点では、やはり自身の母語と日本語が意識されたのだろうか。
 その島に流れ着いた若い女性が主人公。彼女は過去の記憶を失っていたが、島の娘や若者に助けられて島の生活になじんでいく。
 やがて、彼女は、ここが男に支配された場所から逃げ出した人々が作った国であり、これから先も男の支配を許さないための言語をもつ場所であるといった島の歴史を知ることになる。
 まるでSF小説を読んでいるような感覚になる作品だ。

 芥川賞の「選評」を読んでも、松浦寿輝委員は「言おうと思えばいくらでも不満を言える作品」といい、吉田修一委員は「少し未熟な作品」としながらも、この作品を推すにあたっては作者の未来に向いた視線の強さが決め手になったようだ。
 「選評」で印象に残ったのは、小川洋子のそれで「性の揺らぎの中で怯える若者たちの青春小説として読んだ」といい、「それで十分、賞に値すると思った」と潔かった。
  
(2021/09/03 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今回の第165回芥川賞
  2人の女性による2作品の受賞で話題になりました。
  それにしても
  最近の芥川賞は女性の活躍が目立ちます。
  今回の受賞者のうちの一人である
  李琴峰(り ことみ)さんの経歴を調べていると
  2017年に文芸誌「群像」で新人賞を受賞していることがわかって
  今回は芥川賞受賞作より前に
  デビュー作となったこの『独り舞』を読んでみました。
  このあとで
  受賞作の『彼岸花が咲く島』を読んだのですが
  私はこちらのデビュー作の方が
  読みやすかったです。
  明日は
  受賞作の方を紹介します。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  新芥川賞作家のこれがデビュー作                   

 『彼岸花が咲く島』で第165回芥川賞を受賞した李琴峰(り ことみ)さんのデビュー作である。
 この作品で第60回群像新人文学賞優秀作を受賞している。2017年のことだ。
 彼女は台湾の出身で日本語を母国としない作家が芥川賞を受賞したのは2人めということで話題にもなったが、日本語で初めて小説を書いた作品がこの作品ということになる。
 芥川賞を受賞後のインタビューで「日本語で書くことは大変だが、自分にとっては自然」と語っているが、2011年に日本の大学に留学以後、日本での生活も長くなっているから、傍目が心配するほど自身の中には違和感はないのだろう。

 違和感といえば、むしろこの作品の主テーマであるレズビアンへの視線かもしれない。
 この作品は台湾に生まれた一人の女性がレズビアンであるがゆえにレイプ事件に襲われ、愛する女性とも会いづらくなっていく姿を描いている。
 逃げるようにやってきた日本での生活も、かつての自分を知る人からの中傷を受け、居場所をなくしていく。
 そんな彼女が最後に選ぶのが、「書く」ということ。
 ただ、彼女はすでに「書くことで治療されることはない」ことを自覚している。
 「完治しそうになって初めて書けるようになるのだ。」と前を向くことになる。
 「書くことは、完治寸前にある深呼吸なのだ」、そう主人公に語らせた李琴峰さんは、この作品で前に向かえたのではないだろうか。
  
(2021/09/02 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  1923年(大正12年)の今日、
  9月1日、
  相模灘一帯を震源とする大地震が
  関東一円を襲いました。
  いわゆる関東大震災です。

    万巻の書のひそかなり震災忌      中村 草田男

  今日紹介する吉村昭さんには
  『関東大震災』という問題作もありますが、
  今日は短編集『帰艦セズ』の紹介です。
  吉村昭さんは
  若い時に結核になり生死の境を歩いたこともあって
  死をみつめる作品が多くあります。
  この短編集でも
  そんな視点で描かれています。

  じゃあ、読もう。

 

sai.wingpen  短編を書くことはまことに苦しい                   

 吉村昭さんが1988年に発表した、7つの短編を収めた短編集。
 昭和という時代が終わる寸前で、このあと間もなくして「自選作品集」が刊行されることになる、吉村さんの中期から後期が始まる頃の充実した時期の短編といえる。
 「あとがき」に「短編を書くことはまことに苦しいが、私の生きる意味はそこにこそある」と書いた吉村さんは、それがゆえに「絶えず神経を周囲に働かせて、格好な短編の素材はないか、探っている」と続けている。

 「鋏」は吉村さんがたびたび描いてきた篤志面接委員と元受刑者との心の綾を描いた作品。
 「鋏」というタイトルはこの元受刑者が包丁を使わず、いつもキッチン鋏を使っていたという、彼が犯した犯罪をほのかに浮かび上がらせておわるところが不気味である。
 「白足袋」は遺産をめぐる物語。
 「霰ふる」は能登半島の小さな村で起こった岩海苔採りの遭難死を取材した作品。
 「果物籠」は、戦時中に中学生を恐れさせた教練の教官との戦後になってからの邂逅を描いた作品。
 「銀杏のある寺」「飛行機雲」、そして表題作の「帰艦セズ」は、吉村さんが戦時中の事件を取材している中で生まれた短編で、特に「飛行機雲」は長編『大本営が震えた日』で描いた兵士の残された妻との交流を描いたもので、吉村さんが「私小説の部類に入る」と書いている。
 「帰艦セズ」も長編『逃亡』から派生した作品で、若い兵士が何故所属していた艦に戻らなかったか、その理由が一個の弁当箱の紛失だったという、あまりにも切ない戦争のひとつの悲劇を描いている。
  
(2021/09/01 投稿)

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