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 「女正月」という言葉がある。
 小正月の別名で、ちゃんと『歳時記』にも載っている。
 年末年始忙しかった女性が15日頃にようやくゆっくりできるという。

    玄関に日の差してゐる女正月      宮津 昭彦

 この言葉を、「寺内貫太郎一家」などのドラマを演出した久世光彦さんは
 向田邦子さんから教わったという。
 そんな言葉の記憶から
 向田さんとは正月に会ったことがないと、
 久世さんにとって向田さんとの思い出は尽きない。
 この本のタイトルにあるように
 久世さんと向田さんの親交は
 向田さんが1981年8月突然の航空機事故で亡くなるまでの
 20年間に及ぶ。

 だから、生前の向田さんのエピソードをまとめたエッセイ
 『触れもせで』を1992年に上梓している。
 それから3年後には『夢あたたかき』を出版。
 ちくま文庫に収められた時に2冊を1冊とし、
 『向田邦子との二十年』というタイトルにまとめ直した。

  

 久世さんは2冊めの最後の章で、
 「あの人を書くということは、当たり前のことだが、自分を書くということであり、
 あの人のあの時代を書くのは、私の時代を書くこと」と
 書いているように、
 『夢あたたかき』の方は久世光彦自身を語る部分が多くなっている。

 数多い交流の場面でやはり印象的なのが、
 向田さんが乳がんになった時に久世さんと
 「寺内貫太郎一家」の最終回の打ち合わせを行うところだろう。
 その夜、久世さんは涙を流し、
 「少なくともあの一夜だけは、あの人を愛していたのだと思う。」と
 綴っている。
 しかし、二人は決して触れ合うことはなかった。

 「年とともに伝説は暖かな輝きを増し、読者は確実に増えていく。
 稀有の作家なのである。」と、
 久世さんが評した向田邦子さんを知るには
 欠かせない一冊だ。

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