11/06/2022 橋の上で(文 湯本 香樹実/絵 酒井 駒子):書評「ほら、聞こえてくるよ、いのちの音が」

今日は湯本香樹実(かずみ)さん文、
酒井駒子さん絵の
『橋の上で』という、新しい絵本を紹介します。
書評の中に書いてある「新聞」というのは
10月3日の掲載された朝日新聞の文化欄の記事のこと。
その記事を書いた河合真美江さんという記者は
こう結んでいます。
明日へ生きていく希望を人はみずからに秘めていて、
いつか見つけることができる。
文と絵がささやく。
その記事ではこの絵本を書いた湯本香樹実さんの
体験エピソードも知ることができ、
絵本をより深く読むことができました。
こういう紹介記事は
読者にとってはありがたい。
この1冊に、ありがとう。

湯本香樹実さんが文を書いて、酒井駒子さんが絵をつける。
そんな二人がつくった名作絵本といえば、『くまとやまねこ』。
海外でも高い評価を得た絵本をつくった二人が2022年9月、新しい絵本を出した。
それが『橋の上で』。
前作もそうだが、この作品も声高でなく、静かに生きる意味をみつめている。
イジメや誤解で川に飛び込んでしまいたくなった少年が橋の上にいる。
そこにやってきた、ひとりのおじさん。
けっして身ぎれいでないおじさんだが、まるで少年の心の闇を見透かすように、こういう。
「耳をぎゅうっとふさいでごらん。」
そうしたら、自分だけの湖の水の音が聞こえてくるよ。
「人は自分だけの湖を持っている」と、かつて自身もいいいじめにあって、居場所がないとまで思いつめた経験がるという、湯本さんは新聞のインタビューに応えている。
その湖は生きる泉で、自分を静かにのぞきこむ時間があると、なんとか新しい朝を迎えられた。
「そうやって、私も今日まで生きてきたんです」、湯本さんの言葉はなんて重いのだろう。
新聞の記事には、「歩き出す勇気をくれるもの、それは自分の中にあるんだよ。そう伝えたい」と続いている。
誰にだって、自身の闇が押し寄せてくる時があるものだ。
若い時にあるし、熟年になってもある。
そんな「橋の上」に立った時、この絵本が伝えようとしたことを思い出せたらいい。
耳をぎゅうっとしたら聞こえてくるのは、自分のいのちの音だ。
(2022/11/06 投稿)

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