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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は長崎原爆の日
  今回も「歳時記」から。

    8月9日には長崎にも(原子爆弾が)投下され、
    7万人余りの人命が失われたと推定される。

    首上げて水光天に長崎忌          五島 高資

  長崎といえば
  作家の吉村昭さんが100回以上訪れたという街。
  私も仕事で何度か行ったことがあります。
  できれば、もう一度行きたい街のひとつ。
  今日は沢木耕太郎さんの旅エッセイ集
  『飛び立つ季節 旅のつばくろ』を
  紹介します。
  2020年に出た『旅のつばくろ』の第2弾なので
  表紙の燕に2羽になっています。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  沢木耕太郎さんが見ている、来た道、行く道                   

 人生は旅である、あるいは旅は人生に似ていると、よく耳にする。
 沢木耕太郎さんの旅のエッセイには、その言葉がよく似合う。
 沢木さんが『敗れざる者たち』というノンフィクション短編集で颯爽と登場したのは、1976年で、沢木さんはまだ二十代の青年であった。
 それから現在(いま)にいたるまで、沢木さんの作品とともに読者である私もともに歩んできたような気がする。
 いくつか年上の兄のような存在として。

 JR東日本の新幹線車内誌「トランヴェール」に連載されていた国内の旅エッセイ35編を収録した本作は、2020年に出た『旅のつばくろ』の第2弾になる。
 なので、新型コロナウイルスの影響で国内といえども旅がままならない時期でのエッセイということもあって、いくつかの文章にその影響がみられる。
 そのひとつが女優の吉永小百合さんに修善寺でインタビューした時のもので。沢木さんは「細心の注意を払いつつ、全力で普通でありつづける」と吉永さんを評している。
 そして、そのあとに「ウイルスの流行というこの特別な状況においては、やはり「細心」と「全力」が「普通」であるための必須のものであるに違いないのだ」と続ける。
 沢木さんの文章の構成のうまさは、若い頃から変わらない。

 今回のエッセイには16歳で初めて東北一周の旅した時間の記憶がしばしば訪ねられている。
 そのことをもって、沢木さんも年をとったということもできるが、何故か私には16歳の少年の後ろ姿をじっと見つめる沢木さんのまなざしの柔らかさを感じる。
  
(2022/08/09 投稿)

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