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 先週、早川千絵監督の「PLAN75」という映画を紹介しました。
 あの映画では75歳以上になれば自分の生死を選択できるという
 近未来型の制度を映画化したものでしたが、
 実は日本には「棄老伝説」という民間伝承が昔からあって
 その頃では70歳になると棄てられていたという言い伝えがありました。
 その伝承を小説にしたのが
 深沢七郎の『楢山節考』です。
 この小説が発表されたのが1956年(昭和31年)。
 大きな話題となり、
 二度映画化されています。
 最初の映画化は1958年(昭和33年)、木下恵介監督作品です。
 この作品はオール・セットという斬新なもので
 この年のキネマ旬報ベストテン1位になっています。
 今日紹介するのはこれではなく、
 二度目の映画となった今村昌平監督作品の「楢山節考」です。

  

 今村昌平監督の映画「楢山節考」は1983年(昭和58年)公開。
 その年のカンヌ国際映画祭で最高賞であるパルム・ドール賞を受賞した
 日本映画の名作。
 主人公であるおりんを演じるのは坂本スミ子さん。
 おりんは69歳という役どころでだが、
 坂本さんはこの映画の時まだ50前。
 それでも見事に老け役を演じています。
 69歳になってもまだ歯がりっぱにあることにひけ目を感じて
 自ら石臼で歯を抜く場面など凄みを感じました。
 おりんが住む村では70歳になった年寄りは山に棄てる習俗があって
 おりんも自ら入山を望みます。
 貧しい農家にとって食い扶持がひとつなくなることは
 それだけ余裕が生まれることで
 おりんはそれゆえに入山を望みます。

 そのおりんを山に連れていく息子役を
 緒形拳さんが演じています。
 この当時の緒形さんは出る作品すべて重厚で
 とても安定感のある演技を見せています。
 なので、おりんを連れて山に入っていく姿は
 胸うたれます。
 その息子の後妻役に昨年(2022年)12月に亡くなった
 あき竹城さんが扮しています。
 今村昌平監督はあきさんにしろ坂本さんにしろ
 肉感的な女性が好みだったのでしょう。

 この映画でたびたび生き物たちの生死や交合の様子が描かれます。
 命そのものを問うという姿勢が
 そこにもよく出ていました。
 この映画の公開時のキャッチ・コピーは

   親を捨てるか、子を捨てられるか。

 どちらにしても切ないものです。
 この映画、40年前の作品ですが、
 ちっとも古さを感じないのはいい映画だからでしょう。

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