01/31/2022 春はもうすぐ - わたしの菜園日記

今週の金曜、4日は立春。
暦の上では春になります。
今、近所の街角を歩くと
冬から春に向けての
季節の便りのような花々を見つけることができます。
まずは臘梅。

ご近所散歩をしていて見つけて
ちょっと寄り道しないといけないのですが
毎年この時期を楽しみにしています。
臘梅を無口の花と想ひけり 山田 みづえ
次は、水仙。

水仙は春の季語と思いがちですが
臘梅と同じで
これも冬の季語。
水仙のひとかたまりの香とおもふ 黒田 杏子
そして、山茶花(さざんか)。

山茶花は咲く花よりも散つてゐる 細見 綾子
どれも春の花みたいですが
いずれも冬の季語。
ただ、もうすぐ春ですよと教えてくれる花々です。

ごらんのように冬景色。

これは遅まきのダイコンですが
やはりこの時期は成長はとまっています。



これから暖かくなれば
どんどんこんなわき芽も増えていくかな。
そういうことでは
これも春まぢかのサインを出す
野菜かもしれません。

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児童文学者の松岡享子さんが
25日に亡くなりました。
86歳でした。
松岡享子さんは
「くまのパディントン」や「うさこちゃん」のシリーズの翻訳などで知られる
児童文学者ですが
石井桃子さんらとともに
「東京子ども図書館」などで児童書の普及や
人材の育成に尽力もされました。
松岡享子さんを敬慕される人たちも
多いと思います。
今日は
追悼の思いを込めて
2015年に書いた
松岡享子さんの『子どもと本』を
再録書評で掲載します。
松岡享子さん
ありがとうございました。
ご冥福をお祈りします

著者の松岡享子さんについて、まず書こう。
略歴風に書けば、1935年神戸に生まれ、慶應義塾大学図書館学科を卒業後、米国留学で図書館先進国であった児童図書館について学び、米国の図書館勤務を経たのち帰国。その後、石井桃子らの家庭文庫の活動に共感し、東京子ども図書館を設立。以後、理事長として活躍。現在に至る、ということになろうか。
こういうつまらない紹介よりも、本書の第一章である「子どもと本とわたし」を読んでもらう方がずっといい。
その章の扉にこうある。
「幼い日に本のたのしみを知ったのが、幸せのはじまりでした」と。
松岡さんの人生は子どもの頃に出会った本から、ずっと本にかかわってきた、幸せの道だといえます。
もちろん、米国で最新の図書館事情を勉強してきた松岡さんにとって、まだまだ公共図書館や児童図書館が普及していなかった日本の図書館で働くことはつらいことも多かったと思いますが、それでもこの本に綴られている文章は、幸福感にあふれています。
松岡さんのこの幸福感は、本を読むうえでとても大切なことです。
なかなか本が読めない、読書が苦手だという人がいます。そんな人のために、松岡さんのこんな文章を贈ります。
「読書が習慣として根付くためには、本を読むことはたのしいことだという体験をもつ必要があります」。
松岡さんは「気がついたら好きだった」というくらい、子どもの頃から本好きだったようです。
きっかけは時になく、ただお父さんが本好きだった、家には本がたくさんあったということくらいだそうです。
自身のことを語りながら、第一章では子どもの読書の傾向も描かれています。
子どもたちが「読書が習慣として根付く」まで、ぜひ一緒に本を読んであげて下さい。
そして、「本を読むことはたのしいこと」だと、「気がついたら」そうであったといわせてみて下さい。
子どもと本だけでなく、その仲立ちにとても重要な役目を果たす図書館員のことも、この本にはたくさん描かれています。
「図書館員というのは、本を選ぶことで、いつか自分の選んだ本に出会う読者とつながっていく」「幸せな職業」と、松岡さんは書いています。
ここでも、「幸せ」という言葉が使われています。
やっぱり、幸福感にあふれているのです、この本は。
(2015/04/23 投稿)

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01/29/2022 「エレーン!」「ベーン!」 - 映画「卒業」の話

ルキノ・ヴィスコンティ監督の
「ベニスに死す」のお話をしましたが、
今日はもう少し古い映画を。
3月にはアメリカのアカデミー賞の発表があって
それで過去の受賞作を特集していたCSで
何年かぶりに観て
懐かしさでつい、
「エレーン!」「ベーン!」と叫びたくなった
1968年に日本で公開された
映画「卒業」の話です。

マイク・ニコルズ。
この映画でアカデミー賞監督賞を受賞しています。
なんといっても
主演のダスティン・ホフマンがいいですね。
21歳の優秀な大学生ベンジャミンを演じて、
そのダメさと純朴さはまさに青春期の青年そのもの。
アン・バンクロフト演じるミセス・ロビンソンの誘惑に負けて
毎夜逢瀬を重ねていきます。
アン・バンクロフトは1931年生まれですから
この映画の時はまだ30代後半。
しかも、すでにアカデミー賞主演女優賞を受賞していた名優で
彼女の名前の方が
メインになっています。

キャサリン・ロスが演じています。
この頃の彼女は作品にもめぐまれていましたが、
かわいいかったですよね。
そんな彼女がベンジャミンの前に現れて
彼はもうぞっこん。
でも、お母さんとの関係もあるし。
しかも、その関係もバレてしまって。
エレーンはとうとう別の男性と結婚させられてしまいます。

彼女の結婚式の式場の教会に現れたベンジャミン君。
ガラスの壁を叩いて、
「エレーン!」と絶叫します。
そして、彼女も「ベーン!」と返します。
花嫁強奪です。

欠かせないのが
サイモンとガーファンクルの名曲の数々。
「サウンド・オブ・サイレンス」とか「スカボロー・フェア」とか
1970年代を語るのに
彼らの楽曲は外せません。
でも、当時「パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム」なんて
言われても、
ハーブの名前だなんて知らなかったな。

今はCSとかネットで
勝手にリバイバルできて
なんとも幸せな時間です。

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太宰治が亡くなったのは
1948年ですから
すでに半世紀以上前のこと。
その彼と生前交流があった人たちも
多くは鬼籍にはいっていますが
ここに太宰治を知る女性がいます。
それがこの本の主人公、林聖子さん。
今日は
彼女を取材した森まゆみさんの
『聖子 新宿の文壇BAR「風紋」の女主人』を
紹介します。
私は林聖子さんのことは数年前に
太宰治を特集した雑誌で読んだことがありました。
いろんな名前が出てきて
面白いですよ。
じゃあ、読もう。

「聖子」といっても、松田聖子さんのことではない。
太宰治の小品『メリイクリスマス』に登場した若い女性のモデルといわれ、太宰の情死事件の際には太宰を慕った人たちとともに彼を探したという。
その後、出版社で働いたり、演劇を志したりし、やがて新宿に「風紋」というバーを経営することになる。
そこに彼女を慕う知識人や作家、映画人などが集まることになり、いつしか「文壇バー」と呼ばれるようになっていく。
彼女の名前は林聖子。昭和3年生まれ。
伝説の「文壇バー」は2018年に閉店しているが、聖子さんが見たり聞いたさまを残しておきたいと、作家森まゆみが取材した、本書はその記録である。
聖子さんの個人史というより、彼女のまわりの時代を生きた人々の記録といえる。
まず、聖子さんの父はアナキスト大杉栄らと交流のあった洋画家林倭衛(しずえ)。本書の前半ではこの父を中心とした明治から大正にかけての画家や思想家が語られる。
後半は太宰から始まる。その後、聖子さんが交流をなす勅使河原宏や檀一雄、高田宏、中上健次といった有名な名前が次々と出てくる。
面白いのは、彼らを語る聖子さんの語りが実にさらりとしていることだ。
聖子さんにとって、どんな有名な人であっても、それを特段もてはやすことはなかったのだろう。
聖子さんが長くバーを営んでこれたのも、そういう人柄だったからに違いない。
そっと目を閉じれば、人に語れないほどの思い出が聖子さんにはあっただろうが。
(2022/01/28 投稿)

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01/27/2022 疼くひと(松井 久子):書評「疼くのは、どこ?」

今日は話題の書、
松井久子さんの『疼くひと』を
紹介します。
何が話題かというと
この小説で描かれるのは
高齢者の性愛だからです。
ここでは70歳の女性の性愛が描かれています。
そういう設定そのものを毛嫌いする人もいるでしょうし、
よくぞ書いてくれたと拍手する人もいると
思います。
なかなか語りにくいと思いますが、
人生100年時代なんだから
70歳の性愛も
ちっとも不思議ではないのかもしれません。
まずは、自身で読んでみること、かな。
じゃあ、読もう。

「疼(うず)く」というのは、『広辞苑』によれば「ずきずき痛む」とある。
この作品でいえば、「ずきずき痛む」のは女性器なのか、それとも心なのか。
70歳の女性の性愛(ずばりセックス)を描いて話題となっている作品を読み終わって、読者にとっての疼いているのは自身の想像力かもしれない。
作者の松井久子さんは1946年生まれの映像クリエーター。つまり、物語の主人公である燿子さんが70歳であるから、松井さんはすでにその年を過ぎている。
ならば、この小説は松井さんの体験に基づくものかと考えるのはあまりにも俗すぎる。
松井さんは、自分たち団塊世代は「身体感覚」に長い間蓋をしたままだったといい、だからこそ今「老い」と「セクシュアリティ」の難題に挑んだという。
主人公の燿子は70歳になるシナリオライター。別れた夫との間に娘が一人いて、その娘も結婚して子供がいる。
そんな燿子にある日、ファンを名乗る55歳の男からSNSでメールが入る。
このことをきっかけにして、2人は頻繁にメールを交換し合うことになる。
ついには、東京での会うことになり、体を重ねていく。
ぎこちなかった性愛が邂逅を重ねていくことで高まっていく。
その場面だけ読めば、70歳の女性と60歳前の男性の性愛とは思えない。
これはファンタジーだろうか。
それがわかるのは、作者の松井さんたちの世代だろう。
若い読者にとって、自身の想像力が「ずきずき痛む」のではないだろうか。
(2022/01/27 投稿)

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01/26/2022 泣きかたをわすれていた(落合 恵子):書評「人生は一冊の本」

今日は
落合恵子さんの『泣きかたをわすれていた』を
紹介します。
落合恵子さんといえば
児童書専門店「クレヨンハウス」の主宰ですから
この小説の中でも
絵本の名作がいくつか登場します。
『はなのすきなうし』『ルピナスさん』『オレゴンの旅』など。
書評に書いた小説の終わり近くに書かれた文章を
もう少し書きとめておきましょう。
ひとは誰でも平凡な、
けれどひとつとして同じものはない本を一冊残して、
そして死んでいく。
書店にも図書館にも、
誰かの書棚にも古書店にも置かれることはない。
なんか、胸にジンときました。
じゃあ、読もう。

この小説の作者落合恵子さんは1945年生まれ。ラジオの人気パーソナリティでしたが、30歳を前に退社して、その後作家活動に入るとともに1976年児童書専門店「クレヨンハウス」を立ち上げます。
自身婚外子であり、母の介護をしつつ、その母を見送りました。
と、作者の経歴をたとえば、この小説の主人公である冬子さんのそれと重なることが多く、これは「私小説」かと思われそうですが、決してそうではないのだろう、落合さんは冬子さんの日常に仮託して自身を語っているに違いありません。
あるいは、物語の冬子さんが作者の落合さんを巧みに利用しているともいえます。
物語の前半では母親の介護にあたふたする姿が描かれます。認知が始まった母が排便をうまくできず、それを処置する冬子さん。母の面倒を見る肉親が自分だけという環境の中で、冬子さんは母より先に死ぬことはできないと決意しています。
母の死をはさんで、後半では子どもの本の専門店を営む冬子さん自身の老いを見つめることになります。
密かな恋人であった男性の死、次々とやってくる女友達の死。
老いは死とつながっていきます。
72歳となった冬子さんは改めて自身の年齢と向かい合うことになります。
「若いと呼ばれる年齢にいた頃、気が遠くなるほどの長編と思えた人生という本は実際には、驚くほど短編だったということ」に気づきます。
この文章が書かれた終盤の数行は、老いを迎える人にとって、心に染みてくるものでしょう。
その数行を読むだけでも、この作品を読んでよかったと思えました。
(2022/01/26 投稿)

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01/25/2022 東映任侠映画120本斬り(山根 貞男):書評「今観ても面白い作品が多い」

年が明けてから
BSで高倉健さん主演の「昭和残侠伝」シリーズを
何本か観る機会がありました。
高倉健さんの背中に唐獅子牡丹が彫られた作品、
主題歌はもちろん
高倉健さんが唄う「唐獅子牡丹」。
映画を観終わって
ふと気が付くと私もその歌を口ずさんでいたりして。
そんなときに読んだのが
今日紹介する
山根貞男さんの『東映任侠映画120本斬り』。
東映の作品は
なかなか無料のBSでは観ることはないのですが
レンタルなんかで
作品を探すのにこの本は
きっと役立ちます。
じゃあ、読もう。

昔「やくざ映画」を観終わった観客は、みな健さん(高倉健のこと)になった気分で映画館を出ていったという話をよく聞きます。(この本では「任侠映画」となっていますが、当時は「やくざ映画」といったものです)
「昔」というのはいつの頃からいうと、1960年代後半から70年代にかけての高度成長まっただ中の時代です。
何故その時代に「任侠映画」が多くのファンを集めたか、この本の著者の映画評論家の山根貞男さんは「任侠映画の反時代性こそが、経済成長の波の底であくせくと働く人々にとっては魅力的なものであった」と分析しています。
この本ではほぼ10年にわたる「任侠映画」の歴史を三つの区分に分けています。
「興隆期」(1963年~1967年)、「絶頂期」(1968年~1970年)、そして「転換期」(1971年~1974年)です。
この本で紹介されている180本の映画の最後は1974年公開の「まむしの兄弟 二人合わせて30犯」ですが、この作品で主演を演じた菅原文太さんの「仁義なき戦い」シリーズは紹介されていません。
つまり、「任侠映画」というジャンルではないということかもしれません。
180本の映画を追いかけると、やはり鶴田浩二さんと高倉健さんの二枚看板の存在が大きいといえます。それと藤純子さん。
彼女が結婚を機に引退をすることになった1972年の「関東緋桜一家」あたりが「任侠映画」の潮目の変わり目だったのでしょう。
今でも「任侠映画」を観ることがあります。この本がそばにあれば、鑑賞の手引きになるのは間違いありません。
まさに「ご一緒させてもらいます」の気分です。
(2022/01/25 投稿)

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01/24/2022 冬日が続きます - わたしの菜園日記

一日の最低気温が0℃未満になった日のことをいいます。
ここしばらく埼玉でも「冬日」が続いています。

一方、俳句の世界では
「寒気の中の輝かしい冬の太陽」をいいますから
少し使い方が違います。
昼過ぎのやや頼もしき冬日かな 岩田 由美
この俳句のように
朝0℃を下回った日などは
畑に出るのも昼過ぎということになります。

畑では冬越野菜に追肥をします。
先日の土曜日(1月22日)、
イチゴに追肥をして
黒マルチを被せました。

イチゴは寒い時期に寒気にあて
春が近づくとマルチで温かくしてあげます。
そうすることで目覚めがよくなります。

これは成長してきたソラマメ。
奥に見えるのがスナップエンドウ。

防虫ネットをはずして
追肥をしてから
支柱を立てていきます。

そのあと、風よけでネットで囲みをこしらえます。

このように
もうしばらく寒い日が続きますが、
春のための準備を始めていきます。


この寒さでやはりニンジンの成長もとまって
すべて一口サイズになってしまいました。
ニンジンをすべて収穫して
その畝は寒起こしして
春からの栽培に備えます。
ひとつの区画は
借りている会社で決められた栽培計画がありますが
もうひとつは自由区画なので
自分で栽培計画を決めないといけません。
さて、何にしようか。
そんなことを考えるのも
楽しみのひとつです。

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今日は
おなじみジョン・クラッセンさん作、
長谷川義史さん訳による絵本
『そらからおちてきてん』を紹介します。
いつも思うのですが
クラッセンさんの絵本に
長谷川義史さんの大阪弁の翻訳を思いついたのは
誰なんでしょうね。
編集者なのか、長谷川義史さんからの提案なのか。
随分絵本の雰囲気を変えたと思います。
今日の書評は
敬意を表して
全文大阪弁にしました。
おもろいですよ。
じゃあ、読もう。

今度のクラッセン、SFでっせ。
怖いんか?
そりゃ、空から落ちてくるから怖いに決まってるがな。
何が落ちてくるんや?
あほかいな、それゆったら(言ったら)おもろないやろ。でも、ゆいたいな。ゆうたろか。でも、ゆうたらあかんな、やっぱ。空から落ちてくるもん、ゆわれんけど、ものすごい怪物出てくるねんで。一つ目や。しかも、その目ン玉から火、出すんやで。な、怖いやろ。SFやろ。
そりゃ怖いな。で、誰が出てくるんや?
ガンコなカメや。それと、おしゃべりなアルマジロに無口なヘビ。
なんやけったいな登場人物やな。
何しろクラッセンやからな。みんな、かわいい帽子、頭にかぶってるんやで。
でも、SFなんやろ。
そや、SFや、空から落ちてくるんやから、でっかい…おっと、ゆいそうになったやないか。
で、なんでこの文章、大阪弁なんや?
そりゃ、この絵本もまた、長谷川義史さんの大阪弁の翻訳やからに決まってるがな。
思うんやけど、クラッセンの絵本がもし、もしやで、長谷川さんの大阪弁でなかったら、だいぶ雰囲気が違うやろな。
そやで、クラッセンの絵本が日本で楽しめるのは、大阪弁の力が大きいのとちゃうか。
ほんまやな。でも、原文はどんなんやろな。
この絵本の原題が「THE ROCK FROM THE SKY」からだいぶ雰囲気が違う。
「THE ROCK」って?!
しもた! 答え、ゆうてしもた。
(2022/01/23 投稿)

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01/22/2022 世界で一番美しい少年は同世代でした - 映画「ベニスに死す」の話

昨年(2021年)で50年ということで
話題になった映画。
それがルキノ・ヴィスコンティ監督の
「ベニスに死す」。
1971年といえば
映画に夢中になっていた時期ですから
もちろんこの映画のことも知っていたのですが
公開時には観ていませんでした。
今回半世紀ぶりに観ましたが、
もしかしたら16歳の少年(私のこと)には
主人公の初老の男の心情は理解できなかったかも。
ということで
今日は映画「ベニスに死す」の話を。

当時「世界で一番美しい少年」と称賛された少年
ビョルン・アンドレセンさんでしょう。
この時彼は15歳。
調べると、1955年の1月26日生まれといいますから
もうすぐ67歳の誕生日を迎えます。
なんと、私とぴったり同世代。
最近でこそ「イケメン」な若い人はたくさんいますが
50年前にはそんなにいなかった。
だから、彼に夢中になった人も多かったかも。

静養のためにベニスを訪れて、
この美少年と出会います。
しかし、そのベニスでは感染病が広がっていて
男も感染して死んでいくのですが
死を予感し髪を染め上げた男が
死を前にして髪染めの墨が流れてくる場面は
すごさを感じます。
ここで描かれているのは
老いと若さの対比。
それは醜と美の対比でもあります。
もちろん、老い(醜)がボガードで
若さ(美)がアンドレセンです。
ボガードはこの映画の時はまだ50歳でした。
それから半世紀経って
アンドレセンがすでにその年を越えているというのも
感慨深いものがあります。

映画に使われていた音楽。
グスタフ・マーラーです。
この映画をきっかけにして
マーラーの音楽を聴きなおす人が増えたとか。

1972年の「キネマ旬報」のベストテンで1位になるなど
評価も高かった。
それから半世紀、
世界はまるでこの映画に描かれたような
感染拡に襲われています。
もしかしたら今が
この映画を再見するいい機会かもしれません。

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01/21/2022 実朝の首(葉室 麟):書評「葉室麟さんが推理した実朝暗殺の真犯人とは」

葉室麟さんが亡くなって
4年以上経って
新しい作品はもう読めないのですが
未読の作品もあります。
その一つが
今日紹介する『実朝の首』。
NHK大河ドラマが北条義時を主人公にしているので
読む時期には
まさにぴったり。
おそらくドラマの後半で
源実朝も登場するでしょうから
そのあたりを楽しみにして
読むのにもいい。
ましてや
葉室麟さんの作品ですから
いうことなし。
じゃあ、読もう。

2017年12月に66歳で急逝した作家葉室麟さんは作家デビューが50歳を過ぎてからということもあって、まるで駿馬の如く書きに書き、そして風のように逝った気がする。
その執筆活動を辿ると、2005年に『乾山晩愁』で歴史文学賞を受賞し、2007年に『銀漢の賦』で第14回松本清張賞を受賞。『蜩ノ記』で直木賞を受賞した2012年以降、旺盛な執筆が続くことになる。
鎌倉幕府の三代将軍源実朝の暗殺事件がもたらした政治の混乱を描いた本作は、2007年5月に出版された歴史長編だから、葉室さんの作品の中でも初期に分類されるものだ。
のちの葉室文学の魅力となる人の心と心の関わりの切なさはまだそれほど実感できるものではないが、公暁に暗殺され、その首を奪った弥源太という美少年の存在は葉室さんが初期の頃から虐げられてきた人物の心を描いてきた証といえる。
これは実際に起こった実朝暗殺をめぐる歴史小説で、北条政子や義時を中心とした当時の鎌倉幕府のありようを実によく勉強しているように思えた。
実朝の暗殺を甥の公暁に持ち掛けたのは誰なのか、それは歴史上のミステリでもあるが、周辺の関係を整理することで、葉室さんなりの目星をつけたのだろう。
実朝の暗殺からあまり時を経ずして、承久の乱が起こることも考えれば、葉室さんの推理もそんなに的はずれではない。
葉室さんの初期作品ではあるが、歴史の事実や伝をうまく積み重ねた、面白い作品に仕上がっている。
(2022/01/21 投稿)

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01/20/2022 皆のあらばしり(乗代 雄介):書評「騙すこと騙されること」

今日は二十四節気のひとつ、
大寒。
「歳時記」を開いてみると
こんな句を見つけました。
大寒の埃の如く人死ぬる 高浜 虚子
どんな場面の句なのか知りませんが
なんだかオミクロン株が爆発的に広がっている
まるで今の世みたい。
昨日は
第166回芥川賞直木賞が発表されました。
芥川賞が砂川文次さんの『ブラックボックス』、
直木賞は今村翔吾さんの『塞王の楯』と米澤穂信さんの『黒牢城』。
おめでとうございます。
今日は
受賞には至りませんでしたが
芥川賞候補作だった
乗代雄介さんの『皆のあらばしり』を
紹介します。
乗代雄介さん、次を期待しています。
じゃあ、読もう。

第166回芥川賞候補作。
人はどうして本を読むのだろうか。
何事かを学ぶためであったり、自身の知らない世界を楽しむためであったりだろう。
あるいは、純粋に娯楽として読むこともあるだろう。
それらを大きくまとめるなら、知的好奇心を満足させるためといっていいかもしれない。(知的ではないこともあったとしても)
『旅する練習』で三島由紀夫賞を受賞した乗代雄介さんの受賞後第一作となった本作は、まさに知的好奇心をテーマとした作品といっていい。
舞台は栃木県にある皆川城。(ここは実際に存在する)
歴史研究部に所属する高校生の「ぼく」は、そこで見知らぬ男と出会う。
大阪弁を話すこの男は、妙に訳知りで、何故かこの土地の歴史にも詳しい。
毒気を抜かれた「ぼく」は、男の言われるままに、江戸時代後期の豪商小津久足(この人物も実際に存在する)が書いたとされる『皆のあらばしり』という本を探索することになる。
物語は、この謎の本の存在をめぐっての、「ぼく」と男との奇妙な駆け引きで進んでいく。
果たしてこの本は「幻の書」なのか、あるいは「偽書」なのか。
もっといえば、ここで語られることは作者である乗代さんの作為なのか。
どこまではが真実で、どこまでが虚構(創作)なのかわからないまま、物語は終焉に近づく。
結局、多くのことがわからない。
「騙すということは、騙されていることに気付いていない人間の相手をするということ」は、終わりにある男の独白だが、読者もまた騙されたのだろうか。
(2022/01/20 投稿)

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01/19/2022 鬼神の如く 黒田叛臣伝(葉室 麟):再読書評「葉室麟さんが書きたかった作品にちがいない」

書評の冒頭にも書きましたが
葉室麟さんが亡くなって
もう4年が経ちました。
久しぶりに葉室麟さんの作品を読みたく
選んだのが今日紹介する
『鬼神の如く 黒田叛臣伝』です。
単行本として出た
2015年の10月31日にはこのブログに
書評を載せています。
その時の書評の終わりに
「おそらくこの作品は葉室麟の作品の中にあっても
重要な位置をしめる作品になることは間違いない。」と
書いています。
なかなかうまい読みでしたね。
今日は再読書評で
新たに書いたものです。
じゃあ、読もう。

葉室麟さんが亡くなったのが2017年12月ですから、すでに4年経ちました。
葉室さんの作家としての活動は50歳の時からだといわれていますから、亡くなるまでのわずか16年の期間しかありません。
それでも精力的に書かれてきたので、没後も読者は葉室さんの世界を楽しむことができます。
本作は2015年8月に発表された歴史小説で、翌年第20回司馬遼太郎賞を受賞しています。
歴史小説ですから、歴史上実際にあった事件が題材となっています。
それが伊達騒動、加賀騒動と並んで三大お家騒動にあげられる黒田騒動です。
舞台となるのは三代将軍家光の世、黒田長政の子忠行が藩主となった福岡藩家老栗山大膳がお家改易を守るために暗躍した事件を扱っています。
物語には大膳を助ける杖術を使う二人の若い男女が登場します。
この二人を描くことで大膳の人間としての大きさの輪郭が明確になっています。そのあたりが葉室さんの創作の巧さです。
さらに、この黒田騒動に1637年に起こった島原の乱をからめていくことで、世界がさらに広がります。
物語の中では大膳があたかも乱を仕掛けたようにも描かれていて、天草四郎の登場などやや創作めき過ぎて、もう少し枝葉を刈った方がすっきりしたようにも感じました。
ただ福岡県小倉出身の葉室さんとしては、どうしても書いておきたい題材だったに違いありません。
そんな執念を感じる作品でもあります。
(2022/01/19 投稿)

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01/18/2022 頼朝の武士団(細川 重雄):書評「大河ドラマのお供に」

三谷幸喜さん脚本の
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」始まりましたね。
さっそく政子役の小池栄子さん大活躍ですが
新垣結衣さん演じる八重という女性、
てっきり三谷幸喜さんの創作かと思ったら
違うんですね。
ちゃんと実在する。
第一回めと殺されてしまう頼朝の子も
実際にいたそうです。
今日紹介する
細川重男さんの
『頼朝の武士団』にも出てきます。
ちなみにこの本には
「鎌倉殿・御家人たちと本拠地「鎌倉」」という
長い副題がついています。
じゃあ、読もう。

今年(2022年)のNHK大河ドラマが三谷幸喜さん脚本の「鎌倉殿の13人」ということもあって、書店には北条義時や鎌倉幕府の関連書がたくさん出回っている。
この本も2021年11月刊行だから、そのブームに乗っかった企画だろうが、実はこの本には元本が存在する。
それが2012年に洋泉社という出版社から「歴史新書」の一冊として出たもの。400ページ余りあるこの本の、250ページあたりまでがそれに該当する。
そのあと、頼朝が亡くなったあとのつまりは北条政子と義時の時代を描いたものが今回追記され、全体として鎌倉幕府成立から承久の乱あたりまでがまとめられている。
この作品では「頼朝と御家人たちや、御家人たち同志が、どのような関係であったのか」が主として書かれている。
三谷幸喜さんのドラマでも現代語ぽい言葉が使われて話題となっているが、この本でも頼朝たちの言葉が現代語のやんちゃな風に置きかわっていて、真面目な読者なら眉をひそめそうだ。
しかし、当たり前だが誰も見たこともない何百年も前の世界をわかりやすく理解しようとすればそういう書き方もアリのような気がする。
そもそも、この当時の人物の名前にしたって覚えにくい。
頼朝、頼家、実朝まではいいとして、北条は時政、時房、義時、泰時と同じような名前が続いてわかりにくい。
ましてや、鎌倉殿の13人ともなれば。
この本にはさまざまな系図も付録としてついているから、大河ドラマを見るのに役立つやもしれない。
(2022/01/18 投稿)

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01/17/2022 堆肥も作ります - わたしの菜園日記

1995年1月17日、
阪神淡路大震災のあった日です。
この時、私は大阪豊中で暮らしていました。
ちょうどその日、
東京出張の予定だったことをよく覚えています。
歩いて会社に出て、
実はそこで初めて神戸の被害の大きさを知りました。
確か家は停電していたのではないかしら。
もちろん、出張なんてできません。
あの日から27年。
今でも多くのことが記憶に残っています。
そのあとにも東日本大震災などを経験してきた私たち。
きっとコロナ禍も乗り切れるはずです。
がんばろう! と声を掛け合った日々を
忘れないようにしたいですね。

畑仕事もさすがにあまりありません。
これはハクサイを育てていた畝を
寒起こしした様子。

ネット越しに見えるのは
祝蕾です。


この時期一部の葉が枯れてきたりします。
こういう寒い日を
イチゴは静かに眠っています。
イチゴそのものは春のイメージがありますが
夏の季語です。
ただ「歳時記」に「冬苺」という季語もあります。
あるときは雨粛々と冬いちご 飯田 蛇笏
この「冬苺」は自生のものをいうようで
畑のこの時期のものを指してはいません。


実はこれは野菜のくずであったり残菜を集めて
堆肥をつくっています。
これらがやがて土に戻っていくのですから
自然の力って不思議ですよね。
まだ野菜の形を残しているので
堆肥になるのは来年の春頃でしょうか。
寒さの中で春を待つ野菜、
時間をかけて土に戻ろうという野菜、
そんな野菜の力に励まされます。

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01/16/2022 ほんやねこ(石川 えりこ):書評「こんな本屋さんがあればな」

コロナ禍になって
本屋さんに行く回数も少なくなりました。
なので
時々読みたい本を見過ごしたりします。
それでも
1、2週間に一度は大きな本屋さんで
定点観測? するようにしています。
今日は
石川えりこさんの『ほんやねこ』という
絵本を紹介します。
絵本の場合は作者で選ぶことが多い。
石川えりこさんもお気に入りの絵本作家です。
それに本屋とかほんやといった
タイトルに弱い。
思わず手にとって
覗いてみたくなる。
この絵本にでてくる本屋さんも素敵ですよ。
じゃあ、読もう。

絵本作家の鈴木まもるさんが、子供と一緒に本を読む距離についてこんなことを話していました。
「読み聞かせというのもいいですが、できたら子供とは自分の膝の上に座らせてお腹で抱きかかえるようにして読んであげたいものです」と。
石川えりこさんが描いたこの絵本を読みながら、そういえばねこっていうのは飼い主の懐にすっと忍びこんでくる動物ではないか、そして、それは子供と一緒に本を読む距離によく似ている。
つまり、ねこと本はとっても相性がいいように感じました。
海が見えるとっても住みやすそうな町の片隅に、ねこの本屋さんがありました。
らせん状の大きな階段に、壁いっぱいに本が並んでいて、ちいさな子供のお客さんにも人気がありそうな、そんな本屋さん。
ある日、散歩日和だったので、早くに店じまいして、ねこは出かけていきます。でも、たった一か所戸締りを忘れてしまいました。
なので、風が吹いて、本の中から登場人物たちが飛ばされてしまうのです。
ピノキオ、シンデレラ、長靴をはいた猫、チルチルとミチル、ラプンツェル、といった子供たちにもおなじみの登場人物たちです。
ねこは迷子になった彼らを順番に探していきます。
こんなお話って、まるで夢のようです。
お父さんやお母さんの膝の上で一緒に読んだら、いつの間にか眠ってしまいそう。
そして。夢でピノキオたちと遊べそうです。
もちろん、ほんやねこも一緒に。
(2022/01/16 投稿)

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01/15/2022 読んでから見るか、見てから読むか - 映画「浅田家!」の話

このキャッチコピーを懐かしいと思う人も
今ではもう60歳を超えているのではないでしょうか。
というのも、
このキャッチコピーは
1977年(昭和52年)に公開された「人間の証明」(佐藤純彌監督)の時のもの。
いわゆる角川映画隆盛のきっかけになりました。
でも、このコピーは今でも十分使えて、
今日紹介する
映画「浅田家!」もまさにこのコピー通り。
昨日このブログで
この映画の原案となった写真集『浅田家』を紹介して
ブログでは「読んでから見る」となりましたが、
実際には映画「浅田家!」を観て
面白そうだから本を探した
「見てから読む」パターンでした。
そこで、今日は映画「浅田家!」の話を。

2020年10月に公開された中野量太監督作品。
主人公の写真家浅田政志を演じるのが二宮和也さんということもあって
まず映画を観た人も多かったのでは。
映画を観ると
あの写真集が出版されるまでの経緯なんかがよくわかります。
浅田家の家族を演じたのは、
父親に平田満さん、母親に風吹ジュンさん、
お兄さんに妻夫木聡さん、
政志さんの恋人に黒木華さん。
黒木華さんはこの作品の演技で
日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞しています。
私は母親役の風吹ジュンさんがよかったな。
今の日本映画でこのあたりの年頃(シニアにはいったあたり)を演じれる
最高の女優さんだと思っているのですが。

後半は東日本大震災時の被害にあった写真を復活させる活動を描いています。
それらを通じて
家族というものを見つめた良質の作品になっています。

好きな俳優さんが出ているからでいいと思います。
もし、そこに少しでも感動があれば
もう少し前に進んでみる。
同じ監督さんの作品を探してみる。
例えば中野量太監督でいえば
宮沢りえさん主演の「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016年)という
いい映画もあります。
あるいは、原案となった写真集を探してみる、といったように。


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01/14/2022 浅田家(浅田 政志):書評「家族っていいなぁ」

今日は
浅田政志さんの『浅田家』という写真集の
紹介です。
写真集の紹介って珍しいですよね。
きっかけは
中野量太監督の映画「浅田家!」が
とても面白かったので
その原案となった写真集を
見てみたかったことから。
この写真集は
もしかしたら映画以上にインパクトがあるから。
何故なら、
写真を見ながら
どんどん自分の世界を想像できるから。
映画を観た人なら
絶対ハマる写真集です。
明日はその映画「浅田家!」のお話を。
じゃあ、読もう。

これは2020年秋に公開された、二宮和也さん主演の映画「浅田家!」(中野量太監督)の原案となった写真集です。
映画を観た読者なら表紙の消防士姿の4人が写真家浅田政志さん一家(両親と兄と自分)だとわかるはず、
この写真集は、基本、この「浅田家」の家族のさまざまな姿を撮ったもの。
2008年7月に出版され、その翌年この写真集で第34回 木村伊兵衛賞を受賞しています。
おそらくこの写真集を見た読者は、まずは笑い転げるのではないでしょうか。
映画「男はつらいよ」のおじちゃんの名セリフではないですが、「馬鹿だねぇ」とこぼしたくなるかもしれません。
そして、「家族」って何だろうと、ちょっと真剣に首をかしげるような気がします。
消防士になったり、ラーメン屋になったり、黒づくめの泥棒になったり、やくざの一家に扮したり、レーサーになったり、果てには遺体を取り囲む家族にまでなったりする「浅田家」。
こんなバカなことをしながら、彼らはどうしてこんなに楽しそうなんでしょう。
この写真集のおわりに浅田政志さんはこんな言葉を綴っています。
「僕の写真は記念写真です。(略)それは自ら記念をつくっていく記念写真です。待っていてもなかなか来ない記念日を、写真を通じてつくりあげていく。」
記念日が嫌いな人は少ないのではないでしょうか。
「浅田家」の人たちにとって、消防士になったりやくざの一家になることが記念日だったとすれば、やっぱり楽しい瞬間だったにちがいありません。
(2022/01/14 投稿)

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ここ何年か
読書について気になっていることがあります。
それが「再読」です。
新しい本が次から次にでる現在、
しかも今までに読む機会のなかった本もたくさんあって
ついそれらを読むことに目がいきます。
でも、本棚には
読んできた本がたくさんあって
それらを「再読」することがなかなかできません。
これからの読書は
新しい本だけでなく「再読」もしていくのがいいのか
ずっと気になっています。
今日は
池澤夏樹さん編の
『わたしのなつかしい一冊』を紹介します。
また、新しく読みたい本が増えてしまいそう。
じゃあ、読もう。

毎日新聞の「今週の本棚」は亡くなった丸谷才一さんが尽力した有名な書評欄だ。
そこに2020年4月から翌年の4月までに掲載されていたものを本としてまとめたもの。
「なつかしい一冊」というコラムを提案したのが、この本で編者となっている池澤夏樹さんで、池澤さんによれば「本当によい読書の記憶は「昔」にある」ということになる。
「若い時に読んだものほど心の深層に定位していて、折に触れて浮上してくる。」、なので「そういう体験を語ってもらいたい」というのが、池澤さんのねらい。
この本で紹介されている50人の人たちは、池澤さんの期待に十分応えている。
どんな人がどんな本の「体験」を語っているのか。
益田ミリさんが『窓ぎわのトットちゃん』、小川洋子さんが『ヴェニスに死す』、中島京子さんが『赤頭巾ちゃん気をつけて』、落合恵子さんが『はなのすきなうし』、川本三郎さんが『飛ぶ教室』、永江朗さんが『自動車の社会的費用』(永江さんが選んだ本が一番意外だった)といったように、意外な一冊をあげる人もいれば、その人らしい本を語る人もいる。
これはその人にとっての大切な読書体験を綴ったコラムでもあるが、読書ガイドとしても有効だ。
それに忘れてならないのが、寄藤文平さんの絵。
この本を手にするきっかけにもなったほど。
池澤さんは「まえがき」の中で「そんなに劇的でなくて懐かしさだけでも再会・再読は試みるに値する。」と書いている。
自身の「なつかしい一冊」を見つけてみないか、そう呼びかけられている気がした。
(2022/01/13 投稿)

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01/12/2022 死者のあやまち(アガサ・クリスティー):書評「タイトルに犯人のヒントが」

今年もアガサ・クリスティーの作品は
毎月読んでいこうと思っています。
今日は、今年最初のアガサ・クリスティーです。
『死者のあやまち』。
文庫本で100冊近いアガサ・クリスティーですが、
今まで紹介したのは
そのうちの40冊。
うまくいけば、今年中に50冊いきますが
それでもまだ半分。
先は長い。
この作品の評価は
霜月蒼さんの『アガサ・クリスティー完全攻略』によれば
★★★☆と
まずまず。
ぜひ、このタイトルのヒントに挑戦してみて下さい。
じゃあ、読もう。

1956年に発表された、「ポアロもの」と呼ばれる長編小説では後期に属する作品である。
エルキュール・ポアロが初登場した『スタイルズ荘の怪事件』が1920年の発表だから、すでに長い間ポアロを書いてきている。
原題が「Dead Man‘sFolly」で、「Folly」に「愚か」という意味があるから日本語のタイトルも大きくは違わない。
最初このタイトルの意味がよくわからなかった。
読み終わって(すなわち殺人事件の犯人がわかった後)、このタイトルの意味がよくわかった。なんと、このタイトルには犯人解明のヒントが入っているのだ。
これから読み人は、そういう点を忘れずに読むと、もしかしたら犯人に行き着くかもしれない。
事件の発端はポアロのもとに旧知の推理作家オリヴァから自分の作ったイベント向けの犯人探しゲームがしっくりしないという援けを求める連絡が届く。
ポアロはさっそくその現場となる田舎の大邸宅に出かけるのだが、出てくる人物たちはそんなに怪しいということではない。
しかし、ゲームの最中に参加していた少女が殺されてしまう。
誰が、いつ、何故、少女を殺害したのか?
犯人探しのミステリーも面白いが、推理作家のオリヴァのキャラクターも興味をひく。
「作家が人から、自分の仕事にあれこれとくちばしをいれられるなんて、とても我慢できない」、これはオリヴァの言葉だが、作者であるアガサ・クリスティーのぼやきのようにも聞こえる。
そういう箇所が何か所もあって、そういう読み方も楽しめる作品に仕上がっている。
(2022/01/12 投稿)

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01/11/2022 二人の映画人の死 - 青春はほろ苦く

2人の映画人の逝去が報じられました。

シドニー・ポアチエさん。
1月6日に亡くなりました。94歳でした。
ポアチエさんがアカデミー賞男優賞を受賞したのは
1963年公開の「野のユリ」。
この作品を私は観ていないのですが、
私にとってのポアチエ作品はなんといっても
「夜の大捜査線」(1967年)です。
人種差別のきつい町に配属された黒人刑事役がポアチエさん。
その相棒役はロッド・スタイガー。
この作品はアカデミー賞作品賞を受賞していますから
作品としても出来がよかった。
その後、ポアチエさんは監督をしたりしていますが、
やはり最も活躍したのは60年代後半から70年にかけて。
私が映画に熱中していた頃です。

もう一人の映画人はピーター・ボグダノヴィッチ監督。
シドニー・ポアチエさんより新聞の訃報の扱いは小さかったですが
私にはとても思い出深い監督でした。
亡くなったのはシドニー・ポアチエさんと同じ1月6日。82歳でした。
思い出深い監督というのは
1本の記憶に残る映画を作ってくれた監督だったから。
その映画が1972年公開の「ラスト・ショー」。
当時すでに珍しくなりつつあった白黒映画で
私は試写会で観たように思います。
観たのが17歳の青春期の時であったこともあって
今でも忘れられない作品です。

その少年が逢瀬を重ねることになる高校教師の妻役をクロリス・リーチマンが演じ、
この年のアカデミー賞助演女優賞を受賞。
少年たちが出入りする映画館の館主役にベン・ジョンソン。
彼もこの演技でアカデミー賞助演男優賞を受賞しています。
それになんといっても鮮烈だったのは
少年たちの憧れだった少女を演じた
シビル・シェパード。
閉じていく映画館とともに
少年たちの青春も終わりをつげていきます。
17歳だった私も
いつか青春も終わるのだと切なかった。
青春ってほろ苦い。

ピーター・ボグダノヴィッチ監督は
当時10歳のテータム・オニールがアカデミー賞助演女優賞を受賞する
「ペーパー・ムーン」(1973年)を監督するなど
実力人気ともに70年代を代表する監督でした。
2人の映画人の
ご冥福をお祈りします
いい映画をありがとうございました。

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01/10/2022 鍬始 - わたしの菜園日記(1月9日)

予報以上に積もってあわてました。
限りなく降る雪何をもたらすや 西東 三鬼

写真はその頃の家の近くの様子。
夜には雪もやみましたが、
次の日の朝
そろりそろりと滑らないようにして
畑に行ってみました。


畑を始めた最初の頃にも大雪があって
その時は
雪の重みでへちゃげたビニール栽培の畝をみて
あわてたものですが
さすがに何度も経験していると
上に積もった雪を払ってあげたら
もとに戻ることもわかって
大雪にも慣れました。



そして、これはなんだかわかりますか。

少し葉を出していますが
さすがにここまで埋もれるとわかりません。
これはタマネギの畝。
でも、昨日の日曜に畑に行くと
雪もすっかり解けていました。

タマネギも大丈夫。
今回はまだ全部の畝で栽培途中なので
畝間だけ寒起こしをしました。
ねむる田にひと声かけて鍬始 能村 登四郎

今年初めての収穫です。

ホウレンソウとかニンジンがありますが
やはりこの時期はなかなか成長しません。

またコロナが再拡大してきましたが、
新成人たちに明るい未来がきますように。
足袋きよく成人の日の父たらむ 能村 登四郎

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01/09/2022 デリバリーぶた(加藤休ミ):書評「完食間違いなしの絵本」

七草粥も終わって
お正月の気分もそろそろ終わった頃。
今日は
久しぶりに加藤休ミさんの絵本です。
『デリバリーぶた』。
タイトルだけだと
加藤休ミさんのおいしそうな食べ物の絵が見れないようですが
大丈夫、
ちゃんとたくさん見れますよ。
焼き鳥、つくね、ラーメン、アイス、のり弁、おかゆ
今回も全品おいしそう。
絵本によだれを垂らさないように気をつけないと。
完食間違いなしの一冊です。
じゃあ、読もう。

コロナ禍が進んで、飲食店は大きな打撃を受けました。そこで、目につくようになったのがデリバリーサービスです。
大きなリュックのような箱を背負った人たちが自転車で運ぶ姿は日常的に目にするようになりました。
昔はおそばやさんの出前くらいしか目にしなかったのに。
なので、この絵本のタイトルも、大きなリュック箱を背負うぶたも、今の子供たちにとっては少しも違和感なく入り込めるのではないでしょうか。
しかも、作者はクレヨン画家の加藤休ミさんですから、描く食べ物のおいしそうなことには定評があります。
お店やさんでいえば、人気店です。
この絵本のデリバリーぶたは、海であろうと山であろうと、人が肉が食べたいとかあったかいものを食べたいと思えば、どこでも配達してくれます。
しかも、どんな料理だっておいしそうなんです。
いつもながら加藤さんの食べ物はどうしてこんなふうに描かれるかわからないくらい、本物に見えます。
中でも、驚いたのはアイスの絵。見ているうちに溶けてしまいそうで、思わずページをくって隠してしまいました。
このデリバリーぶたは、おしまいには病気に寝ている人にも「おかゆ」を配達してあげます。「おかゆ」の真ん中には梅干しがひとつ。
きっと元気になるでしょうね。
そんなデリバリーぶたの活躍の舞台は、宇宙にも。
残念ながら、宇宙食は見れませんでしたが。
(2022/01/09 投稿)

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01/08/2022 寅年なので、やっぱりこの映画から - 映画「男はつらいよ」の話

今年最初の映画の話も
寅の映画で。
となると、
やっぱり寅さんの映画「男はつらいよ」でしょう。
そこで、
今日は昭和44年(1969年)公開のシリーズ第1作の
「男はつらいよ」の話です。

主演の渥美清さんが亡くなるまで
48作も作られた人気作で
渥美清さんが亡くなってからも映画化されて
最初の公開から50年となる2019年には
50作めの「男はつらいよ お帰り寅さん」が公開されたのは
記憶に新しい。
ちょうどコロナ禍が始まる前で
私も映画館で観ました。
その1作めですから
半世紀以上前の作品で、
舞台となった葛飾柴又の町も走る電車も
登場する人たちの服装も
まさに昭和そのもの。
あの当時の雰囲気を味わうにも
記録として観るにも
貴重な作品のように思います。

作品はちっとも古くない。
寅年の今年、
改めて観ましたが、
笑えるし、
泣ける。
いい映画は何年経とうが古びないのです。
監督は言うまでもなく山田洋次監督で、
テンポがとてもいい。
20年ぶりに故郷柴又に帰ってきた寅さん、
翌日には妹さくらの見合いをぶっ壊し、
また柴又を出るはめに。
ところが、奈良で偶然御前様とその娘冬子に出会い、
柴又に戻ることに。
そこでさくらの想い人だった博との縁結びに結婚。
どたばたの、感涙間違いなしの結婚式を経て
最後はお決まりの冬子への失恋。
そして、旅の空で。
しかも、さくらの息子満男も生まれています。
90分余りでこれだけの内容が
スパッスパッと進むのだから
面白くないはずはない。

この1作めは必見ですよ。

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ここ何年か
NHKの朝ドラと大河ドラマが欠かさず見ています。
若い頃は
この2つともが自分には縁遠いドラマでしたが
50歳を過ぎたあたりから
しっくりなじむようになりました。
今年の大河ドラマは
書評にも書きましたが
三谷幸喜さん脚本の「鎌倉殿の13人」で
主人公の北条義時を小栗旬さんが演じます。
私の楽しみは小池栄子さん演じる北条政子。
大河ドラマを楽しむための一冊として選んだのが
石ノ森章太郎さんの
『マンガ 日本の歴史 16』。
ここでも尼将軍政子は大活躍しています。
さあて、どんなドラマになるのか
いよいよ9日日曜スタートです。
じゃあ、読もう。

第61作めとなる今年(2022年)の大河ドラマは、三谷幸喜さん脚本の「鎌倉殿の13人」ということで、今書店にいくと、ドラマの主人公となる北条義時関連の本がずらりと並んでいる。
そもそも鎌倉幕府成立後の政治のありよう自体なかなか難しいから、関連本を読んでドラマ視聴の予習をするのは悪いことではない。
もっと手っ取り早く、その時代のことを知りたい向きには、この本がオススメだろう。
石ノ森章太郎さんが丹精を込めて描きこんだ『マンガ 日本の歴史』シリーズである。
マンガとあるが、なかなかどうして的確に歴史が描かれている。
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」あたりが描かれているのが、ちょうどこの巻だろう、「朝幕の確執、承久の乱へ」と副題がついている。
ここでもドラマのタイトルとなった「13人」のことがちゃんと描かれている。
そこの箇所から引用すると、「将軍頼家の親裁を廃して、13人の有力御家人のよる合議制」となっている。
もちろん、その中に北条義時もいる。
この巻では三代将軍実朝の暗殺事件を経て、承久の乱、北条氏の執権政治までが描かれている。
大河ドラマでどこまで描かれるのか知らないが、手っ取り早い予習には格好の参考書といえるだろう。
(2022/01/07 投稿)

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01/06/2022 少しぐらいの嘘は大目に 向田邦子の言葉(碓井 広義 編):書評「本当のあなたに会いたい」

今日は
昨年没後40年を迎えた
向田邦子さんの言葉を集めた
『少しぐらいの嘘は大目に 向田邦子の言葉』を
紹介します。
碓井広義さん編です。
ありがたいことに
この文庫本の巻末に
向田邦子さんの「主要ドラマ一覧」や
「資料書籍一覧」がついています。
今年もできるだけ
向田邦子さんの本を
読んでいきたいと思っている私にとっては
とてもありがたい。
そういう点で手元に置いておきたい一冊です。
じゃあ、読もう。

ものを書くことを生業にしている人が語る、自分自身であったり家族やその周辺のことはどこまで本当なのかしら。
まさか本当は犬が好きなのだが、猫派ですなんてことは書かないだろうが。
鏡に映った姿は本当の自分なのだが、どこかで歪になっている、それくらいの嘘なら混ぜるかもしれない。
脚本家でエッセイストでしかも直木賞作家だった向田邦子さんには自身や自身の父や家族を描いた文章が多い。
きっとそのほとんどが本当なのだろうが、やはりどこかに嘘があったのではないか。
この文庫オリジナルのタイトルではないが、「少しぐらいの嘘は大目に」というところだろう。
この文庫が向田さんが不慮の飛行機事故で亡くなって40年にあたる2021年4月に刊行されたのは偶然だと著者でメディア文化評論家の碓井さんは書いている。
それは偶然であっても、没後40年であっても、向田さんの脚本やエッセイあるいは小説から名言を抜きだした本が出るということは、今でも多くの向田さんのファンがいるという証だと思う。
短く切り取られた文章の一片一片から、向田さんの魅力が立ち上がってくる。
名言の数々は、「男と女」「家族」「生と死」「自身」「仕事」、そして「食と猫と旅」に分類されている。
きっとその時々で、向田さんの気配をそっと感じることだろう。
向田邦子さんはいつまでも私たちのそばにいる。
(2022/01/06 投稿)

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01/05/2022 小津安二郎 晩秋の味(尾形 敏朗):書評「この本を読み終わったら、小津映画が観たくなる」

今日も映画の本。
尾形敏朗さんの『小津安二郎 晩秋の味』。
若い頃は
小津安二郎の作品はなんだか年寄りくさいと
感じたりしていましたが、
こちらが年を重ねるたびに
より近いものに感じてきて
黒澤明監督のエネルギッシュな作品もいいけれど
渋茶なんか飲みながら
小津安二郎監督の作品を観る方が
落ち着くようになりました。
日本食の味かな。
この本を読むと
また小津安二郎作品を観たくなりますよ、
きっと。
じゃあ、読もう。

映画雑誌「キネマ旬報」には「読者の映画評」というコーナーがあります。
この本の著者である尾形敏朗さん(1955年生まれ)は、そのコーナーで60年代後半から70年代にかけて常連の投稿者でした。
その尾形さんは大学を卒業後もしっかりと映画を観続け、務めた会社を定年後もフリーで映画の記事を書いていることに、同世代ということもあって尊敬もします。
この本のもとになったのは2017年から18年にかけて「キネマ旬報」に連載したものですから、尾形さんにとって「キネマ旬報」は半世紀にわたるお付き合いなのでしょう。
尾形さんが小津安二郎の映画を意識したのは、1973年10月に銀座並木座で観た「東京物語」と「彼岸花」だったそうです。
日付も観た映画館もはっきりと書けるというのは、きっと映画日記のようなものをつけていたのでしょうが、今はもうない並木座というのがいい。
なんとなく小津安二郎の映画と並木座は似合っているように思います。
その時の「東京物語」に圧倒されたといいます。
その青年が還暦を過ぎ、いや小津の没年齢も越え(小津安二郎は1963年12月に60歳で亡くなっている)、こうして小津の戦後の映画を中心に小津論ともいえる労作を作り出したのですから、小津映画の底力を感じます。
尾形さんも書いていますが、小津安二郎に関する著作はたくさんあります。
尾形さんはそれらもきちんと押さえて、さらに自身の視点で小津の映画を見つめています。
タイトルにある「晩秋」という映画は小津安二郎にはないが、うまい書名をつけたものです。
(2022/01/05 投稿)

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新春2冊めも
とっても素敵な本を紹介できます。
和田誠さんの
『和田誠日活名画座ポスター集』。
昨年の10月に出たばかりですが
さいたま市の図書館に予約をいれて
購入してもらいました。
とっても高価な本ですから
なかなか個人で買うのは大変ですが
こうして図書館で購入してもらうと
多くの人に
和田誠さんの偉業がわかってもらえて
こんなにいいことはありません。
今年も
和田誠さんの本がたくさん読めるといいナ。
じゃあ、読もう。

イラストレーターの和田誠さんが亡くなったのが、2019年10月で、もう随分な時間が過ぎたことになる。
それでも、大規模な展覧会が開催されたり、代表作の一つともいえる『お楽しみはこれからだ』が2022年1月からオリジナルのまま函入り愛蔵版で復活したりする。
和田さんが映画雑誌「キネマ旬報」に『お楽しみはこれからだ』を連載したのが37歳の時、映画大好きの和田さんにとって似顔絵と映画エッセイという舞台はどんなにうれしかったことだろう。
和田さんの映画好きが筋金入りで中学高校時代から映画館に入り浸っていた。
そんな和田さんが大学生の終わり頃に知り合った印刷会社の社長から「日活名画座のポスターの絵を描いてみないか」と声を掛けられる。
その時の様子は、この本の巻頭にある「日活名画座の頃」という和田さんの文章に詳しい。
絵を描いてもギャラはなし。招待券ももらわない。
それでも、和田さんは9年間にわたって、半月に一枚のペースで名画座にかかった作品の絵を描き続けた。
これはそれらの作品を一冊にまとめた、豪華な画集だ。
見ているだけで、映画が観たくなる絵。
映画の一場面を切りとっただけなのに、映画全部を思い出せる絵。
俳優たちのちょっとした表情に、その声や癖が頭にひらめく絵。
和田さんの絵のはいったポスターを見て、どれだけの人が名画座に足を運んだことだろう。
それは『お楽しみはこれからだ』を読んで、映画に夢中になった読者がたくさんいたことと同じだ。
この本には、和田誠さんの映画への無償の愛が詰まっている。
(2022/01/04 投稿)

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毎年
年初めにどんな本を紹介しようか
悩みます。
その点、今年はこの本にしようと
すんなり決まりました。
詩の、しかも絵本です。
谷川俊太郎さんの有名な詩、
「二十億光年の孤独」に
塚本やすしさんが絵を描いた
『にじゅうおくこうねんのこどく』。
この絵本を読むと
詩の不思議さにドキンとします。
きっと世界そのものが
そのドキンとつながっているような気がします。
この一年、
こんなドキンの本をたくさん紹介できたらいいなぁ。
じゃあ、読もう。

谷川俊太郎さんの詩の絵本です。
しかも、ひらがな表記されていますが、これは谷川俊太郎さんが詩人として鮮烈なデビューとなった「二十億光年の孤独」を絵本にしたものなのです。
谷川さんがこの詩を収めた詩集『二十億光年の孤独』を刊行したのが1952年。1931年生まれの谷川さんはまだ20歳の青年でした。
若い詩人の登場に、三好達治は「ああこの若者は/冬のさなかに永らく待たれたものとして/突忽とはるかな国からやつてきた」と推賞したといいます。
そして、おそらく三好以上に、同世代の若者たちがその詩に感銘を受けたにちがいありません。
この詩が持っている、日本文学史上の衝撃は、それ以降何十年にもわたる詩人谷川俊太郎の活躍を予感させるに十分だったともいえます。
試みに、岩波文庫版の『自選 谷川俊太郎詩集』に掲載された詩と、この絵本で描かれた詩を読む比べてみてごらんなさい。
これが同じ詩なのか、わからないくらいです。
原詩は漢字表記もまじります。例えば、「万有引力とは/ひき合う孤独の力である」といったように。
それがこの絵本では、「ばんゆういんりょくとは/ひきあうこどくのちからである」となります。しかも、その字体が普通の活字体ではなく、手書きの袋文字に近い独特なものです。
絵本ですから、絵がありますが、そこに何故かラーメンの世界が描かれます。メン、ナルト、ネギ、メンマ、チャーシュー。
絵を描いた塚本やすしさんにとって、「孤独」とはそんなラーメンの世界につながっているのかもしれません。
誰もが自由に「孤独」と向き合う。これはそんな詩の、絵本です。
(2022/01/03 投稿)

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レビュープラス
01/02/2022 恒例 元旦の新聞から - 2022年 日に新た

購読者からの投稿のページがあって
私が購読している朝日新聞では「声」という欄があります。
昨日の。2022年の元旦の「声」欄に
長野県に住む図書館司書の女性の投稿が載っていました。
その女性の今年の目標が
「畑の作物をていねいに作ること」。
女性はこんなことも書いていました。
「畑から驚くほど多くの生きる知恵や哲学を学ぶことができます。」と。
本当にその通りで
私も畑の野菜から生きることを教えてもらっています。

元旦の新聞には出版社の広告があって
それぞれの心意気のようなものを感じさせてくれます。
今年一番に惹かれたのが
辞書でおなじみの大修館書店の広告でした。

ことばを贈ろう。
シンプルですが、
とっても大切なこと。
こんな時だからこそ
大切な人に、大切な思いを、
形にして贈りたい。
このブログも
そうありたいものです。

100年を迎えるということで
それも目もひきました。
100周年。もっと自由に。
これは小学館のキャッチコピー。
もう少し年上なのが
中央公論新社の「婦人公論」。
創刊107年です。
そのキャッチコピーが。
人生は折り返りしてからが
おもしろい

人生100年時代で
それでも
折り返しの50年を過ぎましたが
きっと
まだまだ面白いことが待っているのだと思います。
「婦人公論」の1月15日発売の2月号の特集は、
自分史上、もっとも幸運な一年に
というのが、いいですね。
そんな一年にしたいものです。

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