fc2ブログ
 今から50年前の1973年1月1日、
 ある出来事で日本中に衝撃が走ったのを憶えているだろうか。
 あさま山荘事件や仲間へのリンチ殺人という悲惨な事件を起こした
 連合赤軍のリーダーだった森恒夫が
 収監されていた東京拘置所内で自死したのだ。
 この時、彼はまだ28歳の青年だった。
 その青年が「なぜ革命を志し、なぜ同志を殺し、そしてなぜ自ら命を絶ったのか。
 この『虚ろな革命家たち』は、
 副題にあるように「連合赤軍 森恒夫の足跡をたどって
 1992年生まれの佐賀旭氏が書いたノンフィクション作品である。
 そして、佐賀氏はこの作品で
 第20回開高健ノンフィクション賞を受賞した。

  

 あえて佐賀氏の生まれた年を書いたのは、
 佐賀氏にとって連合赤軍事件は歴史の一ページであり、
 森恒夫の死もまた
 当時を知る人とはちがった距離感を持つということの証であると
 考えてからだ。
 つまり、あの事件を記憶として持ち続ける人がいる一方、
 佐賀氏は記録として対峙する人の領分になるだろう。
 だから、素朴な疑問として「なぜ」が生まれ、
 その答えを求めての熱量を感じさせる作品になったといえる。

 森恒夫がどういう生い立ちで
 どういう少年期を過ごしていたかは本文を読んでもらうとして
 森恒夫が特に異常な人物であったとは思えない。
 むしろ、現在の犯罪者の多くも
 ある時点まではどこにでもいる「〇〇君」だったろうし、
 犯罪に至る変換点を説明するのは難しい。
 この本の「エピローグ」に
 2022年元総理を銃撃した犯人のことが記されているのが
 印象深い。

 印象に残ったということでは、
 この本の中程でナチスドイツのゲーリングの言葉が載っている。
 「国民にむかって、われわれは攻撃されかかっているのだと煽り、
 平和主義者に対しては、愛国心が欠けていると非難すればよいのです。
 このやり方はどんな国でも有効ですよ。
 そして、いうならばこのやり方はどんな時代でも有効かもしれない。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ