
小正月に行われる火祭りの行事を
「左義長」と呼ぶことを
久世光彦さんは向田邦子さんから教わったそうです。
どんど焼きどんどと雪の降りにけり 小林 一茶
関西では「どんど焼き」と呼ぶこの行事を、
もし私の記憶が正しければ
1995年の1月15日の日曜、
当時次女が通っていた大阪の小学校の校庭でしたはずです。
それから2日後の1月17日火曜の早朝、
関西に大きな揺れが起こります。
阪神淡路大震災です。
震災の記憶もありますが
不思議とその2日前の「どんど焼き」の光景を
思い出します。
あれから28年。
歳月は流れ、街の風景も大きく変わりました。
あれからももっと大きな悲しみがありましたが、
それでも人は前へと進もうとします。
今日はあの時の震災を描いた村上春樹さんの短編集、
『神の子どもたちはみな踊る』を
再録書評で紹介します。
じゃあ、読もう。

この本には1995年の阪神大震災を核とした六つの短編が収められている。
震災のあったその年の3月に地下鉄サリン事件が起こったことを、皆さんは覚えているだろうか。
村上春樹さんはあの悲惨な事件に誘発されて「アンダーグランド」というノンフィクションの快作を発表している。
そして、同じ年に起こった阪神大震災のことを描くのは、それよりももっと後のことになる。
この違いこそが、村上春樹さんが故郷神戸の悲劇を描くことの心の迷いを如実に表しているように思う。
やっと彼自身の心の傷が癒えようとしている。
六つの短編は「かえるくん、東京を救う」を極北とする春樹ワールドとあの名作「ノルウェイの森」に連なる「蜜蜂パイ」の間を揺れているようでもある。
そして、神戸の痛みとその癒しは「蜜蜂パイ」の最後の言葉に集約される。
「これまでとは違う小説を書こう(中略)誰かが夢見て待ちわびるような、そんな小説を」。
そこには村上春樹さんの決意のようなものが感じられる。
それは神戸の人たちへの激励の言葉でもある。
(2002/07/16 投稿)

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