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 長かったコロナの時代も
 どうやらようやく終わりが見えてきたようで、
 3月13日からはマスクの着用も個人の判断にかわります。
 今まで制限のあったイベントも
 だいぶ緩和されてきました。
 そして、ついに私もたくさんの観客のはいった講演会に
 行くことができました。
 それが、先日2月25日(土曜日)に開催された
 さいたま文学館開館25周年記念の特別講演会
 場所は埼玉・桶川にあるさいたま文学館に併設されている
 桶川市民ホール。
 なんと、ここに700人の観客が集まっての講演。
 久しぶりだな、このざわざわ感。
 人との密着感。
 参加者の皆さんはまだマスク着用ですが、
 それでもリアルの講演会ならではの緊張感は
 やっぱりオンラインとは違います。

 今回の講演会は
 女優・作家・歌手でもある中江有里さんで、
 演題は「読むこと、生きること 『わたしの本棚』をめぐって」。

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 中江さんは雑誌の美少女コンテストに優勝したほどの美人ですが、
 30代半ばで大学に入学したくらい
 志の高い女性です。
 その時の卒論が『いのちの初夜』を書いた北條民雄論というから
 頭がさがります。
 私の印象は以前NHKBSで放送されていた「週刊ブックレビュー」に
 児玉清さんと出ていた頃の中江さんで
 やはりその頃の印象で本をたくさん読む人なんだろうなというものでした。
 今回講演を聴いて、
 実はそういうぼんやりした印象ではなく
 もっとしっかりと本と向き合っているように感じました。

 中江さんは「読書力」には
 「読解力」「集中力」「想像力」の3つの要素があり、
 それを高めるには読書するしかないと
 話されていました。
 読書にも運動と同じように「筋トレ」が必要なこと、
 それがいえる人って
 やはり本物の読書家なんだと思います。
 自身がこれまでに出会ってきた本のいくつかを紹介しながら、
 自身のこれまでの歩みも語っていかれる。
 そして、講演の最後には
 北條民雄の『いのちの初夜』の最初のところの
 朗読までしていただきました。

 15歳で大阪から単身上京して
 華やかな芸能生活の中にありながら
 じっと未来を見つめ続けてきた、
 そんな女性が中江有里さんなんだろうなと感じました。
 90分の大満足の講演会、
 やっぱりリアルはいいですね。

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 先週、近所の梅がほころびはじめたと書きましたが、
 一週間経って、今がまさに満開。

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    白梅の花に蕾に枝走る        倉田 紘文

 梅には別名「花の兄」ということもあって、
 桜より先に咲く所以でしょう。

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 畑の野菜も
 厳冬の頃より元気になったように感じます。
 これはタマネギ

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 葉がピンと伸びて勢いが出てきました。

 こちらはニンニク

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 冬の盛りの時は葉がシュンとして
 大丈夫かと心配になるくらいでしたが、
 少し暖かくなって
 こちらも葉に元気が戻りました。

 2月もあっという間に、明日でおしまい。
 北風が吹くとまだ寒いですが
 やはりどこかに春の気分が満ちているのでしょうね。

    光りつつ鳥影よぎる二月尽        小沢 明美

 「二月尽」というのは、新暦二月の終わりを表す季語。

 そろそろおわりなのが
 茎ブロッコリー
 3月には片付けますが、
 まだまだ収穫できます。

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 3月になれば、冬の間お休みしていた
 畑のお茶会も復活します。
 また、畑の仲間たちが集まって
 わいわいがやがやの会話が楽しめます。

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 今週は「本屋さん」や「図書館」といった
 本にまつわる本の紹介が続いたので、
 日曜日の絵本もそのつづきで。
 しかも、タイトルはズバリ『ほん book』。

  

 この絵本『ほん book』は、原題もそのまま「Book」。
 アメリカの作家デイビッド・マイルズさんが文を書き、
 ナタリー・フープスさんが絵を描いています。
 物語が書かれている訳ではありません。
 しいていうなら、本の世界への旅が描かれているといっていいでしょう。
 こういう絵本は文をたどるのもいいですし、
 絵だけをじっと見ていく、そんな読む方もあっていいと思います。

 表紙見返しにこんな惹句がのっています。
 「さあ、すばらしい本の世界へ飛び立ちましょう! そこは、あなただけのとくべつな場所!
 本への旅は、ここから始まっているのではありません。
 まずは、表紙。
 離陸前のシートベルトをしっかり締めた感じでしょうか。
 そして、この見返しは離陸前の機内アナウンス。
 なんだか、もうワクワクしてきませんか。

 開いた本はどんな世界ですか。
 この絵本では「まほうの森」と書かれていますが、
 もしかした海辺かもしれないし、無限の宇宙かもしれません。
 あなたが手にした乗車券は、あなたの思うままの世界へ連れていってくれます。

 最後のページに本を抱きしめる男の子が描かれていますが、
 それはきっとあなた自身。
 この絵本は読者に本への旅を誘ってくれます。

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 昨日稲垣えみ子さんの『老後とピアノ』という本を紹介しましたが、
 実際「高齢者」とは何歳からいうのでしょう。
 世界保健機関(WHO)では65歳以上を「高齢者」と定義しているそうで、
 日本の場合は
 65歳から74歳を「前期高齢者」、75歳以上を「後期高齢者」と
 区分されています。
 もっとも60歳以上の人を対象にしたアンケートでは
 70歳以上が「高齢者」と考える人が一番多いようで、
 年齢で判断できないという人も多かったようです。
 もし、「75歳以上の高齢者に対して自らの生死の権利を保障し、支援する」、
 そんな制度ができたら、
 あなたならどうしますか。
 そんな制度を映画化し、昨年話題となった作品があります。
 今日は、その映画「PLAN75」の話です。  

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 映画「PLAN75」は2022年公開された
 早川千絵監督の日本映画。
 第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門
 特別表彰を受賞
 キネマ旬報旬報ベストテンでも8位
 高い評価を得た作品です。
 23日に発表された第65回ブルーリボン賞でも
 早川監督は監督賞、主演の倍賞千恵子さんは主演女優賞を見事受賞しました。
 おめでとうございます。

 冒頭に書いたように、
 「75歳以上になれば自ら死を選び、国がそれを支援する」という
 「PLAN75」という架空の制度を
 実にリアルに切々と描いています。
 78歳になる主人公ミチを倍賞千恵子さんが
 老いの姿を見事に演じていて、
 その演技を見ているだけで圧倒されます。
 「PLAN75」の制度を選んだ彼女に
 しばしの時間寄り添う「PLAN75」のスタッフ成宮を
 河合優美さんが演じています。
 寄り添ううちに互いに通うあう心。
 老いと若さがつながりあえば、
 こういう制度も必要なくなるのかもしれない。
 そんなことを思います。
 もう一人、叔父さんを「PLAN75」に送り出すスタッフとして
 磯村勇斗さんが演じています。
 去ろうとする叔父をひきとめることのできない
 そんなつらい心情を
 静かな演技で表現しています。

 倍賞千恵子さん演じる主人公が
 年齢ゆえに職場を追われ、住む家もままならない状況は
 すでにこの国にあるリアルのように思います。
 だったら、「PLAN75」まであと少しかも。
 そう考えれば、実にこわい映画といえます。

 アマゾンプライムでも視聴が始まりました。
 必見の一作です。

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 高齢化社会になりつつある今、
 本の世界でも「定年後」とか「老後」といった言葉が
 目立っています。
 最近テレビのバラエティ番組などでちらちら拝見することもある
 元朝日新聞の「アフロ記者」稲垣えみ子さんの
 この『老後とピアノ』もそんな本のひとつかと思って読み始めましたが、
 なんのなんの、
 これはピアノ上達の、まさに「養成ギブス」のような本ではないですか。
 もちろん、「老後」に突入した稲垣さんの
 メロメロ、ハラハラ、ピアノ再入門書ではありますが。

  

 「定年後」をどう過ごすか、
 すでに幾多の指南書、アドバイス本が出ていますが、
 その例と同じく、稲垣さんも子供の頃に挫折したピアノを
 もう一度やってみることを決意します。
 ところが、稲垣さんの再チャレンジは定年後の遊びというにはあまりにも過酷。
 何しろピアノの練習時間は毎日2時間以上。
 しかも、プロのピアニストによる指導もつきます。

 そして、たどり着いた境地は、
 「野望を持たず、今を楽しむ。自分を信じて、人を信じて、世界を信じて、今を遊ぶ。」。
 となれば、やはりこの本、
 「老後」本でもあるし、「定年後」本でもあります。
 でも、稲垣さんに言いたい。
 この本で稲垣さんはたびたび「老後」とか「老人」とか使っていますが、
 この本ではまだ53歳(稲垣さんは1965年生まれ)。
 まだ「老後」というには早すぎます。
 これからの稲垣さんにどんな「老後」が待っているのか、
 それを読めれば、それもまた楽しみ。

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 昨日、今注目を集めている広島の小さなまちの「本屋さん」のエッセイ、
 『本屋で待つ』という本を紹介しましたが、
 今日は同じように話題となっている「図書館」の本を紹介します。
 すでに『つながる図書館』などの著作もある猪谷千香さんの
 『小さなまちの奇跡の図書館』です。

  

 タイトルにある「小さなまち」は、
 鹿児島県指宿市。温泉地としても有名なところです。
 そこの図書館が何故最近注目を集めているのか、
 それはさびれつつあった公立図書館を見事に蘇らせた人たちがいたからです。
 近年公立図書館にも指定管理者制度が適用され、
 指宿市の図書館もそうなります。
 その時指名されたのが、地元女性たちが立ち上げたNPO「そらまめの会」でした。
 彼女たちが図書館運営をまかされて
 初めて取り組んだのが周辺の草取りだったそうです。
 そこから随所で女性の優しい目配りが
 図書館を見違えるものにしていきます。
 猪谷さんのこの本は、
 彼女たちの活動をその立ち上げから時間を追って描いています。

 この本を読むと
 図書館というのは単に本の貸し出しだけでなく、
 地域の人たちの集まる場所だということがよくわかります。
 ただし、図書館があるから人が集まるという単純なことではありません。
 「そらまめの会」の女性たちがしてきたような丁寧できめ細かい活動が
 必要です。

 本屋さんにしろ図書館にしろ、
 地域根ざしたものが生き残るヒントを与えてくれるように思います。

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 待ち合わせ場所には、本屋は最適だ。
 相手が遅くなっても、本屋にいればイライラすることもない。
 『本屋で待つ』というタイトルに、
 ついそんなことを考えてしまうが、
 もちろんこの佐藤友則さんの本はそんな待ち合わせの話ではない。

  

 舞台となるのは、広島県庄原市という山間の町にある
 ウィー東城店という本屋さん。
 ただこの本屋さん、少し変わっていて、
 店内に美容室があったり、コインランドリーやベーカリーを併設していたりする。
 著者の佐藤さんはこの本屋さんの経営者。
 このエッセイ(と呼んでいいと思う)の最初の方では、
 大学にも行けずにパチンコ三昧の日々が綴られ、
 そんな青年が実家の本屋さんを継ぐことで立派な人物になっていくみたいな
 成功話のように思わないで欲しい。
 確かに佐藤さんは全国の本屋さんから注目を浴びる本屋をこしらえたが、
 実はそこに佐藤さんの経営者としてのすごさがある。
 「(従業員)がよりよくなれば、店は「よりよい店」となり、
 会社も「よりよい会社」となる。従業員たちの人生もきっと、
 会社をとおして「よりよく」なる。
 この本がどんなジャンルになるのかわからないが、
 これはもうりっぱな経営学の一冊ではないだろうか。

 佐藤さんは本屋の経営にあたって、
 不登校になった何人かの青年の成長にも心を広げてきた。
 そのことがこの本のタイトルとも共鳴し合っている。
 そんな佐藤さんの言葉、「待つということは聴くということとよく似ています」。
 とても、いい本と巡り合った。
 なお、ともに名が書かれている島田潤一郎さんは
 この本を出版した夏葉社の代表である。

  【参考】
  この本は2月18日の朝日新聞書評欄で、ノンフィクション作家の稲泉連さんが書評を載せています。

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プレゼント 書評こぼれ話

  アガサ・クリスティーの作品の中で
  クィン氏なる謎の男が登場する作品があります。
  なんとなく霊のような雰囲気をまとった人物ですが
  彼が登場する作品自体が
  幻想的といっていい。
  今日紹介する『死の猟犬』はクイン氏こそ登場しないものの
  アガサ・クリスティーの作品としては
  異色の幻想怪奇作品集といっていい。
  ただ、作品の評価は高く
  いつもの霜月蒼さんの『アガサ・クリスティー完全攻略』では
  ★★★★★の大絶賛。
  私もこれには賛成。
  アガサ・クリスティーは怪奇小説がお好き?

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  アガサはこんな怪奇小説も好きだったようで                   

 これは原題が「The Hound of Death and Other Stories」とあるように、1933年に発表された短編集である。
 ただ「ミステリの女王」と称されるアガサ・クリスティーだが、この短編集はかなり雰囲気が違う。
 アガサの作品と聞かないと、わからないかもしれない。
 この短編集に収録されている作品の多くが(唯一あの戯曲としても映画原作としても有名な「検察側の証人」の小説版がこの短編集ではむしろ異色)怪奇幻想の世界でできあがっているのだから。

 もっともアガサには怪奇幻想の作品がないわけではない。
 ポアロやミス・マープルといった人気キャラクターが有名だが、異色の人物クィン氏が活躍する作品群がある。
 作品では1930年に発表された『謎のクィン氏』という短編集がある。
 その系統の続きとして、この短編集があるといっていい。

 表題作の「死の猟犬」は一人の修道女にとりついた闇の現象を描いた作品。
 「赤信号」は危機の予知能力がありそうな男を巻き込むミステリ、「ランプ」は古い家を購入した家族の前に現れる怪異現象もの、といったような短編が11篇収録されている。
 面白かったのは「青い壺の謎」という短編で、幻聴を男に聞かせることで高価な青い壺を騙し取る話。
 その手口の鮮やかさは、現代の詐欺事件にも劣らない。

 11篇のそんな短編を読んでくると、もうひとつの短編「検察側の証人」が実によく見える。
 この短編集の作品構成が1933年当時のものかどうか知らないが、編集の妙といっていい。
  
(2023/02/21 投稿)

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 この週末、関東地方は気温があがって
 春めいてきたのを実感しました。
 でも、また明日以降は気温がさがるとか。
 こんな時期によく使われるのが、三寒四温という言葉。
 ただこの言葉、俳句の世界では冬の季語になっています。
 『歳時記』には、
 「厳寒のころの冬の大陸性気候の特長」とあって
 「春に向けて季節が一進一退するという意味ではないので注意が必要」と
 念のいれよう。
 でも、やはりこの時期らしい気候だと思いますが。

    三寒と四温の間に雨一日      林 十九楼

 近所の梅もほころびはじめました。
 こちらが白梅

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 そして、こちらが紅梅

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 やはり梅をみると、春を感じます。

 昨日の19日は二十四節気のひとつ、雨水で、
 農耕の準備が始まる頃といわれています。
 菜園では(きっと)新しい利用者向けの「畝づくり」の
 特別講習が土曜日に開催されました。

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 私の菜園生活もこの春から9年めになりますが、
 原点にもどろうと、私も参加しました。
 さすがにアドバイザーさんは手際がいい。
 たちまち畝ひとつこしらえてしまいました。
 菜園を始めた時の畝づくりの感動を
 いつまでも忘れないようにしないと。

 野菜の栽培状況です。
 こちらはタマネギ

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 枯れている苗はありませんが、
 まあるくなるまでには
 まだまだ時間がかかります。
 ソラマメもそう。

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 どちらも冬を越して
 春になって
 収穫は晩春になります。
 きっと私以上に春の温かさを待ち望んでいる
 野菜たちです。

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 この絵本、『しんやくんのマラカス』の「作者紹介」に、
 作者の石川えりこさんの出身地は記載されていますが、
 生まれた年は書かれていません。
 もちろん、以前出版されていた絵本やネットには出ていて、
 ここに書くこともできるのですが、
 この絵本に載っていないのだから、ここでも書きません。
 あえていうなら、
 福岡の「ボタ山」で遊んだという幼少期の体験がもとになった
 『ボタ山であそんだころ』という絵本があるくらいですから、
 おおよその年代はわかります。
 それに、同じ時代に生まれ育った読者が読むと、
 石川さんの絵本に同じ時代の匂いを感じるのではないでしょうか。
 昭和30年生まれの私が、そう。
 だから、石川えりこさんの絵本が好きなんです。

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 この作品は2018年に描かれ、2022年9月に絵本として出版されたもの。
 なので、石川さんの初期の頃の絵のタッチに近いし、
 文のなかにも石川さんが育った土地の方言が使われています。
 例えば、「ようちえんで おともだちが できたんよ」というように。
 この作品はこの文でもわかるように、
 ようちえんに通うしんやくんに女の子のお友達ができるお話。
 そのきっかけが、ゼリーの空カップでこしらえたマラカス。
 幼稚園の藤棚の下にある砂場で、マラカスの音を聞く二人の
 なんと幸せそうな顔でしょう。

 自分にもそんな顔をした子供時代があったのだろうな、
 石川さんの絵本を見ながら
 記憶を手探っています。

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 映画雑誌「キネマ旬報」が毎年行っている「ベストテン」は
 長い歴史を持っています。
 始まったのが1924年で、大正13年。
 先日発表された2022年度のベストテンは実に第96回となります。
 そこで選ばれた外国映画部門の第1位
 ポール・トーマス・アンダーソン監督の「リコリス・ピザ」。
 この映画のこと、まったく知らなかったので
 さっそくTSUTAYAでDVDレンタルして
 観ちゃいました。
 今日は、映画「リコリス・ピザ」の話です。

  

 映画「リコリス・ピザ」は2021年公開(日本では2022年)の
 アメリカ映画。
 「キネマ旬報」のベストテンだけでなく、
 アメリカアカデミー賞の作品賞などにもノミネートされていて
 評価が高い作品。
 でも、ですよ。
 日本での公開時のこのタイトルはどうでしょう。
 原題と同じだから、いいというものでもないように思います。
 そもそも「リコリス・ピザ」は
 1970年代から80年代にかけてのアメリカのレコードチェーンの名前だとか。
 映画の舞台が1970年代のカルフォルニアだとしても、
 日本での公開の時ぐらいは
 もう少し考えて欲しいな。
 私なら、「走れ!70‘S」にするかな。
 何しろ、主人公たちがよく走っているので。

 物語は高校生の男の子が年上の女性と出会って
 くっついたり、離れたりするお話。
 (かなりザクッと書きましたが)
 この二人、そのたびに街中を走っています。
 主人公の男の子を演じているのはクーパー・ホフマン
 彼、どこから見ても高校生に見えません。
 ヒロインを演じているアラナ・ハイム
 映画の舞台となった街で実際育ったロック・バンドのメンバーだとか。

 時代背景とか当時の風俗、社会現象など
 多分よく再現されているのだと思いますが、
 どうも私はもうひとつリズムにのれませんでした。
 なので、もし私ならこの映画は
 外国映画の1位には推さなかったな、多分。
 もっとも、この時代のこと、音楽のこと、がわかる人には
 涙がでるくらいビンビンきたのでしょうね。
 アカデミー賞を獲ったら、観るといいかも。

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 若い頃、だから随分昔のことになるが、
 直木賞など見向きもしなかったものだ。
 文学といえば、「純」文学。
 芥川賞を受賞するような作品。
 その一方の直木賞の受賞作など「大衆」小説。
 つまりは、三文小説でしょ。
 と、今思えば随分もったいない思い込みをしていたものだ。
 自身の間違いを他人のせいにするならば、
 芥川賞と直木賞という文学賞がなければ、
 そんな誤解も生まなかったのではないだろうか。
 今ならこういう。
 直木賞の作品は面白い。
 そう、文学には面白いかそうでないかという区分けしかない。

  

 芥川賞にも直木賞にも縁のなかった
 小谷野敦さんによる『直木賞をとれなかった名作たち』は
 「候補になってとれなかった」作品や作家だけでなく、
 候補にすらならなかった作家やもし候補になるならこの作品といったものも
 ずらり並ぶ。
 しかも、あの作家とあの作家は仲が悪かったとか、
 どうして文壇の評価が低いとか
 いわゆる「文壇ゴシップ」満載でそれを読むだけで楽しめる。
 それ以上に、
 これは小谷野さんの執筆意図とは違うかもしれないが
 ブックガイドとしても十分活用できる。
 この本を読んで、そのまま図書館に予約した本もあったりする。
 (ここで紹介されている本を新刊書店で探すのはかなり難しい)

 目次に並んだ作家たちの名前を見ていくと、
 まだまだ読みたい作家や読んでおきたい作品がたくさんある。
 これでは、最近の受賞作まで手が届かないではないか。

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 埼玉在住のJPIC読書アドバイザーのメンバーが主になって
 毎月1回開催されている読書会に参加して
 6年が過ぎました。
 毎回7、8人のメンバーが集まって、2~3時間本を紹介する読書会。
 コロナ禍にあっても
 なんとかオンラインで欠かさず続けることができました。
 参加していつも感じることは、
 本の世界の広いこと。
 だって、メンバーが紹介する半分以上が
 読んだことのない本だったりするのですから。
 今日紹介する川端康成の『雪国』は
 もちろん誰もが知っている日本を代表する名作ながら、
 あれ? もしかしたら読んでない? かも。
 いやいや、ヒロイン駒子の名も葉子という少女の名も
 ラストの火事の場面も知っているのに、
 そんな、読んでないことってある?
 今月の読書会でメンバーが紹介してくれて、
 読んでみた一冊です。

  

 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
 あまりにも有名な書き出し。
 しかし、もしかしたら、この書き出しが有名すぎて、
 読んだ気分になっていないだろうか。
 ノーベル賞作家川端康成の傑作にして、代表作である『雪国』は
 しかし、そんなに簡単な作品でない。
 わからないのが、登場人物たちの関係性。
 雪国の芸者駒子と出会う主人公である島村という男。
 無為徒食の生活を送りながら、妻や子もある様子。
 夢中になった駒子ながら、
 一年に一度会う程度の逢瀬で、それほど夢中になることがあろうか。
 一方の駒子も幼馴染の男の病気療養のために芸者になったとか、
 別の男と結婚しそうになったといいつつ、
 島村という男に惹かれている。
 さらに、物語の終盤、俄然妖しげな存在感を強める葉子にいたっては
 物語になじんでいない。

 この作品はそんな関係性で読むのではなく、
 車窓の映る表情であったり、天に広がる天の河であったり、
 そういう人間を取り込む美を読むのだろうか。

 今回最後まで読んで、
 ほとんどその内容を思い出すことがなかったということは
 もしかしたら、私はこの日本の名作を
 初めて読んだのだろうか。
 まるで、作品のように夢うつつだ。

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 貧乏が好きな人はいないと思います。
 と、のっけから東海林さだおさんの食のエッセイのアンソロジー『貧乏大好き』に
 反旗を翻したようですが、
 好きではないけれど、貧乏を楽しむ人はいると思います。
 東海林さんは漫画家として売れるまでは貧乏でした。
 この本の中にも『ショージ君の青春記』から2篇、
 実に哀しい貧乏学生生活が描いたエッセイが載っています。
 でも、漫画家として今は貧しくはないでしょうが、
 貧乏を見下すことなく、
 貧乏を楽しむ心根の、なんと美しいことでしょう。
 世の中、いつの間にか格差社会が広がって
 お金持ちの方々はタワマンのてっぺんから庶民を見下しているような構造にあって
 そんな社会にあって
 東海林さんは常に私たちの味方でありつづけています。

  

 だから、このアンソロジーでも
 ホテルのバーや寿司屋での仰々しいばかりのふるまいに
 オドオドする姿を描いた「場違いに屈せず」編の面白さといえば
 半端ではありません。
 わずか40ページほどに収められた3編のエッセイに
 10回以上は笑い転げましたから。
 何故、笑えたのか。
 東海林さんがそういう場違いな場所でオドオドしたのがおかしいのではなく、
 きっと自分もそうなるだろうなと思えたから
 笑うしかなかったともいえます。

 ビンボーは恐ろしいし、
 貧乏は嫌いだけど、
 貧乏であっても楽しめる、
 東海林さだおさんのような人に、私はなりたい。

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 創刊100年を迎えた月刊誌「文藝春秋」。
 さまざまな記事で世の中の動きを伝えてきた雑誌ですが、
 忘れてはならないのが、
 創刊から続く企画「巻頭随筆」。

   名文は、時を越えていく。

 これは、先ごろ出版された『巻頭随筆 百年の百選』の
 キャッチコピー。
 さすがに、うまいなぁ。

 芥川賞の発表号でもある
 「文藝春秋」三月特別号(1300円)の「巻頭随筆」も
 読み応え十分。

  

 私の興味のあるものが多かったということでもあるのですが。
 先日の2月12日が司馬遼太郎さんの忌日だった菜の花忌でしたが、
 司馬遼太郎記念館館長上村洋行さんが書いた
 「司馬遼太郎生誕100年からの連想」。
 この随筆の中で、昨年の秋に行われた「私の好きな司馬作品」の
 アンケート結果に触れられています。
 1位が『坂の上の雲』、2位が『竜馬がゆく』、3位が『燃えよ剣』。

 これも気になる随筆で、
 元「週刊朝日」編集長の森下香枝さんの「「週刊朝日」休刊に寄せて」。
 「週刊朝日」が今年5月に休刊というニュースに
 驚いたばかりですので
 まさにズバッときた一篇でした。
 それにしても、「週刊朝日」の東海林さだおさんの連載がどうなるのか、
 気にかかります。

 さらに気になる随筆。
 写真家立木義浩さんの「矢崎泰久さんの思い出」。
 先日亡くなった矢崎泰久さんは、和田誠さんとともに
 雑誌「話の特集」を創刊させた編集者。

 その他、『最後の無頼派作家 梶山季之』を上梓したばかりの
 大下栄治さんの随筆や
 『拾われた男』で話題となった俳優松尾諭さんの随筆など
 芥川賞もいいけれど、
 「巻頭随筆」だけで語れてしまう「文藝春秋」って
 やっぱり、すごい。

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 とうとう関東でも雪が降りました。
 今シーズンは日本海側や東北、北海道で
 大雪のニュースが多かったので
 関東でも雪が降るかなと思っていたのですが、
 2月10日の金曜の朝から降り出した雪は
 さいたまでは積雪5センチほどになりました。
 翌日の土曜日の朝9時頃、
 畑の様子を見に行ってきました。

  20230211_084836_convert_20230211175428.jpg

 うっすらというより、
 しっかりと積もっていました。

 雪が降ると、
 畑の防虫ネットやビニール覆いも写真のように
 雪の重さでひしゃげます。

  20230211_084448_convert_20230211175326.jpg

 畑を始めて頃にも雪が降って
 ひしゃげたネットをみてびっくりしたものですが、
 畑の経験も長くなると、
 雪をはらえばネットも元に戻ることがわかって
 この日も雪をはらって元通りに。

  20230211_085028_convert_20230211175519.jpg

 こちらは、雪におおわれたニンニク

  20230211_084549_convert_20230211175400.jpg

 野菜のまわりは少し暖かいのでしょうか、
 さすがに野菜が埋もれてしまうというところまでは
 いきません。

 今日は雪でも室内で楽しめる
 こんな写真を。

  20230211_132556_convert_20230211175609.jpg

 最近話題の再生野菜です。
 左がニンジンで、右が黄色ニンジン
 その隣にあるのは昔買った怪獣ブースカの貯金箱。
 ブースカの話ではなく、
 再生野菜の話。
 再生野菜は、調理の際に捨ててしまう
 野菜の切れ端から新たな葉を育てるもの。
 「リボベジ(リボーンベジタブル)」とも呼ばれています。
 葉を鑑賞用に育てたり、食用として頂いたりします。
 もちろん、これにも育てるコツとかがあって、
 水は毎日替えた方がいいとか、成長点を残しておくとか。
 今発売されている
 NHKテキスト「やさいの時間」2・3月号にも
 詳しく載っています。

  

 最後にお見せするのは
 昨日の日曜日、
 雪がすっかりとけた畑で収穫したホウレンソウです。

  20230212_114207_convert_20230212123823.jpg


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 今や絵本界を席巻する絵本作家といえば
 まちがいなく、この人だろう。
 ヨシタケシンスケさん。
 この人の作品を絵本というジャンルに入れてしまっていいのかどうか、
 コミックともいえず、イラストともくくれず、
 もしかしたら子どもよりも
 お母さんたちや若い女性たちの方がはまってしまう絵本、
 ということになるのだろうか。

  

 2019年6月に出たこの『ころべばいいのに』にしても、
 子どもにも理解できるだろうが、
 新入社員として会社に入った若い女性には
 ズンとくる絵本のような気がする。
 だって、「いしにつまづいてころんでしまえばいい」なんて思うような
 きらいなひと、いっぱいいそう、というか
 そういうように感じることをたくさん経験しそう。
 そんな時にどうする?
 この絵本に出てくる女の子のように
 靴下丸めたり、冷蔵庫のドレッシングを振ったりするのかな。
 いやいや、きっと
 ヨシタケシンスケさんの絵本を読んでみることだ。

 きらいな人とどう付き合うか、
 嫌な気分にどう向き合うか、
 ここにはそのヒントがあるのだから。
 この絵本を読んでぐっすり眠ったら
 きっと朝には気分がスッキリしていることだろう。
 だから、ヨシタケシンスケさんは
 人気絵本作家になったにちがいない。

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 毎週楽しみにしているテレビのドキュメンタリー番組があります。
 月曜夜10時から放送されている、
 NHKの「バタフライエフェクト」という番組です。
 「蝶の羽ばたきのような、ひとりひとりのささやかな営みが、
 いかに連鎖し、世界を動かしていったのか」ということを
 アーカイブ映像で見せていくもの。
 今週6日の放送は、「ブルース・リー 友よ水になれ」というタイトルで
 カンフーの大スターだったブルース・リーが取り上げられていました。
 スターになる前の彼は、
 香港でもアメリカでも疎外されていたそうです。
 カンフーの道を究めることで、
 やがて世界中が認めるスターとなり、
 国籍や人種の壁を乗り越える存在となっていきます。
 そんな番組を見たので、
 彼の映画を今日は紹介します。
 一躍ブルース・リーの名前を有名にした「燃えよドラゴン」ではなく、
 主演第2作めの「ドラゴン怒りの鉄拳」の話です。
 アマゾンプライムで観ました。

  

 映画「燃えよドラゴン」が日本で公開されたのは
 1973年の暮れ。
 翌年には大ヒットとなり、
 日本中がアチョーとブルース・リーの奇声を発していました。
 そこで、急きょそれまでに作られた作品が
 次々と公開されていきます。
 何故なら、「燃えよドラゴン」が封切られる前の
 1973年7月にリーは32歳の生涯を終えています。
 それまでに作られた作品の1本が
 映画「ドラゴン怒りの鉄拳」(1972年制作)です。
 この映画、物語自体は
 日本人の横暴についに怒りを爆発させる主人公ということで
 日本人がすっかり悪役になっています。
 日本に統治されていた上海が舞台ですから、
 そういう表現になるのでしょうが、
 この映画を観た中国の人なら喝采したのは明らか。
 それぐらい、ブルース・リー演じる主人公は
 徹底的に悪い日本人をやっつけます。

 この映画のブルース・リーの肉体とアクションは
 大ヒットした「燃えよドラゴン」よりすごく、
 中でもヌンチャクの華麗なさばきは
 観てても圧倒されます。
 彼の映画を観て、
 アチョーと奇声を発したりヌンチャクを振り回したくなる気持ちも
 分からないではありません。
 それほど、ブルース・リーはかっこよかった。

 今年(2023年)はブルース・リー没後50年
 ふたたびドラゴンブームが起こるかもしれません。

 アチョー!

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 2023年の年が明けて間もない1月10日、
 NHKのクローズアップ現代でノンフィクション作家の沢木耕太郎さんの
 インタビューが放送された。
 ほとんどテレビに出ない沢木さんを見ながら、
 やっぱりこの人、かっこいいなと呆然としていた。
 この番組では、沢木さんが9年ぶりに刊行した
 長編ノンフィクション『天路の旅人』についてのインタビューが主だったが、
 番組の最後には沢木さんからの若い読者へのメッセージなどもあって
 30分ながら満足のいく番組だった。

  

 『天路の旅人』は、
 第二次世界大戦末期、日本陸軍の密偵として
 中国の内蒙古から大陸奥深くへと潜入した25歳の青年、
 西川一三の8年に渡る旅を追体験するように描いた
 長編ノンフィクション作品。
 西川に自分と同じ匂いを感じたのだろう、
 沢木さんは生前西川に長時間インタビューをしている。
 しかし、沢木さんの都合などがあり、
 それが作品になるには25年という時間がかかったという。
 その間に西川本人も亡くなっている。
 残ったのは西川が生前に書き出版した本とインタビューの記録、
 そして西川の生原稿。
 これらをもとに、沢木さんはこの長編を書き上げる。

 「旅に同じ旅がないように、旅の一日に同じ一日があるわけではない。
 次の一日は常に新しい一日なのだ。
 これは本文中にある西川の思いとして書かれた一節だが、
 おそらくこれは沢木さん自身の思いと重なっているのだろう。
 西川が自由を求めた旅人であったように、
 沢木さんもまた止まることのない旅人であり続ける。

 先の番組の最後に
 沢木さんが語ったメッセージはこうであった。

   気をつけて、だけど恐れずに。

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 雑誌を読むのが苦手である。
 苦手というより、単純に、読むのがヘタだと思う。
 単行本とか文庫本の場合だと、最初のページから順に読んでいくのが普通だが、
 多分雑誌の場合、そんなにきちんと読む必要がないんだと思う。
 なのに、なんだか悪いような気がして(雑誌に)
 順ぐりに読もうとするが、
 雑誌は多分そんな読み方をしなくてもいい。
 もっと自由に読めばいい。
 そんな私が多分今まで生きてきて(今日は私の68歳の誕生日だが)、
 もしかしたら一番購入して読んでいた雑誌が
 映画専門誌「キネマ旬報」ではないだろうか。

 映画にはまった高校生の頃、
 出るたびに購入していたお気に入りの雑誌だった。
 旬報ということで月2回出るのだが、
 当時は毎号映画のシナリオなんかが載っていたり
 和田誠さんのエッセイ「お楽しみはこれからだ」があったりして
 かなりマメに読んでいたように思う。
 少し映画から遠ざかってからも
 2月のはじめにでる「ベストテン発表号」だけは買っていたものだ。
 残念ながら、持っていた「キネマ旬報」は全部処分して、
 今はない。

 今日は先日出たばかりの
 「キネマ旬報2023年2月下旬キネマ旬報ベスト・テン発表特別号」の話。

  

 つまり、2022年度のベストテンと個人賞の発表がわかる一冊。
 日本映画の第1位は、「ケイコ 目を澄ませて」(三宅唱監督)。
 これは聴覚障害の女性ボクサーの姿を描いた作品で
 主人公を演じた岸井ゆきのさんは
 主演女優賞も受賞している。
 岸井ゆきのさんは最近の女優として小柄ながら
 とても存在感のある女優さん。
 ちなみに主演男優賞沢田研二さん。
 主演をつとめた「土を喰らう十二ヵ月」(中江裕司監督)の演技で。
 外国映画の1位は「リコリス・ピザ」(ポール・トーマス・アンダーソン監督)。
 2022年に話題となった
 「トップガン マーヴェリック」は惜しくも2位。

 キネマ旬報ベストテンもこの回で
 96回。
 だとしたら、私が知っているのは
 半分以上ということになる。
 人生、まだまだ続きます。
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 東日本大震災が起こった2011年、
 その大きな災害のおよそ一か月前の2月5日に、
 ひとりの女性が獄中で亡くなった。
 彼女の名は永田洋子(ひろこ)。
 連合赤軍のリーダーの一人で、1971年から72年にわたっての仲間へのリンチ殺人の罪で
 死刑判決が出ていたが、刑の執行ではなく、病気で亡くなっている。
 65歳だった。
 それから、3年後の2014年11月から2016年3月まで、
 雑誌「文藝春秋」に連載されたのが、
 桐野夏生の『夜の谷を行く』だった。

  

 この長編小説の主人公は
 永田たちが引き起こしたリンチ殺人の現場から逃げ出した
 元活動家の女性西田啓子。
 当時警察に逮捕され、彼女は5年間の服役を終え、
 その後は人目を避けるように暮らしている。
 そんな彼女が永田の死のニュースから
 まるで暗い裂け目をのぞくように当時のことと向き合うことになる。
 服役後、唯一交流していた妹とその娘だが、
 啓子の過去の事件を知ることで激しくののしられる。
 それは、そのあとに起こった東日本大震災の大きな揺れと
 まるで共鳴するかのように
 彼女の平凡だった暮らしを揺さぶっていく。

 永田やリンチ殺人で亡くなった女性たちの実名が書かれているが
 これはあくまでも小説である。
 おそらく桐野の綿密な取材もあるだろうが、
 むしろ2011年に起こった永田の死や東日本大震災が
 創作の発露となったように感じる。

 そして、何よりもこの長編小説の最後の瞬間に
 まるで一閃の衝撃をうけるはずだ。
 小説のすごさを体感できる問題作だ。

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 世界中にコロナ感染が広がって
 もう3年になります。
 ここにきてようやく人類は落ち着きを取り戻して
 日本でも最近はいろんなイベントが「3年ぶり」に
 コロナ前の姿に戻りつつあります。
 コロナ禍が始まった頃、
 しきりに比較されたのが1918年から1920年にかけて
 世界中に大流行したスペイン風邪です。
 この時、世界での感染者は5億人を超え、
 死者も1億人を超えたといわれています。
 その犠牲者の中に、
 ウィーンの生んだ若き天才画家エゴン・シーレがいました。
 シーレは1918年の10月、スペイン風邪に感染し亡くなっています。
 この時、まだ28歳。
 シーレの亡くなる数日前、妊娠していた彼の妻もまた
 スペイン風邪で亡くなったいます。

 そんなエゴン・シーレの作品が
 およそ30年ぶりに日本にやってきました。
 1月26日から上野にある東京都美術館
 「エゴン・シーレ展」が開催されています。(~4月9日)

  20230203_111404_convert_20230204082507.jpg

 シーレは若くして亡くなっているので
 作品数としては多くありませんが、油彩画やドローイング合わせて50点が
 展示されています。
 くわえて、彼が師事したクリムトなどの作品が
 並んでいます。
 さっそく、2月3日の節分の日に行ってきました。

   すべての芸術家は、詩人でなければならない。

 これはシーレの言葉ですが、
 この言葉の通り、シーレの絵画はその繊細さが人気のひとつでしょう。

  20230203_115840_convert_20230204082607.jpg

 しかし、
 この展覧会で唯一写真撮影が許可されていた
 風景画を見てみると、
 彼の色づかいの巧さに圧倒されます。

  20230203_114144_convert_20230204082543.jpg

 シーレの魅力の再発見でした。

 もし、彼がスペイン風邪に罹らず長生きしたら
 どんな作品を残しただろう、
 そんなことをつい考えてしまいます。

  20230203_120012_convert_20230204082632.jpg

 この展覧会、入場料は一般2200円ですが
 65歳以上は1500円と割引料金になります。
 こういう時、シニアも悪くないと
 ちょっとほくそ笑んでいます。

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 2月4日は立春でした。
 暦の上ではこの日から春。
 『歳時記』も「春の部」に変わります。

    立春や月の兎は耳立てゝ       星野 椿

 街を歩いていると時々目にするピンクの花。
 桜ですが、今の時期は寒桜

  20230203_134420_convert_20230205132900.jpg

 寒桜は冬の季語なので、おおあわてで一句引用。

    雨雫よりひそやかに寒桜       稲畑 汀子

 畑での作業があまりないので
 畑にやってくる人も少なく、
 月が変わってようやく今年初めてお目にかかる人もあったりして
 「今頃ですが、今年もよろしく」なんて
 新年の挨拶を交わしたりしています。

 二週にわたって作ってきた福だるま
 昨日ようやく最後の工程のニス塗をおえて
 家に持ち帰りました。

  20230205_132308_convert_20230205132957.jpg

 緑の方はなんとなくソラマメだるまとわかってもらえましたが、
 黄色の方はフクロウかという人も多く、
 作者の意図のトウモロコシだるまとは
 誰もわかってもらえませんでした。 
 冬場の畑は作業も収穫もほとんどないので
 こういう企画も面白かったです。

 野菜の方は
 寒さもあってほとんど成長しません。
 それでも、なんとか形っぽくなっているのが
 リーフレタス

  20230205_105458_convert_20230205132930.jpg

 大きなサイズとはいかないでしょうが、
 もう少し暖かくなってきたら
 もう少しは大きくなるかもしれません。

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 「おはなしえほん」シリーズの一冊として、
 2009年4月に出版された『はなとひみつ』という絵本の巻末に、
 作者の星新一さんがこんなことを書いています。
 「作者としての願いは、読んで面白く感じてくれたかどうかの一点です。
 なので、星さんの願いの答えをまず書きます。
 面白かったです。

  

 ストーリーのはじまりは、
 花が大好きなハナコちゃんのことから。
 ハナコちゃんは花を世話できるモグラがいたらいいのにと、
 花とモグラの絵を紙に書きました。
 ところが、風で飛ばされてしまいます。
 飛んでいった先は、ある国の秘密の研究所がある島。
 本国からの指令と勘違いした研究所の人たちは
 本当に花の世話をするモグラ型ロボットをこしらえてしまいます。
 そのモグラがどうなったかは、絵本を読んでのお楽しみ。

 星さんも書いていますが、
 絵を描いた和田誠さんのイラストレーションがいいんです。
 星さんと和田さんは相性がよくて、
 和田さんは星さんの作品にたくさんのイラストを提供しています。

 最後に星さんが「あとがき」に書いた、
 こんな言葉を書き留めておきます。
 「自己の好みの確立。これこそが人生において最も大切」。

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 先週の「冬の映画」に続いて、
 今回も「冬の映画」。
 しかも、今回の映画は「雪が主役」ともいわれたほどの
 厳冬の映画。
 先週の「ある愛の詩」では、
 「愛とは決して後悔しないこと」が流行語になりましたが、
 今回の映画ではこんな惹句が流行しました。

    天は我々を見放した。

 もうおわかりですよね。
 今日は映画「八甲田山」の話です。
 寒いですから、防寒着のご用意を。

  

 映画「八甲田山」は1977年に公開された日本映画です。
 原作は新田次郎の『八甲田山 死の彷徨』。
 これは今でも冬になるとどこかで語り継がれることになる
 明治35年1月に起こった実際の遭難事故が題材になっています。
 日露戦争を前にして
 厳冬の中の雪中行軍の演習中に八甲田山で遭難、
 210名中199名が亡くなったもの。
 何故、これほどの犠牲者が出たのか、
 青森から出発する連隊と弘前から出発する連隊との
 競争意識が根底にあったり、
 指示を出さないはずの上長がいつの間にか指示をすることで
 組織に混乱が生じたり、
 問題がいくつもあったでしょうが、
 それ以上に雪山、すなわち自然の恐ろしさが
 よく伝わってきます。

 監督は森谷司郎
 脚本は橋本忍
 音楽は芥川也寸志
 この音楽がいい。重厚で、切々と流れてくる。
 芥川也寸志さんはこの音楽で第1回日本アカデミー賞音楽賞を受賞しています。
 無事に八甲田山を走破した弘前の連隊のリーダーを高倉健
 逆に悲劇に見舞われる青森の連隊のリーダーを北大路欣也
 俳優陣も充実していて
 三國連太郎、小林桂樹、緒形拳、栗原小巻、秋吉久美子など。
 それになにより、
 白い雪のシーンが多い中、それを見事に映像化した
 木村大作の撮影も忘れてはならない。

 上映時間は3時間弱ながら、
 一気に観てしまうだろう。
 寒い日、外に出るのもおっくうな時に
 DVDレンタルで観ました。
 この映画、観るならやはり寒い冬の日でしょうね。

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 今日は節分
 明日が立春で、まさに冬と春の分かれ目。

    節分や海の町には海の鬼      矢島 渚男

 と、いっても
 季節の変わり目ほど曖昧なものはなく、
 まだまだ春とはいえない冬の寒さが続きます。
 もしかしたら、真と贋の境もそんな風なものかもしれない。
 そんなことを考えさせられる、
 今日は松本清張の短編、『真贋の森』を紹介します。
 (『黒地の絵 傑作短編集(二)』所収)

  

 この短編を読むきっかけは、
 1月21日の朝日新聞朝刊の書評欄に載った
 「つんどく本を開く」という企画記事に
 現代美術家の野口哲哉さんがこの作品のことを書いていたからだ。
 野口さんはこの短編を学生の頃繰り返し読んだという。
 この作品は昭和33年(1958年)に発表されているから、
 松本清張の作品の中でも初期に入るだろう。
 美術界のアカデミズムの壁に苦汁をなめた一人の男が復讐のため、
 贋作事件を計画する。
 絵の巧い名もない男を発掘し、彼に贋作を描かせる。
 その絵を本物であると鑑定させることで、
 美術界の大御所に一泡吹かせようとする男。
 「人間の真物と贋物とを指摘して見せたい」、
 それが男の野望だが。

 野口さんが記事に書いているように、
 この作品の「多くの紙幅が、権威やアカデミズムに対する糾弾に割かれて」いて
 松本清張が初期の頃よりそういう権力への厳しい視点を持っていたことが
 よくわかる短編だといえる。
 後半はミステリー仕立てになっているが、
 結局この計画が破綻する原因も
 人間の見栄という愚かさというのが
 いかにも松本清張らしい。

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今年にはいって間もなく、またしても悲惨な事件が起きた。
 福岡でのストーカー殺人事件である。
 被害者である女性は警察に相談し、警察は加害者に対し禁止命令で出していたという。
 こういう事件があるたびに語られるのが、
 「桶川ストーカー殺人事件」という単語である。
 この事件をきっかけに、ストーカー規制法ができた、云々と。
 しかし、
 この事件のことを詳しく知らないことに気づく。
 「桶川ストーカー殺人事件」とは何だったのか。
 当時週刊誌記者あった清水潔氏が、
 その事件を探り、殺人犯を捜し当て、担当していた警察の腐敗も暴いた
 この『桶川ストーカー殺人事件』(文庫化は2004年)を今読んでも少しも古びていない。

  

 「桶川ストーカー殺人事件」は、
 1999年10月26日の白昼、
 埼玉県のJR桶川駅前で21歳の女子大生が刺殺された事件だ。
 彼女は殺される前に親しい友人にこんな言葉を残していた。
 「私が殺されたら犯人は〇〇」。
 もちろん、本文には〇〇ではちゃんと実名が入っている。
 さらに、友人たちは、彼女はそのつきまとい男と警察に殺されたと
 取材をしていた清水氏に話す。
 このことをきっかけに清水氏は、この事件にどっぷりとはまっていく。

 本文では被害女性がどのように犯人と出会い、
 犯人がどのようにして彼女を脅迫していったかが綴られる。
 さらに、全く動かない警察に対し、清水氏自身が犯人を特定していく。
 殺人犯は逮捕されるが、
 実際彼女につきまとっていた男は行方不明(その後、死亡が確認)。
 さらには警察に助けを求めた彼女を、警察は裏切っていた事実も判明していく。

 確かにこの事件のあと法律ができた。
 しかし、ストーカー行為がなくなるわけではない。
 「桶川ストーカー殺人事件」は法律のきっかけとなったが、
 この事件の本質はそれだけではない。
 法律があっても防げないなら、もう一度、最初の事件に戻ってみるのもいい。

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 先日発表された第168回芥川賞を『荒地の家族』で受賞した佐藤厚志さんは、
 仙台の現役の書店員でもあることで話題となった。
 その経歴を見ると、2017年に新潮新人賞を受賞し、
 その後この『象の皮膚』を2021年に発表し、三島由紀夫賞の候補となっている。
 『荒地の家族』はそのあとの作品だから、
 まだそんなに多くの作品を発表していない。

  

 今回の芥川賞受賞でも、佐藤さんの作品と東日本大震災の関係がよく報じられているが、
 この『象の皮膚』でも東日本大震災後まもなく営業再開した書店に押し寄せた
 人たちの姿がうまく描かれている。
 物語は、幼い頃からアトピーで苦しみ、友達ともうまく交われなかった五十嵐凛という女性が主人公。
 彼女は仙台駅前の書店の非正規社員として6年働いている。
 自分の肌のことで「心を自動販売機のように」して働き、
 ネットの仮想世界のアバターが彼氏である。
 本来なら彼女を支えるべき家族も何故か彼女を毛嫌いし、かなり悲惨な生活のはずなのに、
 どうしてだろう、
 五十嵐凛という女性は決してそんなに悲痛には見えない。
 それは、彼女の務める書店で働く先輩であったり同僚を描き方、
 あるいは書店に現れるクレーマーの数々の嫌がらせの様子の表現が
 生き生きと活写されているからだろう。
 つまりは、誰もがみんな「どっこい、生きている」のだ。

 だから、震災後書店に押し寄せたお客たちもまた、
 被災者であっても生の体現者であり、
 生きているからこその面白さを生み出している。
 
 こういう作品を読むと、
 芥川賞受賞作を早く読みたくなる。

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