02/28/2022 ジャガイモの植え付けです - わたしの菜園日記(2月27日)

少しは春を感じられたのではありませんか。
今週末の5日の土曜日は
二十四節気のひとつ、啓蟄。
温かくなって虫たちも地中から出てくる時期をさします。
啓蟄の雲にしたがふ一日かな 加藤 楸邨
先週近所の梅を紹介した際に
梅林というほどでもなくと書きましたが
どんな感じかというと
梅もだいぶ咲いてきたので全景を撮ってきました。

結構近所の人が
見に立ち寄ったりしています。

虫たちだけでなく、
人間も外に出ます。
昨日の日曜日(2月27日)、久しぶりに農作業をしました。
ジャガイモの植え付けです。
まず、こちらが芽を出し始めたジャガイモの種イモ。

今回は「インカのめざめ」という品種を栽培しますが
先日NHKEテレの「やさいの時間」でもジャガイモの栽培を放送していて
その時「インカのめざめ」は少し栽培が難しいという話をしていました。
知らなかったなぁ、
でも、やってみますね。

深さ15㎝ほどの溝を掘って、
そこに植え付けます。

肥料は種イモの間に置く、置き肥をいうやり方です。
そのあとに土をかぶせて
どのあたりに植えたかがわかるように
目印にヒモをはっておきます。

水はあげません。

日差しもあって
なんだかうれしくなります。

アブラムシ対策でソラマメの畝に
銀色のテープの束をつけました。

アブラムシはキラキラ光るものが苦手なんです。


茎ブロッコリーがたくさん採れました。
冬越しのダイコン三太郎は
間引きをしていなかったので抜きました。
白と赤のかわいいダイコンです。
そして、写真右下にあるのが
祝蕾。
なんか春だな、とこちらの心も弾みます。

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02/27/2022 ごあいさつ(ちば てつや):書評「あいさつは素敵な一日のはじまり」

先日
芸術院の新分野に「マンガ」が加わり、
その会員として
漫画家のちばてつやさんとつげ義春さんが選ばれたという
ニュースがありました。
芸術院がどんな組織なのか
よくは知りませんが
ついに「マンガ」も日本文化として認識されたのだと思います。
ちばてつやさんのコメントにも
「漫画が日本の芸術、文化のひとつとして認めていただけたようです。」と
ありました。
そして、「嬉しいなあ。」とあります。
今日は
ちばてつやさんの芸術院新会員を祝して
ちばてつやさんが描いた絵本
『ごあいさつ』を紹介します。
何はともあれ
おめでとうございます。
じゃあ、読もう。

あいさつが好きだ。
朝の「おはようございます」も好きだし、「いってらっしょい」と送りだす言葉もいい。
名前も知らないが、毎朝会う人とあいさつを交わせるのも、なんだかうれしい。
若い頃はあいさつを返さない人がいると、「なんだ、あいつは!」なんてむくれていたが、最近はちょっと違う。
「かわいそうにな、あいさつをすれば楽しいのに。楽しくなるのに」と、思いやったりする。
あいさつが苦手な人はいる。
きっと、あいさつのすばらしい効用に気がついていないのだろう。
そんな人に、この絵本を読んでもらいたい。
この絵本は漫画家ちばてつやさんが2008年に初めて描いたものです。
ちばさんにはお孫さんが3人いますが、カナダで暮らしていたようです。
遠い国で暮らすお孫さんにあてて、その国の人たちだけではなく、動物や鳥や虫たちとちゃんとあいさつができて、明るく楽しく生きてれることを願って、絵本を描いたと「あとがき」に記されています。
この絵本ではあいさつの極意のようなものもちゃんと書かれています。
それが、「目を見て」ということ。
あいさつは、相手の方とのコミュニケーションのはじまり。その大切なはじまりは、やっぱりしっかり目を見ることです。
ちばさんの絵のタッチはいつも温かい。
元気な少年もやさしそうな女の先生も、かわいい女の子も、ちばさんの漫画で見かけたことのあるような人たちばかり。
ちばさんの漫画にどれだけ癒されてきたか、しみじみ味わえる絵本でもあります。
(2022/02/27 投稿)

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02/26/2022 映画でも石原慎太郎さんを追悼 - 映画「太陽の季節」の話

2月1日。
死後息子さんたちが行った会見の中で
「僕は石原慎太郎という人は作家だと思っていました」と語った
次男良純さんの言葉が印象に残りました。
訃報のあと
日本映画専門チャンネルというCS放送が
急遽番組を差し替え、
石原慎太郎さん原作の「太陽の季節」と「狂った果実」の2本の映画を
放映してくれました。
今日は
そのうちの一本、
「太陽の季節」の映画の話です。

第34回芥川賞を受賞したのは
昭和31年(1956年)1月のことです。
小説はその前年の昭和30年に発表されています。
そして、
映画封切りが昭和31年(1956年)5月ですから
芥川賞受賞が決まって
早々に制作が始まったと思われます。
日活映画で
制作に水の江多滝子さんの名前があります。
水の江滝子さんといえば
昭和生まれの人なら覚えているでしょう、
ターキーの愛称で呼ばれた人で
この映画で石原裕次郎さんをデビュー(端役ですが)させてことでも
有名です。
監督は古川卓巳さん。
主人公の竜哉を長門裕之さん、
ヒロインの英子を南田洋子さんが演じています。
この二人、のちに芸能界きってのおしどり夫婦となりますが
この映画の共演がきっかけだったとか。
長門裕之さんはちょっとひ弱な感じだし、
南田洋子さんがお姉さんぽいし、
「太陽族」と呼ぶにはちょっと違和感があります。
もっとも昭和30年前後といえば
日本全体がまだまだ貧しくて
「太陽の季節」で描かれたヨット遊びなど
庶民感覚から遠いところにあったのではないでしょうか。
それでも
映画が大ヒットになったようです。

映像記録として観ることができる点にもあります。
この映画の場合、
逗子の駅舎とか
東京駅周辺の映像とか、
大丸百貨店の食堂の様子など観ることができます。
この当時の街の様子を覚えている人も
随分少なくなっているでしょうが。

原作者である石原慎太郎さんも特別出演して
若々しくてかっこいい姿を観ることができます。

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最近食育インストラクターでもある
和田明日香さんの人気がすごい。
レシピ本やテレビの料理番組、
さらにはバラエティー番組にも。
和田明日香さんは和田誠さん平野レミさん夫婦の次男率さんの奥さん。
結婚当時はほとんど料理ができなかったというが
平野レミさんの影響で
今や人気料理研究家。
昨日和田誠さん一家が1989年に海外旅行した時の記録
『旅の絵日記』を紹介しましたが
その3年後に一家で作った
料理絵本があったことを思い出して
今日は『平野レミのおりょうりブック』の再録書評にしました。
2018年に書いた書評には
上野樹里さんの名前は出てきますが
和田明日香さんのことにはふれていません。
まさに最近の旬の女性なんでしょうね。
じゃあ、読もう。

この絵本の著者平野レミさんといえば、いつも元気ハイテンションで人気の料理家です。
ご主人は人気イラストレーターの和田誠さん。二人は出会って、わずか10日ぐらいで結婚を決めたという伝説? が残っています。
レミさんのお父さんは平野威馬雄さん。著名なフランス文学者。なので、血筋はとってもいいんです。
レミさんと和田誠さんには二人の息子さんがいて、長男が唱さん、次男が率さん。
そう、この絵本の絵を描いているのが、この二人の息子さん。
この絵本の初版が1992年ですから、まだ二人とも小さかった。
それが今では、二人とも結婚して、唱さんの奥さんは女優の上野樹里さん。
つまり、レミさんを中心に(あるいは和田誠さんを中心に?)この一家はすごい。
この絵本はタイトルに「平野レミの」とあるとおり、料理大好きのレミさんが「ひ(火です)もほうちょう(包丁です)もつかわない」で料理をする方法を伝授しています。
絵を担当したのは二人の息子さんですが、けっしてうまいといえません。
うまくないけど、味わいはあります。
さすが和田誠さんの血を受け継いでいます。
それに火も包丁も使わない料理ですから、たまごかけごはんやバターごはん、ナッツごはんといったように、料理そのものも素朴なものですから、二人の絵によく合っています。
和田誠さんは出てこないと思っていたら、最後の裏表紙の見返りに、「デザイン 和田誠」ってあって、なんだ、この絵本は和田誠さん一家総出で作った、楽しい本なんだとうれしくなりました。
(2018/07/08 投稿)

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02/24/2022 旅の絵日記(和田 誠・平野 レミ):書評「素敵な家族ののほほん旅」

最近次男率さんのお嫁さんである
和田明日香さんとCM共演されている平野レミさん。
長男唱さんのお嫁さんは女優の上野樹里さんだし、
姑平野レミさんは二人の嫁に囲まれ
実に楽しそうだ。
きっと天国の和田誠さんも喜んでいるだろうな。
今日紹介する
『旅の絵日記』は
1989年に和田誠さん一家が海外旅行した際の
記録です。
もちろん、この時には上野樹里さんも
和田明日香さんもいませんが。
でも、こんな素敵な旅をする一家ですから
今があるのかな。
そんな風に思ってしまいます。
じゃあ、読もう。

テレビなんかで昔家族で旅行した土地の映像が映って、今はすっかり大きくなった子供に「昔あそこに行ったこと覚えている?」と聞いても、「うーん、あんまり覚えてない」というそっけない言葉が返ってくることが多い。
小学生になったばかりだったりして、そりゃ覚えていないだろうが、親はこれでも一生懸命楽しい時間と思い出を作ってあげようと頑張っていたのだけれど。
まあ、子供が小さい時の家族旅行なんてそんなものかもしれない。
この本はそんな切ない家族旅行の話だ。
もっとも、ここに登場する二人の子供たちにとって、「あんまり覚えていない」ということはないかもしれない。
何故なら、お母さんが一冊の本になるくらいの日記を残してくれているのだし、お父さんが訪れた異国の街の風景をイラストとして描いてくれているのだから。
お母さんの名前は平野レミ。
お父さんの名前は和田誠。
お兄ちゃんは唱、この旅をした1989の夏には中学2年生。
弟の率は、まだ小学4年生。
和田一家はこの夏、フランス・スペイン、モナコ、イタリアを巡る旅に出た。(なんとも豪華な!)この本はそんな家族の素敵な夏の思い出を綴ったもの。
こんなに素敵な海外旅行なのに、かわいそうにお兄ちゃんは夏休みの宿題を持参してのものだし、弟は旅の終わり近くに高熱を出して現地のお医者さんに診てもらうことに。
異国の風景や食事や風習(何故か家族は行く先々で祭りに遭遇したり)を体験するのだが、案外子供たちの思い出に残るのはそういう普段の生活のようなものかもしれない。
(2022/02/24 投稿)

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今日は
天皇誕生日の祝日。
令和になって今年でもう4年め。
でも、まだ2月23日が天皇誕生日となじんでない人も多いのでは。
昭和生まれの私なんか
いまだに天皇誕生日といえば
4月29日なんて勘違いしそう。
そんな休日なので
今日は楽しい一冊を。
東海林さだおさんのエッセイを
平松洋子さんが編纂した
『東海林さだおアンソロジー 人間は哀れである』。
東京・西荻窪に暮らすお二人ですから、
西荻窪歩けば
お二人に会えるかも。
じゃあ、読もう。

東海林さだお、84歳。少年の頃見た手塚治虫の漫画に憧れ漫画家を目指したという。でも、手塚漫画の影響は全く感じさせないのが東海林さんらしい。
谷岡ヤスジが登場した時、大いなるショックを感じたという。それでも、東海林さんは自身の漫画道を進んだ。
そんな本音会話ができるのも、東京・西荻窪に共に暮らすエッセイスト平松洋子さんとの地元愛トークだからかもしれない。(この文庫には東海林さんと平松さんの対談2つが収められている)
東海林さだおさんといえば、漫画家と同じくらいエッセイストとしても有名だ。
特に「丸かじり」シリーズに代表される「食のエッセイ」の第一人者といっていい。
そして、この文庫本の編者である平松洋子さんも「食のエッセイ」の次世代のエースとして活躍してきた。
となれば、「東海林さだおアンソロジー」ともなれば、食のエッセイの大盛りとなりそうなものだが、そうしないところが平松洋子さんの面白さといっていい。
タイトルにして、そうだ。
東海林さんがこんなタイトルのエッセイを書いていたなんてあまり知られていないのではないだろうか。
あるいは「明るい自殺」というエッセイなんかは、裏東海林エッセイともいえる、かなりハードな内容の作品だし、「往生際」というエッセイもそうだ。
もちろん、読みながら何度も笑ってしまえるエッセイもあるが(「自分部分史・帽子史篇」なんか最高レベル)、食のエッセイを封印したところに平松さんの男気(女気?)を強く感じるエッセイ集になっている。
(2022/02/23 投稿)

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今日紹介する本のように
新しいアンソロジーで新刊がでるくらい
日本にはアガサ・クリスティーが好きな人がたくさんいるようです。
去年のクリスマスシーズン前に出たこの本
『クリスマスの殺人 クリスティー傑作選』を
クリスマスが終わってから紹介するのも心苦しいですが
クリスマスは毎年やってくるので
辛抱してください。
それに、この本に収められた短編すべてが
クリスマス物ではないので
いいかな。
こういう短編集を読むと
アガサ・クリスティーは長編もいいけど、
短編だって面白いことに
気づくはず。
今年もまだまだアガサ・クリスティー読みますよ。
じゃあ、読もう。

「大切な人への贈り物や自分へのご褒美に。」というのが、この本の出版元である早川書房の宣伝惹句だが、それもうなづける満足の一冊。
何しろ、ミステリーの女王アガサ・クリスティーの短編からよりすぐりの12篇が収められているのだから。
しかも、巻頭の「序」には『アガサ・クリスティー自伝』からアガサのクリスマスの思い出を綴った箇所が抜粋掲載されていて、その丁寧な構成に感心する。
タイトルは『クリスマスの殺人』となっているが、クリスマスが舞台となった作品ばかりではないので、英語表記の「MIDWINTER MURDER」(真冬の殺人)の方がぴったりする。
それにしても、豪華。例えるなら、冬空からおちてくる雪のきらめきのような豪華さ。
あるいは、クリスマスのテーブルを飾るさまざまな料理のような贅沢さといえばいいだろうか。
何しろここに登場するのが、エルキュール・ポアロ、ミス・マープル、トミーとタペンス、パーカー・パイン、クィン氏といった、アガサの作品に欠かせない名探偵ばかり。
作品でいうなら「チョコレートの箱」「クリスマスの悲劇」「クィン氏登場」「バグダッド大櫃の謎」「クリスマスの冒険」など12篇。
全部が好きという人もあるだろうが、やはり自分の好みの探偵や殺人事件を探すのも楽しみになるだろう。
私は、「おしどり探偵」トミーとタペンスが活躍する「牧師の娘」がよかった。
その中から、トミーがいうこんなセリフがこの本にはぴったりかも。
「クリスマスは一年に一度しかこないんだから」。
(2022/02/22 投稿)

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02/21/2022 梅がほころびはじめました - わたしの菜園日記

カーリンング女子の決勝戦をTV観戦した人も多かったのではないでしょうか。
結果は残念でしたが、
日本チームは史上初となる銀メダルですから
りっぱなものです。
そして、北京冬季オリンピックも閉会しました。
日本選手の活躍に拍手をおくりたいですね。
残念な結果に終わった選手にもねぎらいの言葉をおくりたい。
ドーピング問題とか判定疑惑とか
いろんな問題が起こった大会でしたが
まずは参加された選手の人に感謝のエールです。
オリンピック期間中も
世界はいろんな問題で揺れていたり
国内では厳しい寒さが続いていたりします。
でも、街にでると
梅がほころび始めていて
春が近づいているのを実感できます。
これは毎年開花を楽しみにしている近所の梅。

梅林というほどではありませんが、
数本の梅が立派に咲いて楽しませてくれます。

青天へ梅のつぼみがかけのぼる 新田 祐久
こちらは近所で見かけた菜の花。

菜の花の昼はたのしき事多し 長谷川 かな女

菜園に行ってみたら、
「今日3人めの来園者です」と
アドバイザーの人にいわれました。
朝から雨が降ったし、
カーリングの注目の一戦もあったし、
畑の作業もあまりないし
畑に来る人が少ないのも仕方ないですよね。

まだまだですね。

枯れた葉をとってあげるぐらい。


場所によってはもうアブラムシがついているところもあるようですが
私のところは今はまだ大丈夫そう。

農耕の準備も始まる頃でもありますが
もう少し暖かくなって欲しいですね。

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02/20/2022 とぶ(作 谷川 俊太郎/絵 和田 誠):書評「そういえば、飛ぶ夢をしばらく見ない」

昨日は
二十四節気のひとつ、雨水(うすい)でした。
今年の冬は厳しいですが、
暦はどんどん春に近づいてきています。
暖かい春になったら
外でうんと伸びをして
空をおもいっきり見上げたい。
そして、できたら空に飛びだしたい。
そんな気分にさせてくれる絵本を
今日は紹介します。
谷川俊太郎さん文、
和田誠さん絵の
『とぶ』。
タイトルはそっけないですが
開くと大空のように広がります。
この絵本、
春に読むのが一番似合ってるかな。
じゃあ、読もう。

空を飛ぶ夢というのは、結構見ることが多いらしい。
知らべると、その夢には「何ものにも束縛されずに自由に生きたいという思いが潜んでいることが多い」とか「今より高見を目指したい」といった願望があるそうだ。
若い頃よく見たが、年を重ねてきてまったく見ないのは「高見を目指す」ことも「自由になる」こともなくなったからかもしれないとしたら、少し寂しい。
この絵本のまこと君は、ある晩飛ぶ夢を見た。
次の朝、いい天気だったので、まこと君は本当に空が飛べるような気になって、試してみた。
すると、本当に空に浮かんだ。
大事なのは、「いい天気」だってこと。
だって、いくら空を飛ぶ夢を見ても、次の日が大雨だったり曇っていたら、空を飛びたいなんて思わない。
「いい天気」だったから、まこと君は空が飛べそうに思ったんだ。
空に飛びだしたまこと君は、飛ぶことの初心者だったから、はじめは上手に飛べなかったんだけど、そのうちにどんどんうまくなっていく。
そう、まるで昔見た「ピーターパン」みたいなように。
しばしの空中散歩を楽しんだまこと君は友達のあこちゃんに「どうやったらそらをとべるの?」と聞かれて、ちゃんと「そらをとぶゆめをみればいい」と教えてあげるんだから、優しい。
もっともあこちゃんがうまく空を飛ぶ夢を見れるかどうかわからないけどね。
和田誠さんの絵のやわらかさが、この絵本によく似合ってます。
(2022/02/20 投稿)

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02/19/2022 あの話題作を観ました! - 映画「ドライブ・マイ・カー」の話

『女のいない男たち』の再読書評を載せましたが
それはもちろん
今話題となっている映画「ドライブ・マイ・カー」の
原作が収録されているからで、
2014年に出た本のことをすっかり忘れていたので
読み返しました。
そんな昨日、
TSUTAYAでは先行で映画DVDのレンタルと
配信が始まりました。
私はTSUTAYATVの配信で観ました。
なので、
今日は昨日の続きのような
映画「ドライブ・マイ・カー」のお話です。

2021年公開の濱口竜介監督の話題作。
なんといっても
3月に発表されるアメリカのアカデミー賞で
日本映画初となる作品賞にノミネートされたというのですから
期待も高まります。
作品を観て、
まずびっくりしたのは上映時間の長さ。
なんと3時間弱の映画だったんですね。
村上春樹さんの原作が400字詰め原稿用紙80枚ほどで
本でいえば50ページに満たない短編ですが
それをまるで長編小説のような尺の長さまで
持っていっているのですから
いかに脚色がすごいかわかります。

原作があって
それをベースにドラマ化していくのが脚色で
この映画の場合、
濱口竜介さんと大江崇允さん二人による共同。
カンヌ映画祭でも脚色賞を受賞していて
アカデミー賞でも脚色賞の受賞はありそう(個人的な感想ですが)。
それほど
原作から大いに膨らんだ作品になっています。
映画を先に観た人は
原作を読んで驚くかもしれないし、
原作を先に読んだ人は
こういう読み方もあるんだと納得するかもしれません。

若い俳優役を演じた岡田将生さんもいい。
私が特によかったのは
主人公の妻を演じた霧島れいかさん。
原作ではほとんどその像がぼやけていますが
霧島れいかさんの姿をみて
なるほど家福(主人公の名前)の奥さんはこんな女性だったのかと
納得しました。

アカデミー賞受賞がなるか。
発表は3月28日です。

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02/18/2022 女のいない男たち(村上 春樹):再読書評「話題の映画のこれが原作」

濱口竜介監督の映画「ドライブ・マイ・カー」が話題となっています。
何しろ日本映画初の
米国アカデミー賞作品賞の受賞があるかもしれないのですから。
原作は村上春樹さんの
短編集『女のいない男たち』。
本が出た時に読んでいたのですが
「ドライブ・マイ・カー」がどんな小説だったか
少しも覚えていなくて
だったら再読するしかないなと
今回改めて読んでみました。
書評にも書きましたが、
私は「イエスタデイ」の方が好きで、
読んでいて少しは記憶がありましたが
残念ながら「ドライブ・マイ・カー」は
ちっとも思い出せなかった。
やれやれ。
じゃあ、読もう。

2014年4月に刊行された村上春樹さんのこの短編集が、文庫化され、2021年から22年にかけてまた大いに読まれているという。
それはもちろん、この短編集に収められた6篇の短編のうちの巻頭の、そして初出となった雑誌「文藝春秋」にもっとも早く掲載された「ドライブ・マイ・カー」が濱口竜介監督で映画化され、国内外のさまざまな賞を受賞、さらには日本映画初となる米国アカデミー賞作品賞にノミネートされた影響だ。
改めてこの短編集に収められた作品を収録順に書いておくと、「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」「女のいない男たち」となるが、「ドライブ・マイ・カー」はその中で映画化しやすい作品とは決して思えない。
むしろ、どの作品よりも映画化は難しいような気がした。
おそらく「ドライブ」と対になるような感じがする「木野」でさえ、まだ映画化しやすいのではないか。
つまり、「ドライブ」はそれだけ小説としての世界観がしっかり出来上がっているように思える。
だから、妻の死後彼女が(おそらく)何度か肉体関係を持った男と友だちになろうとする主人公の心の隙間は文章としては成立しても、映像化は難しいように感じた。それが、映画化されたのであるから脚本を書いた濱口監督と大江崇允さんのアカデミー賞脚色賞受賞は夢ではない。
ただ、やはり私の読書後の印象ではやっぱり「イエスタデイ」が好きだ。
(2022/02/18 投稿)

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02/17/2022 少年の名はジルベール(竹宮 惠子):書評「藪の中 ― もう答えは求めない」

先日萩尾望都さんの
『一度きりの大泉の話』を読んで
その本が書かれるきっかけとなった
竹宮惠子さんの
『少年の名はジルベール』を
やっぱり読んだ方がいいと思いました。
今回それを読んでみて
何故二人が決別しないといけなかったのか、
あるいは萩尾望都さんがその事件のあと
竹宮惠子さんの作品を一冊も読んでいないほどの
トラウマとなったか、
竹宮惠子さんははっきりと書いていませんが
竹宮惠子自身がその当時
かなり精神的にまいっていたことが
わかります。
1冊読めば
やはりもう1冊も読まないといけない。
答えは見つからないとしても。
じゃあ、読もう。

「ジルベール」は、1976年から81年にかけて雑誌連載された漫画家竹宮惠子さんの代表作「風と木の詩」の主人公の少年の名前。
その名前を自身の青春期の日々を綴った文章のタイトルにしたぐらいだから、竹宮さんにとっては欠かせない存在なのだろう。
なんといっても、少女漫画に少年愛を描いた画期的な作品なのだから。
竹宮惠子さんは1950年(昭和25年)生まれ。
昭和24年前後に生まれた少女漫画家の活躍を称して「24年組」と呼ばれることも多く、竹宮さんは萩尾望都さんとともにその先頭にあった。
またその萩尾さんらと共同生活を送った場所は「大泉サロン」と呼ばれ、この青春期でもそこでの生活が描かれている。
しかし、「漫画家二人の共同生活」を不安視した編集者の言葉とおり、数年にして竹宮さんと萩尾さんは袂をわけることになる。
「そのころ、萩尾さんの名を耳にするたびに、耳そのものがギュッとつかまれるような感覚があった」とあるように、萩尾さんの才能への恐れや嫉妬がかなり赤裸々に描かれていく。
そして、決別。
竹宮さんのこの本では「「距離を置きたい」という主旨のことを告げた。」とあるが、この本の刊行(2016年2月)ののち、萩尾望都さんが『一度きりの大泉の話』を2021年に刊行し話題になったのは有名。
どちらの本を先に読むかは別にして、互いが互いの才能を認め合いながら、そのことが互いの体にも変調を起こすほどの痛みをもたらした、そのことだけでも青春の残酷さを感じる。
もう答えは求めるべきではないのだろう。
(2022/02/17 投稿)

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02/16/2022 なぜ秀吉は(門井 慶喜):書評「あれほどの愚策を行いながら、なぜ秀吉は人気があるのか」

今回のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を見てて
うまいなと思う俳優さんがいます。
主人公の北条義時の父親
北条時政を演じている
歌舞伎役者の坂東彌十郎さん。
この人が晩年の徳川家康を演じたら
きっとぴったりするだろうな。
おっと、今日は徳川家康ではなく
豊臣秀吉。
門井慶喜さんの『なぜ秀吉は』という
歴史小説。
秀吉が何故朝鮮出兵を実行したのか、
その謎に迫ります。
もちろんそこに家康も出てきますよ。
じゃあ、読もう。

NHKの大河ドラマは小説でいえば歴史小説ということになるのだろうが、最近よく耳にする批判は「現代語の多用」だ。
鎌倉時代の武士がそんな言葉を話すか、戦国時代の武将はこんな言い方はしなかったという類である。
時代考証を考えればおかしいところはあるだろうが、視聴者(あるいは読者)は鎌倉時代や戦国時代を生きているわけではない。
だから、現代語を使うことで今の視聴者(あるいは読者)により届くのであれば構わないのではないだろうか。
門井慶喜さんの歴史小説にもそういう側面があって、特に地の文には「現代語」が多く顔をのぞかせる。
門井さんの場合、そのこともまた魅力のひとつになっているといえる。
つまり、とても読みやすくわかりやすい。
歴史小説であっても、現代小説のような気分で読める。
さて、この長編小説は太閤豊臣秀吉が行った「朝鮮出兵」(文禄・慶長の役)が何故行われたのかを解く、ミステリー仕立てに出来上がっている。
秀吉という人物はこんな歴史的な愚策を行いながらもいまだに人気があるのも不思議だし、何故秀吉が朝鮮さらにはその先の明に手をのばそうとしたのか、諸説さまざまだ。
あらたな封土を求めた故であったり、勘合貿易の利権欲しさであったり、名誉欲あるいは気まぐれ、さらには本作品で家康がいう「独裁政治の盤石化」なのか。
秀吉自身の口からも語られるが、それもどうやら嘘くさい。
いずれにしろ判然としない理由で、侵略された方は納得いかないだろう。
解けない謎だから、小説にもなるのだろうが。
(2022/02/16 投稿)

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02/15/2022 雑誌を歩く - 「文藝春秋」3月特別号:石原慎太郎さんの追悼記事は間に合わず、かな

総合誌「文藝春秋」3月特別号は
恒例の「芥川賞発表」号です。
発売少し前に第34回芥川賞を受賞した石原慎太郎さんが亡くなって
もしかしたら
この号で
石原慎太郎さんの受賞作『太陽の季節』と
今回の第166回芥川賞受賞作である
砂川文次さんの『ブラックボックス』の同時掲載があるかと
期待もしていたのですが
さすがにそれはありませんでした。

「社会が震えた芥川賞作家の肉声」という記事があって
そこに石原慎太郎さんのこんな「肉声」が載っています。
いつも冗談で「俺は芥川賞で有名になったんじゃない。
俺のおかげで芥川賞が有名になったんだ」と言うんですよ。
冗談ではなく、
そういう一面はあると思う。
それだけの事件性をもっていました。

五木寛之さんが
「文藝春秋と私「池島さんと半藤さん」」という記事を
寄稿しています。

「リニアはなぜ必要か?」、
さすがにコロナ関連の記事には飽きたか、
ただ読者としては「この記事はなぜ(トップ記事として)必要か?」と
つぶやきたくなります。
「北京五輪のグロテスク」とか
皇室ジャーナリストの佐藤あさ子さんの
「秋篠宮家「取材日記」」とか
面白かったですが。

ポルノ作家の宇野鴻一郎さんのインタビュー記事
「芥川賞・ポルノ・死」は
一気に読みましたが、
さすがにこれはメインにはなりませんね。

また今度。

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02/14/2022 菜園計画 - わたしの菜園日記

「歳時記」にも春の季語として載っていますが
言葉としては6文字ありますから
作句には難しい季語です。
バレンタインデーの紅茶の濃く苦く 黒澤 麻生子
今年は寒さも厳しく
雪のバレンタインになったところも多いのでは。

でも、この時期にしっかりやっておかなければいけないのが
この春からの菜園計画。
私が野菜づくりを始めたのは2015年の春からですから
今年でもう8年めをむかえることになります。
今、借りているのが2つの区画で
ひとつは借り先である会社さんが計画を組んでくれます。
ひとつの区画に4つの畝があって
それを毎年順番に動かしていきます。

1番目の畝にミニパプリカと長ナス
2番目には中玉トマトとエダマメ、
3番目は葉物野菜、
4番目はキュウリとニンジンと
なります。
今栽培中の冬越野菜のタマネギとかソラマメの収穫時期も
次の栽培と関係します。

ここは自由区画にしています。
つまり、会社の仕様ではなく
自分の好みや興味で栽培をしていきます。
そうなると、
去年何を栽培していたか重要になってきます。
つまり、連作障害を避けるため。
同じ科の野菜を同じ場所で続けて栽培しないように
気をつけないといけません。
ここも4つの畝をつくります。
まずは去年何を育てていたか、です。
その次に冬越野菜の収穫時期です。
この区画の2番畝にはイチゴがあるので
ここはどうしても葉物野菜になります。

1番目の畝にジャガイモとインゲン、
2番目はオクラとモロヘイヤ、
3番目はズッキーニ、
4番目は小玉スイカとミニカボチャを
育てることにしました。
あれ? そうなるとピーマンがないな、
どうしよう!

ジャガイモのタネイモを購入。
今年は「インカのめざめ」という品種を栽培することにしました。
植え付けは3月に入ってから。
今は日光にあてて芽を出させる
浴光催芽(浴光育芽ともいいます)をしています。


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最近読んだ
落合恵子さんの『泣きかたをわすれていた』に出てきた絵本の一冊が
今日紹介するバーバラ・クーニーさんの
『ルピナスさん -小さなおばあさんのお話』。
一度読んだことがあるのは覚えていましたが
また図書館で借りて読みました。
以前読んだのは2012年。
もう10年近く前のことです。
その時も落合恵子さんの『自分を抱きしめてあげたい日に』という本に
紹介されていて
読んでいました。
今日の書評はその2012年12月に書いたもので
再録書評になります。
10年前の私と向き合うことになりました。
おーい、10年前の私よ、
10年後の私も元気でやっているゾ。
ルピナスさんの丘の上から
そんなふうに叫んでみたくなりました。
じゃあ、読もう。

ルピナスというのは、花の名前。黄色やピンク、青色の花を咲かせます。 日本名でいえば、登藤(ノボリフジ)。あの藤の花を逆さにしたような感じでしょうか。咲くのも藤と同じような季節のようです。
この絵本の主人公、「ルピナスさん」は今では小さなおばあさんですが、「むかしからおばあさんだったわけ」ではないように、本当はアリス・ランフィアスという名前です。
では、何故彼女が「ルピナスさん」と呼ばれるようになったかというと、そこにはとっても素敵なお話があるのです。
小さい頃のアリスは海辺の町に住んでいました。やさしいおじいさんと一緒です。
ある日アリスはおじいさんからこんなことを頼まれます。「世の中を、もっとうつくしくするために、なにかをしてもらいたいんだよ」。
小さいアリスに「うつくしい」ことが何かなんて多分わかっていなかったと思います。
でも、彼女は「いいわ」って約束します。
大きくなってアリスは図書館で働いたり、世界中を旅してまわったりします。ところが、旅の途中で背中を痛めてしまいます。そこで、小さい頃の夢だった、海のそばで暮らすようになります。
ただ、アリスにはおじいさんとの約束が残っていました。
「世の中を、もっとうつくしくする」って何だろう。
彼女がしたこと。
それは、花の種をまくことでした。
そう、その花の種がルピナスです。
彼女がまいたルピナスの種は風にのり、小鳥たちに運ばれ、彼女が住む家のまわりだけでなく、村じゅうに散っていきました。
それだけではありません。アリス自身がたくさんの種を買って、村のあちこちにまきました。
もうおわかりでしょう、なぜ、彼女が「ルピナスさん」って呼ばれるようになったかは。
彼女はみごとにおじいさんとの約束、「世の中を、もっとうつくしくする」ことに成功したのです。
でも、それはとっても長い歳月でした。小さいアリスが小さなおばあさんになってしまうほど。
誰もが夢を描きます。そして、誰もがそれを実現できるわけではありません。しかし、「ルピナスさん」ができたようにたくさんの時間をかけて実現できることもあります。
これは、そんなすてきな時間のお話でもあります。
(2012/12/02 投稿)

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02/12/2022 「ノマドランド」からマーベル映画? - 映画「エターナルズ」の話

ノミネートが発表されました。
濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」が
日本映画初となる作品賞をはじめ、監督賞など
4部門にノミネートされて
早くも大盛りあがりです。
何しろあの黒澤明監督ですら
作品賞にノミネートされなかったのですから
期待が膨らむのも当然。
ただアメリカのアカデミー賞も近年かなり様相が違ってきて
第92回では韓国映画「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)が
作品賞など主要4部門を受賞しましたし、
昨年も中国の映画監督クロエ・ジャオさんの
「ノマドランド」が作品賞、監督賞などを受賞しています。
今日の映画の話は
そのクロエ・ジャオ監督が「ノマドランド」のあとに撮った
「エターナルズ」なんです。

2021年秋にアメリカで公開されました。
この時期といえば
世界中新型コロナのパンデミックで
映画界でも新作映画が次々と公開延期に追い込まれた時期。
この映画のような大きな制作費用がかかった作品にとっては
厳しいかったでしょうね。
私はこの映画を「ディズニープラス」の動画配信で観ました。

この作品はなんといってもマーベル映画ですから
多様な民族の人たちを出演させてたとしても
やっぱりエンターテインメントとして愉しみにしますよ。
それに応えられたかというと
正直物足りなさを感じました。
宇宙の成り立ちから神話の世界、そして現代と
一大叙事詩はあまりにもぼやけてしまっています。
むしろエピソードを減らして
焦点を絞った方がよかったように感じました。

邪悪なディヴィアンツから人類を守ることを命じられた宇宙種族。
全員特殊能力を持っています。
この作品で戦いの女神セナを演じているのは
アンジェリーナ・ジョリー。
久しぶりに彼女のアクションを観ました。
ただ彼女は主人公ではなく
主人公は人類を助けるために奔走するセシル。
彼女を演じるのはアジア系の女優ジェンマ・チャン。

ちょっと惜しい作品になりました。

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02/11/2022 天の岩戸 アマテラス(飯野 和好):書評「『古事記』の世界を絵本で」

今日は建国記念の日の祝日。
もともとは「紀元節」と呼ばれていました。
いと長き神の御名や紀元節 池上 浩山人
では、「紀元節」とは何かというと
「日本書紀」に伝わる初代天皇神武天皇が即位した日ということです。
今日はそんな日にぴったりの絵本、
飯野和好さんの
『天の岩戸 アマテラス』という絵本を
紹介します。
絵本と馬鹿にしない方がいいですよ。
描かれている内容は
かなりシビア。
大人の私なんかもほとんど知らないことばかり。
勉強になりました。
じゃあ、読もう。

「アマテラス」という女神がいて、天(あま)の岩戸に隠れてしまわれたおかげで、世界から光が消えてしまった。
そのことを嘆いたまわりの神々が思案した結果、天の岩戸の前でみんなが楽しく騒げばもしかしたら女神は顔を出すかもしれない。
それがズバリ的中。岩の外で何やら楽しそうにしているが、何だろうと女神が顔をのぞかせた瞬間をとらえて、岩戸が開けられ、めでたしめでたし。
そんな神話を誰に教わったのか記憶にない。
まして『古事記』を読んだわけでもない。
でも、何故か岩戸の前で踊ったアメノウズメが現代でいうストリップを演じたということも知っている。
確か手塚治虫さんの『火の鳥』の「黎明編」でも描かれていたから、そのあたりか。
いや、それより前には知っていたような。
しかし、前述した物語は大雑把すぎる。
もっと詳しく、でも『古事記』を読むまでもなく、やさしく「アマテラス」のことを知りたいと考えている人には、飯野和好さんが描いたこの絵本をオススメする。
何故「アマテラス」が天の岩戸に隠れなければならなかったとか、岩戸の前で騒ぐことを提案したのは誰だとか、「アマテラス」が 岩戸から外をのぞいたあとどういうことがあって外に連れだされたとか、絵本ながら、とてもわかりやすくまとまっている。
しかも、飯野さんのあのごつんとした絵だから、神話の世界にどっぷり浸れる。
絵本だから子供ではなく、大人が読んでも楽しめる貴重な一冊だ。
(2022/02/11 投稿)

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02/10/2022 ヒッコリー・ロードの殺人(アガサ・クリスティー):書評「人は何度でも殺人を冒す」

今日は
アガサ・クリスティーの
『ヒッコリー・ロードの殺人』を紹介します。
いわゆる「ポアロ」もの。
まず初めに書いておくと
いつも参考にさせてもらっている
霜月蒼さんの
『アガサ・クリスティー完全攻略』で
この作品の評価がとても低いこと。
なんと★ひとつ。
私が読んだ限りでは
そこまで面白くなかったということもないのですが。
まあ、ミステリーであっても
読む人の評価はさまざまでしょうが。
じゃあ、読もう。

アガサ・クリスティーの作品には、時々そのタイトルに推理を解く重要なキーが忍ばせてあることがよくある。
では、1955年に発表されたこの作品はどうだろう。
原題が「Hickory Dickory Dock」で、これはマザーグースの童謡だという。
作品の終わりでは、名探偵ポアロが「時計が一つ鳴り、ねずみが駆けおりる、ヒッコリー、ディッコリー、ドッグ」と口ずさむ場面があるが、これは事件が起こる現場がヒッコリー・ロードにある学生寮ということの関連からきているのだろか。
物語はまずポアロの優秀な秘書であるミス・レモンのちょっとしたミスから始まる。
ミスの原因は彼女に気にかかることがあって、それは彼女の姉が働く学生寮で窃盗事件が頻繁に発生していて姉が心配しているというものだった。
しかも盗まれたものは靴の片方とか電球とかささいなものだという。
ポアロが出ていく事件でもないが、秘書の悩みを解決するために出かけていく。
やがて、その寮で殺人事件が起こってしまう。
今回は学生寮の事件ということで男女複数人が登場するが、あまりキャラクターに差がなく、読んでいる途中で、この人どういう人物だったかと人物紹介を何度も見返すことがなった。
そういう難はあるが、犯人像としては面白く出来ていた。(多分最後まで犯人はわからないだろうし、ましては犯人が抱えていた過去は最後の種明かしまでわからない)
(2022/02/10 投稿)

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02/09/2022 本が教えてくれたしあわせ - 日日是好日 にちにちこれこうじつ(森下 典子)

図書館好きの人が集まった「友の会」があります。
そこから季刊で「友の会だより」が出ていて
今年(2022年)最初の号に
「再読の愉しみ」という文章を、
Sさんという女性が寄稿されていました。
ページを繰る毎に展開される高揚感は新しい本を読む最大の愉しみですが、
ここ十数年前から何冊かの本を再読しています。
という文章で始まり、
私の目下の読書生活は“新しい本”対“再読本”が半々といったところ。
と綴っています。

「本の雑誌」の昨年の10月号の特集の中に
「夢の定年後読書!」という記事があって、
新井久幸という人が
「最愛の青春小説で魂の若返りを図りたい」と書いています。
新井さんが挙げていた本が
宮本輝さんの『青が散る』とかで
私の本棚にも30代の頃に夢中になった
宮本輝さんの文庫本がずらりと並んでいたりします。

わたしのなつかしい本たち。
さいたま市のSさんのように
「再読の愉しみ」を味わうのもいいかもしれないと
最近特に感じています。
そこで、ブログに「わたしのなつかしい本たち」というカテゴリーを
作ることにしました。
読書生活の半分がそんな本になるかどうかはわかりませんが、
読み返すことで「魂の若返り」ができるかもしれません。

森下典子さんの『日日是好日(にちにちこれこうじつ)』。
ただ、これは「なつかしい」というほど
昔に読んだものではありません。
2019年の12月に読んだばかりですから
まだ新鮮。
でも、なんだかまた読んでみたくなった一冊。
人は時間の流れの中で目を開き、
自分の成長を折々に発見していくのだ。
これは「まえがき」にある文章。
それに呼応するように、終わり近くにこんな文章が綴られています。
気づくこと。一生涯、自分の成長に気づき続けること。
「再読」をすることで、
自分の成長に気づくこともあるかもしれません。


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02/08/2022 『ガロ』に人生を捧げた男(白取 千夏雄):書評「「ガロ」と生きた青春記」

今日紹介する
白取千夏雄さんの
『『ガロ』に人生を捧げた男』は
「本の雑誌」の2021年度ベスト10の
2位に選ばれた作品。
さすが「本の雑誌」が選ぶ本は違うなと
感心しました。
大手の本屋さんなんかでは
なかなかこの本はベスト10には入らないだろうな。
それにしても
「ガロ」という漫画誌の威力に
いまさらながら感嘆します。
「ガロ」のこと、
知っている人も少なくなっただろうに。
じゃあ、読もう。

「ガロ」というのは、感嘆を込めていうなら、不思議な雑誌だ。
漫画雑誌でありながら、1990年代にはすでに往年の輝きはなくなっていながら、長井勝一という名物編集者や白土三平や水木しげるといった誌面を飾った多くの漫画家も亡くなりながら、それでも「ガロ」という名前はどこまでも光を放ってくる。
かつてその「ガロ」の編集者だった白取千夏雄氏が1997年に起こった「ガロ」社員の一斉退職事件に至る経緯は自身の半生とともにまとめた本書は、2019年に『全身編集者』というタイトルで自費出版されたものだが、それがタイトルに『ガロ』と入るだけでまったく違った様相を帯びてきたような気がする。
白取氏は1965年生まれというから、漫画家志望であったとはいえ、「ガロ」全盛期よりはかなり遅れてきた世代だ。
実際伝説の編集者長井と出会うのも専門学校で先生と生徒という関係だった。
たまたまその長井に声をかけられ、「ガロ」編集部にバイトとしてかかわることになる。その後、正式に社員となるのだが、白取氏は「長井さんの最後の弟子」と自称している。
この本では、「ガロ」最終のドタバタ劇が白取氏の目線で描かれている。
今回の出版に合わせて他の証言者の文章も載せられているが、その人によれば白取氏の文章には誤解もあるということだが、そうであってもすでに2017年に51歳で亡くなっている白取氏の文章は誰も変更できない。
そうであっても、この白取氏の「ガロ」史はとても貴重だといえる。
少なくとも、裕福ではないけれど、生き生きとした空気をもった青春記として残るだろう。
(2022/02/08 投稿)

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02/07/2022 ウィンターチャレンジ - わたしの菜園日記

町を歩いていて
ふと見上げると真っ赤な花がちょうど盛りを迎えていました。

紅梅かと思いましたが
「歳時記」を開くと
「紅梅は白梅に比べ開花がやや遅い」とありますから
違うかもしれません。
花の名前、木々の名前は本当に難しい。

自分の畑に置いていたバケツにまだ氷が張っていて
この日の朝も冷えたのでしょう。

こういう寒い日は
畑に行ってもすることがあまりないので
やってくる利用者の人も少ない。
そこで、畑を貸している会社が考えたのが
「ウィンターチャレンジ」。
「クエストにチャレンジして冬の畑を楽しもう」というサブタイトルがついています。

「クエスト」というのは「冒険の旅」という意味。
せっかくなので、いざチャレンジの旅へ。

全部できなくても大丈夫。
私がチャレンジしたのは
畑に置かれているクイズに答えていくもの。
こんな感じで問題がおかれています。

例えば、
「発芽に必要な3要素は、水・空気、そしてもうひとつは?」みたいな
まっとうな問題から
なぞなぞのようなものまで(これが結構難しい)
問題が張られた箇所を探して解いていきます。
知り合いを見つけて
わいわいがやがやと楽しむ。
寒い日の畑の楽しい時間の過ごし方かも。
参加賞として卓上カレンダーをもらいました。
ちなみに、先ほどの答えは「温度」。

こういう遊びがあるから
うれしいですよね。
スタッフの皆さん、ありがとうございました。

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今日紹介する
マンロー・リーフ作、
ロバート・ローソン絵、
光吉夏弥さん訳の
『はなのすきなうし』は
日本で1954年に出版された絵本です。
原作は1936年にアメリカで出版されています。
この絵本を知るきっかけは
以前紹介した『わたしのなつかしい一冊』で
落合恵子さんが薦めていたからです。
いい絵本を教えてもらって
感謝です。
すべてひらがな表記で書かれた
やさしい絵本ですが
とっても深い内容の一冊です。
じゃあ、読もう。

子どもの頃に、「男の子なら男の子らしく」とか「女のでしょ、女の子らしくしないと」と言われたことはないでしょうか。
考えてみると、この「らしく」という言葉、なんとなく強制を強いるように聞こえます。
そもそも、「男の子らしく」とはどういう子どもをいうのでしょう。
元気いっぱい外を走り回る子どもでしょうか。
では、「女の子らしく」は、お人形遊びしているような子どもでしょうか。
この「らしく」という言葉のせいで、個性を生かしきれないまま育った人もたくさんいるような気がします。
では、牛の場合はどうでしょう。
「牛らしい」というのはどんな牛でしょうか。
「あたまをふりたて、じめんをけちらかして、あばれまわる」、そんな牛。
もっとも、そんな牛は闘牛用の牛ですが。
原作が1936年という、もうりっぱな古典のこの絵本の主人公の牛「ふぇるじなんど」は、そんな牛ではありませんでした。
花が好きな、おとなしい牛でした。
ところが、牛買いたちがやってきた日、「ふぇるじなんど」は蜂に刺されて、大暴れ。
それを見た牛買いたちは、「牛らしい」牛を見つけたと大喜びします。
やがて、闘牛場に連れてこられた「ふぇるじなんど」ですが、さて闘えるのでしょうか。
こういう素敵な絵本が昔からありながら、やっぱり「男の子らしく」とか「女の子らしく」と育てられてきました。
花が好きな牛だって、幸せに暮らせることを「ふぇるじなんど」がもうずっと前から教えてくれていたのに。
(2022/02/06 投稿)

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02/05/2022 日本映画の一位は、やっぱり!! - 映画雑誌「キネマ旬報」ベスト・テンの話

第95回キネマ旬報ベスト・テンの
第1位と各賞の発表がありました。
つまり、2021年度の映画賞ですね。
昔はベスト・テンすべてが新聞とかで公表になったものですが
今は2位以降は「キネマ旬報」本誌でしか掲載していないみたい。
きっと雑誌の売れ行きに関係するのでしょうね。
それはともかく、
今日はそのベスト・テンの話を。

これは予想通りというか
昨年のカンヌ国際映画祭で脚本賞を受け、
すでにさまざまな賞を受賞して、
今やアメリカのアカデミー賞へのノミネートも期待される
濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」が受賞。
濱口竜介監督は監督賞も受賞しています。
この作品の原作は
村上春樹さんの『女のいない男たち』に収録されている短編ですが
原作本も今すごく読まれていて
2014年に出た本ですが
図書館で借りるにも順番待ちが続いています。

クロエ・ジャオ監督の「ノマドランド」。
この作品は昨年アメリカのアカデミー賞作品賞を受賞していて
貫禄の1位。
このブログでもこの作品のことは
すでに書きましたね。

主演女優賞は映画「茜色に焼かれる」ほかで
尾野真千子さんが受賞。
この人、うまいからな。
うまいといえば、主演男優賞の役所広司さんも。
どんな役を演じてもいい。
助演男優賞には
映画「孤狼の血 LEVEL2」で鬼気迫る演技を見せた
鈴木亮平さん。
「孤狼の血 LEVEL2」は白石和彌監督作品。
ヤクザ映画にくくられるのでしょうが、
その壮絶さはすごい。

日本アカデミー賞と米国アカデミー賞の発表もあって
映画ファンには
待ちきれない日々になりそうです。

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02/04/2022 一度きりの大泉の話(萩尾 望都):書評「藪の中 - 答えはあるのですよね」

今日は二十四節気のひとつ
立春。
暦の上では、春ですが、が
常套句になっている日です。
立春の米こぼれをり葛西橋 石田 波郷
そんな日に
問題作として話題になっている本を
紹介します。
萩尾望都さんの『一度きりの大泉の話』。
萩尾望都さんといえば
少女漫画の神様のようにいわれている漫画家。
この本は
竹宮恵子さんとの若き日の確執を描いたもの。
少女漫画のファンには
衝撃の一冊です。
じゃあ、読もう。

日本人は何かとグループ付けをするのが好きで、特に優秀な一群には何らかの名前がつく。
古いが「花の中三トリオ」というアイドルの一群もあれば、「花の61組」と称される大相撲の力士たちもいる。最近では、女子ゴルフの「黄金世代」も、そういうグループ付けだろう。
少女漫画にもかつて「24年組」と総称された一群があったことは有名。
あるいは、手塚治虫や石ノ森章太郎などの漫画家たちの一群を「トキワ荘グループ」と呼んだように、「大泉サロン」と呼ばれた少女漫画家たちがいた。本人たち自身がそう呼んだかは別にして。
その筆頭が竹宮恵子さん(昭和25年生まれ)だろう。
そして、もう一人がこの本の著者萩尾望都さん。(昭和24年生まれ)
この二人が少女漫画の革新に多大な影響を与えたことは間違いない。少年漫画にしか見向きもしなかった多くの少年たちも惹きつけた功績は大きい。
この二人が1970年から2年間、東京の大泉という地で共同生活をしていたのも事実だから、そのことをもって「大泉サロン」と呼びたい人もいるのはわかる。
しかし、この二人にはとんでもない、半世紀以上経っても解けない確執があったことを多くの人は、この本を読むまで知らなかったのではないだろうか。
どんなことが発端であったのか、それをここで書くことはできない。(何故なら、それこそこの本の核心なのだから)
この本を読んで、まだ「花の24年組」といえるか。「大泉サロン」と称賛できるか。
とっても、こわい一冊といえる。
(2022/02/04 投稿)

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02/03/2022 月夜の森の梟(小池 真理子):書評「これほど静かな気持ちで本を読むこともない」

新聞は購読していますが
それほど熱心な読者ではありません。
どちらかといえば
流し読み。
そんな私がふと手を止めて
読んでいたのが
小池真理子さんが
朝日新聞の土曜日版に連載していたエッセイ
『月夜の森の梟』です。
本になったら
必ず読もうと決めていました。
こうして本になって
休まず一息に読んでしまうのも
自分では珍しいこと。
そっと本を閉じていました。
そんな本です。
じゃあ、読もう。

漢字「喪」には、「人が亡くなったあと近親者が一定期間悲しみの意を表す礼」を指す意味があるが、「うしなう」とか「なくす」ということも指す。
人は一人で生まれ、一人で生きていくわけではない。
どのような形、どのような濃淡があるにしろ、人は誰かと交わり、やがていつかその人を喪う。その時、その悲しみやつらさ、寂しさの時間をどう生きるか。
寄り添う人があればいいし、もしそんな人がいなくとも、寄り添ってくれる文章があればなんとかしのげるかもしれない。
本書は、夫で直木賞作家だった藤田宜永さんを2020年1月30日に亡くされた妻で同じく直木賞作家の小池真理子さんが、亡くなったあと数か月後から朝日新聞に連載を始めたエッセイをまとめたもの。
新聞連載時からその一編一編にジンと胸に迫るものがあったが、書籍化され、まとまって読むとさらに胸をうつ。
こういう夫婦の形もあるのだな。
こういう喪の時間もあるのだな。
もしかしたら、小池さんはこのエッセイを書くことで、自身の喪と向き合い、悲しみとか寂しさをしのいできたのではないだろうか。
あの時こんなことがあった、こんな時間を過ごした、あんな会話をかわした。
このエッセイにはそんな小池さんの滲むような思いに満ちている。
中でも、死が逃れられないことを知った夜、カップラーメンをすすったという一話は胸を打つ。
抜粋する。
「気が狂いそうだった。箸を置き。鼻水をすすり、手を伸ばして彼の肩や腕をそっと撫で続けた。」
こんな一節を小池さんは一人になった静かな夜に綴ったのだろうか。
(2022/02/03 投稿)

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02/02/2022 追悼・石原慎太郎さん - 太陽の季節(石原 慎太郎):再録書評「これは事件でした!」

芥川賞作家で元東京都知事の
石原慎太郎さんが亡くなったというニュースが
昨日コロナ禍が蔓延する日本列島を駆け巡りました。
思えば、
石原慎太郎さんが『太陽の季節』で芥川賞を受賞した時も衝撃できたし、
国会議員や東京都知事に当選した時も
圧倒的でした。
やはりあのデビュー作があったから
この人は何かしてくれるのではないかという期待が
多くの人にあったのだと思います。
政治家としての功罪は
これから歴史家が明らかにするでしょうが、
作家として成し遂げた実績はもっと評価されてもいいかもしれません。
私が『太陽の季節』を読んだのは
高校生の時でしたし、
そのあと当時新潮文庫で揃っていた作品を
何冊か読んだものです。
今日は追悼の思いを込めて
『太陽の季節』を再録書評で載せておきます。
この書評を書いた2012年は
まだ東京都知事でした。
考えてみれば、
89歳の人生、ずっと駆け足でした。
石原慎太郎さん
お疲れさまでした。
ご冥福をお祈りします

第34回芥川賞受賞作。(1955年)
いうまでもなく、2012年当時東京都都知事である石原慎太郎の記念すべき作品で、この作品がなければ今の都政も存在しなかったかもしれないし、石原裕次郎というスターも誕生しなかったかもしれない。
あるいは、芥川賞自体が今でも社会的な出来事として取り上げられるのは、この作品があったおかげである。
それほどに、当時(昭和30年)の日本にとって、この作品がもたらしたものは大きい。
戦後という、あるいは昭和という歴史を論じる場合であっても、この作品、あるいはこの作品があらわにした風俗を避けてはとおれない。
受賞時の選評を読むと、石川達三委員が「危険を感じながら」推薦し、舟橋聖一委員は「ハッタリや嫌味があっても、非常に明るくはっきりしている」と絶賛する一方、佐藤春夫委員は「風俗小説」と断じ、「この当選に連帯責任は負わない」とまで言い切っている。もう一人の反対者宇野浩二委員も「一種の下らぬ通俗小説」としている。
では、この作品が「風俗小説」あるいは「通俗小説」であったかといえば、昭和30年という時代背景を考えると、ここに書かれた青年たちの行動は先鋭な階級たちのめぐまれたものといえる。
大学に通い、ヨットを持ち、毎夜ナイトバーに出入りする若者。当時、どれだけの人がそういう世界を共有していただろうか。
多くの庶民はまだまだ貧しい生活を強いられていた。中学を出て働く若者はたくさんいた。
だとすれば、当時この作品が読まれたのは、まだ見ぬ世界をのぞかせてくれる映画的な世界の延長としてあっただろうし、階級を越えて充足されない青春期の苛立ちの共有としてあったのだと推測される。
この作品の発表から60年近い年月が経ち、現代の若者たちがこの作品をつまらないと評するのは短絡的すぎる。
この作品が発表された当時の社会のありかたを想像さえできれば、それを取り除けばあまりにも純粋な青春小説として読むことは可能だ。
作者である石原慎太郎は2012年芥川賞の選考委員を「刺激がない」と辞任したが、石原の受賞作が「刺激があった」とすれば障子を突き破った陰茎ぐらいかもしれない。
それほどに、この作品の根底にあるのは、常に変わらぬ青春期の彷徨だといえる。
(2012/10/12 投稿)

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02/01/2022 ハレルヤ!(重松 清):書評「彼らの人生、まだ途上」

今日は
久しぶりの重松清さんです。
新潮文庫のオリジナルとして
昨年夏に出た
『ハレルヤ!』。
重松清さんの作品としては
これも新潮文庫の『カレーライス』以来ですから
もう半年以上読んでいないことになります。
ある時期、
重松清さんの新刊が出るたびに
追いかけるように読んでいたのですが。
今回久しぶりに読んで
重松清節はいまだ衰えずと感じました。
もっとも
この作品は2011年で書き終えていたものですが。
じゃあ、読もう。

ロックミュージシャン忌野清志郎が58歳の若さで亡くなったのは、2009年5月2日。
それから1週間後の9日に青山葬儀場で葬儀が営まれ、何万というファンが弔問に訪れたという。
その日をきっかけに、かつて高校から大学にかけて5人組のバンドを組んでいた一人の女性がかつての仲間を訪ねて「ツアー」に出ることを決心する。
それがこの長い(けれど、物語では葬儀から三日後の5月12日から13日にかけてのたった一夜が描かれるだけ)物語の発端。
彼女もすでに46歳。人生後半戦を意識する年。
息子は大学生になって自立し始めたところ。
しかし、彼女のかつての仲間は、一人の男性はリストラにあって失業中、もう一人の男性は新聞社で猛烈に働いた結果妻に去られ会社でも疎まれている。
女性仲間の一人は40歳を過ぎて双子が誕生し育児に追われているし、もう一人は不倫の末に自殺未遂騒動まで起こしてしまう。
そんな彼らの人生を、かわいそうだとか悲惨だとか思うことはない。
語られるのはそういうことだが、物語が終わってしまえば、まだまだ頑張れるぞと彼らと共に感じるのではないだろうか。
そのあたりが、重松清の巧さだ。
この物語にはもうひとつ側面があって、それは2009年7月から始まった長い連載の終わりになって、2011年3月の東日本大震災を迎えたことである。
物語の最後にそのことを書かざるをえなくなったのも、重松清らしいと書いておこう。
(2022/02/01 投稿)

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