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 先週大森立嗣監督の映画「日日是好日」(原作 森下典子)の話を書きましたが
 その映画の冒頭で
 まだ少女時代の主人公一家が映画を観て家に帰ってくる場面があります。
 「ディズニーの方がよかった」と
 少女を嘆かせた映画、
 それがフェデリコ・フェリーニ監督の「」。
 その後、成長した少女は
 この映画が持っている奥深さに魅かれていきます。
 森下典子さんの原作にも

  フェリーニの『道』は、見るたびに「別もの」になった。
  見るたびに深くなっていった。

 と、書かれています。
 今日は、そんな「」の話です。

   

 映画「」は1954年公開のイタリア映画。
 第29回アカデミー賞の「外国語映画賞」を受賞しているほどの名作です。
 私も何度も観ています。
 監督はイタリア映画の巨匠フェデリコ・フェリーニ
 主人公ジェルソミーナを演じた
 ジュリエッタ・マシーナフェリーニ監督の奥さんでもあります。
 ジェルソミーナは少し薄弱だけど純粋、
 そんな少女をジュリエッタ・マシーナは見事に演じています。
 一方、そんなジェルソミーナを相棒として連れ歩く
 粗暴な大道芸人ザンパノを演じているのがアンソニー・クイン
 その粗暴さゆえに人を殺めてしまい、
 そのことでジェルソミーナは次第に狂っていきます。
 そんな彼女をついにザンパノは置き去りにしてしまいます。
 何年も経って、ある小さな町で
 ザンパノはかつてジェルソミーナがよく口ずさんでいたメロディを耳にします。
 そして、ザンパノはジェルソミーナの死を知るのです。

 この映画の音楽を担当したのが
 ニーノ・ロータ
 おそらく誰もが一度は耳にしているのではないでしょうか、
 映画音楽の名作中の名作です。
 もし、この映画音楽がなければ
 この映画の魅力は半減したかもしれません。

 映画の名セリフを集めた和田誠さんの
 『お楽しみはこれからだ』のPART1にも
 この映画が取り上げられていて、
 和田誠さんが選んだセリフがこれ。

   どんなものでも役に立つんだ。
   たとえばこの小石だって役に立っている。
   空の星だってそうだ。君もそうなんだ。

 この言葉にジェルソミーナは生きる意味を
 感じとるのです。

 この映画ができて
 70年近くなりますが
 いい映画が時代を超えても感動するし
 いい映画音楽は心に染みわたります。

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 今日は祝日、昭和の日

   名画座の三本立てや昭和の日    原田 紫野

 昭和30年生まれの私には
 4月29日は「天皇誕生日」という気分がまだ濃い。
 もちろん、この時の「天皇」は昭和天皇のこと。
 昭和の時代は64年まであったので
 私が30代半ば前となります。
 ということは、私の人生ほぼ半分が昭和ということです。

 今回「わたしのなつかしい本たち」で紹介するのは
 宮本輝さんの『春の夢』。

  

 私が持っている文春文庫版は1988年2月刊行となっていますから
 昭和が終わる1年前のもの。
 ちなみに単行本は1980年12月に出版されています。
 私の読書生活を振り返ると、
 30代の読書に宮本輝さんの作品は欠かせない。
 新刊が出るたびに図書館で借り、
 文庫本になれば購入と
 出る作品のたびにはまったものです。
 今までの生活の中で
 多くの本を手放しましたが、
 何故か宮本輝さんの文庫本は本棚に残っています。

 今回再読した『春の夢』は
 とても印象的な動物が登場します。
 主人公の青年が父親の残した借金から逃げるように
 独り暮らしを始めたアパートの柱に
 まちがって釘を打ち込んだ
 一匹のトカゲです。
 貧しさで時には自暴自棄になりながらも
 彼を支える美しい娘。
 青年は時にその娘の不純さえ疑います。
 柱に打ちつけられたトカゲは
 まるで運命に翻弄される青年のようです。
 宮本輝さんの作品の底流には
 いつも生と死という抗い難い
 宿命のようなものが描かれていたように思います。

 先日「歳時記」を開いていると
 「春の夢」という季語があることに
 気がつきました。
 「華やかだがはかない人生のたとえに用いられる」と
 解説にありました。

    古き古き恋人に逢ふ春の夢        草村 素子

 私のとっての宮本輝作品こそ
 「古き古き恋人」のようなものかもしれません。

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プレゼント 書評こぼれ話

  ノンフィクション作家沢木耕太郎さんが
  『防人のブルース』でデビューしたのが
  1970年のこと。
  そのことが象徴するかのように
  70年代はノンフィクションの時代といっていい。
  柳田邦男本田靖春立花隆といった
  ビッグネームが綺羅星のように
  輝いていました。
  そんな中、
  今日紹介する『淋しき越山会の女王』を書いた
  児玉隆也さんは
  流れ星のようにして
  去っていきました。
  ちょっと前にNHKの番組で
  田中角栄退陣の話をしていて
  そういえば
  児玉隆也さんの作品をちゃんと読んでなかったなと
  今回手にしました。
  逝ってしまった流れ星を
  今は惜しむしかありません。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  表題作よりむしろ「ガン病棟の九十九日」を薦める                   

 38歳というのはどんな年齢だろうか。
 学校を出て働きだして十年以上たって、組織の中では中堅どころとして期待されるそんな年齢だし、家庭では結婚して子供がいてもまだせいぜい小学生といったところだろう。
 その年で、ガンでなくなるのは、周りの人の思い以上に、本人には言い尽くせない感情があったと推測する。
 まして、彼の場合、ノンフィクション作家としてこれからの活躍をどれだけの人が期待していたことか。
 彼の名は、児玉隆也。
 1975年5月、38歳の短い人生を終えたノンフィクション作家だ。

 大学を出て女性誌の記者になる。その後フリーの記者になったのが35歳の時だから、ノンフィクション作家としての活動は極めて短い。
 それでいて、彼の名前が今でも語られるのは、この本のタイトルにもなっている「淋しき越山会の女王」という作品によるものだ。
 といっても、「越山会」といわれても、今では覚えている人も少ないかもしれない。
 かつて「今太閤」と人気を誇った総理大臣田中角栄の後援会の名称であり、この作品ではその金庫番ともいえる女性を描いた作品である。
 この作品とともに立花隆の「田中角栄研究-その金脈と人脈」の雑誌連載が、田中角栄を退陣に追い込むことになる。

 この文庫本では児玉が学生時代に綴った「子から見た母」や水俣病の原因となったチッソを描いた「チッソだけが、なぜ」のほか、自身のガンの闘病記となる「ガン病棟の九十九日」などが収められている。
 特に「ガン病棟の九十九日」は今読んでも新鮮で、ノンフィクション作品として古典の風格さえ感じる名作だ。
  
(2022/04/28 投稿)

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  エルキュール・ポアロとミス・マープル、
  どちらか好きかときかれたら
  うーむ、と首を傾むけたあと
  ミス・マープルと答えるかな。
  今日紹介するのは
  そのミス・マープルものの一冊、
  『復讐の女神』。
  でも、なんだかこの作品の彼女は
  アマチュアらしくなくて
  ちょっと違和感あるな、私は。
  いつもの霜月蒼さんの
  『アガサ・クリスティー完全攻略』では
  ★★★★の高評価。
  ここでも
  うーむ、と首傾げましたが。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  この謎がどうしてとけるのだろう                   

 アガサ・クリスティーの二大スターのひとり、ミス・マープルが活躍する長編で、1971年に発表されたもの。
 原題は「Nemesis」。
 アガサが亡くなるのは1976年だから、晩年の作品といっていいし、ミス・マープルものとして書かれた最後の作品だという。
 それにこれは『カリブ海の秘密』という作品の続編となっていて、今回の物語の発端は『カリブ海の秘密』でともに事件を解決した大富豪ラフィールの謎に満ちた遺言から始まる。

 ほとんど謎だらけの依頼をミス・マープルは受け、それによってまさに「ミステリーツアー」に出かけるのだが、そこからの展開があまりにも強引すぎるように感じる。
 彼女なら依頼を断ることはないという前提で、そこから先のことがらが仕掛けられているのだが、もし彼女が断ったらどうなったの か。
 さらには彼女が同行した「ミステリーツアー」のメンバーが落石事故で死んでしまうなんて、あまりにも都合よすぎではないか。
 まるで、依頼したラフィールが仕掛けた大掛かりの事件のように思えてくる。

 しかもミス・マープルが解決する事件は過去の少女殺害事件。
 その時の被害者の少女は顔をつぶされていたほどの残酷な殺され方をしていたという。多分この仕掛けはミステリーにはよく使われる手口で、多くの読者は被害者は別の人物と気づくだろう。
 といって、犯人が容易にみつかるはずもない。
 何しろあまりにもミステリーだから。
 それで、犯人を探し出すのだから、やっぱりミス・マープルは普通のおばあさんではない。
  
(2022/04/27 投稿)

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  今日は
  手塚治虫さんの
  『手塚マンガでエコロジー入門』という本を
  紹介します。
  久しぶりに
  手塚治虫さんの漫画を読みましたが
  全然古びていないことに
  驚きました。
  なんといっても
  昭和の漫画の代表格で、
  漫画という表現形態は
  時代を超越するのだなと
  感心しました、
  解説は手塚治虫さんの娘さんである
  手塚るみ子さんが書いています。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  今でも古びない作品と思考                   

 「漫画の神様」とも呼ばれる漫画家手塚治虫さんが亡くなったのは、昭和が終わって平成に代わって間もない1989年2月9日でした。
 没後すでに30年以上になりますが、例えばこの本のように2019年に刊行されたアンソロジーになったり、今でも古びることがありません。
 ましてや、最近よくいわれるSDGs (エス・ディー・ジーズ・持続可能な開発目標)の先駆けともいっていい作品を数多く残していることが、この本に収められた作品を読んでわかります。

 本のタイトルにあるとおり、手塚マンガを通して「エコロジー」について考えることができるように構成されています。
 収録されている漫画は、「モンモン山が泣いている」「原人イシの物語」という2つの短編漫画、それと「ブラック・ジャック」から4篇、「三つ目がとおる」「鉄腕アトム」からそれぞれ1篇ずつの、計8篇です。
 それらの漫画の間に、手塚さんのエッセイ『ガラスの地球を救え』から抜粋された短文が編集されています。
 感心するのは、「ブラック・ジャック」や「鉄腕アトム」といった人気連載漫画の作品の中に、「エコロジー」を考える内容のものが何の違和感もなく描かれていることです。
 きっと手塚さんの心の底流に、人をおもう、自然をおもう、地球をおもう、そんな気持ちがあり続けたのだと思います。
 そのことがいかに大事かということを、漫画であれば、子供たちにも伝えられる。
 だからこそ、手塚マンガが決して古びないのです。
  
(2022/04/26 投稿)

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 大型連休を今週末に控え
 街のあちこちに
 若々しい木々の緑が目立つようになってきました。

  20220423_090224_convert_20220423202414.jpg

 さらに
 今が盛りといろんな花が咲いています。
 街をちょっと歩くだけで
 植物園を散策した気分になれます。

  20220418_084907_convert_20220423202342.jpg

    花びらのうすしと思ふ白つつじ        高野 素十

 菜園でも
 いよいよ今週金曜には夏野菜の苗が入荷してきます。
 なので
 先日の土曜日(4月23日)に大急ぎで畝づくりしました。
 今回作った畝は
 便宜上1番畝、2番畝と呼んでいますが
 そこにはナス科の野菜を植えます。
 ナス科の野菜は収穫が長く続くので
 元肥は溝施肥にしました。

  20220423_105530_convert_20220423202629.jpg

 写真の手前が1番畝、その向こうが2番畝です。
 1番畝にはナスピーマンを植えますが
 その間にサンチュを育てます。
 少し前に栽培ポットに種を蒔いていて
 それを植え付けました。

 2番畝にはトマトエダマメを育てます。
 マメ科の野菜は肥料をいれないので
 出来た畝にさっそく種を蒔きました。

  20220423_105400_convert_20220423202555.jpg

 2番畝の奥に見えていたのが
 ソラマメ

  20220423_094902_convert_20220423202515.jpg

 だんだん空にむかって大きくなってきました。
 その横でスナップエンドウを育てているのですが
 あまり育たない苗もあって
 収穫はたくさんできていません。

  20220423_091803_convert_20220423202445.jpg

 それでも
 莢の数でいえば30ほどはあったでしょうか。

  20220423_115501_convert_20220423202656.jpg

 さあ、週末には夏野菜の植え付けです。
 毎日のように天気予報を見て
 一喜一憂しているこの頃です。

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日の4月23日は
  「こども読書の日」で、
  5月12日まで「こどもの読書週間」にあたります。
  今年のポスターは
  絵本作家の荒井良二さんのイラストです。

  2022kodomoposimage_convert_20220422165041.jpg

  標語は

    ひとみキラキラ 本にドキドキ

  子供だけでなく
  いくつになっても
  本にドキドキする人でありたいものです。
  今日は
  堀米薫さんの
  『うみべの文庫~絵本がつなぐ物語~』という本を
  紹介します。
  児童向けのノンフィクションです。
  この本の中にも
  ひとみをキラキラさせて絵本を読む子供たちが
  描かれています。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  この場所で本と出会った子供たちの幸せ                   

 これは、宮城県塩竈市の港のそばにあった「うみべの文庫」という家庭文庫のお話です。
児童向けに書かれたノンフィクションです。
 家庭文庫というのは、個人が自宅と蔵書を開放して、近所の子どもたちに本を貸し出したり、お話をして聞かせたりする、小さな活動のことをいいます。
 「うみべの文庫」は、長谷川ゆきさんという女性が始めました。
 ここには5千冊の絵本があったそうです。
 「あった」と過去形で書いたのは、今はもうなくなっています。そして、活動を始めた長谷川ゆきさんも2018年に病気で亡くなっています。

 長谷川さんが絵本としっかりと出会ったのは、子供が生まれて図書館に通いだしてから。
 この頃、長谷川さんは交通事故で大けがをします。それでも出かけた図書館で、知らない子供から絵本を読んでとねだられたりします。
 それから長谷川さんは読み聞かせ講座に出たり、実際に読み聞かせをしたりして絵本にもっと親しんでいきます。
 そして、家庭文庫があることを知ります。
 そこから何年もかけて絵本をそろえていきます。
 その数が800冊を超えた2011年3月11日、東日本大震災の大きな津波が襲います。集めた絵本はたった2冊をのぞいて、すべて流されます。
 一度はあきらめかけた長谷川さんの夢を知った多くの見知らぬ人の善意で、全国から絵本が集まりだして、長谷川さんはついに家庭文庫の解説という夢をかなえることができるのです。

 そんな「うみべの文庫」がなくなってしまったのは残念ですが、長谷川さんの本の力を信じる思いがこうして一冊の児童書になりました。
 この本のなかの長谷川ゆきさんの笑顔が、とても輝いています。
  
(2022/04/24 投稿)

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 メイキング映像は
 今でこそ当たり前のようになっていますが
 たぶんDVDとかが普及して
 本編の「おまけ」的に付き始めたのがきっかけだったのではないかな。
 それがエッセイになったのが
 昨日紹介した
 森下典子さんの『青嵐の庭にすわる』で、
 こちらがメイキングだとすれば
 本編はもちろん2018年公開の「日日是好日」。
 今日は映画「日日是好日」の話です。

  

 森下典子さんの『青嵐の庭にすわる』は
 原作者である森下典子さんのところに
 映画プロデューサーの吉村知己さんが映画化の依頼に
 やってくる場面から始まります。
 監督は大森立嗣さん。
 主人公役に黒木華さん、お茶の先生役に樹木希林さんと
 次々に決まっていきます。

 映画に出てくるお茶の先生の家や茶室、それに庭は
 なんと映画のためにこしらえたそうです。
 それを知ると
 映画って本当にすごいと思います。
 映画の後半に
 「マンサク」の花が出てきますが
 実はこれスタッフの手作り! なんだとか。
 『青嵐の庭にすわる』を読んだあと、
 映画を再見したのですが、
 アップになる「マンサク」の花に
 大森立嗣監督のスタッフへのねぎらいと感謝が込められているようで
 いいシーンでした。
 これから映画を観る方は
 ぜひこの場面のお見逃しなく。

 この映画が樹木希林さんにとって
 最後の出演となりましたが
 茶道の経験もなく
 まさに「演技」でお茶の先生を演じ、
 観客を魅了するのですから
 さすがです。

 この映画のラスト、
 主演の黒木華さんのナレーションが流れる。
 「世の中は激変した。世界中で誰も想像できないようなことが起きた」
 この映画の公開は2018年、
 まだコロナ禍が世界を襲う前のこと。
 いい芸術は時代を先取りする見本のようです。
 そこに樹木希林さんのセリフが続きます。

   毎年毎年、同じことの繰り返しなんですけれども。
   でも、私、最近思うんですよ。
   こうして、同じことができるってことが、ほんと幸せなんだなぁって。

 脚本も大森立嗣さん。
 もちろん監督も脚本もいいのですが
 森下典子さんの『青嵐の庭にすわる』を読むと
 スタッフ全員に拍手を送りたくなります。
 何度観ても
 いい映画です。

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プレゼント 書評こぼれ話

  映画の長いエンドロール。
  映画館などで途中で退場していく人もいるようです。
  昔の映画は
  スタッフや配役などは本編が始まる前に
  流れていたものですが
  最近はほとんど最後。
  しかも、その人数はすごい。
  映画は総合芸術と言われますが、
  あの長いエンドロールに登場する皆さんの
  知恵と努力で出来上がっているのです。
  今日紹介する森下典子さんの
  『青嵐の庭にすわる 「日日是好日」物語』は
  映画化された「日日是好日」の原作者である
  森下典子さんが体験された
  映画製作の現場の記録です。
  映画に匹敵する面白さです。
  明日は映画「日日是好日」の話をしましょう。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  「モテ期」は嵐のように                   

 「モテ期」という言葉があります。異性から愛されることが多くなる時期のことを指すようで、人生には2度か3度「モテ期」があるそうです。
 相手が異性とは限らなくて、もしかしたらそれは長い人生にもあって、誰にでも人生の「モテ期」と思われる事柄があるように思えます。
 森下典子さんの場合も、還暦を迎えて、まさに人生の「モテ期」になったのではないでしょうか。
 そして、本書はベストセラーとなった森下さんのエッセイ『日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』の映画ができあがるまでのメイキング・エッセイですが、読みようによっては「モテ期」の幸福な時間の記録ともいえます。

 そもそもエッセイ『日日是好日』が最初に出版されたのは2002年。それから6年経って文庫にはいったものの、大きな話題になったわけではない。
 文庫化から10年めの2018年秋に大森立嗣監督による映画化で、映画も書籍も大ブレークとなります。
 森下エッセイの中でお茶の先生役を樹木希林さんが演じ、公開前にして亡くなられたことももしかしたら時の運なのでしょうか。
 樹木希林さんの最後の演技に誰もがほおっと吐息をついたことでしょう。

 森下さんにとって、子供時代にテレビで見知った女優さんと交流をもつことも考えなかったでしょう。
 まして、自身のエッセイの映画化が高い評価を得たことも。
 本作の「青嵐」は、森下さんにとって映画製作現場を表現したものですが、それは「モテ期」という嵐の中にいることでもあります。 
  
(2022/04/22 投稿)

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  今日は
  佐高信さんの
  『企業と経済を読み解く小説50』という本を
  紹介するのですが、
  この本を読むと
  あまり「経済小説」を読んでこなかったことに
  思い当たりました。
  もちろん、池井戸潤さんのように
  その作品のほとんどを読んできた作家もいますが、
  この本で紹介されている作家の多くが
  未読の人でした。
  せっかくなので、
  この本から見つけた
  作品を今度読んでみようと思います。
  それでこそ、ブックガイドの魅力です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  面白そうな経済小説がいっぱい                   

 読書が苦手な人に多いのは、どんな本を読んでいいかわからないという悩み。
 そんな時に役立つのが「ブックガイド」だ。
 ただその形式は様々で、単独の著者によって書かれたものか複数の紹介者でできたものか、
 あるテーマに沿って紹介されているのか、テーマに関係なく集められたものか。
 そうなれば、どんな「ブックガイド」を読めばいいのか迷ってしまうかもしれないが、あとは自分の好みと考えて手に取るしかない。

 この新書の場合、経済評論家の佐高信氏が「企業と経済」を描いた小説を50冊選んで紹介している「ブックガイド」となる。
 佐高信氏といえば辛口の評論家で人気だから、氏の選ぶ50冊ともなれば独特な作品が多いのではないかと思いがちだが、そんなことはない。
 氏が敬愛する城山三郎『小説日本銀行』の作品をはじめとして、石川達三『金環蝕』、松本清張『空の城』、山崎豊子『沈まぬ太陽』、宮部みゆき『火車』、池井戸潤『果つる底なき』など幅広く作品が集められている。
 もっとも、この手の「ブックガイド」となるとどうしてあの本が紹介されていないということがあるが、基本一作者にひとつの作品となっているようだから、辛抱するしかない。

 「この国においてこれまで経済小説が正当に評価されてきたとは言い難い」と、佐高氏はいう。
 実際には多くの読者がいる経済小説に、こういう「ブックガイド」で光が当たれば、もっといい作品に出会えるに違いない。
  
(2022/04/21 投稿)

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  今日は
  二十四節気のひとつ、穀雨

    まつすぐに草立ち上がる穀雨かな       岬 雪夫

  これから草木がぐんと成長する頃ですが
  人にもそういう瞬間があります。
  今日紹介する
  葉室麟さんの『約束』は
  葉室麟さんが亡くなったあと
  未発表の原稿として
  見つかった作品です。
  まさにこの作品を書いていた時、
  葉室麟さんはこの時期の草木のように
  立ち上がろうとしていたのでしょう。
  こうして、また
  葉室麟さんの新しい作品に出会えるなんて
  うれしい限りです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  葉室麟さんの幻のデビュー作                   

 葉室麟さんが亡くなったのが、2017年12月。
 没後しばらくの間、何冊かの新刊が刊行され、葉室さんの生前の活躍を実感できましたが、さすがに歳月を経れば、新刊が出ることもありませんでした。
 ところが、「幻のデビュー作」ともいえる作品が、文庫のオリジナルで出版されたのですから、葉室ファンにとっては驚きです。
 葉室さんのデビュー作といえば、2005年の『乾山晩愁』となっていますが、本作は同じ頃に執筆されたと推測されています。

 現代の高校生男女4人が雷に打たれ、気がつけば明治維新間もない時代に転生していたという、葉室さんには珍しいSF仕立ての作品に仕上がっている。
 やはり「若書き」かと思ってしまうが、この作品の骨格には西郷隆盛と大久保利通二人の葛藤が描かれている。
 それは、葉室麟さんが尊敬してやまなかった司馬遼太郎の『翔ぶが如く』を意識したものではなかっただろうか。
 さらにいえば、葉室さんの作家としての眼は同じ九州の怪傑である西郷隆盛をデビュー前から描きたい一心だったように思える。
 葉室さんの最後の作品群のなかに西郷隆盛の青春期を描いた『大獄 西郷青嵐賦』があるが、葉室さんは作家として常に西郷を意識していたのだろう。

 幕末期西郷のあと追うように突き進んだ大久保利通と何故最後決別しなければならなかったか、その答えを葉室さんはこのそっけないようなタイトルに込めている。
 ラストの大久保の言葉こそ、葉室さんが書きたかったことにちがいない。
  
(2022/04/20 投稿)

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  NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
  毎週楽しく見ています。
  結構面白い、歴史の裏話のようなエピソードも多く
  それが実際の事実に近いのも
  ドラマを面白くしている要素になっています。
  そういえば、
  司馬遼太郎さんの「街道をゆく」シリーズに
  大河ドラマの舞台となった
  鎌倉を旅した巻があったはずと
  ひっぱりだしてきたのが
  今日紹介する『三浦半島記』。
  久しぶりに読み返しましたが
  面白かった。
  これで大河ドラマがもっと
  楽しめそうです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  大河ドラマの副本として読むのもいい                   

 作家司馬遼太郎さんの代表作のひとつである「街道をゆく」は、司馬さんが日本各地(時には海外も)の街道を歩きながら、そこに生きた人々を描いた紀行エッセイだ。
 司馬さんが鎌倉幕府発祥の地となった神奈川県三浦半島を旅したのは、1994年頃だろうか。(週刊誌に連載されたのは1995年3月から11月にかけてだったから)
 長い「街道をゆく」シリーズでいえば、終わりから二つ目の巻になる。

 この紀行エッセイでは書き出しがいい。
 この巻はこう始まる。
 「相模国の三浦半島は、まことに小さい。」
 短いながら、旅の始まりの高揚感が伝わってくる。
 司馬さんは三浦半島を歩きながら、その隣の伊豆半島の小さな在所に20年いた男のことをおもっている。
 源頼朝である。
 今回の紀行はおのずと頼朝とそのあとの時代、つまりは鎌倉時代を描くことになる。

 「鎌倉の世は、存外ながい。」と、司馬さんは書く。
 頼朝が鎌倉入りして、153年続いたというから、確かに長い。
 といっても、頼朝の血流はわずか三人で終わるから、そのことをなかなか気がつかない。
まして、頼朝という名前が大きすぎ、さすがに北条家はわかるとしても、和田家や三浦家梶原家と彼の鎌倉入りを支えた御家人の  名前は複雑に絡み合ってよくわからない。
 さすがに司馬さんのこの作品を読めば、ある程度は整理ができるはずだ。

 司馬さんはこの旅のおわりに横須賀の港も歩いている。
 『坂の上の雲』執筆時の思い出も語られていて、この巻の旅は気持ちいい。
  
(2022/04/19 投稿)

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 桜は品種によって咲く時期が違いますから
 長く楽しめる花でもあります。
 ソメイヨシノが終わって
 今は遅咲きの八重桜が満開です。

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    八重桜ひとひらに散る八重に散る        山田 弘子

 そして、今はハナミズキがきれいに咲きそろいました。

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    一つづつ花の夜明けの花みづき         加藤 楸邨

 花の変化は
 季節の移ろいでもあります。
 畑でもナバナが収穫の時期を迎えました。

  20220417_102645_convert_20220417135023.jpg

 でも、夏野菜の準備で
 収穫が終われば
 夏野菜のための畝づくりになってしまいます。

 先週畝をこしらえたところに
 ズッキーニの苗を植えました。

  20220417_120252_convert_20220417135210.jpg

 手前の畝は
 この日こしられた新しい畝、
 その向こうにズッキーニの苗を2つ植えました。
 ズッキーニは初めて育てる野菜です。
 カボチャの仲間で、
 受粉が難しいといわれていて
 複数苗を育てるのがいいそうです。
 なので、今回一畝で2つ育てます。
 うまくできるかな。

 こちらはジャガイモ(左側)とインゲン(右側)。

  20220417_114121_convert_20220417135058.jpg

 ジャガイモは芽かきをして
 土寄せをしました。
 インゲンの成長も早い。

 ソラマメに小さな赤ちゃんがつきました。

  20220417_120203_convert_20220417135137.jpg

 これが大きくなって
 空を目指します。

 スナップエンドウ
 この日(4月17日)収穫できました。

  20220417_125112_convert_20220417135238.jpg

 この春最後のダイコンと一緒に
 記念撮影です。

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プレゼント 書評こぼれ話

  近くの菜園で
  私が借りているのは
  ほんの小さな区画ですので
  野菜の栽培も数が限られています。
  それなので、例えば、キャベツなら1シーズンで
  せいぜい2個を育てるのせいぜい。
  だから、収穫をきちんとしないと食べそこないます。
  なので、
  今日紹介する
  なかやみわさんの
  『やさいのがっこう キャベツくん おはなになる?』のように
  キャベツの花を見ることはありません。
  ただうれしいことに
  収穫をしない区画の人もいたりして
  キャベツやハクサイの花を見ることが
  できたりします。
  けっこうきれいな黄色い花が咲きます。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  やさいのがっこうで、しっかり勉強しましょう                   

 花が咲いて実になって、それをいただく。
 野菜にはそんなイメージがあります。
 イチゴもそうだし、トマトもそう。キュウリもナスも、ソラマメもそう。
 もっとも八百屋さんで売っている野菜がどんな花をつけるのかあまり見ることはありませんが。
 ところが、そんな生育の順番からちょっと想像ができない野菜たちがあります。
 ハクサイやダイコン、それにこの絵本の主人公でもあるキャベツ。
 なので、キャベツくんは自分に花が咲くって聞いてびっくりします。
 イチゴやトマトの花を見ることも少ないけれど、それ以上にキャベツに花が咲くなんて、キャベツくん以上に、この絵本を読む子供たちにも想像できないかもしれません。

 キャベツくんが通う「やさいのがっこう」には、なんでもよく知っているなすび先生がいます。
 キャベツくんや仲間の野菜たちに、野菜に花が咲く理由を教えてくれます。
 先生によると、キャベツくんのような野菜はおいしい時期に収穫されないと花が咲いてしまいます。
 つまり、キャベツやハクサイは花になる前のものを八百屋さんで売っているのです。
 イチゴやトマトの花以上にキャベツやハクサイの花を見ることはないのは、花が咲く前の一番おいしい時に食べてしまうからなんです。

 この絵本ではキャベツの防虫対策としてキク科のレタスがいいことや春キャベツと冬キャベツの違いなど、なすび先生がさりげなく教えてくれます。
 「やさいのがっこう」でしっかり野菜のことが勉強できます。
  
(2022/04/17 投稿)

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 先日亡くなられた
 漫画家の藤子不二雄Aさんの追悼番組がいくつか
 NHKで放送されていました。
 そのうちのひとつとして
 NHKBSのプレミアムシネマ
 1996年公開の「トキワ荘の青春」が
 4月11日の夜放映されました。
 今日は、
 映画「トキワ荘の青春」の話です。

   

 藤子不二雄Aさんは
 2011年に放送された「100年インタビュー」という番組で
 自身が青春期を過ごしたトキワ荘の仲間たちとのことを
 こう回顧しています。

   トキワ荘にいたみんなが、あの時あそこにいなければ、
   今まで漫画を続けてこられなかったかも…。

 この時のインタビューはのちに
 『夢追い漫画家60年』という本にもなっています。

  

 このブログでも
 2012年12月22日に書評を書いています。
 トキワ荘の若い漫画家たちの中心にいたのが
 「スポーツマン金太郎」などの作品を描いて寺田ヒロオ氏。
 映画「トキワ荘の青春」は
 この寺田ヒロオ氏を主人公として描いています。
 演じたのは本木雅弘さん。
 当然藤子不二雄Aさんや藤子・F・不二雄さん、
 石森章太郎さん、赤塚不二夫さんといった
 昭和の漫画界をつくったビッグネームの人たちも登場します。
 藤子不二雄Aさんを鈴木卓爾さんが演じていますが
 これが本当によく似ていて驚きました。

 監督は市川準さん。
 市川準さんはCMディレクターから映画監督になった人で
 吉本ばななさんの「つぐみ」を映画化したり
 映画ファンには人気の監督でしたが
 2008年に58歳で急逝されました。
 それでも今でも人気のある監督で
 この「トキワ荘の青春」も
 心に静かに染みてくる
 青春映画となっています。
 この年のキネマ旬報ベストテンで
 7位になるなど
 作品の評価も高い、いい作品です。

 トキワ荘のメンバーも
 ほとんどいなくなりました。
 それでも
 まさに漫画界の伝説の場所として
 これからも語り続けられることでしょう。

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日
  稲垣えみ子さんの『魂の退社』という本を
  紹介しましたが
  あまりに面白かったので
  稲垣えみ子さんのほかの本を
  探してみました。
  そこで見つけたのが
  今日紹介する『寂しい生活』。
  2017年の本。
  日本は地震大国ですから
  いつなんどき
  大きな地震がやってくるとも限らない。
  それでも、私たちは電気のある生活をやめられない。
  この本では
  節電どころか、
  電化製品を手放すという
  ハードな生活が描かれています。
  うーん、できないだろうな、私は。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  実際は寂しくなんてない生活でした                   

 この春、関東では「電力逼迫警報」が発令されて、街の多くのところで節電が呼びかけられた。
 思い出すのは2011年の東日本大震災のあとの「計画停電」。
 明かりを消した夜の街の風景を覚えている人も多い。
 実はあの時の「原発事故後の節電」をきっかけに、自ら「個人的脱原発計画」として電気のかかる生活をやめようと決意した女性がいた。
 これは、本文によれば「都会の片隅で数年間にわたり、人知れず繰り広げられた冒険の物語」である。

 電気を使わない生活に挑んだのは、「アフロ記者」として有名になった、元朝日新聞の記者の稲垣えみ子さん。
 この本は2016年に刊行された『魂の退社』に続いて。2017年に出たものだが、稲垣さんの生活をたどれば、まずこの本に描かれる電気を使わない生活があって、その後朝日新聞を退社するということにある。
 会社を辞めれば、経済的な負担がきつくなるが、稲垣さんの場合、それ以前から電気を使わない生活を実行していたので、退社というハードルも低くなっていたのだろう。

 この本を読んで驚くのは、その生活の徹底ぶりである。
 冷暖房あたりだと温度を調整することで節電にもなるが、稲垣さんは冷蔵庫のコンセントまではずしてしまうという徹底ぶり。
 冷蔵庫という「便利」があるゆえに、食べきれないほどの食料を買いこんだりする。
 電気を使わない生活は、それがもたらしていた過剰な豊かさも減らしていく。

 最後に彼女がたどり着いたのは「この世の中に「役に立たないもの」なんて一つもない」という思い。
 実にすがすがしい。
  
(2022/04/15 投稿)

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  最近ちょっと気になる本があります。
  「老後を朗らかに生きていくエッセイ集」で
  作者は稲垣えみ子さん。
  本のタイトルは『老後とピアノ』。
  さらに、こんな説明も。
  「朝日新聞を50歳で退職し、始めたのはピアノ。」
  うん!?
  稲垣えみ子さんって、どんな人だ?
  そこで、図書館の蔵書リストを調べてみました。
  見つけたのが
  今日紹介する『魂の退社』。
  2016年に出版されていました。
  その本から。

    お金のためでなく、人とつながるために働くということがあってもいい

    自分の中の「会社依存度」を下げることだ。
 
    本当に仕事って素晴らしいものです。お金を払ったってやりたいと思う。

  人生100年時代の必読書だったりして。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  悩んだらこの本読んでみて                   

 かつて「終身雇用」は「年功序列」とともに日本経済を支えた慣行のひとつだった。
 定年まで雇用され続けることで従業員が安心して働ける環境づくりが成果をあげたのだろう。
 しかし、経済全体が「成果主義」を前面に打ち出してくるうちに、「終身雇用」「年功序列」が否定されるようになっていく。
 最近では業績にかかわらず、将来を見据えた「希望退職」を募る企業があとをたたない。
 もう会社を「終身雇用」という魔法で、従業員を守ってはくれない。
 この本は、朝日新聞社という超一流会社を50歳で辞めてしまった女性記者の「魂」の記録である。

 辞めるとなれば、他人は「何故?」と問うだろう。
 「もったいない」という人もあれば、「変わってる」という人もいるだろう。
 確かに著者は社会人としてはめったにいないアフロヘアーで、「アフロ記者」としても有名だったとか。
 そういう変わった人だから、一流会社を中途退社するのだろう、あるいは会社と何かもめごとがあって辞めざるをえなかったのではないか、きっとそういう罵詈雑言が幾多もあったと思う。
 しかし、彼女はひるまない。
 彼女が辞める直前には朝日新聞にもいざこざがあったようだが、彼女はそれにもめげず働いたうえで、これからはもう会社に恩返しができないと、辞める決意をする。
 彼女は会社を嫌ったわけでもないし、仕事がいやになったわけでもない。
 むしろ、逆だ。
 そのうえで、辞めるという選択をした。

 もし、今、会社を辞めようかと悩んでいる人がいれば、一度この本を読んで、そして考えればいい。
 何しろ、人生はながい。
  
(2022/04/14 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  芥川賞発表号の「文藝春秋」には
  選考委員たちの「選評」が載っているという話は
  先日書きました。
  今回の第166回芥川賞では
  受賞作である『ブラックボックス』以外に
  何人かの選考委員が強く推している作品がありました。
  それが今日紹介する
  九段理江さんの『School girl』です。
  特に男性の選考委員の評価が高かったように思います。
  ちなみに芥川賞の選考委員は9人で
  そのうち女性が3人です。
  九段理江さんが
  これからどんな作品を書くのか
  楽しみです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  女性を描ける作家                   

 第166回芥川賞の候補作となった表題作のほか、この単行本にはもう一編中編小説が掲載されている。
 それが、『悪い音楽』で、作者はこの作品で第126回文學界新人賞を受賞し、その次に発表した『school girl』が芥川賞候補だから、注目の新人作家といえる。
 しかも、候補作となった作品は選考委員から高い評価を得ていて、松浦寿輝委員ははっきりとこの作品を推すと表明しているし、平野啓一郎委員もこの作品を「最も高く評価した」としている。
 この作品については、そのタイトルからわかるように太宰治の『女生徒』が下絵のようになっているが、中学生の娘を持った30過ぎの女性の視点で描かれていて、太宰の作品とはかなり雰囲気もテーマも違うように感じた。

 それに、2つの作品を続けて読むと、『悪い音楽』の方が物語の描く方も柔軟性があるように思った。
 主人公は中学校の音楽教師。父親が有名な音楽家であり、自身も音楽の才能がありながら、ひょいといた思いつきで音楽教師になった。
 しかし、自分が教師に向いていないということがわかってくる。
 自分に逆らう生徒、そしてその親。親に逆らえない教師たち。
 ルームシェアしている女性ともうまくいかなくなって、主人公は次第に壊れていく。
 その過程が、物語の起伏を生み、文学として成立しているように感じた。

 2つの作品を読んで、九段理江という作家は女性を描けるひとりになるのではないだろうか。
  
(2022/04/13 投稿)

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  先日
  今日紹介する
  平野レミさんの『おいしい子育て』の刊行を
  意識してだろう、
  黒柳徹子さんの長寿番組「徹子の部屋」に
  平野レミさんと
  次男のお嫁さんの和田明日香さんが
  そろって出演されていました。
  平野レミさんと黒柳徹子さんは
  平野レミさんの夫の和田誠さんつながりで
  とても仲良しのようで
  抱腹絶倒でした。
  平野レミさんが黒柳徹子さんに
  一緒に老人ホームに入ろうよと誘うと
  黒柳徹子さんが断ります。
  あなたといると
  うるさいから、だって。
  大笑いしました。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  愛情という隠し味                   

 イラストレーターの和田誠さんと料理愛好家の平野レミさんご夫婦には、二人の息子さんがいます。
 唱さん(1975年生まれ)と率さん(1979年生まれ)です。
 この本が書かれたのは25年前ということですから、お二人の息子さんもまだ独身の頃。この時から時を経て、長男には女優の上野樹里さん、次男には今や人気料理研究家となった和田明日香さんという奥さんがおられます。
 今回リニューアルになったこの本の巻末には、平野レミさんと二人のお嫁さんの対談も収録されています。
 そして、2019年に亡くなった和田誠さんの絵が、レミさんに言わせると天国に旅立った和田さんが地上に舞い降りてきてくれたように、新しく加わっています。

 この本は家庭エッセイといえばいいでしょうか、キッチンを中心にレミさんがその時々に家族に寄せた思いを綴ったものです。
 「父親のうしろ姿」という短文の最後に、キッチンのあとかたづけを手伝う和田さんの姿を書いて、こう続けています。
 「息子たちは、今はなにもしないけれど、結婚したらきっと、奥さんの手伝いをするようになるでしょう。」
 母親の予感は見事に的中しました。唱さんも率さんも、キッチンに立つことは厭わないそうです。

 この本には母親の愛情がいっぱい詰まっています。
 それは間あいだにはさまっている料理レシピと同じように、とっても「おいしい子育て」の方法なのでしょう。
 いつも「おいしい」とほめてくれた和田誠さんの言葉が、料理を楽しむレミさんを育てたように。
  
(2022/04/12 投稿)

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 桜は満開の時もいいし、
 散っていく姿も風情があって古くから愛されてきました。
 一週間前には満開だった
 畑のそばを流れる鴻沼川の桜も
 週末にはかなり花を散らして
 川には花筏が浮かんでいました。

  20220408_114141_convert_20220409195046.jpg

    一片のまた加はりし花筏         上野 章子

 散った花びらは
 畑にも舞い落ちて
 まるで雪景色のようでもあります。

  20220408_094710_convert_20220409194758.jpg

 桜が終わったあとの近所では
 紫木蓮が咲き始めました。

  20220409_131714_convert_20220409195336.jpg 

 畑では
 いよいよ夏野菜の準備の畝づくりを始めました。

  20220410_094623_convert_20220410130717.jpg

 黒マルチを張ったところが
 昨日の日曜日(4月10日)にこしらえて
 新しい畝。
 ここには小玉スイカミニカボチャ
 育ててみようと考えています。

 イチゴ
 花が終わって実になる前段階。

  20220408_094902_convert_20220409194842.jpg

 今回のイチゴ
 花も大きかったですが、
 もしかして実も大きくなるかも。

 こちらはインゲンの芽。

  20220409_105214_convert_20220409195120.jpg

 写真は土曜日のものですが
 次の日にまた行ってみると
 もっとしっかり立ち始めていました。
 暖かくなってくると
 野菜の成長の早いこと。

 これはスナップエンドウ

  20220409_112729_convert_20220409195156.jpg

 実は葉と同じ色なので
 つい見落としてしまいそうですが
 いくつか莢がついてきました。

 ナバナもようやく収穫できました。

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 この日採って
 ミニダイコンと一緒に
 写真におさまっています。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  ジェシー・オリベロスさん文、
  ダナ・ウエルコッテさん絵の
  『とんでいったふうせんは』という絵本を
  紹介します。
  訳は落合恵子さんです。
  落合恵子さん自身、
  認知症になったお母さんを
  7年にわたって自宅で介護された経験があるので
  この絵本は身につまされたのではないでしょうか。
  「あとがき」に
  お母さんから「おかあさん」と呼びかけられた衝撃と動揺を
  忘れることはできないと
  綴っています。
  認知症は誰がなってもおかしくありません。
  その時、この絵本のことも
  忘れているのでしょうか。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  いつか私のふうせんもとんでいくのかな                   

 できれば、そうならないようにしたいけれど、それは叶わないかもしれません。
 私もこの絵本のおじいちゃんのように、「記憶」という風船を手放すことになるかもしれないのです。
 今の言葉でいえば「認知症」。
 この絵本は、やさしい文章とやわらかな絵で描かれていますが、「認知症」をまっすぐに見つめた作品になっています。

 少年はいくつもの風船を持っています。
 お父さんとお母さんは少年よりたくさんの風船を持っています。
 おじいちゃんは、それよりももっと多くの風船です。
 この絵本で描かれる風船は「記憶」です。
 おじいちゃんは少年に風船の中のたくさんの話をしてくれます。
 おばあちゃんと結婚した時の話だとか。
 そして、少年はおじいちゃんと同じ風船も持っています。
 それは、おじいちゃんと釣りに行った時の「記憶」。
 そんな大事な風船を、おじいちゃんはひとつずつ手放していきます。
 最後には、少年のこともわからなくなっていました。

 忘れるという悲しい症例を、この絵本はやさしく描いています。
 けれど、この絵本には最後救いが描かれています。
 おじいちゃんの風船は、いつの間にか少年が持つ風船になっていたのです。
 おじいちゃんが語ることで、風船が少年にバトンされたのです。
 おじいちゃんから「記憶」は消えていきましたが、その「記憶」を少年が受け継いでいきます。
 私たちはそのようにして、生きるということを繋いでいくのだと思います。
  
(2022/04/10 投稿)

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 NHKの連続テレビ小説(通称 朝ドラ)の
 第105作めとなる「カムカムエヴリバディ」が
 昨日最終回でした。
 私が朝ドラを見始めたのは
 第85作めの「カーネーション」(2011年下期・渡辺あや脚本)からで
 作品のたびに
 かなりはまりこんできましたが
 今回の「カムカムエヴリバディ」は今まで以上に
 毎回楽しみにして見ていました。
 そこで、今日は
 映画のお話ではなく
 朝ドラ「カムカムエヴリバディ」の話です。

  

 映画の場合は
 監督の名前がまず先にきます。
 黒澤明作品とか濱口竜介作品といったように。
 それがテレビドラマとなると
 脚本家の名前がまずきます。
 有名な人では向田邦子さんや山田太一さん、
 あるいは橋田壽賀子さんとか。
 今回の「カムカムエヴリバディ」の脚本家は
 藤本有紀さんで
 第77作めの「ちりとてちん」(2007年下期)に次いで
 朝ドラは2作めとなります。
 そういえば、
 「ちりとてちん」も面白くで
 再放送された時に全部見ましたから
 藤本有紀さんのドラマの世界観が
 私には合っているのかもしれません。

 今回はラジオ英語講座をキーに
 昭和・平成・令和の時代を生きた
 母娘3人の物語で
 上白石萌音さん、深津絵里さん、川栄李奈さんの
 3人の主役という点では
 今までにないドラマ設定になっています。
 上白石萌音さん演じる安子が生まれたのが1925年、
 そこから100年の物語という設定です。
 最初、あまりの展開の早さにびっくりしましたが
 安子の娘るい(深津絵里さん)が主役となるあたりから
 ぐんぐん面白くなってきたように思います。
 戦争で夫を亡くした安子と
 その安子に裏切られたと思った娘のるい。
 物語はその母と娘がどのようにして理解し合い、
 許し合えるのかが大きな流れとなっていきます。

 最終的にその母と娘を
 もう一度つなげたのが
 るいの娘ひなた(川栄李奈さん)でした。
 そして、ひなたこそ
 安子が戦争で叶わなかった夫との願いの結晶だったと思います。

   ひなたの道を歩けば、きっと人生は輝くよ

 私たちの父や母、
 そして私たちの子や孫、
 それが途絶えることのない一本の道であることを
 私たちはこのドラマを通じて
 教えられたのではないでしょうか。
 そして、その道を
 戦争などで二度と閉ざされてはいけないという祈りも
 込められていたはずです。

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プレゼント 書評こぼれ話

  漫画家の藤子不二雄Aさんが
  4月7日に亡くなられました。
  88歳でした。
  私のような昭和30年世代にとって
  藤子不二雄Aさんといえば
  「ドラえもん」の藤子・F・不二雄さんとコンビで
  藤子不二雄名義で漫画を発表していた頃が
  懐かしい。
  藤子不二雄Aさんの代表作といえば
  「笑ゥせぇるすまん」や「忍者ハットリ君」、
  それと「怪物くん」になるでしょうが、
  はずせないのが
  今日再録書評で紹介する
  「まんが道」です。
  この漫画を読めば
  二人が歩んだ道がよくわかります。
  今ごろ天国で
  藤子・F・不二雄さんと再会しているのではないでしょうか。

  藤子不二雄Aさん、
  たくさんの楽しい漫画をありがとうございました。

  ご冥福をお祈りします

  

sai.wingpen  追悼・藤子不二雄Aさん - 学校図書館に置いて欲しい全14巻                   

 昭和30年代40年代に子どもだった人にとっては石ノ森章太郎は絶対石森章太郎だし、藤子不二雄はFでもAでもなく、たった一人の漫画家なはずだ。
 藤子不二雄が藤本弘(代表作は「ドラえもん」)と安孫子素雄(代表作は「怪物くん」)という二人の共同ペンネームだということは「オバケのQ太郎」時代から有名だった。
 ただどういう分担で二人が創作活動を分けているのかは子どもながら不思議だった。
 二人が名前を分けたにはそれなりの理由があったのだろうが、やはり作風の違いが一番だったのではないだろうか。
 極端な言い方をすれば、藤本はいつまでも少年漫画にこだわり、安孫子は青年漫画を志向したともいえる。
 そんな安孫子だから、二人の「まんが道」が描けたのだし、その作品の完成度が非常に高くなったのであろう。
 もっというなら、藤子不二雄でなければこの『まんが道』はできなかったと思う。

 中公文庫コミック版として全14巻となる漫画を最近の漫画出版で図るとけっして大長編にはならない。
 しかし、14巻すべてを読み終わるとまるで教養小説を読了したような気分になる。
 なお、書誌的にいうと14巻めはなるほどそれまでの続きのような描かれ方がされているが、13巻で「まんが道」正編が終わっているような気がする。
 13巻の最後のページに「なろう!なろう!あすなろう!明日は檜になろう!」という井上靖の『あすなろ物語』の一節が記されているのでもわかる。

 この漫画は戦後富山の高岡から漫画の神様手塚治虫にあこがれて漫画家を目指そうと上京してくる二人の若者の姿を描いているが、青春ドラマという要素だけでなく戦後の漫画黎明期の若い漫画家たちの姿や漫画の出版事情もうかがえる。
 織物が縦糸と横糸でできあがるように、この漫画もより重厚により華やかに織りあがった作品といえる。
  
(2016/11/03 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  芥川賞は単行本で読んだとしても
  受賞作が全文掲載される
  総合誌「文藝春秋」は買うようにしています。
  というのも、
  選考委員たちの「選評」も
  同時掲載されるからです。
  例えば、
  今日紹介する
  第166回芥川賞受賞作
  砂川文次さんの『ブラックボックス』については
  小川洋子委員が
  「真正面から文学にぶつかっていった作品」と絶賛しています。
  その他の候補作の選評なり
  読めるのは「文藝春秋」しかないので
  これからも
  発表のたびに購入するでしょう。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  作家の熱量                   

 第166回芥川賞受賞作。(2022年)
 受賞が決まったあと、作者の砂川文次さんがかつて自衛隊に勤務していたことで話題となったが、漫才師であろうが女子大生であろうが専業主婦であろうが小説を書くのだから、元自衛官が書いたとしても何の不思議もない。
 ただやはりどこかで迷彩服を着た短髪の男が原稿用紙に向かう姿を想像してしまうのだろうし、2016年に文學界新人賞を獲った『市街戦』にしろ先に芥川賞候補作になった『小隊』にしろ、自衛隊での経歴が作品を生み出してきたことは否めない。
 今回の受賞作では自衛隊という組織の影響は消えている。
 自転車便のメンセンジャーである主人公に自衛隊員の影はない。
 しかし、何故か、雨の中を駆ける主人公の体から発せられる体臭なりに、それに近いものを感じる。
 つまりは、国を守る、あるいは被災地を救援する自衛隊の姿は、ある意味人間としての基の姿を喚起させるものがあるのではないだろうか。

 本作は中編ながら、二部構成でできている。
 メンセンジャーとして生活していくしかない主人公の姿を描いた前半と、その彼が暴力事件を起こして刑務所に収監される後半。
 前半の疾走感は、当然後半閉鎖された空間での話だから失われる。
 それでも、その中で主人公の暴力性は外に出ようととして発揮される。
 「遠くに行きたかった」という主人公の思いは、刑務所内での話ではないだろう。その肉体を突き破るようなそんな力を彼は持て余しているのだ。
 それはおそらく、作者が持っている熱量ともいえる。
  
(2022/04/07 投稿)

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  私が芥川賞という文学賞を
  知ったのは
  もう随分前のことになります。
  さすがに石原慎太郎さんの『太陽の季節』は
  リアルでは知りませんが、
  村上龍さんの『限りなく透明に近いブルー』は
  同時代の受賞作として印象に残っています。
  受賞作を雑誌「文藝春秋」で読む習慣は
  30代あたりからずっと続いています。
  芥川賞には毀誉褒貶いろいろありますが
  やはり長い歴史が一番の勲章でしょう。
  今日は
  菊池良さんの
  『タイム・スリップ芥川賞』を
  紹介します。
  そして、明日は第166回芥川賞受賞作
  砂川文次さんの『ブラックボックス』です。
  お楽しみに。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  表紙はまんがチックだが、結構深い文学案内                   

 芥川賞といえば、小説は読まないという人でも(多分)知っている文学賞だ。
 その歴史は古く、1935年に第1回の受賞作が発表され(この時の受賞作は石川達三の『蒼氓』)、2022年になって第166回を数えるまでになっている。(この時の受賞作は砂川文次の『ブラックボックス』)
 若い人の読書離れがいわれる中、歴史ある文学賞だとはいえ、その受賞作がどれだけのインパクトをもって読まれているか、なかなか判断が難しい。
 この本の副題にあるように、「文学ってなんのため?と思う人」は(多分)若い人に多いのだろう、そういう若い人向けに、とても読みやすい形式、文学好きの科学者が作ったタイムマシンに乗って博士と仲のいい少年がその時々の芥川賞の現場を対話しながら時間旅行する、になっている。

 とはいっても、すでに166回もある受賞作のすべてを網羅することはできないので、文学的に意味のある作品が選ばれている。
 石原慎太郎の『太陽の季節』を筆頭に、大江健三郎、中上健次、村上龍、池田満寿夫、赤瀬川原平、平野啓一郎、綿矢りさ、金原ひとみ、又吉直樹、といった名前が続く。
 そうなると、あの作品がない、あの作者がいないと当然なるだろうが、我慢するしかない。(個人的には三浦哲郎と庄司薫はいれて欲しかった)
 それほどに、芥川賞の歴史が長く、その受賞作は多岐にわたっているということだ。

 若者向けの読み物だが、案外に奥は深い。
 表紙の装丁に惑わされない方がいい。
  
(2022/04/06 投稿)

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 4月にはいった最初の日、
 東京の桜の名所のひとつ、
 北区にある飛鳥山公園に行ってきました。
 ここは徳川吉宗の時代、
 享保の改革の一環として造成が行われたところで
 明治になってから
 日本で最初の公園のひとつとして指定されたところです。

 この日は朝まで雨が降っていて
 桜もかなり散りつつありました。

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 まあそれはそれで風情があります。

    中空にとまらんとする落花かな       中村 汀女

 この日、飛鳥山公園に来たのは
 お花見もそうですが
 もうひとつ見にいくところがありました。
 それが、
 近代日本の経済社会の基礎を作った
 渋沢栄一の記念館(渋沢史料館)の見学です。

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 渋沢栄一といえば
 昨年(2021年)のNHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公。
 本当は放送されていた昨年行きたかったのですが
 コロナ禍で予約制、
 しかも人気スポットで予約も取れませんでした。
 ようやく、
 予約制ではなくなって自由見学となりました。
 でも、やはりコロナがおさまっていないので
 館内の入場者数を制限していて
 入口で順番待ちとなりました。

 この日は飛鳥山のお花見もかねてでしょうか
 結構見学者もいましたが
 それほど待たずに入館できました。

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 展示は渋沢栄一の誕生から亡くなるまでを
 実際の手紙などの展示とパネル説明で
 順にたどることができます。
 昨年大河ドラマを見たおかげで
 エピソードがとてもわかりやすく理解できました。

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 この史料館の入館料は300円ですが、
 この券があれば
 隣接する晩香蘆(ばんこうろ)青淵(せいえん)文庫
 見物できます。
 晩香蘆渋沢栄一の喜寿を祝って清水組から贈られた洋風茶室で
 お客様をもてなすところとして使われたそうです。

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 青淵文庫はその名前のとおり
 書庫として使われていたといいます。

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 ちなみに史料館は
 かつて渋沢栄一が住んでいた邸宅のあとに建っています。
 きっとここで
 渋沢栄一は毎年飛鳥山の桜を愛でていたんでしょうね。
 その渋沢栄一
 でっかいことを成し遂げましたが
 人物としてはとても小柄だったようで、
 150センチあまりしかなかったそうです。

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 ドラマのタイトルのように
 「青天」とはいきませんでしたが
 まあ、「曇天を衝け」ぐらいでした。

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 関東は週末、
 花冷えとなりましたが、
 満開の桜を楽しんだ人も多いと思います。
 畑の横を流れる鴻沼川の桜も
 週末がまさに満開でした。

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 桜はさすがに国花だけあって
 俳句もたくさん詠まれています。

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 中でも、芭蕉のこの俳句は好きです。

    さまざまの事おもひ出す桜かな       松尾 芭蕉

 桜と水とは相性がよくて
 水面に花が咲き誇る光景の美しいこと。

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    水の上に花ひろびろと一枝かな       高野 素十

 畑と桜。
 なんと贅沢な取り合わせでしょう。

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 この日(4月2日)は
 草抜き以外に作業はなかったのですが
 満開の桜を見られて
 それだけで満足です。

 こちらは
 桜の花びらが散り落ちてきた
 ジャガイモの畝。

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 全部に芽が出そろいました。

 これはイチゴの花。

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 イチゴそのものは夏の季語ですが
 春の季語に「苺の花」があります。

     敷藁のま新しさよ花いちご      星野 立子

 今年栽培しているのは
 トチオトメという品種ですが
 少し花が大きいように感じます。
 もしかして、
 実も大きいのかな。(わくわく)

 桜と同様に
 こちらも満開の
 ソラマメの花。

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 ソラマメは漢字で書くと「蚕豆」。
 これも春の季語です。

    そら豆の花の黒き目数知れず       中村 草田男

 俳人たちはしっかり写生しています。

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プレゼント 書評こぼれ話

  4月ははじまりの月。
  今週あたり
  学校の入学式が続きます。

    名を呼べば視線まつすぐ入学児      鷹羽 狩行

  今日は
  そんな子供たちへ向けたメッセージ、
  蒔田晋治さん作、
  長谷川知子さん絵の
  『教室はまちがうところだ』という絵本を
  紹介します。
  この絵本は2004年に刊行されていますが
  最近新聞の広告欄で見つけました。
  つまりは今でも読み継がれている名作です。
  ウクライナの問題とか
  子供たちに正しい答えを教えられたら
  いいですね。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  間違ったってかまわない                   

 この絵本は一編の詩がもとになっています。
 作者である蒔田晋治さんが中学2年生の担任だった時に生徒に呼びかけた詩です。
 だから、よく読むと、先生の顔が見えるようですし、先生の声も聞こえてきそうです。
 先生の呼びかけにまなざしをむける子供たちの表情も見えてきます。
 蒔田さんは1925年生まれ(2008年逝去)、85年まで公立の小・中学校で先生として働いていたそうですから、この詩もその頃のもの。
 それが2004年に長谷川知子さんの絵と手書きの文字で生まれたのが、この絵本。
 絵本になって、読者層がうんと広がったことは間違いありません。

 蒔田さんはこの詩を中学生の生徒に向けて書きましたが、教室でまちがうことに不安に感じているのは小学生も同じ。
 さらにいえば、教室での生活を初めて経験する小学1年生はその不安が大きいと思います。
 そんな子供たちへ、「教室はまちがうところ」だよ、「はじめからうまいこと言えるはずない」と教えてあげて欲しい。
 世界をみれば、まちがいに満ちている。
 「まちがったって誰かがよ/なおしてくれるし教えてくれる」、世界はそう簡単ではないだろうが、少なくとも学校の教室ではそうであって欲しい。

 この詩のおしまいは、「そんな教室 作ろうや」という先生の熱いメッセージになっていますが、間違ってもおかしくない、正しい答えを互いに出し合う、そんな教室をつくるのは子供たち自身だと、教えてあげて下さい。
  
(2022/04/03 投稿)

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 今週の月曜日(3月28日)、
 第94回アカデミー賞の発表がありました。
 今回は
 濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」が
 作品賞など4部門にノミネートされていて
 日本でも関心と期待が高まっていました。
 そして、ついに発表の時!
 ということで、
 今回はアカデミー賞の話です。

  

 「ドライブ・マイ・カー」は作品賞こそなりませんでしたが
 見事、国際長編映画賞を受賞しました。
 つまり、あのオスカー像を手にしたということ。
 壇上にあがった濱口竜介監督が発したのは
 「オー、ユーアー ザ・オスカー(あなたがオスカー像ですね)!」という言葉。
 結構、名言だと思うのですが。
 アカデミー賞のトロフィーが「オスカー」と呼ばれるのは
 1934年頃当時のアカデミー賞事務局の女性社員が
 この像をみて
 「オスカーおじさんにそっくり」といったのが
 始まりだとか。

 何しろ94回ともなる
 世界の映画界においてももっとも有名なイベントだけに
 いろんな逸話もたくさんありますが
 今回もおそらく後世に残る大事件が発生しました。
 それが「ウィル・スミスの平手うち事件」。
 あの場面はニュースでも報道されていましたが
 ウィル・スミスの奥さんの病気を司会者が揶揄したことに
 彼が怒って平手うちをお見舞いしたというもの。
 事情はわかりますが、
 暴力はいけません。
 しかも、全世界へライブ配信されていましたから。

 でも、そのウィル・スミスが主演男優賞を受賞したのですから
 さすがアメリカのアカデミー賞は違うなという
 感嘆に似た感じを覚えました。
 賞のはく奪という意見もあるそうですが
 私は賞はそのままでいいと思います。
 授賞式そのものが
 まるで映画のような迫力でしたし。

 そうそう、
 今回の作品賞は
 シアン・ヘダー監督の「コーダ あいのうた」でした。
 おめでとうございます!

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 今日から4月
 新社会人として新しいスタートをきった人も多いと思います。

     新入社員たびたび鏡覗きけり        深川 敏子

 NHK朝の連続テレビ小説カムカムエヴリバディ」も
 来週が最終週になってきて
 いよいよ目が離せません。
 今回のドラマは藤本有紀さんのオリジナル脚本で
 大正・昭和・平成・令和の4つの時代を生きた
 母娘三代にわたる物語を描いてきました。
 キーになったのが
 ラジオ英語講座です。
 タイトルの「カムカムエヴリバディ」も
 戦後すぐに始まったラジオ英語講座の名称。

 母娘の三代めは、川栄李奈さん演じる「ひなた」ですが
 英語学習に目覚めて
 ドラマではまるであっという間に英会話が堪能になったように見えますが
 あれはドラマの展開が早いだけで
 あの間には何年もにわたる彼女の努力があります。

 そんな「ひなた」が英語学習に基礎においた教訓。

    すべてを急がずに、無理をしないで、
    自然に覚えられるだけ
    一日一日と 新しいことを覚えていけば
    それで十分

 これで毎日積み重ねていけば
 彼女のように英語ができるようになるかも。

 つまり、そこで私も発奮して
 今年の春から
 ラジオ英語講座「中学生の基礎英語 レベル1」
 チャレンジすることに決めました。

  

 そうはいっても
 昨年はテレビの英語講座を途中で挫折、
 いやいや中学生になって
 「基礎英語」を聴いてから
 途中挫折の数々。
 年月だけでいえば、すでに50年以上なのに。
 やれやれ。

 そこで今回はもう一度、
 基礎に戻りましょう。
 テキストも買いました。
 ラジオが聴けるようスマホにアプリもインストールしました。
 放送時間は朝ドラと一緒、15分。
 朝ドラが見れるのですから
 ラジオ英語講座も聴ける…はず。

 いよいよ、4月4日から開講です。

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