08/02/2022 縁起のいい客(吉村 昭):書評「吉村昭という人間を知る道標」

先日の7月31日は
作家吉村昭さんの忌日、悠遠忌でした。
亡くなったのは2006年ですから
もう16年になります。
私が吉村昭さんの作品を知ったのは
10代の終わり頃の
新潮文庫で出た『星への旅』だったと思います。
なので、半世紀も前のことです。
こちらが年を重ねるうちに
吉村昭さんの魅力が増していくように感じます。
ちょうどいまあたりが
私にとって吉村昭文学がぴったりくる感じです。
今日は
『縁起のいい客』という
エッセイ集を紹介します。
これからも吉村昭作品は読んでいこうと思います。
じゃあ、読もう。

吉村昭さんの著作リストをひも解くと、氏の代表作ともなった『戦艦武蔵』などの記録文学や『桜田門外ノ変』などの歴史小説以外に、エッセイ集も数多く刊行されているのがわかる。
この『縁起のいい客』は2003年1月に刊行されたもので、2006年7月31日に亡くなった氏の晩年期のエッセイ集といえる。
晩年期でありながら、氏の筆ののびやかで、特に日常のありのままの一コマを綴ったエッセイでは円熟の技を感じさせてくれる。
読書が心地いい。
この本の「あとがき」で、氏はエッセイについてこう書いている。
「エッセイは、人間を書くことにつきると思っている。(中略)私という人間を書くことにもなる。」
つまりは、氏のエッセイは作家吉村昭だけでなく、人間吉村昭を知るための道標のような存在といっていい。
このエッセイ集はいくつか多分連載のようにして、雑誌や新聞に発表してきたもので、特にテーマが統一されたものではない。
面白かったのは、「エッセイは事実です」というエッセイで、そこではエッセイが創作されたものだと時々言われることに、子供のように憤慨している姿だ。
それはほかのエッセイにもあって「随筆は、眼で見、耳できいたことを事実そのまま書く」と記したことがある。
だから、エッセイは吉村昭さんの生の姿を体験できる楽しみといっていい。
(2022/08/02 投稿)

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