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 コロナ禍になって
 2年が過ぎようという大晦日

    大晦日定なき世の定かな       井原 西鶴

 無観客となった東京オリンピック、
 もう少し早くワクチン接種が始まっていたら
 もっと楽しめたのにと
 思うのも詮無いこと。
 驚くように感染者が激減したこの国ながら
 ここにきてまた新種のコロナウイルスの拡大が
 心配になってきて、
 きっと来年もまた
 コロナ禍の騒動は続くのでしょう。

 先日、
 2021年のベストセラーが発表になりました。
 それをみても、
 2021年がオリンピックの年だったとか
 コロナ禍2年めの年だとか
 あまり感じないのは残念です。
 1位になったのが『人は話し方が9割』、
 2位が『スマホ脳』、
 3位が芥川賞を受賞した『推し、燃ゆ』。
 もうベストセラーだけでは
 世相を表現できなくなっているように感じます。

 そんな私が今年のベスト1に選んだのが
 乗代雄介さんの『旅する練習』。

  

 朝日新聞の書評を担当している皆さんが
 今年のベスト3をそれぞれ発表していて
 この本をベスト1にあげた人がいました。
 それが書評家の大矢博子さん。
 同志を得たような喜びでした。

 今年読んだ本は222冊
 2019年に亡くなった和田誠さん関連で
 平野レミさんの『家族の味』とか
 『だいありぃ 和田誠の日記』なんかも
 印象に残った年でした。
 それになんといっても
 和田誠展で購入したりっぱな図録が
 宝物になった年でした。

  

 このブログを
 今年も一年間毎日読んでいただいて
 ありがとうございました。

 皆さん、よい新年をお迎えください。

 来年こそ
 コロナ禍が収まって(と、去年も書いたけど)
 楽しい日々がおくれますように。
 そして、
 やっぱり本のある豊かな生活でありますように。

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 一年間に出版される新刊は
 およそ7~8万冊といわれています。
 新しい本だけでそれだけあって
 消えていく本はあるといっても
 『源氏物語』のように
 ずっと読み継がれてきたような本もあります。
 本屋さんや図書館の書棚の前に立って
 しばし呆然としても仕方がありません。

 そんな数多い新刊の中から、
 やはりベストテンがあるだろうと
 この時期になれば
 恒例のように特集が組まれます。
 今日は
 「本の雑誌」1月号<ミカンぶっつけ迎春号>から
 「本の雑誌が選ぶ2021年度ベスト10」を
 歩いてみます。

  

 もともと「本の雑誌」というぐらいですから
 本読みの好きな人たちの集まりなので、
 選ばれた本も冴えています。
 つまりは、世の中のベストセラーとは
 一味違います。
 まずは栄えある1位。
 鈴木忠平さんの『嫌われた監督』。
 2位は白取千夏雄さんの『『ガロ』に人生を捧げた男』と
 早くも「本の雑誌」の冴えた作品があらわれます。
 続きは、本誌を読んでもらうとしましょう。

  何故先を急ぐかというと、
 実は各ジャンル毎にベスト10が紹介されているのです。
 つまり。
 「SF」「ミステリー」「時代小説」「現代文学」
 「ノンフィクション」「エンターテインメント」といった具合です。
 「ビジネス本」がないのが「本の雑誌」ぽい。
 だから、この号を読むだけで
 一体何冊紹介されているのか、
 やっぱり呆然となります。
 さらにですよ、
 「本の雑誌社」が気になる作家や評論家、ライター諸氏、
 総勢32名の方々が「私のベスト3」を
 薦めているのです。
 全部読んだら来年いっぱいかかって、
 そうなったらまたベスト10の季節になって、
 やっぱり呆然とします。

 「本の雑誌」1月号の定価815円+税は安すぎます。

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プレゼント 書評こぼれ話

  これが
  今年最後の本の紹介になります。
  朝倉かすみさんの
  『平場の月』。
  評判を聞いていたので
  とっても読みたかった作品で
  先月光文社文庫になったばかり。
  評判というのは
  この文庫本の惹句でわかるかも。

    「ちょうどよくしあわせなんだ」
    もう若くはない
    男と女の、静かに滾る
    リアルな恋。

  いい作品でした。
  切ないな、恋というのは。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  あの頃なんと切ない恋をしていたものか                   

 第32回山本周五郎賞を受賞した本作は、2018年の刊行以来、「もう若くはない、大人の恋愛小説」と多くの読者の支持を得てきた。
 50歳の、中学生の同級生だった男と女が35年ぶりに偶然再会し、恋愛感情を醸し出す時間を描いたこの作品は、ミステリー小説によくある先に犯人がわかっている倒叙形式になっている。
 つまり、再会した二人であるが、その前に読者はヒロインである須藤葉子が亡くなるのを知るところから始まる。
 なぜ、須藤(この作品では名前ではなく苗字で語られていく。その表現が50歳でありながら、どことなく中学生の幼さを残した恋愛のような感覚をうまく表現している)は死んだのか、その相手である青砥はどんな男性だったのか、二人の心の交差に読者は引き込まれていく。

 さらに書くと、須藤は大腸がんに冒されて死んでいくが、これは夫婦の闘病物語でもないし、恋人たちのそれでもない。
 いうなれば、中学生の時に想い人でありながらもすれちがった恋人未満の物語といっていい。
 それもまた、まるで子供たちの恋愛に似ている。
 「大人の恋愛小説」であっても、そのぎこちなさは青春小説に近い。

 タイトルの「平場」であるが、著者の朝倉かすみさんはあるインタビューで「世の中のほとんどの人は、舞台の上ではなく平らな場所、平場で生きているわけですけど、そういう人たちの物語」と語っているが、つまりはこの作品は私たちの物語でもあるといえる。
 もっとも、須藤が見上げた月はあまりに悲しく、美しすぎるが。
  
(2021/12/29 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  先日
  「今年の漢字」が発表されました。
  「」。
  東京オリンピックの「金」メダルとか
  メジャーリーグの大谷選手の活躍とか
  コロナ禍での給付「金」とか
  そういうことで選ばれたのでしょうが、
  なんだかまたかという印象があります。
  年の瀬が近づくと
  この一年どんな年であったか振り返って
  それが「金」といわれても
  心に満ちるものがない気がします。
  今日は
  金平茂紀さんの
  『筑紫哲也 『NEWS23』とその時代』。
  もし、筑紫哲也さんが生きていたら
  この一年をどう締めくくったかな。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  あの時代があって今に続く                   

 筑紫哲也(ちくしてつや)といっても、知らない世代も多くなったかもしれない。
 筑紫さんが73歳で亡くなったのが2008年11月だから、もう随分歳月が流れた。
 だが、ある世代以上の人にとっては、「ニュースキャスター」といえばこの人のことを思い出すのではないだろうか。
 朝日新聞記者を経て、「朝日ジャーナル」の編集長、そして新聞社を辞め、TBSの『筑紫哲也 NEWS23』という報道番組のメインキャスターを始めたのが1989年。
 以来、肺がんが見つかったあと治療に専念するために番組を降板する2008年3月まで、夜11時からという遅い番組ながら、多くの視聴者を得た人気番組を支えてきた。
 本書はそんな筑紫さんとともに番組を作り出してきた著者が、筑紫さんがいた時代を振り返るとともに筑紫さんが残されたDNAを検証するドキュメントだ。
 これは決して回顧ではない。
 むしろ、メディア論であり、ニュースと向き合う姿勢を問い直し作業といっていい。

 考えてみれば、筑紫さんが番組を担当していた時代は、現在のようにスマホなどネット環境が整備されていなかった。
 その点では、新聞なりテレビの報道に多くの耳目が集まった時代だったといえる。
 だからこそ、筑紫さんのようなある意味メッセージ性を持ったキャスターが必要だったといえる。

 時代は大きく変化している。
 しかし、筑紫さんが言った「強いものと弱いものがいたら、間違いなく弱いものの味方をする」という言葉は、どんな時代であっても有効だと思う。
 『NEWS23』にかかわった人だけが問い直しのではなく、皆等しく問いなおす必要があるのではないだろうか。
  
(2021/12/28 投稿)

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 『歳時記』を開くと
 時々ハッとするような日本語に出くわすことがあります。
 今年もあと5日となりましたが、
 年内の日数が指折り数えるほどになったことを
 「数へ日」というそうです。

     数へ日や一人で帰る人の群        加藤 かな文
 
 そんな数へ日となって
 今年一年の菜園のことを振り返ってみましょう。
 私が畑を始めたのが
 2015年の4月ですから
 もう7年になります。
 育てた野菜も多種多品目にわたりますが
 それでも初めて栽培する野菜はまだあります。
 今年でいえば
 白ナス

  20210806_170027_convert_20210807114732.jpg

 昨年あたりから栽培したくて
 苗を探したりしていた野菜です。
 それが今年は菜園からの提供で育てることができました。
 とろけるような感触で
 おいしくいただきました。

 珍しい色でいえば
 「ツタンカーメンエンドウ」とも呼ばれる
 紫エンドウ

  20210508_121455_convert_20210508174714.jpg
  
 このエンドウを使って豆ごはんにすると
 まるで赤飯のようになるのには
 びっくりしました。

  20210509_071023_convert_20210509084524.jpg

 これはNHKEテレの「やさいの時間」を見て
 育てたいと
 通販で種を購入して育てました。

 初めてといえば
 トウガラシ鷹の爪も初めて。
 タケノコキャベツ
 初めてでした。
 いろんな品種があるものですね。
 何年もうまくいかなかった
 ニンジン
 今年はうまく育ちましたし、
 大玉のハクサイ
 なかなかりっぱにできました。

 今は
 収穫というより
 春に向けて
 野菜をじっくり育てる時期です。
 来年はどんな野菜が
 育つだろうか
 考えるだけでわくわくします。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日の絵本も
  鈴木まもるさんの作品です。
  『みんな あかちゃんだった』。
  先日の講演会の際に
  この絵本のことを鈴木まもるさんは話されていました。
  こんな絵本を作ってみたのだがと
  自分で企画をつくって
  出版社に持ち込んだそうです。
  でも、
  ある出版社は絵本の読み聞かせに向かないと
  出版を断られたそうです。
  きっとその出版社は
  出来上がった絵本を見て
  残念がったでしょうね。
  だって、
  とっても素敵な絵本なんですから。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  立った! 歩いた! 転んだ!                   

 絵本作家の鈴木まもるさんの講演を聞く機会がありました。
 鈴木さんはお話をされながら、そばにあったホワイトボードにすっと絵を描かれる。
 絵本を描く人なのだから自然なのかもしれませんが、とっても感動しました。
 そのようにして、鈴木さんが生まれてきたお子さんの表情もすっと絵にして残されていたうです。
 それがこの絵本のもとになりました。
 なので、この絵本には赤ちゃんの本当に自然の表情がたくさん載っています。
 今子育て中で奮闘されているパパやママはもちろん、すでに赤ちゃんの頃の子育てを終わっている世代も、そうだこんなことあったなと、まるで自身のアルバムを開くように楽しめます。

 この絵本のタイトルは「みんな あかちゃんだった」ですが、その前にこんな言葉がついています。
 「世界じゅうにたくさんのひとがいるけれど さいしょは……」。
 そう、この絵本を読む人もみんな赤ちゃんだったのです。
 いじめであったり児童虐待であったり、世の中にはたくさん悲しいことがあります。
 でも、どんな人も「みんな あかちゃんだった」のです。
 よだれをいっぱい流したはずだし、はいはいもしたはずです。
 立ち上がっては転び、泣きながら眠ってしまったこともあったはず。
 そのことを思い出すだけでも、少しは優しくなれるはずです。

 それにしても、こうして絵として子供たちに残せるものを作れるのですから、絵本作家は素敵な才能です。
  
(2021/12/26 投稿)

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 今日はクリスマス 

   聖樹より少し離れて人を待つ      鷹羽 狩行

 この俳句の「聖樹」は、もちろんクリスマスツリーのこと。
 街のあちらこちらに素敵な聖樹が並んでいます。

  20211218_113918_convert_20211219085152.jpg

 クリスマスといえば
 映画にも名作がたくさんあります。
 『素晴らしき哉、人生!』(1946年)とか『三十四丁目の奇跡』(1947年)とか
 やはりヒューマンなハートフルな映画が
 すぐに浮かびます。
 でも、先週紹介した「ホーム・アローン」(1990年)のように
 コメディータッチのものもあれば
 アクション映画だってあります。
 その代表的な作品が1989年に公開された
 「ダイ・ハード」。
 今日は「ダイ・ハード」の話で、メリークリスマス!

  

 「ダイ・ハード」が何故クリスマス映画かというと
 ブルース・ウィリス演じる主人公マクレーン刑事が
 ロサンゼルスにやってきたのが
 クリスマス・イブの夜、別居中の家族に会うため。
 ところが、運の悪いことに
 妻の働く会社に、
 これが日本資本の会社で
 (あの頃はいい意味でも悪い意味でも日本企業は力がありました)
 そこにテロ集団のような悪の集団が侵入して
 マクレーン刑事は事件に巻き込まれていきます。
 公開当時のキャッチコピーがこれ。

    地上40階! 超高層ビルは戦場と化した!  

 この映画を初めて観たとき、
 伏線の張り方がなんてうまいんだろうと
 感心しました。
 例えば、妻のオフィスで家族の写真がありました。
 さりげなく、妻がその写真立てを伏せるのですが
 終盤犯人たちがその写真に気づいて
 自分たちに抵抗している男の正体を知るなど
 もう数限りなくあります。

 この映画はエンタテインメントとしても
 アクション映画としても最高で、
 この年の第63回キネマ旬報の外国映画ベストテンで1位を受賞して
 映画としても第一級です。
 今回久しぶりに「ディズニープラス」で観ましたが
 ブルース・ウィリスの若いこと。
 顔なんかふっくらしちゃってます。

 ちなみに、
 タイトルの「Die Hard」は「なかなか死なない」の意味。
 マクレーン刑事、
 死なないでいいクリスマスを迎えられてよかった。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  クリスマス・イブ 

    子へ贈る本が箪笥に聖夜待つ       大島 民郎

  いつもこの季節になると
  この俳句がいいなと思います。
  クリスマスと絵本って
  とっても相性がいい。
  なので、今日は絵本の紹介です。
  今江祥智さん文、
  あべ弘士さん絵の
  『サンタクロースが二月にやってきた』。
  この絵本が出たのが
  2007年11月29日ですから
  やっぱりクリスマス絵本として
  出たのだと思います。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  この絵本、いつ読むのがいいだろう?                   

 困ってます。
 この絵本、いつ読むのが正しい読み方だろうかって。
 何しろタイトルに「サンタクロース」ってあって、お話にもサンタのおじさんが登場するのですから、やっぱりクリスマスの季節に読むのがいいのかな。
 でも、タイトルには「二月」とも入っていて、お話でも動物園のライオン親子のオリにサンタおじさんが飛び込んでくるのがクリスマスも終わった二月なのだから、やっぱりその頃に読んで、二月に迷い込んだおかしなサンタを笑う方がいいのかな。

 そもそもどうしてサンタさんは二月になってもうろうろしていたのか。
 サンタさんの言い訳を聞くと、「クリスマスが終わって北に帰るところ、そりもトナカイも子供たちにやってしまった」というから、のんきというかおおらかというか。
 そんなサンタさんにライオンの子供が贈り物をねだるのですから、子供って無邪気。
 そりさえ持たないサンタさんは困って、動物園の外の雪を見て思いついたのが、サンタさん手製の雪だるま。
 ところが、せっかく作っても、何度作ってもオリに運ぶと溶けてしまう。
 オリの中はスチームで温かくなっているので。
 そこでサンタさん、自ら雪だるまになることにしたのですが…。

 こんな健気なサンタさんを見てると、やっぱりこの絵本はクリスマスに読むのがいいかも。
 そして、そりやトナカイまでねだるのはやめにして、サンタさんが北の国にちゃんと帰れるようにしましょうね。
  
(2021/12/24 投稿)

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  最近、平成〇年に起こった災害です、なんていわれても
  はて、今から何年前のことなんだ
  すぐにはわからなくなりました。
  ぜひ西暦で統一してほしいな。
  今日は
  2021年11月に出たばかりの
  東海林さだおさんの
  『干し芋の丸かじり』を紹介します。
  これで「丸かじり」シリーズ
  44作め。
  すごいな。
  りっぱだな。
  ここまできたら歴史書ですね。
  この本で「平成」の最後を味わって下さい。
  あれ? 何年前だったっけ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  懐かしいなあ、「平成」                   

 東海林さだおさんの「丸かじり」シリーズも、本作で44作めとなりました。
 実に、慶賀。
 多くの読者はご存じだと思いますが、この食べ物エッセイはまず「週刊朝日」に「あれも食いたいこれも食いたい」とタイトルで連載し、そろそろ数も集まったから「丸かじり」というタイトルをつけて単行本化されるという工程を進んでいきます。
 その後、数年したら、そろそろみんな「忘れてっぺ」と文庫に収まるのも、周知のこと。
 では、44作めの本作はそもそもいつの連載の頃のものかということであります。
 2018年10月から2019年8月とあります。
 2018年? といわれて、あああの頃とピンとくる人ってどれくらいいるのかな。
 では、2019年といわれて、ははんとわかった人は手をあげて。
 そうです、2019年4月に「平成」が終わって、翌日には「令和」になったその頃。
 あの時、「令和」の額を掲げた政治家もその後数奇な政治生活を送りましたよね。

 なので、今回のエッセイには「平成最後の〇〇」がいくつもはいっています。
 今から思えば、まだわずか数年のことなのに、懐かしいな「平成」。
 コロナもなかったから、飲食店も大いにはやっていた、うらやましいな「平成」。
 今回の中で「平成は「ラーメンの時代」でもあった」って書かれるくらい、行列ができたな「平成」。
 でも、そんな「平成」どころか「昭和」から延々と描き続けている東海林さんはえらいな。すでに、この本の中で「令和」を迎えた東海林さんに拍手。
 実に、慶賀。
  
(2021/12/23 投稿)

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  今日は二十四節気のひとつ、
  冬至
  一年中で昼が一番短い。
  この日を境にして、
  これからは日も長くなるのだから
  私は嫌いではありません。

     寮生の長湯は誰ぞ冬至の夜        野中 亮介

  クリスマスもまじかなので
  今日は
  ケストナーの『飛ぶ教室』を
  紹介します。
  『飛ぶ教室』といえば
  児童文学の名作中の名作。
  ですが、
  今まで読んだことがなかった。
  (あったとしても随分前のことです)
  やっと読めたというのが
  正直な感想です。
  やっぱり、こういう作品は
  感性が豊かな少年期に読む方がいいかも
  しれません。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  クリスマスには欠かせない児童文学の名作                   

 日本ではドイツの児童文学者ケスナーが発表したこの作品のタイトルをつけた児童文学向けの雑誌まで出ているくらい、児童文学の古典にして名作の評価が高い作品である。
 この作品が書かれたのは1933年、ドイツではナチスが政権についた年で、出版も厳しい状況にあったという。
 それでも、この作品が戦時下も、そして戦争が終結したあとも、あるいは世界が経済至上に邁進した時であっても、長く読み継がれてきたのであるから、それは児童文学の域を超えて立派に古典文学として評価されているといっていい。

 物語の舞台は、ドイツのギムナジウムの寄宿学校。
 クリスマスを前にした数日間の出来事が描かれる。
 主な登場人物は、5人の少年。「飛ぶ教室」というのは、この5人がクリスマスのパーティに公演しようとしている演劇のタイトル。
 5人の少年を中心に、他校との決闘騒ぎや仲間のうちの一人で弱虫と思われていたウーリの無謀な行動、少年たちを温かく見守る「正義さん」と呼ばれる教師、その「正義さん」が少年時代の友達との再会、と物語は多層的にできている。
 中でも、リーダー格のマルティンが貧しさゆえにクリスマス休暇に帰省できなくなるエピソードは多くの読者の心をうってきたに違いない。

 そして最後には流れ星に家族や友人、教師たちの幸せを願う少年の姿は、やはりこの物語がクリスマスなればこその作品だと思わざるをえない。
  
(2021/12/22 投稿)

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  クリスマスにはアガサ・クリスティーを
  という習慣が
  本場英国にはあるようで
  アガサ・クリスティーの作品は
  なんとなくクリスマスの贈り物に
  似合うのでしょうね。
  今日は
  アガサ・クリスティー
  『ホロー荘の殺人』を紹介します。
  今年の目標のひとつに
  毎月一冊はアガサ・クリスティーの作品を読むことと
  自分で決めていて
  今月この作品を読めて
  目標達成です。
  この作品の評価は
  いつもの霜月蒼さんの
  『アガサ・クリスティー完全攻略』によれば
  ★★★★☆の高評価でした。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  ポアロの存在をあまり感じない「ポアロもの」                   

 1946年に発表された、原題が「The Hollow」というこの作品は、いわゆる「ポアロもの」と呼ばれる名探偵エルキュール・ポアロが活躍する長編小説だ。
 つまり、殺人事件の犯人解明にわがポアロの活躍が寄与するわけだが、読んでいて「ポアロもの」ということを忘れてしまうくらい、ポアロの影が薄い作品である。
 では、誰が物語の中心にいるのかといえば、やはり殺人現場となった「ホロー荘」に集まった人々ということになるだろう。

 ホロー荘というのは、ヘンリーとルーシーの住む館で、そこに彼らの親戚である女性や男性たちが集まってくる。
 その食事会に誘われたのが、ホロー荘の近くで別荘を購入していたポアロ。
 まさにその食事会に出かけた彼の前で殺人事件が起こる。
 殺されたのは優秀な医師ジョン、そのそばにリボルバーをもって呆然と立ち尽くす妻のガーダがいる。
 犯人は明白のように思われたが、凶器は妻が持っていた拳銃ではなかったことで謎が深まる。
 殺されたジョンには、かつて婚約寸前までいった女優がいたり、現在愛し合っている美人彫刻家ヘンリエッタがいたりする。
 さらにはその彼女を愛し続ける資産家の青年がいたり、その彼にほのかに心を寄せる女性もいたりする。

 ここでは犯人捜しというよりも、絡み合った思いがどうほぐれていくか、そんなドラマになっている。
 ちなみに、この作品にポアロを登場させたのは失敗だったと、クリスティーは反省したそうだ。
  
(2021/12/21 投稿)

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 今週末にはクリスマス
 その前の22日は冬至
 いよいよ冬も本番になってきました。
 昨日の日曜の朝も
 埼玉でもうんと冷えました。
 昨日の朝8時前の菜園の様子です。

  20211219_073808_convert_20211219085252.jpg

 なんだかシンとしています。
 清少納言の『枕草子』に

   冬は、つとめて。
   雪の降りたるはいふべきにあらず。
   霜のいと白きも、またさらでも、(後略)

 とあります。

 昨日(12月19日)の菜園でも
 霜がうんと降りました。
 霜柱がびっしり。

  20211219_073837_convert_20211219085337.jpg

    石ひとつすとんと沈め霜柱        石田 勝彦

 ここからは野菜に降りた霜のオンパレード。
 まずは、イチゴ

  20211219_073633_convert_20211219085221.jpg

 俳句の季語「」の傍題に「霜の花」という
 降りた霜の美しさを花にたとえた
 美しい日本語があります。
 それ以外にも「霜」には多くの傍題があって
 日本人の感性を感じる季節の姿です。

    霜晴の山々空を拡げけり      茨木 和生

 こちらはタマネギ

  20211219_074036_convert_20211219085540.jpg

 見てるだけで寒そう。

 そして、すっかり寒さで震え上がった
 ソラマメ

  20211219_074306_convert_20211219085409.jpg

 こういう光景は
 一年でも何度も見れるものでもありません。
 だって、
 布団にもぐりこんでいたいですもの。
 でも、せっかくですから
 野菜たちのこんな姿も
 見ておきたいものです。
 それもまた野菜作りの楽しみです。

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プレゼント 書評こぼれ話

  11日の土曜日、
  埼玉県の「図書館と県民のつどい埼玉」で
  絵本作家鈴木まもるさんの
  オンライン講演会に参加したことは
  先週ここにも書きました。
  今日は
  その鈴木まもるさんの『ぼくの鳥の巣絵日記』という
  絵本を紹介します。
  講演では
  鈴木まもるさんが集められた
  たくさんの鳥の巣も拝見することができました。
  この絵本では
  鳥たちの様子もわかります。
  講演会で
  「自分が面白いこと、不思議と感じたことを知ることが
  本当の勉強」と
  話されていたことと
  この絵本が重なるような気がしました。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  鳥たちの声を聞こう                   

 「山のなかにくらして20年がたちました。」
 これは、2005年に刊行されたこの絵本の「あとがき」の冒頭の文章です。
 1952年東京に生まれた鈴木まもるさんは、1986年に伊豆の山の中に引っ越します。そこを起点にして絵本作家としての活動をしてきました。
 同時に山の自然と触れあう中で鳥の生態やその巣の形状などに関心を持つようになり、この絵本が誕生しました。
 この作品で講談社出版文化賞絵本賞を受賞しただけでなく、広く鳥の巣研究者として名前が知られるようになりました。

 この絵本は山の中の一軒のおうちが左のページの真ん中に描かれています。
 その構造は同じで、その家を囲んで山であったり近くの木々であったり家の前の畑で育てられている野菜であったりが四季折々の変化を見せてくれます。
 そして、右のページにはそんな風景に訪ねてくる鳥たちの様子が描かれています。
 ホオジロ、ヤマガラ、メジロ、ツグミ、ウグイス、ヒヨドリ…。
 鳥たちのさまざまな様子がわかります。

 春から夏にかけて、鳥たちは巣作りを始めます。
 高い木の枝に作るもの、草原のなかに作るもの、川の護岸のすきまに作るもの、鳥たちの種類によって違います。
 巣作りの材料も、枝であったり苔であったり動物の毛であったりさまざまです。
 それらを鈴木さんは丁寧に描いています。
 鈴木さんはあるインタビューで「絵本づくりも鳥の巣も、小さな命の心が育つという点では、同じものなんだ」と語っています。
 そんな鈴木さんだから描けた「絵日記」です。
  
(2021/12/19 投稿)

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 あと一週間もすればクリスマス
 コロナの新株の感染拡大が心配ですが
 街はクリスマスムードでにぎわっています。
 クリスマスといえば
 絵本でもたくさんの作品がありますが
 映画だって
 まけてはいません。
 クリスマス映画の定番といえば、
 フランク・キャプラ監督の「素晴らしき哉、人生!」(1946年)。
 その作品をクリスマスに
 パリで観ていた家族がいたのをご存じですか?
 家族の名前はマカリスター。
 そう、映画「ホーム・アローン」で
 8歳の男の子ケビンを家に置き忘れた
 大家族です。
 そこで、今日は「ホーム・アローン」のお話を。

  

 映画「ホーム・アローン」は
 アメリカで1990年11月に公開されています。
 そりゃ、クリスマス映画だものね。
 ところが、
 日本での公開は翌年1991年6月。
 クリスマス映画というより
 小さな子供がたった一人で
 いかに空き巣の2人組から家を守ったという話の方に
 重点が置かれたのでしょうね。
 でも、全世界で大ヒット。
 日本でも映画公開のあと
 何度もテレビ放映されています。

 大ヒットした要因のひとつが
 主人公の8歳のケビン君のかわいさでしょう。
 演じたのは
 当時10歳だったマコーレー・カルキン君。
 彼は1980年生まれですから
 すでに40歳を超えています。
 わが娘たちも
 彼とほぼ同じ年で
 幼い頃はこの映画に夢中になっていました。

 そして、何よりを
 ケビン少年がたった一人で
 空き巣2人組を退治するたくさんの仕掛けの
 面白さ。
 後半のまるでジェットコースターのような展開は
 今観ても(実は数日前にディズニープラスで観たばかり)
 面白い。
 でも、この映画、
 クリスマス映画ですよ。
 だから、観るなら、クリスマスに
 家族ご一緒に。
 あれ? もしかしたら誰か忘れているかも。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日も
  昨日に続いて俳句の本の
  紹介です。
  坪内稔典さんの
  『俳句いまむかし ふたたび』。
  坪内稔典さんは1944年生まれで
  本書の中でも「後期高齢者」となったと
  書かれています。
  午前3時には目を覚ますともあって
  もしかしたこの本は
  シニアの人向けの
  生活術としても読めるのではと
  思えたりもして。
  いろんな読み方ができるのも
  本を読む楽しみのひとつです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  美しい日本語ふたたび                   

 毎日新聞に連載されている「季語刻々」から400回分を選んで編まれたこの本は、タイトルでもわかるように2020年8月に出た『俳句いまむかし』の続編である。
 わずか1年で続編が編まれるのは、新聞連載が2010年からあってすでにかなりの記事の蓄積があるからだろう。
 もっともこの本の中には「マスク」という冬の季語に、コロナについての記述もあったりする。
 ネンテンさん曰く、「マスクは冬の季語だったが、コロナの日々の今年、マスクは季節を問わない日常品になっている」という風に。

 続編となったこの本でも先の本の編集、「一つの季語について、今と昔の句を挙げ、感想を書くというスタイル」を踏襲している。
 ネンテンさんは本書の「まえがき」で「季語は俳句を詠むことで、その都度に新しく作られている」と書いているし、短い感想の中でも、「チーズフォンデュやもつ鍋を季語にしたい」と書いていたりする。
 ちなみにそう書いた回は会津八一の「闇汁の納豆にまじる柘榴かな」を引用し、「闇汁は正岡子規や高浜虚子が詠んでできた季語」と説明している。

 「いま」と「むかし」の俳句を比べると、「いま」の俳句にカタカナ文字が多いことに気づく。くぼえみさんの「ユニクロの若草色へ日脚伸ぶ」という句には一瞬ハッとさせられた。おそらく私たちの日常は思った以上にカタカナであふれているだろう。
 そんなことも気づかさせられる一冊である。
  
(2021/12/17 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  年の瀬は早いもので
  今年もあと2週間余りとなってきました。
  『歳時記』を開くと
  「畳替え」とか「日記買ふ」とか「賀状書く」といった
  年の瀬ならではの季語が並んでいます。

     賀状書くけふもあしたも逢ふ人に       藤沢 樹村

  年賀状に俳句をいれるようになって
  もう10年以上になりますが
  最近俳句から遠のいていて
  俳句脳になっていません。
  そこで、手にしたのが
  岩波文庫から秋に出た
  『久保田万太郎俳句集』。
  これでいい句が詠めたらいいのですが。

  じゃあ、読もう。  

  

sai.wingpen  あの有名な俳句はこんなにも切なかったのか                   

 湯豆腐のおいしい季節ともなれば思い出す俳句がある。
 久保田万太郎の「湯豆腐やいのちのはてのうすあかり」だ。
 久保田万太郎は明治22年に生まれ昭和38年73歳で亡くなっている。
 浅草生まれということもあって、浅草寺のそばにある浅草神社の境内に「竹馬やいろはにほへとちりぢりに」という句碑が立っている。
 久保田のことを調べると、作家や劇作家という肩書がまずある。そのあとに俳人と続き、万太郎自身は俳句は余技といったいたようだが、万太郎俳句を好む人は多い。

 岩波文庫の一冊となったこの俳句集では、万太郎の俳句902句が収められている。
 冒頭にあげた「湯豆腐」の句は万太郎の最晩年のもので、句集でいえば生涯の終わりに共に暮らした女性の死を読んだ十句のあとに続いている。
 「死んでゆくものうらやまし冬ごもり」、そのあとに「湯豆腐」の句を置いてみると、なんとも切ない「いのちのうすあかり」が実感として迫ったくる。
 俳句とはその句自体で鑑賞してもいいが、こうしてつながりで読むとまた違った風景が見えてくるようだ。

 万太郎の句は「竹馬」の作品でもそうだが、決して難解ではない。
 日本語の柔らかさをうまくリズムにのせているように思える。
 編者である恩田侑布子さんもまた俳人であり、その解説はわかりやすい。
 まず、恩田さんの解説を読んでから万太郎の俳句を読むのもいいかもしれない。
  
(2021/12/16 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  向田邦子さんが亡くなって
  今年(2021年)で40年になります。
  そのせいでしょうか、
  向田作品を新たに編みなおしたエッセイ集などが売れたり、
  特集のテレビ番組が放映されたり
  向田人気は衰えを知りません。
  結構好きな作家さんなのに
  手元にほとんど本がなく
  ブックオフなどで機会があれば
  購入し始めました。
  その中の一冊、
  エッセイ集『眠る盃』を
  今日は再読書評で紹介します。
  向田邦子さんの作品は
  いつ読んでも新しい。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  記憶の海からうかびあがるあぶく                   

 向田邦子さんが不慮の飛行機事故で亡くなってから、今年(2021年)で40年になりました。この時向田さんはまだ51歳でしたから、生前の向田さんを知るほとんどの人はもうすでに向田さんの生きた年を越えたいるかもしれません。
 それだけの歳月が過ぎたにもかかわらず、向田さんが残した作品は、それはドラマの脚本でありエッセイであり小説でもありますが、今でも新しい読者を生み続けています。
 いわんや、古い読者は何度でも向田作品に触れようとしています。

 土井晩翠作詞、滝廉太郎作曲の名曲「荒城の月」の歌詞の一節「めぐる盃 かげさして」を「眠る盃」と間違ったまま覚えていたというエピソードを綴った「眠る盃」を表題作としてまとめられたこれは、向田さんの第2エッセイ集です。
 どこかの雑誌一誌に連載されたものではなく、その時々のさまざまな紙面に綴られたものです。ちなみに、「眠る盃」は1978年に東京新聞に載った作品です。
 このエッセイ集には、子供たちの教科書に採用され、最近絵本にまでなった有名な「字のない葉書」や、向田さんが愛してやまなかった愛猫マミオへの恋文ともいえる短文「マハシャイ・マミオ殿」など、今読んでも、何度読んでも、ほっとするエッセイに満ちています。

 私は中でも、中央線の中野駅近くでライオンを見たという「中野のライオン」とその後日譚である「新宿のライオン」がお気に入りです。
 いつも覚えているわけではないのですが、読みはじめるとそうそうこういう話だったと、記憶が浮かびあがってくるのです。
 向田さんのエッセイの魅力は、そんな記憶の海から浮かびあがるあぶくのそれではないでしょうか。
  
(2021/12/15 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  先日久しぶりに
  東京・表参道にある
  児童書専門店「クレヨンハウス」に行ってきました。

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  コロナ禍の影響で
  東京に出ることもままならなかったので
  「クレヨンハウス」にも何年かぶりでの
  再訪となりました。
  この時期の「クレヨンハウス」
  正面入り口を入ると
  クリスマス絵本がいっぱい。
  いついっても楽しいお店ですが
  やはりオススメはこの時期かな。
  店内を歩いて
  目にとまったのが
  長田弘さん文、酒井駒子さん絵の
  『小さな本の大きな世界』。
  でも、確か、この本を読んだことがあったはずと調べると
  2016年6月に読んでいました。
  しかも、この時も「クレヨンハウス」のことを
  書いていました。
  なので、今日は
  再録書評でもう一度。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  ぬきさしならない言葉にあふれた本                   

 子どもにとって絵本や物語はどんな意味をもつのか。
 この本の中で長田弘さんは明確にこう記しています。「世界のつくり方の秘密を子どもたちに伝える、方法としての本」だと。
 「世界のつくり方」という獏とした言葉に強い意志を痛感します。
 この世界に生まれてきた子どもは、すでにある世界を生きるのではなく、自分の世界をつくっていく。それはいうならば個性です。
絵本や物語をそのことを伝えてくれている。
 では、おとなにとってはどうなのでしょう。やはり同じことかもしれません。常に新しい世界をつくっていく、その方法の一つとして、私たちは本を読んでいるのです。

 この本は2015年5月に亡くなった詩人の長田弘さんが絵本について綴ったエッセイをまとめたものです。それに酒井駒子さんがすてきな挿絵をつけています。
 日本の絵本も紹介されていますが、海外の絵本の方が多いかもしれません。読書ガイドとして読むのもいいと思います。
 それ以上に読書論あるいは絵本論として、長田さんの言葉の一つひとつが心に響いてきます。
 いくつか紹介します。
 「絵本は、本を読みたい大人にとっても最良の本」。
 「読書とはー本の空白のページに、言葉がまるで魔法のようにあらわれてくること」。
 「本というのは、場所なのです。あるとき、じぶんにとってのぬきさしならない言葉に、思わずでくわしてしまう場所のこと」。

 特に最後の文章はこの本にぴったりです。
 この本の中には「ぬきさしならない言葉」がたくさんひそんでいます。「思わずでくわす」どころか、ここにも、そこにも、あそこにも、と見つけることができる「場所」です。
 それには「ぬきさしならない」ものを持っていることが肝心かもしれません。
 何かを発見する時には、見つけたい何かを持っていることが大事だと思います。
 特に絵本については、おとなでもたくさんの発見があります。そのことを長田さんはこの本の中でたくさん教えてくれています。

 長田弘さんはもういません。
 けれど、長田さんが残してくれたさまざまな詩やエッセイ、そしてこの本のように絵本についての文章はこれからも残り続けると思います。
  
(2016/06/04 投稿)

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 冬の季語のひとつ、「銀杏落葉」のことは
 以前も書きましたが、
 『歳時記』の解説に
 「並木道や公園を金色に染めている銀杏落葉は初冬の美しい光景」と
 あります。
 まさにそんな光景を
 近くの公園で見つけました。

  20211209_140528_convert_20211212112005.jpg

 そして、こちらは
 菜園のそばを流れる鴻沼川沿いの桜並木。

  20211212_134443_convert_20211212150347.jpg

 すっかり裸木です。
 「裸木」も冬の季語。

    裸木となる太陽と話すため      高野 ムツオ

 菜園の三角の山なりにネットを被さっているのは
 茎ブロッコリー
 これは害虫対策というより
 鳥の攻撃が守るための防鳥ネット。
 私の畑の茎ブロッコリーもこんなに背が伸びてきました。

  20211212_140031_convert_20211212150449.jpg

 この日(12月12日)は、
 ニンジンを収穫しました。

  20211212_144523_convert_20211212150512.jpg

 今回のニンジン五寸人参という品種で
 測ってみると
 15センチ、つまり5寸。
 納得の大きさでした。
 今回のようなきれいなニンジンが収穫できたのは
 久しぶりで
 ちょっと(かなり?)感激ものでした。
 そばに転がっているのは
 芽キャベツたち。

 ニンジンにしても
 芽キャベツにしても
 今回はうまく育ってくれた野菜で、
 ハクサイもそう。
 2㎏近いハクサイを3個も収穫できました。
 そして、最後の一つは
 こうして縛って畑で保存しておきます。

  20211212_134718_convert_20211212150415.jpg

 ハクサイの保存方法のひとつです。
 そろそろ霜が降りてきますが、
 こうしておけば安心です。

     ふるさとの声のひとつに霜の声        鷹羽 狩行

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 年に一度、
 毎年この時期に開催されている
 「図書館と県民のつどい埼玉」
 昨日12月11日と今日12日の2日間
 開催されています。
 「みんなが図書館とつながる日」と題された
 埼玉県内最大級の図書館イベントです。
 いつもなら会場で講演会とか企画展示とかあるのですが
 コロナ禍ということもあって
 オンラインのみでの開催です。
 講演会はともかく
 展示はどんな感じになるのかと思っていましたが
 WEB展示でも
 図書館の魅力がよく伝わってきました。
 これは全国どなたでも参加できるので
 興味のある方はのぞいてみて下さい。

 15回めとなる今回のイベントでは
 講演会もオンラインで開催されます。
 昨日は絵本作家の鈴木まもるさんの講演があって
 それに参加しました。
 演題は
 「絵本と鳥の巣の不思議 -鳥の巣が教えてくれることー」。
 鈴木まもるさんは
 絵本作家であるとともに
 鳥の巣研究家としても有名で
 今回の講演でもご自身がもっている鳥の巣を
 いくつも見せていただきました。
 この講演会もZOOMを使ってのもので
 鈴木まもるさんの伊豆のアトリエからの
 LIVE配信でした。
 少し前には考えられなかった取り組みです。

 鈴木まもるさんは
 昨年星野道夫さん原案の『あるヘラジカの物語』で
 第2回親子で読んでほしい絵本大賞で大賞を受賞。

  

 自身の活動のひとつである鳥の巣を題材にした
 『ぼくの鳥の巣日記』や
 のりものシリーズの絵本も数多く描いています。
 この講演の中でも
 子どもたちに乗り物絵本が人気なのは
 子どもたちがテリトリーを広げたいとか自分の生活を守るとか
 社会活動に向き始めた兆候だと語っていました。

 今回の講演は2時間ほどありましたが
 鳥の巣は
 鳥たちが命を守るために
 誰に教えてもらうわけでもなく身につけてできあがっていて
 人間も命の大切さをもっと大事にしないといけないこと、
 鳥の品種によって巣の形状が違うように
 人も画一的ではなく
 それぞれの個性を大事にしないといけないことなど
 その場でホワイトボードに絵を描きつつ
 貴重なお話が聴けました。

 絵本作家さんが絵を描くところなど
 あまり見る機会がありませんが
 さすがにうまい。
 そういえば、絵がうまくなるには? と訊かれて
 対象を愛することと
 答えておられました。

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 昨日春日太一さんの
 『やくざ映画入門』という本を
 紹介しましたが、
 その中に
 「フィクショナルな任侠映画から、実在の現代やくざの抗争を題材にした
 実録映画へと大きくその路線を変え」た作品として
 1973年公開の
 深作欣二監督の「仁義なき戦い」が取り上げられています。
 ちょうど今、
 CS放送の日本映画専門チャンネル
 「仁義なき戦い」シリーズ全5作が
 4Kニューマスター版で放送されています。
 ということで、
 今日は映画「仁義なき戦い」の話をしましょう。

  

 映画「仁義なき戦い」は
 1973年に公開され、
 この年の配給収入で日本映画で2位になったほど
 大ヒットしました。
 原作は飯干晃一さんのノンフィクション作品、
 脚本は笠原和夫さん。
 監督は深作欣二さん。
 私はこの作品はもう何度となく観ていますが
 何度観ても面白い。
 ほとんど半世紀前に作られた映画ですが
 ちっとも古くない。
 敗戦間もない広島のやくざの抗争を描いて
 主人公として菅原文太さん演じる広能昌三がいるのですが
 これは群像劇として観るのが正しい。
 春日太一さんも
 「画面の隅々に至るまで人物たちが激しく躍動。(略)
 かつてない熱気が画面から放たれることになります」と
 書いています。
 「やくざ映画」ですが
 見方によれば「青春映画」ともいえます。

 特に私はシリーズ2作めの
 「仁義なき戦い 広島死闘篇」(1973年4月)を
 お薦めします。

  

 復員兵の山中正治(北大路欣也)の行き場のない思いが
 あの当時の若者の感情と
 見事にシンクロライズしています。
 あるいは、その一方の
 暴力的な大友勝利(千葉真一)も
 荒れるしかない若者の姿だったともいえます。
 ヒロインを演じる梶芽衣子さんもいい。
 それらが見事に映像化された
 すばらしい名作だと
 今回再見して改めて思いました。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  春日太一さんの
  『やくざ映画入門』という本を
  紹介します。
  やくざ映画が全盛だった1960年代後半、
  映画館から出てきた人たちは
  みんな健さん(高倉健さんのこと)をきどっていたと
  いいます。
  それくらい「やくざ映画」は
  大衆に受けたジャンルでした。
  それをうまく
  わかりやすくまとめたのが
  この本です。
  私が薦めるなら
  やはり「仁義なき戦い」(1973年)かな。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  義理と人情を秤にかけりゃ                   

 かつて日本映画には「やくざ映画」という一大潮流があった。
 最近でこそ、そういうジャンル名で括られる作品は少なくなって、では「やくざ映画」は日本映画史の中のあだ花であったかというと決してそんなことはない。
 この本は、時代劇・映画史研究家であり、かつ近年積極的に日本映画について多くの著作を書いている春日太一氏が、「やくざ映画」をあまり観たことのない若い人もかつて「やくざ映画」に熱中した人にもわかりやすく解説した「入門書」である。

 まずは第二章の「やくざ映画の歴史」が入門としてわかりやすい。
 「やくざ映画」=東映、と言いたくなるくらい、東映という映画会社は「やくざ映画」を量産し、多くのファンを集めた。そのきっかけが1963年の「人生劇場 飛車角」(沢島忠監督)だったという。
 つまり、「やくざ映画」は日本の高度成長とともに人気を高めていく。
 それは「世間の潮流に入り込めずに不良性や不健全性を抱えた人たちがやくざ映画のメインの支持層」だったと、春日氏はいう。
 そういった時代背景の分析も丁寧だし、「やくざ映画」の名作を次々送り出した脚本家笠原和夫の作品論もわかりやすい。

 まずはどんな作品を観たらいいのか、そう悩む人は第三章の「やくざ映画俳優名鑑」から好みに合いそうな俳優から作品を探すのがいいだろう。
 ここでは鶴田浩二や高倉健、あるいは藤純子といったスターたちのこともうまくまとまっている。
 もちろん、かつて「やくざ映画」に痺れた人にもうれしい一冊だ。
  
(2021/12/10 投稿)

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  今日は
  田村優子さんの
  『場末のシネマパラダイス 本宮映画劇場』をいう
  映画館を描いた本を
  紹介します。
  私が生まれた大阪郊外の市にも
  かつて市の中心地に
  いくつも映画館がありました。
  駅のそばにあったのは東宝、
  少し離れたかつての繁華街に
  松竹や東映、大映もありました。
  大阪市内の映画館に足を運びだすのは
  高校生になってから。
  それまでは
  郊外の映画館で観ていました。
  もちろん、今はもうありません。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  福島版ニュー・シネマパラダイス                   

 福島県本宮市は、郡山から福島市に向かうほぼ真ん中あたり位置する。
 福島県の、いわゆる中通りにある人口3万人ほどの町である。
 そこに伝説の映画館が今も残っている。
 それが2022年には創建108年を迎える、本宮映画劇場だ。
 本書はその映画館を長年経営者だけでなく映写技師としても支えてきた二代目館主の田村修二さんの訛り交じりの話と映画館の歴史(それは地方映画館が味わった光と影であった)が綴られている。
 書いたのは、修二さんの三女で、本宮映画劇場の三代目となる田村優子さん。

 ただ本宮映画劇場は閉館して40数年になる。
 そのあと、不定期の上映をしてそうだが、それをやらなくなって20年。
 それでも、どっこい、二代目館主が持ち続けてきたフィルムやポスター、チラシの類はこの映画館にはたくさん残っている。
 ピンク映画を上映していた期間も長く、目につくのは大手の映画会社の作品ではなく、そういうあやうい作品群だったりする。
 小さな町の映画館の怪しい作品を観に男たちが集まるところなど、想像するだけで面白い。
 まさに昭和の風景だ。

 そんな映画館が脚光を浴びたのは、「福島版ニュー・シネマパラダイス」としていろいろな媒体が2012年頃から取り上げられたおかげだ。
 しかし、2019年の台風で映画館の一部が浸水。大事なフィルムも被害にあう。
 この本の最終章で、その水害からフィルムを再生する多くの支援者たちの姿も描かれている。
 人々のそんな姿も含めて、まさにここは「ニュー・シネマパラダイス」の世界だ。
  
(2021/12/09 投稿)

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  2021年11月13日、84歳で亡くなった
  衣装デザイナー、ワダエミさんは
  アカデミー賞の衣装デザイン賞を受賞したくらいだから
  もちろん「後列のひと」ではありません。
  でも、その人生はどんなものであったか
  あまり知られていないかもしれません。
  訃報を聞いたあと
  図書館でその人のことを書いた本がないか
  知らべることが多く、
  今回は若い人向けの本として所蔵していた
  『わたしが仕事について語るなら』という本を
  見つけました。
  ヤング向けですが
  ワダエミさんを知るには最適の本だと思います。
  すごい人だったのだと
  あらためて感じました。

  ワダエミさんの
  ご冥福をお祈りします

  

sai.wingpen  追悼・ワダエミさん - 自分の人生は誰のものでもない                   

 2021年11月13日、84歳で亡くなった衣装デザイナー、ワダエミさんについては黒澤明監督の「乱」でアメリカのアカデミー賞の衣装デザイン賞を受賞したことくらいしか知識がなかった。
 ワダエミさんとはどんな女性だったのか、伝記なり自伝なりがないだろうかと探すと、2010年にポプラ社が「未来のおとな」である子ども向けに編んだ「未来のおとなに語るシリーズ」の一冊として、自身の仕事や半生を綴った本があることがわかった。
 それがこの本である。
 子ども向けにはなっているが、書かれている内容はワダエミさんを知るには格好の一冊になっている。

 衣装デザイナーについて、ワダさんは映画や演劇で単に衣装をデザインするだけでなく「脚本を読み、そこで表現されようとする人間像を分析し、ふさわしい衣装を考える」職業だとしている。
 代表作となった「乱」にしても、黒澤監督からのオファーが先にあったのではなく、自身の売り込みだったことも明かしている。
 その作品で作った衣装は千を超えるというから、もし黒澤監督でなければワダさんの才能は認められなかったかもしれない。

 あるいは、京都下鴨の2000坪もあるお屋敷で育ったワダさんが大学在学中の20歳の時にNHKの演出家だった和田勉さんと結婚したことも、奇跡のような出会いだと思える。
 和田勉さんが異能の演出家と呼ばれるのはまだ先のことだろうから、ワダさんもまた先見の明があったのだろう。
 さらにこの本ではワダさんの若い人へのメッセージも載っていて、「人生に枠を作らない」と説くこの人のことはもっと知られてもいいと思えた。
  
(2021/12/08 投稿)

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  今日は二十四節気のひとつ、
  大雪(たいせつ)

     大雪や暦に記す覚え書き    椎橋 清翠

  先日、作詞家の喜多條忠(まこと)さんの訃報があって
  驚きました。
  喜多條忠さんといえば
  かぐや姫が歌った名曲「神田川」の作詞家。
  そのあとの「赤ちょうちん」もそう。
  「神田川」は喜多條忠さんの学生時代の生活が
  モデルだったとか。
  大ヒットも飛ばしながらも
  家庭を顧みず、競艇とかにはまったと
  12月2日の「天声人語」で惜しまれていました。
  74歳の死はやはり早すぎます。
  喜多條忠さんは決して後列ではなかったですが、
  なんだか日向より影にいきたかったような人生だったのかもしれません。
  今日は
  清武英利さんの
  『後列のひと 無名人の戦後史』を
  紹介します。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  人にはそれぞれの人生があり、それには優劣はない                   

 「そういえば、そういう奴もいたな」、同窓会などでよく出る会話の場面だ。
 だが、そういう目立たない人でも、深い人生があり、社会のいろんな場面で活躍していることもある。
 前列で目立つばかりが人生ではない。
 後列にいても、「人や組織を支えた人々」がいる。
 「人は誰しもこの世界に生存の爪痕を残したいと思うときがある。しかし、生き急ぐ必要はない」と、この本の「はじめに」で著者の清武英利さんは書く。そして、こう続ける。
 「良く生きた人生の底には、その人だけの非凡な歴史が残るものだ」と。

 この本で紹介されている18人の無名人たち。
 その人たちは、少しばかりの縁のつながりはあるが、ほとんど関係はない。ただその人たちの人生を並べると、戦後の日本の歴史につながっていく。
 日本軍のテストパイロットだった父はテスト飛行中に殉職。そんな父を持つ息子は戦後「ロケット班長」と呼ばれるほどにロケット開発に携わる。
 その関係で登場するロケット博士糸川英夫教授とその晩年をともに生きた女性。
 あるいは、無名の相場師の生きざま。
 さらには、ベトナム戦争にかかわった写真家。
 清武さんの代表作でもある『しんがり 山一証券最後の12人』で知己を得たであろう元山一証券の女性社員の、「四つの生」と章題のついた壮絶な人生。
 または、東日本大震災時の原発事故以後に東京電力に入社した男の仕事観。

 名もない人たちであっても、「最後まで姿勢を正して生きんといかんな」という言葉の意味は大きい。
  
(2021/12/07 投稿)

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 12月に入るとさすがに
 各地から初雪の便りが届くようになりました。
 冬の季語に「冬の日」というのがあって
 「寒気の中の輝かしい冬の太陽、あるいはその日差し」と
 『歳時記』には載っています。

    石に置く本に冬日の届きけり        森賀 まり

 そんな冬日にまるで宝石を置いたように
 最近町なかで柑橘類の輝く果実を見かけることが
 多くなりました。

  20211205_093952_convert_20211205142007.jpg

 どんな種類なのかわからないのが
 歯がゆいですが
 冬ならではの光景です。

 畑の方は冬越し野菜が
 寒さのなかがんばっています。
 こちらは
 スナップエンドウ(手前)とソラマメ(奥)。

  20211205_095052_convert_20211205142040.jpg

 同じ豆科でも
 苗の感じがまるで違います。
 そして、
 こちらはイチゴ

  20211205_095946_convert_20211205142110.jpg

 その間にすっと芽を出しているのが
 ニンニクです。
 これらの野菜の収穫は
 春になってから。
 なので、今はちゃんと冬眠している(はず)。

 これは
 苗でいただいたシュクライ

  20211205_100221_convert_20211205142137.jpg

 育てるのは初めてで
 どういうふうになれば収穫なのかも
 よくわからないので
 ネットで調べながらの栽培です。
 わからないままに
 葉を収穫してかじってみると
 それが辛いことからいこと。
 子持ち高菜の品種だけのことはあります。
 手前に見えるのは
 ホウレンソウです。

 この日(12月5日)も
 ハクサイを収穫。

  20211205_110814_convert_20211205142202.jpg

 最初に収穫したものより少しこぶりでしたが
 重さはこちらの方がありました。
 きっと
 中がしっかり締まっているのでしょう。

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日
  このブログの13回めの誕生日で
  今日紹介するのが
  14年めの最初の本ということになります。
  そんな一冊にぴったりの絵本です。
  あべ弘士さんの『よあけ』。
  朝はいつも新しい。
  だから、どんなに嫌なことがあっても
  朝がめぐってくれば
  新しい自分になれる。
  そんなふうに生きていければいいですね。
  今日は
  そんな素晴らしい絵本を紹介できて
  とっても
  うれしい、新しい日の始まりになりました。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  絵本の名作の誕生                   

 舞台は極東シベリアの原生林の間を縫う大河ビキン川。
 「黄金の9月」と呼ばれるほど、森の木々は赤や黄色に染まっている。
 その川を下る小さな舟に、村一番の漁師のじいさんとわたしが乗っている。じいさんが獲った獣たちの毛皮を町に売りにいくのだ。
 夜になって、二人は岩山に身を寄せる。
 火にあたり、お酒を飲み、じいさんの話を聞く。
 大きなトラの話、イノシシ同士のケンカの話。
 夜は更け、空には満天の星。

 朝。
 目覚めるとあたり一面、真っ白な霧に覆われている。
 そして、二人はまた舟に乗って町をめざす。
 霧に浮かぶ二人の影。
 「わたしのうしろを、舟がつくる波がついてくる。」
 やがて、霧がはれ、陽の光があふれたその時。

 読者は開いたそのページに、きっと息をのむだろう。
 黄金色で描かれた、よあけの世界。
 きっと世界は、朝になると新しく生まれ変わるに違いないと、確信できそうなそんなページ。
 絵本作家あべ弘士さんは、なんと素晴らしいことを描き、教えてくれたのだろう。
 おそらく長年、生き物とともに生きてきたその果てにある、世界の生まれ変わりへの確信だと思う。
 同時に読者は、映画にも絵画にも小説にも音楽にも劣ることのない、絵本の力を実感するだろう。

 絵本の名作が、ここにまた一冊誕生した。
  
(2021/12/05 投稿)

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 今日12月4日は
 このブログのお誕生日です。
 13歳になりました
 さすがに13年前にどんな本を読んでいたかは
 覚えていませんが
 ありがたいことに
 こうしてブログに残していると
 調べることができます。
 ちなみに
 このブログで最初に紹介したのは
 川上弘美さんの『どこから行っても遠い町』という
 短編集でした。
 2018年の12月6日の土曜日です。

 それでは、その前の二日間は何を書いていたかというと
 「はじめに」という決意? のような小文と
 次の日は「ブログの名前」という記事を
 書いています。
 こんな文でした。

  最初考えたのは「BOOK PLUS」。
  本の話だけでなく、
  本から派生する色々なことを「PLUS」で表現しようと思いました。
  でも、英字ってなんだか、かっこよすぎるかなと、これを却下。
  また、また考えました。
  (略)
  「PLUS」って日本語でいえば、「足す(たす)」。
  それに「本(ほん)」をつけてみて、 完成したのが
  「ほん☆たす」。
  (略)
  どちらに重点があるかというと、やはり「ほん(本)」でしょうが、
  「たす(足す)」の方も大切だと思います。
  それが、本のある生活だと思うのです。

 最近は「菜園」の話とか
 「映画」の話とか
 「たす(足す)」の方も多くなっていますが
 なんだか初めから
 「たす(足す)」が増えていく予感のようなものが
 あったのかもしれません。

 これからも
 素敵な本だけでなく
 すっくとした「たす(足す)」も
 紹介したいと思います。

 いい本と出会えることを願って。
 
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プレゼント 書評こぼれ話

  半年ほど前になりますが
  木俣正剛さんの『文春の流儀』という本を
  読みました。
  木俣正剛さんというのは
  かつての「週刊文春」の編集長だった人で
  今日紹介するのは
  「週刊現代」の元編集長だった
  元木昌彦さんが書いた
  『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』。
  さすがに
  お二人とも激戦の週刊誌の世界を生き抜いた戦士と
  いえます。
  かつて週刊誌が元気だった時代を
  振り返るには最適な2冊。
  読み比べるのも面白いかも。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  あのニュースの裏側にいたものたち                   

 4大週刊誌と呼ばれるのが「週刊文春」「週刊新潮」「週刊現代」「週刊ポスト」であるが、先の2誌とあとの2誌はだいぶ肌合いが違う。
 特に「週刊現代」と「週刊ポスト」はかつてヌードグラビアやセックス記事で多くの男性読者を引き付けていたが、最近では老後の暮らしノウハウのような記事が続く。
 それが2誌ともなのが気になるところだ。

 週刊誌はかつて多くの読者をもっていたが、雑誌の売上げの凋落とともにその黄金期はとっくに過ぎたのかもしれない。
 本書の著者元木昌彦氏は副題にあるようにかつて「講談社・雑誌編集者」だった。
 しかも講談社の「週刊現代」の編集長を1992年から1997年にわたって務めた剛腕編集長だった。
 時代の勢いもあっただろうが、元木氏が編集長だった時期の平均実売率は82%だったというから、多くの読者をひきつけていたことが間違いない。
 そんな元木氏が講談社という出版社に入社し、写真誌「フライデー」の編集長、「週刊現代」の編集長という要職を歩きながら、役員になることもなく、子会社へ出向、そして定年。そのあともジャーナリズムの世界で生きる、そんな半生を綴った一冊である。
 「スクープのためなら刑務所の塀の内側に落ちても悔いはない」、そう語る元木氏だからこそ、面白い紙面づくりができたのだろう。

 今では当たり前のように使われる「ヘア・ヌード」という言葉も元木氏が編集長時代に生まれたという。
 そんな裏話が面白い、回想記でもある。
  
(2021/12/03 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今年の3月、
  岩波書店が「岩波ジュニアスタートブックス」という
  新しいシリーズを立ち上げました。
  これは中学生を対象にした
  学習入門シリーズです。
  岩波書店には「岩波ジュニア新書」がありますが
  今回のシリーズはさらに年齢がさがります。
  ふたつのシリーズの違いは
  岩波書店のHPで確認できます。
  興味がある方はそちらをごらん下さい。
  今回、その新しい「ジュニスタ」(これが愛称です)から
  選んだのが、
  今日紹介する
  蟹江憲史さんの
  『SDGs入門 未来を変えるみんなのために』です。
  中学生に負けないよう、
  しっかり勉強します。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  私たちの未来は私たちの手で                   

 最近、スーツの襟のところに丸くていくつかの色に分かれたバッジをつけている人を多く見かけます。
 それがどうも気になって仕方がなかったのですが、社会ではそんなことはいつの間にか常識になっているようです。
 あのバッジこそ、SDGsへの参加・共感を示すものです。
 ならば、SDGsって何?
 そもそもこれはどう読むの? から始まります。
 SDGsは「エスディージーズ」と読みます。
 英語で「Sustainable Development Goals‘」、日本語で「持続可能な開発目標」となります。
 バッジの色で区分けされているように、この目標は17個あります。
 では、どんな目標があるのか。

 今、SDGsの入門書はたくさん書店に並んでいます。
 どの本から読むか、選んだのが2021年から岩波書店が中学生向けに新しい学びの場を提供する「岩波ジュニアスタートブックス」(通称ジュニスタ)の中の一冊としてラインアップされた本書。
 難しいことは学生向けのやさしい入門書から入るのが一番。
 ところが、決してそんなにやさしいという本ではありませんでした。

 そもそも今の子供たちは「持続可能な社会の創り手」としてSDGsに関する教育がさまざまな教科で教わるようになっています。
 だから、少しは素地があるわけです。
 ところが、そういうことを学んでこなかった世代にとって、なかなかピンとこないという学習ギャップが生まれています。
 「持続可能な社会」は若い人たちだけの問題ではありません。
 全世代の人が、ひとつでも目標達成に取り込むことが、未来のこの星を救うことになるのです。
  
(2021/12/02 投稿)

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